
2026年5月、私が朝の打ち合わせ前に目にした記事のひとつが、「マンション大規模修繕に潜む闇 — 工事費を吊り上げ、管理会社にマージンを支払う」というタイトルでした(出典:ライブドアニュース/日下部理絵氏)。同じ週に、東洋経済オンラインからは「築46年、修繕ゼロの老朽化マンションが辿った“住人のいる廃墟”という末路」という記事も配信されています(出典:東洋経済オンライン)。
立場の異なる二本の記事が、同じ週に同じ業界の課題を取り上げている。これは偶然ではないと、私は受け止めました。マンションの大規模修繕は、いま再び「価格の妥当性」と「資金枯渇の現実」を、社会から問い直されています。
ここからが本題です。本稿では、こうした報道に触れて改めて整理したい三つのことを、現場で20年近く修繕に関わってきた立場から、できるだけ具体的にお話しします。第一に、なぜ大規模修繕の費用は膨らみがちなのか。第二に、国土交通省や公的機関が示す「適正な水準」とはどのレンジなのか。第三に、私たち株式会社明誠が「フランチャイズ運営」と「ロープアクセス工法(無足場工法)」という二つの仕組みで出した答えは、どこに位置するのか。
押し売りのつもりはありません。理事長さま、修繕委員さま、収益不動産のオーナーさまが、ご自分のマンションやビルを今日から守るために使える情報を、淡々と並べていきます。
1. 報道で改めて問われた「大規模修繕の業界構造」
1-1. 「闇」と書かれる側にいる業界の人間として
冒頭で紹介した記事のタイトルは、強い言葉です。「闇」と書かれた業界の中に、私自身も身を置いています。正直に申し上げます。記事に書かれているような事例が、業界の隅々まで100%存在しないとは、私には言い切れません。だからこそ、まずは事実関係を冷静に分解する必要があります。
記事のなかで日下部氏が指摘されているのは、おおよそ次の構造です。第一に、管理会社が大規模修繕の発注プロセスを実質的に握っている場合、施工会社が見積もりに「協力金」「紹介手数料」を上乗せして提示し、それが間接的に管理会社に流れることがある。第二に、見積金額のレンジが大きく、相見積もりを取りづらい構造になっている。第三に、結果として戸あたりの工事費が想定の1.3〜1.5倍に膨らむ事例が報告されている、というものです。
1-2. 現場で20年見てきた「分岐点」
私の経験上、こうした話は「すべての管理会社がそうだ」というわけではありません。むしろ、誠実に動いてくださる管理会社さま、フロント担当者さまは数多くいらっしゃいます。問題は、組合と施工会社のあいだに入る「中間プレイヤー」が複数重なったとき、その合計マージンが見えなくなる、という構造です。
私が現場で20年見てきた「分岐点」は、ほとんどの場合、次の3つに集約されます。
第一に、相見積もり段階で「設計監理方式」「責任施工方式」「コンサル方式」のどれを選ぶかを、組合側が理解しているかどうか。第二に、見積項目(「諸経費」「現場管理費」「一般管理費」「安全対策費」など)を、外部の第三者が査読できる状態に揃えられているかどうか。第三に、施工会社の「自社施工率」が分かっているかどうか。この3点が整理できているマンションは、私の体感では、戸あたりコストが2〜3割は変わってきます。
1-3. 「廃墟化」という反対側の闇
もう一本の東洋経済の記事は、まったく逆の問題を指摘しています。修繕積立金が不足し、大規模修繕そのものが実施できない。その結果、外壁タイルの剥落から雨水が躯体に侵入し、住人がいるのに「廃墟」と呼ばれてしまう物件が現実に存在する、という話です。
私はこの二つの闇は、表裏一体だと考えています。費用が膨らみすぎる構造は、結果的に「次の修繕積立金」を圧迫します。積立金が足りないマンションは、必要な工事を先送りにせざるを得ない。先送りされた躯体は、さらに痛んで次回の工事費を押し上げる。負のスパイラルの始まりです。
2. なぜ工事費が膨らむのか — マージン構造を分解する
2-1. 「3階建てマージン」の典型例
ここで一度、「中間マージン」と呼ばれているものの中身を、構造的に分解してみます。私が現場で見てきた典型例は、次の三層構造です。
一段目は、元請けゼネコンや設計事務所が取る「元請けマージン」です。書類作成、行政対応、長期保証、近隣調整など、価値ある業務に対する正当な対価が含まれます。これ自体は「闇」ではありません。問題は、ここに二段目・三段目が加わるときです。
