本間社長ブログ
長期修繕計画にない工事に要注意|会計検査院が橋・トンネル修繕で補助対象外149億円を指摘、マンション管理組合が大規模修繕で学ぶべき5つの教訓【2026年10月】
目次
- この記事で分かること
- 何が起きた?会計検査院が指摘した「補助対象外149億円」を整理する
- そもそも道路メンテナンス事業補助制度は「計画に基づく修繕」を支援する制度
- マンションの長期修繕計画も構造は同じ|管理組合にとって「対岸の火事」でない理由
- 教訓① 「足場があるうちに、ついでに」は本当に得か
- 教訓② 優先順位を崩すと、本当に急ぐ修繕が遅れる
- 教訓③ 補助金・税制の要件は「契約前」に確認する
- 教訓④ 計画の外の工事をするなら、総会で「理由」を残す
- 教訓⑤ 工法は「比べて」から決める
- 想定ケースで考える|築28年・50戸・延床4,000㎡のマンション
- 管理組合・オーナーが今月からできるチェックリスト
- 注意点|この記事の読み方について
- 私が管理組合の皆さまに伝えたいこと
- よくある質問(FAQ)
- この記事のポイントまとめ
- 出典・参考資料

-
著作者プロフィール
株式会社明誠 代表取締役
本間 幸紘
大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。
この記事で分かること
「足場を組んでいるうちに、ついでにここも直しておきましょう」——大規模修繕の現場で、私が何度も耳にしてきた言葉です。合理的に聞こえますが、その「ついで」が積立金を少しずつ削り、本当に急ぐべき修繕を後回しにしてしまうことがあります。
この記事では、次の問いにお答えします。会計検査院が指摘した「計画にない修繕工事への補助金149億円」から、マンション管理組合や収益マンションのオーナーは、長期修繕計画と大規模修繕の進め方について何を学べるのか?
きっかけは、2026年10月6日に報じられた会計検査院の抽出調査です。国土交通省の「道路メンテナンス事業補助制度」を使った橋やトンネルの修繕で、本来は補助の対象にならない工事の契約が、15府県の88自治体で計469件、補助金相当額で約149億円あったと報じられました(出典:東京新聞(共同通信)2026年10月6日、日本経済新聞 2026年10月6日)。
私は株式会社明誠の本間と申します。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。足場を組む工事も、足場を使わないロープアクセス工法(無足場工法)も、両方を現場で経験しています。
結論を先に書きます。今回の問題の核心は「点検の結果を踏まえた計画に載っていない工事」に、計画のためのお金が流れたことです。これはマンションの長期修繕計画と修繕積立金にもそのまま当てはまります。 管理組合が守るべきことは、①点検→計画→工事の順番を崩さない、②「ついで工事」は理由と金額を見える化する、③補助金・税制の要件は契約前に確認する、④工法は比べてから決める、の4点に集約できると私は考えています。
なお、本記事で紹介する会計検査院の指摘内容は、2026年10月9日時点の報道に基づいています。報道によって数字の切り方が異なる部分があるため、詳細は今後公表される会計検査院の資料でご確認ください。
2026年10月9日 更新
何が起きた?会計検査院が指摘した「補助対象外149億円」を整理する
報道で分かっている数字
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 対象の補助制度 | 国土交通省「道路メンテナンス事業補助制度」 | 共同通信・日経 |
| 調査した契約 | 2023〜2024年度に16府県・416市町村が契約した修繕工事の補助金 約1,027億円 | 時事通信 |
| 補助対象外とされた契約 | 15府県の88自治体で計469件 | 共同通信・日経 |
| 補助金相当額 | 約149億円 | 共同通信・日経 |
| 国交省の対応 | 2026年8月に補助対象を明確にする事務連絡を出したと説明 | 報道各社 |
(出典:時事ドットコム 2026年10月6日、東京新聞(共同通信)、日本経済新聞)
