大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

町田市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|「市の助成が薄い街」で、それでも数百万円を取りに行く方法

町田市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド|「市の助成が薄い街」で、それでも数百万円を取りに行く方法

町田市で賃貸マンションやビルをお持ちのオーナーさまから、この半年で立て続けに同じご相談をいただきました。

「町田市のホームページを見たけれど、うちが使える補助金が見当たらない」

正直に申し上げます。その感覚は、半分正しくて、半分もったいない。

町田市の住宅系助成制度は、その多くが「分譲マンションの管理組合」または「木造戸建ての持ち主」を対象に設計されています。1棟をまるごと所有して賃貸に出しているオーナーさまは、市の看板制度からは静かに外れてしまう。ここは、はっきり認めるべき事実です。

しかし、それは「町田市の物件では補助金が取れない」という意味ではありません。町田市の賃貸オーナーが2026年度に取りに行けるお金は、市ではなく「国」と「東京都」に、そして市の制度の中でも「ある一本の道路沿い」に集中しています。

私は20年近く、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を現場でやってきました。町田市内でも、原町田や成瀬、南町田、鶴川といったエリアで築30年前後のRC賃貸を何棟も見てきています。この記事では、営業トークを抜きにして、町田市のオーナーさまが2026年度(令和8年度)に実際に申請できる制度を、金額と根拠つきで整理します。

読み終えたときに、「うちの物件なら、この順番で動けばいい」という道筋が見えるように書きました。


結論:町田市の賃貸オーナーは「国・都・市」の三層で考える

先に結論だけ置いておきます。町田市の1棟オーナーが狙うべき補助金は、次の三層構造です。

制度 賃貸オーナーの立場 規模感
住宅省エネ2026キャンペーン(先進的窓リノベ2026/みらいエコ住宅2026/賃貸集合給湯省エネ2026) 対象。オーナー申請が可能 窓は最大100万円/戸、給湯器は5〜10万円/台
東京都 令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業(クール・ネット東京) 対象。「個人・法人」が明記されている 窓・ドアで最大200万円/戸、断熱材で最大100万円/戸
町田市 分譲マンション耐震化助成 対象外(管理組合限定)
町田市 特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化助成 対象。ここが最大の狙い目 補強設計10/10、耐震改修9/10
町田市 ブロック塀等撤去助成 対象 上限30万円

つまり、町田市のオーナーさまにとっての本丸は「東京都の省エネ改修」と「特定緊急輸送道路沿道の耐震化」の2つです。ここを外すと、取れるはずの数百万円を丸ごと逃すことになります。

順番に、金額と要件を見ていきます。


第1層:国の「住宅省エネ2026キャンペーン」— 賃貸オーナーが最も取りやすい現金

まず国です。2026年度の住宅省エネ関連予算は、住宅・建築物の省エネ化支援としては過去最大級の規模で組まれています。そして重要なのは、この枠のいくつかが、はっきりと「賃貸住宅のオーナー」を対象に含んでいるという点です。

先進的窓リノベ2026事業(環境省)

窓の断熱改修に対する補助です。補助対象建物には戸建住宅だけでなく、低層集合住宅(3階建以下)と中高層集合住宅(4階建以上)が含まれます。賃貸住宅の場合、所有者であるオーナーが申請者になれます(居住者が申請する場合はオーナーの同意が必須)。

補助額は工事内容に応じて1戸あたり5万円から最大100万円。窓のサイズとガラスの性能グレードで単価が決まる仕組みです(出典:先進的窓リノベ2026事業【公式】)。

20戸の賃貸マンションで全戸の窓を内窓化すれば、理屈のうえでは相当な額が動きます。ただし、後述するとおり「予算上限に達した時点で締切」という制度ですので、後半になるほど枠は細くなります。

みらいエコ住宅2026事業(国土交通省)

窓・断熱材・給湯器・節湯水栓などを組み合わせた総合的な省エネ改修に対する補助です。窓リノベほど窓に特化していない分、浴室・キッチンなど住戸内の設備更新とセットで組めるのが賃貸オーナーにとっての使いどころです(出典:みらいエコ住宅2026事業【公式】)。

賃貸集合給湯省エネ2026事業(経済産業省・資源エネルギー庁)

