
監理技術者の交代で違約金1.4億円が積み上がった理由──世田谷区×大成建設の事案と改正建設業法から、マンション・ビル所有者と発注者が今すぐ確認すべき5つの実務
結論──「誰が現場を見ているか」を契約後も問い続ける時代になりました
2026年5月27日、Googleアラートに「世田谷区が大成建設に約1.4億円の違約金請求、『免震接続』実績ない監理技術者を配置」という見出しが流れてきました。私自身、朝のコーヒーを飲みながらこの記事を読み、思わず手を止めました。世田谷区の本庁舎建て替え工事をめぐっては、すでに約16億円の違約金が発生していて、今回の追加分を含めると合計は17億円を超える計算になります(出典:東京新聞「世田谷区、庁舎の建て替えの『違約金』計17億円超に 大成建設に請求へ」)。
これは「公共工事と大手ゼネコンの話だから自分には関係ない」と片付けてよいニュースではありません。私は仕事柄、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕の現場を毎日のように回っていますが、ここ数年、契約時の説明書類と実際に現場に立つ技術者が一致しているか、所有者・管理組合がきちんと確認できているかという問題は、規模を問わず起きています。今回の事案は、その「契約と現場の一致」の重要さを、業界全体に突き付ける教訓になりました。
本記事では、世田谷区×大成建設の事案を入り口に、建設業法第26条の専任義務、令和6年12月13日と令和7年2月1日に段階施行された改正建設業法の専任特例、そして大規模修繕の発注者・マンション所有者が明日から動ける5つの実務までを、私自身の現場経験を交えてお話しします。私は2026年から自社で公共工事の入札にも挑戦している立場です。だからこそ、この問題を「他人事」にせず、明誠の社員にも繰り返し共有しています。
世田谷区×大成建設の事案──17億円の違約金がどう積み上がったのか
まず事案の全体像を整理します。世田谷区の本庁舎等整備工事は、旧庁舎の解体と新庁舎(東棟・西棟)の建設、世田谷区民会館の改修を同じ敷地で3期に分けて進める大規模工事です。2021年7月に着工し、当初は2027年10月完成予定でした(出典:世田谷区「世田谷区本庁舎等整備工事の延伸に関する経過」)。
ところが工事は大成建設の工程の見誤りなどで大幅に遅延し、完成予定は2029年4月にずれ込みました。区は同社に対して、すでに約16億円の違約金を請求し、2024年3月から2年間の指名停止処分も科しています(出典:東京新聞「工事遅延で違約金16億円超 損害額は3期工事終了後に確定」、日経クロステック「庁舎工事トラブル巡る世田谷区と大成建設の攻防、交渉18回で違約金16億円に合意」)。
今回の追加違約金1.4億円──「免震接続」実績のない技術者への交代
そこに2025年4月30日、区は約1億4200万円の追加違約金を請求すると発表しました(出典:日本経済新聞「東京都世田谷区の庁舎工事、大成建設に追加違約金 技術者交代で1.4億円」)。理由は、2025年4月1日付で交代した監理技術者Cに、複数の免震構造の建物を事後的に接続して一体化する「免震接続」の実績がなかったことです。区の入札説明書では、やむを得ない理由で監理技術者を変更する場合でも、変更前と同等以上の施工実績を有する者を配置することが求められていました。
違約金の計算式──減点を金額化する仕組み
この1.4億円という金額がどう算出されたのかは、業界関係者にとって非常に重要な情報です。日経クロステックの解説によると、計算式はおおむね次のとおりです(出典:日経クロステック「世田谷区が大成建設に約1.4億円の違約金請求、『免震接続』実績ない監理技術者を配置」)。
- 工期全体のうち施工実績要件を満たす監理技術者を配置できない期間の割合:0.513
- 免震接続実績の技術評価点:4点
- 上記2つを掛け合わせた減点数:2.05点
- 技術評価点1点当たりの価格:約6,900万円
- 違約金額:2.05点 × 6,900万円 ≒ 約1億4,200万円
入札時の技術評価点が、契約後に「1点いくら」という形で違約金に換算される。これが総合評価落札方式の世界で何が起きているかを、最も鮮烈に表した事例だと私は感じました。
大成建設はなぜ実績の足りない技術者を充てざるを得なかったのか