調べた補助金約1,027億円のうち約149億円ですから、およそ7分の1が「対象外」と指摘された計算になります。調査した自治体の約2割で、こうした事例が見つかったと報じられています。
問題になった工事の3つの型
日本経済新聞の報道によると、指摘の中身は大きく分けて次のとおりです(自治体・契約の一部は重複します)。
- 長寿命化修繕計画に記載のない修繕を補助対象にしていた:61自治体・286件
- 定期点検の結果を踏まえていない橋の耐震補強工事を補助対象にしていた
- トンネル内の照明のLED化を補助対象にしていた(2と3を合わせて38自治体・201件)
時事通信は、カ所数ベースで「計画にない修繕工事が314カ所、対象外の耐震補強工事が160カ所、LED化が47カ所」と伝えています。
誤解のないように書いておきます。耐震補強やLED化そのものが悪い工事だ、という話ではありません。問題は、「点検で傷みが見つかった構造物を、計画に沿って直す」ための補助金が、別の目的の工事に使われていたことです。
なぜ起きたのか——予算の余りと周知の不足
原因として報道で挙げられているのは、次の2点です。
- 予算が余り、自治体が予定になかった工事を行った
- 国交省が補助の対象を自治体に明確に周知していなかった
また、制度の要綱では補助金の申請時に修繕計画の提出を求めていなかった、とも報じられています。さらに自治体側(秋田県道路課)からは、足場の組み立てなどを同時に行った方が工事がスムーズになる、という趣旨の説明もあったと伝えられています(出典:読売新聞オンライン(Yahoo!ニュース配信)2026年10月6日)。
この「足場があるうちに、まとめてやった方が効率的」という考え方。マンションの大規模修繕に携わる方なら、どこかで聞いたことがあるはずです。後ほど詳しく取り上げます。
そもそも道路メンテナンス事業補助制度は「計画に基づく修繕」を支援する制度
点検→計画→工事の順番が制度の前提
国土交通省関東地方整備局の資料では、この補助制度の対象を「道路の点検結果を踏まえ策定される長寿命化修繕計画に基づき実施される道路メンテナンス事業」と定めています。対象は橋梁・トンネル・道路附属物等で、対象事業は修繕・更新・撤去です(出典:国土交通省関東地方整備局「道路メンテナンス事業補助制度」)。
同じ資料には、長寿命化修繕計画(個別施設計画)に書くべき項目として、施設名・判定区分・点検や修繕の実施年度・修繕内容・対策費用などが並んでいます。つまり、
- 定期点検で傷みを見つける
- 判定区分(どのくらい急ぐか)を付ける
- いつ・何を・いくらで直すかを計画に書く
- 計画に沿って工事をする
という順番が、制度の土台になっているわけです。今回の指摘は、この順番の「3」を飛ばして「4」にお金が流れたものだと私は受け止めています。
「従来工法だけでなく新技術も比べる」ことも要件に
もう一つ注目したのは、令和3年4月の要綱改正で新技術等の活用の検討が補助要件に加わったことです。修繕・更新・撤去の事業では、費用の縮減や効率化のために「従来工法のみでなく新工法や新材料などの新技術等を加えた比較検討」を行うことが求められています(出典:同上 関東地方整備局資料)。
公共インフラでは「一つの工法に決め打ちせず、比べてから決める」ことが、すでにルールになっているのです。
横浜市の橋梁計画には「ロープアクセス点検」も登場
同じ資料には、長寿命化修繕計画の記載事例として横浜市の橋梁計画が紹介されています。そこでは、1巡目の点検でロープアクセスにより点検した30橋について新技術の活用を検討し、点検費用を300万円縮減するという目標が書かれています。
道路の橋でも、足場や高所作業車が使いにくい場所ではロープアクセスが点検手段の一つとして使われ、その先の効率化まで計画に書き込まれている。現場の人間として、心強く感じる記述でした。ロープアクセスの技術的な基礎や安全の考え方は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。
マンションの長期修繕計画も構造は同じ|管理組合にとって「対岸の火事」でない理由
長期修繕計画作成ガイドライン(令和3年9月・令和6年6月改定)のポイント
