本間社長ブログ

マンション住民なりすまし、修繕委員会への潜入を防ぐには?|国交省が標準管理規約で役員の本人確認を明記。首都圏の管理組合が公募委員・設計コンサル選定の前に確かめたい7項目【2026年11月】

マンション住民なりすまし、修繕委員会への潜入を防ぐには?|国交省が標準管理規約で役員の本人確認を明記。首都圏の管理組合が公募委員・設計コンサル選定の前に確かめたい7項目【2026年11月】
本間 幸紘

著作者プロフィール

株式会社明誠 代表取締役

本間 幸紘

大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。

この記事で分かること

「うちの修繕委員会に、住民ではない人が紛れ込んでいたらどうなるのでしょうか?」——最近、東京都・神奈川県・埼玉県の理事長さまから、こうしたご相談をいただく機会が増えました。

2026年11月4日の朝、私が購読しているGoogleアラートに、週プレNEWSの「”億単位の積立金”を食い潰す『マンション住民なりすまし詐欺』の恐怖」という記事(Yahoo!ニュース配信)が届きました。見出しには、「大規模修繕の周期は一般的に12〜15年に1回とされる」という説明も添えられています。大規模修繕を目前にした管理組合にとって、他人事ではない話題です(出典:週プレNEWS/Yahoo!ニュース。本記事では、見出しと公開されている範囲の情報のみを参照しています)。

この記事が答える質問は、次の1つです。「首都圏のマンションの大規模修繕で、住民なりすましを防ぐために、管理組合は何を確認すればよいのか」。

結論から申し上げます。

  1. 国土交通省は令和7年(2025年)10月17日に「マンション標準管理規約」を改正しました。役員候補者の本人確認が、コメントとして明記されています。顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)の提示を求める方法が例示されています。
  2. 標準管理規約には法的な強制力がありません。だからこそ、各マンションの管理規約・細則に、本人確認のルールを自分たちで書き込む必要があります。
  3. 本人確認だけでは足りません。修繕委員会の公募、設計コンサルタントの選定、見積書の仕様の揃え方、積立金の口座管理まで、「発注の流れ全体」で利益相反をチェックすることが、修繕積立金を守る近道です。

この記事では、国土交通省・横浜市の公表資料と報道をもとに、何が起きたのかを整理し、管理組合が確かめたい7項目を、現場20年の目線でお伝えします。

最終更新:2026年11月5日


結論:なりすまし対策は「本人確認」と「発注プロセスの見える化」の二本立て

まず、よくある問いに短くお答えします。

よくある問い 答え(要点) 根拠
国は何か対策を出している? 令和7年10月17日に標準管理規約を改正。役員候補者の本人確認を推奨する趣旨のコメントが入っています 国土交通省 報道発表(令和7年10月17日)
本人確認は何で行う? 顔写真付きの身分証明書の提示を求める方法が例示されています(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート) 令和7年マンション標準管理規約改正
標準管理規約を改正すれば自動的に守られる? いいえ。標準管理規約はひな型であり、各マンションが自分たちの規約を見直して初めて効力を持ちます 国土交通省
外部専門家(マンション管理士など)の本人確認は? 顔写真付き身分証に加え、資格に関する証明書の提示も考えられるとされています 令和7年マンション標準管理規約改正
住民同士の面識がなくても防げる? 面識だけに頼らず、名簿の突き合わせや本人確認の仕組みを組み合わせることが有効とされています 横浜市

私はいつも理事長さまに、「修繕委員会の席に座っている全員が、誰の推薦で、何の立場で座っているのかを、議事録に残してください」とお伝えしています。立場が曖昧な人が1人でもいると、そこが入口になるからです。


何が起きたのか:2025年5月の修繕委員会で報じられた事案

報道されている事実関係

なりすまし問題が広く知られるきっかけになったのは、2025年に首都圏のマンションで報じられた事案です。現代ビジネスの記事は、業界紙「マンション管理新聞」(2025年5月25日号)の報道を引用する形で、次のように伝えています(出典:現代ビジネス)。

