調布市のマンション漏水・防災対策|多摩川・野川の浸水想定と深大寺エリアの土砂災害リスク、大規模修繕の優先順位【2026年度版】

2026年9月25日 更新

仙川沿いの分譲マンションで大規模修繕のご相談をいただいたとき、理事長さまから「うちは多摩川から離れているから水害は関係ないですよね」と聞かれたことがあります。私はその場で「地区によります」とお答えしました。調布市は多摩川沿いの低地と、深大寺・佐須町のような谷戸地形、国領・布田のような台地部が混在する自治体で、同じ市内でもマンションが建つ場所によってリスクの出方がまったく違うからです。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に携わってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間として、今日は調布市のハザードマップの数字と、大規模修繕で先に手を打つべき場所を整理します。


結論:調布市の分譲・賃貸マンションで優先すべきは「地区特性に応じた水害・土砂災害対策」と「屋上防水・排水経路の健全性」です

先に結論を申し上げます。調布市の大規模修繕で私が最初に確認するのは、次の2点です。

1つ目は建物が多摩川沿いの浸水想定区域にあるか、深大寺・佐須町周辺の土砂災害警戒区域にあるかの立地確認です。調布市洪水・内水ハザードマップ(令和5年3月改訂)は、国土交通省が公表する多摩川・浅川・大栗川と、東京都が公表する野川・仙川・入間川・谷沢川・丸子川を対象としており(出典:調布市「調布市洪水・内水ハザードマップ」、最終更新2026年9月15日)、河川からの距離だけでなく内水氾濫(下水道の排水能力を超えた雨水があふれること)のリスクも地図に加わっています。

2つ目は屋上防水とバルコニー排水経路の健全性。調布市は台地・沖積低地・谷底低地が入り混じる地盤構成のため(出典:東京都都市整備局「地震に関する地域危険度一覧表(調布市)」)、地区によって降雨時の排水の効きやすさが変わります。この2点を大規模修繕の計画段階で見直すことが、調布市のマンションにとって最優先の対策になると私は考えています。


調布市のハザードマップを1枚で読む

市と国・都が公表している資料を、マンション修繕の視点で1枚に整理しました。

災害種別 調布市の該当 想定・該当範囲
洪水(多摩川・浅川・大栗川、想定最大規模降雨) あり 多摩川沿いの低地に浸水想定区域。国交省公表(出典:国土交通省関東地方整備局 京浜河川事務所「多摩川・浅川・大栗川の洪水浸水想定区域図(想定最大規模)」)
洪水(野川・仙川・入間川・谷沢川・丸子川) あり 東京都公表の中小河川。市中央部・南部の低地に浸水想定区域
内水氾濫(下水道等の排水能力超過) あり 令和5年3月改訂でハザードマップに追加。短時間豪雨で市内各所に発生し得る
土砂災害警戒区域 あり 飛田給・下石原、野水、深大寺・佐須町・柴崎、若葉町・東つつじケ丘・入間町の一部の5地区が対象(出典:調布市「調布市土砂災害ハザードマップ」)
液状化 可能性あり 国土地理院「重ねるハザードマップ」の液状化予測情報で地区ごとの相対評価を確認できる(出典:国土地理院「重ねるハザードマップ」)
津波・高潮 指定なし 内陸部のため区独自の想定なし

過去の実例では、令和元年東日本台風(台風19号)で市内の多くの家屋が床上・床下浸水の被害に見舞われたと市が公式に記録しています(出典:調布市「令和元年東日本台風(台風第19号)調布市の記録」)。多摩川本流だけでなく、野川・仙川といった中小河川沿いの内水氾濫も被害の一因になったとみられています。

正直に申し上げます。この一覧を最初に整理したとき、私自身「同じ調布市でもこれほど地区差があるのか」と感じました。ただしハザードマップは「怖がるための資料」ではなく、「自分のマンションがどの地区に建っていて、何を優先すべきかを決めるための資料」だと私は理事会でお伝えしています。


地域特性と漏水事故の関係

調布市は一つの顔ではなく、エリアごとにリスクの出方が違います。

多摩川沿いの低地(多摩川・染地・国領の一部など):洪水浸水想定区域に含まれる地区があり、地下・半地下の駐車場や電気室が浸水すると、建物全体が長期間使用不能になりかねません。台風シーズンの雨量が多い年は、屋上防水と外構排水の点検を前倒しする価値があります。

深大寺・佐須町・若葉町周辺の谷戸地形:土砂災害警戒区域の指定を受けている地区で、崖線や擁壁の近くに建つマンションでは、大雨後の擁壁ひび割れ・排水不良が漏水事故の引き金になります。地域危険度調査では国領町5丁目や若葉町1丁目など一部の町丁目がランク3(相対的に高い区分)に分類されており(出典:東京都都市整備局「地震に関する地域危険度一覧表(調布市)」)、地盤特性を踏まえた点検が有効です。

国領・布田・仙川沿いの中高層マンション:台地上に位置し地盤は比較的安定していますが、仙川・野川沿いの低地に近い棟では内水氾濫の想定区域に入ることがあり、バルコニー排水とドレンの詰まりが被害を広げやすい点は他エリアと共通しています。

いずれのエリアでも共通するのは、「日常の漏水対策」と「非常時の浸水・土砂災害対策」がつながっているという点です。日頃の屋上防水・排水ドレンの点検を怠っている建物は、台風時の内水氾濫でも被害が大きくなります。


大規模修繕で必ず確認したい漏水ポイント7つ

私が漏水対応の現地調査で毎回見る7カ所です。調布市のように地区ごとの地盤・地形差が大きいエリアでは、特に排水系統と外周部の劣化状況を丁寧に見る必要があります。

  1. 屋上防水層:経年劣化・膨れ・亀裂の有無。トップコートの摩耗だけでも雨水侵入のリスクが上がります。
  2. シーリング(目地):外壁パネル間・サッシまわりのシーリング材の硬化・ひび割れ。
  3. バルコニー排水(ドレン):落ち葉やゴミによる詰まりは、ゲリラ豪雨時に排水能力を一気に落とします。
  4. 屋上ドレン・オーバーフロー管:屋上に水がたまる「ドレン詰まり」は漏水事故の最多原因の一つです。
  5. パラペット・笠木の立上り部:雨水の吹き込みが起きやすく、防水層の切れ目になりやすい箇所です。
  6. サッシまわりのシール:強風を伴う台風時、サッシ枠からの雨水侵入が急増します。
  7. エキスパンションジョイント:建物の伸縮を吸収する部材の劣化は、地震後の漏水事故の引き金にもなります。

これらは足場を組んでも、ロープアクセスでも点検・補修できます。ただし深大寺・佐須町のように土砂災害警戒区域と隣接するエリアでは、大雨直後に擁壁や崖線に近い外壁・防水層を即座に点検できるかどうかが被害の拡大を左右します。技術的な詳細は姉妹サイトのロープアクセスドットコムでも解説しています。


漏水緊急対応でロープアクセスが強い理由

台風接近が予報された段階で「屋上の防水が心配」というご相談をいただくことがあります。仮設足場は組み立てだけで数日、規模によっては1〜2週間かかります。一方、ロープアクセス工法であれば、資材と作業員の手配ができ次第、当日〜翌日には屋上やバルコニーの応急補修に着手できます。

目安として、10階建て・外周80m・工期3ヶ月の大規模修繕を想定した場合、足場費用は約168万円、ロープアクセスなら約59万円というケースがあります(物件の規模・形状により変動するため、あくまで目安の一例です)。屋上防水の本体工事は工法・面積によって5,000〜8,000円/㎡が目安ですが、緊急の部分補修であれば足場とロープアクセスの費用差はさらに大きくなります。

株式会社明誠は日本で数少ない、足場・ロープアクセス・ハイブリッド工法の3つから建物に最適な工法を提案できる会社です。これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけており、ロープアクセスの高所作業について、明誠と全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。工法選びの実例は明誠の施工事例からもご確認いただけます。詳しい技術情報はロープアクセスドットコムにまとまっています。


防災上の共用部(避難通路/エレベーター/受電設備/給水ポンプ/自家発電)の位置と修繕優先度

調布市のように地区によって水害・土砂災害の想定が異なるエリアでは、共用部の設備配置そのものが防災計画の一部になります。私が理事会にお伝えしている優先順位は次のとおりです。

優先度 設備 チェックポイント
高 受変電設備・自家発電設備 多摩川・野川・仙川沿いの浸水想定区域内の場合、地下・1階設置なら移設・かさ上げを検討
高 給水ポンプ室 停電・浸水時の給水停止リスク。予備電源との連携を確認
中〜高 外構・擁壁(深大寺・佐須町エリアなど) 土砂災害警戒区域に近い場合、擁壁のひび割れ・排水不良を定期点検
中 エレベーター機械室 冠水時の停止に備え、階段避難の動線と表示を確保
中 避難通路・共用廊下 浸水時に上層階へ垂直避難できる動線の明確化
中〜高 防水層・外壁(本記事の主題) 日常の漏水対策が非常時の被害拡大を防ぐ土台

令和元年東日本台風では都内の多摩川流域で地下設備の浸水による停電・断水が各地で報告されており、調布市も市の公式記録で家屋の床上・床下浸水を確認しています(出典:調布市「令和元年東日本台風(台風第19号)調布市の記録」)。大規模修繕のタイミングは、防水・外壁の更新と同時に、こうした設備の位置を見直す数少ない機会でもあります。


調布市の防災補助・耐震助成

調布市は分譲マンションを対象にした耐震化促進事業を実施しています(出典:調布市「分譲マンション耐震化促進事業」、最終更新2026年4月16日)。

助成内容 助成率・上限額 対象要件
耐震診断 実支出額(上限100万円) 昭和56年5月31日以前に建築確認、階数3以上(地階を除く)、RC・S・SRC造
補強設計 実支出額(上限200万円) 同上
耐震改修・建替え・除却(延べ面積1,000㎡以上) 1/3(上限2,000万円) 同上
耐震改修・建替え・除却(延べ面積1,000㎡未満) 23%(上限2,000万円) 同上
工事監理 実支出額(上限200万円) 同上

制度の詳細な適用可否や令和8年度の予算枠については、調布市の担当窓口(都市整備部建築指導課)への確認をおすすめします。予算枠に達し次第、申請受付が終了する制度のため、検討される場合は早めのご相談が有効です。


まとめ|今週動くこと3点

調布市のマンション管理組合・オーナーさまに、今週すぐできることを3つお伝えします。

  1. 市の洪水・内水ハザードマップと土砂災害ハザードマップで、自分の建物がどの地区・どの想定区域に該当するかを確認する
  2. 屋上防水・ドレン・バルコニー排水の点検記録を、直近3年分だけでも見直す
  3. 深大寺・佐須町など土砂災害警戒区域に近い立地の場合、擁壁・外構の排水状況を大規模修繕の議題に加える

理事会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお問合せフォームからお声がけください。分譲マンションの管理組合さまは管理組合向けサービス、賃貸マンション・ビルのオーナーさまはビルオーナー向けサービスのページもご参照ください。


よくあるご質問

Q. 調布市は本当に水害のリスクがあるのですか?

A. 多摩川・浅川・大栗川と、野川・仙川などの中小河川で洪水浸水想定区域が公表されており、令和元年東日本台風では市内で床上・床下浸水の被害が実際に発生しています。ただし地区差が大きいため、まずは自分の建物の立地確認が優先です。

Q. うちのマンションは台地の上にあるので、水害対策は不要ですか?

A. 台地部でも仙川・野川沿いに近い棟は内水氾濫の想定区域に入ることがあります。地区の想定区域図を確認したうえで、バルコニー排水・ドレンの点検は立地によらず有効です。

Q. 深大寺・佐須町周辺は具体的にどんなリスクがありますか?

A. 土砂災害警戒区域に指定されている地区があり、崖線や擁壁の近くに建つマンションでは大雨後の擁壁ひび割れ・排水不良に注意が必要です。市の土砂災害ハザードマップで詳細な範囲を確認できます。

Q. 屋上防水の工事はどのくらいの費用がかかりますか?

A. 防水工事は工法・面積により5,000〜8,000円/㎡が目安です。物件の規模や劣化状況により変動するため、無料で概算お見積りを提示できます。

Q. 台風が来る前に、緊急で屋上だけ直すことはできますか?

A. ロープアクセス工法であれば、足場を組まずに当日〜翌日に着手できるケースがあります。応急補修のご相談はお早めにお願いします。

Q. 分譲マンションでも耐震助成は使えますか?

A. 調布市の場合、昭和56年5月31日以前に建築確認を取得し、階数3以上・RC造等の要件を満たせば分譲マンション耐震化促進事業の対象になり得ます。詳細は市の建築指導課でご確認ください。

Q. 液状化のリスクはどう考えればよいですか?

A. 国土地理院の重ねるハザードマップで地区ごとの液状化予測情報を確認できます。地盤調査の履歴がない古い建物は、大規模修繕の機会に基礎まわりの点検も合わせて検討することをおすすめします。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月25日時点で公表されている調布市および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に耐震化助成を申請される前に、必ず調布市の建築指導課へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月25日

武蔵野市のマンション管理計画認定制度|独自基準なし・手数料無料でも見落としがちな注意点を本間社長が解説【2026年度版】

結論:武蔵野市で管理計画認定を取ると何が変わるか、手数料はいくらか

先に結論からお伝えします。武蔵野市でマンション管理計画認定を取得する場合、市への認定申請手数料は無料です。加えて武蔵野市は、国が定める基準に上乗せする独自基準を設けていません(出典:武蔵野市「マンション管理計画認定制度」、2026年8月14日更新)。

私はこれまで多くの理事長さまから「うちの区市は独自ルールがあるんですか」というご質問をいただいてきました。武蔵野市の答えは明快で、国の基準どおりに準備を進めれば良く、上乗せの心配は要りません。ただしこれは「何もしなくていい」という意味ではなく、市への直接申請ができるわけではない点は誤解が多いところですので、後ほど詳しくお伝えします。武蔵野市の制度は令和5年9月から運用が始まっています(出典:武蔵野市「マンション管理計画認定申請の手引」)。

認定主体はどこか(武蔵野市が認定行政庁)

マンション管理計画認定制度は令和4年4月に始まった国の制度で、実際に審査・認定を行う「認定行政庁」(用語補足:認定の申請を受け付け、審査し、認定書を交付する権限を持つ役所のこと)は自治体ごとに異なります。国の枠組みでは、特別区および市の区域内はその区市自身が認定行政庁となり、町村の区域内は都道府県が担う仕組みです。

武蔵野市は特別区でも中核市でもない、東京都下の一般市ですが、市として認定行政庁を担っています。窓口は都市整備部住宅対策課耐震助成等担当です(出典:同ページ)。一方で東京都は、瑞穂町や日の出町、島しょ部といった町村部のマンションを対象に、別立てで申請の手引を用意しています(出典:東京都マンションポータルサイト「町村に所在するマンションの管理計画認定申請の手引」)。つまり「23区か多摩地域か」ではなく、「市か町村か」で窓口が分かれる制度だという理解が、実は一番誤解されやすいポイントだと私は感じています。認定の有効期間は認定を受けた日から5年間です(出典:武蔵野市「マンション管理計画認定申請の手引」)。

認定17要件(総会・修繕計画・修繕積立金・長期修繕計画 等)

国が定める認定基準は、大きく5分野・合計17項目に整理されています(出典:国土交通省 認定基準)。

管理組合の運営に関する2項目では、管理者等と監事が定められていること、総会(区分所有者の集会)が年1回以上開催されていることが求められます。管理規約に関する3項目では、規約そのものが整備されていることに加え、緊急時の専有部分への立入りに関する規定、修繕履歴の保管・情報提供に関する規定が必要です。管理組合の経理に関する3項目では、管理費と修繕積立金を区分経理していること、修繕積立金を他の会計に充当していないこと、滞納額が全体の1割以内に収まっていることなどが確認されます。

もっとも項目数が多いのが長期修繕計画に関する7項目で、標準様式に準拠した長期修繕計画と修繕積立金額が総会で決議されていること、7年以内に作成または見直しがされていること、計画期間が30年以上かつ大規模修繕工事が2回以上含まれていること、一時金徴収を予定していないこと、修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと、計画最終年度に借入金残高が残らないこと、その計画に基づく資金計画が適切であることが審査されます。最後にその他の2項目として、組合員名簿・居住者名簿の適切な管理と、都道府県等が定めるマンション管理適正化指針への適合性が確認されます(出典:国土交通省 認定基準)。武蔵野市の場合、この17項目がそのまま認定基準となっており、独自の追加項目はありません(出典:武蔵野市「マンション管理計画認定申請の手引」)。

独自基準の有無と実務への影響

武蔵野市は「独自基準なし」の自治体にあたります。渋谷区や世田谷区のように防災訓練やコミュニティ活動を独自要件として課す区がある一方、武蔵野市は「基本方針で掲げる基準以外の独自基準は設けていません」と明記しています(出典:武蔵野市「マンション管理計画認定申請の手引」)。

独自基準がないことは、書類準備の負担という点では確かにありがたい話です。ただし私が現場で申し上げたいのは、独自基準がないからといって、17要件そのもののハードルが下がるわけではないという点です。特に長期修繕計画に関する7項目は、標準様式への準拠、7年以内の見直し、30年以上・大規模修繕2回以上という条件を同時に満たす必要があり、これは全国どの自治体でも共通の高いハードルです。私の経験上、修繕積立金の水準や計画期間の見直しを先送りにしてきた管理組合ほど、この長期修繕計画の要件でつまずきます。

上乗せ基準がないぶん、大規模修繕そのものの費用構造を見直す余力を作れるかどうかが、認定取得のしやすさに直結してきます。実際に私たちが手がけた案件では、9階建て・外周90m程度のマンションで、足場を組む従来工法だと概算195万円ほどかかる仮設費が、ロープアクセスドットコムで紹介している無足場工法(ロープアクセス工法。産業用ロープを使い、足場を組まずに外壁に近づく工法です)を使うと70万円程度に収まり、差額にして125万円ほど圧縮できたケースがありました(工事内容・建物条件により変動するため、あくまで目安としてご覧ください)。こうして浮いた分を長期修繕計画の積立不足の穴埋めに回せれば、認定基準の「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」という項目にも近づきやすくなります。

手数料と申請ルート(事前確認必須・マンション管理センター経由)

手数料については冒頭でお伝えした通り、武蔵野市への認定申請手数料は無料です。ただし武蔵野市に直接申請することはできず、必ず事前確認を受けたうえで、支援システムを通じて申請する流れになります(出典:武蔵野市「マンション管理計画認定申請の手引」)。

事前確認のルートは4パターンあります。マンション管理士に直接依頼する方法、マンション管理業協会の評価制度を利用する方法、日本マンション管理士会連合会の診断を利用する方法、そして(公財)マンション管理センターに依頼する方法です。マンション管理センターに依頼する場合、長期修繕計画1計画あたり10,000円の審査料がかかるほか、支援システムの利用料が1申請あたり10,000円(税込)別途必要です(出典:武蔵野市「マンション管理計画認定申請の手引」、公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。私はいつも理事長さまに「市の手数料はゼロでも、事前確認の実務費用は数万円単位で見ておいてください」とお伝えするようにしています。

申請の流れは、①理事会・総会での認定申請の決議、②事前確認申請、③事前確認、④事前確認適合通知の取得、⑤支援システムでの認定申請、⑥市による審査、⑦認定通知書の交付という順番です(出典:武蔵野市「マンション管理計画認定申請の手引」)。事前確認から認定通知までの一連の流れをあらかじめ理事会で共有しておくと、途中で「次は誰が何をするのか」で止まってしまうことを防げます。

認定の3つの経済効果(長寿命化促進税制/フラット35/共用部リフォーム融資)

管理計画認定を取得すると、主に3つの経済的なメリットにつながります。

1つ目は固定資産税の減額です。マンション長寿命化促進税制では、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事の3工事を一体として実施し、築20年以上・総戸数10戸以上などの要件を満たしたマンションについて、工事完了年度の翌年度分の固定資産税(1戸当たり床面積100平方メートル相当分まで)が減額されます。武蔵野市の減額率は3分の1で、これは東京23区の多くが独自に定める2分の1よりも低い、国の標準的な水準にあたります(出典:武蔵野市「マンション長寿命化促進税制」、2026年2月2日更新)。対象となる工事の完了時期は令和5年4月1日から令和9年3月31日までで、工事完了後3か月以内に資産税課への申告が必要です(出典:同ページ)。正直に申し上げると、この「区市によって減額率が違う」という点は見落とされがちなので、大規模修繕の予算組みの段階で一度確認しておくことをお勧めします。

2つ目はフラット35の金利引下げです。認定マンションを購入する場合、借入金利が当初5年間で年0.25%引き下げられる制度が用意されています。3つ目は住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で、認定マンションが計画に基づいて修繕工事を行う際、基準金利から年0.2%程度の引下げが受けられます(出典:住宅金融支援機構関連資料)。金利や税制の数字は年度や制度見直しによって変わり得るため、実際に申請される時点で最新の数値を住宅金融支援機構(jhf.go.jp)や武蔵野市の窓口で確認していただくのが確実です。

逆算スケジュール(総会決議→事前確認→認定申請→交付)

認定取得までの流れは、おおむね次のように逆算して考えるとスムーズです。まず理事会・総会で長期修繕計画と修繕積立金額の見直しを決議します。標準様式に沿った計画になっているか、7年以内の見直しか、30年以上・大規模修繕2回以上を含むかを、この段階で確認しておく必要があります。

次に事前確認をどのルートで受けるかを決め、必要書類を整えます。マンション管理士への直接依頼か、マンション管理センター経由かで費用感が変わってきますので、複数のルートに事前に相談してみるのも一つの方法です。事前確認適合証を取得したら、支援システムでオンライン申請を行い、武蔵野市による審査を経て認定通知書が交付されます。私の経験上、事前確認の依頼先を決めるところで足踏みしてしまう管理組合が多いので、まずは市の窓口かマンション管理センターに一本電話を入れて、進め方の相談から始めることをお勧めしています。

まとめ+今週動くこと3点

武蔵野市は独自基準がなく、市の手数料も無料という点で、認定取得のハードルが比較的低い自治体だと私は感じています。一方で市に直接申請できるわけではなく、事前確認という一段階が必ず挟まる点、そして固定資産税の減額率が23区の多くより低い3分の1である点は、他区の記事だけを読んでいると見落としがちな武蔵野市ならではの特徴です。