これは名前のとおり「賃貸集合住宅のオーナー専用」に設計された、極めて珍しい制度です。

既存の賃貸集合住宅で高効率給湯器に交換した場合、追い焚きなしで5万円/台、追い焚きありで7万円/台が基本補助額。一定の排水工事を伴う場合は最大8万円/台・10万円/台まで加算されます。交付申請の受付は2026年3月31日開始、締切は遅くとも2026年12月31日までとされています(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】)。

ここで一つ、実務上の重大な注意点があります。

この補助金は、オーナーが直接申請することができません。 申請手続きと受給、そしてオーナーへの還元は「賃貸集合給湯省エネ事業者」として事前登録された施工業者が行う仕組みです(出典:事業概要|賃貸集合給湯省エネ2026事業)。

私はこれを、オーナーさまにお会いするたびにお伝えしています。「登録事業者かどうか」を確認せずに給湯器交換を発注してしまうと、1台7万円 × 20台=140万円が、そのまま消えます。 見積もりを取る段階で、「御社は賃貸集合給湯省エネ2026事業の登録事業者ですか」と一言聞くだけで防げる損失です。

なお、電気でお湯を沸かすエコキュートは本事業ではなく別枠(給湯省エネ事業)の対象になります。ガス・石油系の給湯器が中心である点も、事前に押さえておいてください。


第2層:東京都「令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業」— 町田市オーナーの本命

ここが、この記事で一番お伝えしたい制度です。

東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)が実施する「令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業(高断熱窓・ドア・断熱材・浴槽)」。

助成対象者を、公式サイトはこう書いています。

都内に住宅を所有する個人・法人及び管理組合
(出典:令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業|クール・ネット東京

「管理組合」だけではありません。「住宅を所有する個人・法人」と明記されています。つまり、町田市内に賃貸マンションを1棟持っている個人オーナーも、資産管理法人も、堂々と申請者になれるということです。

助成額のインパクトが大きい

金額を見てください。

対象 助成上限
高断熱窓・高断熱ドア 1住戸あたり200万円(断熱+防犯窓なら300万円)
断熱材(壁・屋根・天井・床) 対象経費の1/3、1住戸あたり100万円
高断熱浴槽 1住戸あたり9.5万円
リフォーム瑕疵保険 1契約あたり7,000円

(出典:令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業|クール・ネット東京

単価表も具体的です。たとえば外窓交換(カバー工法)でグレードP(熱貫流率1.1以下)・大サイズ(2.8㎡以上4.0㎡未満)の窓なら、1か所あたり22万円。内窓設置でも同条件で10.6万円。これが窓の数だけ積み上がります。

令和8年度からは高断熱窓・高断熱ドアの助成単価が増額され、窓のサイズ区分に「特大(4.0㎡以上)」が追加されました。事業全体(災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業)の令和8年度予算は約1,012億円と公表されています。

スケジュールと「事前申込」の落とし穴

ここが実務の勝負どころです。

  • 事前申込:令和8年(2026年)5月29日から受付開始 → すでに受付中
  • 交付申請兼実績報告:令和8年6月30日から令和11年3月30日まで
  • 設備設置の契約・施工は「事前申込受付後」でなければならない

最後の一行が決定的です。事前申込を出す前に工事契約を締結してしまうと、その工事は助成対象外になります。 私が現場で一番悔しい思いをするのは、この手のケースです。工事が終わって、竣工写真を撮って、さあ請求という段になって「先に申し込んでいませんでしたね」となる。もう取り返せません。

また、事前申込後1年以内に交付申請を行わないと、事前申込は自動的に無効になります。段取りを組むなら、工事計画と申請を同じテーブルの上に置いてください。

分譲との差:50戸以上の割増は使えない

公平を期すために、賃貸オーナーに不利な点も書いておきます。

この制度には「分譲集合住宅の管理組合が申請者であり、かつ改修戸数が50戸以上となる場合は助成単価合計額に120%を乗じる」という割増規定があります。つまり、50戸超の大規模物件での2割増しは、分譲マンションの管理組合だけの特典です。1棟所有の賃貸オーナーは、この割増は受けられません。

とはいえ、素の単価だけでも十分に厚い。割増がないことを理由に見送るのは、あまりに惜しい話です。

省エネ診断・設計への補助も別枠である

断熱等性能等級5以上を第三者認証で証明する場合、BELS評価書が必要になります。このBELS取得については、東京都住宅政策本部の「東京都既存住宅省エネ診断・設計等支援事業」の補助を活用できます(出典:既存住宅の省エネ診断・省エネ設計への補助|東京都住宅政策本部)。