マンションには、道路の長寿命化修繕計画にあたるものとして「長期修繕計画」があります。国土交通省は令和3年9月に「長期修繕計画作成ガイドライン」を改定し、既存マンションの計画期間を大規模修繕工事2回を含む30年以上としました(出典:国土交通省 報道発表資料)。さらに令和6年6月7日には、段階増額積立方式の考え方を「長期修繕計画作成ガイドライン」と「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」に反映しています(出典:国土交通省 報道発表資料(PDF))。
| 項目 | 主な内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 計画期間 | 既存マンションも、大規模修繕工事2回を含む30年以上(従来は25年以上) | 国交省 報道発表 |
| 段階増額積立方式 | 初期額は均等積立方式の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内が目安 | 国交省 報道発表資料(PDF) |
| 修繕積立金の目安 | 例:20階未満・延床面積5,000㎡未満の平均は専有床面積1㎡あたり月額335円 | 修繕積立金ガイドライン |
| 管理計画認定の基準 | 計画期間30年以上、残存期間内に大規模修繕工事を2回以上含むこと等 | 管理計画認定に関する事務ガイドライン |
道路の計画と同じく、マンションの長期修繕計画も「劣化診断の結果を踏まえて、いつ・どこを・いくらで直すか」を書く設計図です。
修繕積立金は「計画」の裏付けで集めたお金
ここが一番大切な点です。修繕積立金の月額は、長期修繕計画に載っている工事の費用を、区分所有者みんなで少しずつ積み立てるために決められています。言い換えると、修繕積立金は「計画の工事をするため」に集めたお金です。
道路の補助金が「計画に基づく修繕」のために用意されていたのと、構造はよく似ています。計画にない工事にお金を回せば、計画にある工事の財源がその分減る。それが、会計検査院が指摘した問題の本質であり、マンションでも起こり得ることです。
(用語補足:長期修繕計画=30年程度先までの修繕工事の時期と費用の予定表。劣化診断=外壁や防水、設備の傷み具合を専門家が調べること。)
教訓① 「足場があるうちに、ついでに」は本当に得か
足場の同時施工には、確かに合理性がある
まず公平に書きます。足場を組む工事では、足場の費用が工事全体の中で大きな割合を占めます。私の見積実務の目安では、30戸規模のマンションの大規模修繕で総工費3,500万〜5,000万円のうち、仮設足場が15〜25%程度になることがあります(物件の形状・階数・立地で大きく変わります)。
足場を一度払ってしまえば、次に外壁で何かするときにまた足場代がかかる。だから「組んでいるうちにまとめてやる」のは、多くの場合に理にかなった判断です。
それでも「ついで工事」が積立金を食う構造
問題は、その「ついで」が積み重なったときです。現場でよく見る例を挙げます。
- 計画では次回に予定していた鉄部塗装を、前倒しで今回に入れる
- 劣化診断で「当面問題なし」とされた部位まで、念のため交換する
- 共用部の照明や意匠の変更(グレードアップ)を、修繕工事の追加として入れる
一つひとつは数十万〜数百万円でも、合計すると数百万円から1,000万円を超えることがあります。しかも、これらが「修繕工事の一部」として一括で決議されると、本来の修繕と、ついでの改良工事の区別が区分所有者に見えにくくなります。
グレードアップ自体は悪いことではありません。資産価値を上げる改良工事は、私もむしろ積極的に提案します。大事なのは、「計画の修繕」と「計画外の改良」を分けて、それぞれ理由と金額を説明することです。
ロープアクセスなら「必要な時に、必要な場所だけ」を選びやすい
ここで、足場とロープアクセスの違いが効いてきます。ロープアクセス工法は、屋上などの堅固な支持点からメインロープとバックアップロープの2本に接続して作業員が下降し、外壁を直接補修する工法です。足場を組まないので、「次にまた足場代がかかるから今やっておく」というプレッシャーが小さくなります。
つまり、
- 急ぐ部位は、今回まとめて直す
- まだ急がない部位は、計画どおり次回に回す
