本間社長ブログ

2026.09.29

多摩市のマンション漏水・防災対策|多摩川・大栗川の洪水と丘陵地の造成地、大規模修繕の優先順位【2026年度版】

多摩市のマンション漏水・防災対策|多摩川・大栗川の洪水と丘陵地の造成地、大規模修繕の優先順位【2026年度版】
本間 幸紘

著作者プロフィール

株式会社明誠 代表取締役

本間 幸紘

大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。

2026年9月29日 更新

多摩丘陵の斜面に建つ築30年前後のマンションでは、屋上や外壁の防水よりも先に、建物の足もとで水が悪さをしているケースが少なくありません。地面側の排水溝が落ち葉と土砂で詰まり、大雨のたびに1階の外壁や駐車場ピットに水が回る。理事会では「外壁のひび割れ」の話ばかりが出て、敷地の水の流れは誰も見ていない、という状況です。多摩市のように坂と川が同居する街では、建物の漏水と敷地の水を、ひとつの台帳でセットに管理する必要があります。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。

多摩市は、多摩川・浅川・大栗川が流れる低地の市街地(聖蹟桜ヶ丘・関戸・一ノ宮)と、丘陵地に広がる多摩ニュータウン(多摩センター・永山・貝取・豊ヶ丘・落合)という、性格の違う2つの顔を持っています。今日は、多摩市の公式情報を数字で整理し、大規模修繕で先に手を打つべき場所をお伝えします。


結論:多摩市で優先すべきは「敷地の水の流れ」と「電気設備の浸水対策」です

先に結論を申し上げます。多摩市の分譲・賃貸マンションで、私が最初に確認するのは次の3点です。

1つ目は擁壁・法面・敷地排水(水抜き穴、側溝、集水桝)の詰まりと劣化を、建物の修繕と同じ台帳で管理すること。多摩市では、土砂災害警戒区域等が令和元年9月5日に指定され、その後も貝取1丁目、諏訪2丁目、和田、中沢一丁目、豊ヶ丘一丁目、愛宕4丁目、桜ヶ丘二丁目・関戸六丁目、落合二丁目と、区域の変更が続いています。最新の変更は落合二丁目で令和8年3月25日です(出典:多摩市「土砂災害警戒区域及び土砂災害特別警戒区域が指定されました」、2026年4月8日更新)。

2つ目は受変電設備・給水ポンプ・エレベーター制御盤が、浸水想定より低い位置にないかを確認すること。多摩川・浅川・大栗川の洪水浸水想定区域は、2日間で588ミリの大雨を想定して作られています。

3つ目は昭和56年5月31日以前の建物なら、耐震診断の助成が使えるか市の窓口に確認すること。多摩市には、分譲マンションの管理組合が対象になる非木造住宅の耐震化促進補助金があります(ただし要件と年度の確認が必要です。後述します)。


多摩市のハザードマップを1枚で読む

多摩市の公開情報を整理すると、次のようになります。

リスク 該当有無 内容
洪水(外水):多摩川・浅川・大栗川 あり 想定最大規模は2日間で588ミリ。指定は平成28年5月30日
洪水(外水):乞田川・大栗川(合流点より上流) あり 1時間最大153ミリ、24時間総雨量690ミリを想定。指定は令和6年2月15日
洪水(外水):三沢川流域 あり 1時間最大152ミリ、24時間総雨量690ミリを想定
土砂災害 あり 土砂災害警戒区域等は令和元年9月5日指定。その後、令和8年3月25日まで区域変更あり
内水(雨水出水) 確認要 市のページに「雨水出水浸水想定区域の指定及び公表について」の項目があります。東京都下水道局も令和8年3月付の資料を公表しています
高潮 該当なし 内陸部のため、市は「該当しない」としています

出典:多摩市「多摩市洪水・土砂災害ハザードマップ」(2026年6月11日更新、マップ本体は令和4年9月30日時点の情報)、多摩市「宅地建物取引業者の方へ(多摩市ハザードマップの作成状況)」、京浜河川事務所「多摩川・浅川・大栗川の洪水浸水想定区域図(想定最大規模)」。