  • 2025年5月17日(土)、首都圏の大規模マンションで、大規模修繕に向けた修繕委員会が開かれた日の出来事とされる
  • 施工会社の社員2人が区分所有者になりすまし、公募による委員として参加していたとされる
  • 委員会を自社に有利に進め、コンサルタントである設計事務所の決定に影響を与えようとしたとされる
  • 委員会当日に、1人が建造物侵入容疑で逮捕され、もう1人は会議室から逃走したとされる
  • 管理組合関係者は、約15億円とみられる修繕工事の下請けに加わることを目的とした「詐欺未遂事件」とみている、とされる

ここでご注意いただきたいのは、これらは報道で伝えられている内容であり、私が事実関係を確認したものではないという点です。また、本記事では特定の企業名には触れません。大切なのは「誰が起こしたか」ではなく、「どうすれば同じことが自分のマンションで起きないか」だからです。

別の報道では、2025年6月27日の朝日新聞1面でも、首都圏のマンションで大規模修繕を目前に控えた時期に、委員の人物が区分所有者ではないことが分かり、管理組合が警察に通報、不法侵入の疑いで逮捕された、と紹介されています(出典:ちいさな管理(マンション管理コンサルタント事務所)による整理)。

神奈川県・千葉県でも

共同通信の配信記事(秋田魁新報掲載)によると、神奈川県内では2025年5月、住民の名前を名乗った人物が大規模修繕を議論する役員会合に出席していたことが分かりました。千葉県でも、大規模修繕をめぐる住民へのなりすましが発覚した、と伝えられています(出典:秋田魁新報)。

つまり、これは1つのマンションだけの話ではなく、首都圏の複数の地域で報じられた問題です。


なぜ修繕委員会が狙われるのか:「工事の入口」に影響力が集中するから

影響力が集中する3つのポイント

大規模修繕は、数千万円から数億円規模になることが珍しくありません。上の報道では、管理組合関係者の見立てとして約15億円とされていました。金額が大きいほど、受注側にとって「事前に情報を取りたい」「選定に影響を与えたい」という動機が強くなります。

では、修繕委員会のどこに影響力が集中するのでしょうか。私の経験では、次の3か所です。

影響力が集中する場面 具体的に何が決まるか 起こりうるリスク
設計コンサルタントの選定 調査診断・設計仕様・見積り比較の「ものさし」 特定の工法・材料・業者に有利な仕様書になる
施工会社の選定方式 公募か指名か、設計監理方式か責任施工方式か 競争が働かず、相場より高い金額で決まる
修繕委員会内の議論 総会に諮る案の絞り込み、見積りの評価基準 特定の案だけが「推奨案」として残る

どれも、総会の議決の前の、議論の入口で決まる話です。総会の場で全員が賛成した形になっていても、そこに至る候補が最初から絞られていれば、管理組合は「選んだつもり」で選ばされていることになります。

修繕積立金は「みんなのお金」だからこそ

修繕積立金は、区分所有者が毎月積み立てている共有のお金です。1戸あたりの金額は小さく見えても、100戸、200戸と集まれば、数億円規模になります。週プレNEWSの見出しが「億単位の積立金」と表現しているのは、こうした規模感を指しているものと受け止めています。

私がいつも申し上げるのは、「積立金は、理事長さまのお金でも、施工会社のお金でもない。区分所有者全員のお金です」ということです。だからこそ、工事の入口に、立場の曖昧な人を座らせない仕組みが必要になります。


国土交通省の対応:標準管理規約に「役員候補者の本人確認」を明記

令和7年10月17日の改正で何が入ったか

国土交通省は令和7年10月17日、「マンション標準管理規約」の改正を発表しました。2025年5月に成立したマンション関係法(区分所有法等)の改正に合わせたもので、総会決議の多数決要件、所在等不明区分所有者の総会決議からの除外手続き、修繕積立金の使途など、区分所有法関係の改正項目が反映されています。改正区分所有法は令和8年4月から施行されています(出典:国土交通省 報道発表(令和7年10月17日))。

その改正の中に、今回のテーマであるなりすまし対策が含まれています。国土交通省の改正資料では、次の内容が示されています(出典:国土交通省「令和7年マンション標準管理規約改正」)。