- 途中で不具合が出たら、その場所だけロープアクセスで部分補修する
という、計画に忠実な進め方を取りやすいのです。明誠のロープアクセス工法の技術詳細はロープアクセス工法のご紹介でご覧いただけます。
ただし、ロープアクセスにも向き不向きがあります。広い面積を一度に塗り替える工事や、複雑な形状の建物では、足場の方が効率的な場合もあります。だから明誠では、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法を比べたうえでご提案しています。
教訓② 優先順位を崩すと、本当に急ぐ修繕が遅れる
会計検査院の懸念は「早期対応が必要な修繕の遅れ」
報道によると、会計検査院は、補助対象外の工事に補助金が使われると、早期の対応が必要な修繕が遅れるおそれがあると指摘しています。予算は有限です。計画にない工事に使えば、計画にある工事の順番が後ろにずれます。
私が現場で見てきた「順番の逆転」
私が20年の現場で何度も見てきたのは、こんなパターンです。前回の大規模修繕で、エントランスの改装や植栽の整備など目に見える部分に予算をかけた一方、屋上防水の更新は「まだもつだろう」と次回送りにしていた。
数年後、最上階の住戸で雨漏りが起き、調べると防水層の端部から雨水が回り込んで、下地のコンクリートまで傷んでいる。防水だけを予定どおり更新していれば済んだはずの工事に、下地の補修と室内の復旧が加わり、結果的に費用が膨らんでしまう——というものです。
私はいつも理事長さまに、「見た目の改良は後からでも取り返せますが、防水と外壁の劣化は放置すると工事の範囲が広がります」とお伝えしています。道路の橋でも、マンションでも、順番を守ることがいちばんの節約になります。
判定区分の考え方を、マンションにも
道路の点検では、構造物の状態を判定区分で整理し、急ぐものから計画に載せます。マンションの劣化診断でも、部位ごとに「すぐ直す」「次回の大規模修繕で直す」「経過観察」の3段階程度に分けてもらうと、理事会での議論がしやすくなります。
| 区分(例) | 状態の目安 | 長期修繕計画での扱い |
|---|---|---|
| A:すぐ直す | 漏水・タイルの浮き・鉄筋の露出など | 直近の工事で優先的に実施する |
| B:次回で直す | 塗膜の劣化・シーリングの硬化など | 計画どおりの時期に入れる |
| C:経過観察 | 軽微な汚れ・ヘアクラックなど | 点検で推移を見る |
(区分の名称と内容は、説明のための例です。実際は診断を行う専門家の基準に従ってください。)
教訓③ 補助金・税制の要件は「契約前」に確認する
公的な支援には「要件」がある
今回の問題は自治体と国の間の話ですが、マンションの管理組合が補助金や税制優遇を使う場面でも、同じことが言えます。要件に合わない工事をしてしまうと、後から「対象外」と言われても取り返しがつきません。
例:マンション長寿命化促進税制
代表例が「マンション長寿命化促進税制」です。横浜市の案内によると、主な要件は次のとおりです(出典:横浜市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減額」)。
- 令和5年4月1日から令和9年3月31日までに、長寿命化に資する大規模修繕工事が完了していること
- 外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべてを行うこと
- 今回の工事より前に、外壁塗装等・床防水・屋根防水の工事を1回以上すべて実施していること
- 新築から20年以上経過し、総戸数が10戸以上であること
- 専有部分の床面積の2分の1以上が居住用であること
- 管理計画の認定を受けている、または自治体の助言・指導を受けて長期修繕計画を見直した管理組合であること
- (管理計画認定マンションの場合)令和3年9月1日以降に、修繕積立金を管理計画の認定基準まで引き上げていること
- 工事完了から3か月以内に申告すること
減額の割合は自治体によって異なり、横浜市では工事完了の翌年度分の固定資産税(家屋、1戸あたり100㎡相当分まで)を2分の1減額としています。