ここで注意していただきたいのは、市の洪水・土砂災害ハザードマップ本体は令和4年9月30日時点の情報で、その後に乞田川・大栗川の想定区域が令和6年に追加され、土砂災害の区域も変更されている点です。管理組合の書棚にある冊子が古い版のままの場合は、市のページで最新の内容を確認してください。冊子は本庁舎2階の防災安全課、第2庁舎1階の行政資料室で配布されています。あわせて国土交通省「重ねるハザードマップ」で、マンションの地番を直接確認することをお勧めします。


地域特性と漏水事故の関係:川沿いの低地と、丘陵地の造成地

川沿いの低地のマンション(聖蹟桜ヶ丘・関戸・一ノ宮・東寺方など):多摩川と大栗川に近いエリアです。東京都の地震に関する地域危険度測定調査(第9回・令和4年9月公表)では、総合危険度が市内で最も高いのは一ノ宮2丁目(0.41、ランク2)で、地盤は沖積低地に分類されています。火災危険度が最も高いのは関戸2丁目(0.17、ランク2)です(出典:東京都都市整備局「地震に関する地域危険度一覧表(多摩市)」)。この数字は町丁目全体の危険度で、個々のマンションの耐震性能を示すものではありません。

丘陵地のマンション(多摩ニュータウンの永山・貝取・豊ヶ丘・落合・桜ヶ丘など):坂の多い地形で、谷を埋めた造成地に建つ団地や大規模マンションが多いエリアです。東京都は都内全域で「大規模盛土造成地マップ」を作成しており、多摩市も市のページで案内しています(出典:多摩市「大規模盛土造成地マップ」などについて東京都が公表しています、2026年3月26日更新)。ただし、マップに載っていることと、そのマンションの安全性が低いことは、イコールではありません。まず自分の敷地が該当するかを確認するところから始めます。丘陵地の物件で、屋上より先に「地面側」を見るのはこのためです。擁壁の水抜き穴の詰まり、法面の排水不良、駐車場ピットへの流入水。地面側の水が動くと、地下階や1階の外壁、エキスパンションジョイント(建物の揺れを逃がす継ぎ目)まわりに水が回ります。

令和元年東日本台風(台風19号)の実績:多摩市では、関戸1〜4丁目、一ノ宮1〜4丁目などに避難指示が出され、対象は約14,833人でした。避難所は10か所が開設され、延べ2,583人が避難しています。最大は総合体育館の1,327人です。連光寺で土砂崩れが1件、東寺方で内水による浸水被害(車と自転車あわせて11台)が起き、一ノ宮公園の復旧には約2億円が見込まれました(出典:タウンニュース多摩「台風19号 2583人が避難、浸水被害も 一ノ宮公園復旧に2億円か」、2019年10月31日)。市の対応の記録は多摩市「令和元年台風第19号の活動報告について」にまとまっています。多摩川の水位は、調布市石原地点で計画高水位5.94mを上回る6.33mを記録しました。川沿いの低地では、水位が計画を超える事態が実際に起きた、という事実は押さえておきたいところです。


大規模修繕で押さえるべき漏水ポイント7つ

多摩市に限らず、私は大規模修繕の事前調査で次の7か所を外さず見ます。丘陵地の物件では、これに擁壁・法面の排水確認を加えます。

部位 見るポイント 参考の目安
屋上防水 膨れ・ひび割れ・端部のはがれ。ドレン周りの砂だまり 防水改修 5,000〜8,000円/㎡
シーリング 硬化・肉やせ・ひび割れ。サッシ周りと目地の両方 打替え 900〜1,500円/m 程度
バルコニー排水 排水溝の詰まり、勾配不良、床防水の摩耗 物件により大きく変動
ドレン(雨水の排水口) 落ち葉・土砂の堆積、ストレーナーの破損 清掃だけなら軽微な費用
立上り 防水端部の浮き、笠木のシーリング切れ 屋上防水と同時施工が効率的
サッシまわり 枠周りのシーリング、水切りの傾き シーリングと同時補修
エキスパンションジョイント カバー材の外れ、内部の防水切れ 外壁と同じ調査で確認

