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築60年超のマンション、建替えも改修も合意できず「敷地売却」の検討へ|国交省の長寿命化モデル事業で令和8年度第2回に8件採択、うち7件が東京・神奈川。建替えが難しくなる時代に、首都圏の管理組合・オーナーが今の大規模修繕で守りたい7項目【2026年10月】

築60年超のマンション、建替えも改修も合意できず「敷地売却」の検討へ|国交省の長寿命化モデル事業で令和8年度第2回に8件採択、うち7件が東京・神奈川。建替えが難しくなる時代に、首都圏の管理組合・オーナーが今の大規模修繕で守りたい7項目【2026年10月】
本間 幸紘

著作者プロフィール

株式会社明誠 代表取締役

本間 幸紘

大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。

この記事で分かること

「うちのマンションは、あと何年もつのだろう。最後は建替えればいいのだろうか?」——この記事は、東京・神奈川・埼玉・千葉など首都圏の管理組合の役員の方、賃貸マンションやビルのオーナーの方から、私がいちばんよく受ける問いに答えるために書きました。

2026年9月14日、国土交通省は「マンションストック長寿命化等モデル事業」の令和8年度第2回の採択結果を公表しました。11件の応募から8件が採択され、そのうち7件が東京都と神奈川県のマンションです。そして2026年10月、住宅産業新聞がこの採択の中から、神奈川県の1965年築・24戸のマンションが「建替えも改修も合意に至らず、敷地売却制度の活用を検討するに至った」例を取り上げました(出典は次の章で紹介します)。

結論から申し上げます。建替えは「最後の切り札」として、いつでも使える選択肢ではなくなりつつあります。工事費の高騰で、デベロッパーの協力が得られない、事業規模を縮小せざるを得ない、といった事例が、国の資料にも見られます。だからこそ、首都圏のマンションやビルにとっては、今の大規模修繕で建物を長くもたせること(長寿命化)の価値が、これまで以上に大きくなっています。

この記事では、採択された8件から読み取れる「老朽化マンションの共通課題」、改正マンション関係法で何が変わったか、そして首都圏の管理組合・オーナーが次の大規模修繕で確かめたい7項目を、順を追って整理します。

最終更新:2026年10月31日


2026年9月、国交省が「長寿命化モデル事業」の採択8件を公表

まず、公表された事実関係を整理します。

項目 内容 出典
公表日 令和8年(2026年)9月14日 国土交通省 報道発表
事業名 マンションストック長寿命化等モデル事業(令和8年度第2回) 同上
提案受付期間 令和8年6月22日〜6月26日 同上
応募・採択 11者11件の応募、評価委員会の評価を踏まえ8者8件を採択 同上
採択の内訳 先導的再生モデルタイプの計画支援5件、建替工事支援3件 国土交通省 別添2「採択プロジェクト一覧」
所在地 東京都5件、神奈川県2件、大阪府1件 同上
次回 令和8年度第3回の応募期間は9月14日〜9月18日(受付終了) 国土交通省 報道発表

国土交通省は報道発表の中で、「今後、急増する高経年マンションについて、老朽化マンションの再生検討や長寿命化に資する先導的な再生プロジェクトへの支援を行っています」と説明しています(出典:国土交通省「『マンションストック長寿命化等モデル事業』の令和8年度第2回採択プロジェクトを決定しました!」(令和8年9月14日))。

この事業は、マンション再生コンサルタントや設計事務所、施工会社などが、特定のマンションの再生や長寿命化の取組を提案し、国が先導的なモデルとして費用の一部を補助するものです。個々の管理組合が直接申し込む補助金とは性格が異なりますが、採択事例の一覧は、いま日本の老朽化マンションが何に困っているかを知る、もっとも具体的な資料の一つです。

補助の中身(令和8年度の概要)

国土交通省の別添資料によると、補助の概要は次のとおりです。

支援の種類 主な補助事業者 補助の内容
計画支援(事業前の立ち上げ準備段階) マンション再生コンサル、設計事務所、管理会社 等 定額。原則上限500万円/年(最大3年)。評価委員会が必要と認める場合は1事業あたり1,500万円を上限に、500万円/年を超えて補助を受けられる
工事支援(長寿命化の改修工事等の実施段階) 施工業者、買取再販業者 等 補助率1/3