注目してほしいのは、「外壁・床防水・屋根防水をすべて行う」という工事内容の要件です。たとえば「屋根防水は次回に回す」と決めた場合、この税制の対象から外れる可能性があります。工事範囲を決める段階で、税制の要件と照らし合わせておく必要があるのです。
自治体の助成も、要件は個別に違う
東京都や都内の区市、神奈川・埼玉・千葉の各自治体にも、マンションの劣化診断や長期修繕計画の作成、改修工事への助成制度があります。ただ、対象となる工事・申請の時期(多くは工事の契約前)・予算枠は自治体ごとに異なります。年度によって内容が変わることも多いので、令和8年度の最新の要綱を、各自治体の公式ページで確認してください。
私の経験上、もったいないのは「工事が終わってから助成制度を知った」というケースです。契約の前に、理事会で一度「使える制度はないか」を確認するだけで、結果が変わることがあります。
教訓④ 計画の外の工事をするなら、総会で「理由」を残す
計画外の工事が「悪」なのではない
長期修繕計画は予定表です。実際の建物は計画どおりに傷むとは限りません。点検で想定外の劣化が見つかれば、計画を前倒しして直すべき場面もあります。逆に、想定より状態が良ければ先送りできることもあります。
大切なのは、計画から外れるときに、その理由と金額を記録に残すことです。道路の補助制度でも、計画の策定・更新そのものが事業に含まれています。マンションも同じで、工事の前に長期修繕計画を見直し、その内容を総会で確認する流れをつくっておくと、後から説明に困りません。
総会資料に入れておきたい3点
私が管理組合の皆さまにおすすめしているのは、総会の議案書に次の3点を明記することです。
- 計画どおりの工事:長期修繕計画のどの項目に当たるか
- 計画を前倒し・追加する工事:どの診断結果を根拠に、なぜ今やるのか
- 改良工事(グレードアップ):修繕とは分けて、金額と効果を示す
こうしておけば、区分所有者の方も「何にいくら使うのか」を判断しやすくなります。公正取引委員会がマンション大規模修繕工事の談合で42社の独占禁止法違反を認定したと報じられたいま(出典:日経クロステック)、発注の透明性を高める意味でも有効だと考えています。
教訓⑤ 工法は「比べて」から決める
公共インフラが求める比較検討を、マンションでも
先ほど触れたとおり、道路メンテナンス事業補助制度では、従来工法だけでなく新技術を加えて比較することが補助要件になっています。マンションの大規模修繕でも、最初から「足場ありき」で見積りを取るのではなく、工法を比べるところから始めることをおすすめします。
3工法の比較
| 工法 | 向いている建物・工事 | 主なメリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 通常足場工法 | 中低層、全面塗装、複雑な形状 | 作業範囲が広く、全面工事に強い | 足場費がかかる。採光・防犯面の負担 |
| ロープアクセス工法(無足場) | 高層、部分補修、調査、足場が組みにくい立地 | 仮設費と工期を抑えやすい。居住者の負担が小さい | 大面積の一括塗装は工期が延びる場合あり |
| ハイブリッド工法 | 面ごとに条件が違う大規模・複雑な建物 | 部位ごとに最適な方法を選べる | 計画と工程管理の力量が必要 |
部位ごとの単価の目安
参考として、明誠の見積実務での目安を示します。実際の金額は建物の規模・劣化の状態・立地で大きく変わりますので、あくまで目安としてご覧ください。
| 工事項目 | 単価の目安 |
|---|---|
| 外壁塗装 | 3,500〜4,500円/㎡ |
| 外壁打診調査 | 250〜500円/㎡ |
| 防水工事 | 5,000〜8,000円/㎡ |
足場・ロープアクセス・ハイブリッドで見積りを並べると、仮設費の差だけでなく、工期や居住者への影響まで比べられます。明誠の大規模修繕の料金の考え方は料金についてにまとめています。
想定ケースで考える|築28年・50戸・延床4,000㎡のマンション
数字で考えてみます。以下は説明のための想定です。
想定する建物
- RC造8階建て、50戸、延床面積4,000㎡、築28年
- 総専有床面積は3,000㎡(50戸×平均60㎡)と仮定
