亀有・金町・新小岩――葛飾区は、JR常磐線・総武線、京成本線、京成押上線、つくばエクスプレス(青砥・高砂方面からのアクセス)が走り、都心への通勤利便性と「下町の住みやすさ」を両立した、底堅い賃貸マーケットだ。私(本間)が現場で物件を見て回って感じるのは、「これだけ実需に支えられたエリアなのに、築年数を理由に賃料も入居率も取りこぼしているオーナーがあまりに多い」という、もったいない現実である。亀有・金町駅前の中規模RC造マンション、環七や水戸街道(国道6号)沿いの店舗併用ビル、そして四つ木・東四つ木・堀切に広く残る木造アパート密集地――葛飾区のオーナーが抱える悩みは、ざっくり言えば「築古を理由に空室期間が伸びる」「修繕にお金をかけても賃料に跳ね返らない」「売ろうとすると利回りで買い叩かれる」の三つに集約されつつある。
本稿の主読者は、葛飾区で2棟以上の賃貸物件(マンション・ビル・店舗併用・木造アパート)を保有するオーナー、あるいは医療法人・介護事業者として自社建物を運用しているオーナーだ。テーマは「2026年度(令和8年度)、葛飾区で使える補助金・助成金を、どう投資判断に組み込むか」。単なる制度カタログではなく、NOI(実質賃料収入)の改善・出口価格の上振れ・税務処理の三段で、結局いくら手残りが変わるのかという視点で整理していく。
最初に言葉の整理をしておく。NOI(Net Operating Income)とは、賃料収入から空室損や運営費を差し引いた「実質的な手残り収益」のことだ。収益物件の売却価格は、このNOIをキャップレート(還元利回り)で割って求める「収益還元法」で決まるのが実務の基本である。つまり、修繕投資がNOIを1円押し上げれば、それは売却時に何十倍にもなって跳ね返る。この感覚が、補助金活用の出発点になる。
1. なぜ今、葛飾区オーナーは「補助金を絡めた修繕」を急ぐべきか
葛飾区は、近年「住みたい・住みやすい街」としての評価が静かに上がっているエリアだ。金町には大学キャンパスと大規模再開発が進み、新小岩は総武線快速停車駅として単身者からファミリーまで吸収している。賃料相場で見ると、葛飾区の賃貸はワンルーム・1K・1DKで概ね6万円台後半(6.84万円)が目安とされ、ここ数年の賃料上昇率は初年度1.17%、2年目5.14%、3年目5.72%(出典:Yahoo!不動産・葛飾区の家賃相場推移)と、直近で明確に加速している。賃料が上がっている今こそ、設備を底上げして「上がった相場をきちんと取りにいく」べき局面だということだ。
一方で、入居検討者の目線は年々シビアになっている。高断熱・宅配ボックス・オートロック・追い焚き――これらを「当たり前の前提」とする層が増え、築20年以上の物件が何もせずに従前賃料を維持し続けるシナリオは、もう成立しにくい。
数字で考えてみよう。1棟20戸の物件で平均入居率が95%から93%に落ちると、表面利回りベースで概ね2%相当の減収、稼働ベースのキャッシュフローでは年間で家賃数か月分が静かに消える。これが3年続けば、想定売却価格(収益還元法、葛飾区の賃貸マンションで実務上目安となるキャップレート5.0〜6.0%帯)は数百万円から1,000万円超の単位で下振れる。「修繕を先送りした年数 × 入居率の低下」が、そのまま売却価格に効いてくるのだ。
私がオーナーと話していていつも感じるのは、「修繕は出費」という発想から「修繕は投資」という発想へ切り替えた瞬間に、補助金の見え方が一変するということだ。補助金を絡める意義は三つある。第一に、投下キャッシュアウトの圧縮(数十万円〜数千万円が戻る、あるいは工事費に充当される)。第二に、税務上の取り扱いの最適化(資本的支出として減価償却する項目と、修繕費として全額損金算入できる項目を切り分け、節税効果を確保する)。第三に、テナント募集時の差別化材料化(「断熱改修済」「耐震改修済」は、賃料を維持しやすくする定量効果が見込める)。
