
立川市で賃貸マンションやビルを1棟お持ちのオーナーさま。2026年度(令和8年度)は、正直に言って過去にないほど「1棟オーナーに有利な年」です。
理由はひとつ。東京都が「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」という、賃貸住宅を1棟所有しているオーナーだけが申請できる助成制度を、令和8年度予算218億円という規模で走らせているからです(出典:クール・ネット東京「令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」)。
管理組合でもなく、持ち家の個人でもなく、「1棟をまるごと持って貸している人」が主役の制度です。こんな制度は、そう多くありません。
私は20年近く、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を現場でやってきました。立川では、駅北口のGREEN SPRINGSや立飛エリアの再開発で街の顔が新しくなる一方、南口や柴崎町、錦町、曙町の一本裏に入れば築30年、築40年のRC賃貸がびっしり建っています。この「新しい街」と「古い建物」のギャップこそが、立川のオーナーさまが今、真剣に修繕投資を考えるべき理由だと私は思っています。
この記事では、営業トークを抜きにして、立川市の賃貸オーナーが2026年度に実際に申請できる制度を、金額と一次情報のリンクつきで整理します。読み終えたときに「うちの物件は、この順番で動けばいい」と分かるように書きました。
結論:立川の賃貸オーナーが狙うべきは「国・都・市」の三層
先に全体像を置きます。
| 層 | 制度 | 賃貸1棟オーナーの立場 | 規模感 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業 | 賃貸1棟オーナー専用。ど真ん中 | 省エネ診断 10/10・上限120万円/棟、断熱材 2/3・上限60万円/戸 ほか |
| 東京都 | 令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業 | 対象(個人・法人・管理組合) | 高断熱窓・ドア 上限200万円/戸(断熱+防犯窓は300万円) |
| 国 | 住宅省エネ2026キャンペーン(先進的窓リノベ/みらいエコ住宅/賃貸集合給湯省エネ) | 対象。特に給湯は賃貸専用枠 | 窓は工事内容により最大100万円/戸、給湯器は5〜10万円/台 |
| 立川市 | 緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業 | 対象。立川固有の最大の狙い目 | 補強設計・耐震改修・建替え・除却の費用の一部(委任払い可) |
| 立川市 | ブロック塀等撤去工事等助成金 | 対象(法人可) | 撤去 上限30万円/新設 上限18万円 |
| 立川市 | 木造住宅の耐震化助成制度 | 木造アパートは対象住宅。ただし要件に注意 | 診断 1/2・上限10万円、改修 1/2・上限50万円 |
| 立川市 | 中小企業二酸化炭素排出量削減事業施設改修費補助金 | 法人オーナーは検討余地あり | 1/3以内・上限50万円(枠が非常に小さい) |
この表を見て、もし「うちは道路沿いじゃないし、木造でもない」と思われたなら、それでも東京都の2制度だけで数百万円が動きます。まずそこから見ていきます。
第1層の本丸:東京都「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」(令和8年度)
これが、2026年度の立川オーナーにとっての主役です。
何がすごいのか
制度名のとおり、対象は「賃貸住宅」だけ。そして助成対象者は次のように定義されています。
助成対象住宅を1棟所有している個人又は法人(建物の登記事項証明書で所有権者として証明できること)
(出典:クール・ネット東京「令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」)
つまり、登記簿に1棟の所有者として名前が載っていれば、それだけで入口に立てるということです。管理組合の合意も、総会決議も要りません。オーナーさま単独の投資判断で動けます。
対象住宅は「普通賃貸借契約を締結し、貸し出される既存の住宅」。オーナーやその3親等以内の親族が住んでいる住戸も、令和8年度から助成対象に含まれるよう要件が緩和されました。
助成額(令和8年度)
