
大和市で収益マンションやアパート、テナントビルを所有していると、毎年のように頭をよぎる問いがあります。「この物件、あと何年いまの賃料で回せるのか」。築20年を超えたあたりから外壁の色あせや鉄部のサビが目立ち始め、内見時の第一印象が落ちます。やがて空室が長引き、賃料を下げざるを得なくなり、NOI(純営業収益=家賃収入から運営費を引いた、物件が生み出す本当の利益)がじわじわと削られていく——これは大和市に限らず、築古物件オーナー共通の悩みです。
その対策の中心が大規模修繕や耐震・省エネ改修ですが、ここで多くのオーナーが見落としているのが「大和市と国の補助金・税制」です。同じ工事でも、制度を組み合わせれば手出しのキャッシュを数十万円から数百万円単位で圧縮できます。本記事は、大和市で賃貸経営を行うオーナー(個人・法人)を対象に、2026年度(令和8年度)に使える制度を、入居率・賃料・NOI・出口戦略・税務という「お金の視点」から整理します。分譲マンション管理組合向けの解説とは切り口を変え、あくまで「物件を所有して稼ぐ側」の判断材料としてまとめました。
なお、補助金は年度ごとに予算・要件が変わり、受付期間も限られます。金額や条件は本記事執筆時点(2026年6月)の公開情報に基づくため、申請前には必ず大和市の担当課と国の公式サイトで最新情報をご確認ください。
まず全体像:大和市オーナーが押さえる「3つの財布」
大和市で収益物件のオーナーが使える支援は、大きく3つの財布に分かれます。
ひとつ目は大和市の建物系補助金です。耐震診断・耐震改修、外壁などの不燃化・バリアフリー化、アスベスト調査がここに含まれます。建物の安全性と資産寿命に直結する部分です。
ふたつ目は大和市の脱炭素(省エネ・創エネ)補助金です。太陽光発電・蓄電池・断熱改修が対象で、光熱費の削減と「省エネ性能」という新しい競争力を物件に持たせます。
みっつ目は国の住宅省エネ補助金です。賃貸オーナー専用枠を含む給湯器・窓・断熱の補助で、金額が大きく、賃貸物件でも使いやすいのが特徴です。
この3つを「どの工事に、どれを当てるか」で組み合わせるのが基本戦略です。以下、ひとつずつオーナー視点で見ていきます。
1. マンション耐震診断費補助金|分譲オーナーは使える、一棟オーナーは要確認
大和市には「マンション耐震診断費補助金制度」があります。昭和56年5月31日以前に建築確認を得て新築に着手した分譲マンションについて、管理組合が耐震診断を行う費用の一部を市が助成する制度です。
補助の中身は二段構えです。まず簡易に診断する予備診断が1棟あたり上限20万円。その結果を受けて行う本診断は、地域防災計画上の緊急輸送路を塞ぐおそれのある建物なら費用の3分の2(1棟あたり上限200万円、1,000平方メートル未満は1平方メートルあたり2,000円)、それ以外でも費用の2分の1(上限150万円、1,000平方メートル未満は1平方メートルあたり1,500円)が助成されます。
ここでオーナーが押さえるべきポイントは「申請者が管理組合(団体または法人)である」という点です。つまり、区分所有で住戸を持つオーナーであれば、管理組合を通じてこの制度の恩恵を受けられます。総会で診断の決議を取り、事前相談を経て申請する流れになります。
一方、RCマンションを一棟まるごと所有しているオーナーの場合、この「分譲マンション管理組合向け」の枠は、そのままの形では適用できないケースがあります。一棟所有・賃貸経営の建物については、市の制度の対象範囲や運用が異なるため、まずは大和市建築指導課(電話:046-260-5422)に「賃貸の一棟RCで耐震診断を考えている」と具体的に相談するのが確実です。制度の入口で空振りしないために、この一手間が効きます。
予備診断・本診断とも、実施の前には必ず事前相談が必要で、管理組合の総会または理事会の決議書の写しなどが求められます。受付は当該年度の4月頃から12月末頃まで。年度後半は予算が埋まることもあるため、動くなら早めです。
