本間社長ブログ

戸田市のマンション漏水・防災対策|荒川氾濫と内水に備える大規模修繕2026年度版

本間 幸紘

著作者プロフィール

株式会社明誠 代表取締役

本間 幸紘

大規模修繕・外壁工事・ロープアクセス工事に関する情報を、現場経験をもとに分かりやすくお届けします。

戸田市でマンションやビルを持つオーナー・管理組合さまが、大規模修繕で優先すべき漏水・防災対策は、結論から言うと次の3つです。

  1. 電気設備・給水ポンプ・受変電設備の「置き場所」を修繕計画で見直す:荒川が氾濫すると、戸田市は市内全域が水没すると想定されています。漏水を直しても、電気が止まれば生活は止まります。
  2. 屋上防水とドレン(排水口)まわりを先に直す:戸田市の内水の想定は1時間153mmです。最初に傷むのは屋上の排水まわりです。
  3. 足場を組む時間のない緊急漏水に備え、ロープアクセスで即日動ける業者を決めておく。

私は東京都東大和市の株式会社明誠で、20年以上、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を現場で担当してきました。戸田市のように「荒川という大河川に面し、しかも内水(下水や水路が排水しきれず、雨水が街にあふれる現象)の想定もある街」では、雨のたびに屋上と共用部の弱点が試されます。この記事では、戸田市が公開している一次情報を確認しながら、現場目線でお話しします。

戸田市のハザードマップを1枚で読む

戸田市の公式ページ「水害ハザードマップの作成状況」(更新日:2024年7月11日)によると、戸田市の水害ハザードマップは、河川ごとに次のように整理されています(出典:戸田市 宅地建物取引業法施行規則に係る水害ハザードマップの作成状況)。

区分 戸田市での状況(公式資料ベース)
洪水(荒川) 2018年作成、想定最大規模降雨。戸田市ハザードブックに掲載
洪水(鴨川・鴻沼川・芝川・新芝川/笹目川・菖蒲川) 2024年作成、想定最大規模降雨
雨水出水(内水) 2026年作成。戸田市内水(浸水)ハザードマップ
高潮浸水想定区域 該当なし

高潮は「該当なし」とされています。津波についても、この資料では対象に挙がっていません。土砂災害については、今回確認した市の資料では区域の記載を確認できませんでした。物件が該当するかは、市の危機管理防災課か、住所ごとの公式マップでご確認ください。

荒川氾濫時:「市内全域が水没」という想定

戸田市の「水害時の避難及び避難場所について」には、荒川が氾濫した場合に市内全域が水没すると想定されている、と書かれています(更新日:2022年1月28日。出典:戸田市 水害時の避難及び避難場所について)。

広報戸田市2024年6月号の特集では、浸水深ごとの目安が次のように示されています(出典:広報戸田市 荒川氾濫時の避難行動を検討しましょう)。

  • 5メートル以上:3階の床上以上の浸水
  • 3.0〜5メートル未満:2階の床上〜軒下程度の浸水
  • 0.5〜3メートル未満:1階の床上〜軒下程度の浸水
  • 0.5メートル未満:1階の床下程度の浸水

同じ特集では、水が引くまでに最大1週間程度かかると予測されています。また、広域避難(浸水しない地域へ離れる避難)にかかる時間は、市民の90%が避難する場合で、徒歩が約2時間、車が約25時間と示されています。

荒川の想定の根拠は、国土交通省関東地方整備局が平成28年5月30日に公表した洪水浸水想定区域です。想定最大規模の降雨は「荒川流域の72時間総雨量632mm」で、計画規模(72時間総雨量516mm、年超過確率1/200)を上回る設定です(出典:国土交通省 関東地方整備局 荒川水系 洪水浸水想定区域の公表資料)。

内水:1時間153mmが市全域に降る想定

令和8年4月の「戸田市内水ハザードマップ Q&A」では、想定し得る最大規模の降雨として、1時間あたり153mmが戸田市全域に降り、放流先河川の水位が高い場合を想定しています。参考として、既往最大降雨は平成17年9月の1時間71.5mmです。浸水深1.0m以上となる箇所は、主にアンダーパス(地下道)で、そのほか笹目、美女木、新曽の限られた箇所とされています(出典:戸田市内水ハザードマップ Q&A(令和8年4月))。

つまり、内水は「道路や駐車場の一部が深く浸かる」想定であり、荒川の氾濫は「市全域が浸かる」想定です。この2つは別物として、分けて備える必要があります。

自分の物件の浸水深を調べる方法

戸田市は、荒川下流河川事務所が公表する「荒川3D洪水浸水想定区域図(下流域)」で、自宅の想定浸水深と浸水継続時間を調べる手順を案内しています(更新日:2024年5月27日。出典:戸田市 自宅の浸水深の調べ方)。市のWebアプリ「荒川洪水ハザードマップ」でも、浸水深と浸水継続時間を確認できます(出典:戸田市 荒川洪水ハザードマップ)。いずれも参考値であり、避難の判断は、市と国交省の公式マップと避難情報にしたがってください。