日経クロステックの解説記事「監理技術者縛りの苦悩、大成建設はやむなく交代で違約金1.4億円」では、大成建設側にも「免震接続実績を持つ技術者を、長期化した工期の間ずっと専任で張り付かせ続けることが現実的に難しかった」という事情があったとされています。技術者の家庭事情、健康事情、他の重要案件への配置──現場の最前線にいる人ほど、この苦しさは想像できると思います。
ただし、結果として違約金17億円超という数字は重いものです。「実績要件はあくまで実績要件である」「契約条件は契約条件である」という当然の事実が、業界全体に改めて突き付けられた格好です。
なぜ「監理技術者の差し替え」がここまで問題になったのか
ここで一度、建設業の制度の根っこに戻って整理させてください。少し堅い話になりますが、私は理事会の場でも所有者さまへの説明でも、必ずここから入るようにしています。
監理技術者・主任技術者とは何者か
建設業法第26条は、建設業者が工事を施工するときに「主任技術者」を置くことを義務付けています。さらに、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者が、下請契約の請負代金の合計が一定額以上になる場合には、主任技術者に代えて「監理技術者」を置かなければならないと定めています(出典:e-Gov 建設業法(第26条))。
監理技術者の配置が義務付けられる金額基準は、下請契約の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)。専任配置が必要になる請負金額は、原則として4,500万円以上(同・7,000万円以上)でした。これは令和7年2月1日に金額要件が引き上げられました(後述)。
「専任」とは事実上の現場常駐
ここで「専任」とは、ほかの工事現場と兼務せず、当該現場の管理に専念することを意味します。実務上は事実上の現場常駐です。発注者にとって専任制度の意味は明確で、「契約時に評価した実績を持つ技術者が、工事期間中ずっとその現場に張り付いて品質と工程を管理する」という安心の担保になります。
特に世田谷区の本庁舎のような公共施設は、不特定多数の住民が利用する施設として、建設業法施行令第27条に基づき請負金額が一定以上の公共工事については必ず専任の技術者を置くと定められています(出典:国土交通省「技術者制度の概要 参考資料1」)。
罰則──置かなかった場合の100万円以下の罰金
建設業法第52条第1号は、第26条に違反して主任技術者または監理技術者を置かなかった場合、100万円以下の罰金に処すると定めています。さらに、建設業法違反全般としては最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があるほか、指示処分・営業停止処分・建設業許可の取消処分という重い行政処分の対象にもなります。
私が新人だった頃、現場所長に「監理技術者の配置を間違えると会社が一発で吹き飛ぶぞ」と何度も言われたことを今でも覚えています。実際、ある中堅ゼネコンが過去に主任技術者の不適切配置で営業停止を受け、銀行融資が止まって倒産寸前まで追い込まれた事例も業界では知られています。監理技術者の問題は経営の根幹を揺るがすリスクだという感覚は、業界に染みついています。
2024年・2025年の改正建設業法──専任義務はなぜ緩和されたのか
ここで重要なのが、令和6年(2024年)12月13日と令和7年(2025年)2月1日に段階施行された改正建設業法です。今回の世田谷区の事案を理解するうえで、この改正の背景を押さえる必要があります。
改正の背景──人手不足と工事費高騰
建設業界は、技術者の高齢化と若手の入職減少が同時進行しています。さらに資材高騰で1件当たりの工事規模が大きくなり、専任技術者を配置しなければならない工事が増えています。現場の数に対して、専任で張り付けられる技術者の絶対数が足りない。これが業界の構造的な悩みです。
国土交通省はこの状況を踏まえ、専任義務の合理化を進めました。改正の主な内容を、行政書士事務所などの解説(出典:STパートナーズ「専任現場の兼任に新制度『専任特例1号』」、国土交通省 建設業法解説資料)を参考に整理します。
専任特例1号──2件の現場兼任が可能に
令和6年12月13日施行の「専任特例1号」は、一定の要件を満たす場合、主任技術者・監理技術者が2件の現場を兼任できるようにする制度です。主な要件は次のとおりです。