金額はあくまで参考値で、実際の見積は物件の規模・劣化状況・工法で大きく変わります。多摩ニュータウンのように同じ形の棟が並ぶ団地では、1棟で不具合が見つかったら他の棟も同じ部位を疑うと、調査の効率が上がります。


漏水緊急対応でロープアクセスが強い理由

漏水は、雨が降った直後に「早く止めたい」という相談が来ます。足場を組むには、申請・搬入・設置で数日〜2週間ほどかかります。ロープアクセス工法なら、調査員がロープで降りて漏水箇所の特定と応急処置に入れます。

多摩市の丘陵地には、敷地が傾斜していて足場を組む平らな場所が取りにくい物件や、駐車場・植栽・共用通路が建物のすぐ近くまで迫る物件があります。ロープアクセスは足場の設置スペースを取らず、擁壁側の外壁にも回り込めます。足場費との比較では、たとえば10階建て・外周80m・工期3か月のマンションで、足場が約168万円、ロープアクセスが約59万円という試算例があります(規模・条件により変動する参考値)。

株式会社明誠は、これまで約6,000棟の大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業では、明誠と全国のフランチャイズ加盟企業で、過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。技能はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の訓練を受けた作業員が担い、品質管理はISO9001で運用しています。工法の技術詳細は、ロープアクセスドットコムで解説しています。

漏水の原因調査から応急処置まで、詳しくは明誠の漏水対応ページをご覧ください。ロープアクセスの仕組みは、ロープアクセス工法のご紹介にまとめています。


防災上の共用部の位置と修繕優先度

漏水・浸水の被害で影響が大きいのは、居住者の生活を止める設備です。優先度を私はこう考えています。

受変電設備・エレベーター制御盤:地下や1階にあると、浸水で全館停電・エレベーター停止につながります。令和元年東日本台風で地下の電気設備が浸水し、長期の停電や断水が起きたことを受け、国土交通省は令和2年6月に「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を公表しました(出典:国土交通省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」)。設置場所の見直し、止水板、かさ上げが基本の考え方です。

給水ポンプ:停電すれば給水が止まります。特に丘陵地の中高層マンションは、高置水槽や加圧ポンプに頼る構造が多く、ポンプ室の位置と排水ポンプの作動を確認してください。

自家発電設備・非常用電源:あるかないか、燃料は何時間もつかを、管理組合として把握しておくことが第一歩です。

避難通路・階段:擁壁や法面に面した通路は、土砂の流入と排水を点検します。

優先度の考え方:私は、(1)電気設備の浸水対策と排水ポンプ、(2)擁壁・法面・敷地排水、(3)屋上防水・外壁シーリング、(4)耐震診断、の順で検討することが多いです。費用のかからない点検から入り、費用のかかる工事は劣化調査の結果で決めます。


多摩市の防災補助・耐震助成(令和8年度の確認ポイント)

非木造住宅耐震化促進補助金:多摩市の公式ページによると、対象は「昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた、鉄筋コンクリート造、鉄骨造または鉄骨鉄筋コンクリート造の住宅で、賃貸住宅以外」で、マンションは管理組合が対象です。ページに記載の補助内容は次のとおりです。

  • 耐震診断:3分の2(1棟200万円/1戸5万円が上限)
  • 補強設計:3分の2(1,030円/㎡を基準)
  • 耐震改修:2分の1(1棟1,500万円/1戸50万円が上限)

受付は、ページ上「4月から9月末まで」の予算先着順とされています。窓口は都市計画課住宅担当(042-338-6817)です(出典:多摩市「非木造住宅耐震化促進補助金について」)。