診断費用まで補助が出るということは、「投資判断のための調査費」を都に負担してもらえるということです。オーナー経営の観点で言えば、これほど使い勝手のいい制度はそうありません。


第3層:町田市の制度 — 正直に申し上げます

さて、町田市です。

分譲マンション耐震化助成は、賃貸オーナーには使えない

町田市には「分譲マンションの耐震化促進助成制度」があります。旧耐震基準(昭和56年5月31日以前に着工)の分譲マンションを対象に、耐震アドバイザー派遣(1回5万円限度・実質自己負担なし、管理組合1つにつき10回まで)、耐震診断(助成基準額の2/3)、耐震設計(同2/3)、耐震改修(同1/3、1,000㎡以上のマンションで㎡あたり50,200円が基準単価)を助成する制度です。

しかし、町田市はこう明記しています。

助成制度の対象は、旧耐震基準の分譲マンションを管理している管理組合です
(出典:分譲マンションの耐震化促進助成制度|町田市

対象となる「分譲マンション」の要件にも「2以上の区分所有者が存する建物であること」とあります。1棟をオーナー1人(1法人)で所有する賃貸マンションは、この定義に当てはまりません。

ここは正直に書きます。町田市の看板耐震制度は、賃貸オーナーには開いていない。「うちが使える補助金が見当たらない」という冒頭のご相談は、この点においては、まさに正しかったのです。

(同じ多摩地域でも、自治体によって制度の厚みはまったく違います。以前書いた八王子市で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイドでは、中核市ならではの独自枠についても触れました。県境を越えた比較としては新座市の事例もあわせてご覧ください。)

しかし ―「特定緊急輸送道路沿道」なら、話はまったく変わる

ここからが本題です。

町田市には、特定緊急輸送道路沿道建築物の補強設計・耐震改修・建替え・除却への助成制度があります。そしてこの制度は、分譲マンションに限定されていません。「住宅(マンション除く)」「マンション」「住宅以外」という区分で助成基準が組まれており、1棟所有の賃貸マンションも、テナントビルも、対象になり得ます

助成の中身が、他制度と比べて桁違いです。

項目 基準額 補助率
補強設計・建替設計 5,000円/㎡(延べ面積1,000㎡以内の部分)ほか 10/10(全額)
耐震改修 マンション 50,200円/㎡(Is値0.3未満相当なら55,200円/㎡)/住宅以外 51,200円/㎡(同56,300円/㎡)/免震等の特殊工法 83,800円/㎡ 9/10(延べ面積5,000㎡以内の部分)

(出典:特定緊急輸送道路沿道建築物の補強設計、耐震改修、建替え又は除却費用助成制度|町田市

補強設計は10割補助。耐震改修工事は9割補助。 数字を見間違えているのではないかと思われるかもしれませんが、町田市の公式ページにそう書かれています。

対象となる建築物の要件は、
– 昭和56年5月31日以前に建築されたもの(国・地方公共団体所有を除く)
– 特定緊急輸送道路沿道の建築物であること
– 木造住宅の耐震化促進助成制度を受けていないこと
– 補強設計にあたって建築基準法等に重大な不適合がある場合、その是正を行うこと
– 一定の規模要件を満たすこと

なお、2012年度以降、東京都の「緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」により、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震診断は義務化されています。「補助が出るからやる」ではなく、「義務であり、しかも補助が出る」という位置づけです。

ご自身の物件が特定緊急輸送道路に面しているかどうかは、東京都耐震ポータルサイトの路線図で確認できます。町田市内の幹線道路沿いに旧耐震のビルや賃貸マンションをお持ちなら、まずこれを確認してください。 1棟の資産価値を左右する話です。

ただし注意点も明記されています。「市の予算の範囲を超える時点で、受付を終了いたします」。9割補助という制度である以上、予算枠は当然に有限です。

ブロック塀等撤去助成(上限30万円)

見落とされがちですが、地味に効く制度です。

道路等に面する危険なブロック塀等の撤去に対して、撤去工事費(見積額)と「水平長さ10cmにつき600円」を比較して低いほうの額、上限30万円が助成されます(出典:ブロック塀等撤去助成|町田市)。

対象は、道路等の地盤面から天端まで1メートル超、かつ敷地の地盤面から天端まで0.6メートル超のコンクリートブロック塀・万年塀・石積み等。擁壁や土留めは対象外です。