◆ 省エネ診断等
| 対象 | 補助率 | 上限 |
|---|---|---|
| 省エネ診断等(省エネ性能表示を含む) | 対象経費の10/10 | 120万円/棟 |
| 省エネ診断用の現況図面作成 | 対象経費の10/10 | 10万円/戸 |
補助率10/10。つまり実質的に自己負担ゼロで、1棟まるごとの省エネ診断が受けられます。上限は棟あたり120万円。図面が残っていない築古物件でも、現況図面の作成費が別枠で戸あたり10万円まで出ます。
私は、ここが今年一番の「取りこぼしポイント」だと思っています。診断費が全額出るということは、「うちの建物は今どれくらいの断熱性能なのか」を、タダで数値化できるということです。これは改修する・しないに関わらず、資産の状態を把握するうえで価値があります。
◆ 断熱改修
| 対象 | 補助率 | 上限 |
|---|---|---|
| 高断熱窓 | 対象経費の2/3 | 30万円/戸 |
| 高断熱ドア | 対象経費の2/3 | 27万円/戸 |
| 断熱材(屋根・天井・外壁・床) | 対象経費の2/3 | 60万円/戸 |
20戸の賃貸マンションで、窓と断熱材の両方を改修したとすれば、上限まで使えば理屈の上では(30万円+60万円)×20戸=1,800万円の枠になります。もちろん実際は対象経費の2/3が上限ですから工事内容次第ですが、桁がひとつ違う話をしているということはご理解いただけると思います。
絶対に間違えてはいけない「順番」
この制度には、実務上の落とし穴が3つあります。
- 事前申込より先に契約・着工したものは、1円も出ません。 事前申込は令和8年5月29日から受付が始まっています(令和8年4月1日〜6月30日に契約した場合は令和9年3月31日までに事前申込)。
- クール・ネット東京に登録された事業者と契約したものしか対象になりません。 付き合いの長い業者さんがいても、その会社が登録事業者でなければ助成対象外です。
- 改修前の断熱等級を把握していないと対象外です。 だから「先に省エネ診断」なのです。診断せずに窓を替えてしまうと、補助が受けられません。
この3つを外すと、いくら工事の中身が良くても助成金はゼロです。私が現場で20年見てきて、一番もったいないと感じるのがこの「順番のミス」です。
なお、東京都は「賃貸住宅断熱・再エネ×コンシェルジュ事務局」という相談窓口も用意しています。まず何から手を付けるか迷われたら、そこに相談するのも手です。
もうひとつの都制度:「既存住宅における省エネ改修促進事業」との使い分け
東京都には、もう1本、大型の省エネ改修助成があります。令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業(クール・ネット東京)です。
こちらの助成対象者は「都内に住宅を所有する個人・法人及び管理組合」。賃貸オーナーも入口に立てます。
助成額のスケールが違うのは、高断熱窓・ドアです。
| 工事 | グレードP(熱貫流率1.1以下)・特大サイズの助成単価 |
|---|---|
| 内窓設置 | 133,000円/か所 |
| 外窓交換(はつり・カバー工法) | 277,000円/か所 |
| 断熱防犯窓 | 399,000円/か所 |
| ドア交換 | 220,000円/枚 |
上限は1住戸あたり200万円(住宅省エネ2026キャンペーンで「断熱窓+防犯窓」として登録された製品なら300万円)。断熱材は対象経費の1/3・1住戸100万円まで、高断熱浴槽は9.5万円/戸です(出典:クール・ネット東京「令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業」)。
では、どちらを使えばいいのか
ここが実務の勘所です。
クール・ネット東京は、「助成対象設備について、都および公社の他の同種の助成金の交付を重複して受けることはできません」と明記しています。同じ窓に対して両方の制度から二重取りはできないということです。
大雑把な整理をすると、こうなります。
- 窓の助成額そのものは、既存住宅の省エネ改修促進事業(上限200万円/戸)のほうが、賃貸専用事業(上限30万円/戸)よりはるかに大きい
- 一方、省エネ診断費が10/10・棟あたり120万円出るのは賃貸専用事業だけ
- 賃貸専用事業は登録事業者との契約が必須、既存住宅の事業は登録事業者要件がない
