
築20年、30年を越えた高崎市のマンションで、理事長さまから私がいちばん多くいただくご相談があります。「大規模修繕に、高崎市の補助金は使えないのか」という一言です。上越・北陸新幹線が分岐する交通の要衝であり、だるまと白衣大観音の街として知られる高崎市。群馬県で最も人口が多く、令和3年に中核市へ移行したこの街には、高度成長期からバブル期にかけて建った分譲マンションが数多く根を張っています。群馬県がまとめた資料でも、県全域のマンションは308棟22,937戸、うち市部は268棟15,234戸にのぼり、高崎市はその中心的な存在です(出典:群馬県「マンション管理適正化推進計画」)。二度目・三度目の修繕期を迎えた建物の理事会で、冒頭の問いは必ずと言っていいほど出てきます。
正直に申し上げます。この問いには、期待とは少し違う「本当の答え」があります。私は大規模修繕の現場で20年近く、足場を組み、ロープをかけ、外壁に直接触れてきました。その経験から言えるのは、補助金の有無だけを見て一喜一憂するのは、いちばんもったいない、ということです。高崎市には、共用部の大規模修繕そのものへの直接の現金補助は、現時点では見当たりません。しかしその代わりに、固定資産税の減額、有利な融資、そして金利優遇の入口となる認定制度という「使える追い風」が、確かに用意されています。しかも高崎市は、他市と比べて条件が明確で、管理組合にとって判断しやすい街でもあります。ここからが本題です。
この記事では、高崎市のマンション管理組合が実際に手を伸ばせる公的支援を、正直に、そして戸あたりの財布感覚で整理します。読み終えるころには、次の理事会で何を議題に載せればいいかが、はっきり見えているはずです。
【結論】高崎市に「大規模修繕への直接補助金」はあるのか
先に結論からお伝えします。2026年(令和8年)8月時点で、高崎市が「分譲マンションの共用部大規模修繕工事費そのものに現金を直接補助する制度」は、確認できませんでした。これは高崎市が特別に冷たいわけではなく、全国の多くの中核市・一般市に共通する状況です。マンションの共用部(外壁・屋上・廊下・給排水など、住民みんなの持ち物である部分)への直接補助は、東京都心の一部区市など、財政に余裕のある自治体に限られているのが実情です。
高崎市には「住環境改善助成事業」というリフォーム助成がありますが、これはマンションの場合、個人専有部分(各戸の室内)のみが対象で、外壁や屋上といった共用部の大規模修繕には使えません(出典:高崎市「住環境改善助成事業について」)。この点は後半で改めて整理します。
ではあきらめるしかないのか。そんなことはありません。私が理事長さまにいつもお伝えしているのは、「共用部への直接補助はなくても、王道の三本柱を押さえれば、実質的な負担はしっかり下げられます」ということです。その三本柱とは、次の三つです。
- 高崎市マンション管理計画認定制度(間接的だが金利・市場評価・減税の入口になる土台)
- マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額。高崎市は3分の1減額と明記)
- 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資・マンションすまい・る債
三本柱の位置づけを、先に一枚の表で整理しておきます。「補助金」という言葉のイメージとは少し違いますが、いずれも管理組合の負担を実質的に軽くする制度です。
| 制度 | 位置づけ | 管理組合の使いどころ | 主な窓口 |
|---|---|---|---|
| 高崎市マンション管理計画認定制度 | 金利・市場評価・減税の入口 | 総会決議のうえ認定を取得。税制・融資の前提になる(申請手数料は無料) | 高崎市建築住宅課(027-321-1324) |
| マンション長寿命化促進税制 | 固定資産税の3分の1減額 | 外壁・床防水・屋根防水の三点セット工事で翌年度の建物固定資産税を軽減 | 高崎市資産税課(027-321-1220) |
| すまい・る債/共用部分リフォーム融資 | 資金調達コスト減 | 積立を補う借入。認定・すまい・る債と重ねると金利・保証料が優遇 | 住宅金融支援機構 |
以下、一つずつ、専門外の理事長さまにも分かる言葉で解説していきます。まずは、すべての優遇の「入場券」になる認定制度の話から始めましょう。
高崎市マンション管理計画認定制度|すべての優遇の入口