- 修繕積立金は国のガイドラインの平均(20階未満・延床5,000㎡未満の区分で専有1㎡あたり月額335円)と同水準と仮定 → 月約100万円、年約1,206万円(335円×3,000㎡)
「ついで工事」を足すと何が起きるか
2回目の大規模修繕で、計画外の「ついで工事」を300万円分追加したとします。300万円は、このマンションの修繕積立金の約3か月分です(300万円÷約100万円)。
一見小さく見えますが、同じことを毎回の工事で繰り返せば、30年の計画期間のうちに積立金の不足が生じ、一時金の徴収や積立金の値上げにつながる可能性があります。
計画に忠実に進めた場合
一方で、劣化診断をもとに次のように整理したとします。
- A区分(すぐ直す):屋上防水・外壁のタイル浮き補修 → 今回実施
- B区分(次回で直す):一部の鉄部塗装 → 計画どおり次回
- 改良工事:共用部の照明更新 → 修繕とは別議案で、効果(電気代の削減など)を示して決議
さらに、外壁の部分補修が中心の面にはロープアクセスを使い、全面塗装が必要な面だけ足場を組むハイブリッドにすれば、仮設費を抑えられる場合があります。どの程度抑えられるかは建物次第ですが、こうした比較を見積りの段階で行うことが、積立金を守る第一歩です。
管理組合・オーナーが今月からできるチェックリスト
- 長期修繕計画の最終見直し日を確認する(国の長期修繕計画作成ガイドラインでは5年程度ごとの見直しが示されています。国交省 報道発表)
- 直近の劣化診断の結果を、計画に反映しているか確認する
- 次回の大規模修繕の工事項目を、「計画どおり」「前倒し・追加」「改良」に色分けする
- 使えそうな補助金・税制を、契約前にリストアップする(自治体の公式ページで令和8年度の要綱を確認)
- 工法を比較した見積りを依頼する(足場・ロープアクセス・ハイブリッド)
- 総会資料に、計画外工事の理由と金額を明記する
管理組合向けの明誠のサービスは管理組合さま向けページで紹介しています。賃貸マンションのオーナーさまも、考え方は同じです。
注意点|この記事の読み方について
注意点①:会計検査院の数字は報道ベース
本記事の149億円・469件などの数字は、2026年10月6日の各社報道に基づいています。報道によって、件数を「契約」で数えるか「カ所」で数えるかが異なります。正確な内容は、会計検査院の公表資料で確認してください。
注意点②:「計画外の工事=悪」ではない
想定外の劣化が見つかれば、計画を前倒しすることは正しい判断です。問題は、理由と金額が説明されないまま計画外の工事が積み重なることです。
注意点③:税制・助成の要件は自治体ごとに異なる
マンション長寿命化促進税制の減額割合や、自治体の助成の内容は地域で異なります。適用の可否は、各自治体の税務・住宅担当窓口でご確認ください。
注意点④:単価は目安
本記事の単価や費用は、明誠の見積実務での目安や説明のための想定です。実際の金額は現地調査のうえでお見積りします。
私が管理組合の皆さまに伝えたいこと
正直に申し上げます。大規模修繕の見積書は、工事項目が多く、どれが計画どおりで、どれが「ついで」なのか、専門家でないと見分けにくい作りになっていることがあります。
私は、管理組合さまやオーナーさまに「全部やりましょう」とお勧めすることはしません。点検の結果を見て、急ぐものから順番に、そして足場・ロープアクセス・ハイブリッドのどれが建物に合うかを比べて、必要な分だけを提案する。それが、修繕積立金という皆さまの大切なお金を預かる者の責任だと考えています。
明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害ゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練、ISO9001の品質マネジメントのもとで、安全と品質を両立させています。明誠の安全管理の取り組みは安全管理についてをご覧ください。これまでの施工は明誠の施工事例でご紹介しています。
ロープアクセスの技術情報や業界の動きは、姉妹サイトロープアクセスドットコムでも発信しています。工法の詳しい比較を知りたい方は、あわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 会計検査院は何を指摘したのですか?