したがって、「どちらが有利か」は、窓の枚数・サイズ・グレード、そして断熱材や診断をどこまでやるかで逆転します。 見積もりを取る前に、両制度で試算して振り分けるべきです。逆に言えば、ここを設計せずに走り出すと、数百万円単位で取り逃がします。
ご自身で判断が難しければ、公社のお問い合わせ窓口(賃貸事業:03-6258-5317)に、物件の条件を伝えて確認するのが確実です。私どもでも一次判定はお手伝いしています。
第2層:国の「住宅省エネ2026キャンペーン」
国の制度も、賃貸オーナーが使えるものがあります。
先進的窓リノベ2026事業(環境省)
窓の断熱改修への補助。低層集合住宅(3階建以下)・中高層集合住宅(4階建以上)も対象で、賃貸住宅の場合はオーナーが申請者になれます。補助額は工事内容に応じて1戸あたり5万円から最大100万円(出典:先進的窓リノベ2026事業【公式】)。
みらいエコ住宅2026事業(国土交通省)
窓・断熱材・給湯器・節湯水栓などを組み合わせた総合的な省エネ改修への補助。住戸内の設備更新とセットで組めるのが、原状回復のタイミングを持つ賃貸オーナーにとっての使いどころです(出典:みらいエコ住宅2026事業【公式】)。
賃貸集合給湯省エネ2026事業(経済産業省・資源エネルギー庁)
名前のとおり、賃貸集合住宅のオーナー専用に設計された珍しい制度です。既存の賃貸集合住宅で高効率給湯器に交換した場合、追い焚きなしで5万円/台、追い焚きありで7万円/台が基本。一定の排水工事を伴えば最大8万円/台・10万円/台まで加算されます(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】)。
注意点として、この事業はオーナーが直接申請するのではなく、事業に登録した施工業者(登録事業者)を通じて申請する仕組みです。給湯器の交換を検討中なら、まず施工業者に「登録事業者ですか」と一言確認してください。
そして国の制度に共通する最大の注意点。予算枠に達した時点で受付終了です。年度後半になるほど枠は細くなります。
第3層:立川市固有の制度 ― ここに立川ならではの「本丸」がある
緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業 ― 立川最大の狙い目
立川市は、東京都の条例に基づく特定緊急輸送道路として、市内の以下の路線を指定しています。
- 杉並あきる野線(五日市街道)
- 立川・東大和線(芋窪街道)
- 立川・昭島線(広路・中央南北線)
- 立川・所沢線(立川通り)
- 立川・青梅線(新奥多摩街道)
- 三ツ木・八王子線(残堀街道)
- 市道1級14号線(松中通り) 等
さらに立川市は独自に、立川駅周辺の一般緊急輸送道路も同等に重要な路線と位置づけ、助成の対象に加えています。
- 市道1級5号線(すずらん通り・やすらぎ通り)
- 都道149号線(南口大通り)
- 市道1級21号線(北口大通り)
(出典:立川市「緊急輸送道路沿道建築物の耐震化助成制度」)
立川駅前の通りが助成対象に入っている、という点をぜひ覚えておいてください。他市では「幹線道路沿いだけ」で終わるところを、立川市は駅周辺の商店街筋まで独自に広げています。駅近の築古ビル・賃貸マンションをお持ちのオーナーさまには、直接効く話です。
対象建築物の条件は次の3つすべて。
- 敷地が特定緊急輸送道路または市の要綱に定める緊急輸送道路に接していること
- 昭和56年6月1日施行の耐震基準改正前に建築された建築物(旧耐震基準)
- 道路幅員の概ね2分の1以上の高さの建築物
助成対象者は「対象建築物の所有者」。1棟所有の賃貸オーナーは、まさにこの「所有者」本人です。(分譲マンションの場合のみ管理組合または区分所有者の代表者)
助成の対象になるのは、耐震診断(一般緊急輸送道路沿道のみ)、補強設計、耐震改修、建替え、除却の各費用です。
そして、キャッシュフローの観点でぜひ知っておいていただきたいのが、委任払い制度です。立川市はこの助成で委任払いを認めており、申請者の一時的な費用負担が軽減されます。数千万円規模の耐震改修で、立替払いが不要になる意味は小さくありません。
なお、補助率は建物の規模等で区分されており、民間の制度紹介サイトでは「対象費用の80/100(延べ面積3,000平方メートル未満は100/100)」と紹介されていますが、最終的な助成額は市の審査で確定します。断定はしません。 市も「申請の前に必ず事前相談を」と明記しています。まずは立川市住宅課(042-528-4384)へ。