まず押さえていただきたいのが、この「管理計画認定制度」です。これは補助金そのものではありませんが、後述する税制優遇や金利優遇の前提になる、いわば土台の制度です。高崎市は「高崎市マンション管理適正化推進計画」の運用開始にあわせ、令和7年4月からこの認定制度の受付を始めました(出典:高崎市「マンション管理計画認定制度について」)。比較的新しい制度ですが、すでに市内で認定実績が出ています。
そもそも管理計画認定制度とは
管理計画認定制度とは、マンションの管理計画(管理組合の運営、管理規約、修繕積立金の会計、長期修繕計画の内容など)が国の定めた一定の基準を満たすとき、自治体から「適切な管理計画を持つマンション」として認定を受けられる制度です。マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)にもとづく、正式な公的お墨付きだとお考えください。令和4年4月に全国で創設され、高崎市では令和7年4月から運用が始まっています。
高崎市は、この認定事務を市みずから行っています。認定の基準については、高崎市独自の上乗せはなく、国がマンション管理適正化指針に定める全国共通の基準がそのまま使われます(出典:前掲・高崎市「マンション管理計画認定制度について」)。この「市独自の追加ハードルがない」というのは、申請する管理組合にとってはむしろ分かりやすくて助かる点です。
高崎市の申請の流れ|総会決議から認定まで
高崎市の認定申請は、おおまかに次の順で進みます。専門用語が続きますが、要は「総会で決めて、専門家のチェックを受けてから、市に出す」という流れです。
- 認定申請することを管理組合の総会(臨時総会を含む)で決議する
- 公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」などを通じて事前確認を受ける
- 基準を満たせば「事前確認適合証」が発行される
- その適合証を添えて、支援サービスから高崎市に認定申請する
- 審査後、高崎市から認定通知書が郵送で届く
- 同意したマンションは、マンション管理センターの閲覧サイトで公表される
私が現場でお伝えしているのは、この「総会決議」を軽く見ないでほしい、ということです。認定は理事長さまお一人の判断では取れません。区分所有者の合意という土台があってはじめて動き出す制度です。逆に言えば、認定を目指す過程そのものが、修繕積立金や長期修繕計画を住民全員で見直す良いきっかけになります。相談窓口は高崎市建設部建築住宅課の住宅管理担当(高崎市役所9階、電話027-321-1324)です。制度の細部は運用が変わることもあるため、最新の扱いは現場の担当課に直接聞くのが、いちばん確実です。
申請手数料は「無料」|高崎市の分かりやすさ
ここは高崎市の実務的なメリットとして、はっきりお伝えできる点です。高崎市への認定申請手数料は無料です(出典:前掲・高崎市「マンション管理計画認定制度について」)。ただし、マンション管理センターの支援サービスの利用料や、事前確認にかかる審査料は別途必要になります。つまり「市に払うお金はかからないが、専門家のチェックにかかる実費は見ておく」という整理です。認定を受けた内容を後から変更する場合も、市への変更認定申請の手数料は無料とされています。制度を使ううえでの市役所側のコスト障壁が低いのは、管理組合にとって動きやすい環境だと言えます。
認定を受ける3つのメリット
高崎市は、認定取得の効果として次の点を挙げています(出典:前掲・高崎市「マンション管理計画認定制度について」)。
- 市場評価:適正な管理水準で管理されているマンションとして、市場において評価される
- 意識の維持向上:区分所有者の管理への意識が高く保たれ、管理水準の維持向上が図られる
- 金利優遇:住宅金融支援機構の「フラット35」および「マンション共用部分リフォーム融資」の金利優遇措置等が適用される
- 減税:一定の要件を満たすことで、マンション長寿命化促進税制により固定資産税が減税される
私が理事長さまに強くお伝えしているのは、この中の「市場評価」を軽く見ないでほしい、ということです。認定マンションは閲覧サイトで名前が公表され、買い手や借り手が管理状況を確認しやすくなります。現に高崎市でも、令和7年9月にセレストタワー高崎、令和7年11月にグリーンミユキ高崎が認定を受け、市のホームページで公表されています。適正に管理されている建物は、資産としての値持ちが違ってきます。修繕はコストであると同時に、資産価値を守る投資でもあるのです。そして金利優遇と減税は、次にお話しする融資・税制と直結します。
有効期間5年という落とし穴