そして最重要の注意点。「既に契約しているブロック塀等撤去工事では利用できません」。交付決定通知書を受け取ってから契約する、という順番を守らないと、助成金は1円も出ません。大規模修繕の外構工事とまとめて発注してしまうと、この30万円を落とすことになります。


数字で見る:町田市・築32年・20戸のRC賃貸マンションで試算する

抽象論では動けませんので、私がよくお見せする試算パターンを置いておきます。

モデル物件:町田市内、築32年、RC造5階建、20戸(各戸50㎡)、延べ面積約1,200㎡、想定家賃7.8万円、現況入居率85%(3戸空室)

ケース1:省エネ改修(窓+給湯器)を打つ

項目 工事費(概算) 補助見込み
全戸の内窓設置(1戸あたり3か所) 約900万円 東京都:単価積み上げ(中サイズ・グレードSで4.4万円/か所×60か所=約264万円)
高効率給湯器交換(20台・追い焚きあり) 約400万円 国:7万円×20台=140万円
合計 約1,300万円 約400万円規模

※ 東京都の助成額は窓のサイズ・グレード・数量で変動します。上記は中サイズ・グレードSの単価44,000円を60か所に適用した概算であり、実際の額は現地調査に基づく積算が必要です。また、国と都で同一設備への重複受給ができない場合がありますので、どちらで取るかの設計が必要になります。

自己負担は約900万円。ここで重要なのは、この900万円が「何を生むか」です。

築30年超の物件で、単板ガラスのアルミサッシのまま。冬は結露、夏は西日で室温が上がる。町田は南大沢や多摩ニュータウン方面の競合ストックとも比較される市場です。内見に来た入居希望者が、隣の築15年物件と比べて何を見ているか。私は現場で何度も、「窓が古い」という一点で決まらなかった部屋を見てきました。

入居率が85%から95%に改善すれば、年間の家賃収入は 7.8万円 × 2戸 × 12か月 = 約187万円の増加です。900万円の自己負担は、賃料増だけで5年前後。さらに補助金400万円を差し引いて考えれば、実質の回収期間はもっと短くなります。

そして、これは「入居率が改善したら」の話ではありません。改修しなければ、入居率は85%のまま維持されるのではなく、じりじり下がっていくというのが、築年数なりの劣化が賃料に効いてくるという意味です。

ケース2:特定緊急輸送道路沿道に建っている場合

同じ1,200㎡の物件が、特定緊急輸送道路沿道の旧耐震建築物だったとします。

  • 補強設計:基準額 5,000円/㎡ × 1,000㎡ + 3,500円/㎡ × 200㎡ = 570万円 → 補助率10/10(全額補助)
  • 耐震改修:基準額 50,200円/㎡ × 1,200㎡ = 6,024万円 → 補助率9/10 = 約5,421万円

自己負担は、耐震改修の1割にあたる約600万円。6,000万円規模の耐震改修が、600万円の自己負担で実現し得るという計算になります(実際には実支出額との比較、規模要件、予算枠、その他の条件がありますので、必ず町田市住宅課にご確認ください)。

旧耐震のまま保有し続けるリスク ―― 売却時の指値、金融機関の融資姿勢、地震時の倒壊責任 ―― を考えれば、この制度を検討しないという選択肢はないと私は思います。


税務の話:補助金は「もらって終わり」ではありません

オーナー経営の記事である以上、ここを飛ばすわけにはいきません。

補助金は雑収入として課税される

受け取った補助金・助成金は、原則として受給した事業年度の「雑収入」として計上され、課税対象になります。 「200万円もらえた」=「200万円が手元に残る」ではないのです。法人税・所得税の税率を考えれば、実質の手取りは目減りします。

補助金の交付決定と工事完了・入金の期がずれると、「工事費は前期に落としたのに、補助金収入は今期」という利益のブレも起きます。顧問税理士に、交付決定の見込み時期をあらかじめ共有しておいてください。

(なお、圧縮記帳など課税の繰延べが使える場合もあります。適用可否は個別事情によりますので、必ず税理士にご確認ください。私は税理士ではありませんので、ここでは制度の存在をお伝えするに留めます。)

「修繕費」か「資本的支出」か、で結果が大きく変わる

大規模修繕の税務処理で、オーナーさまが最も損をしやすいのがここです。

  • 修繕費:原状回復・維持管理にあたる工事 → その期に全額損金算入
  • 資本的支出:価値を高める、耐用年数を延ばす工事 → 資産計上し、減価償却で数年〜数十年に配分