  • 単棟型の第35条のコメントで、管理組合の役員になりすました部外者による被害を防ぐため、役員候補者の本人確認を適切に行うことが有効とされています
  • 具体的な方法として、顔写真付きの身分証明書の提示を求める方法が示され、例としてマイナンバーカード、運転免許証、パスポートが挙げられています
  • マンション管理に関する専門知識を持つ外部専門家を選任する場合は、顔写真付きの身分証明書に加えて、資格に関する身分証明書の提示も考えられるとされています
  • 専門委員(修繕委員会などの専門委員会の委員)についても、本人確認に関するコメントが追加されています(単棟型第55条関係)
  • 団地型(第37条・第57条)、複合用途型(第39条・第59条)にも、同様の改正が入っています

背景は、修繕工事関連業者の従業員が区分所有者になりすまして修繕委員会に入り込んだ事案を受けた見直しです。

標準管理規約は「ひな型」であり、強制ではない

共同通信の配信記事は、この方針について「強制力はない」と伝えています。ただし、大半の管理組合は標準管理規約に沿って自らの規約を定めているため、改正の趣旨が各マンションに広がることが期待されています(出典:秋田魁新報)。

ここが実務上のポイントです。国が標準管理規約を改正しても、各マンションの管理規約が自動的に書き換わるわけではありません。総会で規約改正を決議して、初めてそのマンションのルールになります。令和8年4月に区分所有法の改正が施行されたいまは、規約全体を見直す絶好のタイミングです。本人確認の条項も、その見直しにあわせて検討されることをおすすめします。


横浜市が示す4つの対策:住民同士の「顔の見える関係」も防御になる

横浜市は、自治体として早い段階から、この問題への注意喚起を公開しています。「役員のなりすましにご注意ください!!」というページ(建築局住宅部住宅再生課、最終更新2025年10月21日)では、狙われる背景と対策が整理されています(出典:横浜市)。

ページが示す手口は、区分所有者を装い、複数回にわたって大規模修繕委員会に出席したというもので、他の委員は気づけなかった、とされています。狙われる理由としては、大規模修繕は費用が高額になりやすい一方、発注する管理組合に専門知識がないことも多いため、と説明されています。

対策として挙げられている内容を整理すると、次の4点です。

  1. 日頃から住民同士の交流を持つ:住民全員と面識を持つのは難しくても、普段のコミュニケーションが防止に有効とされています
  2. 本人確認を検討する:管理組合の役員などに就任する際の本人確認を検討するよう勧めています
  3. マンション管理士などの専門家を活用する:中立的な立場から工事内容をチェックしてもらう方法が挙げられています
  4. 理事や修繕委員の間で認識を共有する:掲示や回覧で注意喚起を行うことが重要とされています

なお、同ページは、なりすましだけでなく、工事会社の談合など、大規模修繕を取り巻く他の事件も多いと述べ、第三者の専門家の活用は、これらへの防御策にもなるとしています。私も同じ考えです。


管理組合が確かめたい7項目

ここからが本題です。私が首都圏の管理組合さまにお話しするときに、「まずここを確認してください」とお伝えしている7項目を整理します。

確認① 修繕委員会の委員は、全員の「資格」と「推薦者」を名簿で説明できるか

最初に確認したいのは、委員名簿です。各委員が、区分所有者なのか、居住者(賃借人)なのか、外部専門家なのか。誰が公募に応募し、誰が理事会から指名されたのか。これを名簿として整理し、議事録に添付しておきます。

名簿を作ると、「この方は何の立場でしたっけ?」と全員で確認できます。確認の機会があること自体が、潜入の抑止力になります。

確認② 公募委員には、顔写真付きの本人確認と登記・名簿の突き合わせを行っているか

公募で委員を募る場合は、国土交通省の改正資料が示す考え方に沿って、顔写真付きの身分証明書の提示を求めることを検討します。

さらに一歩踏み込むなら、組合員名簿との突き合わせです。区分所有者であれば、名簿に氏名と住戸番号が載っているはずです。賃借人の場合は、所有者である貸主の承諾など、規約で定めた手続きがあるかを確認します。手続きは面倒に見えますが、委員会に入る前の1回だけの確認です。

規約・細則に定めておけば、「あなたを疑っているのではなく、全員に同じルールで確認しています」と、角を立てずにお願いできます。私はこの点が、運用上いちばん大切だと考えています。

