松戸市でマンション大規模修繕を控えた管理組合が、まず押さえたい補助金の全体像
築20年を超えたあたりから、理事会で必ずと言っていいほど持ち上がる話題があります。「うちのマンション、補助金は使えないのか」という質問です。私は管理組合の理事長さまから、この問いを年に何十回もいただいてきました。
結論から正直に申し上げます。松戸市の分譲マンションが大規模修繕(建物全体を計画的に直す12年周期前後の工事)で「工事費そのもの」に直接使える補助金は、決して潤沢ではありません。ただし、旧耐震マンションの耐震診断補助、共用部の省エネ改修(LED照明・EV充電・窓の断熱)への補助、そして大規模修繕とセットで効いてくる固定資産税の減額制度を組み合わせれば、管理組合の負担をはっきりと軽くできます。ここを知らずに見送ってしまう組合が本当に多い。これが私の一番悔しい思いをするところです。
この記事では、松戸市の管理組合が2026年(令和8年)時点で検討できる制度を、耐震・管理計画認定・相談支援・省エネ・国の税制という柱で整理します。あわせて、申請を取りこぼさないための段取りと、足場費を抑える工法選びまで、現場目線でお伝えします。松戸・新松戸・八柱・五香・常盤平エリアで総会を控えている理事長さまは、ぜひ最後まで目を通してみてください。
松戸市は千葉県北西部にあって、常磐線・新京成線・武蔵野線が走るマンションストックの厚い街です。常盤平団地に代表されるように、昭和40〜50年代から計画的に住宅が供給されてきた歴史があり、築年数の進んだ中規模マンションが数多く残っています。築年が上がれば、外壁タイルの浮きや屋上防水の劣化は避けられません。だからこそ、使える制度は早めに押さえておきたいのです。
ここで、松戸市の管理組合が検討できる主な制度を一覧で整理しておきます。それぞれの詳細は、このあとの各章で順番に解説します。
| 制度名 | 対象 | 補助率・効果(目安) | 上限・期限の目安 |
|---|---|---|---|
| 松戸市マンション耐震診断費補助金 | 旧耐震の分譲マンション | 診断士への支払額の3分の2 | 予備診断5万円/本診断100万円 |
| 松戸市マンション管理計画認定制度 | 管理が適切なマンション | フラット35金利引下げ等 | 認定有効期間5年 |
| マンション管理相談員派遣・相談窓口 | 市内の管理組合 | マンション管理士に無料で相談 | 定期相談会は毎月第1水曜 |
| 住宅用省エネ設備補助(共用部) | 共用部のLED・EV充電・窓断熱 | 補助対象経費の4分の1ほか | LED上限30万円ほか |
| マンション長寿命化促進税制(国) | 大規模修繕後の建物 | 固定資産税を翌年度分減額 | 2027年3月31日まで |
なお、補助金・助成金は年度ごとに予算枠・補助率・受付期間が変わります。本記事の数値は執筆時点で公表されている情報をもとにしていますが、申請前には松戸市の各担当課と公式サイトで最新の条件をご確認ください。私はこの「年度で変わる」という点を、何度でも強調しておきたいと思っています。去年の数字をそのまま信じて計画を立て、後で慌てる組合を何度も見てきたからです。
旧耐震マンションの命綱「松戸市マンション耐震診断費補助金」
松戸市の分譲マンション向けで、まず管理組合が真っ先に確認しておきたいのが「松戸市マンション耐震診断費補助金」です。これは、地震に強いまちづくりを進めるために、マンションの耐震診断にかかる費用の一部を市が補助する制度です(出典:松戸市「松戸市マンション耐震診断費補助金のご案内」)。
対象になるのは、昭和56年(1981年)5月31日以前に着工した「旧耐震基準」の分譲マンションです。旧耐震基準とは、現行の耐震基準(新耐震)に切り替わる前の古い設計基準のことで、大きな地震に対する想定が現行より緩いものでした。あわせて、鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造であること、地上3階以上・延べ面積1,000平方メートル以上であること、耐火建築物または準耐火建築物であること、区分所有者が2人以上いることなどの条件を満たす必要があります。
補助金額の組み立ては、診断を2段階に分けて考えるとわかりやすくなります。まず「予備診断」は、図面の確認や現地調査で本診断の必要性を見極める段階で、マンション耐震診断士に支払った額の3分の2、上限5万円が補助されます。次に、本格的に耐震性を評価する「本診断」では、同じく診断士に支払った額の3分の2、上限100万円までが補助されます。診断費用は建物の規模によっては数百万円に達することもありますから、本診断で100万円が戻ってくる意味は決して小さくありません。