- 請負代金の額が1億円未満(建築工事の場合は2億円未満)
- 工事現場を1日で巡回できる範囲(移動時間が概ね2時間以内)
- 下請の階層が3次以下
- 監理技術者等と連絡を取る「連絡要員」を現場に配置
- 情報通信技術(ICT)を活用して施工体制と現場の状況を遠隔で確認できる体制を整える
これにより、技術者1人で2現場の管理を行うことが法的に可能になりました。情報通信機器を活用する点が肝で、単純な「2か所兼務OK」ではなく、デジタル技術による遠隔管理を前提とした制度設計になっています。
営業所技術者と現場技術者の兼務も可能に
同じ改正で、建設業者の営業所に置く「専任技術者」と、専任が求められる工事現場の監理技術者・主任技術者との兼務も、一定要件のもとで認められるようになりました。
これは小規模事業者にとっては大きな助けになります。社員数が少ない会社では、営業所と現場の技術者を別々に確保すること自体が大きな負担でした。情報通信機器の整備を条件に、この兼務が可能になったわけです。
令和7年2月1日──金額要件の引き上げ
そして令和7年2月1日には、監理技術者等の専任を要する請負金額の引き上げが施行されました(出典:TSUBOI A. P.「令和7年2月1日より特定建設業許可及び監理技術者等の現場専任の金額要件が緩和されます」)。これにより、専任技術者の配置義務が発生する金額が引き上げられ、中小規模工事の管理体制に余裕が生まれました。
改正は「ザル化」ではなく「ICT条件付きの合理化」
ここで誤解されてはいけないのが、この改正は決して「専任義務のザル化」ではないという点です。情報通信技術の活用、連絡要員の配置、巡回時間の制約──いずれも、遠隔でも実質的に現場管理を担保する仕組みを要件としています。
世田谷区×大成建設の事案は、こうした緩和が始まった直後に起きたことも示唆的です。「緩和されたからといって、契約条件で約束した実績要件まで緩むわけではない」。これが私の読み筋であり、業界全体への警鐘でもあると感じています。
大規模修繕でも起こりうる「監理技術者・主任技術者の交代問題」
ここからは、私が日常的に向き合っているマンション・ビルの大規模修繕工事の現場の話に移します。「公共工事の話でしょう」と思われた方こそ、ここを読んでいただきたい部分です。
大規模修繕で監理技術者・主任技術者が必要になるケース
マンションの大規模修繕は、一般的に1回あたり数千万円から数億円規模になります。50戸クラスの中規模マンションでも、外壁・防水・鉄部塗装・タイル補修を含めると工事金額が1億円を超えることは珍しくありません。請負代金が4,500万円以上(令和7年2月1日以降は引上げ後の基準)になれば、主任技術者の専任配置が必要になります。
ホテルやテナントビルになれば、1棟あたり3億〜10億円規模の大規模修繕も日常です。この規模になると、監理技術者の配置とその専任要件が確実に効いてきます。
私が現場で見てきた「技術者の置き換え」3パターン
正直に申し上げます。大規模修繕の現場でも、契約時の体制図と実際の現場体制が一致しないケースは存在します。私が経験的に見てきたパターンは3つあります。
第1は、契約直後に技術者が異動・転職してしまうケースです。年度替わりの4月や、組織再編のタイミングで起きやすい。代わりに入った技術者が同等の実績を持っているか、施主・管理組合は確認しないと分かりません。
第2は、「契約の顔」と「現場の顔」が違うケースです。営業段階で説明会に出てくる技術者は実績豊富でも、いざ着工すると別の若手が常駐になる。これ自体は教育の機会として悪いことではありませんが、施主側がその差し替えを知らされていない、納得していないままだとトラブルの種になります。
第3は、複数現場の掛け持ちが事実上起きているケースです。改正建設業法の専任特例1号を満たさない条件で、技術者が複数の現場を駆け回っている。私の業界の弱点として、この「事実上の兼務」がグレーに行われていた時期があったことは否定できません。
大規模修繕でも違約金条項を入れる管理組合が増えてきました
ここ数年、首都圏の管理組合と修繕委員会の意識は明らかに高まっています。私が関わる案件でも、見積依頼書の段階で「契約時の主任技術者が変更される場合は事前協議を要する」「変更後の技術者は同等以上の実績を有することを条件とする」といった条項を入れる組合が増えました。