今週動けることとして、まず1つ目は長期修繕計画が7年以内に見直されているか、標準様式に沿っているかを点検すること。2つ目は修繕積立金の水準が著しく低額になっていないか、次回の大規模修繕費用の見積りと照らして確認すること。3つ目は事前確認をどのルート(マンション管理士・各種協会・マンション管理センター)に依頼するか、複数の窓口に見積りや相談を打診してみることです。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがありますので、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。

大規模修繕そのものの費用を圧縮したい場合は、ロープアクセスドットコムで公開している無足場工法の技術情報や、明誠の大規模修繕工事の料金の考え方のページもあわせてご覧ください。管理組合さま向けのご相談は管理組合さま向けサービスのご案内から、ロープアクセス工法のご紹介や実際の工事のイメージは明誠の施工事例でもご紹介しています。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけており、ロープアクセス工法における高所作業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。

よくあるご質問

Q. 武蔵野市への申請手数料は本当に無料ですか?

A. はい、市への認定申請手数料は無料です。ただし事前確認にかかる審査料(マンション管理センター利用時は長期修繕計画1計画あたり10,000円)と、支援システムの利用料1申請あたり10,000円は別途必要になります。

Q. 武蔵野市には独自の上乗せ基準がありますか?

A. ありません。武蔵野市は国が定める基本方針の基準以外の独自基準を設けておらず、認定基準は17要件のみです。

Q. 市の窓口に直接申請できますか?

A. できません。マンション管理士や各種協会、マンション管理センターなどによる事前確認を受け、事前確認適合証を取得したうえで、支援システムを通じて申請する流れになります。

Q. 認定の有効期間はどれくらいですか?

A. 5年間です。有効期間満了前に更新申請が必要になりますので、理事会の引き継ぎ事項として記録しておくことをおすすめします。

Q. 認定を取ると具体的にどんな経済的メリットがありますか?

A. 一定の要件を満たす大規模修繕を行った場合の固定資産税減額(武蔵野市は3分の1)、フラット35購入時の金利引下げ、共用部分リフォーム融資の金利引下げの3つが主な効果です。数値は制度改定により変わることがあるため、申請時点の最新情報をご確認ください。

Q. 固定資産税の減額率が23区と違うのはなぜですか?

A. マンション長寿命化促進税制の減額率は市区町村ごとに条例で定められており、東京23区の多くが2分の1を採用しているのに対し、武蔵野市は国の標準的な水準である3分の1を採用しているためです。

Q. 新築予定のマンションでも認定を受けられますか?

A. 新築予定マンションについては、区市ではなく(公財)マンション管理センターが「予備認定」の認定主体となる制度が用意されています。詳細はマンション管理センターにご確認ください。

Q. 事前確認にはどのくらい費用がかかりますか?

A. マンション管理センターに依頼する場合、長期修繕計画1計画あたり10,000円の審査料と、支援システム利用料1申請あたり10,000円がかかります。マンション管理士へ直接依頼する場合は依頼先ごとに費用が異なりますので、事前に見積りを取ることをおすすめします。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月25日

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月25日時点で公表されている武蔵野市、東京都、国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・要件変更があり得ます。実際に申請される前に、必ず武蔵野市都市整備部住宅対策課耐震助成等担当へ最新の内容をご確認ください。

出典・参考資料

江戸川区のマンション管理計画認定制度|築年数で変わる独自基準を本間社長が解説【2026年度版】

結論:江戸川区で管理計画認定を取ると何が変わるか、手数料はいくらか

先に結論からお伝えします。江戸川区でマンション管理計画認定を取得する場合、区への認定申請手数料は無料です。ただし(公財)マンション管理センターが運営する「管理計画認定手続支援サービス」を使って事前確認を受ける必要があり、そのシステム利用料として1申請あたり10,000円がかかります(出典:江戸川区「マンション管理計画認定制度」、2025年4月1日更新)。

私はこれまで多くの理事長さまから「認定を取ると結局いくらかかるんですか」というご質問をいただいてきました。江戸川区の場合、区役所に払うお金は0円ですが、事前確認の依頼先に払うシステム利用料と審査料で数万円程度は見ておく必要があるというのが正直なお答えです。江戸川区は令和5年8月15日から認定制度の運用を開始しており(出典:江戸川区「マンションの管理の適正化の推進に関する法律の改正について」通信、2024年12月発行)、23区の中では比較的早い時期から動き出した区の一つです。加えて江戸川区には、建築時期に応じた独自の届出要件があり、この点は他区の記事を読んで安心していると見落としがちなポイントですので、後ほど詳しくお伝えします。

認定主体はどこか(江戸川区が認定行政庁)

マンション管理計画認定制度は令和4年4月に始まった国の制度で、実際に審査・認定を行う「認定行政庁」(用語補足:認定の申請を受け付け、審査し、認定書を交付する権限を持つ役所のこと)は自治体ごとに異なります。特別区・中核市・施行時特例市はその区市自身が認定行政庁となり、それ以外の市町村(東京都では島しょ部など)は都道府県が担う仕組みです。

江戸川区は特別区にあたるため、江戸川区長が認定行政庁です。窓口は都市開発部建築指導課耐震化促進係が担当しています(出典:江戸川区「マンション管理計画認定制度」)。なお新築予定のマンションについては、区ではなく(公財)マンション管理センターが「予備認定」の認定主体となる点は他区にはあまり見られない特徴です。認定の有効期間は5年間で、更新時は従前の認定の有効期間満了日の翌日から起算して5年間となります(出典:同ページ)。私は現場で「一度取れば一生モノ」と誤解されている理事さんに何度もお会いしてきましたが、5年ごとに更新が必要な制度だという点は、初回のご説明で必ずお伝えするようにしています。

認定17要件(総会・修繕計画・修繕積立金・長期修繕計画 等)

国が定める認定基準は、大きく5分野・合計17項目に整理されています(出典:国土交通省 認定基準)。

管理組合の運営に関する2項目では、管理者等と監事が定められていること、総会(区分所有者の集会)が年1回以上開催されていることが求められます。管理規約に関する3項目では、規約そのものが整備されていることに加え、緊急時の専有部分への立入りに関する規定、修繕履歴の保管・情報提供に関する規定が必要です。管理組合の経理に関する3項目では、管理費と修繕積立金を区分経理していること、修繕積立金を他の会計に充当していないこと、滞納額が全体の1割以内に収まっていることなどが確認されます。

もっとも項目数が多いのが長期修繕計画に関する7項目で、標準様式に準拠した長期修繕計画と修繕積立金額が総会で決議されていること、7年以内に作成または見直しがされていること、計画期間が30年以上かつ大規模修繕工事が2回以上含まれていること、一時金徴収を予定していないこと、修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと、計画最終年度に借入金残高が残らないこと、その計画に基づく資金計画が適切であることが審査されます。最後にその他の2項目として、組合員名簿・居住者名簿の適切な管理と、都道府県等が定めるマンション管理適正化指針への適合性が確認されます(出典:国土交通省 認定基準)。江戸川区の場合、この最後の項目は東京都が定める適正化指針への適合という形で審査に組み込まれています。

独自基準の有無と実務への影響

ここが自治体ごとに差が出やすいポイントで、江戸川区は「独自基準あり」の区にあたります。渋谷区や世田谷区のように防災訓練やコミュニティ活動を独自要件として課す区がある一方、江戸川区の独自基準は建築時期に応じた行政への届出状況に着目したものです。区の資料によると、江戸川区では次の2点が独自基準として定められています。1つ目は昭和58年以前に建築されたマンションについて「マンションの管理状況届出書」を区に提出していること、2つ目は平成17年以降に建築されたマンションについて「管理組合等設立届」を区に提出していることです(出典:江戸川区「マンションの管理の適正化の推進に関する法律の改正について」通信、2024年12月発行)。

実務上のありがたい点として、江戸川区のページでは「区の独自基準に関して書類の提出は不要です。ただし、独自基準を満たしている確認が取れない場合は、別途書類の提出を求めることがあります」と案内されています(出典:江戸川区「マンション管理計画認定制度」)。つまり過去にきちんと届出を済ませているマンションであれば、認定申請の段階で追加の証明書類を用意する必要は基本的にありません。私が現場で見てきた限り、築40年を超えるような古いマンションほど、この管理状況届出書の存在自体を歴代の理事が把握していないケースが目立ちます。認定申請を検討し始めたタイミングで、まず区に「うちのマンションの届出状況はどうなっていますか」と一本電話を入れておくことを、私はいつも理事長さまにお勧めしています。

上乗せ基準の有無にかかわらず、修繕積立金の水準や長期修繕計画の中身が甘くて良いわけではありません。私が現場で一番悔しい思いをするのは、修繕積立金が「著しく低額」と判定されるほど乏しいまま大規模修繕の時期を迎えてしまった管理組合を見るときです。工事費そのものを圧縮できれば、同じ積立金額でも計画の実現性は上がります。実際に私たちが手がけた案件では、12階建て・外周100m程度の建物で、足場を組む従来工法だと概算180万円ほどかかる仮設費が、ロープアクセスドットコムで紹介している無足場工法(ロープアクセス工法。産業用ロープを使い、足場を組まずに外壁に近づく工法です)を使うと65万円程度に収まり、差額にして115万円ほど圧縮できたケースがありました(工事内容・建物条件により変動するため、あくまで目安としてご覧ください)。こうしたコスト最適化の積み重ねが、長期修繕計画の実現性、ひいては認定取得のしやすさにもつながっていきます。

手数料と申請ルート(事前確認あり・マンション管理センター経由)

手数料については冒頭でお伝えした通り、江戸川区への認定申請手数料は無料です。ただし新規申請では、区の窓口へ直接持ち込むのではなく、必ず(公財)マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」を経由して事前確認を受け、区に申請するという流れになります(出典:江戸川区「マンション管理計画認定制度」)。事前確認のシステム利用料は1申請あたり10,000円で、これとは別に事前確認を依頼する先(マンション管理業協会、マンション管理士会連合会、マンション管理センター、講習を受けたマンション管理士など複数のルートがあります)に支払う審査料が発生します。審査料の額は依頼先ごとに異なりますが、目安として1万円台からとお考えいただくとよいでしょう(出典:公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。私はいつも理事長さまに「区の手数料は無料でも、事前確認の実務費用はかかります」とお伝えするようにしています。

なお、軽微な変更にとどまる変更認定については、事前確認を経ずに区の耐震化促進係へ直接申請できる扱いになっています。認定申請には、そもそも管理組合の集会(総会)で管理計画について決議していることが前提になりますので、この点は総会シーズンの議案として早めに組み込んでおくことをおすすめします。

認定の3つの経済効果(長寿命化促進税制/フラット35/共用部リフォーム融資)

管理計画認定を取得すると、主に3つの経済的なメリットにつながります。

1つ目は固定資産税の減額です。マンション長寿命化促進税制では、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事の3工事すべてを実施し、築20年以上・総戸数10戸以上などの要件を満たした認定マンションについて、工事完了の翌年度分の固定資産税(家屋部分)が減額されます。東京23区では減額率が2分の1と定められており、工事完了日から3か月以内に申告する必要があります。対象となる工事の完了時期は令和5年4月1日から令和9年3月31日までとされています(出典:東京都主税局、国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。

2つ目はフラット35の金利引下げです。認定マンションを購入する場合、借入金利が当初5年間で年0.25%引き下げられる制度が用意されています。3つ目は住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で、認定マンションが計画に基づいて修繕工事を行う際、基準金利から年0.2%程度の引下げが受けられます(出典:住宅金融支援機構関連資料)。金利や税制の数字は年度や制度見直しによって変わり得るため、正直に申し上げると、実際に申請される時点で最新の数値を住宅金融支援機構(jhf.go.jp)や江戸川区の窓口で確認していただくのが確実です。

逆算スケジュール(総会決議→書類準備→認定申請→交付)

認定取得までの流れは、おおむね次のように逆算して考えるとスムーズです。まず理事会・総会で長期修繕計画と修繕積立金額の見直しを決議します。標準様式に沿った計画になっているか、7年以内の見直しか、30年以上・大規模修繕2回以上を含むかを、この段階で確認しておく必要があります。

次に管理規約や総会議事録、組合員名簿・居住者名簿などの必要書類を整えるのと並行して、自分たちのマンションが「管理状況届出書」または「管理組合等設立届」を過去に区へ提出済みかどうかを確認します。未提出のまま申請すると、認定申請後に区から連絡が来て追加提出を求められる流れになりますので、先に確認しておいた方が段取りは早く進みます。書類がそろったら、マンション管理センターなどの事前確認ルートに申し込み、事前確認適合証の交付を受けます。最後にその適合証を添えて江戸川区へ申請し、審査を経て認定書が交付されるという流れです。私の経験上、書類準備から適合証の取得までに数週間から1〜2か月程度を見込んでおくと、総会シーズンに慌てずに済みます。

まとめ+今週動くこと3点

江戸川区は区の手数料が無料な点は他区と共通していますが、築年数に応じた独自の届出要件があるという点で、渋谷区・世田谷区型(防災・コミュニティ上乗せ)とも、葛飾区型(独自基準なし)とも違う、江戸川区ならではの特徴を持つ自治体だと私は感じています。

今週動けることとして、まず1つ目は自分たちのマンションが「管理状況届出書」または「管理組合等設立届」を過去に区へ提出しているかどうかを、理事会で確認すること。2つ目は長期修繕計画が7年以内に見直されているか、標準様式に沿っているかを点検すること。3つ目は修繕積立金の水準が著しく低額になっていないか、次回の大規模修繕費用の見積りと照らして確認することです。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがありますので、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。

大規模修繕そのものの費用を圧縮したい場合は、ロープアクセスドットコムで公開している無足場工法の技術情報や、明誠の大規模修繕工事の料金の考え方のページもあわせてご覧ください。管理組合さま向けのご相談は管理組合さま向けサービスのご案内から、ロープアクセス工法のご紹介や実際の工事のイメージは明誠の施工事例でもご紹介しています。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけており、ロープアクセス工法における高所作業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。

よくあるご質問

Q. 江戸川区への申請手数料は本当に無料ですか?

A. はい、区への認定申請手数料は無料です。ただしマンション管理センターなどの事前確認にかかるシステム利用料(1申請10,000円)や審査料は別途必要になります。

Q. 江戸川区には独自の上乗せ基準がありますか?

A. あります。渋谷区のような防災訓練やコミュニティ活動の要件ではなく、昭和58年以前建築のマンションは「管理状況届出書」、平成17年以降建築のマンションは「管理組合等設立届」を過去に区へ提出していることが独自基準として求められます。

Q. 届出書類を提出していない場合はどうなりますか?

A. 認定申請時に改めて書類を用意する必要は基本的にありませんが、区が届出状況を確認できない場合は、申請後に区から連絡が入り追加提出を求められることがあります。

Q. 区の窓口に直接申請できますか?

A. 新規申請は原則できず、マンション管理センターなどの事前確認を経て事前確認適合証を取得したうえで区へ申請する流れになります。軽微な変更申請のみ、区の耐震化促進係へ直接申請できる扱いです。

Q. 認定の有効期間はどれくらいですか?

A. 5年間です。更新時は従前の認定の有効期間満了日の翌日から起算して5年間となりますので、理事会の引き継ぎ事項として記録しておくことをおすすめします。

Q. 認定を取ると具体的にどんな経済的メリットがありますか?

A. 一定の要件を満たす大規模修繕を行った場合の固定資産税減額(東京23区は建物部分が2分の1)、フラット35購入時の金利引下げ、共用部分リフォーム融資の金利引下げの3つが主な効果です。数値は制度改定により変わることがあるため、申請時点の最新情報をご確認ください。

Q. 新築予定のマンションでも認定を受けられますか?

A. 新築予定マンションについては、区ではなく(公財)マンション管理センターが「予備認定」の認定主体となる制度が用意されています。詳細はマンション管理センターにご確認ください。

Q. 事前確認にはどのくらい費用がかかりますか?

A. システム利用料が1申請あたり10,000円で、これとは別に依頼先ごとの審査料がかかります。目安として1万円台からとお考えいただき、事前に見積りを取ることをおすすめします。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月25日

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月25日時点で公表されている江戸川区、東京都、国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・要件変更があり得ます。実際に申請される前に、必ず江戸川区都市開発部建築指導課耐震化促進係へ最新の内容をご確認ください。

出典・参考資料

【令和8年度】武蔵野市の12条点検・外壁打診|報告書の提出先は武蔵野市役所、令和8年度の対象用途と打診調査の㎡単価

武蔵野市でマンションやビルを所有されている方から、「報告書は東京都のセンターに送ればいいんですよね」という質問をよくいただきます。

これは半分だけ正解で、半分は誤解です。武蔵野市の建物の場合、特定建築物調査報告書の提出先は東京都のセンターではなく、武蔵野市役所そのものです。23区の物件では逆に「区役所ではなく都のセンターへ提出」というルールになるため、23区と多摩地域の両方で物件を持つオーナーさまほど混同しやすいポイントです。

この記事では、令和8年度(2026年度)に武蔵野市で定期報告の対象年を迎えるのはどの用途の建物か、なぜ武蔵野市は23区と提出先が違うのか、外壁の全面打診が必要になる10年トリガーをどう数えるか、そして吉祥寺・武蔵境・三鷹駅周辺という住宅密集地のなかで、打診調査を足場とロープアクセスのどちらで進めるべきかを、費用の目安まで含めて整理します。

私は本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。武蔵野市でも吉祥寺、武蔵境、西久保、境南町あたりの物件を数多く見ています。制度の教科書的な解説ではなく、理事会やオーナーさまと実際に交わしている話をそのまま書きます。

更新日:2026年9月25日

結論:令和8年度に武蔵野市で報告年を迎えるのは「用途コード30番台」。提出先は武蔵野市役所です

先に結論を表でまとめます。

項目 内容
令和8年度の特定建築物定期調査の報告年次 用途コード30番台(百貨店・マーケット等の物販店舗、飲食店・遊技場・展示場〈地階または3階以上かつ延べ500㎡超〉、複合用途建築物〈3階以上かつ500㎡超〉、事務所〈5階以上かつ延べ2,000㎡超、または3階以上かつ1,000㎡超〉等)
報告期間 令和8年5月1日〜令和8年10月31日
共同住宅(用途コード40番台) 令和8年度は報告年次ではない(3年周期で令和6年度・令和9年度・令和12年度)
特定行政庁 武蔵野市(多摩地域26市のうち、八王子市・立川市・武蔵野市・三鷹市・府中市・調布市・町田市・日野市・国分寺市・西東京市・小平市の11市は自らが特定行政庁)
特定建築物調査報告書の提出先 武蔵野市 都市整備部 建築指導課 構造設備係(23区とは異なり東京都防災・建築まちづくりセンターではない)
電話/ファクス 0422-60-1877/0422-51-9250
使用する様式 武蔵野市独自の第8号様式(特定建築物等定期調査報告書・報告概要書・調査結果表)
提出方法 電子申請は不可。郵送または窓口持参(窓口相談は予約制、平日午前9時〜正午が中心)
外壁全面打診の周期 竣工または外壁改修からおおむね10年に一度

出典:武蔵野市「特定建築物、防火設備、建築設備、昇降機等の定期調査・検査報告」(更新日2025年8月21日)、武蔵野市「定期報告関係」様式ページ

この記事を書いている時点で、令和8年10月31日の報告期限まで残り約1か月です。用途コード30番台の建物をお持ちで調査会社がまだ決まっていない方は、9月中が実質的な判断のリミットです。

この記事で答える質問

  • 令和8年度に武蔵野市で12条報告が必要なのは、どんな建物か
  • 報告書はどこに出すのか。23区の物件と何が違うのか
  • 武蔵野市独自の様式とは何か。どこで入手できるか
  • 外壁の全面打診が必要になるのはどういうときか。起算日はいつか
  • 令和7年7月に施行された告示改正で、何が変わったのか
  • 打診調査は実際いくらかかるのか。足場とロープアクセスでいくら差が出るのか

建築基準法第12条とは:4種類の報告があり、武蔵野市は「特定建築物」だけ自庁で受け付けます

ここでつまずく方が非常に多いので、最初に整理します。

建築基準法第12条は、ホテル、デパート、病院、飲食店、共同住宅など不特定多数の人が利用する建築物(特定建築物)について、有資格者による定期的な調査・検査と、特定行政庁への報告を所有者・管理者に義務づけています。武蔵野市は公式サイトで、この制度の目的を「建築物の維持保全の状態を把握し、事故を未然に防止するための適切な指導をおこなっている」と説明しています。

報告は4種類に分かれ、武蔵野市の様式ページを見ると、種類ごとに様式の入手先が違います。

種類 対象 様式の入手先
特定建築物(調査) 敷地、一般構造、構造強度、防火・避難関係 武蔵野市独自の第8号様式(市の様式ページから直接ダウンロード)
防火設備(検査) 防火戸、防火シャッター、耐火クロススクリーン等 東京都防災・建築まちづくりセンター
建築設備(検査) 機械換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給排水設備 日本建築設備・昇降機センター
昇降機等(検査) エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機等 東京都昇降機安全協議会

外壁の打診調査が関わるのは、一番上の「特定建築物(調査)」だけです。ここを押さえてください。そして武蔵野市の場合、この特定建築物の報告書は市独自の様式で作成し、東京都のセンターではなく武蔵野市役所そのものへ提出します。防火設備・建築設備・昇降機等の3種類は様式の入手先が外部機関になっているため、それぞれの提出先の最新の取扱いは、様式を取得する際に武蔵野市建築指導課構造設備係(0422-60-1877)へ確認することをおすすめします。

エレベーターの保守業者から「12条の検査は終わっています」と言われても、それは昇降機等の定期検査であり、外壁の話は一切含まれていません。この混同のまま10年以上が過ぎていた武蔵野市内の賃貸マンションを、私自身これまでに何件も見てきました。

共同住宅の住戸内は調査対象から外れます

定期調査・検査の対象は、共同住宅の場合、共用部分(外壁、廊下、階段、エントランス等)が中心です。区分所有者の専有部にまで一律に立ち入る調査ではありません。理事会でこの点を先に共有しておくと、居住者への説明がぐっと楽になります。