ただし、補助金は受給時に雑収入として課税される点には常に注意が必要だ。手取りで考えるなら、補助率1/2の制度でも、所得税・法人税合算で30〜40%を逆算した「実質補助率」を計算しておくべきである。本稿ではこの点も、各制度の説明箇所で逐一触れていく。
2. 葛飾区が独自に持つ補助制度(オーナーが直接使えるもの)
葛飾区の制度は、防災(耐震・不燃化)と環境(省エネ・再エネ)の2本柱で構成されている。とりわけ葛飾区は荒川・中川・江戸川に囲まれた低地で木造住宅密集地域を多く抱えるため、他区と比べて「不燃化・除却・建替え」系の支援が手厚いのが大きな特徴だ。賃貸マンション・ビルのオーナーが直接使える枠も明確に用意されている。まずは耐震系から見ていく。
2-1. 耐震改修の促進・助成制度――木造・非木造・分譲マンションを幅広くカバー
1棟物件の大規模修繕・建替えと最も相性がいいのが、葛飾区の耐震改修の促進・助成制度である。昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物が主対象で、診断・補強設計・改修・建替え・除却の各段階に助成が用意されている(出典:葛飾区「非木造住宅・緊急輸送道路沿道建築物の耐震化促進事業」、「非木造の住宅、分譲マンション等の耐震助成について」、「住まいの耐震化」。建築課耐震化推進係)。
代表的な区分を、賃貸オーナーが押さえるべき順に整理すると次のとおりだ。
| 建物・段階 | 補助率(目安) | 上限額(目安) |
|---|---|---|
| 木造(旧耐震)耐震診断 | 診断士の無料派遣 | 自己負担なし |
| 木造(旧耐震)補強設計+耐震改修 | 2/3 | 220万円(要件該当で拡充あり) |
| 木造(旧耐震)耐震改修のみ | 2/3 | 200万円 |
| 木造(旧耐震)建替え | 2/3 | 220万円 |
| 木造(旧耐震)除却(取り壊し) | 4/5 | 180万円 |
| 非木造(旧耐震)耐震診断 | 1/2 | 20万円 |
| 非木造(旧耐震)耐震改修設計 | 1/2 | 30万円 |
| 非木造(旧耐震)耐震改修 | 1/2 | 80万円 |
| 分譲マンション 耐震診断 | 1/2 | 150万円 |
| 分譲マンション 改修設計・改修 | 別途設定 | 大規模工事で最大2,000万円規模の枠 |
(補助率・上限額は工事内容・建物種別・申請者の状況により細かく異なり、年度ごとに改定され得る。上表は申請検討の目安であり、正確な額は必ず葛飾区の窓口で確認すること。出典:上記葛飾区公式各ページ、および制度概要を整理した住宅リフォーム推進協議会・登録制度情報)
ここでオーナーが押さえるべきは二点だ。ひとつは、木造アパートの除却が「4/5・上限180万円」と補助率が高いこと。老朽木造の出口づくりに直結する。もうひとつは、分譲マンションの耐震診断が1/2・上限150万円と手厚く、区分所有の投資物件を持つオーナーにも入口が開かれていることだ。
そしてもう一段深い論点として、耐震性能が出口価格に直接効くことを強調しておきたい。築古ビルを売る際、買主側のデューデリジェンスで「耐震性能不明」と判断されると、キャップレートを0.3〜0.5%上乗せされる(=収益還元価格が下がる)のが私の実務感覚だ。耐震診断書と改修済の証明があるかないかで、同じNOIでも価格差は数百万円〜数千万円のオーダーに広がる。耐震改修は「守りの修繕」に見えて、実は出口価格を底上げする「攻めの投資」でもある。
2-2. 申請タイミングは「交付決定通知の前に着工しない」――ここを外すと全部パー
葛飾区の耐震助成で最も致命的な落とし穴が申請タイミングだ。区の制度は「補助金の交付決定通知を受ける前に工事に着手すると対象外になる」運用で、多くのケースで事前の耐震診断が前提になる。実務の流れは、(1)事前相談・診断申込→(2)耐震診断の実施・結果報告→(3)補助金交付申請→(4)交付決定通知の受領→(5)工事の実施→(6)完了報告・実績報告→(7)補助金の交付、という順序だ。