特に築20年を超えるマンションでは、2回目・3回目の大規模修繕に入る組合が多く、過去の修繕で品質トラブルを経験した管理組合ほど、技術者の継続性に強くこだわります。「契約書に技術者の経歴書を添付し、変更時の手順まで定める」という運用は、もはや特殊なものではなくなりつつあります。
国交省も「マンション標準管理委託契約書」で示唆
国土交通省が公表している「マンション標準管理委託契約書」やその関連通知でも、大規模修繕などの重要な業務委託では事業者・技術者の体制と変更時の通知を明文化することが望ましいと示されてきました(出典:国土交通省 マンション施策)。公共工事のような厳格な違約金条項ではなくても、「説明と異なる体制になったら所有者・組合が異議を申し立てる根拠を契約書に書き込んでおく」という発想は、十分に現実的です。
マンション・ビル所有者と発注者が今すぐ確認すべき5つの実務
ここからが本記事の本題です。世田谷区の事案を「自分の建物の発注」に翻訳して、所有者・管理組合理事長・修繕委員のみなさまが明日から動ける5つの実務として整理します。
実務1──契約書に「主任技術者・監理技術者の氏名と実績」を明記する
まず最初の一歩として、契約書(または契約付属書類)に配置予定の主任技術者・監理技術者の氏名・経歴・直近の同種工事実績を明記してもらってください。多くの管理組合が見積書・契約書のフォーマットを工事会社任せにしていますが、ここに技術者の経歴書を貼り込むかどうかは、後の品質を大きく左右します。
私が修繕委員会の説明会に呼ばれたとき、まずこの点をお話しします。「経歴書がない契約書は、入札説明書のない公共工事のようなものです」と。少し大袈裟ですが、それくらい重要な書類です。
実務2──「変更時の事前協議条項」と「同等以上要件」をセットで入れる
次に、やむを得ず技術者を変更する場合のルールを契約に書き込みます。具体的には次の3つです。
- 変更が必要になった場合、施工会社は管理組合・発注者に事前に書面で通知する
- 変更後の技術者は、変更前と同等以上の同種工事実績を有する者を配置する
- 変更にあたって、両者の経歴を比較できる書類(経歴書・施工実績一覧)を提出する
世田谷区の入札説明書がまさにこの構造でした。公共工事の標準ルールを、民間のマンション工事に「縮小コピー」するだけで、リスク管理は一気に強くなります。
実務3──工事中の「現場巡回・写真確認」のルールを決めておく
契約書の文言だけでは現場の実態は分かりません。月1回の修繕委員会では、現場代理人と主任技術者の出席を求めることが現実的な対策です。理事長・修繕委員長が現場を歩く際には、誰がその日の現場責任者なのかを毎回確認するだけでも、抑止力が大きく変わります。
私の経験上、所有者・組合が「現場を見にくる」とわかっている現場は、確実に空気が締まります。これは公共工事も民間工事も変わりません。
実務4──ICT活用条件下での「兼任」を理解しておく
改正建設業法で技術者の兼任が可能になったことは、施工会社にとっては合理化のチャンスです。しかし発注者・所有者にとっては「自分の現場の技術者が他の現場とどう兼任しているか」を確認する権利と必要があります。
具体的には、契約段階で次を確認してください。
- 兼任の有無、兼任先の現場名と工事規模
- 連絡要員の配置と、その方の連絡先
- 遠隔管理のためのICTツール(カメラ、施工管理アプリ等)の運用方針
- 緊急時に主任技術者が現場に駆けつけられる体制
これは過剰な要求ではありません。改正建設業法の専任特例1号を満たすために、施工会社側がもともと用意すべき体制だからです。
実務5──「総合評価方式」の発想を民間修繕でも一部取り入れる
世田谷区の違約金1.4億円が成立した背景には、入札時に技術評価点が「1点いくら」で金額化されているという総合評価方式の構造がありました。民間のマンション修繕でこれを完全に真似するのは難しいですが、評価項目を数値化して、価格と品質を両輪で評価する発想は十分に取り入れられます。
私がご提案するときは、見積比較表に次のような項目を入れていただきます。
- 主任技術者の同種工事実績件数
- 直近5年の事故・クレーム件数
- 工法選定(足場、ロープアクセス、ハイブリッド)の根拠と試算