出典:国土交通省 別添1「マンションストック長寿命化等モデル事業の概要」(PDF)

同じ資料では、「優先募集枠」として、自主建替えの検討、超高層マンションにおける給排水管設備改修や防災設備改修の検討、団地型マンションの敷地分割事業の検討などが挙げられています。国が「建替え一択」ではなく、改修・設備更新・敷地の分け方まで含めて再生の道を探していることが読み取れます。


1965年築・24戸のマンションは、なぜ「敷地売却」に進んだのか

住宅産業新聞は2026年10月、この採択の中から「かみさく住宅1号棟」(神奈川県、地上4階建て・24戸、1965年竣工)を取り上げました。記事によると、このマンションには老朽化・耐震性不足・既存不適格・敷地の一部が土砂災害警戒区域に指定されている、といった課題があり、建替え等検討委員会を組成して建替えや改修の比較・検討を重ねたものの、いずれも合意形成されず、最終的に改正マンション関係法に基づく敷地売却制度の活用検討に至ったとしています(出典:住宅産業新聞「国土交通省住宅局、『2026年度第2回マンションストック長寿命化等モデル事業』の採択事業を発表」(2026年10月29日))。

国土交通省の採択プロジェクト一覧では、この提案について「合意形成や事業費の課題から実現に至らず」と書かれ、マンションの敷地と建物を現況のままデベロッパーへ一括売却し、地域価値の向上にもつながる住宅地開発を目指した合意形成の推進・支援を行う、と説明されています(出典:国土交通省 別添2「採択プロジェクト一覧」(PDF))。

ここで私が注目したいのは、「建替えも改修も、どちらも合意できなかった」という一点です。

建替えには多額の費用がかかります。改修にも費用がかかります。どちらを選んでも区分所有者の負担が生じ、高齢の方や資金に余裕のない方ほど賛成しにくくなります。その結果、話し合いを重ねても決まらないまま年数が過ぎ、建物はさらに古くなる——この流れは、首都圏の築40年、50年を超えるマンションで、私が現場で何度も見てきたものです。

敷地売却は、建物を手放して区分所有関係を終わらせる選択です。住み慣れた場所を離れる方も出てきます。この選択肢が国のモデル事業の対象になったこと自体が、老朽化マンションの再生がどれほど難しい段階に入っているかを物語っています。


採択8件に共通する「老朽化マンションの5つの課題」

国土交通省の採択プロジェクト一覧から、首都圏の7件を中心に、各マンションが抱える課題を整理しました。

No. マンション(所在地) 築年・規模 一覧に記載された主な課題
1 多摩川住宅ト号棟(東京都) 1971年築、12棟326戸 耐震性不足、高齢化、EV未設置、スラブ下配管、漏水事故の多発、埋設管の腐食。工事費高騰等でデベロッパーの協力が得られず、事業規模の縮小が必要
2 かみさく住宅1号棟(神奈川県) 1965年築、24戸 老朽化、耐震性不足、既存不適格、敷地の一部が土砂災害警戒区域
3 キャッスル共進(東京都) 1971年築、住宅156戸+店舗18区画 耐震性能不足、設備配管の老朽化、断熱性能不足、廊下と玄関の段差
4 杉並コーポラス(東京都) 1971年築、41戸 設備配管の腐食、漏水事故の多発、EV部品供給の終了。管理組合・管理規約・長期修繕計画がなく、修繕積立金の定めがない
5 亀戸2丁目団地(東京都) 1969年築、4棟620戸 高齢化、漏水事故の多発、耐震性不足、老朽化。建築費高騰の中で事業性の確保が課題
6 鷺沼コーナス(神奈川県) 1976年築、20戸 雨水浸入、結露、給排水設備の不具合、EVなし。建築費高騰で当初の建替え方式が困難に
7 烏山北住宅(東京都) 1965年築、9棟300戸 9棟中5棟が耐震性能不足、設備配管の劣化による破断や漏水、権利者の高齢化、EVなし