2. 木造耐震の補助|木造アパート・店舗併用物件のオーナーはここが本命
大和市で木造アパートや店舗併用の木造物件を持つオーナーにとって、実は耐震系で最も使いやすいのがこちらです。
木造住宅耐震診断費補助金は、昭和56年5月までに新築工事に着手した木造住宅を対象に、精密診断にかかる費用を上限66,000円まで全額助成します。対象には一戸建てだけでなく長屋・共同住宅・兼用住宅が含まれるため、木造アパートや1階が店舗の併用物件でも検討余地があります。
診断で「総合評点1.0未満」(=現行基準に対して耐震性が不足)と判定された建物については、木造住宅耐震改修工事費等補助金が使えます。補助率は耐震補強工事が費用の5分の1、工事監理が2分の1で、上限は50万円。対象は在来軸組工法で地階を除く階数が2以下のものです。
オーナー視点で重要なのは申請のタイミングです。診断は精密診断の開始前、改修工事は工事の着手前に申請が必要で、「先に発注してしまうと対象外」になります。耐震性が不足したまま放置すると、地震リスクだけでなく、入居付けや売却時の説明責任、火災保険・地震保険の条件にも影響します。診断費が実質ほぼ自己負担ゼロで受けられるのですから、まず「現状を数字で知る」ところから始めるのが合理的です。
3. 不燃化・バリアフリー化改修工事費補助金|外壁塗替えのついでに取りに行く
大規模修繕の中心メニューである外壁工事に絡めて使えるのが、大和市不燃化・バリアフリー化改修工事費補助金です。
補助は工事費の2分の1かつ上限10万円(破風を含む軒先などの改修工事は上限20万円)。対象は費用5万円以上の改修工事で、外壁を燃えにくい仕様に塗り替える不燃化改修、軒天・破風板等の防災化改修、雨戸・シャッターの改修、手すり設置などのバリアフリー化改修が含まれます。条件として、既存の木造住宅であること、市内業者に発注すること、施工費用が5万円以上であることなどがあり、補助を受けられるのは1回限りです。
金額そのものは大きくありませんが、どうせ外壁・屋根の大規模修繕を行うなら「ついでに取りに行く」価値があります。注意点は、補助金交付決定通知を受けてから工事を始める必要があること。決定前に着工すると対象外です。バリアフリー化(手すり・段差解消)は高齢入居者の安心材料にもなり、単身高齢者の比率が上がる賃貸市場では、空室対策としての副次効果も見込めます。
4. アスベスト含有調査の補助|古い一棟ビル・物件オーナーの「隠れコスト」対策
平成元年(1989年)以前に建てられた建物を所有しているなら、避けて通れないのがアスベスト(石綿)です。解体・改修の際にアスベストが見つかると、調査・除去で想定外のコストが発生し、工程も止まります。これは出口戦略(売却・建替え)の局面で特に効いてくる「隠れコスト」です。
大和市では、一定規模の民間建築物についてアスベスト含有調査の補助を設けています。対象は、これまで石綿含有調査を受けていない建物のうち、不特定多数が利用する延べ床面積300〜1,000平方メートル程度の建築物や、エレベーターのある建物(昇降路・機械室に限る)などです。調査は「建築物石綿含有建材調査者」という有資格者が行う必要があり、申請は建物所有者・管理組合・管理者が行えます。
オーナーにとっての意味は、「売る・建て替える前に、補助を使って建物の石綿リスクを把握しておく」ことで、取引時の価格交渉や工事計画の前提が固まるという点です。事前に状況がわかっていれば、買い手との交渉でも、修繕計画の資金組みでも主導権を握れます。調査補助の枠・金額は年度や建物条件で変わるため、適用可否は市にご確認ください。
5. 脱炭素補助金(太陽光・蓄電池・断熱)|光熱費を下げ、物件を「省エネ仕様」に
大和市は脱炭素に積極的で、住宅用の太陽光発電・蓄電池・断熱改修に対する補助を実施しています(2026年度も4月から受付)。