ここで注意したいのは、国の住宅省エネ系(施工・支払後に申請する「後払い型」)とは申請順序が真逆だという点である。区の耐震・省エネ補助は「契約・着工の前に申請」、国の省エネ補助は「工事後に申請」。複数制度を同一物件で重ねるときは、この順序の違いを取り違えないことが最重要だ。また、補助金は工事完了・実績報告後の口座振込が原則で、工事費は一時的にオーナーが立て替える必要がある点もキャッシュフロー計画に織り込んでおきたい。
2-3. 緊急輸送道路沿道建築物の耐震助成――環七・水戸街道沿いは要チェック
葛飾区には、災害時に救援・復旧の動脈となる緊急輸送道路が複数指定されており、その沿道の建築物には別枠の手厚い助成がある。区は「特定緊急輸送道路沿道建築物」「一般緊急輸送道路沿道建築物」それぞれに、耐震診断・補強設計・改修・建替え・除却の助成制度を用意している(出典:葛飾区「緊急輸送道路沿道建築物の耐震助成について」、「特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震助成制度」)。
対象は、敷地が緊急輸送道路に接し、昭和56年5月31日以前に建築され、道路幅員に対して一定以上の高さがある建物だ。環七通り、水戸街道(国道6号)、蔵前橋通りなどの沿道に旧耐震のビル・マンションを持つオーナーは、通常の耐震助成より上乗せされた条件が使える可能性が高いため、まず自分の物件が沿道指定に該当するかを区の窓口で確認してほしい。この制度は国と東京都の補助を活用しているため、申請する前年の夏頃までに工程表・見積書・図面等を準備して事前相談するのが望ましい、と区も案内している。沿道指定物件は耐震診断が事実上求められるケースもあり、放置はリスクでもある。
2-4. 老朽木造アパートの出口:不燃化特区の除却・建替え助成と固定資産税減免
葛飾区は東京都の不燃化推進特定整備地区(不燃化特区)を区内に複数抱える。具体的には四つ木一・二丁目地区、東四つ木地区、東立石四丁目地区、堀切二丁目周辺及び四丁目地区の4地区が指定されており、木造アパートが密集するこれらのエリアに老朽木造・軽量鉄骨造の建物を持つオーナーには、出口戦略として極めて有効だ(出典:葛飾区「不燃化特区」、「四つ木一・二丁目地区密集住宅市街地整備促進事業」、東京都不燃化特区制度ポータル)。
不燃化特区内では、老朽建築物の除却助成、燃えにくい建物への建替え助成(最大200万円規模)、そして解体後の更地等に対する固定資産税・都市計画税の減免、専門家派遣支援などが用意されている。建替え助成の対象は、除却する老朽建築物の主要構造部が木造または軽量鉄骨造で、耐用年数の3分の2を経過したもの(木造で築14年8か月以上が目安)など一定の要件を満たす場合だ。
オーナー視点では、「老朽木造アパートを建替えてRC/重量鉄骨の収益物件に転換する」出口戦略と、この不燃化助成の相性が抜群だ。解体費の負担が軽くなり、固定資産税も減免されるなら、建替え時の初期キャッシュアウトを大きく圧縮できる。木造アパートを「いつか何とかする資産」のまま塩漬けにするより、補助が手厚い今、収益力の高い建物への転換を具体的に検討する価値がある。なお対象地区・要件・金額は整備プログラムや要綱で細かく定められているため、自分の物件が該当するかを必ず区に確認してほしい。
2-5. かつしかエコ助成金――集合住宅は上限100万円枠が並ぶ「オーナー向きの環境補助」
環境系で葛飾区オーナーがまず押さえるべきは、区独自のかつしかエコ助成金だ。太陽光発電・蓄電池・断熱改修・高反射率塗装などの省エネ・再エネ設備導入費の一部を区が補助する制度で、集合住宅向けの枠は上限額が個人住宅より大きく設定されているのが特徴である(出典:葛飾区「かつしかエコ助成金のご案内」環境部環境課環境計画係/電話 03-5654-8228。下表は直近年度の集合住宅区分の例。令和8年度は金額・要件が改定され得るため申請前に区公式で要確認)。
| 対象(集合住宅区分の例) | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 太陽光発電システム | 8万円/kW | 40万円(蓄電池併設で+5万円) |