確認③ 設計コンサルタントの選定理由と、施工会社との資本・人的関係を確認しているか

上で紹介した報道では、施工会社の社員が、設計事務所の決定に影響を与えようとしたとされています。設計コンサルタントは、調査診断・設計仕様・見積りの比較の「ものさし」を作る立場です。ここに利益相反があると、あとで施工会社を比べても、比べる基準そのものが偏ってしまいます。

確認の方法は、いたってシンプルです。設計コンサルタントの候補者に、次の点を書面で回答してもらいます。

確認項目 回答してもらう内容
資本関係 施工会社・材料メーカー・商社との資本関係の有無
人的関係 役員・社員の出向や、過去の在籍関係の有無
報酬の受取 施工会社や材料メーカーからの紹介料・手数料の有無
過去実績 過去3年の担当物件数と、採用された施工会社の傾向

書面で提出してもらえない、あるいは回答があいまいな場合は、それ自体が判断材料になります。

確認④ 見積依頼の「仕様書」は、誰が作り、誰が確認しているか

施工会社に見積りを依頼するとき、全社に同じ仕様書を渡しているでしょうか。仕様が揃っていなければ、安い高いの比較はできません。さらに、特定の製品名や工法名だけが指定されていると、それ以外の提案が事実上排除されます。

私の経験上、仕様書づくりで確認していただきたいのは次の3点です。

  1. 数量の根拠:外壁の面積、シーリングの長さ、防水の面積は、調査診断に基づいて書かれているか
  2. 「同等品可」の記載:特定製品を指定する場合、同等品でも可とするか、可とするなら基準は何か
  3. 仮設計画の自由度:足場に限定せず、ロープアクセス(無足場)やハイブリッドなど複数の方法で提案を受けられる書き方になっているか(ロープアクセス工法の基礎はロープアクセスドットコムで解説しています)

最後の3点目は、費用の面でも大きな差が出ます。後の章でご説明します。

確認⑤ 総会に上げる前の「絞り込み」の経過を、議事録に残しているか

修繕委員会が候補を3社に絞った、5社から2社に絞った、という場面は、ほぼ毎回の修繕委員会で訪れます。このとき、なぜその会社が残り、なぜ別の会社が外れたのかを、評価表と議事録に残してください。

評価表は、価格だけでなく、施工体制・過去実績・保証内容・近隣対応などを項目化し、各委員が独立して採点します。採点を持ち寄って集計すると、特定の声の大きい人に引っ張られにくくなります。

確認⑥ 修繕積立金の口座は、誰が、どう管理しているか

なりすましとは別の観点ですが、積立金を守るという意味で、口座の管理方法も確認しておきたい項目です。

マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則(国土交通省令)は、管理業者が修繕積立金等を管理する場合の方法を定めています。たとえば、保管口座等の印鑑や預金引出用のカード等は、原則として管理業者が管理してはならないとされています。また、管理業者は毎月、収支状況の書面を作成し、翌月末日までに管理者等へ交付する必要があります(出典:国土交通省「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則の一部を改正する省令」。平成21年公布、平成22年施行の改正の内容です)。

これはなりすまし対策とは別の、管理会社の積立金管理に関する規定ですが、管理組合側が理解しておくと、「毎月の収支報告を受け取っているか」「印鑑やカードの保管場所はどこか」という確認の根拠になります。細かい運用は、管理規約や管理委託契約書の内容によって異なりますので、不明な点は、マンション管理士などの専門家にご確認ください。

確認⑦ 外部の専門家(マンション管理士など)に、第三者の目で入ってもらっているか

横浜市のページも、マンション管理士などの専門家を活用する方法を挙げています。中立的な立場の専門家が入ることで、仕様書・見積書・契約書を、利害のない目でチェックできます。

ただし、専門家を選ぶ際にも、先ほどの確認③と同じ考え方が当てはまります。「施工会社からの紹介」で入ってきた専門家は、中立性が確保されているのか。報酬は誰が支払うのか。管理組合が直接契約し、管理組合が報酬を支払う形が、シンプルで分かりやすいと私は考えています。