一つ、正直に注意点をお伝えします。高崎市の認定の有効期間は、認定を受けた日から5年間です。更新するには、有効期間の満了日までに更新の申請が必要で、更新を行わない場合は認定の効力を失います。うっかり更新を忘れると、金利優遇や市場での「認定マンション」という看板が、静かに消えてしまうことになりかねません。私はこれを、認定を取ったその日に「5年後の更新」を長期修繕計画のカレンダーに書き込んでおくよう、必ずお伝えしています。制度は取ることより、続けることのほうが難しいのです。
マンション長寿命化促進税制|高崎市は固定資産税を3分の1減額
三本柱の二つめが、この「マンション長寿命化促進税制」です。これは、老朽化したマンションの適切な大規模修繕を後押しするために国がつくった、固定資産税の特例措置です。前橋市など、減額割合を明示していない自治体もあるなかで、高崎市はこの減額割合を明確に公表しています。ここが管理組合にとって判断しやすいポイントです。
制度の中身|翌年度の固定資産税を3分の1減額
高崎市の説明によれば、新築された日から20年以上が経過したマンションで、令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に長寿命化に資する大規模修繕工事が完了し、一定の条件を満たすものについては、工事が完了した日の翌年の1月1日を賦課期日とする年度の固定資産税を、1住戸あたり100平方メートルまでを限度に3分の1減額する、とされています(出典:高崎市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する減額」)。減額は建物部分が対象で、1回限りの適用です。国が定める参酌基準(3分の1)どおりの設定であり、横浜市などの2分の1と比べると控えめですが、高崎市は割合をはっきり示している点で、資金計画に織り込みやすい制度です。
「外壁・床防水・屋根防水」の3工事がそろって初めて対象
ここが誤解の多いところです。高崎市が示す要件は、次のとおりです。
- 建築後20年以上経過していること
- 10戸以上のマンションであること
- 過去に長寿命化工事(外壁塗装工事、床防水工事および屋根防水工事)を行っていること
- 管理計画認定マンション、または助言・指導に係る管理組合のマンションであること
- 令和5年4月1日から令和9年3月31日までの間に工事が完了したものであること
このうち3番目の「長寿命化工事」とは、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事の三つを指し、原則としてこれらすべてを行っていることが要件です。「外壁だけ塗り替えた」「屋上防水だけやり直した」という部分工事では、この税制の対象にはなりません。私が大規模修繕のご提案でいつも三点セットを意識するのは、建物を長持ちさせるうえで理にかなっているからでもありますが、この税制の要件とも自然に合致するからです。
また4番目の要件が示すとおり、この税制と前段の認定制度は地続きです。管理計画の認定を受けているか、あるいは長期修繕計画の助言・指導を受けて計画を整えていることが前提になります。認定を取る過程で修繕積立金や長期修繕計画を整えておくことが、そのまま税制のハードルを越える準備にもなるのです(※認定マンションの場合、令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を管理計画の認定基準まで引き上げていることが求められます)。
申告は「工事完了後3ヶ月以内」|期限に注意
もう一つ、実務で見落としがちな点をお伝えします。この減額を受けるには、工事完了後3ヶ月以内に、必要書類を添えて高崎市資産税課へ申告する必要があります。必要書類は、区分所有者ごとに記入する減額申告書、総戸数を確認できる書類(設計図書など)、大規模の修繕等証明書、過去工事証明書、そして認定マンションの場合は認定通知書の写しと修繕積立金引上証明書などです。管理組合で各区分所有者の申告書を取りまとめて提出する運用も認められています。窓口は高崎市役所本庁舎2階の資産税課土地家屋担当(電話027-321-1220、027-321-1221)です。「工事が終わってから考えよう」では3ヶ月はあっという間に過ぎます。工事の計画段階から、申告のスケジュールと必要書類を段取りしておくことが肝心です。なお、耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修による固定資産税の減額措置とは併用できない点にもご注意ください。
住宅金融支援機構の融資・すまい・る債|資金計画の柱
三本柱の三つめは、公的な融資と積立の仕組みです。補助金ではありませんが、大規模修繕の資金繰りを支える、管理組合にとって非常に現実的な選択肢です。