オーナー視点で注目したいのが「自家消費型」の手厚さで、太陽光は1kWあたり7万円という高い補助単価が設定されています。ただし令和8年度は要件が変わり、太陽光発電設備と蓄電池(5kWh以上20kWh未満)の同時設置が必要で、令和8年4月1日以降の契約であることが条件です。申請期間は令和8年(2026年)4月1日から令和9年(2027年)2月15日まで。
共用部の電力を太陽光でまかなえば、共用部光熱費という運営費を直接圧縮でき、NOIの改善につながります。さらに昨今の入居者は「光熱費の安さ」「環境への配慮」を物件選びの要素にし始めており、省エネ仕様は賃料維持・差別化の武器になります。停電時に共用部やポンプを動かせる蓄電池は、災害に強い物件という安心材料にもなります。補助単価・要件は年度で変動するため、計画前に大和市の公式情報で必ず最新の枠を確認してください。
6. 国の省エネ補助|賃貸オーナー専用枠がある「3本柱」
ここからは国の制度です。金額が大きく、賃貸物件でも使いやすいのが魅力で、2026年度は次の3本柱を押さえておきます。
(1) 賃貸集合給湯省エネ2026事業|賃貸オーナー専用の給湯器補助
その名のとおり賃貸の集合住宅オーナー向けに用意された制度です。既存の賃貸集合住宅に省エネ型給湯器(エコジョーズ・エコフィール等)を導入する費用を支援し、給湯器1台あたり最大10万円、1住戸につき1台までが対象です。10戸のアパートなら単純計算で最大100万円規模の補助になり得ます。給湯器は故障時の入居者クレームに直結する設備ですから、壊れる前に省エネ機へ計画的に更新し、補助で費用を抑えるのが賢い使い方です。
(2) 先進的窓リノベ2026事業|結露・寒さ・暑さ対策で部屋の競争力を上げる
窓の断熱改修に対する補助で、補助額は最大100万円/戸と大きいのが特徴です。対象は2025年11月28日以降に着手する内窓設置・窓交換などの断熱リフォーム。交付申請は2026年3月下旬から予算上限に達するまで(遅くとも2026年12月頃まで)です。結露によるカビ・サッシ劣化は退去時の原状回復コストや内見時の印象悪化の原因になります。窓の性能を上げれば、冬の寒さ・夏の暑さ・結露という入居者の不満を一気に減らせ、賃料維持につながります。
(3) 給湯省エネ2026事業|エコキュート等が入る物件はこちら
エコキュートやハイブリッド給湯機などの高効率給湯器を対象とする制度です。物件の設備仕様に合わせて(1)の賃貸集合給湯省エネと使い分けます。窓(先進的窓リノベ)+給湯器+断熱を組み合わせて、それぞれの補助を同時に受けることも可能です。どの事業が自分の工事に合うかは、施工内容と機器で決まるため、見積り段階で施工会社と補助金の対象可否を必ずすり合わせてください。
7. 税務:補助金は「もらって終わり」ではない、3つの落とし穴
補助金は手取りを増やしますが、税務処理を誤ると思わぬ追徴や機会損失につながります。オーナーが特に注意すべきは次の3点です(具体的な処理は必ず顧問税理士にご相談ください)。
落とし穴1:補助金は受給時に課税される
国・自治体の補助金は、受け取った年度に原則として収入(不動産所得なら総収入金額、法人なら益金)に計上され、課税対象になります。「100万円もらえたから100万円まるごと得」ではなく、税率分は税金で戻る、という前提で資金計画を立ててください。法人の場合、一定の要件下で圧縮記帳により課税を繰り延べられるケースもあります。
落とし穴2:「修繕費」か「資本的支出」かで手取りが変わる
工事費を、その年に全額経費にできる修繕費として扱えるか、資産計上して減価償却していく資本的支出になるかで、当期の所得と税額が大きく変わります。原状回復・維持のための工事は修繕費、価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする工事は資本的支出に区分されるのが原則です。同じ大規模修繕でも内訳の整理次第でキャッシュフローが変わるため、見積りの段階から区分を意識した資料づくりが効きます。