現場の目線から:「入口」の透明性がいちばん効く

ここで、私自身の考えを少し述べさせてください。

私は20年以上、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕に携わってきました。理事長さまや修繕委員の皆さまとお話しする中で、いつも感じることがあります。それは、不正を完全に防ぐ魔法の仕組みはない一方で、入口を透明にすれば、大半のトラブルは起きにくくなるということです。

たとえば、次のような運用が、小さな手間で大きな効果を生みます。

  • 修繕委員会の議事録を、全区分所有者が閲覧できるようにする
  • 見積りの比較表(金額と内訳)を、総会前に全戸へ配布する
  • 外部専門家への報酬を、管理組合が直接支払う
  • 業者との打ち合わせは、原則として複数名の委員が同席する

施工会社の立場から正直に申し上げると、誠実な会社ほど、透明な発注を歓迎します。仕様が揃い、評価基準が公開されていれば、自社の技術と価格で勝負できるからです。逆に、非公開・少人数・急かすという進め方は、どんな工事でも、立ち止まって確認するサインだと私は思っています。


方式によって変わるリスク:設計監理方式と責任施工方式

大規模修繕の発注方式には、大きく分けて2つあります。どちらにもメリットがあり、どちらが優れているとは一概に言えません。リスクの現れ方が違う、という整理が実務的です。

方式 概要 利点 注意したい点
設計監理方式 設計コンサルタントが調査・仕様書作成・工事監理を行い、施工会社は見積りで競う 仕様が揃い、比較しやすい。第三者による工事監理が働く コンサルタント自身の中立性が決定的に重要。報酬の発生源を確認する
責任施工方式 施工会社が調査・提案・施工まで一括で担う 窓口が一本化され、判断が早い 比較の「ものさし」が各社バラバラになりやすい。第三者の目を意識して入れる必要がある

上の事案の報道は、設計コンサルタントの選定に影響を与えようとした、というものでした。設計監理方式では、コンサルタントの選定そのものが利益相反のチェックポイントになります。責任施工方式を選ぶ場合は、複数社から提案を受け、外部専門家に比較をお願いする形が、バランスのよい運用です。

どちらを選ぶにしても、選んだ理由を総会の資料に書くことが大切です。理由が書かれていれば、あとから経過を検証できます。


仮設の選択肢を開く:足場だけが正解ではない

なりすましや利益誘導を防ぐうえで、見落とされがちなのが、仮設計画の選択肢です。

大規模修繕の見積りでは、仮設費(足場など)が、工事費の中で大きな割合を占めることがあります。仕様書が「足場架設」だけを前提に書かれていると、ロープアクセスなど他の工法で提案したい会社は、そもそも土俵に上がれません。結果として、競争が働きにくくなります。

明誠は、通常の足場工法、ロープアクセス工法(無足場)、足場とロープアクセスを部位ごとに組み合わせるハイブリッド工法の3つから、建物に応じて最適な方法をご提案しています。ロープアクセス工法の一般的な特徴や安全の考え方は、姉妹サイトロープアクセスドットコムにも詳しくまとめています。

たとえば、明誠の参考試算では、10階建て・外周80mの建物で、足場が168万円に対し、ロープアクセスは59万円という例があります(建物の形状や工事内容によって大きく変わり、足場が合理的なケースもあります)。また、安全面では、メインロープとバックアップロープの2本、2点以上の吊元を基本としており、明誠の社内集計では、約6,000棟の施工で16年間、労働災害ゼロです(明誠社内集計)。

ここで申し上げたいのは、自社の工法を選んでほしいということではありません。複数の工法で提案を受けられる仕様書にしておくと、価格と品質の競争が働きやすくなる、という点です。工法の違いは、ロープアクセス工法のご案内やコストを抑える考え方のページでも解説しています。ドローンによる外壁調査との組み合わせは、ドローン調査のページをご覧ください。

オーナーさま・組合さま向けの具体的なご案内は、分譲マンション管理組合さま向けのページ、ビルオーナーさま向けのページにまとめています。


よくある質問(FAQ)