二段目は、施工管理会社が下請けに発注する際の「中間取りまとめマージン」。三段目は、その下請けがさらに孫請けに出すときの「再委託マージン」です。塗装・防水・タイル・シーリング・足場と、工種ごとに別の専門会社が入る大規模修繕では、ここで5%×3層=15%前後が、純粋な施工以外のコストとして積み上がります。
加えて、「協力金」や「紹介料」と呼ばれるグレーゾーンの慣行が一部に残っていることは、業界誌の特集や国会の議事録などでも繰り返し指摘されてきました(参考:衆議院・国土交通委員会の議事録)。私はこの種の慣行に組みする気はありません。一方で、「中間取りまとめ」という機能自体には、現場品質を担保するうえで価値があることも事実です。
2-2. 「諸経費」のブラックボックスを開ける
理事長さま向けに、もう少し実務的な話をします。見積書のいちばん下のほうにある「諸経費」「現場管理費」「一般管理費」の合計が、工事金額の何%になっているかを必ず見てください。
私の経験上、健全な水準は、工事金額の10〜18%のレンジに収まります。これが20%を超えてくるあたりから、「中間マージンが厚めに乗っているか、現場の効率が悪く管理工数が膨らんでいるか、どちらかの可能性が高い」と、私はお伝えしています。25%を超えていたら、私なら必ず、内訳の根拠を文書で求めます。
ここで気をつけたいのは、「諸経費が低いほど良い」という単純な話ではない、ということです。安全対策費や近隣対応費が異常に低い見積もりは、現場で必要な作業を省略している可能性があります。低すぎる見積もりは、工期遅延、品質低下、最悪の場合は事故という形で、結局は組合に跳ね返ってきます。
2-3. 戸あたり費用の「相場感」
国土交通省が公表しているマンション大規模修繕工事に関する実態調査結果では、第1回大規模修繕の戸あたり工事費は、戸数規模やグレードによって幅はあるものの、概ね100万円〜125万円のレンジに、最頻値が分布しているとされています。第2回目、第3回目になると、これに加えて給排水管更新、エレベーター改修、サッシ周りの劣化対応が加わり、戸あたり150万円〜200万円のレンジへ拡大するケースが多くなります。
私はいつも理事長さまに、「この数字を“相場”ではなく“判断ライン”として持ってください」とお伝えしています。戸あたり費用が公的データの最頻値レンジから、±20%以内に収まっていれば、まずは妥当性の議論の土俵に乗っています。±30%を超えるなら、上下どちらにブレていても、必ず根拠の説明を求めてください。
3. 国土交通省が示す「健全な修繕計画」のレンジ
3-1. 修繕積立金ガイドラインの更新
国土交通省はマンションの修繕積立金に関するガイドラインを公表しており、概ね5年ごとに改定が行われています。直近の改定では、専有面積あたりの月額目安が、20階未満の中規模マンションで月額平米あたり235円〜335円、20階以上の高層マンションで月額平米あたり335円〜430円、というレンジで示されています。
このレンジを下回っている場合、第2回・第3回の大規模修繕を迎える段階で、確実に資金ショートの危険信号が灯ります。「うちのマンションの平米単価はいくらか」を、まずは管理組合の総会資料で確認してみてください。
3-2. 長期修繕計画は「12年で完結しない」
長期修繕計画は、しばしば「12年ごとの大規模修繕」を中心に語られます。しかし、国交省のガイドラインでも、給排水管・エレベーター・機械式駐車場・玄関ドア・サッシなど、12年周期と異なるサイクルを持つ部位が多数存在することが明示されています。
私が現場でいちばん悔しい思いをするのは、「12年ごとの足場架設」だけが意識されていて、その間にロープアクセスでこまめに点検・補修できるはずの不具合が見過ごされ、結果として次回の工事規模が膨らむケースです。ここからは、私たちが取り組んでいる「もう一つの道」の話に入っていきます。
3-3. 公的相談窓口の活用
理事長さまや修繕委員さまには、外部の公的相談窓口の存在も、強くお伝えしておきたいところです。公益財団法人マンション管理センター、一般社団法人マンション計画修繕施工協会(MKS)、各自治体のマンション相談窓口など、利害関係のない第三者に話を聞ける場が公的に整備されています。
「相見積もりを取る前に、まず相談だけしてみる」という使い方ができる窓口です。私自身、組合の相談に同席した際に、こうした窓口の存在を組合の方に紹介することがあります。
4. 私が現場で見てきた「3つの分かれ道」