A. 報道によると、国土交通省の道路メンテナンス事業補助制度で、長寿命化修繕計画に記載のない修繕や、点検結果を踏まえない耐震補強、トンネル照明のLED化などが補助対象とされていた契約が、88自治体で計469件、補助金相当額で約149億円あったと指摘しました。
Q2. マンションの管理組合に関係があるのですか?
A. 直接の関係はありませんが、構造はよく似ています。マンションの修繕積立金も長期修繕計画の工事のために集めたお金で、計画にない工事に回すと、計画にある工事の財源が減ります。
Q3. 「足場があるうちに、ついでに直す」のはダメなのですか?
A. ダメではありません。足場を使う工事では、まとめて行う方が合理的な場合も多くあります。大切なのは、計画どおりの修繕と、計画外の追加・改良を分けて、理由と金額を区分所有者に示すことです。
Q4. 長期修繕計画は、どのくらいの頻度で見直せばよいですか?
A. 国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、5年程度ごとに長期修繕計画を見直すことが示されています(国交省 報道発表)。計画期間は、既存マンションも大規模修繕工事2回を含む30年以上とされています(国交省 報道発表)。
Q5. マンション長寿命化促進税制を使うには何が必要ですか?
A. 主な要件は、令和9年3月31日までの工事完了、外壁塗装等・床防水・屋根防水のすべての実施、築20年以上・10戸以上、管理計画認定などです。詳細と減額割合は自治体ごとに異なるため、所在地の自治体でご確認ください。
Q6. ロープアクセス工法の見積りや調査をお願いすると、費用はかかりますか?
A. 明誠では、建物の現地調査と概算のお見積りを無料で承っています。足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法を比べたうえでご提案します。お問い合わせフォームからご相談ください。
この記事のポイントまとめ
- 会計検査院の調査で、橋・トンネル修繕の補助金のうち約149億円(88自治体・469件)が補助対象外と報じられた
- 主な原因は「長寿命化修繕計画にない工事」「点検結果を踏まえない工事」への支出
- マンションの修繕積立金も、長期修繕計画の工事のために集めたお金で、構造は同じ
- 「ついで工事」は、計画どおりの修繕と分けて理由と金額を見える化する
- 補助金・税制の要件は契約前に確認し、工法は足場・ロープアクセス・ハイブリッドを比べてから決める
出典・参考資料
- 東京新聞(共同通信)「補助対象外工事に149億円 自治体の2割、トンネルや橋修繕」(2026年10月6日)
- 日本経済新聞「道路補修の補助対象外工事に149億円 検査院調査、自治体2割で判明」(2026年10月6日)
- 時事ドットコム「橋やトンネル修繕補助金を目的外使用 照明LED化などに149億円―検査院」(2026年10月6日)
- 国土交通省関東地方整備局「道路メンテナンス事業補助制度」
- 国土交通省「『長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント』及び『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』の見直しについて」(令和3年9月28日)
- 国土交通省「『長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント』及び『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』の改定について」(令和6年6月7日)
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)
- 国土交通省「マンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン」
- 横浜市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減額」
- 日経クロステック「マンション修繕談合に独禁法違反認定、有力企業含む42社 国交省が対策へ」
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
計画を守ることは、地味ですが、いちばん確実に修繕積立金を守る方法です。次の大規模修繕の前に、長期修繕計画と見積書を一度見比べてみてください。現地調査と概算のお見積りは無料で承っています。お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年10月9日
関連記事(姉妹サイト)
ロープアクセス工法の詳細や実例については、姉妹サイト「ロープアクセスドットコム」の以下の記事もぜひご覧ください。
本間社長の著書のご案内
『大規模修繕工事 職人だから言える本当の話 —— 見積書では見えない業界の裏側と、修繕積立金を守る発注術』(Kindle版)を出版しています。20年以上の現場経験から、管理組合・オーナーが修繕積立金を守るための発注術と、業界の内幕を書き下ろしました。