| 蓄電池 | 助成対象経費の1/4 | 100万円(10kWh未満20万円。太陽光併設で+5万円) |
| 断熱改修 | 助成対象経費の1/4 | 100万円 |
| 高反射率塗装 | 1/4 または施工面積×1,000円の小さい額 | 100万円 |
| LED照明機器 | 助成対象経費の1/2 | 50万円 |
| V2H(ビークル・トゥ・ホーム) | 本体価格の1/3 | 20万円 |
| 宅配ボックス(IoT対応) | 助成対象経費の2/3 | 25万円 |
私が現場で「これはもったいない」と感じるのが、外壁塗装のタイミングでこの枠を使い損ねているケースだ。賃貸オーナー視点でとくに効くのが高反射率塗装(遮熱塗装)と断熱改修だ。いずれも集合住宅枠で上限100万円。大規模修繕で外壁・屋上を触るタイミングに遮熱塗装を組み込めば、最上階住戸の夏場の暑さ対策(=退去抑制)と補助金取得を同時に実現できる。さらに共用部の太陽光+蓄電池は、共用電気代という運営費(NOIの構成要素)を直接圧縮し、停電時のBCPにも効く。宅配ボックスのIoT対応枠(2/3・上限25万円)も、募集力に直結する「いまどき必須設備」を補助で導入できる好材料だ。
注意点として、かつしかエコ助成金は太陽光・蓄電池・断熱改修・塗装など多くの区分で工事前の事前申込が必須(電気自動車・高断熱住宅など一部を除く)で、申込から交付承認まで通常3週間程度かかる。区内業者との契約や、過去の受給履歴に関する要件もあるため、計画段階で区の概要資料を確認しておきたい。
3. 東京都の制度をオーナー視点で重ねる
区の制度に、東京都(クール・ネット東京)の助成を重ねると、戸あたりの実効補助率はさらに上がる。都の制度は予算規模が桁違いで、賃貸オーナー専用の枠も整備されている。
3-1. 賃貸住宅における省エネ化・再エネ導入促進事業――オーナー直撃の都の助成
都内の賃貸集合住宅の断熱性能向上・再エネ導入を促す、オーナー直撃の助成だ。高断熱窓・ドア・断熱材の改修費、省エネ診断費、再エネ設備の導入費の一部を都が助成する。助成対象者は「省エネ設備を設置する賃貸集合住宅の所有者」が明確に含まれており、知見を持つ事業者がオーナーをサポートする仕組みも用意されている(出典:クール・ネット東京「賃貸住宅における省エネ化・再エネ導入促進事業」/電話 03-5990-5169)。
この制度は事前申請制で、クール・ネット東京の交付決定前に契約・着工した経費は対象外になる。また工事は公社に登録された省エネ改修事業者・省エネ診断等事業者と契約して実施する必要がある。令和8年度事業は都議会の予算成立を前提に内容が確定するため、最新の公募要領を必ず確認したい。
3-2. 既存住宅における省エネ改修促進事業――窓・断熱の都補助
賃貸に限らず使える都の既存住宅における省エネ改修促進事業(高断熱窓・ドア・断熱材・浴槽等)も、戸あたりの窓・断熱改修で活用できる(出典:クール・ネット東京「既存住宅における省エネ改修促進事業 令和8年度」)。後述する国の先進的窓リノベと、区のかつしかエコ助成金(断熱改修)を、工事項目を切り分けながら組み合わせると、戸あたりの実質負担を大きく圧縮できる。「同じ工事項目への二重取りは不可、異なる項目なら併用可」が基本ルールなので、どの制度をどの工事に充てるかの設計が腕の見せどころだ。
4. 国「住宅省エネ2026キャンペーン」を最後に重ねる
国の住宅省エネ2026キャンペーンは、区・都の補助に最後に重ねる「総仕上げ」だ(出典:住宅省エネ2026キャンペーン公式)。賃貸オーナーが押さえるべき柱は次の三つである。
第一に、先進的窓リノベ2026事業。高断熱の窓・ドアへの改修に対し、戸あたりの上限額が大きく設定された大型補助だ。窓は断熱性能と遮音性に直結し、入居者満足度・賃料維持に効く投資対効果の高い部位なので、優先度が高い(最新の補助額・上限は公式で要確認)。