4-1. 分かれ道その1:相見積もりを取れるか、取れないか
相見積もりを「取れる組合」と「取れない組合」のあいだには、見えない壁があります。取れない理由はだいたい次の3つです。第一に、管理会社が「うちの提携先以外に出すと保証が切れる」と説明する。第二に、過去の理事会議事録に「特定の会社に随意契約」と書かれており、新理事が手を出しにくい。第三に、そもそも相見積もりの仕様書(数量内訳書)を組合側で揃えられない。
この壁を越えるための最初の一歩は、私の経験上、「外部に詳細な数量内訳書を作ってくれる第三者を見つけること」です。マンション管理士、建築士、修繕コンサル、いずれでも構いません。仕様が固まりさえすれば、相見積もりは2社でも3社でも取れます。
4-2. 分かれ道その2:工法を1つに固定しているか
もうひとつの分かれ道は、「足場架設工法しか前提にしていない総会資料」になっているかどうかです。前述のとおり、12年ごとに全周足場を架けることは、コストでも工期でも住民負担でも、決して小さな選択ではありません。
私はこれまで、足場架設・ロープアクセス工法(無足場)・両者を組み合わせたハイブリッド工法という、3つの選択肢を建物特性に応じて使い分けてきました。日本でこの3工法すべてを自社の意思決定で出し分けられる会社は、数えるほどしかありません。後ほど詳しくお話ししますが、ここで申し上げたいのは、「工法選定を1つに固定して総会に上げないでください」ということです。比較したうえで足場架設を選ぶのと、最初から足場架設しか検討しないのとでは、後で見えてくる景色がまったく違います。
4-3. 分かれ道その3:「中間マージン」を可視化するか
3つ目は、見積書の透明性です。先ほど触れた諸経費比率に加えて、私は次の3項目を必ずチェックします。
第一に、施工内訳のうち、元請けが直接施工する割合(自社施工率)。第二に、外注工種ごとの単価が、業界標準(公益財団法人建設物価調査会等の刊行物)と比べて妥当か。第三に、「予備費」「設計変更費」がどのくらい計上されており、その執行ルールが事前に明文化されているか。
この3点を1枚のシートにまとめて、組合の合意形成資料に添付する。これだけで、「中間マージンが見えない」という不安は、相当程度コントロールできます。
5. 明誠が選んだ答え(1)— フランチャイズで中間層を圧縮する
5-1. 日本初のロープアクセス工事フランチャイズ
ここから、私たち株式会社明誠の取り組みについて、できるだけフラットに書きます。
明誠は、ロープアクセス工法を中核とした工事ネットワークを、日本で初めてフランチャイズ形式で全国展開している会社です。塗装・防水・タイル・シーリング・電気・看板など、各分野の専門職会社が加盟しており、案件ごとに、もっとも適した加盟店が現場を担当します。
なぜフランチャイズという形を選んだかというと、目的は単純です。中間層を圧縮するためです。元請け→管理会社→ゼネコン→専門工事会社→孫請け、と段が重なるほど、マージンは積み上がります。フランチャイズ本部が直接、現場の専門工事会社に発注できる仕組みにすれば、層を1〜2段、構造的にカットできます。
5-2. 「フランチャイズ=品質が下がる」という誤解
フランチャイズと聞くと、「品質にばらつきが出るのではないか」とご心配される方もいらっしゃいます。私はこの問いを、加盟店審査と教育研修で正面から受け止めるしかないと考えています。
加盟店の選定では、ロープアクセスの産業用ロープ作業に係る労働安全衛生規則(特別教育)の修了は最低条件です。そのうえで、塗装・防水・タイルなどの工種別の有資格者比率、過去5年間の事故ゼロ実績、第三者保険の加入状況などを満たした会社のみを加盟させています。
研修については、年に複数回、安全・品質・施工技術のアップデートを行い、加盟店どうしが現場ノウハウを共有する場を設けています。フランチャイズ本部が「営業だけして現場は加盟店任せ」では、フランチャイズの意味がありません。私は本部の責任を、品質の最終ラインを担うことだと位置付けています。
5-3. コストはどれくらい下がるか
数字の話をします。あくまで私の現場感覚と、過去案件の事例平均ですが、フランチャイズ加盟店による直接施工に切り替えたケースでは、同条件の足場架設工事と比較して、戸あたり10〜25%の工事費削減が実現できたケースが多くあります。20%を超える削減ができたのは、ロープアクセス工法と組み合わせて足場費を圧縮できた建物に集中しています。