マンション共用部分リフォーム融資(すまい・る融資)
住宅金融支援機構は、管理組合が共用部分の大規模修繕を行う際に使える「マンション共用部分リフォーム融資(愛称・マンションすまい・る融資)」を用意しています。修繕積立金だけでは工事費が足りないとき、管理組合として借り入れができる公的融資です(出典:住宅金融支援機構「マンションすまい・る融資」)。高崎市の認定を受けていれば、この融資の借入金利が引き下げられます。金利は毎月見直されるため断定は避けますが、民間金融機関からの借入と比べても、条件を吟味する価値のある選択肢です。マンション管理センターの債務保証を利用すれば、理事長個人の連帯保証が不要になる点も、役員のなり手不足に悩む管理組合には安心材料です。
マンションすまい・る債との相乗効果
もう一つが「マンションすまい・る債」です。これは、大規模修繕に向けた修繕積立金を計画的に積み立てることを支援する、管理組合向けの利付10年債券で、1口50万円から購入できます(出典:住宅金融支援機構「マンションすまい・る債」)。ただ積み立てるだけでなく、公社債として利息を受け取りながら積立ができるのが特徴です。2026年度募集分では、管理計画の認定を受けた管理組合に対して、債券利率の上乗せなど、より有利な条件が用意されると案内されています。
見逃せないのが、すまい・る債と融資の組み合わせです。すまい・る債で積み立てている管理組合が共用部分リフォーム融資を利用する場合、融資金利が引き下げられ、保証料も割り引かれる、という特典が用意されています。さらに高崎市の管理計画認定を取れば、金利面の優遇が重なります。「認定 × すまい・る債 × 融資」という三点を組み合わせると、資金調達コストを段階的に下げていけるわけです。私はこの組み合わせを、資金が不安な管理組合にはワンセットでご説明するようにしています(参考:明誠の適正価格への取り組み)。
高崎市の住宅補助|使える制度・使えない制度を正直に仕分け
ここで、高崎市の住宅系の補助について、「共用部の大規模修繕に使えるのか」という観点で正直に仕分けしておきます。期待して問い合わせて、対象外だった――というのは、理事長さまの貴重な時間を奪ってしまうからです。
住環境改善助成事業は「専有部のみ」
高崎市の代表的なリフォーム助成が「住環境改善助成事業」です。市内の工事業者を利用して住宅を改修・修繕する場合に、助成対象工事経費の30%・限度額20万円までを助成する制度で、令和8年度は今年度から対象を拡充し、20万円未満の工事やエアコン設置工事も対象になりました(出典:前掲・高崎市「住環境改善助成事業について」)。ただし、助成対象住宅は「市内にあり現在居住している住宅(マンションなどの集合住宅は個人専有部分)」と明記されており、マンションの共用部大規模修繕には使えません。加えて、本人と世帯員に前年の合計所得金額が400万円を超える人がいないことなどの所得要件があり、あくまで居住者個人の専有部リフォーム向けの制度です。共用部の財源として当てにするのは難しい、と正直に申し上げておきます。窓口は建築住宅課の建築担当・設備担当(電話027-321-1266)です。
空き家対策・耐震改修は目的が違う
高崎市には空き家緊急総合対策(空き家の管理・解体・活用への助成、令和8年度は4月15日から受付)や、耐震改修に伴う固定資産税の減額などもあります。ただし、空き家対策はその名のとおり空き家を対象とする制度であり、居住中の分譲マンション共用部には使えません。耐震改修の減額も、長寿命化促進税制とは併用できません。いずれも「制度としては存在するが、共用部の大規模修繕とは目的が異なる」という整理になります。使える制度と使えない制度を早い段階で見極めておくことが、遠回りを避ける近道です。
2026年注目|改正区分所有法で「合意形成」が変わる
補助金や税制と並んで、いま管理組合が押さえておくべきなのが、2026年4月に施行される改正区分所有法です。約20年ぶりの大きな改正で、高経年マンションの増加に対応し、修繕や建替えの意思決定を円滑にすることが狙いです。
最大の変更点は、大規模修繕などの決議のルールが緩和されることです。これまでは、総会に出席しなかった人も含めた「全区分所有者」を母数として賛成の数を数えていました。無関心な所有者や連絡の取れない所有者が増えると、それだけで必要な修繕が決められない、という問題が起きていたのです。改正後は、区分所有権の処分を伴わない大規模修繕などについて、集会に出席した人(意思表示をした人)を基準に多数決で決められる仕組みへと変わります(出典:LIFULL HOME’S PRESS「2026年4月改正区分所有法」)。所在不明の所有者を、裁判所の関与などを経て母数から除外できる仕組みも整えられます。