なぜ武蔵野市は23区と提出先が違うのか:特定行政庁の仕組み

ここが武蔵野市の物件オーナーさまが最も誤解しやすいポイントです。

23区はいずれも特定行政庁ですが、特定建築物・防火設備の報告書の受付事務は、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターに集約されています。私が以前に書いた練馬区や江戸川区の記事でも、「報告書は区役所ではなくセンターへ」とご案内しました。

一方、武蔵野市を含む多摩地域の11市(八王子市・立川市・武蔵野市・三鷹市・府中市・調布市・町田市・日野市・国分寺市・西東京市・小平市)は、建築確認だけでなく定期報告の受付も市が自分で行う特定行政庁です。そのため武蔵野市の物件については、23区のような「区は特定行政庁だが報告書はセンターへ」という分離構造がなく、特定建築物調査報告書は武蔵野市 都市整備部 建築指導課 構造設備係に直接届きます。

この違いを知らずに、23区向けの一般的な解説記事を読んで「東京都のセンターに送ればいい」と思い込んでしまうと、提出先を誤り、報告期限直前に慌てて出し直すことになります。武蔵野市の物件を担当する調査会社・管理会社の方は、この点を必ず押さえておいてください。

なお、多摩地域でも特定行政庁に指定されていない市町村(武蔵野市近隣にはありませんが)の物件は、東京都の多摩建築指導事務所が窓口になります。武蔵野市はこのケースには該当しません。

窓口は予約制です

武蔵野市建築指導課への申請・相談は、現在予約制が基本です。平日午前9時〜正午を中心とした時間帯が案内されており、午後は職員が現場検査で不在にしていることがあります。電子による書類の受付は行っておらず、報告書は郵送または窓口持参での提出になります。報告期限が近づく10月に窓口が混み合う前に、早めに予約を取ることをおすすめします。

外壁の全面打診が必要になるのは、いつからか

ここが本題です。

国土交通省は、外装仕上げ材等におけるタイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く)、モルタル等の劣化および損傷の状況の調査について、平成20年国土交通省告示第282号で次のように定めています。

  • おおむね6か月から3年以内に一度:手の届く範囲の打診等
  • おおむね10年に一度:落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等

出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」

10年の起算日の数え方

実務での数え方はシンプルです。

状況 起算日
竣工後、一度も全面打診をしていない 竣工日
前回、全面打診を実施した 前回の全面打診の実施日
外壁の全面改修工事(塗替え・タイル張替え等)を行った その改修工事の完了日

この起算日から10年を超えた後の、最初の報告時期に全面打診が必要になります。逆に言えば、大規模修繕で外壁を全面改修すれば、そこから10年のカウントがリセットされます。大規模修繕と12条点検のタイミングを合わせると、調査費用と足場費用の二重払いを避けられます。ここは理事会で必ず検討してほしい論点です。

打診以外の方法も認められています

令和4年1月18日付けで平成20年国土交通省告示第282号が一部改正され、無人航空機(ドローン)による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものが調査方法として明確化されました。

ただし現場感覚で言うと、ドローン赤外線は形状が単純で、周囲に十分な離隔があり、日射条件が整った建物で威力を発揮します。武蔵野市に多い、隣地との隙間が狭い中層マンションや、吉祥寺周辺の商業ビルのように隣棟間隔が詰まった物件では、条件が合わないことが少なくありません。明誠ではドローンを使った外壁調査とロープアクセスによる直接打診を、建物ごとに使い分けています。

令和7年7月施行の告示改正で、調査項目と判定基準が変わりました

全国共通の改正として、次の2つの告示が施行されています。

  • 令和6年国土交通省告示第974号(令和6年6月28日公布、令和7年7月1日施行)
  • 令和7年国土交通省告示第53号(令和7年1月29日公布、令和7年7月1日施行)

これにより、定期調査・検査等の項目、事項、方法および結果の判定基準、ならびに調査結果表等の見直しが行われました。詳細は東京都都市整備局「2.定期調査・検査制度改正の内容」に掲載されています。

実務上の意味はひとつです。令和7年7月1日以降に実施する調査は、新しい判定基準と新しい様式で行う必要があるということ。武蔵野市の第8号様式も改正後の版を使う必要があります。調査会社に見積を依頼するときは「令和7年7月施行の改正後の様式・判定基準に対応していますか」と一言確認してください。

武蔵野市のマンション施策:管理適正化推進計画のもとで報告義務の重みが増しています

武蔵野市は、市内の分譲マンションの適正な管理を後押しするため武蔵野市マンション管理適正化推進計画を策定し、あわせてマンション管理計画認定制度(市長認定、認定申請手数料は無料)も運用しています。市は独自の上乗せ基準を設けず、国の基本方針に掲げる項目のみで認定を行う方針を取っています。

出典:武蔵野市「武蔵野市マンション管理適正化推進計画」、武蔵野市「マンション管理計画認定制度」

管理計画認定制度と12条点検は別の制度ですが、どちらも「建物が適切に維持管理されているか」を行政が見に来る局面という点で根っこは同じです。認定申請を検討している管理組合ほど、外壁全面打診の報告履歴を先にきれいにしておくと、あとの手続きがスムーズになります。管理計画認定制度の詳しい要件は、別の記事で改めて整理します。

武蔵野市で外壁全面打診を進めるときの3つの工法

全面打診には「手が届かない高所までアクセスする手段」が必要です。選択肢は実質3つです。

工法 概要 武蔵野市での向き・不向き
仮設足場 建物全周に足場を組む 形状が複雑な建物、同時に大規模修繕を行う場合に有利。敷地に余裕が必要
ロープアクセス(無足場工法) 屋上から産業用ロープで降下して直接打診 隣地との隙間が狭い、吉祥寺・武蔵境周辺の商業地で敷地に余裕がない、調査だけを先行したい場合に有利
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け 低層部は足場、高層部・狭隘部はロープ。総合コストを最適化できる

武蔵野市はJR中央線沿線の住宅・商業混在エリアで、隣地境界まで余裕のない中層マンションや、駅周辺の狭小敷地の商業ビルが多いのが特徴です。足場を組む場合、隣地への越境調整や歩行者動線の確保が工程に乗ってきます。ここが見積に効いてきます。

株式会社明誠は、この3工法をすべて自社の判断で提案できる、日本でも数少ない会社です。工法の技術的な背景については、同業者・加盟希望者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムでも詳しく解説しています。発注者側の視点での整理は明誠のロープアクセス工法のページをご覧ください。

費用の目安:打診調査の㎡単価と、足場との差額

金額の話をします。実際の見積は建物の規模・形状・立地で大きく変動するため、あくまで目安・レンジとしてお読みください。

打診調査そのものの単価

項目 単価の目安
外壁全面打診調査 250〜500円/㎡
外壁塗装(大規模修繕時) 3,500〜4,500円/㎡
屋上防水 5,000〜8,000円/㎡

足場とロープアクセスの差額(モデルケース)

武蔵野市によくある「10階建て・外周80m・工期3か月」のマンションを想定した参考値です。

項目 仮設足場 ロープアクセス
仮設費用の目安 約168万円 約59万円
差額 — ▲約109万円
調査だけの工期 足場架設・解体を含めて数週間 数日〜1週間程度
居住者への影響 窓が塞がれる、洗濯物が干せない、防犯面の不安 該当面の作業時間帯のみ

30戸規模のマンションの大規模修繕は総額3,500〜5,000万円程度、そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。調査のためだけに足場を組むかどうかは、この比率を見れば判断材料になります。料金の考え方は明誠の料金に対する考え方にまとめています。

ただし、足場が正解になるケースも確実にあります。 打診調査と同時に大規模修繕を実施するなら、足場を一度組んで全工程を終わらせたほうが総額は下がります。「調査だけ先に、修繕は2〜3年後に」という段階的な進め方をするときに、ロープアクセスの費用対効果が最も大きくなります。ここを取り違えないでください。

私はいつも理事長さまに、「まず調査だけ済ませて、修繕の判断はそのあとで」とお伝えしています。順番を分けたほうが、結果的に総費用を抑えられるケースが多いというのが、現場で20年やってきた私の実感です。

安全と品質をどう担保するか

高所作業である以上、安全管理が品質の前提です。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、明誠は日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。

また明誠は、日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職に加盟いただいています。打診で不具合が見つかった後、補修まで同じ体制で一貫して対応できるのはこのためです。安全管理の具体的な取り組みは明誠の安全管理の考え方を、訓練体制や技術基準の詳細はロープアクセスドットコムをご覧ください。

明誠のこれまでの施工事例は https://rita-construction.com/renew/category/%e6%96%bd%e5%b7%a5%e4%ba%8b%e4%be%8b/ からご覧いただけます。

武蔵野市で打診調査を依頼する前のチェックリスト

理事会やオーナーさまにお渡ししている確認項目です。

  1. 建物の用途コードは何番台か(令和8年度は30番台が報告年次)
  2. 検査済証の交付日はいつか(初回免除の判定に必要)
  3. 前回の全面打診の実施日、または外壁の全面改修工事の完了日はいつか
  4. 提出先が武蔵野市役所建築指導課構造設備係であることを調査会社が理解しているか(23区向けの提出先と混同していないか)
  5. 見積が令和7年7月施行の改正後の様式・判定基準に対応しているか
  6. 打診調査の見積は㎡単価で提示されているか(一式表記は比較できません)
  7. 仮設費用が足場前提かロープアクセス前提か、内訳で分かれているか
  8. 打診で不具合が出た場合の補修工事の単価まで提示されているか
  9. 大規模修繕の実施予定時期と、調査時期を揃えられないか検討したか

特に4番です。調査会社が23区物件と多摩地域物件を並行して担当している場合、提出先の思い込みで書類を誤送してしまうミスを、私は実際に見たことがあります。

よくあるご質問

Q. 武蔵野市の建物ですが、報告書は東京都のセンターに送ればいいですか?

A. いいえ。武蔵野市は自ら特定行政庁であり、特定建築物調査報告書の提出先は武蔵野市 都市整備部 建築指導課 構造設備係(0422-60-1877)です。23区の物件は東京都防災・建築まちづくりセンターが窓口になりますが、武蔵野市はそれとは異なる仕組みです。

Q. 令和8年度にうちのマンションは報告が必要ですか?

A. 共同住宅(用途コード40番台)は3年周期で、令和8年度は報告年次ではありません。次の報告年次は令和9年度(令和9年5月1日〜10月31日)です。ただし店舗や事務所が併設された複合用途の建物は判定が変わることがあるため、武蔵野市建築指導課構造設備係へお問い合わせください。

Q. 外壁の全面打診の費用はいくらかかりますか?

A. 打診調査そのものは250〜500円/㎡が目安です。これに高所へのアクセス費用が加わります。10階建て・外周80mの建物で、仮設足場なら約168万円、ロープアクセスなら約59万円が参考値で、差額は約109万円です。物件の形状や立地で変動しますので、無料で概算のお見積りをお出しします。

Q. ロープアクセスだと打診の精度は落ちませんか?

A. 落ちません。ロープアクセスは作業員が壁面に直接張り付いてテストハンマーで打診するため、足場上の打診とまったく同じ直接打診です。むしろ足場の布板の位置に縛られないぶん、目地際や開口部まわりなど確認したい箇所へ自由に寄れます。

Q. 工期はどれくらい短くなりますか?

A. 調査だけであれば、足場は架設と解体を含めて数週間かかるのに対し、ロープアクセスは数日〜1週間程度で完了します。修繕工事まで含めた場合も、ロープアクセス工法は足場工法のおおむね60%程度の工期が目安です。

Q. 報告を出さないとどうなりますか?

A. 建築基準法第12条に基づく報告は所有者・管理者の法的義務です。報告をしなかった場合や虚偽の報告をした場合には、同法に罰則の定めがあります。それ以上に、外壁タイルが落下して通行人に当たれば、所有者が工作物責任を問われます。武蔵野市は駅周辺の商業地と住宅地が入り組んだエリアです。リスクの所在を具体的に考えてみてください。

Q. 報告書の提出は郵送でも大丈夫ですか?

A. はい。武蔵野市建築指導課は「電子による書類の受付は行っていない」と案内しており、郵送または窓口持参での提出になります。窓口相談は予約制で、平日午前9時〜正午が中心です。報告期限直前の10月は窓口が混み合いやすいため、早めの相談をおすすめします。

Q. 調査で不具合が見つかったら、すぐ補修しないといけませんか?

A. 落下のおそれがある部分は、応急措置を含めて速やかな対応が必要です。一方、直ちに危険がない劣化は、次回の大規模修繕にまとめたほうが総額を抑えられる場合があります。どこまでが「早急な対応が必要」で、どこからが「次の修繕でよい」かの線引きを、調査報告と同時に示してくれる会社を選んでください。

まとめ:武蔵野市の12条点検で、今日決められること

  • 令和8年度の報告年次は用途コード30番台、期限は令和8年10月31日
  • 共同住宅の次の報告年次は令和9年度
  • 武蔵野市は自ら特定行政庁のため、報告書の提出先は東京都のセンターではなく武蔵野市役所建築指導課構造設備係
  • 使用する様式も武蔵野市独自の第8号様式。電子申請不可で郵送または窓口持参
  • 外壁全面打診は竣工または外壁改修から10年。大規模修繕で起算日はリセットされる
  • 令和7年7月1日施行の告示改正に対応した新様式・新判定基準での調査が必要
  • 調査単価は250〜500円/㎡。足場とロープアクセスの仮設費差は約109万円が参考値

武蔵野市の物件で「うちは足場とロープアクセスのどちらが得か」を判断したい方は、建物の階数・外周長・竣工年・前回調査時期の4点をお知らせください。概算の比較表をお出しします。ご相談は明誠のお問い合わせフォームから承ります。管理組合の皆さま向けの進め方は管理組合向けサービスのページ、収益物件をお持ちのオーナーさま向けにはオーナー向けサービスのページもご用意しています。

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月25日時点で公表されている武蔵野市および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。なお、武蔵野市の「特定建築物、防火設備、建築設備、昇降機等の定期調査・検査報告」ページは更新日が2025年8月21日であり、令和8年度の運用について変更が生じている可能性があります。制度は年度途中でも改正があり得ます。実際に報告される前に、必ず武蔵野市 都市整備部 建築指導課 構造設備係(0422-60-1877)へ最新の内容をご確認ください。

参考にした一次情報

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月25日

【令和8年度版】足立区の12条点検・外壁全面打診|旧耐震ストックと10年トリガーの数え方

足立区で分譲マンションやビルをお持ちの方から、私が繰り返し受けるご相談があります。

「区から定期報告の書類が届いたのですが、うちのマンションは外壁の全面打診までやる必要があるのでしょうか」

この記事で答える質問はひとつです。足立区にある自分の建物は、いつ外壁の全面打診が必要になるのか。そして、そのコストをどう抑えるのか。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、足立区を含む東京・関東一円でマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に20年以上たずさわってきました。足立区は竹ノ塚、綾瀬、西新井、北千住、江北といったエリアに、昭和40年代から50年代にかけて建てられた分譲マンションや団地型住宅がまとまって残るまちです。ここでは足立区の一次情報にあたりながら、実務のコスト感まで含めて整理します。


結論:足立区で12条点検の対象になる建物と、全面打診が必要になる年

先に結論から申し上げます。

A. 足立区内の一定規模以上の共同住宅・ビル・ホテル等は、建築基準法第12条第1項に基づき、特定行政庁(足立区長)への定期調査報告の対象です。共同住宅の場合、報告は3年ごとです。(出典:足立区「特定建築物定期調査報告」)

B. 外壁にタイル、石貼り(乾式工法を除く)、モルタル等が使われている建物は、下記いずれかの日が属する年度の「次の年度の4月1日」から起算して10年を超えて最初に迎える報告日までに、落下により歩行者などに危害を加えるおそれのある部分の全面打診等が求められます。

  • 検査済証の交付を受けた日
  • 外壁の全面改修が完了した日
  • 落下により歩行者などに危害を加えるおそれのある部分の全面的なテストハンマーによる打診等が完了した日

例えば、検査済証の交付が平成28年度であれば、起算開始日は平成29年4月1日。ここから10年を超える令和9年4月1日以降、最初の報告日までに全面打診等が必要になる、という数え方です。「築10年でいきなり」ではなく、年度末で切り上げた起算日から10年という点を、私は理事会でいつも図に描いてご説明しています。

C. ただし、定期調査の実施から3年以内に外壁改修または全面打診等が行われることが確実である場合、あるいは落下物防護ネットの設置など別途歩行者等の安全を確保する対策を講じている場合は、この限りではありません。

このCの猶予が、実務では大きな意味を持ちます。詳しくは後半で触れます。


建築基準法第12条第1項とは何か(定期調査報告のしくみ)

建築基準法第12条第1項は、多数の方が利用する建築物を「特定建築物」と位置づけ、所有者・管理者に対して劣化・損傷および維持保全の状況を有資格者に調査させ、その結果を特定行政庁へ定期的に報告することを求める規定です。足立区の場合、報告先は区長になります。

調査できるのは、一級建築士、二級建築士、または特定建築物調査員に限られます。管理会社の担当者や理事の方が目視で済ませる、というものではありません。

現場ではこの制度を「12条点検」と呼ぶことが多いのですが、正確にはもう少し細かく分かれています。

区分 根拠 対象 頻度(東京都・足立区の共同住宅の場合)
特定建築物定期調査 法第12条第1項 建築物本体(外壁・避難経路等) 3年ごと
防火設備定期検査 法第12条第3項 防火扉・防火シャッター等 毎年
建築設備定期検査 法第12条第3項 換気・排煙・非常用照明等 1年ごと
昇降機等定期検査 法第12条第3項 エレベーター・エスカレーター 1年ごと

外壁の全面打診が関わってくるのは、このうち一番上の特定建築物定期調査です。

新築直後については「初回免除」があります。特定建築物は、検査済証の交付を受けた日の属する年度の翌年度以降の2回目の報告時期から報告が必要です。報告の受付期間は該当年度の5月1日から10月31日までが基本で、理事会の年間スケジュールを組むときの起点になります(出典:東京都都市整備局「3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」)。


足立区で全面打診が必要になるトリガーを整理する

私が理事長さまにご説明するとき、いつも4つのトリガーとして並べています。

  1. 起算日から10年を超えた最初の報告日(区の公式説明そのもの)
  2. 外壁の全面改修が完了してから10年(前回の大規模修繕がリセットポイントになります)
  3. 目視や部分打診で異常が認められた場合(10年未満でも、危害のおそれのある部分の全面打診が求められます)
  4. 落下事故が発生した場合(定期報告とは別に、事故報告書の提出が必要です)

3番目を軽く見ないでいただきたいのです。築8年でもタイルの浮きが見つかれば全面打診に進むケースは、私自身、足立区内の物件でも経験しています。

もうひとつ、打診以外の選択肢が告示で認められている点も押さえておきましょう。平成20年国土交通省告示第282号は、おおむね6か月から3年以内に一度の手の届く範囲の打診等に加え、おおむね10年に一度の全面的な打診等を求めています。令和4年1月18日付の告示一部改正により、無人航空機(ドローン)による赤外線調査であってテストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものが調査方法として明確化されました(出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」)。同等以上の精度の判定にあたっては、一般財団法人日本建築防災協会が取りまとめたガイドラインを参照することとされています。


足立区固有の運用:窓口・提出先・様式

ここからが足立区の実務です。他区と微妙に違う部分があります。

提出先は区役所ではない(特定建築物と防火設備)

足立区の場合も、特定建築物定期調査報告と防火設備定期検査報告の提出先は、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターです(新宿区西新宿七丁目7番30号、建築防災課 電話03-5989-1929)。「区役所の建築課に持ち込む」と思い込んでいる管理組合の方に、私は何度も窓口の違いをご案内してきました。

一方、建築設備定期検査報告は一般財団法人 日本建築設備・昇降機センター、昇降機定期検査報告は一般社団法人 東京都昇降機安全協議会が受付です。報告の種類によって宛先が3つに分かれる、と覚えておいてください。

延べ面積1万㎡超は東京都の所管

敷地内に延べ面積10,000平方メートルを超える建築物がある場合は、足立区ではなく東京都都市整備局市街地建築部建築企画課(建築安全担当)の所管になります。竹の塚周辺や江北の大型団地、大規模なビル・ホテルはここに該当することがあります。最初の問い合わせ先を間違えると、それだけで手続きが停滞します。

足立区の相談窓口

定期報告の運用や様式に関する問い合わせは、足立区建築室建築審査課設備係(電話03-3880-5278・直通、ファクス03-3880-5615)が窓口です(出典:足立区「特定建築物定期調査報告」)。同ページでは定期調査報告書、定期調査報告概要書、建築物除却・使用休止届などの様式一式もダウンロードできます。


足立区の建物ストック事情:旧耐震基準の145棟という数字

足立区は平成29年7月から10月にかけて分譲マンションの実態調査を行い、平成30年1月に報告書を公開しています。それによれば、足立区内の分譲マンションは1,043棟・58,777戸。築年帯別の内訳は、1981年(昭和56年)以前が145棟(全体の約14%)、1982年から1993年が351棟、1994年から2005年が391棟、2006年以降が156棟でした(出典:足立区「平成29年度足立区分譲マンション実態調査報告書」)。

このデータはやや古く、直近の再調査結果は本記事執筆時点で確認できていません。ただし報告書の中で私が特に注目しているのは、1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準の建物では、約20%に著しい劣化がみられるという指摘です。1982年以降の物件では、この比率が下がっています。

足立区は竹の塚、綾瀬、西新井、江北といったエリアに、この旧耐震基準の年代に建てられた団地型・中規模のマンションがまとまって残っています。私が現場で見ている限り、この世代の建物は外壁がモルタル仕上げまたはタイル貼りであることが多く、全面打診の対象になりやすいストックです。前回の大規模修繕から10年以上が経過している物件も少なくありません。

先日、足立区内の築42年・6階建て・32戸のマンションで打診調査に入りました。前回の大規模修繕が16年前。理事長さまは「まだ大丈夫だろう」とおっしゃっていましたが、南面の開口部まわりと妻壁で、外壁面積の6%弱に浮きが確認されました。私が一番悔しい思いをするのは、こういう「もう少し早ければ選択肢が広かった」ケースです。