地域特性と漏水事故の関係

戸田市の記事で、私が最初にお伝えしたいのは、「荒川が氾濫するかどうか」と「今年の漏水」は、別の話だということです。

荒川の氾濫は、起きれば被害は甚大ですが、頻繁には起きません。一方、屋上や外壁からの雨漏りは、台風やゲリラ豪雨のたびに起こり得ます。私が現場で見る漏水の相談は、次の2つのパターンに分かれます。

パターン1:ゲリラ豪雨で屋上ドレンが詰まる。 落ち葉や砂が屋上ドレンに溜まると、雨水が抜けずに立上り防水を越え、最上階の天井にシミが出ます。立地や河川は関係なく、ドレンを最後に掃除したのがいつか、で決まります。

パターン2:想定外の水位で、1階・地下の設備室が被害を受ける。 内水の想定では、アンダーパスのほか、笹目、美女木、新曽の限られた箇所で浸水深1.0m以上とされています。この付近で、ポンプ室や受電設備が1階や地下にある物件は、要注意です。

私の経験上、築20年を超えた建物では、防水層の端部やシーリングの切れが重なります。そこに強い雨が来ると、「いつもの部屋」の天井にまたシミが出ます。同じ部屋で繰り返す漏水は、点ではなく経路の問題です。

大規模修繕で必ずチェックすべき漏水ポイント7つ

戸田市のような「雨量の想定が大きい街」では、次の7か所を、修繕の診断時にまとめて確認することをお勧めします。

  1. 屋上防水:膨れ、ひび割れ、保護コンクリートの伸縮目地の劣化。防水改修の費用は、5,000〜8,000円/㎡程度が一つの目安です(建物の状態により大きく変動します)。
  2. シーリング(目地の防水材):外壁の目地とサッシまわり。硬化して切れると、雨が壁の内側へ入ります。
  3. バルコニー排水:排水溝の詰まり。床の防水層の劣化と合わせて確認します。
  4. ドレン(排水口):屋上・バルコニー・庇のドレン。落ち葉や砂の除去と、周囲の防水の端部を確認します。
  5. 立上り:屋上の壁際の防水の立ち上がり部分。ここから水が回り込む例が多いです。
  6. サッシまわり:枠とコンクリートの取り合い。強い風雨の吹き込みの入口になります。
  7. エキスパンションジョイント:建物同士のつなぎ目。動きを吸収する部材が傷むと、水の通り道になります。

どれも目視と打診、散水調査で原因を絞り込めます。足場なしで近づける箇所が多いのが、ロープアクセスの強みです。

漏水緊急対応でロープアクセスが強い理由

「天井から水が落ちている。今夜も雨だ」という相談を、私は何度も受けてきました。足場を組むには、近隣への説明、道路使用の手続き、資材の手配で、早くても数週間かかります。その間、雨は待ってくれません。

ロープアクセス工法は、産業用ロープを使い、足場なしで外壁や屋上まわりに近づきます。2点以上の吊元を確保し、メインロープとバックアップロープの2本にそれぞれ接続して作業するのが基本です。これはIRATA(国際産業ロープアクセス協会)の考え方にもとづく二重の安全対策です。

  • 調査から応急止水までを短期間で進められる:足場の架設期間が不要です。
  • 居住者の生活影響を抑えられる:窓の前に足場や養生が立たないため、採光・換気・プライバシーへの影響が小さくなります。
  • 足場費を圧縮できる:仮設足場は総工費の15〜25%を占めることがあります。物件によっては、ロープアクセスやハイブリッド工法で、その費用を大きく抑えられます。

信頼の証拠として、株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業では、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業で、過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。

ただし、すべての漏水をロープだけで直せるわけではありません。築年数や雨の入り方によっては、本格改修で足場や部分足場との併用(ハイブリッド工法)をご提案します。建物にとって最適な工法を、3つの工法から選べるのが明誠の特長です。詳しくは、明誠のロープアクセス工法のご紹介と、漏水対応のご案内をご覧ください。技術情報は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムでも公開しています。同業者・フランチャイズ加盟をご検討の方には、ロープアクセス工法の技術と訓練の情報もご参考になります。

防災上の共用部の位置と修繕優先度

荒川氾濫の想定では、浸水が最大1週間程度続くとされています。マンションが「在宅避難できるか」は、共用部の設計で決まります。

共用部 確認したいこと 修繕・対策の優先度
受変電設備・電気室 設置階。1階・地下なら、上階への移設や止水板を検討 最優先
給水ポンプ 設置階と、停電時の給水方法 高
自家発電機 設置階、燃料の備蓄量 高
エレベーター 停止時の上階居住者の対応、機械室の位置 高
避難通路・階段 荷物による閉塞、非常照明の状態 中