落とし穴3:耐震改修の税優遇は「賃貸部分」の扱いに注意
旧耐震(昭和56年5月31日以前)の住宅を現行基準に適合させる耐震改修には、固定資産税の減額(工事翌年度に1戸あたり120平方メートル相当分まで2分の1減額)や所得税の特別控除といった優遇があります。ただし、これらは原則として自己の居住用部分が前提で、固定資産税の減額は賃貸部分には適用されない点に注意が必要です。所得税の特別控除も主として居住用の家屋が対象です。賃貸専用物件では使えない、あるいは限定的になる場面が多いため、自宅兼賃貸(兼用住宅)などのケースでは適用範囲を税務署・税理士に確認してください。
8. 数字で見る:大和市の築古一棟アパート・モデル試算
抽象論ではイメージしづらいので、大和市内の木造一棟アパート(築35年、2階建、10戸、外壁・屋根の大規模修繕と給湯器更新を検討)を例に、ざっくりとした考え方を示します(あくまで概算のイメージで、実額は物件・工事・年度の制度で変わります)。
外壁・屋根・防水を含む大規模修繕に約800万円、給湯器10台の省エネ機更新に約150万円かかると仮定します。ここに、外壁の不燃化改修で不燃化・バリアフリー化補助(上限10〜20万円)、給湯器更新で賃貸集合給湯省エネ2026(1台最大10万円×10台で最大100万円規模)、窓改修を加えるなら先進的窓リノベを重ねる、という組み合わせが描けます。耐震性が不足していれば、まず実質負担ほぼゼロの木造耐震診断で現状を把握し、改修補助(上限50万円)も検討します。
ポイントは、総額950万円の工事に対して、補助の取り方次第で100万円超の手出し圧縮が現実的に見えてくる、ということです。さらに、省エネ・耐震・美観の向上は空室期間の短縮と賃料維持を通じてNOIを押し上げ、最終的な売却価格(NOI÷還元利回りで概算される収益還元価格)にも効いてきます。補助金は「工事費の値引き」であると同時に、「物件の収益力への投資」でもあるという視点が大切です。
もう一段踏み込んで、出口(売却)への効きも数字で考えてみます。仮にこの10戸アパートの満室時家賃収入が年720万円(1戸あたり月6万円)、運営費を差し引いたNOIが年500万円だとします。市場の還元利回りを5%とすると、収益還元価格は500万円÷5%=1億円という計算になります。ここで、外壁・設備の刷新により空室が減り、平均稼働が上がって賃料の下落も止まり、NOIが年30万円改善したとすると、収益還元価格は530万円÷5%=1億600万円。NOIのわずかな改善が、売却価格では数百万円単位のインパクトになって返ってくるのが収益不動産の特性です。つまり修繕は「コスト」ではなく、空室率・賃料・そして売却価格に直結する「資産価値の操作」だと捉えるべきです。補助金は、その操作にかかる初期費用を軽くしてくれる装置にほかなりません。
逆に、修繕を先送りして外観の劣化や設備の旧式化が進むと、入居者は競合物件に流れ、賃料を下げても空室が埋まらない悪循環に入ります。NOIが下がれば収益還元価格も下がり、いざ売ろうとしたときに想定より安い値しか付かない——築古物件で最も避けたいシナリオです。補助金の受付期間内に計画的に動くことは、この悪循環を断つための合理的な一手です。
9. 工法の選択:足場・ロープアクセス・ハイブリッドで総額が変わる
補助金で工事費の一部を抑えるのと並んで、オーナーのキャッシュフローを左右するのが「どの工法で施工するか」です。大規模修繕の工法には大きく3つあり、建物の形状・高さ・立地で最適解が変わります。
通常の足場工法は、建物全体に仮設足場を組む従来型です。複雑な形状や全面改修に向きますが、足場の架設・解体に費用と工期がかかります。ロープアクセス工法(無足場工法)は、産業用ロープで作業員が降下しながら施工する方法で、足場が不要なぶんコストと工期を抑えられ、足場が組みにくい狭小地や、入居者の生活・防犯への影響を最小化したい物件に向きます。部分補修や調査・点検にも機動的です。ハイブリッド工法は、足場が必要な部位とロープアクセスが有利な部位を建物ごとに使い分け、総額の最適化を図る方法です。