高崎市のように高経年マンションが着実に増えていく街では、この改正は追い風です。「出席者が少なくて決議が流れる」というこれまでの悩みが、制度面から後押しされる形で軽くなります。次の大規模修繕を見据えて、今のうちから総会の出席率を上げる工夫や、書面・オンラインでの議決権行使の仕組みを整えておくと、改正の効果を最大限に活かせます。
群馬県・高崎市の推進計画とJCSAという後ろ盾
高崎市の取り組みは、市単独のものではありません。群馬県は令和4年4月に「群馬県マンション管理適正化推進計画」を策定し、県全域でマンション管理の適正化を進めています(出典:前掲・群馬県「マンション管理適正化推進計画」)。高崎市はこれと歩調を合わせ、独自に「高崎市マンション管理適正化推進計画」を運用し、令和7年4月から認定制度の受付を開始しました。県と市が両輪で、管理組合を支える体制を整えているわけです。
私ども明誠は、こうした公的な枠組みと、現場の施工力の「つなぎ役」でありたいと考えています。明誠が運営に関わる一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)では、建設業向けの経営支援やビジネスマッチング、専門職どうしのネットワークづくりを進めています。塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が連携することで、高品質でありながら価格を抑えた修繕を実現しています(参考:明誠のサービス・加盟のご案内)。制度を使う側の管理組合と、施工する側の専門職。その両方を知る立場から、高崎市の管理組合にとって本当に得になる進め方をご提案できます。
【戸あたり試算】高崎市の管理組合が手にできる支援の考え方
数字を、理事長さまの財布感覚に引き寄せて整理します。あくまで考え方の整理であり、実際の金額は建物の規模・工事内容・その年の制度で変わります。
たとえば総戸数50戸のマンションで、1回の大規模修繕に約1億円かかると仮定します。共用部への直接補助金はありませんから、この1億円に対する「現金給付」はゼロが前提です。しかし、次のような形で実質負担は動きます。まず、外壁塗装・床防水・屋根防水の三点セットで工事を組み、認定と修繕積立金の要件を満たせば、長寿命化促進税制で翌年度の建物固定資産税が3分の1減額されます。1戸あたりの減額は年数千円〜数万円規模になり得ますが、50戸分が積み上がると、管理組合全体では無視できない金額です。高崎市は減額割合を3分の1と明示しているので、あらかじめ資金計画に織り込める点が強みです。
さらに、積立が足りない分をマンションすまい・る融資でまかなう場合、認定とすまい・る債の組み合わせで金利が下がれば、返済総額が抑えられます。1億円規模の借入では、わずかな金利差でも総返済額は数十万円単位で変わってきます。「補助金がないから何もできない」ではなく、「税と金利で、じわじわ効かせる」。これが高崎市のような自治体での王道です。
補助金以上に効くのが「工法選び」です
最後に、補助金や税制よりもさらに大きく総額を動かす要素をお伝えします。それは工法の選び方です。大規模修繕の費用のうち、決して小さくない割合を占めるのが「仮設足場」です。建物をぐるりと足場で覆うには、その架設・解体・運搬に相応の費用と工期がかかります。
私どもは、この足場に関して三つの選択肢をご提案できます。一つめは従来の「足場仮設工法」。二つめが、産業用ロープで施工する「ロープアクセス工法(無足場工法)」です。ロープアクセスは、足場を組まないぶん仮設コストを抑えられ、工期の短縮にもつながり、何より住民の皆さまの生活への影響(視線・防犯・ベランダの使用制限)を小さくできます。三つめが、建物の部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける「ハイブリッド工法」です。高崎市のマンションは形状も立地もさまざまです。全面足場が最適な建物もあれば、一部をロープアクセスに切り替えるだけで総額が下がる建物もあります。内陸で夏は全国有数の猛暑となり、冬は空っ風が吹く高崎の気候は、外壁や防水の傷みを早めます。だからこそ、工事のタイミングと工法の見極めが、建物の寿命を大きく左右します。
正直に申し上げます。私が現場で20年やってきて一番悔しいのは、「一択の工法しか提案されず、払わなくてよかった仮設費を払っていた」管理組合に、後から出会うときです。補助金で数十万円を取りに行くのと同じか、それ以上のコスト差が、工法選びで生まれることは珍しくありません。私はロープアクセスと足場仮設の両方を持ち、建物にとって本当に最適な組み合わせを、必ずワンセットでご提案するようにしています(参考:ロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕工事のご紹介)。