さらに、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震改修を行った場合は固定資産税の減額措置の対象になり、立川市住宅課が減額申請に必要な「住宅耐震改修証明書」を発行しています。工事費の補助と税の減額が二重に効きます。
ブロック塀等撤去工事等助成金
意外と見落とされがちですが、賃貸物件の敷地境界にブロック塀があるなら、これは使えます。
- 対象:市内の道路等の境界から高さ80cm以上ある危険なブロック塀等の所有者(法人を含む)
- 撤去・一部撤去・改修:塀1mあたり6,500円を乗じた額と工事費用の低い方、上限30万円
- 新設(撤去に伴うもの):1mあたり6,000円と工事費用の低い方、上限18万円(国産木材の場合は加算あり)
- 契約締結前に交付申請が必要(契約後だと受けられません)
- 市税の滞納がある場合、過去に同助成を受けたことがある場合などは対象外
(出典:立川市「立川市ブロック塀等撤去工事等助成金について」)
塀の倒壊は、入居者だけでなく通行人に対する所有者責任の問題です。大規模修繕の足場を組むタイミングで一緒に処理してしまうのが、私の現場感覚ではもっとも合理的です。
木造住宅の耐震化助成制度 ― 木造アパートは「対象住宅」だが、要件に注意
立川市の木造住宅耐震化助成は、対象住宅に「共同住宅」が明記されています(昭和56年5月31日以前に着工した民間の戸建て住宅、共同住宅、併用住宅)。つまり築古の木造アパートは、建物としては対象になり得ます。
- 簡易耐震診断:無料(市が建築関係経験者を派遣)
- 耐震診断助成:費用の1/2(限度額10万円)
- 補強設計・工事監理助成:費用の1/2(限度額10万円)
- 耐震改修工事助成:費用の1/2(限度額50万円、高齢者世帯・障害者世帯は80万円)
ただし、賃貸オーナーとして必ず確認すべき点が2つあります。
- 対象者が「対象住宅を所有する個人」と定義されていること(法人所有のアパートの扱いは要確認)
- 耐震改修等工事助成には「世帯の年間合計所得700万円以下」という対象者要件があること
賃貸専用のアパートで、この「世帯」要件がどう適用されるのかは、要綱の文面だけでは判断できません。ここは推測で語らず、立川市住宅課(042-528-4384)に直接確認してください。 少なくとも無料の簡易耐震診断は、判断材料としてまず受ける価値があります。
(出典:立川市「木造住宅の耐震化助成制度」)
中小企業二酸化炭素排出量削減事業施設改修費補助金(法人オーナー向け)
立川市は令和8年度も、市内中小企業の省エネ改修を支援する補助金を実施しています。省エネ診断に基づくLED照明・業務用空調などの改修が対象で、設計費・設備改修費の1/3以内(上限50万円)、公募期間は2026年7月1日〜9月30日とされています(担当:環境資源循環部 環境政策課 ゼロカーボン推進係 042-528-4341)。
ただし予算規模が小さく(300万円規模)、対象は「中小企業」です。不動産賃貸業を営む法人が該当するかは事業要件次第ですので、共用部のLED化や管理棟の空調更新を検討中の法人オーナーは、市の窓口に適用可否を確認してみてください。
税務:オーナーだけが持つ「三段の旨味」を取りこぼさない
補助金の話をするとき、私は必ず税務の話をセットでします。オーナーさまにとって、現金補助・損金算入・固定資産税減額の三段が揃って初めて、投資判断の数字になるからです。
① 修繕費か、資本的支出か
外壁塗装や防水の打ち替えなど、原状回復・維持管理の範囲であれば「修繕費」として単年度で損金算入できる可能性があります。一方、断熱材の新設や高断熱サッシへの交換、耐震補強のように建物の価値を高め、耐用年数を延ばす工事は「資本的支出」として資産計上・減価償却になるのが原則です。
同じ現場、同じ足場でも、工事内訳の書き方ひとつで税務処理と手残りが変わります。 これは工事の発注前に、顧問税理士と工事会社の三者で確認しておくべき論点です。
② 補助金は「雑収入」として課税される
見落としがちですが重要です。受け取った補助金は、原則として受給した事業年度の雑収入(益金)に計上されます。 「1,000万円の補助が出た=1,000万円まるまる手残り」ではありません。圧縮記帳の適用可否も含め、必ず税理士に事前相談してください。
③ 固定資産税の減額
- 省エネ改修:一定の要件を満たす省エネ改修で、翌年度分の固定資産税が減額されます(出典:東京都主税局「省エネ改修工事をした住宅に対する固定資産税の減額」)