第二に、給湯省エネ2026事業。高効率給湯器の設置が対象で、ヒートポンプ給湯機(エコキュート)7万円/台(性能加算で10万円/台)、ハイブリッド給湯機10万円/台(同12万円/台)、家庭用燃料電池(エネファーム)17万円/台が目安だ。
第三に、賃貸オーナーにとって見逃せない賃貸集合給湯省エネ2026事業。これは賃貸集合住宅における小型の省エネ型給湯器の交換に特化した、まさにオーナー専用の制度である。給湯省エネ2026・賃貸集合給湯省エネ2026の交付申請(予約含む)は令和8年3月31日から受付が開始されている(出典:経済産業省「給湯省エネ2026事業及び賃貸集合給湯省エネ2026事業の交付申請受付開始」)。これらの国の制度は施工・支払後に申請する後払い型である点を、区の事前申請型と混同しないよう、改めて強調しておく。
5. 税務:補助金は「もらって終わり」ではない
ここがオーナー記事の肝だと、私はいつも強調している。補助金を受け取ると、原則として雑収入として課税される。補助率1/2の制度でも、所得税・法人税の負担を逆算すると、実質補助率は3割前後に下がるのが実態だ。手取りベースで投資判断するなら、ここを織り込まないと「思ったより戻らない」ことになる。
もう一つ重要なのが、修繕費(全額損金算入)と資本的支出(減価償却)の区分だ。原状回復・部分補修は修繕費として当期に全額損金算入できる一方、性能を向上させる改修(断熱化・耐震化など)は資本的支出として資産計上し、耐用年数にわたって減価償却していくのが原則になる。同じ工事でも、見積りの内訳の作り方で税務処理が変わり、結果としてキャッシュフローが大きく動く。法人オーナーであれば、補助金収入については圧縮記帳で課税の繰り延べを検討できる場面もある。いずれも顧問税理士と連携し、工事の発注前から設計しておくことを強くおすすめする。
6. 医療法人・介護事業者オーナーのためのBCP×省エネ
葛飾区は高齢者人口が多く、クリニック・介護施設の建物を自社保有する医療法人・介護事業者オーナーも少なくない。こうした建物では、耐震・省エネに加えてBCP(事業継続計画)の視点が重要になる。太陽光+蓄電池は平時の共用電気代圧縮(NOI改善)に効くだけでなく、停電時に最低限の電源を確保する「災害に強い施設」の訴求材料にもなる。荒川・中川・江戸川に囲まれた葛飾区は水害リスクへの備えも問われるため、電源確保や設備の上階配置といった対策は、利用者家族からの信頼に直結する。耐震改修は、利用者・入居者の命を守る責務であると同時に、行政の指導・選定や採用・稼働率にも効く。「補助金で省エネ・耐震を進める=BCPを安く手に入れる」という発想は、医療・介護系オーナーにこそ刺さるはずだ。
7. 葛飾区オーナーの補助金活用ロードマップ(着手順)
実務の着手順は、(1)保有物件の築年・構造・所在地(不燃化特区・緊急輸送道路沿道に該当するか)を棚卸し、(2)旧耐震RC・分譲なら「診断→設計→改修」の事前申請ルートを最優先で確保、(3)木造アパートは「不燃化特区の除却・建替え+固定資産税減免」で出口を設計、(4)省エネは「区のかつしかエコ助成金+都の賃貸住宅省エネ+国の窓・給湯」を戸あたりで重ね、(5)税務は修繕費/資本的支出の割り付けと雑収入課税を顧問税理士と確定、という流れになる。事前申請が必要な区・都の制度を起点に逆算するのが鉄則だ。
7-1. 数字で見る試算イメージ(葛飾区・賃貸マンション1棟のケース)
仮に亀有エリアの築30年・RC造・20戸の旧耐震マンションで考える。大規模修繕(外壁・屋上防水・鉄部塗装)の際に、かつしかエコ助成金の高反射率塗装(集合住宅・上限100万円)と断熱改修(同・上限100万円)を組み込み、共用部に太陽光+蓄電池を導入する。さらに窓・給湯は都・国の補助を戸あたりで重ねる。耐震性に不安があれば、非木造の診断(1/2・上限20万円)から着手し、改修につなげる。これらを積み上げ、外壁・断熱・設備が一新されれば「断熱改修済・遮熱塗装済・宅配ボックス完備」という募集上の強い訴求になり、空室期間の短縮と賃料維持につながる。NOIが年30万円改善し、出口のキャップレートが5.5%なら、収益還元価格は概算で約545万円押し上がる――補助金で投下を圧縮しつつ、出口価格も底上げするという「二重取り」が成立する(注:本試算は制度の考え方を説明するための概算イメージであり、実際の助成額・効果は物件・年度・予算状況で変動する。必ず現地調査と個別シミュレーションで確認すること)。