出典:国土交通省 別添2「採択プロジェクト一覧」(PDF)。このほか大阪府の用途複合マンション1件が採択されています。

この表を眺めると、課題は大きく5つにまとまります。

  1. 漏水・雨水浸入:「漏水事故の多発」が3件、「漏水の発生」が1件、「雨水浸入」が1件
  2. 設備配管の劣化:配管の腐食・劣化・破断が多くの案件に共通
  3. 耐震性不足:1981年以前の旧耐震基準の建物が中心
  4. 工事費の高騰:建替えの事業性が成り立たず、方式の見直しや規模縮小を迫られている
  5. 管理体制と資金:管理組合や長期修繕計画、修繕積立金の定めがない例まである

このうち1と2、そして5は、建替えを検討する前の段階、つまり日々の維持管理と定期的な大規模修繕で、進行を遅らせたり被害を小さくしたりできる性質の課題です。もちろん、建物の寿命をどこまでも延ばせるわけではありません。それでも、雨水を建物の中に入れない、配管の更新時期を計画に載せておく、という基本を積み重ねたかどうかで、築50年を迎えたときの選択肢の幅は大きく変わります。


数字で見る首都圏の現実:築40年以上は10年で約2倍に

国土交通省の推計では、全国の築40年以上の分譲マンションは次のように増えていく見込みです。

時点 築40年以上の分譲マンション戸数
2015年末(10年前) 約53.3万戸
2025年末(現在) 約158.8万戸
2035年末(10年後) 約313.1万戸(約2.0倍)
2045年末(20年後) 約503.6万戸(約3.2倍)

出典:国土交通省「築40年以上の分譲マンション数の推移(2025(令和7)年末現在)」(PDF、2026年8月31日更新)

一方で、実際に建替えられたマンションは、2025年3月31日時点で累計323件(約26,000戸)、旧マンション建替円滑化法にもとづくマンション敷地売却等の実績は累計17件(約1,300戸)にとどまっています(出典:国土交通省「マンション建替え等の実施状況(2025(令和7)年3月31日現在)」(PDF))。

約158.8万戸という築40年以上のストックに対し、建替えの累計は約2万6,000戸。単純に比べれば、ほとんどのマンションは「建替え」ではなく「使い続ける」ことになるというのが、数字から見える現実です。

首都圏は、日本でもっとも早くマンションが大量に供給された地域です。東京23区や多摩地域、横浜・川崎、さいたま、千葉の各市には、1970年代前後に建てられたマンションが数多く残っています。今回の採択8件のうち7件が東京・神奈川の物件だったことからも、首都圏で老朽化への対応が切実な課題になっている様子がうかがえます。


改正マンション関係法は何を変えたのか(令和8年4月1日施行)

採択事例の説明に出てくる「改正マンション関係法」について、要点を確認しておきます。

「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第47号)は、令和8年(2026年)4月1日に施行されました(一部の規定を除く)。国土交通省の資料では、主に次の改正が挙げられています。

分野 主な改正内容
区分所有法 建物更新決議等の新たな多数決による決議の創設
旧マンション建替円滑化法 題名を「マンションの再生等の円滑化に関する法律」に変更
同上 建物敷地売却決議・建物取壊し敷地売却決議・敷地売却決議に対応した「マンション等売却事業」の規定の整備
同上 要除却認定制度の拡充(耐震性不足等の解消方法の追加等)
省令 再生後マンションの各戸の床面積の基準を、原則50㎡以上から原則40㎡以上に緩和

出典:国土交通省住宅局「改正法の施行に伴う国土交通省関係省令の整備等に関する省令について」(令和8年1月、PDF)

一言でまとめると、「建替え以外の再生の選択肢(建物を残した全面改修、売却、取壊しなど)を、多数決で選びやすくする」方向の改正です。

ただし、制度上の選択肢が増えても、費用の問題は消えません。どの選択肢をとるにせよ、建物の状態が良いほど、改修で再生する場合の負担を抑えやすく、選べる選択肢も広がります。制度が整うほど、「日々の修繕で建物の状態を保っておくこと」の意味が大きくなる——私はそう受け止めています。