- 耐震改修:立川市が発行する住宅耐震改修証明書をもとに減額申請が可能
なお、マンション長寿命化促進税制(大規模修繕を行ったマンションの固定資産税減額)は、令和9年3月31日まで2年間延長されています。ただしこれは管理計画の認定を受けた分譲マンションの居住用専有部分が前提です。1棟を単独所有する賃貸オーナーは、原則として対象外。ここは正直にお伝えしておきます。立川市に区分所有のお部屋をお持ちの場合は、管理組合側の動きを確認する価値があります(出典:立川市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減額」)。
数字の話:断熱改修は「入居率」と「出口」にどう効くか
補助金は入口の話です。オーナーさまが本当に見るべきは、NOI(実質賃料収入)と出口価格でしょう。
仮に、立川駅徒歩12分・築32年・20戸・平均賃料8万円のRC賃貸を想定します(あくまで説明用のモデルです)。
- 入居率が1%改善すれば、20戸×8万円×12か月×1%=年間約19万円のキャッシュフロー差
- 平均空室期間が1か月短縮し、年間5戸の退去があるなら、8万円×5戸=年間40万円の減収回避
- 表面利回り6%の物件で、年間59万円のNOI改善は、収益還元ベースで約980万円の物件価値に相当します(59万円÷6%)
窓とドアを替え、断熱材を入れる。それだけで「冬の内見時に部屋が寒くない」「光熱費が下がる」という、入居者が体感できる差が生まれます。
そして2024年4月から、建築物の省エネ性能表示制度が始まりました。賃貸募集の広告に省エネ性能ラベルを表示する時代です(出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」)。東京都の賃貸向け助成は、まさにこのラベル作成を助成要件に組み込んでいます。
つまり、都の補助金を使って断熱改修をすると、募集図面に載る「性能の数字」が自動的に手に入るということです。築年数では勝てない築古物件が、性能で戦えるようになる。私は、これが今後10年の賃貸経営を分ける分岐点だと考えています。
築年数なりの劣化は、賃料の下落圧力として静かに効いてきます。出口を見据えた修繕投資は、利回りの微調整より、物件価値そのものを底上げします。
【自社サービスのご案内】工法の選び方で、工事費は変わります
※ここから先は当社のサービス紹介です。制度情報とは分けてお読みください。
補助金の額が決まっても、工事費そのものが高ければ手残りは増えません。 そして工事費を最も大きく左右するのが「工法」です。
株式会社明誠は、足場仮設による通常工法、無足場工法であるロープアクセス工法、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な方法をご提案できる、日本でも数少ない会社です。
- 足場を組まないロープアクセスなら、足場の仮設・解体費が不要になり、工期も短縮できます。入居者の生活影響が最小限で、外部から部屋を覗かれる不安や、足場からの侵入リスクも抑えられます
- 部分補修や小規模な修繕では、足場を組むだけで工事費の3〜4割が消えることも珍しくありません
- 大規模かつ複雑な形状の物件では、足場とロープアクセスを組み合わせるハイブリッドが、総合コストで最適になるケースがあります
また当社は、日本で初となるロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。中間マージンを削り、高品質と低価格を両立できるのは、この体制があるからです。ビル・収益物件のオーナーさま向けの体制は「収益物件オーナーさま向けサービス」にまとめています。
申請の実務:立川市のオーナーが今すぐやるべき5つのこと
長くなりましたので、動作としてまとめます。
- 東京都「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」に事前申込を出す。 契約・着工より前です。受付は令和8年5月29日から始まっています。まずは省エネ診断(補助率10/10)から
- 物件が緊急輸送道路沿道か確認する。 五日市街道・芋窪街道・立川通り・新奥多摩街道・残堀街道・松中通り、そして駅周辺のすずらん通り/やすらぎ通り・南口大通り・北口大通り。該当し、かつ旧耐震なら立川市住宅課(042-528-4384)に即事前相談
- 敷地に高さ80cm以上のブロック塀があるなら、契約前にブロック塀助成を申請する(立川市防災課)