- 居住者影響を最小化する工程提案
- アフターメンテナンス体制
これだけでも、「単価だけで決めない」という意思表示になり、施工品質に直結します。
失敗・成功事例3つ──私が現場で見てきたリアル
実務の話だけでは具体性が不足するので、私が現場で見てきた3つの事例をお話しします(個別物件が特定されないよう一部を抽象化しています)。
失敗事例1──「契約時の技術者」が翌月から不在になっていたタワーマンション
築15年・250戸のタワーマンションで、2回目の大規模修繕を受注したある中堅ゼネコンが、契約直後に主任技術者を別案件に異動させてしまったケースを聞きました。代わりに着任したのは経験3年の若手で、組合は工事中盤になってからこの事実を知りました。トラブルの原因究明や品質回復に半年かかり、結局、組合と施工会社の間で約1,800万円の追加負担が発生したと聞いています。契約書に変更時条項が無かったことが致命傷でした。
失敗事例2──「兼任が事実上の三現場」になっていた塗装工事
これは私の同業の話です。改正建設業法の専任特例1号が始まる前の事例ですが、ある塗装会社の主任技術者が事実上3つの現場を回していたことが、発注者側の調査で明らかになりました。施工管理アプリのログが残っており、「滞在時間が1日1時間程度の現場が混在していた」と指摘された。契約解除には至らなかったものの、追加工事の発注は二度と来なくなったそうです。
成功事例──ロープアクセス工法×経験豊富な主任技術者で工期を1か月短縮
ある築20年のオフィスビル所有者から、外壁修繕の依頼をいただいたときの話です。当初は通常の足場仮設で見積もり、工期は約4か月の予定でした。私は同じ建物にロープアクセス工法も使えると判断し、足場とロープアクセスのハイブリッド工法を提案しました。
このとき、所有者は私たちの主任技術者の経歴書を細かくチェックされ、「過去5年で同等案件を15件以上経験している方を専任で配置してほしい」という条件を契約に盛り込まれました。結果として工期は当初予定より約1か月短縮でき、テナント様の業務影響も最小限に抑えられました。所有者は次回の修繕も明誠に発注してくださると、口頭でお約束をいただいています。
「契約書に技術者条件を書き込む」ことは、施工会社にとって縛りではなく、信頼関係の土台になります。私はこの経験から確信しています。
私が公共工事入札に挑戦する立場だからこそ伝えたい3つのこと
ここからは私個人の話です。明誠は2026年から本格的に公共工事の入札にも挑戦しています。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕で20年以上培ってきた現場力を、公的施設の維持管理にもお役立てしたいと考えてのことです。
世田谷区×大成建設の事案は、公共工事に挑戦する立場として強烈に学ばされました。私が社員にも、加盟いただいているフランチャイズの仲間にも、この機会に改めて共有したい3つのことがあります。
1. 監理技術者・主任技術者を「人」として大切に扱う
技術者の交代が違約金につながる時代になりました。これは裏返せば、技術者個人の経歴と健康こそが会社の経営資産だということです。家庭事情・体調・キャリアパスを尊重しながら、長期間1つの現場に張り付ける環境をどう作るか。人を大事にする会社にしか、専任技術者は残ってくれません。
2. 「契約書通り」を当たり前にする社内文化
世田谷区の事案で大成建設が失ったのは1.4億円という金額以上に、「契約書通りに技術者を配置し続けられない会社」というレピュテーションだと私は思っています。私たちのような中小規模の会社は、レピュテーションを一度失うと取り返しがつきません。契約書通りを社内文化にするしか道はないと、私は社員に伝えています。
3. 改正建設業法の活用は「合理化」と「説明責任」のセットで
専任特例1号や金額要件の引き上げは、私たちにとって追い風です。同時に、緩和の恩恵を受けるなら、発注者への説明責任もセットで負うべきだとも考えます。「兼任していますが、ICTでこう管理しています」「連絡要員はこの方です」と、堂々と説明できる体制を整えてから初めて緩和を活用する。これが筋だと、私は信じています。
明誠の3工法と公共・民間両輪のサポート(利益相反のため明示)
ここから先は私の会社のご紹介です。利益相反開示のため、見出しで明確に区切らせていただきます。