たとえば「道路に面した正面は足場、裏側や狭い側面はロープアクセス」といった組み合わせで、足場費と工期を圧縮できるケースがあります。3つの工法を建物特性に応じて提案できる施工会社はまだ多くありません。補助金で工事費の一部を抑えつつ、工法選択で残りの総額も最適化する——この二段構えが、オーナーの手出しを最小にする王道です。見積りを取る際は、複数工法での比較見積りを依頼すると、コスト構造が見えやすくなります。
工法はコストだけの問題ではありません。足場の架設・解体には相応の日数がかかり、その間は建物が足場とメッシュシートで覆われます。窓からの採光が落ち、ベランダが使いにくくなり、足場をつたう侵入への防犯不安も生じます。こうした「工事中の住み心地の悪化」は、入居者の不満や退去のきっかけになり得ます。無足場のロープアクセスや、必要な部位だけ足場を使うハイブリッドであれば、工期を短くし、住民の生活影響を抑えられます。工期が短いということは、その分だけ近隣への影響や管理の手間も減るということで、賃貸経営の現場では見えにくいコストの削減につながります。どの工法が自分の物件に合うかは、建物の高さ・形状・隣地との距離・入居状況によって変わるため、現地を見たうえでの提案を受けることが大切です。
10. 医療・介護施設、テナントビルのオーナーさまへ
大和市で病院・クリニックや介護施設、商業テナントが入るビルを所有している場合、修繕は「止められない建物をどう直すか」という別の難しさを伴います。診療や介護を続けながらの工事では、足場による出入口の塞ぎや騒音・粉じんが利用者の負担になりがちです。
こうした建物では、無足場のロープアクセスや、利用動線を避けて部位ごとに工法を切り替えるハイブリッドの相性が良い場面が多くあります。営業を止めずに外壁・防水を直せれば、テナントの売上や施設の稼働を守りながら資産を維持できます。アスベスト調査補助の対象になりやすい用途・規模でもあるため、改修・建替えの前に石綿リスクを把握しておく意義も大きいでしょう。
11. よくあるご質問(大和市で賃貸経営をするオーナー編)
Q. 賃貸専用のアパート・マンションでも、市の補助金は使えますか。
A. 制度によります。木造系の耐震診断・改修や不燃化・バリアフリー化補助は、共同住宅・兼用住宅を対象に含むため、木造アパートや店舗併用物件で使える可能性があります。一方、「マンション耐震診断費補助金」は分譲マンションの管理組合が申請者である前提のため、賃貸一棟所有では枠が異なることがあります。建物の構造・規模・用途によって可否が変わるので、まず大和市建築指導課(046-260-5422)に物件の概要を伝えて確認するのが確実です。
Q. 国の補助金と大和市の補助金は同時に使えますか。
A. 対象となる工事・経費が重複しなければ、国と市の制度を組み合わせて使える場面が多くあります。たとえば「外壁の不燃化改修は市の補助、給湯器交換は国の賃貸集合給湯省エネ、窓改修は国の先進的窓リノベ」というように、工事メニューごとに別の制度を当てる設計が基本です。ただし同一経費への二重補助は認められないのが原則のため、見積りの内訳を制度ごとに切り分けておくことが重要です。
Q. すでに見積りを取って発注の直前ですが、いまから補助金は間に合いますか。
A. ほとんどの補助金は「交付決定(または申請受理)の前に工事を始めると対象外」です。発注・着工の直前であれば、いったん立ち止まって、対象になりうる制度の事前相談・申請を先に済ませるべきです。数日の準備で数十万円〜数百万円の補助を取り逃さずに済むことがあります。
Q. 補助金が出ると、確定申告ではどう扱われますか。