実務コスト感:打診調査の㎡単価と、足場費の重さ

理事会で真っ先に出るのがお金の話なので、目安のレンジを正直に書きます。

項目 費用の目安(参考値) 備考
外壁打診調査 250〜500円/㎡ 調査方法・階高・足場の有無で変動
仮設足場 800〜1,200円/㎡(架面積) 建物形状・道路条件で大きく変動
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡ 塗料グレードによる
防水(屋上・バルコニー) 5,000〜8,000円/㎡ 工法による
30戸規模マンションの大規模修繕総額 3,500〜5,000万円程度 うち仮設足場が15〜25%を占めることが多い

すべて目安・レンジであり、実際の見積は物件の規模や立地、劣化状況で大きく変動します。ここは正直に申し上げます。

注目していただきたいのは、仮設足場が総工費の15〜25%を占めるという点です。12条点検の全面打診のためだけに足場を架けるとなると、この費用が丸ごと調査費に乗ってきます。

具体例で比べます。10階建て・外周80m・工期3か月の物件で試算すると、足場を組む場合の仮設費が約168万円に対し、ロープアクセス工法なら約59万円。差額はおよそ109万円です(当社の標準的な試算例。物件条件により変動します)。打診調査だけのために168万円の足場を架けるか、59万円でロープアクセスにするか。修繕積立金が潤沢とは言えない管理組合にとって、この差は小さくありません。


ロープアクセス工法が足立区の12条打診で選ばれる3つの理由

私はロープアクセス工法(無足場工法。産業用ロープで作業員が壁面に直接アクセスする工法です)を、12条点検の全面打診と相性の良い手段としてご提案しています。技術的な背景や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。

理由は3つです。

理由1:仮設コストが下がる

足場を架けずに全面打診ができるため、調査費の大半を占めていた仮設費を圧縮できます。「調査だけで100万円超」という理事会の心理的ハードルが、ぐっと下がります。

理由2:居住者の生活影響が小さい

足場を組むと、バルコニーの使用制限、洗濯物、防犯(足場からの侵入懸念)、日照と、居住者の不満が一気に噴き出します。高齢化が進む団地型マンションが多い足立区では、この負担が特に重く出ます。ロープアクセスなら屋上からの吊り下げで作業しますので、足場の設置・解体の期間がなく、生活影響の期間そのものが短くなります。私はこれを「住みながら直せる工法」とお伝えしています。

理由3:住宅密集地・狭小道路の物件に対応できる

足立区は、竹の塚や北千住の駅周辺、旧日光街道沿いなど、道路が狭く隣地と近接した建物が少なくありません。足場の架設が物理的に難しい、あるいは道路占用許可の調整で工期が読めない、という物件です。こうした条件でロープアクセスが効いてきます。実際の施工手順や訓練体制はロープアクセスドットコムの技術解説を、明誠側の対応範囲は明誠のロープアクセス工法の技術詳細をご覧ください。

なお、株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組みで公開しています。


12条点検を大規模修繕と一体化する、という考え方

ここからが本題です。私が足立区の管理組合さまに最もお伝えしたいのは、12条点検の全面打診と大規模修繕を別々に発注しないでくださいということです。

理由は3つあります。

1つ目。仮設費が一度で済みます。 打診調査で足場を架け、1年後の修繕工事でまた足場を架ける。これは同じ費用を二度払っているのと変わりません。ロープアクセスの場合も、調査と補修を同じ体制で連続して行えば、段取り替えのコストが消えます。

2つ目。調査結果がそのまま工事仕様になります。 打診で拾った浮きの位置と数量が、そのままタイル張替え・アンカーピンニング工法の数量に直結します。調査会社と施工会社が別だと、この受け渡しで情報が落ちます。私は打診と補修を一体で受けるとき、浮きの位置をすべて図面に落として理事会にお出ししています。

3つ目。「3年以内の改修が確実」という猶予を使えます。 冒頭で触れたCの条件です。維持保全計画書などで外壁改修または全面打診の時期が明確にされており、その計画に従って実施される見込みがある場合、今回の報告では全面打診を見送れます。この場合、調査結果表の特記事項欄に実施予定時期を記載し、計画書等の書類を添付する必要があります。

つまり、長期修繕計画に大規模修繕の実施年を明記しておけば、報告年度と修繕年度を無理に重ねる必要がなくなるということです。私はこれを、いつもワンセットでご提案するようにしています。

管理組合さま向けの進め方は管理組合向けの大規模修繕サポート、賃貸ビル・テナントビルのオーナーさま向けはビルオーナー向けの改修サービスにまとめています。


令和8年度、足立区で使えるマンション支援メニュー

12条点検そのものへの直接的な補助は足立区にはありませんが、その前段の管理体制づくりを支える制度がいくつかあります。

  • 分譲マンション管理アドバイザー派遣制度:マンション管理士を無料で派遣し、維持管理や総会運営、長期修繕計画の見直しなどを相談できます。令和6年4月の見直しにより、年度内一定時間まで(管理士1名派遣の場合)利用できる時間制になっています(出典:足立区「分譲マンション管理アドバイザー派遣制度」更新日2025年4月1日)。
  • マンション管理計画認定制度:区の申請手数料は無料(マンション管理センターのシステム利用料は別途)。令和8年度は区内5会場でミニセミナー・相談会の開催が予定されています(出典:足立区「マンション管理計画認定制度について」更新日2026年4月1日)。
  • マンション長寿命化促進税制:築20年以上・10戸以上で、管理計画認定または助言・指導内容実施等証明を受け、長寿命化に資する大規模修繕を行ったマンションについて、固定資産税の建物部分が一定期間減額される制度です(出典:足立区「マンション長寿命化促進税制の創設に伴う助言・指導内容実施等証明の交付について」)。対象となる工事完了時期や申告期限は年度により変わる可能性があるため、適用を検討される場合は足立区および都税事務所へ現行年度の要件を直接ご確認ください。

12条点検の報告をきちんと出し、管理計画認定などの制度にも対応していることは、将来の売却や資産価値の説明にもつながります。


よくあるご質問

Q. 足立区の共同住宅は、何年ごとに定期報告が必要ですか?

A. 足立区の報告時期の考え方は東京都と同様で、共同住宅の特定建築物定期調査報告は3年ごとです。報告の受付期間は該当年度の5月1日から10月31日までとなっています。新築後は「初回免除」があり、検査済証交付年度の翌年度以降の2回目の報告時期から報告が必要です。

Q. 築10年ちょうどですが、今年の報告で全面打診が要りますか?

A. 起算日は「検査済証の交付日などが属する年度の、次の年度の4月1日」です。そこから10年を超えて最初に迎える報告日までに全面打診等が求められます。ご自身の建物の起算日は、検査済証または前回の外壁全面改修の完了日からお確かめください。

Q. 打診調査の費用はどれくらいですか?

A. 打診調査そのものは250〜500円/㎡が目安ですが、費用の大半を左右するのは足場です。10階建て・外周80m・工期3か月の物件では、仮設足場が約168万円に対しロープアクセス工法は約59万円という試算例があります。物件条件で変動しますので、概算のお見積りは無料でお出しします。

Q. ドローンの赤外線調査で打診の代わりになりますか?

A. 平成20年国土交通省告示第282号の令和4年1月18日付の一部改正により、無人航空機による赤外線調査であってテストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものが調査方法として明確化されました。精度の判定は日本建築防災協会のガイドラインに基づきます。建物の立地や飛行制限、外壁の状態によって適否が分かれますので、事前の現地確認が要ります。

Q. 全面打診を先送りできるケースはありますか?

A. 定期調査の実施から3年以内に外壁改修または全面打診等が行われることが確実である場合、または落下物防護ネットの設置など歩行者の安全を確保する対策を講じている場合は、この限りではないとされています。前者の場合は、調査結果表の特記事項欄に予定時期を記載し、維持保全計画書等の添付が求められます。

Q. 報告書はどこに提出するのですか?

A. 足立区の場合、特定建築物定期調査報告と防火設備定期検査報告は公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターが受付です。建築設備は一般財団法人 日本建築設備・昇降機センター、昇降機は一般社団法人 東京都昇降機安全協議会となります。ただし敷地内に延べ面積1万平方メートル超の建築物がある場合は、東京都都市整備局の所管です。運用や様式についての問い合わせは足立区建築室建築審査課設備係(電話03-3880-5278)が窓口です。

Q. 古いマンションほど全面打診の対象になりやすいのですか?

A. 一概には言えませんが、足立区が実施した実態調査では、1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準の建物で著しい劣化がみられる割合が高いという結果が出ています。外装材や前回の大規模修繕からの経過年数によって判断が変わりますので、まずは検査済証や過去の修繕履歴を確認することをおすすめします。

Q. マンション管理の相談は無料でできますか?

A. 足立区の分譲マンション管理アドバイザー派遣制度では、マンション管理士を無料で派遣し、長期修繕計画の見直しや総会運営などを相談できます。年度内の利用時間には上限がありますので、詳細は足立区へお問い合わせください。


まとめ:足立区のオーナーさま・理事長さまが今週動けること3点

この記事のポイント

  • 足立区の共同住宅の定期調査報告は3年ごと、受付は5月1日から10月31日
  • 全面打診の起算日は「検査済証などの日が属する年度の次の年度の4月1日」から10年
  • 提出先は区役所ではなく東京都防災・建築まちづくりセンター(1万㎡超は東京都)
  • 足立区は1981年以前の旧耐震基準ストックが145棟あり、約20%に著しい劣化がみられる
  • 打診だけに足場を架けると仮設費が丸ごと乗る。ロープアクセスで差額100万円超の例も

そのうえで、今週できることを3つ挙げます。

  1. 検査済証の日付を確認する。 管理室のファイルか、前回の大規模修繕の完了報告書に挟まっているはずです。ここから起算日が決まります。
  2. 前回の外壁全面改修の完了日を確認する。 これが起算日をリセットしている可能性があります。10年を超えていなければ、今回は部分打診で足ります。
  3. 長期修繕計画に外壁改修の実施年が明記されているか確認する。 明記されていれば、3年以内の改修が確実という扱いで報告年度の全面打診を調整できる場合があります。

足立区は、旧耐震基準の年代に建てられた建物ストックが厚いまちです。だからこそ、同じ年に同じような建物が一斉に報告年度を迎え、調査会社も施工会社も手が埋まります。動き出すのが早いほど、選べる選択肢が多くなります。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。概算のお見積りや現地確認のご依頼は明誠のお問い合わせフォームから、工法選定の考え方は明誠の理念と3工法の使い分けをご覧ください。

明誠のこれまでの施工事例は明誠の施工事例からご覧いただけます。ロープアクセス工法の一般的な安全基準や技術情報はロープアクセスドットコムで解説しています。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月25日時点で公表されている足立区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請・報告される前に、必ず足立区建築室建築審査課設備係(電話03-3880-5278)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月25日


出典・参考資料

江戸川区の12条点検(外壁打診調査)|対象建築物と打診タイミング2026年版

結論:江戸川区でこの条件に当てはまるビル・マンションは、12条点検で外壁全面打診が必要です

江戸川区内で、共同住宅・ホテルなど「不特定多数の人が利用する特定建築物」として指定された分譲マンション・賃貸マンション・ビルは、建築基準法第12条第1項に基づく「特定建築物定期調査報告」(12条点検)の対象です(出典:江戸川区 特定建築物等の定期報告)。

その中でも「外壁の全面打診調査」まで必要になるのは、次のどちらかに当てはまるときです。

  • 竣工(検査済証交付)または外壁の大規模修繕・改修工事の完了から、報告対象年度の初日までにおおむね10年が経過している場合
  • 過去に全面打診等を実施したことがなく、次回定期報告のタイミングを迎える場合

私はこの業界で20年近く、江戸川区を含む東京23区・多摩地域のマンション・ビルの外壁調査と大規模修繕を見てきました。正直に申し上げると、江戸川区は荒川と江戸川に挟まれた低地に、昭和50年代〜平成初期竣工の分譲マンション・団地型住宅がまとまって残るエリアで、外壁の劣化と12条点検の全面打診がセットで必要になる物件を、現場でいくつも担当してきました。この記事では、江戸川区で12条点検の対象になる建物の条件と、いつ打診調査が必要になるかを、実務の数字とあわせて整理します。

建築基準法第12条とは何か(1項報告と定期調査の違い、頻度、対象建築物)

建築基準法第12条は、一定規模以上の建築物や設備について、所有者・管理者に定期的な状況報告を義務づける制度です。実務では次の4系統に分かれています。

報告の種類 根拠 主な対象 頻度の目安
特定建築物定期調査報告(12条1項) 12条1項 共同住宅・ホテル・病院等 用途・規模により毎年または3年に1回
建築設備定期検査報告 12条3項 換気・排煙設備等 毎年
防火設備定期検査報告 12条3項 防火戸・防火シャッター等 毎年
昇降機等定期検査報告 12条3項 エレベーター等 毎年(遊戯施設等は半年ごと)

江戸川区の共同住宅(分譲・賃貸マンション)の多くは「特定建築物定期調査報告」の対象で、報告周期は用途・規模により「毎年」または「3年ごと」に分かれます(出典:江戸川区 特定建築物等の定期報告)。「12条点検(外壁打診調査)」というキーワードで検索される方の多くは、この特定建築物定期調査報告の中の外壁調査部分を指しています。

報告を怠ると、建築基準法101条により100万円以下の罰金の対象になり得ます(出典:東京都都市整備局 定期報告に関するQ&A)。管理組合の理事会でよく聞かれるのが「うちは今まで指摘されたことがないから大丈夫」という声ですが、これは報告義務そのものが免除される理由にはなりません。

全面打診が必要になるトリガー(竣工10年、外装改修10年、要調査判定、落下事故)

外壁全面打診調査が必要になるタイミングは、平成20年国土交通省告示第282号(令和4年1月18日改正)で定められています(出典:国土交通省 定期報告制度における外壁のタイル等の調査について)。

A. 竣工(検査済証交付)から10年経過
おおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等を行うことが求められます。東京都のQ&Aでは、検査済証交付日(または改修完了日)が属する年度の翌年度開始から10年経過後、最初の報告日までに全面打診等が必要と具体的に示されています。たとえば検査済証交付が2012年7月10日なら、2023年4月1日以降に迎える直近の報告時までに実施が必要という計算です(出典:東京都都市整備局 定期報告に関するQ&A)。

B. 外壁の大規模修繕・改修工事から10年経過
過去に外壁改修工事を行った場合は、その工事完了時点を起点にして再度10年をカウントします。「一度打診をやったから、もう一生やらなくていい」という制度ではありません。

C. 落下事故・要是正判定
調査の結果「要是正」「既存不適格の疑い」等の判定が出た場合、次回報告を待たずに補修や再調査を求められることがあります。タイル・モルタルの浮きを放置して落下事故が起きれば、所有者・管理組合の管理責任が問われる可能性もあります。

D. 赤外線調査という選択肢
令和4年の告示改正で、無人航空機(ドローン)による赤外線調査が、打診に代わる調査方法として正式に位置づけられました。ただし打診と同等以上の精度が必要で、日本建築防災協会のガイドラインに沿った実施が条件です(出典:国土交通省 定期報告制度における外壁のタイル等の調査について)。建物の形状や周辺環境によって打診とドローン、どちらが適切かは変わるため、私は現地を見てから判断することをお勧めしています。

江戸川区固有の運用(窓口・報告時期・書式・オンライン化状況)

江戸川区の場合、報告先が調査の種類によって3つの機関に分かれているのが特徴です(出典:江戸川区 特定建築物等の定期報告、2026年3月27日更新)。

報告の種類 受付機関 オンライン対応
特定建築物・防火設備 公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター 窓口対応が基本
建築設備 一般財団法人日本建築設備・昇降機センター 電子提出に対応
昇降機等 一般社団法人東京都昇降機安全協議会 電子提出に対応

外壁の全面打診調査を含む「特定建築物定期調査報告」そのものは、東京都防災・建築まちづくりセンターが窓口です。建築設備・昇降機等は電子提出のオンライン申請フォームが用意されていますが、特定建築物(外壁を含む本体の調査)は窓口持参が基本という点は、23区の多くで共通しています。

江戸川区は荒川・江戸川・中川に囲まれた低地帯で、区の広い範囲が海抜ゼロメートル地帯にあたります。私が現場で見てきた実感として、こうした地盤環境の物件は基礎の不同沈下やタイルの目地割れが出やすく、竣工から10年前後で外壁の劣化が進みやすい傾向があります。西葛西・葛西・小岩・平井などの駅周辺には、昭和50年代〜平成初期竣工の分譲マンション・団地型住宅がまとまって残っており、12条点検の全面打診が「そろそろ2回目」あるいは「1回目すら未実施」という物件が混在している地域です。

実務コスト感(打診面積㎡単価、足場費・ロープアクセスの差)

外壁全面打診調査の費用は、面積・階数・足場の有無で大きく変わります。あくまで目安ですが、私が現場で見積りを組む際の相場感は次のとおりです。

  • 打診調査(ロープアクセス工法):おおむね250〜500円/㎡程度
  • 打診調査に伴う仮設足場費:建物規模により大きく変動し、総工費の15〜25%を占めることも珍しくありません

わかりやすい比較として、10階建て・外周80m・工期3ヶ月程度の建物で足場を組んだ場合とロープアクセス工法を使った場合の差額イメージを挙げます。

工法 仮設費の目安 特徴
通常足場工法 約168万円 足場全周設置。日照・眺望に影響、組立解体に時間
ロープアクセス工法 約59万円 足場不要。約109万円の差額(▲約65%)

(数字はあくまで参考値・目安であり、建物の形状や現場条件によって変動します。実際の金額は必ず現地調査のうえお見積りいたします)

12条点検の打診調査だけを単発で依頼する場合と、大規模修繕の一部として打診+補修まで一体で発注する場合とでは、足場費の按分の仕方が変わってきます。この点は次のセクションで詳しく触れます。

ロープアクセス工法が12条打診で選ばれる理由(居ながら施工、コスト、工期)

江戸川区のような低地帯の住宅密集エリアは、隣棟間隔が狭い集合住宅や、河川沿いで足場材の搬入経路が限られる物件も少なくありません。こうした現場で私たちがよくご提案するのが、産業用ロープを使った無足場工法(ロープアクセス工法)です。

ロープアクセス工法が12条点検の打診調査で選ばれる理由は主に3つです。

  1. 居住者の生活影響が小さい:足場のように窓や共用廊下を長期間覆わないため、採光・眺望・防犯面での不満が出にくい
  2. コストを抑えやすい:前述のとおり、足場を全周組む場合に比べて仮設費を大きく圧縮できるケースが多い
  3. 着手までが早い:足場の設計・許可・組立に比べて準備期間が短く、点検だけを先行して実施しやすい

株式会社明誠は、通常の足場仮設工事、無足場工法であるロープアクセス工事、両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開も行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟することで、高品質と低価格の両立を実現しています。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。国際産業ロープアクセス協会(IRATA)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、これまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕・調査に携わってきました。

ロープアクセス工法の技術的な詳細、訓練基準、事故防止の考え方については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。同業の方や、より専門的な情報を知りたい方は、あわせてご覧ください。私自身、この工法の一般的な安全基準や事例についてはロープアクセスドットコムで継続的に発信しています。ハイブリッド工法の考え方も含め、私たちの建物づくりの理念は明誠の理念にまとめていますので、あわせてご覧ください。

明誠の工法選定の考え方については明誠のロープアクセス工法のご紹介、料金の考え方については大規模修繕の料金の考え方のページもあわせてご参照ください。

12条点検を大規模修繕と一体化するメリット

12条点検(外壁全面打診)と大規模修繕は、本来別々の制度・別々のタイミングで動くものですが、実務上はセットで考えることを私は強くお勧めしています。理由は次の3つです。

  • 足場費を二重に払わずに済む:打診調査だけで足場を組み、数年後の大規模修繕でまた足場を組む、という二度組みを避けられる
  • 調査結果がそのまま修繕計画の根拠になる:打診で見つかった浮き・ひび割れ・欠損箇所を、そのまま補修範囲の見積りに反映できる
  • 管理組合の合意形成が一度で済む:総会での説明・議決の回数を減らせる

私はいつも理事長さまに「打診調査の結果が出てから修繕の話をするのではなく、打診と修繕を同じ検討の土台に乗せてください」とお伝えしています。江戸川区のように昭和50年代〜平成初期竣工の建物が多いエリアでは、外壁の劣化と12条点検の全面打診の時期が重なっているケースが多く、一体化のメリットがより大きく出ます。ロープアクセス工法と足場工法をどう部位ごとに使い分けるかという工法比較の一般的な考え方は、ロープアクセスドットコムでも解説しています。

管理組合向けの進め方は明誠の管理組合向けサービスに、賃貸マンション・ビルオーナー向けの進め方は明誠のビルオーナー向けサービスにまとめています。私たちのこれまでの施工事例は明誠の施工事例からご覧いただけます。

よくあるご質問

Q. 江戸川区の分譲マンションは必ず12条点検の対象になりますか?

A. 共同住宅であっても、規模(階数・延べ面積)によっては対象外の場合があります。判断がつかない場合は、階数・延べ面積・各階の用途を整理のうえ、区または東京都防災・建築まちづくりセンターにご確認ください。

Q. 外壁全面打診調査の費用はいくらかかりますか?

A. 一般的な相場は250〜500円/㎡程度が目安ですが、建物の規模・形状・足場の有無で変動します。無料で概算お見積りを提示できますので、お気軽にお問い合わせください。

Q. 打診調査はドローンでもいいのですか?

A. 令和4年の告示改正により、打診と同等以上の精度を持つ赤外線調査であれば認められています。ただし建物の形状や周辺環境によって適否が分かれるため、現地確認のうえでの判断をお勧めします。

Q. 報告を忘れていた場合はどうなりますか?

A. 建築基準法101条により100万円以下の罰金の対象になり得ます。まずは早急に、東京都防災・建築まちづくりセンターまたは区の窓口にご相談ください。

Q. ロープアクセス工法だと足場より安全性が劣りませんか?

A. 国際産業ロープアクセス協会(IRATA)水準の訓練を受けた作業員が施工すれば、足場工法と同等以上の安全性を確保できます。明誠グループでは過去16年間、墜落による労働災害はゼロです。

Q. 12条点検と大規模修繕を同時に依頼できますか?

A. 可能です。むしろ足場費の二重負担を避けられるため、私はセットでの検討をお勧めしています。

この記事のポイントまとめ

  • 江戸川区の共同住宅は用途・規模により12条点検の対象になる
  • 竣工または外壁改修から10年経過が全面打診のトリガー
  • 令和4年改正でドローン赤外線調査も選択肢に追加された
  • 江戸川区は特定建築物・防火設備/建築設備/昇降機等で報告窓口が3系統に分かれる
  • ロープアクセス工法なら足場より仮設費を大きく圧縮できる