外壁の塗り替えや防水の打ち替えは修繕費として処理できる可能性がありますが、窓を単板ガラスから複層ガラスに替える、断熱材を新設する、耐震補強を行うといった工事は、性能を明確に向上させるため資本的支出と判断されやすい領域です。

つまり、省エネ改修や耐震改修は「補助金は取れるが、その期に一括で損金にはできない可能性が高い」工事だということです。キャッシュフローの計算をするときは、「補助金で入ってくる現金」と「損金にできる金額」を分けて考えてください。

一方で、資本的支出として資産計上した分は、将来にわたって減価償却費を生み続けます。長期保有前提のオーナーさまにとっては、必ずしも不利とは限りません。

固定資産税の減額措置も忘れずに

一定の省エネ改修工事を行った住宅については、固定資産税の減額措置が用意されています(出典:省エネ改修工事をした住宅に対する固定資産税の減額|東京都主税局住宅の省エネ改修に伴う減額について|町田市)。

現金補助 + 減価償却 + 固定資産税減額。 この三段が揃って初めて、省エネ改修の投資判断は完成します。補助金だけを見て「思ったほど得ではない」と判断してしまうのは、あまりにもったいない。


工法の話:足場を組むか、組まないか

ここは私の本業の話ですので、少しだけ書かせてください。

補助金の話をしていると、どうしても「いくらもらえるか」に意識が向きます。しかし、オーナー経営の観点では、そもそもの工事原価をいくらに抑えられるかのほうが、はるかにインパクトが大きい場面があります。

大規模修繕の工事費のうち、仮設足場が占める割合は一般に2割前後にのぼります。1億円の工事なら2,000万円が「足場」です。足場は建物を1平米も直しません。それでも必要だからかける。ここが、大規模修繕という工事の宿命でした。

私たちは、通常の足場仮設工法、ロープアクセス工法(無足場工法:産業用ロープで作業員が外壁面を降下しながら施工する方法)、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つを、建物の形状・立地・工事内容に応じてご提案しています。3つすべてを自社で提案できる会社は、日本でも数えるほどです。

町田市の物件で、私がロープアクセス工法をご提案することが多いのは、次のようなケースです。

  • 敷地に余裕がなく、足場を組むと隣地や道路にかかる物件(原町田・中町・森野などの駅近エリアに多い)
  • 足場の設置・解体だけで工期が1〜2か月延びてしまう高層物件
  • 入居者がいる状態で、足場によるプライバシー・防犯リスクを避けたい物件

特に3つ目は、オーナー経営に直結します。足場が組まれている期間、入居者は窓を開けられず、防犯上の不安を抱え、洗濯物も干せません。 私が実際に経験した現場では、足場設置の告知を出した直後に退去の申し出が出たこともありました。3か月の工事のために、1戸の退去 ―― 家賃7.8万円 × 空室期間3か月 + 原状回復・募集コストを考えれば、決して小さくない金額です。

一方で、ロープアクセスが不向きなケースも正直にお伝えします。

  • 外壁全面に大規模な躯体補修が必要で、作業量が膨大な場合(足場のほうが効率的)
  • バルコニーが深く、複雑な形状で、ロープでのアクセスが困難な部位が多い場合
  • 耐震補強のように、外部から大きな部材を取り付ける工事

ですので私は、「全部ロープでやりましょう」とは言いません。外壁の高層部はロープ、低層部とバルコニー廻りは足場、というハイブリッドが最適解になる物件が、実は一番多いというのが現場の実感です。大規模修繕工事のご提案では、必ずこの3案を並べて比較していただくようにしています。


出口戦略:2026年以降、「省エネ性能表示」が効いてくる

最後に、売却を視野に入れているオーナーさまへ。

建築物省エネ法に基づき、住宅・建築物の販売・賃貸時に省エネ性能を表示する制度が動いています(参考:国土交通省 省エネ性能表示制度)。ポータルサイトに物件を掲載するとき、断熱性能のラベルが並ぶようになる ―― そういう世界が、もう始まっています。

これが何を意味するか。

「築年数」という一本の物差しだけで比較されていた賃貸市場に、「省エネ性能」という第二の物差しが入るということです。築32年でも、窓と断熱を改修してラベルが取れている物件と、築25年で単板ガラスのままの物件。5年後、ポータル上でどちらが選ばれるか。