なお、決議の要件や手続きの細部は、マンションの状況によって適用が異なります。実際に検討される際は、マンション管理士や弁護士などの専門家にご確認ください。


建替えが難しくなる時代に、大規模修繕の位置づけはどう変わるか

ここからは、首都圏の管理組合・オーナーの皆さまにとっての実務の話です。

「建替えまでのつなぎ」から「建物の寿命そのものを決める工事」へ

かつて、築30年を過ぎたマンションの大規模修繕は「いずれ建替えるまでのつなぎ」と考えられることがありました。しかし、採択事例が示すように、工事費の高騰で建替えの事業性は厳しくなっています。

そうなると、大規模修繕は「つなぎ」ではなく、「建物をあと何十年使えるかを決める工事」になります。特に次の3つは、長寿命化に直結する部位です。

部位 長寿命化との関係 傷んだまま放置した場合
外壁(ひび割れ・シーリング・タイル) 雨水の浸入を防ぎ、コンクリート内部の鉄筋を守る 鉄筋が錆びて膨張し、コンクリートの剥落や躯体の劣化につながる
屋上・バルコニーの防水 建物の上から雨水を入れない 漏水が室内・共用部・設備に及び、内装や電気設備まで補修範囲が広がる
給排水管 生活に欠かせないライフラインを維持する 漏水事故の多発、専有部の天井・床の補修、居住者間のトラブル

採択8件の多くに「漏水事故の多発」「雨水浸入」「配管の腐食」が並んでいたのは、偶然ではないと私は考えています。雨と水は、建物をもっとも速く傷める要因の一つだからです。

長期修繕計画は「30年以上・大規模修繕2回以上」が国の目安

国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」は、計画期間を30年以上、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とすることを示しています。また、外壁塗装などの修繕周期の例も示されています(出典:国土交通省「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント(令和6年6月改訂)」(PDF))。

築40年を超えるマンションでは、この「30年先」が、建替えや売却を検討する時期と重なってきます。長期修繕計画に「長寿命化を続ける場合」と「再生(建替え・改修・売却)を検討する場合」の両方の見通しを書き込んでおくと、話し合いの材料になります。


首都圏の管理組合・オーナーが今の大規模修繕で守りたい7項目

採択事例と国のデータを踏まえ、次の大規模修繕の前に確かめておきたい項目を7つにまとめました。

No. 確認項目 確かめ方の例
1 外壁から雨水が入っていないか 打診調査・赤外線調査・目視で、ひび割れ、タイルの浮き、シーリングの劣化を確認
2 屋上・バルコニー防水の更新時期 前回工事の年と工法、膨れ・破れ・排水口の詰まりを確認
3 給排水管の材質と更新履歴 竣工図・修繕履歴で配管の種類と更新の有無を確認。漏水事故の記録も整理
4 長期修繕計画の期間と前提 計画期間が30年以上か、工事単価が近年の価格水準で見直されているか
5 修繕積立金の残高と将来の不足額 計画に対して何年後にいくら不足するかを試算
6 耐震性の確認状況 1981年以前の建物なら耐震診断の実施状況を確認
7 「使い続ける」場合の費用と、仮設の考え方 足場以外の工法も含め、外壁・防水の工事費を比較

項目7について:仮設足場の費用は「長寿命化の総コスト」を左右する

外壁や防水の工事では、仮設足場の費用が工事費の中で大きな割合を占めます。明誠の社内実績にもとづく目安として、30戸規模のマンションの大規模修繕で総工費3,500万〜5,000万円程度、そのうち仮設足場が15〜25%程度を占めるケースが多く見られます(あくまで目安で、建物の形状・立地・仕様により大きく変わります)。

明誠では、建物ごとに通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから比較してご提案しています。社内の試算例では、10階建て・外周80m・工期3か月の条件で、仮設足場約168万円に対し、ロープアクセスでは約59万円(約109万円の差)となったケースがあります。

工事の種類 参考単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
外壁の打診調査 250〜500円/㎡
防水工事 5,000〜8,000円/㎡

※上記は明誠の社内情報にもとづく参考値です。実際の金額は、建物の規模・劣化状況・仕様・工期・市況によって大きく変わります。正式な金額は現地調査のうえでお見積りします。

築40年、50年を超えて建物を使い続けるなら、大規模修繕は今後も繰り返し訪れます。1回あたりの仮設費を抑えられれば、その分を配管更新や耐震補強、防水のグレードアップなど、建物の寿命に直結する工事に回すことができます。明誠が大切にしている考え方は明誠の提供価値でもご紹介しています。