ここで強調したいのは、「安いから良い」のではない、ということです。中間マージンを圧縮した分を、現場の職人さんへの正当な対価と、長期保証の原資、そして安全対策の手厚さに振り向ける。これが、私たちがフランチャイズで実現したいことの本丸です。
明誠の大規模修繕の考え方をもう少し詳しく知りたい方は、大規模修繕工事のご紹介ページをご覧ください。
6. 明誠が選んだ答え(2)— ロープアクセス工法というもう一つの選択肢
6-1. ロープアクセス工法とは何か
ロープアクセス工法とは、産業用の二重ロープにより、職人が直接建物の外壁面を上下移動しながら、塗装・防水・タイル補修・シーリング打ち替え・点検などを行う工法です。欧米では、橋梁・洋上風力・高層ビルなど、足場が物理的に困難な現場で先に発達しました。日本では、ここ10年ほどで急速に普及し始めています。
業界全体の動向は、一般社団法人ロープアクセス技術協会などが情報発信を行っています。私たちもこうした業界団体の動きに合わせて、安全基準や教育プログラムを継続的にアップデートしています。
6-2. ロープアクセスの強みと弱み(両論併記)
公平を期すために、強みと弱みを両論併記します。
強みは、まず足場費が大幅に削減できることです。建物の規模・形状にもよりますが、足場費そのものを工事原価から差し引けるケースで、総工事費の15〜30%程度の圧縮が見込めます。第二に、工期が短縮できます。足場の組立・解体に必要な期間(規模によっては2〜4週間)が不要になります。第三に、住民・利用者の生活影響が最小限です。窓の前に足場が立ち、視界も日照も遮られる、洗濯物が干せない、防犯リスクが上がる、といったストレスを大幅に軽減できます。
一方で、弱みもあります。第一に、強風時・降雨時に作業中止となる頻度が、足場工事より高い傾向があります。第二に、大型のクラック補修や、躯体に近い大規模なはつり作業など、ロープでは生産性が出にくい工種があります。第三に、近隣からの視覚的な「工事中感」が薄いぶん、近隣説明会の重要性が逆に高まります。
私はこれを、「足場架設と対立する工法」ではなく、「足場架設では得られない選択肢の幅」と捉えています。
6-3. ハイブリッド工法という現実解
実務では、足場架設・ロープアクセス・ハイブリッドの3つから選びます。ハイブリッド工法は、たとえばバルコニー側だけ部分足場、外周はロープアクセス、屋上防水は単管足場、といった部位ごとの最適化を行う考え方です。
ハイブリッド工法を採用した場合、純粋な足場工事と比べて10〜20%、純粋なロープアクセスと比べて品質安定性で優位、という「いいとこ取り」が可能になります。私はこれを必ずワンセットで提案するようにしています。建物ごとに最適解は異なるので、「足場かロープかの二択」ではなく、「3つの選択肢のなかで建物にとって何が一番良いか」を、組合と一緒に考えるためです。
ロープアクセスの技術的な詳細は、ロープアクセス工法のご紹介ページで写真とあわせて解説していますので、必要に応じてご参照ください。
7. 管理組合・オーナーが今日からできる5つの自衛策
7-1. 5つのチェックリスト
ここまでの話を、今日から動ける形に落とし込みます。理事長さま、修繕委員さま、収益不動産のオーナーさまに、ぜひ持ち帰っていただきたいチェックリストは次の5項目です。
第一に、自分のマンションの修繕積立金の平米単価が、国土交通省ガイドラインのレンジに収まっているかを確認する。これは総会資料とマンション修繕積立金ガイドラインを見比べるだけで、その日のうちにできます。
第二に、見積書の「諸経費」「現場管理費」「一般管理費」の合計が、工事費の何%かを電卓で計算する。20%を超えていれば、内訳を文書で質問する。
第三に、相見積もりを取る前に、外部の第三者(マンション管理士、修繕コンサル、公的相談窓口)に「数量内訳書のフォーマット」だけでも見てもらう。
第四に、工法選定を「足場架設のみ」で総会に上げない。足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法を比較した資料を、必ず議案書に添付する。
第五に、見積書の「予備費」と「設計変更費」の執行ルールを、契約書本文または覚書で事前に明文化する。
7-2. 「総会の3カ月前」が分かれ目
私の経験上、これらを動かすには、総会開催の3カ月前から動き始める必要があります。1カ月前から動き出すと、相見積もりを取り切る前に総会日を迎え、結局「管理会社の提示案を承認」の流れに飲まれてしまいます。