Q. なりすましは、本当に起きているのですか?

A. 首都圏のマンションで、施工会社の社員が区分所有者になりすまして修繕委員会に参加していたとされる事案が報じられています(2025年5月の事案。現代ビジネス、秋田魁新報などの報道)。横浜市も、役員へのなりすまし事件が発生しているとして、注意喚起を公開しています。事実関係は報道ベースの情報ですので、詳細は各報道をご確認ください。

Q. 国は、役員の本人確認を義務化したのですか?

A. 義務化ではありません。令和7年10月17日の標準管理規約の改正で、役員候補者の本人確認を適切に行うことが有効、とするコメントが示されました。標準管理規約はひな型であり、各マンションが自分たちの規約に取り入れるかどうかを決めます(出典:国土交通省、秋田魁新報)。

Q. 本人確認では、どんな書類を使えばよいですか?

A. 国土交通省の改正資料では、顔写真付きの身分証明書の提示を求める方法が例示されています。例として、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートが挙げられています。個人情報の取り扱いには注意が必要ですので、書類の写しを保管するのか、目視確認だけにするのかは、細則で明確にしておくことをおすすめします。

Q. 賃貸に出している住戸の所有者が、代理で委員になる場合は?

A. 規約に代理出席や代理人の資格に関する定めがあるかを確認します。定めがない、あるいはあいまいな場合は、委任状の様式や、代理人の本人確認の方法を細則で補うことが考えられます。具体的な扱いは、管理規約の内容によって異なりますので、マンション管理士や弁護士にご相談ください。

Q. 設計コンサルタントと施工会社の関係は、どう調べればよいですか?

A. 候補者に、資本関係・人的関係・紹介料の有無を書面で回答してもらう方法があります。回答の内容に不明点があれば、追加の質問をしても構いません。確認の目的は、疑うことではなく、全社に同じ条件で確認することです。

Q. 小規模なマンションでも、同じ対策が必要ですか?

A. 規模に応じた運用で構いません。小規模なマンションでは、住民同士の顔が見えやすい利点があります。それでも、修繕委員会に外部の方が入る場合や、設計コンサルタントを選ぶ場合には、確認項目の②③を取り入れることをおすすめします。

Q. 明誠は、こうした確認に協力してもらえますか?

A. 明誠は、見積りの前提となる仕様や数量の考え方を、できる限り分かりやすくご説明します。複数社の見積りを並べて比較する場面でも、見積書の読み方をお伝えできます。無料のご相談は、お問い合わせフォームから承っています。


この記事のポイントまとめ

  • 首都圏のマンションで、施工会社の社員が区分所有者になりすまして修繕委員会に参加していたとされる事案が報じられている(2025年5月の事案)
  • 国土交通省は令和7年10月17日に標準管理規約を改正し、役員候補者の本人確認を有効な対策として示した(顔写真付き身分証の提示など)
  • 標準管理規約に強制力はなく、各マンションの規約・細則への反映が必要。区分所有法の改正は令和8年4月に施行されており、規約見直しの好機
  • 横浜市は、住民同士の交流、本人確認、専門家の活用、委員間の情報共有の4点を挙げている
  • 確認したいのは7項目:①委員名簿 ②公募委員の本人確認 ③設計コンサルの利益相反 ④仕様書 ⑤絞り込みの記録 ⑥積立金口座 ⑦第三者の専門家
  • 仕様書を足場に限定せず、複数の工法で提案を受けられる形にすると、競争が働きやすくなる

出典・参考資料

※本記事は、国土交通省・横浜市の公表資料と報道の範囲に基づいています。報道内容は事実関係が確定したものとは限らず、個別の事案について断定するものではありません。法令・規約の解釈や、個別のマンションでの運用は、管理規約の内容により異なりますので、マンション管理士・弁護士等の専門家にご確認ください。費用・工期は一般的な目安・参考値であり、実際は建物の状況により異なります。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

ニュースを読んで、「うちの委員会は大丈夫だろうか」と不安になる理事長さまのお気持ちは、私もよく分かります。ただ、不安を減らす近道は、誰かを疑うことではなく、全員に同じルールで確認する仕組みを先に作ることです。委員名簿の整理、仕様書の見直し、見積書の読み方など、ご相談だけでも、お問い合わせフォームからお声がけください。現場で20年見てきた者として、できる限り分かりやすくお答えします。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年11月5日


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