まとめ+今週動くこと3点

江戸川区で12条点検の対象になる分譲マンション・賃貸マンション・ビルは、竣工または外壁改修から10年が経過しているかどうかが最初の分かれ目です。報告そのものは東京都防災・建築まちづくりセンターが窓口ですが、打診調査の実施計画は早めに立てておくほど、大規模修繕との一体化がしやすくなります。

今週、理事会や経営会議で動いていただきたいことを3つに絞ります。

  1. 検査済証・過去の外壁改修工事の完了時期を確認し、10年経過の有無を整理する
  2. 次回の定期報告時期を管理会社・区・東京都防災・建築まちづくりセンターに確認する
  3. 打診調査を単独で依頼するか、大規模修繕と一体化するかを検討する

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。詳しくはお問合せフォームからご連絡ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月25日

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月25日時点で公表されている江戸川区・東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・運用変更があり得ます。実際に手続きされる前に、必ず江戸川区・東京都防災建築まちづくりセンターおよび該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

出典・参考資料

マンション管理組合「登録制度」を大分市が新設|10月1日スタート、723.6万戸時代の『管理の見える化』で関東の理事会が今すべきこと【2026年9月】

この記事で分かること

「うちのマンションも、いずれ自治体への登録や届出が必要になるのか」——この記事はその疑問に、大分市が2026年10月1日に始める「マンション管理組合登録制度」と、国土交通省が全国で進めている「マンション管理計画認定制度」の最新データをもとにお答えします。

大分市は2026年10月1日から、市内すべての分譲マンションを対象に、管理組合の代表者・管理者・管理業者などが市へ管理状況を届け出る「マンション管理組合登録制度」を始めます(出典:大分市「マンション管理組合登録制度について」)。一見すると地方都市の個別施策に見えますが、私はこれを「管理の見える化」という全国的な流れの一つの現れだと受け止めています。国土交通省の最新統計では、全国の分譲マンションストックは2025年末時点で約723.6万戸、うち築40年超は158.8万戸に達しています(出典:国土交通省「分譲マンションストック数の推移」、国土交通省「築40年以上の分譲マンション数の推移」)。

大分市の制度は、管理組合の代表者・管理者のほか、管理業者や、管理組合がない場合は区分所有者本人でも届出ができる設計になっており、オンライン届出、郵送、ファクス、メール、市役所窓口への持参と、複数の届出方法が用意されています(出典:大分市)。届出のハードルをできるだけ下げ、まずは実態を把握したいという行政側の姿勢がうかがえます。

私は株式会社明誠の本間と申します。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビルの大規模修繕とロープアクセス工法による外壁調査を20年近くやってきました。今日は大分市の新制度をきっかけに、関東の管理組合理事長さま・オーナーさまが「見える管理」の波にどう備えればよいかを、現場目線でお伝えします。


結論:大分市の新制度は「入口」、本丸は全国の管理計画認定制度

先に結論からお伝えします。大分市の登録制度そのものは、罰則のない届出ベースの制度で、市が「市内の分譲マンションの管理状況を把握するとともに、管理組合によるマンションの適正管理を推進する」ことを目的としています(出典:大分市)。届け出れば、マンション管理士による無料相談など市の支援を受けやすくなる、という比較的緩やかな仕組みです。

しかし私が注目してほしいのは、これが単発のローカルニュースではないという点です。国は2022年度(令和4年度)から、より踏み込んだ「マンション管理計画認定制度」を全国で走らせています。この制度では、管理組合の運営状況や長期修繕計画の内容を自治体が審査し、基準を満たせば「認定」を与える仕組みです(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。大分市の登録制度は、いわば認定制度の手前にある「まず管理組合の存在と状況を把握する」段階の施策と位置づけられます。

制度 主体 性質 主なメリット
大分市 管理組合登録制度 大分市 届出(努力義務・罰則なし) 情報提供、管理士無料相談
マンション管理計画認定制度 市区町村・都道府県(推進計画策定済み) 審査・認定 住宅金融支援機構の金利優遇、固定資産税減額、市場での適切な評価

「登録」と「認定」は似た言葉ですが、中身の重さがまったく違います。関東で暮らす管理組合の理事長さまにとって重要なのは、大分市の制度そのものより、この「管理の見える化」という流れが、すでに首都圏では認定制度という形でかなり具体的に進んでいるという事実です。


なぜ今、全国の自治体が「管理の見える化」を急ぐのか

背景にあるのは、マンションの高齢化という構造的な問題です。国土交通省の最新統計によれば、2025年末時点で全国の分譲マンションストックは約723.6万戸、そのうち築40年以上のマンションは158.8万戸にのぼります(出典:国土交通省)。さらに深刻なのは今後の見通しで、同じ統計では10年後の2035年末には築40年超が約313.1万戸、20年後の2045年末には約503.6万戸まで増える見込みが示されています。

築40年超マンションの将来推計

時点 築40年以上のマンション戸数
2025年末(現在) 約158.8万戸
2035年末(10年後) 約313.1万戸
2045年末(20年後) 約503.6万戸

出典:国土交通省「築40年以上の分譲マンション数の推移」

この数字が示しているのは、10年後には今の約2倍、20年後には約3.2倍の築古マンションが街にあふれるということです。マンションという住まいの形が日本に本格的に広がり始めたのは高度経済成長期からで、当時一斉に建てられた物件が、今まさに一斉に「築40年超」の節目を迎えつつあります。建物は一つひとつ状態が違うのに、制度への対応や修繕の準備は同じタイミングで管理組合に降りかかってくる、というのが私の見ている構図です。管理組合の運営がしっかりしているマンションと、そうでないマンションとでは、この先の資産価値の差が今よりもはっきりと分かれてくると私は見ています。自治体側からすれば、老朽化したマンションが管理不全に陥り、周辺の住環境や治安、資産価値に悪影響を及ぼす前に、行政として実態を把握し、支援の手を差し伸べたい。大分市の登録制度も、全国で進む管理計画認定制度も、根っこにある動機は同じだと私は考えています。

管理組合の理事長さまの立場からすると、「面倒な行政手続きが増えるだけ」と感じるかもしれません。ただ、私が現場で見てきた実感としては、こうした制度は「もともと管理がしっかりしている組合」にとってはほぼ手間が増えず、逆に「これまで管理の実態を見える化してこなかった組合」にとってこそ、自分たちの立ち位置を確認する良い機会になります。届出や認定の準備そのものが、長期修繕計画や修繕積立金の見直しのきっかけになるケースを、私は何度も見てきました。

なお、築40年超マンションのうち約103万戸は、1981年6月1日より前の旧耐震基準で建てられたものだと推計されています(出典:国土交通省を基に、新耐震基準(1981年6月〜)以降の建物との比較から算出)。旧耐震基準の建物は、新耐震基準の建物に比べて耐震性能の面でも管理の丁寧さが問われやすく、長期修繕計画の中に耐震診断や耐震改修をどう位置づけるかも、認定を見据えるうえで避けて通れない論点になってきます。

私が実際に相談を受けた管理組合の中には、築38年、総戸数62戸のマンションで、長期修繕計画が15年分しか作られておらず、修繕積立金の残高も次回の大規模修繕費用の6割程度しか賄えないという状態のところがありました。理事長さまは「うちは古いから仕方ない」とおっしゃっていましたが、劣化診断をきちんと行い、30年分の長期修繕計画に作り直したところ、金融機関からの修繕積立金不足への融資や、段階的な積立金の見直しについて具体的な相談ができるようになりました。「管理の見える化」は、行政に見せるためだけのものではなく、まず管理組合自身が自分たちの状態を正確に把握するための作業でもあると、私はこのとき強く感じました。


首都圏マンションの現在地:認定制度はすでに「全区」で動いている

関東の読者の皆さまに、まず知っておいていただきたい事実があります。マンション管理計画認定制度を運用するには、自治体が「マンション管理適正化推進計画」を策定する必要がありますが、国土交通省の資料によると、2025年5月末時点で特別区23区はすべて推進計画の策定を完了しています。政令指定都市20団体、県庁所在地の市区47団体、中核市62団体も、いずれも策定を終えています(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度の状況」)。同じ資料では、2025年度末(令和7年度末)時点で全国の約98.7%のマンションが、この認定制度の対象エリアに入る見込みだとも示されています。

マンション管理計画認定制度の準備状況(2025年5月末時点)

自治体区分 推進計画の策定状況
特別区(東京23区) すべて策定済み
政令指定都市 20団体すべて策定済み
県庁所在地の市区 47団体すべて策定済み
中核市 62団体すべて策定済み
その他の市 346団体中49.0%が策定済み

出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度の状況」

制度が始まった2022年度(令和4年度)当初、認定件数はごくわずかでしたが、同資料によれば2025年10月末時点の累計認定件数は3,060件まで積み上がっています。地方都市がこれから登録制度で「実態把握」の一歩を踏み出そうとしている段階で、東京や神奈川、埼玉、千葉といった首都圏はすでに「認定」という、より踏み込んだ段階に多くのマンションが進んでいるわけです。私の肌感覚では、この差はこれからさらに広がっていきます。認定を取得したマンションと、そうでないマンションとで、売却時の印象や住宅ローン・修繕融資の条件に少しずつ差がつき始めているというのが、現場で管理組合の相談を受けてきた私の実感です。


管理組合理事長が今すぐ準備しておきたい3つのこと

認定を取るかどうかは各管理組合の判断ですが、いずれ制度の存在を知らなかったでは済まされない時代になりつつあります。私から、今の段階でできる準備を3つお伝えします。

1. 長期修繕計画を「30年以上・大規模修繕2回以上」の基準で見直す
マンション管理計画認定制度の認定基準の一つに、「計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていること」があります(出典:国土交通省)。古い長期修繕計画をそのままにしている管理組合は、この機会に見直しをおすすめします。

2. 管理規約・議事録・名簿の整備状況を棚卸しする
認定基準には、管理規約の整備、年1回以上の総会開催、組合員名簿・居住者名簿の適切な備え付けなども含まれます。特別なことをする必要はなく、「当たり前の管理」ができているかを確認する作業です。

3. 修繕積立金の区分経理と積立水準を確認する
管理費と修繕積立金の区分経理も認定基準の一つです。あわせて、積立金の水準が将来の大規模修繕費用に見合っているかどうかも、この機会に理事会で確認しておくことを私はおすすめしています。

これらはどれも、認定を取るかどうかにかかわらず、管理組合として本来備えておくべき基本です。私はいつも理事長さまに、「認定はゴールではなく、健全な管理をしている証明のようなもの」とお伝えしています。逆に言えば、今この3つを確認して不安が残るようであれば、それは制度対応の前に、そもそも管理組合の運営そのものを見直すサインだと私は受け止めています。

理事会だけでこの3点をすべて棚卸しするのは、正直に申し上げると簡単ではありません。多くの管理組合では、管理会社が長期修繕計画の原案作成や名簿管理を担っていますので、まずは管理会社のフロント担当者に「うちの長期修繕計画は認定基準を満たしているか」を一度聞いてみるところから始めるのが、現実的な一歩だと思います。管理会社が把握していない、あるいは古い計画のまま更新されていないようであれば、それ自体が長期修繕計画そのものを見直すきっかけになります。私の経験では、こうした確認作業を理事会の議題として一度取り上げるだけでも、理事の皆さまの間で「うちのマンションは大丈夫なのか」という当事者意識が生まれやすくなります。


収益不動産オーナーにとっての意味

区分所有の賃貸住戸を保有するオーナーさまにとっても、この流れは無関係ではありません。認定を取得したマンションは、不動産サイトでの表示や住宅金融支援機構による金利優遇、固定資産税の減額(長寿命化促進税制)といった形で、市場からの評価が変わり得ることが国交省の資料に示されています(出典:国土交通省)。

ただし、認定を取るかどうかを決めるのは管理組合の総会であり、区分所有者一人の意向だけでは動きません。私がオーナーさまにお伝えしているのは、「自分の物件の管理組合が認定制度についてどう考えているかを、まず理事会や管理会社に確認してみてください」ということです。管理組合が制度の存在すら知らない場合は、情報提供そのものが、オーナーさまから理事会への価値ある一歩になります。将来の売却や賃貸募集の場面で、「認定マンションかどうか」が入居希望者や買主の判断材料の一つになる可能性は、今後さらに高まっていくと私は見ています。

数字で少し体感していただくと、固定資産税の減額(長寿命化促進税制)は、認定を受けた管理組合が長寿命化に資する大規模修繕を実施した場合に、建物部分の固定資産税を一定期間・一定割合減額する仕組みです(出典:国土交通省)。減額される割合や期間は年度・要件によって変わりますが、区分所有する1戸あたりで見れば、年間数千円〜数万円単位の差になり得るというのが私の理解です。1戸あたりでは小さく見えても、保有戸数が多いオーナーさまであれば、その分だけ差が積み重なります。実際の減額率・期間・適用要件は年度や自治体によって変わりますので、詳細はお持ちの物件の所在自治体の税務担当課、または管理組合を通じてご確認ください。


ロープアクセス工法が「見える管理」にどう貢献できるか

管理計画認定の基準には直接含まれていませんが、私が現場で強調したいのは、長期修繕計画の実効性を支えるのは、正確な劣化診断だという点です。長期修繕計画が30年以上あっても、外壁やタイルの劣化状況を正確に把握できていなければ、絵に描いた餅になってしまいます。

私たちが専門とするロープアクセス工法(フルハーネスとロープを使い、全面足場を組まずに外壁に近接して調査・補修を行う工法)は、この「実態把握」の部分で力を発揮します。全面足場を組む前の段階で、建物全体のタイル浮きやひび割れ、シーリングの劣化状況をピンポイントで確認できるため、次回大規模修繕の計画づくりに必要な情報を、比較的低コスト・短期間で集めることができます。ロープアクセス工法の技術的な背景や国際的な安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめていますので、あわせてご覧いただければと思います。

私はどの管理組合にもロープアクセス工法を優先すべきだとは考えていません。建物の形状や劣化の広がり方によっては、全面足場の方が合理的な場合もあります。大切なのは、足場・ロープアクセス・ハイブリッドのどれか一つに偏らず、建物の状態と管理組合の予算に応じて選べる体制を持っているかどうかです。管理計画認定を見据えて長期修繕計画を見直す際は、この工法選びの柔軟性も、ぜひ検討材料に加えていただきたいと思います。ロープアクセス工法の詳しいご紹介はこちらのページ、大規模修繕工事全般については大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。


費用感と進め方の流れ

管理計画認定を見据えた準備には、大きく分けて次のようなステップと費用感があります。あくまで一般的な目安としてご参照ください。

ステップ 内容 費用感の目安
1. 現況診断 外壁・防水・設備の劣化状況を調査 建物規模により数十万円〜
2. 長期修繕計画の見直し 30年以上・大規模修繕2回以上の計画に改定 診断結果を踏まえてコンサルタントに依頼するケースが一般的
3. 管理規約・名簿の整備 管理規約、名簿、議事録の確認・整備 多くは管理会社との連携で対応可能
4. 認定申請 自治体またはマンション管理センターへ申請 自治体により手数料の有無が異なる

費用や手続きの詳細は自治体ごとに異なりますので、まずはお住まいの市区町村の住宅担当課、または公益財団法人マンション管理センターの認定手続支援サービスに確認することをおすすめします。私たちにできるのは、その前段階である「建物の実態を正確に把握するための調査」の部分です。

ここで少し具体的な数字の感覚をお伝えします。総戸数50戸規模のマンションで、外壁・屋上防水を対象にロープアクセス工法による予備調査を行う場合、全面に足場を組んでからの詳細調査に比べて、仮設費用を抑えたピンポイント診断が可能になるケースが多く、1戸あたりに換算すると数千円〜1万円台の調査費用に収まることも珍しくありません。もちろん建物の階数・形状・劣化の程度によって金額は変わりますので、これはあくまで私が現場で見てきた範囲での目安とご理解ください。長期修繕計画を見直す前段階として、まず正確な現況を数字で押さえておくことが、その後の資金計画や合意形成をスムーズにすると私は考えています。

次回の大規模修繕や劣化診断のご相談は、お問合せフォームから承っております。管理組合さま向けのサービス詳細は管理組合さま向けページもあわせてご覧ください。


まとめ

大分市が2026年10月に始める管理組合登録制度は、地方都市における「管理の見える化」の第一歩です。一方で首都圏では、マンション管理計画認定制度という、より踏み込んだ仕組みがすでに全区・全市レベルで走っており、累計認定件数も着実に積み上がっています。築40年超マンションが今後10年で倍増するという国の推計を踏まえると、この流れは今後さらに強まっていくはずです。

私自身、日々現場で理事長さまとお話ししていて感じるのは、「制度が始まってから慌てて対応する」管理組合と、「制度を先取りして、日頃から長期修繕計画や積立金を見直している」管理組合とで、いざというときの対応力に大きな差が出るということです。今日ご紹介した3つの準備は、認定を取るかどうかにかかわらず、健全な管理組合運営の基本でもあります。まずはご自身のマンションの長期修繕計画と管理規約を、あらためて確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。

大分市の登録制度が始まる10月1日は、木曜日です。おそらく多くの理事長さまにとっては、遠く離れた九州の一自治体のニュースとして流れていくだけの一日になるはずです。ただ、私は20年近くこの業界で管理組合の皆さまと接してきて、制度そのものよりも、その制度が生まれた背景——築古マンションの急増という、全国どの地域でも避けられない現実——の方が、はるかに重要だと感じています。今日、この記事をきっかけに、ご自身のマンションの長期修繕計画を一度開いてみていただけたら、私としてはそれだけで書いた意味があったと思っています。これからも、管理組合の理事長さま・オーナーさまの意思決定に直接役立つ制度ニュースを、現場目線でお届けしていきます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 大分市のマンション管理組合登録制度に、罰則はありますか?
A. 大分市の公表資料には罰則や過料の記載はなく、届出を通じて市からの情報提供や無料相談を受けやすくする仕組みとして案内されています(出典:大分市)。

Q2. マンション管理計画認定制度は、東京都のマンションでも使えますか?
A. 使えます。東京都の特別区23区は2025年5月末時点ですべて推進計画の策定を完了しており、区・都を通じて認定制度が運用されています(出典:国土交通省)。窓口や具体的な申請方法はお住まいの区・市にご確認ください。

Q3. 認定を取得すると、修繕積立金の値上げをしなくてよくなりますか?
A. 認定と積立金の水準は別の話です。認定基準は長期修繕計画の期間や大規模修繕の回数など「計画の形式」を主に見るもので、積立金が実際に足りているかどうかは、各管理組合が別途検討する必要があります。

Q4. 築40年を超えたマンションは、すぐに建て替えを検討すべきですか?
A. 必ずしもそうとは限りません。国交省の統計では築40年超は今後大きく増える見込みですが、適切な大規模修繕とロープアクセス工法などを組み合わせた計画的な維持管理によって、建物の寿命を延ばす選択肢もあります。建て替え・大規模修繕・部分改修のどれが適しているかは、劣化診断の結果を踏まえて判断することをおすすめします。

Q5. 賃貸マンションのオーナーは、管理組合の認定取得にどう関わればよいですか?
A. 認定取得の可否を決めるのは管理組合の総会です。オーナーさまとしては、まず管理会社や理事会に制度の存在と現状を確認し、必要であれば情報提供や検討の提案を行うところから関われます。

Q6. ロープアクセス工法による調査は、長期修繕計画の見直しにどう役立ちますか?
A. 全面足場を組む前に、建物全体のタイル浮きやひび割れの状況をピンポイントで把握できるため、次回大規模修繕の優先順位や概算費用を、より実態に即した形で長期修繕計画に反映しやすくなります。

Q7. 大分市以外にも、同じような登録制度を作っている自治体はありますか?
A. 自治体ごとに制度の名称や内容は異なりますが、マンション管理適正化法に基づく管理計画認定制度そのものは、特別区23区を含む多くの自治体ですでに運用されています。お住まいの自治体の制度については、住宅担当課への確認をおすすめします。

Q8. 管理組合として、まず何から手をつければよいですか?
A. 私がいつもお伝えしているのは、「長期修繕計画」「管理規約」「修繕積立金の残高」の3点を、まず現状のまま一度見直してみることです。特別な準備をする前に、今の状態を正確に把握することが、認定を目指すにせよ目指さないにせよ、最初の一歩になります。


この記事のポイントまとめ

  • 大分市が2026年10月1日、マンション管理組合の登録制度を新設
  • 全国のマンションストックは2025年末で約723.6万戸、築40年超は158.8万戸
  • 特別区23区は認定制度の推進計画をすべて策定済み、累計認定は3,060件
  • 認定基準は長期修繕計画・管理規約・区分経理など「当たり前の管理」が中心
  • ロープアクセス工法による劣化診断が、長期修繕計画の実効性を支える

執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年9月25日


出典・参考資料


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

足立区の管理組合が無料で使える相談・支援10選|出張相談会は年8回、管理アドバイザー派遣は区も都も無料【令和8年度版】

2026年9月24日 更新

先日、足立区のあるマンションの理事長さまから、こんなお電話をいただきました。

「うちのマンション、旧耐震基準で築45年になる。管理会社は付いているが、大規模修繕の見積りを見せられても、それが妥当な金額なのか誰も判断できない。かといって、コンサルタントを雇うお金もない」

竹ノ塚に近いエリアの、5階建て・36戸の分譲マンションでした。私が現地で外壁を見たところ、タイルの浮きと目地のひび割れが目立ちはじめている段階で、まだ全面改修が必須というほどではありません。むしろ急ぐべきは、修繕積立金の見通しを立て直すことと、専門家の目で一度、管理組合の運営そのものを点検してもらうことでした。

このとき私が申し上げたのは、こうです。「その専門家への相談、足立区と東京都が無料で用意している窓口があります」。

足立区は、分譲マンションの管理組合向けに、区独自の出張相談会とアドバイザー派遣制度を持っています。さらに東京都が運営する分譲マンション総合相談窓口とマンションアドバイザー無料派遣も、区内のマンションであればそのまま使えます。今年、足立区に大きな新規助成が新設されたわけではありませんが、お金をかけずに専門家の判断を仰げる窓口は、数えると10あります。