理事会で1分だけでもこの話題を出してみてください。3カ月前から動けたかどうかが、その回の大規模修繕の「透明性スコア」を決めます。
7-3. 「相談だけでも」の使い方
最後に、自衛策の延長線上で、私たち明誠への相談の使い方も、率直に書きます。
私たちは、相見積もりに呼ばれた段階だけでなく、その「前段階」での相談こそ、もっとも価値を提供できると考えています。たとえば、「いまの長期修繕計画の数字が、ガイドラインと比べて高いのか低いのかだけ見てほしい」「3工法のうち、自分のマンションに向くのはどれか、感触だけ知りたい」といったご相談です。
お問合せフォームからは、こうした「相談だけ」のご依頼でも受け付けています。お見積もりが必須ではありません。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。
8. JCSAから業界全体へ — 透明性を「制度」ではなく「文化」に
8-1. 一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)の立ち位置
私はもう一つ、明誠とは別に一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)を運営しています。JCSAは、全国の建設業経営者向けに経営支援情報を発信し、オンラインセミナーやリアル交流会、ビジネスマッチングを行う非営利の組織です。
なぜ業界団体まで運営しているかというと、目的は二つあります。一つは、フランチャイズ加盟店だけでなく、業界全体の経営力が底上げされなければ、結局は「マージン構造の闇」は無くならない、という現場感覚があるためです。もう一つは、私自身が現場叩き上げで20年やってきて、業界の先輩方や同業の経営者の方々から受け取ったものを、次の世代に渡したい、という個人的な思いがあるためです。
8-2. 透明性は制度より文化
業界の透明性を上げるためには、規制やガイドラインの強化も必要です。同時に、「透明性は気持ちの良いものだ」「中間マージンを隠さなくても、付加価値で対価を得られるのだ」という文化を、業界の内側から作っていく必要がある、と私は考えています。
私たちが取り組んでいるフランチャイズ運営も、ロープアクセス工法の普及も、JCSAの経営支援活動も、突き詰めれば「透明性の文化を業界に根付かせる」という、ひとつのゴールに向かっています。
8-3. 収益不動産オーナーさまへ — マンション以外の視点
ここまで主に区分所有マンションの管理組合を念頭に書いてきましたが、賃貸マンション・ビル・ホテルを所有されている収益不動産オーナーさまにも、補足を残しておきます。
オーナー所有物件の場合、意思決定者が一人または少数で済む反面、修繕の先送りが直接、家賃下落・空室率上昇・売却査定額の下落として、ご自身の資産に跳ね返ります。私の経験上、外壁の劣化サイン(クラック・チョーキング・タイル浮き)が見えてから5年以内に手当てができたか否かで、10年スパンの資産価値の差は、戸あたり数十万円〜数百万円のオーダーで開いていきます。ロープアクセスを使った部分補修なら、足場架設前提と比べて初動コストを大幅に抑えられるため、「いきなり大規模ではなく、まずは応急的に押さえる」という選択肢を持てます。
8-4. 読者の皆さまへ
最後に、ここまで読んでくださった理事長さま、修繕委員さま、オーナーさまへ。
冒頭の「闇」という言葉に、私は最初、業界の人間としてカチンと来た部分がありました。けれど、読み返すうちに、「闇」と書かれてしまうほど、業界の構造が外部から見えにくくなっている、という事実を受け止めるべきだと感じました。
私たち明誠は、フランチャイズで中間層を圧縮し、ロープアクセスで足場費を圧縮し、ハイブリッドで建物ごとに最適化し、JCSAで業界全体の経営支援を行うという、4つの仕掛けで「透明性の文化」をつくっていきたいと考えています。
これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- ライブドアニュース(日下部理絵氏)「マンション大規模修繕に潜む闇…『工事費を吊り上げ、管理会社にマージンを支払う』ことが業界…」
- 東洋経済オンライン「[『トイレも使えず…』築46年、修繕ゼロの《老朽化マンション》が辿った“住人のいる廃墟”という末路](https://toyokeizai.net/arti