- 顧問税理士に、補助金の雑収入計上と「修繕費/資本的支出」の区分を事前相談する
- 足場ありき・ロープありきではなく、3工法を比較した見積もりを取る
すべての制度に共通する原則を、もう一度だけ。
「予算枠に達した時点で受付終了」。そして「事前申込・交付決定より前の契約は対象外」。
補助金は、早く動いた人から順に消えていきます。
よくあるご質問
Q. 立川市には、賃貸オーナー向けの「大規模修繕そのもの」への市独自助成はありますか?
現時点では、賃貸マンション1棟の大規模修繕そのものを直接の対象とした市独自助成は見当たりません。立川市の助成は耐震(緊急輸送道路沿道・木造)とブロック塀が中心です。ただし、東京都の賃貸住宅向け省エネ助成は立川市の物件でも当然に使えます。「市の制度がない=補助金がない」ではありません。
Q. 都の「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」と「既存住宅における省エネ改修促進事業」は併用できますか?
同一の設備について、都および公社の他の同種の助成金を重複して受けることはできません。 どの設備をどちらの制度で申請するか、設計段階での振り分けが必要です。試算せずに走ると取り逃がします。
Q. 相続で取得した築古の賃貸ビルです。改修すべきか、売却すべきか迷っています。
補助金の話だけでは決められません。旧耐震かどうか、緊急輸送道路沿道かどうか、現況の入居率と賃料水準、残存耐用年数、取得費。この5つを並べて、「改修して10年持つ」「今のまま売る」「改修して売る」の3シナリオでキャッシュフローを比較する必要があります。ご相談いただければ、現地調査のうえで試算をお出しします。
Q. 登録事業者でないと工事を頼めないのですか?
東京都の賃貸住宅向け助成については、クール・ネット東京に登録された事業者による施工が助成要件です。長いお付き合いの業者さんがいる場合でも、まず登録の有無を確認してください。ここは温情の入る余地がありません。
まとめ
立川市の賃貸オーナーさまにとって、2026年度は「賃貸1棟オーナー専用の都制度」が動いている、めったにない年です。
- 東京都「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」:1棟所有の個人・法人が対象。省エネ診断は補助率10/10(上限120万円/棟)、断熱材は2/3(上限60万円/戸)
- 東京都「既存住宅における省エネ改修促進事業」:高断熱窓・ドアで1住戸あたり上限200万円
- 立川市の緊急輸送道路沿道建築物耐震化助成:立川駅周辺の通りまで独自に対象を広げている。委任払いで立替負担も軽い
- ブロック塀等撤去助成:法人オーナーも対象、上限30万円
見当たらないのではなく、探す場所が違っただけです。
お持ちの物件で、まだこれらの制度の検討を始めていない立川市のオーナーさまは、ぜひ一度お声がけください。1棟の現地調査と、利回り改善シミュレーション、そして補助金の対象可否の一次判定だけでも承ります。工事のご依頼をいただかなくても構いません。「うちは緊急輸送道路沿道だった」と気づいていただけるだけで、この記事を書いた意味があります。
ご相談はお問合せフォームからどうぞ。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
関連記事
出典・参考資料
- クール・ネット東京「令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」
- クール・ネット東京「令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業【省エネ診断・断熱改修】」
- クール・ネット東京「令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業(高断熱窓・ドア・断熱材・浴槽)」
- 立川市「緊急輸送道路沿道建築物の耐震化助成制度」
- 立川市「木造住宅の耐震化助成制度」
- 立川市「立川市ブロック塀等撤去工事等助成金について」
- 立川市「耐震診断義務付け対象建築物への補助制度及び診断結果等の公表について」
- 立川市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減額」
- 東京都主税局「省エネ改修工事をした住宅に対する固定資産税の減額」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」
- 環境省「先進的窓リノベ2026事業」
- 国土交通省「みらいエコ住宅2026事業」
- 経済産業省・資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業」
- 東京都住宅政策本部「既存住宅の省エネ診断・省エネ設計への補助」
※本記事は2026年7月14日時点で公表されている情報に基づいています。補助金・助成金の要件、金額、受付期間は変更される場合があり、また予算枠に達した時点で受付が終了します。申請にあたっては必ず各制度の公式サイトおよび所管窓口(立川市住宅課 042-528-4384、立川市防災課 042-523-2111、クール・ネット東京 03-6258-5317 ほか)で最新情報をご確認ください。本記事は税務・法務に関する助言を目的とするものではありません。個別の税務処理については税理士にご相談ください。