広報戸田市の特集では、自宅の浸水しない階がある場合、備蓄があれば在宅避難が可能とされています。浸水深3〜5メートルの地域で3階以上に住む場合が、その例です。裏を返すと、備蓄と、停電・断水への備えがなければ、在宅避難は成り立ちません。

私は管理組合さまに、大規模修繕の診断のとき、防水や外壁と同じテーブルで、電気設備の位置も一緒に確認するようお伝えしています。設備の移設は大規模修繕の範囲を超える場合もありますが、長期修繕計画に載せておくだけで、次の判断が早くなります。

戸田市の防災補助・耐震助成

戸田市では、令和8年4月1日付で更新された「既存住宅耐震診断・改修補助金制度」があります。非木造の共同住宅の耐震診断は、費用の1/2(2万円/戸、上限100万円/棟)が補助の対象です(出典:戸田市 既存住宅耐震診断・改修補助金制度、令和8年4月版 案内資料)。

対象となる建築時期や条件、申請の時期は、資料や制度の改正で変わることがあります。案内資料では、非木造の共同住宅は昭和56年5月31日以前の着工が対象と読めますが、公式ページの記述と細かな点が一致しない部分があります。申請の前に、戸田市の建築住宅課(048-441-1800)で最新の内容をご確認ください。なお、診断は、コンサルタントと契約する前に申請する必要があります。

戸田市の耐震改修促進計画(第3次、令和8年3月)では、東京湾北部地震で市内の広い範囲に最大震度6強の揺れが予想され、建物被害は全壊1,109棟、半壊2,609棟と示されています(揺れ・液状化・火災による被害予測。出典:戸田市建築物耐震改修促進計画(第3次))。大規模修繕と合わせて、耐震の確認も検討する価値があります。

よくあるご質問

Q. 戸田市の洪水ハザードマップはどこで見られますか?

A. 荒川の浸水深と浸水継続時間は、市のWebアプリ「荒川洪水ハザードマップ」や、荒川下流河川事務所の3D洪水浸水想定区域図で確認できます。手順は市の公式ページに載っています。

Q. 内水と洪水は何が違いますか?

A. 洪水は川の水があふれる現象、内水は下水や水路が排水しきれず街に雨水があふれる現象です。戸田市では、荒川氾濫と内水を別の想定として公表しています。

Q. 屋上防水の改修費用の目安は?

A. 5,000〜8,000円/㎡程度が一つの目安です。下地補修の量や既存防水の種類で大きく変わるため、現地調査のうえで見積りします。

Q. ロープアクセスで漏水の緊急対応はできますか?

A. 足場が不要なため、調査と応急止水を短期間で進められます。本格改修では、足場や部分足場との併用をご提案する場合もあります。

Q. 大規模修繕の費用を抑えるには?

A. 仮設足場は総工費の15〜25%を占めることがあり、ロープアクセスやハイブリッド工法で足場費を圧縮できる場合があります。30戸規模のマンションの大規模修繕は、3,500〜5,000万円がおおよそのレンジですが、物件により大きく変動します。

Q. 管理組合として最初に何をすべきですか?

A. まず物件所在地の想定浸水深と浸水継続時間を、公式マップで確認して保存してください。そのうえで、屋上ドレンと防水層、受電設備・給水ポンプの設置階を点検します。

Q. 耐震診断の補助は分譲マンションでも使えますか?

A. 戸田市の制度は、非木造の共同住宅の耐震診断が補助の対象です。対象の建築時期や手続きは、建築住宅課で最新の内容をご確認ください。

まとめ+今週動くこと3点

戸田市は、荒川氾濫という「めったに起きないが起きれば全域」の想定と、内水という「局地的に深く浸かる」想定の両方に備える街です。そのうえで、毎年の雨で試されるのは屋上防水とドレンです。私は理事長さまやオーナーさまに、「雨が降る前にドレンを見てください」とお伝えしています。

今週動いていただきたいのは、次の3点です。

  1. 荒川洪水ハザードマップと内水ハザードマップで、物件所在地の想定浸水深と浸水継続時間を確認し、画面を保存する。
  2. 屋上ドレンのゴミ詰まりと、受電設備・給水ポンプの設置階を、管理会社と一緒に点検する。
  3. 過去の漏水箇所を一覧にし、次回の大規模修繕の診断に渡す。

明誠のこれまでの施工事例は、明誠の施工事例からご覧いただけます。管理組合さま向けには大規模修繕のご案内(管理組合)、ビルオーナーさま向けにはビルオーナー向けのご案内をご用意しています。漏水の原因調査や概算のお見積りは、お問い合わせフォームから無料で承ります。理事会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

出典・参考資料


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年10月28日


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本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年10月28日時点で公表されている戸田市および国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、戸田市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

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