ここで強調しておきたいのが、補助の主体はあくまで管理組合だという点です。申請にあたっては、管理組合の集会(総会)で「耐震診断を行うこと」と「補助金の交付を申請すること」の両方を決議しておく必要があります。理事会だけで進められるものではなく、組合員の合意形成が前提になります。私はいつも理事長さまに、「総会の議題に耐震診断を一行入れておくこと」をおすすめしています。総会は年に一度しかない組合も多く、ここで議題に載せ損ねると、丸一年計画が遅れてしまうからです。
そしてもう一つ、絶対に外せない注意点があります。耐震診断を行う前に、必ず補助金交付申請書を提出しなければならないということです。交付決定の前に診断を始めてしまうと、補助金は一切交付されません。私が現場で一番もったいないと感じるのは、良かれと思って先に動いてしまい、補助を受けられなくなるケースです。申請後の審査には時間がかかりますから、余裕をもった計画を立ててください。
注意したいのは、この補助金が先着順で、予算額に達した時点で受付を締め切るという点です。受付期間も年度によって変わります(たとえばある年度は5月から9月末まで、といった具合です)。年度の早い時期に動いた組合から枠を押さえていく形になりますから、「総会で決まってから動く」のでは間に合わないこともあります。今年度の受付状況や枠の有無については、松戸市の街づくり部 建築指導課(電話047-366-7368)に早めに問い合わせるのが確実です。
なお、率直にお伝えしておくと、松戸市には木造住宅向けの耐震改修費補助やリフォーム助成はありますが、分譲マンションの「耐震改修工事そのもの」に対する市独自の補助は、執筆時点では診断ほど手厚くは整っていません。耐震診断で建物の弱点が分かったあとの改修工事については、国や千葉県の制度、あるいは社会資本整備総合交付金を活用した支援の可能性も含めて、建築指導課に相談しながら資金計画を組み立てることをおすすめします。診断はゴールではなく、改修と資金計画への入り口だと考えてください。
管理の質が資産になる「松戸市マンション管理計画認定制度」
補助金とは少し性格が違いますが、これからの大規模修繕を有利に進めるうえで欠かせないのが「松戸市マンション管理計画認定制度」です。これは、マンションの管理計画が国の定める一定の基準を満たしている場合に、松戸市が「適切に管理されているマンション」として認定する制度で、令和5年(2023年)7月3日から申請の受付が始まっています(出典:松戸市「マンション管理計画認定制度」)。松戸市は市独自の上乗せ基準を設けておらず、認定基準は国の基準と同じです。
認定を受けると、いくつかの実利があります。代表的なのが、住宅金融支援機構の「フラット35【維持保全型】」で借入金利が当初一定期間引き下げられること。これは住戸の購入・買い替えを検討する区分所有者にとって資産価値に直結します。さらに、後ほど説明する国のマンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)を受けるための前提条件にもなります。認定の有効期間は5年間で、5年ごとに更新を受けなければ効力を失う点には注意が必要です。
申請にあたっては、管理計画認定の申請について総会で決議が必要になります。ここでも、やはり組合の合意形成が出発点です。私がこの制度を「管理の質が資産になる」と表現するのには訳があります。長期修繕計画がきちんと整っているか、修繕積立金が計画的に積まれているか、総会や理事会の議事録が保管されているか——認定の過程で、管理組合は自分たちの足元を点検することになります。現場で20年見てきて思うのは、認定マンションかどうかは、買い手や金融機関から見た「安心の証」になりつつあるということです。
認定の基準は、おおまかに言えば「管理組合の運営」「管理規約」「管理組合の経理」「長期修繕計画の作成と修繕積立金の額」といった観点で構成されています。たとえば、長期修繕計画が計画期間30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていること、修繕積立金の額が著しく低い水準でないこと、総会が定期的に開催され議事録が保管されていること、などが代表的なチェック項目です。専門用語が並びますが、要は「将来を見据えてお金と計画と記録がきちんと整っているか」を問うものだと理解していただければ十分です。