ロープアクセス工法は、老朽化マンションの長寿命化にどう役立つか

ロープアクセス工法は、建物の屋上などに設けた吊元から、作業員がロープを使って外壁に近づき、調査や補修を行う工法です。作業員は、メインロープとバックアップロープの2本に接続し、2点以上の吊元を確保して作業します。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)の基準に代表される二重の安全確保が、業界の標準的な考え方です。

明誠のロープアクセス工法の技術詳細は、ロープアクセス工法のご案内ページにまとめています。同業者向けの技術情報や訓練の情報は、姉妹サイトのロープアクセスドットコム(無足場工法の専門メディア)で詳しく解説しています。

老朽化マンションの長寿命化という観点では、特に次の場面で役立つことがあります。

場面 ロープアクセスの使い方の例
大規模修繕の前の劣化調査 足場を組まずに外壁に近づき、打診や目視で劣化状況を調べる。ドローン調査と組み合わせることも
雨漏り・漏水の原因調査 外壁のひび割れやシーリングからの浸入が疑われる箇所を、近接して散水試験・補修
大規模修繕と大規模修繕の間の部分補修 タイルの浮きやひび割れなど、部分的な補修を足場なしで行い、次の大規模修繕まで状態を保つ
居住者の生活への影響を抑えたい場合 足場やメッシュシートで窓がふさがる期間を短くし、防犯面・採光面の負担を軽くする

ドローンを使った外壁調査については、ドローン調査のご案内、漏水の調査・補修については漏水対応のご案内をご覧ください。

もちろん、ロープアクセスがすべての建物・すべての工事に向いているわけではありません。複雑な形状の建物や、外壁全面を一度に塗り替える工事などでは、通常足場のほうが合理的なこともあります。大切なのは、1つの工法に決め打ちせず、建物ごとに比べることです。工法ごとの比較の考え方は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムでも事例を交えて紹介しています。


東京・神奈川の分譲マンション、賃貸マンション・ビル、ホテル別の考え方

分譲マンションの管理組合の場合

採択事例の「杉並コーポラス」では、管理組合・管理規約・長期修繕計画がなく、修繕積立金の定めもない状態から再生検討を始めています。ここまで極端でなくても、長期修繕計画が10年以上見直されていない、修繕積立金の額が竣工時から変わっていない、というマンションは首都圏にも少なくありません。

再生の議論は、建物の状態と資金の見通しが見える化されてはじめて前に進みます。まずは長期修繕計画と劣化状況の現状把握から始めることをおすすめします。管理組合向けのご相談は管理組合の皆さまへのページからどうぞ。

賃貸マンション・ビルのオーナーの場合

一棟所有のオーナーには、区分所有者間の合意形成という壁はありません。その分、修繕の判断がオーナー一人の経営判断に委ねられます。漏水や外壁の不具合は、入居者・テナントの満足度や空室率、賃料水準にそのまま跳ね返ります。

建替えや売却を考えるときにも、外壁や防水が適切に維持されている建物のほうが、評価の面で有利になりやすいと考えられます。ビルオーナー向けの情報はビルオーナーの皆さまへにまとめています。

ホテルの場合

ホテルは客室の稼働を止めにくく、足場で外観や眺望がふさがる期間が長いほど、営業への影響が大きくなります。部位ごとに工法を使い分けるハイブリッド工法や、稼働を続けながらの部分補修を検討する価値があります。ホテル案件は全国で対応しており、詳しくはホテル運営者の皆さまへをご覧ください。


明誠が長寿命化のご相談でお手伝いできること

株式会社明誠は、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に携わってきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、過去16年間、墜落による労働災害ゼロを続けています。作業員はIRATA水準の技能訓練を受けており、品質管理はISO9001の仕組みに沿って行っています。

また、明誠は日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職と連携しています。老朽化マンションの長寿命化では、外壁・防水・設備がからみ合った工事になることが多く、分野をまたいで1つの窓口でご相談いただける体制を整えています。