申し遅れました。私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に携わってきました。足場を組んで建物を囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも自分の足で現場を踏んできた人間です。

今日は、足立区の管理組合と収益不動産オーナーさまが令和8年度に使える相談・派遣の窓口を10個、一次情報で整理します。


結論:足立区で使える無料の相談・支援は10ある

先に一覧でお示しします。すべて費用はかかりません(登記・相続の実費や証明書の発行手数料などは除きます)。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 足立区 分譲マンション出張相談会 マンション管理士 無料/令和8年度は年8回開催 03-3880-5963(建築室住宅課)
2 足立区 分譲マンション管理アドバイザー派遣制度 マンション管理士 無料/年度内12時間まで(1名派遣) 03-3880-5963(同上)
3 東京都 マンションアドバイザー無料派遣 マンション管理士 無料/通常1回、管理不全兆候ありなら5回まで 03-5989-1453(東京都防災・建築まちづくりセンター)
4 東京都 分譲マンション総合相談窓口 マンション管理士 無料/対面・電話・Zoom対応 03-6427-4900(同センター)
5 足立区 不動産相談(予約制) 宅地建物取引士 無料/毎月第1・3水曜13:00〜16:00 03-3880-5359(区民の声相談課)
6 足立区 相続・登記相談(予約制) 司法書士・土地家屋調査士 無料/毎月第2水曜13:00〜16:00 03-3880-5359(同上)
7 足立区 すまいの建築相談(予約制) 建築士 無料/毎月第2水曜14:00〜16:00 03-3880-5963(建築室住宅課)
8 足立区 法律相談(予約制) 弁護士 無料/平日・第2土曜・第4日曜 03-3880-5359(区民の声相談課)
9 足立区 マンション管理状況届出制度 — 届出自体は無料(上記2・3の利用条件) 03-3880-5963(同上)
10 足立区 マンション管理計画認定制度 — 区の手数料は当面無料(変更認定含む) 03-3880-5963(同上)

1〜4が専門家に直接相談・派遣を頼める窓口、5〜8が区民相談室の予約制相談、9〜10が制度の入口です。順番に見ていきます。


足立区独自の相談・派遣窓口(1〜2)

1. 分譲マンション出張相談会:令和8年度は年8回、区内各地で開催

足立区は「分譲マンション出張相談会」と題して、マンション管理士による無料相談会を区内各地で開催しています。令和8年度の開催日は次の8回です(更新日2026年4月3日)。

回 開催日
第1回 5月21日(木)
第2回 6月19日(金)
第3回 7月25日(土)
第4回 9月12日(土)
第5回 10月21日(水)
第6回 12月19日(土)
第7回 2月20日(土)
第8回 3月11日(木)

各回、60分のセミナーと60分の相談会がセットで組まれており、相談会のみの参加も可能です。相談内容は建物の維持管理や管理組合運営、将来の建替え相談まで幅広く扱われますが、建築基準法やリフォーム工法そのものの相談は、後述する「すまいの建築相談」に振り分けられます。

申込みは電話(平日午前9時〜午後4時、03-3880-5963)またはオンライン申請システムから。9月12日開催分は本記事執筆時点ですでに終了していますので、次回は10月21日(水)です。理事会の議題として次の相談会をカレンダーに入れておくと、動き出しが早くなります。

(出典:足立区「分譲マンション出張相談会開催のお知らせ」/更新日2026年4月3日)

2. 分譲マンション管理アドバイザー派遣制度:年度内12時間まで無料

出張相談会が「話を聞きに行く」窓口だとすれば、こちらは「管理組合の集まりに来てもらう」窓口です。足立区が実施する分譲マンション管理アドバイザー派遣制度は、マンション管理士を管理組合の総会や理事会に無料で派遣する制度です。

項目 内容
対象 区内の分譲マンション管理組合
派遣専門家 マンション管理士(国家資格)
派遣時間 年度内12時間まで(管理士1名派遣の場合)/2名派遣の場合は6時間まで
費用 無料
申込方法 電話(平日9時〜16時)またはオンライン申請システムで仮予約後、管理士と日程調整のうえ申込書を提出
必要書類 申込書(管理組合印の押印が必要)、派遣終了後は議事録の写しまたは実施確認書
注意点 派遣希望日の2週間以上前に仮予約が必要。区分所有者2名以上の参加が必須

(出典:足立区「分譲マンション管理アドバイザー派遣制度」)

令和6年4月1日から、派遣の上限が「回数制」から「時間制」に変わっています。以前は「年○回まで」という数え方でしたが、今は「年12時間まで」という時間の総量で管理されています。1回2時間の総会説明を年に6回使い切ることもできますし、長期修繕計画の見直しにまとまった時間を充てることもできます。管理組合の使い方次第で融通が利く制度です。

なお、本ページの内容確認時点で最終更新の記載は2025年当時のものにとどまっていました。派遣時間の枠組み自体は継続していると考えられますが、申込みの前に電話で最新の運用を一度確認しておくと確実です。


東京都が運営する窓口(3〜4):区内のマンションでもそのまま使えます

足立区独自の制度に加えて、公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターが運営する2つの窓口も、足立区内の分譲マンションであれば区を経由せず直接利用できます。

3. マンションアドバイザー無料派遣:旧耐震・6戸以上が対象

項目 内容
対象 昭和58年(1983年)12月31日以前に新築された、独立部分(住戸)が6以上ある分譲マンション
前提条件 マンション管理状況届出制度への届出が受理されていること
費用 無料(講座編を利用する場合、テキスト代が別途かかることあり)
利用回数 通常は1回まで無料。管理不全の兆候があるマンションは5回まで無料
申込方法 申込書に記入のうえFAX・メール・郵送で提出。1〜2週間程度でアドバイザーから日程調整の連絡
問合せ先 03-5989-1453(東京都防災・建築まちづくりセンター まちづくり推進課)

(出典:(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)

「昭和58年12月31日以前」という築年条件が、この制度の一番のポイントです。足立区内でも旧耐震基準(昭和56年5月31日以前の建築確認)の物件だけでなく、昭和56〜58年に建てられた新耐震基準ぎりぎりの物件まで対象に含まれます。築40年を超えるマンションの管理組合は、まずこの条件に当てはまるかどうかを確認する価値があります。

前の章で紹介した足立区独自のアドバイザー派遣(年12時間)と、こちらの東京都の無料派遣(通常1回)は、運営元も申込先も別です。足立区の制度で年間の時間を使い切ってしまった場合でも、条件を満たせばこちらを併用できる可能性があります。迷ったら両方に電話して、使える枠を確認するのが早道です。

4. 分譲マンション総合相談窓口:電話・メール・Zoomにも対応

項目 内容
対応者 マンション管理士
対象 都内に所在する分譲マンションに関する相談全般(管理組合運営、大規模修繕、建替え・改修、管理状況届出制度の説明など)
費用 無料
相談方法 電話・メール・FAX・対面(要予約)・Web会議(Zoom、1週間前までに要予約)
相談日時 月〜金曜日・第1土曜日・第3日曜日(祝日・年末年始除く)午前9時〜午後5時(水曜日は午後7時まで)
連絡先 電話 03-6427-4900/メール mansion-soudan@tokyo-machidukuri.jp/FAX 03-6427-4901
所在地 東京都新宿区西新宿7-7-30 小田急西新宿O-PLACE 2F

(出典:東京都「分譲マンション総合相談窓口」)

区役所の窓口が開いている平日日中に時間が取れない理事さまも多いと思います。この窓口はZoomでの相談を受け付けているため、平日夜(水曜は19時まで)や土曜午前中に、自宅から相談できるのが実務上の強みです。共働きで理事会役員をされている方には、こちらのほうが使い勝手が良いかもしれません。

外壁の劣化がどこまで進んでいるかを、専門家に相談する前段階でご自身でも把握したい場合は、明誠のロープアクセス工法による外壁調査の考え方もあわせてご覧ください。足場を組まずにどこまで確認できるかがわかります。工法の技術的な仕組みそのものを詳しく知りたい方は、姉妹サイトロープアクセスドットコムのほうに詳しい解説を載せています。


足立区 区民相談室の無料相談(5〜8)

分譲マンションに限らない一般的な相談ですが、管理組合の運営や大規模修繕の資金計画に絡む場面で使えるものを4つ挙げます。いずれも足立区役所の区民の声相談課が窓口です。

5. 不動産相談(予約制):宅地建物取引士が対応

借地・借家、更新・立退きなど不動産全般について、宅地建物取引士が相談に応じます。毎月第1・3水曜日午後1時〜4時(祝日・年末年始除く)、費用は無料です。1回の相談時間は35分以内で、予約は電話(03-3880-5359、平日8時30分〜17時15分)または区役所本庁舎北館2階の窓口で受け付けています。無断キャンセルは以後の利用制限の対象になる、と明記されている点は留意が必要です。

(出典:足立区「不動産相談(予約制)」/更新日2026年6月19日)

6. 相続・登記相談(予約制):司法書士・土地家屋調査士が対応

不動産の売買・相続、登記、土地の調査・測量に関する相談です。毎月第2水曜日午後1時〜4時に開催され、費用は無料。予約は1か月前から可能で、申込先は不動産相談と同じ03-3880-5359です。

管理組合そのものの相談ではありませんが、区分所有者の相続で連絡が取れなくなった住戸がある、といった管理組合特有の悩みの入口として使われることもあります。

(出典:足立区「住まいの相談」)

7. すまいの建築相談(予約制):建築士が対応

新築・改築・リフォームに関する建築士による相談です。毎月第2水曜日(祝日の場合は前日)午後2時〜4時に開催、費用は無料。申込みは電話03-3880-5963(建築室住宅課)で、予約制です。

分譲マンション出張相談会がマンション管理士による「管理組合運営」の相談であるのに対し、こちらは建築士による「建物そのもの」の技術的な相談という色分けになっています。外壁の劣化診断や大規模修繕の工法選定に近い話は、こちらのほうが専門的な回答を得やすい場面もあります。

(出典:足立区「住まいの相談」)

8. 法律相談(予約制):弁護士が対応

金銭問題、損害賠償、契約トラブルなどについて弁護士が相談に応じます。平日午前9時〜正午・午後1時〜4時に加えて、第2土曜日午前9時30分〜午後0時30分(窓口のみ)、第4日曜日午前9時〜正午・午後1時〜4時にも開催されており、オンライン相談も可能です。1回の相談時間は40分以内、費用は無料。予約・問合せは03-3880-5359です。

管理費の滞納や、管理規約の解釈をめぐる区分所有者間のトラブルなど、管理組合運営で法律問題に発展しそうな場面では、まずこの無料相談で見立てを聞いておくと、その後の対応方針が立てやすくなります。

(出典:足立区「法律相談(予約制)」/更新日2026年6月19日)


制度の「入口」になる2つの届出・認定(9〜10)

9. マンション管理状況届出制度:まずここから

東京都の条例(東京都マンションの管理の適正化に関する条例)に基づき、区内の一定規模以上の分譲マンションには、管理組合の運営状況などを区に届け出る義務があります。届出そのものに費用はかかりません。

ここまで紹介した「2. 分譲マンション管理アドバイザー派遣制度」や「3. 東京都 マンションアドバイザー無料派遣」は、いずれもこの管理状況届出が受理されていることが利用の前提条件です。まだ届出をしていない管理組合は、無料の専門家派遣を受ける前に、まずこの届出から着手する必要があります。

(出典:足立区「マンション管理状況届出制度(東京都条例)について」)

10. マンション管理計画認定制度:区の手数料は当面無料

長期修繕計画や管理規約の整備状況などが一定の基準を満たす管理組合は、区の「マンション管理計画認定制度」の認定を受けられます。認定基準には、長期修繕計画が国の「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成されていること、計画期間が30年以上で大規模修繕工事が2回以上含まれることなどが定められています。

区の手数料は当面のあいだ無料(変更認定申請を含む)です。ただし、新規申請は公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」を経由する必要があり、そちらのシステム利用料等は別途必要になります。区の窓口では新規申請そのものは受け付けていない点に注意してください。変更申請は郵送または区窓口での提出が可能です。標準審査期間は30日間とされています。

(出典:足立区「マンション管理計画認定制度について」/更新日2026年4月1日)

認定を受けると、住宅金融支援機構の融資金利引下げや、マンションが長期優良化に資すると認められた場合の税制優遇(マンション長寿命化促進税制)につながる道が開けます。この税制の適用には区が発行する証明(手数料300円/通)が必要になりますが、認定そのものの手数料が無料である点は、これから長期修繕計画を整える管理組合にとって着手のハードルを下げてくれます。


なぜ「無料の相談」を軽視してはいけないのか

正直に申し上げます。私はこれまで多くの管理組合の理事会にお邪魔してきましたが、一番もったいないと感じるのは、こうした無料の窓口を知らないまま、業者の言い値をそのまま信じてしまうケースです。

足立区・東京都のどちらの窓口も、対応するのは利害関係のない第三者のマンション管理士や建築士、弁護士です。工事を受注したい業者とは違う立場から、「その見積りは妥当か」「その進め方で管理規約上、問題はないか」を聞ける機会は、実はこれだけ用意されています。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けています。この安全体制の詳細はロープアクセスドットコムで公開しています。

大規模修繕の工法には、従来型の足場工法、ロープアクセスによる無足場工法、両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つがあります。低層で形状が複雑な建物や改修範囲が広い建物は足場工法が有利なこともあれば、高層で足場の架設が難しい建物、居住者への生活影響を最小限にしたい建物はロープアクセスが有利なこともあります。3工法を自社で提案できる会社は、国内でも多くありません。料金の考え方は明誠の大規模修繕の料金の考え方に、安全管理への取り組みは明誠の安全管理への取り組みにまとめています。

こうした無料相談で「専門家の目」を一度通してから、私たちのような施工会社に声をかけていただくのが、遠回りのようで実は一番確実な進め方だと考えています。


よくあるご質問

Q. 足立区の分譲マンション管理アドバイザー派遣制度は、管理状況届出をしていないと使えませんか?

A. 区のページには届出を明示的な要件とする記載はありませんが、東京都のマンションアドバイザー無料派遣(前提条件3)は管理状況届出の受理が明確な要件です。両制度を確実に利用するためにも、まず管理状況届を提出しておくことをおすすめします。

Q. 区のアドバイザー派遣(年12時間)と都のアドバイザー無料派遣(1回)は、両方使えますか?

A. 運営元(区と東京都防災・建築まちづくりセンター)が異なる別制度です。区の年12時間の枠を使い切った後でも、都の制度の対象条件(昭和58年12月31日以前築・6戸以上・管理状況届出受理済み)を満たしていれば、別途申し込める可能性があります。詳しくはそれぞれの窓口に直接ご確認ください。

Q. 出張相談会や区民相談室の予約は、どのくらい前から取ればいいですか?

A. 相談内容により異なります。相続・登記相談は1か月前から予約可能です。出張相談会は開催日の案内が出た時点で早めに埋まる傾向があるため、次回開催日(本記事執筆時点では10月21日)が決まり次第、理事会で日程調整のうえ早めの申込みをおすすめします。

Q. 大規模修繕の見積りが妥当かどうか、無料相談で判断してもらえますか?

A. マンション管理士や建築士による相談は、見積りの妥当性そのものを鑑定するサービスではなく、管理組合運営や進め方に関する助言が中心です。見積書の数量・単価の妥当性を具体的に確認したい場合は、施工会社によるセカンドオピニオンをあわせて利用されることをおすすめします。明誠でも既存の見積書を拝見してのご相談を承っています。お問合せフォームからご連絡ください。

Q. 大規模修繕の工期は、足場とロープアクセスでどれくらい違いますか?

A. ロープアクセス工法は足場の組立・解体の期間がまるごと不要になるため、足場工法のおよそ60%程度の工期が目安です。5階建て・36戸クラスのマンションであれば、足場工法で2か月前後のところ、ロープアクセスなら1〜1.5か月程度になることがあります。改修範囲が広い場合はこの差が縮まります。

Q. 足場を組まないと、住民への負担は本当に減るのですか?

A. 足場とメッシュシートで建物を囲うと、日照・通風が数か月にわたって制限され、防犯上の不安も生じます。ロープアクセスは作業する面だけを順に進めるため、影響が及ぶ期間と範囲を限定できます。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも使える窓口はありますか?

A. 足立区の出張相談会・アドバイザー派遣・管理状況届出制度は、いずれも分譲マンションの管理組合が対象です。賃貸マンションのオーナーさまは、区民相談室の不動産相談・建築相談(区内在住・在勤・在学の方が対象)や、民間の第三者による診断をご検討ください。収益物件の維持管理については明誠のオーナー向けサービスをご覧ください。

Q. 管理会社を通さずに、明誠に直接相談してもいいのでしょうか?

A. もちろんです。セカンドオピニオンとしてお使いいただくケースが一番多いです。管理組合向けのご案内は明誠の管理組合向けサービスにまとめています。


まとめ:今週、足立区の管理組合が動けること3つ

長くなりましたので、動き出しの3手に絞ります。

1. マンション管理状況届出の提出状況を確認する

東京都条例に基づく届出で、これが受理されていないと、区・都のアドバイザー派遣が受けられない可能性があります。届出書類は区のページからダウンロードできます。

2. 次の出張相談会(10月21日・水)を理事会カレンダーに入れる

年8回開催のうち、直近の回です。電話03-3880-5963で予約状況を確認しつつ、「うちのマンションはアドバイザー派遣も使えるか」もあわせて聞いておくと、その後の動きが具体的になります。

3. 大規模修繕を控えているなら、区・都の無料相談と並行して施工会社にも相談する

無料相談は管理組合運営の助言が中心で、見積りの数量・単価まで踏み込むものではありません。区・都の相談と、施工会社によるセカンドオピニオンを並行して進めるのが、遠回りのようで一番早い進め方です。明誠のこれまでの明誠の施工事例もあわせてご覧いただければ、実際にどんな建物でどんな判断をしてきたかが伝わると思います。


足立区は、板橋区のように今年新設された大型の助成金こそありませんが、区独自の相談・派遣窓口に加えて、東京都の窓口までフルに使えるという点で、無料支援の選択肢自体は決して少なくありません。むしろ窓口が複数あるぶん、「どれをどの順番で使えばいいか」が分かりにくいというのが実情だと思います。

私は現場でこう思うことがあります。管理組合が損をするのは、悪い業者に当たったときよりも、無料で相談できる窓口があることを知らないまま、時間だけが過ぎたときのほうがずっと多い、と。壁の浮きも、防水の切れも、待っていて良くなることはありません。

総会の前段階の整理だけでも、私たちにお力になれることがあります。お気軽にお声がけください。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月24日時点で公表されている東京都足立区・東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。令和8年度(2026年4月〜2027年3月)を現行年度として整理していますが、一部ページ(分譲マンション管理アドバイザー派遣制度など)は最終更新日の記載が2025年当時にとどまっており、令和8年度時点での内容変更の有無を公式には確認できませんでした。実際に申込みをされる前に、必ず足立区(03-3880-5963)または該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)

株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月24日

飯能市の賃貸マンション補助金2026|現金補助より「固定資産税減額」と「県の無料専門家派遣」を狙う市

飯能市で賃貸マンション・賃貸アパートをお持ちのオーナーさまへ。この記事は、令和8年度(2026年度)に飯能市で賃貸オーナーさまが実際に使える制度だけを、正直に整理したものです。

結論から申し上げます。飯能市は、当ブログでこれまで取り上げてきた狭山市・入間市と同じ「限定特定行政庁」グループに属しながらも、賃貸マンションの共用部にそのまま使える現金補助は、令和8年度時点でほぼありません。木造住宅の耐震診断・改修補助は戸建て・兼用住宅限定でRC造・SRC造の共同住宅は対象外、住宅用省エネ設備の補助制度は令和7年度限りで廃止され、令和8年度からは「共同購入によるスケールメリット」を狙う別方式の事業に切り替わっています。ブロック塀の撤去補助は個人限定で上限10万円と小口です。

「では飯能市の賃貸オーナーには何も武器がないのか」というと、そうではありません。飯能市には、大規模修繕を実施したマンションの翌年度固定資産税を減額する税制優遇(マンション長寿命化促進税制)と、埼玉県が無料で専門家を最大2回まで派遣してくれる「分譲マンションアドバイザー派遣」という2つの土台があります。現金がその場で振り込まれるわけではありませんが、保有期間中の実質的な負担軽減や、合意形成の後押しという形で、NOI(実質賃料収入)の下支えに効いてきます。この記事では、その仕組みと、木造二階建て以下しか市の窓口で扱わない「限定特定行政庁」という飯能市特有の構造まで、順に整理します。

飯能市で賃貸オーナーが押さえるべき制度【令和8年度・一覧】

先に全体像です。飯能市は現金がその場で出る補助金より、税制優遇と専門家派遣という「間接支援」が主戦場になる市です。

制度名 種類 申請できる人 効果・補助額 令和8年度の状況
マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額) 税制優遇 築20年以上・10戸以上のマンション所有者 翌年度の固定資産税を専有部分100㎡まで一定割合減額(割合は飯能市の税条例による) 対象工事の完了期限:令和5年4月1日〜令和9年3月31日(2年延長済み)
マンション管理計画認定制度 認定制度(間接効果) 分譲マンションの管理組合・区分所有オーナー 固定資産税特例の前提資格の一つ、機構融資の金利引下げの入口 飯能市独自の受付開始時期は公式サイト上に明記が見当たらず、要確認
埼玉県分譲マンションアドバイザー無料派遣(市部) 専門家派遣(現物支援) 分譲マンションの管理組合 弁護士・建築士・マンション管理士等を無料で最大2回派遣 申請期間:令和8年4月1日〜12月11日/実施:令和9年3月15日まで
危険ブロック塀等撤去工事補助金 現金補助 ブロック塀を所有・管理する個人 撤去費の1/2、または長さ1mあたり1万円のいずれか低い方・上限10万円 市内事業者施工が条件、先着順(予算枠あり)
住宅用省エネ設備推進補助制度 現金補助(令和7年度で廃止) — — 令和8年度からは「太陽光パネル・蓄電池の共同購入事業」に切替。個人宅向けのスケールメリット方式で、賃貸共用部への直接補助ではない
木造住宅耐震診断・改修・防災ベッド補助 現金補助 木造戸建て・兼用住宅(2階以下、昭和56年5月31日以前)の所有者 診断2/3・上限5万円/改修23%・上限30万円(市内業者)または20万円(市外業者)/防災ベッド1/2・上限10万円 共同住宅(RC造・SRC造の賃貸マンション等)は対象外