8. 明誠の3工法提案と利回り改善シミュレーション(自社サービスのご案内)
ここまで「どの制度を、どの順序で、どう組むか」が勝負だと述べてきた。株式会社明誠は、通常足場・ロープアクセス(無足場)・両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物ごとに最適な工法を提案できる、日本でも数少ない大規模修繕会社だ。とくにロープアクセス工法は足場費を抑えられ、工期も短縮できるため、入居者の生活影響を最小化しながら修繕コストを圧縮できる。これは補助金活用と相性が良く、「補助金で工事費を圧縮し、さらに工法で足場費も圧縮する」という二段構えで、オーナーの実質負担を最小化できる。私自身、足場を架けにくい狭小地や、入居者の生活動線を止めたくない物件で、ロープアクセスがオーナーの手残りを大きく変える場面を何度も見てきた。
明誠はロープアクセス工事として日本初のフランチャイズ展開も行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟することで、高品質と低価格を両立している。葛飾区の物件について「補助金を絡めた修繕で利回りをどう改善できるか」を具体的に試算したいオーナーは、株式会社明誠(rita-construction.com)まで現地調査と利回りシミュレーションのご相談を承っている。お気軽にお問い合わせいただきたい。
(関連記事:練馬区オーナー向け補助金活用ガイド/足立区オーナー向け補助金活用ガイド)
9. よくある質問(FAQ)
Q1. 賃貸マンションでも葛飾区の耐震助成は使えますか。
A. 使える可能性があります。葛飾区の制度は木造・非木造の共同住宅、分譲マンションを幅広く対象としており、賃貸住宅のオーナーも対象となる場合があります。ただし、旧耐震基準であることや居住実態など要件が細かく定められているため、自分の物件が対象か必ず区の窓口で確認してください。
Q2. 一番気をつけるべき点は何ですか。
A. 申請タイミングです。区のかつしかエコ助成金や耐震・都の省エネ補助は「契約・着工前の事前申請」が原則で、先に業者と契約・着工すると対象外になります。一方、国の住宅省エネ系(窓・給湯)は工事後の後払い型です。順序を取り違えないことが最重要です。
Q3. 木造アパートが古くて困っています。補助金で何ができますか。
A. 物件が四つ木一・二丁目、東四つ木、東立石四丁目、堀切二丁目周辺及び四丁目の不燃化特区内にあれば、除却助成や燃えにくい建物への建替え助成(最大200万円規模)、解体後の固定資産税・都市計画税の減免が使える可能性があります。「老朽アパートを収益力の高いRC物件へ転換する」出口戦略と相性が良い制度です。
Q4. 補助金をもらうと税金はどうなりますか。
A. 受け取った補助金は原則として雑収入として課税されます。補助率1/2でも実質補助率は3割前後に下がるのが実態です。法人なら圧縮記帳で課税繰り延べを検討できます。修繕費か資本的支出かの区分も含め、顧問税理士と連携してください。
結語
葛飾区は、亀有・金町・新小岩を核に賃料が明確に上昇している、底堅く勢いのある賃貸マーケットだ。一方で、旧耐震のRC物件、四つ木・堀切などの密集地に残る木造アパート、緊急輸送道路沿道のビルなど、「補助金を絡めた修繕・建替えで大きく化ける物件」が数多く眠っている。耐震は木造除却4/5・分譲診断1/2上限150万円、不燃化特区の除却・建替えと固定資産税減免、区(集合住宅は断熱・塗装で各上限100万円)・都・国の三層に重なる省エネ補助――葛飾区は使える制度が特に手厚い区だ。重要なのは、**事前申請が必要な制度を起点に順