認定の申請は、公益財団法人マンション管理センターのオンラインシステムで事前確認を受けてから、松戸市へ申請する流れが基本です。手続きはやや専門的ですが、マンション管理士などの専門家の力を借りれば理事会の負担を抑えられます。大規模修繕の計画づくりと並行して、この認定取得も検討しておくと、後で説明する税制の恩恵まで一本の線でつながります。私の実感として、認定の準備をきっかけに長期修繕計画を見直したことで、「うちは積立金が足りていなかった」と気づく組合も少なくありません。認定はゴールではなく、健全な管理への入り口だと考えています。
松戸市の強み「マンション管理相談員派遣制度」と無料相談窓口を使い倒す
松戸市の管理組合にとって心強いのが、市がマンション管理士による相談の場を継続的に用意していることです。「補助金」と聞くとお金の話に目が向きがちですが、私は、専門家に無料で相談できるこの仕組みこそ、申請の取りこぼしを防ぐ一番の近道だと考えています。
まず、松戸市役所の住宅政策課(電話047-366-7366)が、マンション管理の相談窓口になっています。定期相談会は原則として毎月第1水曜日の9時から12時まで開かれ、1組あたり30分以内、予約者優先でマンション管理士が相談に応じます(出典:松戸市「マンション管理の相談窓口」)。大規模修繕の進め方、補助金の使い方、修繕積立金の見直し、管理規約の改正——理事会だけでは判断に迷う論点を、第三者の専門家に整理してもらえる貴重な機会です。
さらに松戸市は「マンション管理相談員派遣制度」を設けており、市内の分譲マンション管理組合の適切な運営を支援しています(出典:松戸市「松戸市マンション管理相談員派遣制度について」)。原則として、毎月の定期相談会や年に数回のセミナー・相談会(例年6月・11月ごろ)を利用して、マンション管理士と相談のうえで申し込む流れになっています。総会前に論点を整理しておきたい組合、長期修繕計画の妥当性を第三者の目で確認したい組合にとっては、使わない手はありません。
私が現場で痛感するのは、管理組合の理事は数年で交代することが多く、ノウハウが引き継がれにくいという構造的な悩みです。だからこそ、市の相談窓口やマンション管理士という「外部の知恵」を、組合の固定資産のように使い続けることをおすすめします。市の窓口に加えて、千葉県マンション管理士会(電話043-244-9091)でも相談を受け付けています。相談は無料、もしくはごく低コストで受けられることがほとんどです。お金をかけずに専門家の視点を取り入れられる場を、松戸市はきちんと用意してくれている。これは管理組合にとって、地味ですが本当に価値のある支えだと思います。
共用部の省エネ改修に効く「住宅用省エネルギー設備等設置費補助金」
大規模修繕のタイミングは、共用部の設備を更新する好機でもあります。松戸市はゼロカーボンシティの実現に向けて、住宅用省エネルギー設備の導入に補助を行っており、その中にはマンションの共用部に効くメニューがいくつも含まれています(出典:松戸市「住宅用省エネルギー設備の設置に関する補助金」)。
代表的なのが、集合住宅の共用部のLED照明改修です。廊下・階段・エントランス・駐車場まわりなどの照明をLEDに切り替える工事に対し、補助対象経費の4分の1、上限30万円が補助されます。LED化は電気代の削減に直結し、球切れの交換頻度も下がるため、長い目で見れば管理費の節約につながります。大規模修繕で足場を架けるタイミングや、共用部の改修を行う機会に合わせて検討すると無駄がありません。
電気自動車(EV)の充電設備にも補助があります。集合住宅用の充電設備については、住民のみが利用する場合は国の補助金額の3分の1(上限は1基あたり50万円)、住民以外も利用できる場合は3分の2(上限は1基あたり100万円)が補助されます。さらに、充電設備の設置に向けた住民の合意形成のための資料作成費(見取図や費用負担シミュレーション等の外注費)に対しても、上限15万円の補助が用意されています。EV充電の導入は区分所有者間の合意形成が難所になりがちですが、その入り口の費用まで支援してくれるのは実務的にありがたい設計です。
加えて、窓の断熱改修も対象です。管理しているマンション等に高断熱の窓・ガラスを導入する場合、補助対象経費の4分の1、上限は「8万円×改修を行う戸数」となります。専有部の窓は個人の負担が基本ですが、共用部に関わる開口部の改修などでは検討の余地があります。これらの省エネ補助は申請が先着順で、予算枠に達すると受付が終了します。申請期間は年度初め(4月)から翌年2月末までが一つの目安ですが、人気のメニューは早期に枠が埋まることもあります。詳しくは松戸市の環境部 環境政策課 ゼロカーボンシティ推進担当室(電話047-710-0243)にご確認ください。