A. 受け取った補助金は原則として受給年度の収入(不動産所得の総収入金額、法人なら益金)に計上され、課税対象になります。また工事費自体も、修繕費として一括経費にできるか、資本的支出として減価償却するかで当期の所得が変わります。手取りベースのシミュレーションは顧問税理士に依頼し、工事の内訳資料を早めに整えておくと判断がスムーズです。
Q. 入居中の物件でも工事はできますか。住民への影響が心配です。
A. できます。むしろ入居者の生活影響を抑えることが、退去防止・賃料維持の観点で重要です。足場を全面に組むと窓を塞ぎ防犯面の不安も出ますが、ロープアクセス(無足場)や、部位ごとに工法を切り替えるハイブリッドを使えば、影響を最小限にしながら施工できる場面が多くあります。工法の選択肢を持つ施工会社に相談し、複数案で比較するとよいでしょう。
12. 大和市オーナーが取るべき順番:診断 → 計画 → 申請 → 工事
最後に、行動の順番を整理します。補助金は「工事の前に申請する」のが鉄則で、順番を間違えると使えなくなる制度がほとんどです。
まず現状把握。旧耐震の建物なら耐震診断(木造は実質負担ほぼゼロ)で安全性を数字にし、古い建物ならアスベストの有無を確認します。次に修繕計画と資金計画。どの工事に、市・国のどの補助を当てるかを整理し、修繕費・資本的支出の区分や課税の前提も含めて顧問税理士と詰めます。そのうえで補助金の事前相談・申請を行い、交付決定を受けてから工事に着手します。並行して、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの比較見積りを取り、工法面でも総額を最適化します。
補助金は年度ごとに予算が限られ、受付は年度後半に締め切られることが多い制度です。「来年でいいか」と先送りするほど、空室・賃料下落・修繕費の上昇というかたちでコストは膨らみます。まずは大和市建築指導課(電話:046-260-5422)への一本の相談と、現状診断の一歩から始めることをおすすめします。
ご相談について
株式会社明誠では、大和市をはじめ首都圏・神奈川エリアの収益マンション・アパート・ビルの大規模修繕について、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から建物に最適な工法をご提案しています。補助金を踏まえた資金計画づくりや、複数工法での比較見積りもお手伝いできます。診断・お見積りはお気軽にご相談ください。
出典・参考資料
- 大和市「マンション耐震診断費補助金制度」 https://www.city.yamato.lg.jp/gyosei/soshik/35/taisinka/4792.html
- 大和市「木造住宅耐震診断費補助金制度」 https://www.city.yamato.lg.jp/gyosei/soshik/35/taisinka/4796.html
- 大和市「不燃化・バリアフリー化改修工事費補助金」 https://www.city.yamato.lg.jp/gyosei/soshik/35/taisinka/4708.html
- 大和市「脱炭素補助金(住宅用太陽光・蓄電池・断熱改修)」 https://www.city.yamato.lg.jp/gyosei/soshik/24/sumai/hojo_josei/20460.html
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業(公式) https://chintai-shoene2026.meti.go.jp/
- 環境省「先進的窓リノベ2026事業」 https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/building_insulation/window_00004.html
- 国土交通省「耐震改修に係る所得税額の特例控除・固定資産税の減額」関連資料