※太字は本記事の核心です。上位3つが賃貸オーナーさまにとっての本命、下位3つのうち実際に使えるのはブロック塀撤去のみ、残り2つは正直に「対象外・不向き」と申し上げます。金額・条件は本文中に出典リンクを付けて詳述します。

この一覧を見て「補助金が薄い市だ」と感じられたなら、その感覚は正しいです。ただし、これは飯能市が不利な市という意味ではありません。飯能市は緊急財政対策の渦中にあり現金補助の新設余力が乏しい一方、税制優遇と県の無料専門家派遣という「お金のかからない支援」を組み合わせれば、動き出しの好機がまだ残っている街、というのが私の見立てです。

飯能市は「限定特定行政庁」|賃貸マンションの建築確認・12条点検は市役所ではなく川越建築安全センター

まず、飯能市の建築行政の構造から押さえておきます。飯能市は平成9年4月1日から「限定特定行政庁」に指定されており、市が自前で扱うのは木造・地階を除く階数2以下・延べ面積300㎡以下・高さ16m以下という小規模建築物(建築基準法第6条第1項第3号の建築物)だけです。

それ以外の建築物、つまりRC造・SRC造の賃貸マンションや、木造でも規模が大きい賃貸アパートについては、飯能市都市建設部建築課ではなく、埼玉県川越建築安全センター(川越市新宿町、電話049-243-2746)が建築確認・中間検査・完了検査、そして建築基準法第12条に基づく定期報告(12条点検)の受付まで一括して担当します。川越建築安全センターの管轄は、入間市・狭山市・飯能市を含む埼玉県西部・南西部の広域にまたがっており、当ブログでこれまで取り上げてきた狭山市(特定行政庁のため12条点検も補助金相談もすべて市役所1本)・入間市(限定特定行政庁で建築基準法6条1項4号までが市扱い)と並ぶ、川越センター管轄グループの3例目が飯能市です。

飯能市が扱う建築基準法6条1項3号は、入間市の4号建築物(木造以外も含む小規模建築物)よりもさらに狭い範囲で、「木造かつ2階以下」という条件が付く分、飯能市の場合は木造3階建て以上の賃貸アパートも川越建築安全センターの所管に入ります。同じ「限定特定行政庁」でも、市が自前で扱う範囲の線引きが自治体ごとに違う、という点は見落とされがちなので強調しておきます。

オーナーさまにとって、これが何を意味するか。外壁の打診調査(12条点検の全面打診)で「要是正」が出た場合、賃貸マンションであれば相談先は飯能市役所ではなく川越建築安全センターです。一方で、固定資産税の特例やブロック塀の補助といった市税・市の補助制度は、飯能市役所の各担当課が窓口になります。「点検は県、税と補助は市」という二段構えを最初に理解しておくと、相談先を間違えて時間を無駄にすることがありません。

12条点検では、竣工または外壁改修から10年を超えた建物について外壁全面の打診等調査が求められます(令和4年の告示改正で10年周期が明確化)。この全面打診が、賃貸オーナーさまにとって最初のまとまった出費になりがちです。調査のためだけに足場を組むと調査費より仮設費のほうが高くなる逆転が起きやすいため、この点は後段のロープアクセス工法の項で詳しく扱います。

正直な話|飯能市に賃貸マンション向けの耐震現金補助は見当たりません

ここは、読者の皆さまに正直にお伝えしなければならない部分です。

飯能市が案内している耐震補助は「木造住宅耐震診断補助金」「木造住宅耐震改修補助金」の2本立てです。しかしいずれも対象が「昭和56年5月31日以前に着工された木造の一戸建て住宅または併用住宅で、地階を除く階数が2以下のもの」と明確に定義されており、RC造・SRC造の賃貸マンションはもちろん、木造でも3階建て以上の賃貸アパートは対象外です。補助額は診断が費用の3分の2・上限5万円、改修は費用の23%・市内業者施工なら上限30万円(市外業者は上限20万円)で、いずれも先着順の予算枠があり、契約・着工前の申請が必須です。

これは、当ブログで以前ご紹介した狭山市(賃貸共同住宅が補助対象の表に名指しで載っている)とは明確に違う構図です。同じ川越建築安全センター管轄グループの入間市も「賃貸共同住宅」という言葉が条文に見当たらないと申し上げましたが、飯能市はさらに対象範囲を絞り込み、木造・2階建て以下という条件を明記している分、賃貸マンションオーナーにとっての現金補助の間口はより狭い、というのが取材を通じての率直な感触です。

大規模修繕工事そのものへの市直接の現金補助についても、公式サイト上に賃貸マンション向けの制度は確認できませんでした。もし今後、市が制度を新設した場合は、当ブログでも追ってご案内します。

唯一にして最大の武器|大規模修繕マンションの固定資産税減額(マンション長寿命化促進税制)

現金補助が薄いなかで、飯能市の賃貸オーナーさまが実際に狙える最大の武器が、この固定資産税の特例措置です。

これは国が令和5年度に創設した「マンション長寿命化促進税制」を、各市町村が条例で実施する仕組みで、次の要件をすべて満たすマンションについて、翌年度分の固定資産税額を、専有部分の床面積100㎡までの範囲で減額します。

  • 築後20年以上が経過していること
  • 10戸以上の区分所有マンションであること
  • 外壁塗装・床防水・屋根防水のすべてを過去に1回以上適切に実施していること
  • その上で、2回目以降の長寿命化工事を令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に完了していること(当初は令和7年3月末までの期限でしたが、国の措置で2年延長されています)
  • 国が定める管理計画認定を受けているか、国土交通大臣・都道府県知事等の助言・指導の対象となっていること

減額割合は国の制度上、市町村が条例で2分の1から6分の1の範囲内で定めることとされていますが、飯能市が具体的に何分の1を採用しているかは、本記事の執筆時点で市の公式サイト上に一覧としての明記が見当たりませんでした。入間市・狭山市が3分の1減額を明記しているのとは対照的です。飯能市で本特例の適用を検討される場合は、必ず事前に資産税担当課へ減額割合と申告要件をご確認ください。断定を避けてお伝えする理由は、誤った期待値でオーナーさまの意思決定を歪めたくないためです。

減額は1度限りで、対象は固定資産税のみ(都市計画税は対象外)。耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修による他の固定資産税減額措置とは、同一年度内の併用ができません。申告は工事完了日から3か月以内に、建築士やマンション管理士による証明書類を添えて資産税課へ提出する必要があります。

割合が不明でも、狙う価値がある理由

仮に飯能市の減額割合が最も低い6分の1だったとしても、大規模修繕という数千万円規模の支出に対して、公的に「やって当然の資産形成」と認められた証しが付くという意味合いのほうが、実務上は大きいと私は考えています。20年以上この業界で数多くの大規模修繕に携わってきた実感として、こうした「数字にしにくい信用」が、次の融資や売却の場面で効いてくる場面を何度も見てきました。金融機関に融資相談をする際、固定資産税特例の適用実績は、物件の管理レベルを客観的に示す材料になります。

問い合わせ先:飯能市 総務部 資産税課(飯能市大字双柳1|電話 042-973-2111 代表)

管理計画認定制度|飯能市の受付状況は「要確認」、でも県の無料専門家派遣は今すぐ使える

固定資産税特例の前提の一つとなる「マンション管理計画認定制度」は、令和4年4月に国が創設した仕組みで、埼玉県内では市部(19市)は各市が自前の認定窓口を持ち、町村部は埼玉県が窓口を代行する建て付けです。

問題は、飯能市が「市部」として独自に認定の受付を始めているかどうかが、本記事の執筆時点で公式サイト上に明確な案内として見当たらない点です。埼玉県は「市が制度を整備するまでの間」、対象市に対して無料の分譲マンションアドバイザー派遣という支援策を用意しており、飯能市はこのアドバイザー派遣の対象19市(熊谷市・飯能市・狭山市・鴻巣市・上尾市・戸田市・入間市・朝霞市・志木市・和光市・桶川市・久喜市・北本市・八潮市・富士見市・三郷市・坂戸市・鶴ヶ島市・吉川市)に含まれています。これは埼玉県が自らのページで案内している事実です。

認定基準は大きく5分野で、国の共通基準として次のような項目が求められます。

分野 主な基準
管理組合の運営 管理者・監事の設置、年1回以上の総会開催
管理規約 作成必須、緊急時の対応・情報提供に関する規定
経理の状況 修繕積立金と管理費の会計区分の明確化、修繕積立金の滞納が総戸数の1割以内
長期修繕計画 7年以内に作成・見直し、計画期間30年以上、大規模修繕工事を2回以上含む
その他 区分所有者名簿の適正な維持、年1回以上の確認

この状況下でオーナーさまが今すぐ動ける手段が、埼玉県分譲マンションアドバイザーの無料派遣です。弁護士・建築士・マンション管理士など専門家を、費用ゼロで最大2回まで管理組合に派遣してもらえる制度で、令和8年度の申請期間は令和8年4月1日から12月11日まで、実際の派遣は令和9年3月15日まで受けられます。長期修繕計画の見直しや、管理計画認定に向けた事前準備の相談に使える、投資対効果の高い支援策です。区分を複数お持ちで、これから大規模修繕の議決を控えている物件があれば、管理組合に対して「まず県のアドバイザー派遣を申し込んではどうか」と働きかけることが、資産防衛の一手になります。

管理計画認定を取得しているマンションの管理組合が共用部リフォーム融資を利用する場合、融資金利が年0.2%引き下げられ、融資保証料も2割引になる制度が住宅金融支援機構にあります。認定制度そのものの受付状況は要確認でも、こうした周辺の優遇策は先に押さえておく価値があります。

問い合わせ先:飯能市 都市建設部 建築課(電話 042-973-2170)、または埼玉県都市整備部住宅課(電話 048-830-5573)

個人オーナー限定|危険ブロック塀等撤去工事補助金

小口ですが、条件が合えば実際に使える現金補助もあります。飯能市ブロック塀等撤去工事補助金です。

対象は、道路に面し、道路に面する側の地盤面からの高さが1.2メートル以上で、点検調査により倒壊の危険性が確認された塀・門柱です。補助額は撤去費用の2分の1、または塀の長さ1メートルあたり1万円を掛けた額のいずれか少ないほうで、限度額は10万円。市内事業者が撤去工事を実施することが条件に含まれており、市税の滞納がないことも要件です。

ここで注意が必要なのは、飯能市公式サイトの申請者要件が「ブロック塀等を所有し、または管理する個人」と明記されている点です。狭山市の同種制度が法人を含む形で運用されているのとは対照的に、飯能市のページ上では個人限定と読めます。法人名義で賃貸物件を所有されているオーナーさまは、申請前に必ず飯能市建築課へ法人での申請可否を直接ご確認ください。この記事では、公式サイトの記載を正確に反映する立場から、断定を避けてお伝えします。

賃貸物件の敷地境界のブロック塀は、地震時に倒壊して通行人を負傷させた場合、工作物責任(民法第717条)で所有者が損害賠償責任を負う可能性があります。10万円の補助が出るかどうかより、そのリスクを外せるかどうかの話です。申請前に必ず現地確認が入る流れですので、まずは飯能市建築課(042-973-2170)へ一報を入れてください。交付決定・契約・工事着手の前に申請書を提出しないと、補助は一切出ません。

使えない制度を正直に|住宅用省エネ設備補助は廃止、令和8年度からの共同購入事業も賃貸には不向き

太陽光発電・蓄電池に補助が出ていた「飯能市住宅用省エネ設備推進補助制度」は、令和7年度をもって廃止されました。環境緑水課(電話042-973-2125)に確認したところ、令和8年度からは代替事業として「太陽光パネル及び蓄電池の共同購入事業」が始まっています。

この共同購入事業は、市が事業者を仲介し、参加希望者をまとめて発注することで、設置費用のスケールメリット(規模割引)を得られる仕組みであり、直接オーナーに現金を交付する補助金ではありません。福岡県や兵庫県尼崎市など他自治体でも同種の「共同購入」型事業が広がっていますが、いずれも個人宅を主な想定対象としており、賃貸マンションの共用部への太陽光・蓄電池導入を想定した制度設計にはなっていないのが一般的です。飯能市の共同購入事業についても、賃貸・事業用の共用部が対象に含まれるかどうかは、本記事の執筆時点で公式サイト上に明記が見当たりませんでした。

共用部への太陽光・蓄電池の導入をご検討中のオーナーさまは、飯能市の共同購入事業ではなく、国のZEH-M関連補助や、埼玉県の家庭向け補助制度の事業者向け枠の有無を別途ご確認いただくことをおすすめします。「制度が新設されたから」ではなく「賃貸オーナーとして使えるかどうか」で判断する姿勢が、無駄な期待と時間のロスを防ぎます。

補助金・税制優遇を受け取ったあとの税務|3つの論点

金額と税制の話をしたあとは、必ず税務の話をします。ここで差がつきます。

1. 現金補助は雑収入として課税されます

自治体から受け取るブロック塀撤去補助などの現金補助は、原則として受給した事業年度の雑収入(益金)に計上されます。10万円が入れば、その分だけ課税所得が増えます。「10万円まるごと手元に残る」という前提で資金計画を立てると、翌期の納税でずれます。

2. 固定資産税の減額は「収入」ではなく「支出削減」です

本記事の中心である固定資産税減額は、現金補助と違って課税所得を直接増やしません。支払うべき税額そのものが減るため、税引き後キャッシュフローへの効き方が現金補助とは異なります。減額分を雑収入として計上する必要がない代わりに、圧縮記帳のような特例の対象にもなりません。単純に、毎年の固定資産税という固定費が1年だけ下がる、とご理解ください。

3. 修繕費か資本的支出かで、手取りが変わります

外壁塗装・屋上防水の塗り替えは、原状回復の範囲であれば修繕費として一括損金算入できる可能性があります。一方、建物の耐用年数を延ばしたり価値を高めたりする工事は、資本的支出として資産計上し、減価償却していくのが原則です。同じ1,000万円の支出でも、修繕費なら当期に1,000万円の損金、資本的支出なら年間数十万円の償却にしかなりません。見積書を工種別に分けて計上しておくことが、税務上の区分と、将来の固定資産税特例の証明書類作成の両方で効いてきます。適用可否や具体的な区分は、必ず顧問税理士にご確認ください。

西川材の山あいで足場が組みにくい理由と、工法別のコスト比較

ここからは、工事の話です。

飯能市は面積約193.19平方キロメートル、人口約7.8万人。市域の約76%を森林が占め、西川材(にしかわざい)と呼ばれる良質な杉・檜の産地として知られてきた、山と住宅地が入り組む地形が特徴です。西武池袋線・JR八高線が通り、池袋まで急行で約50分。近年はムーミンバレーパークやメッツァを擁する観光都市としても知られますが、財政面では緊急財政対策の渦中にあり、市の裁量で使える予算に制約が生じています。この地形と財政の両方が、大規模修繕の現場で次のような問題として具体的に現れます。

  • 傾斜地・高低差のある敷地が多い:平地の少ない飯能では、建物の周囲に十分な作業スペースを確保できない現場が珍しくありません
  • 前面道路が狭い:資材搬入車両が付けられず、人力小運搬が増えて仮設費が膨らみます
  • 山間部の現場は資材運搬コストが上がる:足場材を山あいの現場まで運ぶだけで、平地に比べ運搬費が余分にかかります
  • 1階に店舗・テナントが入っている:足場と養生シートで看板が隠れると、テナントから営業補償を求められることがあります

つまり、飯能市のような傾斜地の多い立地では、足場が「建てにくい」または「建てると採算が合わない」物件が一定割合で存在します。私自身、現場に入るたびに「この敷地なら足場より先にロープアクセスを検討すべきだった」と感じる物件に何度も出会ってきました。

株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物の形状・立地・工事内容に応じて最適な工法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。工法の技術的な背景は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

仮設費の比較(目安)

7階建て・外周65m・工期2.5か月の賃貸マンションを想定した場合の、仮設部分のみの概算です。

項目 通常足場工法 ロープアクセス工法
仮設費(概算) 約135万円 約49万円
差額 — 約86万円の圧縮
資材運搬(山間部想定) 別途加算されやすい 影響を受けにくい
設置・解体期間 各3〜4日 当日開始可能
防犯リスク 足場からの侵入懸念あり 該当なし

※あくまで目安・参考値です。実際の金額は建物形状、施工面積、工事内容、仕様、時期、立地条件により大きく変動します。必ず現地調査のうえ個別にお見積りいたします。

工種別の㎡単価の目安

工種 単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
外壁打診調査(12条点検) 250〜500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡

20戸規模の賃貸マンション1棟の大規模修繕は、総額で2,500万〜4,000万円のレンジに入ることが多く、そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。仮設費を80万円以上圧縮できるかどうかは、固定資産税特例(割合次第で年数万円〜十数万円規模)よりもむしろ大きな金額になることが多く、工法選択こそが飯能市の賃貸オーナーさまにとって最も即効性のある「節約策」だと私は考えています。料金の考え方は大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

工期と入居者への影響

ロープアクセス工法は、足場工法の約60%の工期で完了します。前述の7階建て・外周65mであれば、足場2.5か月に対しロープアクセスは1.5か月前後が目安です。

工事期間中はバルコニーが使えず、洗濯物が干せず、窓を開けられず、養生シートで日当たりが落ちます。入居者にとっては純粋な生活の質の低下であり、退去を検討するきっかけになります。

数字にしてみます。20戸・平均賃料6万円の物件で、工事を機に2戸が退去し、次の入居まで平均2.5か月空いたとします。

  • 空室損失:6万円 × 2戸 × 2.5か月 = 30万円
  • 原状回復・募集費用(AD含む):1戸16万円として 32万円
  • 合計:62万円

仮設費の差額約86万円に、この62万円が上乗せされる可能性があると考えると、工法選択の重みが変わってきます。足場を架けない工事は、入居者に「工事をしていることに気づかれにくい」という、賃貸経営に固有の価値を持っています。

明誠のロープアクセス工法の技術詳細と、収益不動産オーナーさま向けのサービスもあわせてご覧ください。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。安全管理の考え方は明誠の安全管理体制に記載しています。

なお、12条点検の全面打診調査だけを先行して行う場合も、ロープアクセス工法なら足場を架けずに実施できます。調査で要是正が出た箇所だけをピンポイントで補修し、次回の大規模修繕までの時間を稼ぐという判断も可能です。無足場工法の適用範囲や技術基準については、ロープアクセスドットコムに専門的な解説をまとめています。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工し、ISO9001品質マネジメントシステムを運用、日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。また、日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しており、中間マージンを圧縮した価格でご提供できる体制を整えています。実際の施工の様子は明誠の施工事例からご覧いただけます。

令和8年度の締切カレンダー(飯能市・オーナー向け)

期日 対象
随時(先着順・予算枠に達し次第終了) 危険ブロック塀等撤去工事補助金
令和8年12月11日 埼玉県分譲マンションアドバイザー無料派遣の申請期限
令和9年3月15日 埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣の実施期限
令和9年3月31日まで 固定資産税特例の対象となる大規模修繕工事の完了期限(令和5年4月1日〜)
工事完了後3か月以内 固定資産税特例の申告期限(資産税課)

申請のタイミングにご注意ください。ブロック塀補助は「交付決定前に契約・着工してはいけない」タイプ、固定資産税特例は「工事完了後に申告する」タイプ、県のアドバイザー派遣は「年度内に申請枠が埋まり次第終了する」タイプです。この順序とスケジュールを間違えると、それだけで優遇がゼロになります。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 飯能市に賃貸マンション向けの耐震補助金はありますか?

A. 本記事の執筆時点で、市の公式サイト上に明記された賃貸マンション(RC造・SRC造の共同住宅)向けの現金補助は確認できませんでした。市の木造住宅耐震補助は2階建て以下の戸建て・兼用住宅限定で、共同住宅は対象外です。最新の制度新設の有無は、飯能市建築課(042-973-2170)へ直接ご確認ください。

Q2. 現金補助が薄いなら、飯能市の賃貸オーナーには何もメリットがないのですか?

A. いいえ。大規模修繕を実施したマンションへの固定資産税減額(割合は要確認、専有部分100㎡まで、工事完了は令和9年3月31日まで)と、埼玉県が無料で専門家を最大2回派遣してくれる分譲マンションアドバイザー制度という2つの支援があります。現金がその場で振り込まれるわけではありませんが、保有期間中の実質的な負担軽減や合意形成の後押しにつながります。

Q3. 太陽光発電や蓄電池を賃貸マンションの共用部に導入する場合、市の補助は使えますか?

A. 令和7年度で従来の補助制度は廃止されています。令和8年度からの「太陽光パネル及び蓄電池の共同購入事業」は個人宅向けのスケールメリット方式であり、賃貸共用部が対象に含まれるかは公式サイト上に明記が見当たりません。導入をご検討の場合は環境緑水課(042-973-2125)へ直接ご確認ください。

Q4. 法人名義で所有するブロック塀の撤去でも補助は使えますか?

A. 飯能市公式サイトの記載では申請者要件が「所有・管理する個人」とされています。法人名義での申請可否は明記が見当たらないため、必ず事前に飯能市建築課(042-973-2170)へ直接ご確認ください。

Q5. 12条点検で外壁の要是正が見つかった場合、どこに相談すればいいですか?

A. 賃貸マンションなど木造2階建て以下・延べ300㎡以下・高さ16m以下の小規模建築物に該当しない建物は、飯能市役所ではなく埼玉県川越建築安全センター(電話049-243-2746)が定期報告の窓口です。補修工事の施工会社選定については、明誠までお気軽にご相談ください。

Q6. マンション管理計画認定は飯能市で申請できますか?