省エネ改修は「修繕」と「設備更新」の中間にあるテーマで、つい後回しにされがちです。けれど、足場を架ける大規模修繕のタイミングと重ねれば、仮設費を二重にかけずに済みます。私はいつも、修繕の計画段階で「この機会に共用部の省エネ化もまとめてやれないか」を一度検討するようおすすめしています。
大規模修繕で固定資産税が下がる「マンション長寿命化促進税制」2027年3月まで
ここからが、大規模修繕を控えた管理組合にとって本題と言ってよい制度です。国の「マンション長寿命化促進税制」は、一定の要件を満たすマンションが長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合に、その建物部分の固定資産税を翌年度分について減額するものです。減額の割合は市町村の条例で6分の1から2分の1の範囲内(参酌すべき標準は3分の1)と定められています(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」)。
この制度は、当初は令和7年(2025年)3月31日までの時限措置でしたが、税制改正で2年延長され、令和5年(2023年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までに工事を完了したものが対象となりました(出典:東京都主税局「長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」)。つまり、これから大規模修繕を計画する管理組合にとって、向こう1年弱が一つの大きな区切りになります。
対象となる工事には条件があります。「屋根防水」「床防水(バルコニーや開放廊下など)」「外壁塗装等」の3つをすべて含む長寿命化工事であることが求められます。さらに、おおむね築20年以上・総戸数10戸以上であること、過去に1回以上の長寿命化工事を適切に実施していること、長寿命化工事に必要な積立金を確保していること、そして管理計画の認定を受けている(または市区町村から助言・指導を受けて積立金を引き上げた)ことなどが要件です。先ほどの管理計画認定制度が、ここで効いてくるわけです。
申告の手続きも押さえておきましょう。工事完了後3か月以内に、大規模修繕等証明書や過去の工事の証明書、管理計画の認定通知書などの書類を添えて、市区町村へ申告する必要があります。長寿命化工事の証明書など、施工会社側で用意する書類もありますので、工事を発注する段階で「税制を使いたい」と施工会社に伝えておくことが、後の手続きをスムーズにします。
戸あたりの体感で言えば、固定資産税が1年分減るというのは、決して小さな額ではありません。仮に1戸あたりの建物部分の固定資産税が年間6万円程度だとして、その3分の1にあたる約2万円が翌年度に軽減される計算です。50戸のマンションなら全体で100万円規模の軽減になり得ます。一度きりの減額とはいえ、これだけの工事を「やったご褒美」として返ってくると考えれば、検討しない手はありません。ここで一つ注意していただきたいのは、減額の割合は市町村の条例によって決まるため、松戸市での実際の適用割合や必要書類、提出期限といった細部は、松戸市の固定資産税の担当課にあらかじめ確認しておくことです。
修繕積立金の不足という根っこの課題と、補助金の正しい位置づけ
ここで一度、補助金の話から少し引いて、根っこにある課題に触れさせてください。私が松戸市をはじめ各地の管理組合を回っていて痛感するのは、補助金よりも先に「修繕積立金が計画に追いついていない」という問題に直面している組合が多いことです。国の調査でも、長期修繕計画に対して積立金が不足している管理組合は珍しくないとされています。
補助金は、あくまで工事費の一部を後から補ってくれるものです。工事の前にまとまった資金がなければ、そもそも発注ができません。だからこそ、補助金を「足りない積立金の穴埋め」として当てにしすぎるのは危険だと、私は正直にお伝えしています。補助金は計画の上に乗せる「上積み」であって、土台そのものではないのです。