よくあるご質問(高崎市の管理組合向け)
Q1. 高崎市に、大規模修繕そのものへの補助金はありますか。
現時点では、共用部の大規模修繕工事費への直接の現金補助は確認できません。代わりに、管理計画認定制度・長寿命化促進税制(固定資産税3分の1減額)・住宅金融支援機構の融資という三本柱を活用するのが王道です。
Q2. 管理計画認定を取るのにお金はかかりますか。
高崎市への認定申請手数料は無料です。ただし、マンション管理センターの支援サービス利用料や事前確認の審査料は別途かかります。市に払う費用がかからないのは、高崎市の分かりやすい点です。
Q3. 長寿命化促進税制の減額はどのくらいですか。
高崎市は、翌年度の建物固定資産税を1住戸100平方メートルまでを限度に3分の1減額すると明記しています。ただし1回限りで、外壁・床防水・屋根防水の三点セット工事や築20年以上・10戸以上などの要件を満たす必要があります。
Q4. 申告のタイミングはいつですか。
工事完了後3ヶ月以内に、資産税課(027-321-1220)へ申告します。書類の準備に時間がかかるため、工事の計画段階から段取りしておくことをおすすめします。
Q5. 住環境改善助成事業は使えますか。
マンションの場合は個人専有部分(各戸の室内)のみが対象で、共用部の大規模修繕には使えません。所得要件もあり、居住者個人の専有部リフォーム向けの制度です。
Q6. 何から始めればよいですか。
まずは次の理事会で「管理計画認定を目指すかどうか」を議題に載せてください。認定は総会決議が必要で、税制・融資の入口にもなります。工事の順番と工法は、認定・税制の要件を見据えて設計するのが得策です。
高崎市の管理組合が「今」動くべき理由
制度の話を、最後に一本の道すじにまとめます。高崎市には共用部大規模修繕への直接補助金はありません。しかし、①管理計画認定制度で市場評価と金利優遇の入口を押さえ(しかも市への申請手数料は無料)、②長寿命化促進税制で固定資産税の3分の1減額を狙い、③すまい・る債と共用部分リフォーム融資で資金調達コストを下げる。この三本柱は、いずれも「認定を取り、修繕積立金と長期修繕計画を整える」という一点から枝分かれしています。そして2026年4月の改正区分所有法で、合意形成そのものも進めやすくなります。だからこそ、動き出すなら早いほうがいい、と私は考えています。
まずは次の理事会で、「管理計画認定を目指すかどうか」を議題に載せてみてください。認定は総会決議が必要ですから、話を始めるだけでも時間がかかります。そして工事の順番と工法は、認定や税制の要件を見据えて設計する必要があります。高崎市の制度の最新の運用は、建築住宅課(電話027-321-1324)や資産税課(電話027-321-1220)で確認しながら進めるのが確実です。
大規模修繕は、建物の寿命と住民の暮らし、そして資産価値を左右する大きな判断です。制度の使い方から工法の組み合わせまで、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります(お問合せフォーム)。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 高崎市「マンション管理計画認定制度について」
- 高崎市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する減額」
- 高崎市「家屋に対する課税の特例・減額」
- 高崎市「住環境改善助成事業について」
- 群馬県「マンション管理適正化推進計画を策定しました」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 住宅金融支援機構「マンションすまい・る融資(管理組合申込みの場合)」
- 住宅金融支援機構「マンションすまい・る債」
- LIFULL HOME’S PRESS「2026年4月改正区分所有法」
本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづいています。補助金・税制・融資の各制度は、予算の状況や年度更新により内容・期間・上限額・減額割合が変わることがあります。申請にあたっては、必ず高崎市および各制度の公式ページで最新情報をご確認のうえ、所管窓口にお問い合わせください。