そして売却時。収益還元価格は、突き詰めれば「将来のNOI(実質賃料収入)をいくらと見るか」で決まります。省エネ性能が高く、入居率が安定し、当面の大規模修繕リスクが低い物件は、キャップレート(還元利回り)が低く評価されます。つまり、同じNOIでも高く売れる。

補助金を使った省エネ改修は、目先の利回り改善だけの話ではありません。出口の物件価値そのものを底上げする投資です。私はオーナーさまに、いつもこの視点をお伝えしています。


申請の実務:町田市オーナーが今すぐやるべき5つのこと

長くなりましたので、動作としてまとめます。

  1. 物件が特定緊急輸送道路沿道か確認する(東京都耐震ポータルサイトの路線図 → 該当し、かつ旧耐震なら、町田市住宅課 042-724-4269 に即相談)
  2. 東京都の省エネ改修促進事業に「事前申込」を出す(工事契約より前に。すでに受付中)
  3. 給湯器交換を検討中なら、施工業者が「賃貸集合給湯省エネ2026事業の登録事業者」か確認する(オーナー直接申請は不可)
  4. 顧問税理士に、補助金の雑収入計上と資本的支出/修繕費の区分を事前相談する
  5. 足場ありき/ロープありきではなく、3工法を比較した見積もりを取る

そして、すべての制度に共通する最大の注意点を、もう一度だけ。

「予算枠に達した時点で受付終了」であり、「交付決定前の契約は対象外」です。

補助金は、早く動いた人から順に消えていきます。そして、順番を間違えた人は、いくら工事の中身が良くても1円も受け取れません。私が現場で20年見てきて、一番もったいないと思うのが、この「順番」のミスです。


よくあるご質問

Q. 町田市に、賃貸オーナー専用の大規模修繕助成はありますか?

現時点では、賃貸マンション1棟のオーナーを直接の対象とした「大規模修繕そのもの」への市独自助成は見当たりません。町田市の耐震助成は分譲マンション管理組合または木造住宅が中心です。ただし、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化助成とブロック塀等撤去助成は、賃貸オーナーも対象になり得ます。

Q. 国の補助金と東京都の補助金は併用できますか?

制度の組み合わせによります。クール・ネット東京は「助成対象設備について、都および公社の他の同種の助成金の交付を重複して受けることはできません」と明記しています。また、断熱材の助成額は「国による補助金の交付を受ける場合にあっては、国の補助金交付額」が上限のひとつとして設定されています。どの設備をどちらの制度で取るか、設計段階での振り分けが必要です。

Q. 相続で取得した築古の賃貸ビルです。改修すべきか、売却すべきか迷っています。

これは補助金の話だけでは決められません。旧耐震かどうか、特定緊急輸送道路沿道かどうか、現況の入居率と賃料水準、残存耐用年数、相続税の取得費。この5つを並べて、「改修して10年持つ」「今のまま売る」「改修して売る」の3シナリオでキャッシュフローを比較する必要があります。ご相談いただければ、現地調査のうえで試算をお出しします。


まとめ

町田市の賃貸オーナーさまにとって、市の看板制度は確かに手薄です。それは事実として認めます。

けれども、東京都の省エネ改修促進事業は「個人・法人」を対象に明記し、窓・ドアで1戸あたり最大200万円という枠を用意しています。町田市の特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化助成は、補強設計10割・耐震改修9割という、ほとんど例を見ない補助率です。国の賃貸集合給湯省エネ2026事業に至っては、賃貸オーナー専用に設計された制度です。

見当たらないのではなく、探す場所が違っただけなのです。

お持ちの物件で、まだこれらの制度の検討を始めていない町田市のオーナーさまは、ぜひ一度お声がけください。1棟の現地調査と、利回り改善シミュレーション、そして補助金の対象可否の一次判定だけでも承ります。工事のご依頼をいただかなくても構いません。「うちは特定緊急輸送道路沿道でした」と気づいていただけるだけで、この記事を書いた意味があります。

ご相談はお問合せフォームからどうぞ。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料

※本記事は2026年7月13日時点で公表されている情報に基づいています。補助金・助成金の要件、金額、受付期間は変更される場合があり、また予算枠に達した時点で受付が終了します。申請にあたっては必ず各制度の公式サイトおよび所管窓口(町田市住宅課 042-724-4269 ほか)で最新情報をご確認ください。本記事は税務・法務に関する助言を目的とするものではありません。個別の税務処理については税理士にご相談ください。