では、積立金が心もとない組合はどうすればよいか。一つは、長期修繕計画を最新の単価で引き直し、必要な積立額を総会で議論し直すこと。もう一つが、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」のような、管理組合向けの借入れを併用する選択肢です。さらに、工法の見直しで工事費そのものを圧縮する道もあります。足場をロープアクセスやハイブリッドに切り替えるだけで、仮設費が大きく変わることがあるからです。資金計画・工法・補助金の3つは、別々に考えるのではなく、ひとつの絵の中で同時に検討するのが私の流儀です。
それでも、補助金や税制を取りに行く意義は小さくありません。たとえ全体から見れば一部でも、組合員から預かった大切な積立金を一円でも守る努力を、私は軽く見たくないのです。「数万円だから」と取りこぼすのではなく、使えるものは丁寧に拾っていく。その積み重ねが、結果として組合への信頼につながると考えています。
補助金を「取りこぼさない」ための申請スケジュールと工法選びの実務
制度の中身が分かっても、肝心の申請を取りこぼしては意味がありません。正直に申し上げると、私が現場で見てきた失敗のほとんどは「制度を知らなかった」ではなく「気づいたときには受付が終わっていた」というものです。
ポイントは、年度の流れを先読みすることです。松戸市の助成は、4月に新年度の要綱が公表され、受付が始まるものが多くあります。耐震診断補助や省エネ補助のように受付期間が決まっていて、しかも予算枠到達で早期終了するものは、3月のうちに前年度の条件を調べ、4月に入ったらすぐ新年度の枠を確認する——この段取りが分かれ目になります。私はいつも理事長さまに、総会の議題に「補助金の確認」を一行入れておくことをおすすめしています。
工事の進め方にも順番があります。多くの助成は「交付決定通知を受けてから契約・着工」が原則で、先に工事を始めてしまうと対象外になります。見積りを取り、総会で決議し、申請して交付決定を待ってから着工する。この流れを工程表に最初から組み込んでおくことが、補助金活用の前提になります。とりわけ松戸市のマンション耐震診断費補助金は、診断前の申請が絶対条件ですから、ここは何度でも念を押しておきたいところです。
そして、補助金と並んで負担を左右するのが工法選びです。マンションの大規模修繕というと足場を全面に架けるのが当たり前と思われがちですが、私たちはロープアクセス工法(建物の屋上から産業用ロープで職人が降りて施工する無足場工法)や、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法も含めて、建物に合った方法をご提案しています。足場の架設・解体には数百万円単位の費用と数週間の工期がかかり、居住者の窓もふさがります。条件が合えば足場を減らせるロープアクセスは、コストと工期、そして居住者の生活への影響を同時に小さくできる選択肢です。
工法ごとの違いを、ざっくりと表にしてみます。あくまで一般的な傾向で、実際は建物の形状・立地・劣化状況によって変わりますが、判断の入り口にはなるはずです。
| 観点 | 全面足場工法 | ロープアクセス工法(無足場) | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|---|
| 仮設費用 | 大きい(足場架設・解体が発生) | 抑えやすい(足場が不要な範囲) | 中間(必要な部位だけ足場) |
| 工期 | 長くなりがち | 短縮しやすい | 部位ごとに最適化 |
| 居住者への影響 | 窓がふさがる・防犯面の不安 | 影響が小さい | 影響を限定できる |
| 向いている建物 | 全面的な改修・複雑な形状 | 高層・足場が架けにくい立地 | 大規模・部位で条件が異なる建物 |
工法ごとの考え方は大規模修繕工事のご紹介ページやロープアクセス工法の解説ページでも整理しています。補助金で何十万円かを取りに行くのと同時に、工法選びで何百万円のコスト差が生まれることもある——これは、足場とロープアクセスの両方を持つ私たちだからこそ、繰り返しお伝えしておきたいことです。
正直に申し上げると、ロープアクセスにも向き不向きがあります。バルコニーが入り組んでいて職人が降りにくい建物や、全面的に外壁を張り替えるような工事では、足場を架けたほうが安全で確実なこともあります。だからこそ私は、最初から「足場ありき」「ロープありき」で決めつけず、建物を一棟ずつ拝見してから工法を組み立てるようにしています。両方の引き出しを持っているからこそ、無理にどちらかへ寄せる必要がないのです。
松戸市の管理組合からよくいただく質問(補助金・大規模修繕)