これまでの施工の様子は、明誠の施工事例でご覧いただけます。


よくあるご質問

Q. 築50年を超えたマンションでも、大規模修繕をする意味はありますか?

A. はい、あります。建物の寿命は、構造や維持管理の状態によって大きく変わります。外壁や防水を適切に修繕して雨水の浸入を防ぐことは、躯体を守り、将来、建替えや売却を検討する場合の選択肢を広げることにもつながります。まずは劣化調査で現状を把握することをおすすめします。

Q. 国交省のモデル事業に、管理組合が直接申し込めますか?

A. この事業の補助事業者は、計画支援ではマンション再生コンサルタントや設計事務所、管理会社など、工事支援では施工業者や買取再販業者などとされています。管理組合が単独で申請する一般的な補助金とは仕組みが異なりますので、詳しくは国土交通省の事業ページや、提案者となる事業者にご確認ください。なお、令和8年度第3回の応募期間(9月14日〜18日)はすでに終了しています。

Q. 改正マンション関係法で、うちのマンションの建替えは簡単になりますか?

A. 改正法(令和8年4月1日施行)では、建物更新決議などの新たな多数決による決議が創設され、敷地売却などの選択肢も整備されました。ただし、手続きが整っても、建替えの工事費や区分所有者の負担は残ります。個別の要件の当てはめは、専門家にご確認ください。

Q. 大規模修繕の費用はどれくらいかかりますか?

A. 30戸規模のマンションで総工費3,500万〜5,000万円程度が一つの目安ですが、建物の形状・劣化状況・仕様によって大きく変わります。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡、防水工事は5,000〜8,000円/㎡が参考値です。明誠では現地調査のうえで無料の概算お見積りをお出ししています。

Q. ロープアクセス工法は安全ですか?

A. 作業員はメインロープとバックアップロープの2本に接続し、2点以上の吊元を確保して作業します。明誠と全国のフランチャイズ加盟企業では、過去16年間、墜落による労働災害ゼロを続けています。

Q. 足場とロープアクセスでは、工期はどれくらい違いますか?

A. 建物によって異なりますが、10階建て・外周80m程度のマンションの外壁工事で、足場工法で3か月かかる工事が、ロープアクセスでは1.5〜2か月程度となるケースがあります。工事の範囲や天候によって変わりますので、現地調査のうえでご案内します。

Q. 調査だけを頼むことはできますか?

A. はい、可能です。打診・目視、赤外線、ドローン、ロープアクセスによる近接調査を組み合わせ、劣化状況の把握から長期修繕計画の見直しのご提案まで対応しています。お問い合わせフォームからご相談ください。


この記事のポイントまとめ

  • 国土交通省は令和8年9月14日、マンションストック長寿命化等モデル事業の令和8年度第2回で11件中8件を採択。うち7件が東京・神奈川のマンション
  • 1965年築・24戸のマンションは、建替えも改修も合意に至らず、改正法に基づく敷地売却制度の活用検討に進んだ
  • 採択事例には「漏水事故の多発」「配管の腐食」「耐震性不足」「工事費高騰」「管理体制の不備」が共通して並ぶ
  • 築40年以上の分譲マンションは2025年末で約158.8万戸、10年後には約313.1万戸に増える見込み。一方で建替えの累計は323件(約26,000戸)
  • 改正マンション関係法(令和8年4月1日施行)で、建替え以外の再生の選択肢が整備された
  • 建替えが難しくなる中で、大規模修繕は「建物の寿命を決める工事」としての意味が大きくなっている
  • 外壁・防水・配管を中心に、長期修繕計画と修繕積立金の見通しを確かめておくことが、将来の選択肢を広げる

出典・参考資料

※本記事は、国土交通省の公表資料および報道の範囲に基づいています。特定のマンションや関係者を評価するものではありません。費用・工期は一般的な目安・参考値であり、実際は建物の状況により異なります。法令の適用は個別の事情によりますので、専門家にご確認ください。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

建物は、手をかけた分だけ長く応えてくれます。今回の採択事例には、話し合いを重ね、それでも決められなかったマンションの姿がありました。建替えが簡単ではなくなった今、10年後、20年後に「選べる」状態を残しておくには、今の大規模修繕で雨水を入れない、配管の更新を計画に載せる、という基本を積み重ねることが近道だと私は考えています。劣化調査や長期修繕計画の見直しのご相談だけでも、お問い合わせフォームからお気軽にお声がけください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年10月31日


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