A. 本記事の執筆時点で、飯能市が独自に認定の受付を始めているかは公式サイト上に明記が見当たりません。まずは飯能市建築課、または埼玉県都市整備部住宅課(048-830-5573)へ申請可否をご確認ください。認定の受付状況にかかわらず、埼玉県の無料アドバイザー派遣は先に申し込むことができます。

Q7. 工期はどれくらいですか?入居者への影響が心配です。

A. ロープアクセス工法なら足場工法の約60%の工期で完了します。7階建て・外周65mの賃貸マンションであれば、足場2.5か月に対しロープアクセス1.5か月前後が目安です。足場と養生シートを架けないため、入居者の生活への影響が大幅に軽減され、工事を理由とした退去のリスクを下げられます。

この記事のポイントまとめ

  • 飯能市に賃貸マンション名指しの耐震現金補助は現時点で見当たらない
  • 木造耐震補助は2階建て以下の戸建て限定、共同住宅は対象外
  • 最大の武器は大規模修繕マンションの固定資産税減額(割合は要確認、令和9年3月末完了分まで)
  • 管理計画認定の市独自受付は要確認、ただし埼玉県の無料アドバイザー派遣(最大2回)はすぐ使える
  • ブロック塀撤去補助は上限10万円・個人限定(法人は要確認)
  • 住宅用省エネ設備補助は令和7年度で廃止、令和8年度の共同購入事業も賃貸には不向き
  • 12条点検の窓口は市役所でなく埼玉県川越建築安全センター(入間市・狭山市と同じ管轄グループ)

飯能市の賃貸オーナーさまへ

正直に申し上げます。飯能市は、現金がその場で振り込まれる補助金という切り口だけで見れば、当ブログでこれまで取り上げてきた自治体の中でも、賃貸オーナーさまにとって手厚い市とは言えません。緊急財政対策の渦中にあることも、その一因だと私は見ています。

それでも私がこの記事で一番お伝えしたいのは、「補助金がない」と「打つ手がない」はイコールではないということです。固定資産税特例という税制優遇、そして埼玉県が無料で用意してくれている専門家派遣を組み合わせれば、大きな持ち出しなく合意形成と修繕計画づくりを前に進められます。それは固定資産税の減額だけでなく、金融機関からの評価、売却時の指値交渉、そして何より入居者に選ばれ続ける物件であり続けるための土台になります。

築年数なりの劣化は、賃料の下落圧力として静かに効いてきます。外壁のチョーキング、タイルの浮き、シーリングの切れは、内見に来た方の第一印象を確実に下げます。出口を見据えた修繕投資は、単年度の利回り改善より、物件価値そのものを底上げします。

飯能市で賃貸マンション・アパートをお持ちで、まだ修繕計画の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問い合わせください。1棟の現地調査と、足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3案を並べたコスト比較シミュレーションだけでも、ご相談を承ります。固定資産税特例の完了期限(令和9年3月31日)から逆算した工事計画のご提案も可能です。


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月24日時点で公表されている飯能市および埼玉県・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請・申告される前に、必ず飯能市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月24日

出典(飯能市・埼玉県・国土交通省 公式ウェブサイト)

葛飾区の管理組合が無料で使える相談・派遣13選|耐震アドバイザー派遣は1棟4回まで無料、管理計画認定アドバイザーは令和9年2月28日まで受付【令和8年度版】

2026年9月24日 更新

先週、金町の分譲マンションの理事長さまから電話をいただきました。

「築42年の棟で、そろそろ大規模修繕の3回目を検討し始めている。ただ、うちは旧耐震基準の建物らしいと聞いたことがあるが、それが何を意味するのか、誰に聞けばいいのかも分からない」

伺うと、5階建て・48戸の建物で、昭和54年築。旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)の建築物にぴったり該当していました。しかも長期修繕計画は一度も専門家の手が入らないまま、管理会社の提案書をそのまま踏襲してきたとのことでした。

私はこの手のご相談を受けるたびに、同じことを思います。葛飾区の管理組合には、実は無料で呼べる専門家や、費用の大半が助成で戻る制度がかなり揃っているのに、その情報が理事会まで届いていない、と。特に葛飾区は、旧耐震基準の建物を対象にした耐震アドバイザー派遣を1棟あたり4回まで無料で使える、23区の中でも手厚い制度を持っています。

申し遅れました。私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物をすっぽり囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。

今日は、葛飾区の管理組合とビル・収益不動産オーナーさまが使える相談・派遣・助成を13個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:葛飾区で使える支援は13ある

先に一覧でお示しします。費用ゼロのものと、費用の一部が助成で戻るものを分けて並べました。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 マンション管理計画認定取得のためのアドバイザー派遣 マンション管理士等 無料(システム利用料1万円は管理組合負担) 住環境整備課企画管理係 03-5654-8352
2 分譲マンションアドバイザー制度利用助成 都センター認定アドバイザー 派遣料の一部助成(上限8,250〜25,300円・年度内1回) 住環境整備課企画管理係 03-5654-8352
3 マンション耐震アドバイザー派遣制度 建築士等の耐震アドバイザー 無料/1棟あたり4回まで 建築課建築安全係 03-5654-8552
4 分譲マンション維持管理セミナー・個別相談会 専門家講師+個別相談 無料 住環境整備課 03-5654-8352/8529
5 区の法律相談 弁護士 無料/30分程度・電話予約制 区民相談室 03-5654-8612〜8615
6 建築・リフォームなんでも相談 建築士 無料/第1・3金曜、予約不要 区民相談室 03-5654-8612〜8615
7 葛飾区消費生活センター 消費生活相談員 無料 03-5698-2311
8 東京都 分譲マンション総合相談窓口 都職員・専門相談員 無料 03-6427-4900
9 東京都 マンションアドバイザー無料派遣(管理状況届出制度) マンション管理士等 無料(届出済みが条件・管理不全兆候ありは最大5回) 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453
10 (公財)マンション管理センター 電話相談 専門相談員 無料 運営03-3222-1517/設備03-3222-1519
11 一般社団法人マンション管理業協会 相談窓口 専門相談員 無料 050-3733-8982
12 法テラス・サポートダイヤル 案内オペレーター 無料(個別法律相談は要件により有料の場合あり) 0570-078374
13 葛飾区マンション管理計画認定制度 住環境整備課(事前確認は外部機関) 区への申請手数料無料(事前確認料等は別途) 住環境整備課企画管理係 03-5654-8352

1〜12がお金のかからない、あるいは費用の大半が戻る相談・派遣・助成、13は区への申請自体は無料で事前確認費用のみ発生する認定制度です。順番に見ていきます。


葛飾区の目玉は「耐震アドバイザー派遣・1棟4回まで無料」

多くの区の耐震アドバイザー制度は1回きりか、せいぜい2回までです。葛飾区は同一マンションにつき最大4回まで無料で派遣を受けられる点が際立っています。

1. マンション耐震アドバイザー派遣制度

区が公表している内容をそのまま引用します。

項目 内容
対象建築物 昭和56年5月31日以前に建築された、3階以上・鉄骨造/鉄筋コンクリート造/鉄骨鉄筋コンクリート造の耐火・準耐火建築物(区内の共同住宅)
費用 無料
派遣回数 1つのマンションにつき4回まで
申込先 葛飾区役所建築課建築安全係 03-5654-8552

(出典:葛飾区「マンション耐震アドバイザー派遣制度(無料)」)

4回という回数の意味は小さくありません。1回目で現地を見てもらい、2回目で簡易診断の結果を踏まえた説明を受け、3回目で耐震改修の方向性を詰め、4回目で総会向けの資料の見せ方を相談する——そこまでの伴走を無料で受けられる計算です。私はいつも理事長さまに「1回で終わらせず、総会説明の直前にもう一度呼んでください」とお伝えしています。総会当日に区分所有者から想定外の質問が飛んでも、アドバイザーに聞いた内容ならその場で答えやすくなるからです。

対象は昭和56年5月31日以前の建物に限られますが、葛飾区は柴又・金町・新小岩・立石など昭和40年代後半から50年代に建てられた分譲マンションが多いエリアです。まずご自身の管理組合の建物がこの年代に該当するか、竣工年月日を登記簿や重要事項調査報告書で確認するところから始めてみてください。


マンション管理計画認定制度を取りに行くなら、アドバイザー派遣がほぼ無料で使える

令和4年に始まったマンション管理計画認定制度は、葛飾区でも申請が進んでいます。区は認定取得を後押しするアドバイザー派遣制度を用意しています。

2. マンション管理計画認定取得のためのアドバイザー派遣

項目 内容
対象 区内分譲マンションの管理組合、または管理組合から委託を受けた管理会社
費用 無料(ただし管理計画認定手続支援サービスのシステム利用料 税込10,000円は管理組合負担)
受付期間 令和8年5月1日〜令和9年2月28日
申込方法 申込書を郵送・持参、または申込みフォーム
申込先 住環境整備課企画管理係 03-5654-8352

(出典:葛飾区「マンション管理計画認定取得のためのアドバイザーを派遣します」/更新日令和8年5月1日)

アドバイザー派遣そのものは無料ですが、認定申請の前段階として必要になる事前確認(マンション管理士や日本マンション管理士会連合会、マンション管理センターなどによる適合証の発行)には別途費用がかかります。この事前確認料と、認定申請支援システムの利用料1万円が、実質的な自己負担額です。

3. 葛飾区マンション管理計画認定制度そのもの

項目 内容
区への認定申請手数料 無料
事前確認 必須(マンション管理士・管理会社・日管連・マンション管理センターいずれかの「事前確認適合証」が必要)
申請窓口 住環境整備課企画管理係(葛飾区立石5-13-1 区役所3階307番窓口)
電話 03-5654-8352

(出典:葛飾区「管理計画認定制度」)

認定を取得すると、住宅金融支援機構のフラット35の金利引き下げや、大規模修繕工事融資の金利優遇といった税制・融資面のメリットが受けられます。長期修繕計画の見直しと合わせて検討する管理組合が増えている制度です。

4. 分譲マンションアドバイザー制度利用助成 — 都の派遣費用を区が一部負担

(公財)東京都防災・建築まちづくりセンターのマンションアドバイザー制度を利用するとき、その派遣料の一部を葛飾区が助成してくれます。

項目 内容
対象 区内の分譲マンションの管理組合または区分所有者
助成額 B-1〜B-7コース:上限12,650円/B-8①②コース:上限25,300円/建替え・改修Aコース:上限8,250円
助成回数 同一マンションにつき年度内1回
申込先 住環境整備課企画管理係 03-5654-8352(事前に電話連絡のうえ申請)

(出典:葛飾区「分譲マンションアドバイザー制度利用助成」/掲載更新日令和5年4月10日)

このページの更新日は令和5年4月10日と少し古いため、助成額そのものに変更がないかは、申請前に必ず住環境整備課へ電話で確認してください。区がハブとして案内している分譲マンションの維持管理相談窓口ページでは「派遣料の半額を助成」という説明もあり、コースによって助成率の表現が異なります。いずれにせよ、都のアドバイザー派遣を単独で申し込むより、区の助成を併用したほうが自己負担は小さくなります。

私はこれを、大規模修繕の初動段階で必ずワンセットで提案するようにしています。管理状況届の提出、都のアドバイザー制度、区の助成——3つを組み合わせて初めて「実質無料に近い専門家派遣」が完成するからです。


区が主催する無料セミナー・個別相談会

5. 分譲マンションにお住まいの方のための維持管理セミナー

区が年に数回開催している、講師によるセミナーと個別相談会のセットです。

項目 内容
対象 区内分譲マンションの管理組合役員、区分所有者
費用 無料
直近の開催 令和8年6月13日(土曜)9時30分〜10時50分がセミナー、11時〜12時が個別相談会
申込先 住環境整備課 03-5654-8352または03-5654-8529

(出典:葛飾区「分譲マンションにお住まいの方のための維持管理セミナー」/更新日令和8年5月1日)

本記事の執筆時点(2026年9月24日)では直近の開催は令和8年6月13日で終了しており、次回の日程は未公表です。定員に達すると受付が締め切られる形式のため、興味のある管理組合は住環境整備課に電話をして、次回開催の案内を早めに受け取れるようにしておくことをお勧めします。


区民相談室──弁護士も建築士も無料で呼べる

6. 区の法律相談(弁護士)

項目 内容
頻度 月〜金曜(第1木曜は午前から、第2水曜は夜間まで拡充)
時間 通常13:00〜16:40、第1木曜8:40〜16:40、第2水曜13:00〜19:20
費用 無料
予約 電話のみ・相談日の2週間前から受付
電話 03-5654-8612〜8615(平日8:30〜17:00)

(出典:葛飾区「法律相談」/更新日令和8年7月2日)

管理費の滞納が続く区分所有者への対応、専有部分の使用差し止め、総会決議の有効性など、区分所有法が絡む相談は法律相談の得意分野です。メール相談は実施していないため、電話で予約してください。

7. 建築・リフォームなんでも相談(建築士)

項目 内容
頻度 第1・3金曜日
時間 13:00〜16:00
費用 無料
予約 不要(当日来室または電話可)
電話 03-5654-8612〜8615

(出典:葛飾区「区民相談のご案内」)

予約不要というのが使い勝手の良いところです。大規模修繕の見積書や、管理会社から提示された改修プランを持ち込んで、第三者の建築士に目を通してもらうという使い方ができます。

8. 葛飾区消費生活センター

項目 内容
費用 無料
受付時間 月〜金曜9:00〜17:00(休日・年末年始除く)
電話 03-5698-2311

(出典:葛飾区「消費生活相談はこちら」)

管理組合が結んだ工事契約や、訪問営業によるリフォーム契約のトラブルは消費生活センターの管轄です。クーリングオフの可否や、契約書の不備の指摘など、実務的なアドバイスが受けられます。


都・国レベルの相談窓口も併用できる

区の窓口だけでなく、東京都や業界団体が用意する無料窓口も併用できます。

9. 東京都 分譲マンション総合相談窓口

日常の維持管理から建替え・改修まで、幅広く相談できる都の窓口です。電話:03-6427-4900。

10. 東京都 マンションアドバイザー無料派遣(管理状況届出制度)

管理状況届を提出済みの要届出マンション(昭和58年12月31日以前に新築・6戸以上)であれば、アドバイザー派遣1回が無料。管理不全の兆候がある場合はさらに手厚く、最大5回まで無料派遣を受けられます。申込・問合せ先は(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453です。

(出典:東京都マンションポータルサイト「管理状況の届出内容に応じたアドバイザー派遣費用の助成」)

11. (公財)マンション管理センターの電話相談

管理組合運営・管理規約の相談は03-3222-1517、建物・設備の維持管理相談は03-3222-1519。受付は平日9:30〜17:00です。

(出典:(公財)マンション管理センター「相談窓口について」)

12. 一般社団法人マンション管理業協会の相談窓口

管理会社との契約内容や委託業務の範囲に疑問があるときの相談先です。電話:050-3733-8982、受付10:00〜16:30(12:00〜13:00を除く)。

(出典:一般社団法人マンション管理業協会「お問い合わせ」)

13. 法テラス・サポートダイヤル

個別の法律相談窓口を案内してくれる全国共通の窓口です。電話:0570-078374(ナビダイヤル)、平日9:00〜21:00・土曜9:00〜17:00。資力要件を満たす場合は無料の民事法律扶助(弁護士費用の立替制度)につながることもあります。

(出典:法テラス「法テラス・サポートダイヤル」)


お金の話:葛飾区で大規模修繕を検討するときの目安

制度の話ばかりでは実感が湧かないと思いますので、費用の目安も出しておきます。すべて参考値のレンジです。実際の見積は建物の形状・劣化状況・立地によって大きく変動します。

工種 ㎡単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
外壁打診調査 250〜500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡

30戸規模のマンションで大規模修繕を一巡させると、総額のレンジは3,500〜5,000万円程度。このうち仮設足場が15〜25%を占めます。足場だけで500万〜1,200万円という計算です。

私がロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が懸垂し、足場を組まずに外壁作業を行う無足場工法)をご提案することが多い理由は、ここにあります。10階建て・外周80m・工期3か月というモデルケースでは、足場の仮設費が約168万円に対し、ロープアクセスなら約59万円。差額は約109万円です。

ただし、どんな建物でもロープアクセスが最適というわけではありません。低層で形状が複雑な建物、改修範囲が広い建物は、足場を組んだほうが総合コストで有利になることもあります。だからこそ明誠では、通常足場・ロープアクセス・両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから選べる体制をとっています。3工法を自社で提案できる会社は、国内でも多くありません。料金の考え方は明誠の大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けています。この安全体制の詳細はロープアクセスドットコムで公開しています。ISO9001品質マネジメントシステムに基づく施工品質の考え方も、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで技術的に解説しています。安全管理の考え方は明誠の安全管理への取り組み、会社の理念は明誠の理念もあわせてご覧ください。

葛飾区は柴又・金町・新小岩・立石・青戸と、地域によって建物のストック年齢に差があります。旧耐震基準の建物が集中するエリアもあれば、区画整理でまとまって建て替えられたエリアもある。同じ葛飾区でも、まず確認すべきことは建物によって違います。


相談に行くとき、何を持っていけばいいか

限られた相談時間を最大限に使うために、私がいつもお伝えしている3点セットがあります。

  1. 直近3期分の総会議事録 — 何が決まり、何が先送りされてきたかが一目で分かります
  2. 長期修繕計画書 — 更新が止まっていても構いません。むしろ止まっていること自体が相談材料です
  3. 管理規約(最新版) — 標準管理規約は令和7年に改正されています。自組合の規約がどの版に準拠しているかで、打てる手が変わります

余裕があれば、竣工年月日が分かる書類(登記簿・重要事項調査報告書など)と、気になっている箇所のスマホ写真を加えてください。旧耐震基準に該当するかどうかは、耐震アドバイザー派遣を申し込む際にまず聞かれる項目です。

法令面では、令和7年5月30日公布の「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律」(令和7年法律第47号)が令和7年11月28日に一部施行されています。建替えや大規模な改修を視野に入れている管理組合は、この改正を踏まえた助言を受けられるかどうかで、相談の価値が変わってきます。


よくあるご質問

Q. 耐震アドバイザー派遣は、旧耐震基準かどうかが分からなくても申し込めますか?

A. まず建築課建築安全係(03-5654-8552)に竣工年月日と構造(鉄骨造・鉄筋コンクリート造など)を伝えれば、対象になるかどうかを確認してもらえます。登記簿や重要事項調査報告書に竣工年月日の記載がありますので、事前に手元に用意しておくとスムーズです。

Q. マンション管理計画認定を取得すると、具体的にどんなメリットがありますか?

A. 住宅金融支援機構のフラット35の金利引き下げや、マンション共用部分リフォーム融資の金利優遇が代表的です。長期修繕計画の内容や修繕積立金の水準が一定の基準を満たしていることが前提になりますので、まずは事前確認から始めることをお勧めします。

Q. 分譲マンションアドバイザー制度利用助成の金額は、令和8年度も同じですか?

A. 区の該当ページの掲載更新日は令和5年4月10日で、令和8年度向けの改定情報は確認できていません。申請前に住環境整備課企画管理係(03-5654-8352)へ電話し、現行年度の助成額を直接ご確認ください。

Q. 賃貸マンションのオーナーでも使える制度はありますか?

A. 耐震アドバイザー派遣や管理計画認定関連の制度は分譲マンションの管理組合が主な対象です。賃貸マンションのオーナーさまは区民相談室の建築相談・法律相談(区内在住・在勤・在学の個人が対象)や、民間の第三者診断をご検討ください。収益物件の維持管理については明誠のオーナー向けサービスをご覧ください。

Q. 大規模修繕の工期は、足場とロープアクセスでどれくらい違いますか?

A. ロープアクセス工法は足場の組立・解体の期間がまるごと不要になるため、足場工法のおよそ60%の工期が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で3か月程度のところ、ロープアクセスなら1.5〜2か月程度になります。

Q. 管理会社を通さずに、明誠に直接相談してもいいのでしょうか?

A. もちろんです。セカンドオピニオンとしてお使いいただくケースが一番多いです。既存の見積書を拝見して、数量と単価の妥当性を一緒に確認するだけでも結構です。お問合せフォームからご連絡ください。管理組合向けのご案内は明誠の管理組合向けサービスにまとめています。

Q. 予算がなくなったら助成は使えなくなりますか?

A. アドバイザー派遣制度は年度予算の範囲内で運営されているため、年度末に近づくほど枠が埋まる可能性があります。特に管理計画認定取得のためのアドバイザー派遣は受付期間が令和9年2月28日までと定められていますので、検討している管理組合は早めに住環境整備課へお問い合わせください。


まとめ:今週、葛飾区の管理組合が動けること3つ

長くなりましたので、動き出しの3手に絞ります。

1. 建物の竣工年月日を確認し、旧耐震基準に該当するか調べる

昭和56年5月31日以前の建物であれば、耐震アドバイザー派遣を1棟あたり4回まで無料で使えます。登記簿や重要事項調査報告書があれば、すぐに確認できます。

2. 住環境整備課(03-5654-8352)に電話して、管理計画認定アドバイザー派遣の受付状況を聞く

受付期間は令和9年2月28日までですが、予算の状況によって早期に締め切られる可能性もあります。長期修繕計画の見直し時期と合わせて検討している管理組合は、早めの相談をお勧めします。

3. 次の理事会に、この記事の一覧表を持っていく

13ある制度のうち、自分たちの管理組合がどれに該当するかを整理するだけでも、専門家に相談するときの話が具体的になります。


葛飾区は、旧耐震基準の建物への支援という点で、23区の中でも特徴のある制度を持っています。耐震アドバイザー派遣が1棟4回まで無料というのは、決して小さな数字ではありません。

一方で、都の制度と区の助成を組み合わせる仕組みは少し分かりにくく、掲載情報の更新頻度にもばらつきがあります。だからこそ、電話一本で確認する手間を惜しまないことが大切だと、私は現場で感じています。

私はこう思うことがあります。管理組合が損をするのは、悪い業者に当たったときよりも、相談しないまま時間だけが過ぎたときのほうがずっと多い、と。壁の浮きも、防水の切れも、待っていて良くなることはありません。

明誠のこれまでの明誠の施工事例もあわせてご覧いただければ、実際にどんな建物でどんな判断をしてきたかが伝わると思います。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月24日時点で公表されている東京都葛飾区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。特に分譲マンションアドバイザー制度利用助成のページは掲載更新日が令和5年4月10日と古いため、助成額に変更がないか申請前に必ず住環境整備課へご確認ください。実際に申請される前に、必ず東京都葛飾区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)

株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月24日

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