最後に、松戸市の理事長さま・修繕委員のみなさまから実際によくいただく質問を、簡潔にまとめておきます。
新耐震基準のマンションでも耐震診断の補助は使えますか。
松戸市のマンション耐震診断費補助金は、昭和56年5月31日以前に着工した旧耐震基準の建物が対象です。それ以降に着工した新耐震基準のマンションは、残念ながらこの補助の対象外となります。ただし、共用部の省エネ改修(LED・EV充電・窓断熱)の補助や、大規模修繕後の長寿命化促進税制は、新耐震・旧耐震を問わず要件を満たせば検討できます。
補助金の申請は管理会社に任せきりで大丈夫ですか。
書類作成は管理会社や施工会社が代行できる部分も多いのですが、申請の主体はあくまで管理組合です。総会決議や交付決定前の着工禁止といった肝心の段取りは、理事会が把握しておく必要があります。私はいつも「お任せでもいいが、締切とお金の出入りだけは理事長さまご自身が押さえてください」とお伝えしています。
大規模修繕と耐震診断は同時に進めたほうが得ですか。
耐震診断は工事ではなく調査ですが、診断で建物の弱点が分かれば、大規模修繕の計画に補強を織り込むかどうかの判断材料になります。外壁改修と耐震補強を別々にやって二度足場を架けるより、同じ足場のうちに必要な工事をまとめるほうが、結果的にコストを抑えられます。診断・補助の受付時期と修繕の工程をそろえる設計が大切です。
修繕積立金が足りていません。それでも補助金は使えますか。
補助金は工事費の一部を後から補填するもので、立替えの資金は基本的に管理組合が用意する必要があります。積立金が不足している場合は、長期修繕計画の見直しや、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資の併用なども選択肢になります。松戸市の無料相談窓口でマンション管理士に相談しながら、現状の積立水準と工事の優先順位を整理することからお勧めしています。
まとめ:松戸市の管理組合が今日からできる3つの行動
最後に、松戸市でマンションの大規模修繕を控えた管理組合が、明日からでも動ける3つの行動に整理します。
第一に、旧耐震マンションなら「松戸市マンション耐震診断費補助金」(診断士への支払額の3分の2・本診断は上限100万円)の今年度の受付枠が残っているかを、建築指導課に確認すること。診断前の申請が絶対条件です。第二に、松戸市の無料相談窓口(住宅政策課)やマンション管理相談員派遣制度を使って、補助金の使い方と長期修繕計画の妥当性をマンション管理士に整理してもらうこと。第三に、管理計画認定の取得を検討し、令和9年3月までの「マンション長寿命化促進税制」による固定資産税の減額を、大規模修繕の計画とセットで設計に組み込むことです。あわせて、共用部のLED化やEV充電といった省エネ補助も、足場を架けるタイミングでまとめて検討してみてください。
補助金は、知っている組合だけが得をする世界です。けれど、制度を追いかけるあまり工事の質や工法選びがおろそかになっては本末転倒です。私たちは、松戸・新松戸・八柱・常盤平エリアでも、建物を一棟ずつ拝見したうえで、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、その建物にとって本当にコストと品質のバランスが良い方法をご提案しています。管理組合向けのサポートは管理組合さま向けサービスのご案内にまとめています。
総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。「うちのマンションは何が使えるのか」「この工事は足場が要るのか」——そんな素朴な疑問の段階で構いませんので、お問合せフォームからご相談だけでも遠慮なくお声がけください。補助金の締切と総会の日程、そして建物の状態。この3つを早めにつなげて考えることが、松戸市の管理組合にとっていちばんの近道だと、私は現場で確信しています。
出典・参考資料
- 松戸市「松戸市マンション耐震診断費補助金のご案内」
- 松戸市「マンション管理計画認定制度」
- 松戸市「マンション管理の相談窓口」
- 松戸市「松戸市マンション管理相談員派遣制度について」
- 松戸市「住宅用省エネルギー設備の設置に関する補助金」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 東京都主税局「長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」