株式会社明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を主力とし、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場)・ハイブリッド工法の3工法から、建物特性と発注者のご事情に応じた最適なご提案ができる、日本でも数少ない会社です。日本初のロープアクセス工事のフランチャイズ展開も行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板の各専門会社が加盟しています。
加えて、私は一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、建設業向けの経営支援、オンラインセミナー、リアル交流会、ビジネスマッチングを行っています。今回の改正建設業法のような制度変更は、JCSAの会員向けにも勉強会の題材としてお届けしています。
工法選定の比較・修繕計画の見直し・契約書の技術者条項のチェックは、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。理事会や修繕委員会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあると思います。私は「数を取ること」より「明誠ブランドを長く積み上げること」を優先しています。これは現場で20年やってきた、私の偽らざる感想です。
- 工法の詳細:ロープアクセス工法のご紹介
- 大規模修繕全般:大規模修繕工事のご紹介
- ご相談窓口:お問合せフォーム
結語──「契約と現場の一致」を当たり前にしましょう
私から所有者さま・理事長さま・修繕委員のみなさまへ、最後にお伝えしたいことを3つに絞ります。
第1に、契約書に技術者の氏名と経歴を書き込むこと。これは難しい話ではなく、見積依頼の段階で「経歴書添付をお願いします」と一行加えるだけで動きます。
第2に、変更時の事前協議と同等以上要件を契約に入れること。世田谷区の入札説明書はそのままお手本です。条文の言い回しが分からなければ、私たちでも一緒に整理させていただきます。
第3に、現場巡回のルールを決めて、技術者の顔と名前を覚えること。これだけで現場の空気は変わります。「誰が現場を見ているか」を、所有者が知っている──この当たり前を、ぜひ次の総会・理事会の議題にしてみてください。
次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 東京新聞「世田谷区、庁舎の建て替えの『違約金』計17億円超に 大成建設に請求へ 実績を満たさない監理技術者を配置」
- 東京新聞「工事遅延で違約金16億円超 損害額は3期工事終了後に確定 世田谷区庁舎1期棟と区民会館が完成」
- 日本経済新聞「東京都世田谷区の庁舎工事、大成建設に追加違約金 技術者交代で1.4億円」
- 日経クロステック「世田谷区が大成建設に約1.4億円の違約金請求、『免震接続』実績ない監理技術者を配置」
- 日経クロステック「監理技術者縛りの苦悩、大成建設はやむなく交代で違約金1.4億円」
- 日経クロステック「庁舎工事トラブル巡る世田谷区と大成建設の攻防、交渉18回で違約金16億円に合意」
- 世田谷区公式「世田谷区本庁舎等整備工事の延伸に関する経過」
- 世田谷区公式「世田谷区本庁舎等整備工事のお知らせ」
- 世田谷区公式「監理技術者及び主任技術者の専任義務の緩和について」
- e-Gov 法令検索「建設業法(昭和二十四年法律第百号)」
- 国土交通省「建設業法の改正資料(PDF)」
- 国土交通省「技術者制度の概要 参考資料1(PDF)」
- 国土交通省 関東地方整備局「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法(令和8.2版)(PDF)」
- 横浜市契約財産局「監理技術者等の専任義務の緩和について(お知らせ)(PDF)」
- 行政書士法人STパートナーズ「専任現場の兼任に新制度『専任特例1号』」
- 行政書士法人TSUBOI A. P.「令和7年2月1日より特定建設業許可及び監理技術者等の現場専任の金額要件が緩和されます」
- 国土交通省「マンション施策ポータル」