重要な注意点:このページの最終更新は2024年4月1日と表示されており、耐震診断の申請期限は令和7年度末とされています。つまり、耐震診断の受付は令和7年度末(2026年3月末)で締切済みと読める表記です。補強設計は令和8年度末、耐震改修は令和9年度末が期限とされていますが、令和8年度の予算枠や受付状況は、このページだけでは確認できません。申請を検討される場合は、必ず都市計画課住宅担当に、令和8年度の最新の受付状況をご確認ください。なお、多摩市の木造住宅の耐震診断費補助は令和8年度から助成制度に変わっていますが、区分所有のマンションは対象外とされています(出典:多摩市「木造住宅の耐震診断費補助制度」)。

税制優遇:マンション長寿命化促進税制は、適用期間が令和9年3月31日まで延長されています(出典:国土交通省・マンション管理適正化推進センター「マンション長寿命化促進税制の延長について」)。


よくあるご質問

Q. 多摩市のマンションは、洪水のリスクがありますか?

A. あります。多摩川・浅川・大栗川は2日間588ミリ、乞田川・大栗川(上流)は1時間最大153ミリの降雨を想定した区域が指定されています。まず市のマップで自分のマンションの位置を確認してください。

Q. 丘陵地のマンションでは、どこを先に点検すべきですか?

A. 私は、擁壁の水抜き穴、敷地の側溝、ドレンの詰まりを最初に見ます。費用がかからず、大雨の前後に確認するだけで異常に気づけます。

Q. 耐震診断や改修の費用は、市から助成が出ますか?

A. 昭和56年5月31日以前の鉄筋コンクリート造などの分譲マンションは、非木造住宅耐震化促進補助金の対象になり得ます。ただし耐震診断の期限が令和7年度末とされているため、令和8年度の受付状況は都市計画課住宅担当(042-338-6817)にご確認ください。

Q. 擁壁の点検は、大規模修繕と一緒にやれますか?

A. できます。外壁の打診調査(250〜500円/㎡が目安)と同時に、擁壁の水抜き穴・ひび割れを目視で確認する形が効率的です。ドローン調査の条件と限界もあわせてご覧ください。

Q. 足場が組みにくい傾斜地の物件でも工事はできますか?

A. できます。ロープアクセス工法なら足場の設置スペースが不要で、工期も足場工法の約6割で済むことが多いです(10階建てで足場3か月に対し1.5〜2か月が目安)。物件ごとの条件で変わりますので、無料で概算をお出しします。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?

A. できます。収益物件では、漏水1件で原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。考え方は収益物件オーナー向けページとビルオーナー向けのご案内にまとめています。


まとめ:今週、多摩市の理事会で動けること3つ

  1. 擁壁の水抜き穴・敷地の側溝・ドレンの詰まりを目視で確認する — 費用がかからず、丘陵地・傾斜地の物件でいちばん効く確認です
  2. 受変電設備・給水ポンプ・排水ポンプの位置を、市の洪水・土砂災害ハザードマップ(令和4年9月30日時点)と、その後の区域変更を重ねて確認する — 浸水想定より低い位置にあれば、優先的に対策を検討します
  3. 昭和56年5月31日以前の建物なら、都市計画課住宅担当(042-338-6817)に令和8年度の耐震助成の受付状況を問い合わせる — 過去の表記のまま判断せず、窓口で最新を確認します

多摩市は、川沿いの低地と多摩丘陵のニュータウンという、性格の違う2つの地形を持つ街です。自分のマンションが、川の側にあるのか、坂の側にあるのか。ここを最初に確認して修繕計画を組めば、限られた予算でも効果が出やすい対策になります。

工法の選択肢を3つ(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)持っていると、工事の順番を組み替えられます。順番が変われば、同じ予算で直せる範囲が変わります。詳しい技術情報はロープアクセスドットコムもあわせてご覧ください。

秋の台風シーズンは、まだ続きます。理事会で1分だけでもこの話題を出してみてください。ご相談はお問合せフォームから、管理組合としての進め方は管理組合向けのご案内をご覧ください。

明誠の施工事例もご覧いただけます。これまでに手がけた約6,000棟のうち、公開できるものを掲載しています。

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月29日時点で公表されている多摩市および国土交通省・気象庁・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず多摩市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


出典・参考資料


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月29日


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