
「ららぽーとができて街はにぎやかになったけれど、うちのマンションはもう築30年近い。富士見市に、管理組合が使える補助金なんてあるのだろうか」——富士見市内の分譲マンションで理事長さまや修繕委員さまをされている方なら、一度はそう思われたかもしれません。結論から申し上げます。富士見市は、近隣の市と比べても、マンション管理組合への支援がかなり手厚い街です。とりわけ耐震の分野では、多くの自治体が「診断まで」しか補助しない中、富士見市は耐震改修工事そのものにも補助を出す、数少ない自治体です。
私は大規模修繕の現場に20年近く立ってきました。その経験から言うと、富士見市のように「マンション管理の適正化推進計画」を持ち、耐震診断と改修の補助、管理計画の認定、税の減額、そして県と連携した専門家派遣まで一通りそろっている自治体は、決して多くありません。この記事では、私が現場で理事会や区分所有者さまにお伝えしている順番そのままに、富士見市で本当に使える制度を一つずつ整理します。専門用語には、そのつど素人向けの補足を入れますので、建築が初めての方も安心して読み進めてください。
富士見市という「マンションの街」を、まず正しく捉える
富士見市は埼玉県の南部、東武東上線の鶴瀬駅・みずほ台駅・ふじみ野駅を中心に広がる、人口約11万人の街です。都心へ東上線一本で出られる利便性から、駅周辺には中高層の分譲マンションが数多く建ち並んでいます。2015年に開業した大型商業施設「ららぽーと富士見」以降、街の人気はさらに高まりましたが、その一方で、駅前や幹線道路沿いには築25年から40年級のマンションが数多く存在しているのが実情です。
ここで大事なのは、富士見市のマンションの多くが「2回目・3回目の大規模修繕を迎える時期」に差しかかっているという点です。1回目の修繕は新築時の勢いと積立金でなんとかなっても、2回目以降は積立金の不足、住民の高齢化、合意形成の難しさが一気に押し寄せます。私が現場で一番悔しい思いをするのは、「もっと早く相談してくれれば、使える制度も工法の選択肢も、もっと広く残っていたのに」というケースです。だからこそ、まだ計画段階の今この記事にたどり着いた理事長さまは、正直かなり有利な位置にいます。
なお、この記事の数字・期限は、すべて富士見市や国の公的な一次情報を確認して書いています。ただし補助金は年度ごとに予算も要件も変わります。「2026年(令和8年)7月時点の公表情報」としてお読みいただき、実際の申請前には各担当課へ最新情報を確認してください。断定を避けるのは、私が慎重だからではなく、そうしないと理事会が後で困るからです。
【結論・早見表】富士見市の管理組合が押さえるべき制度マップ
細かい解説の前に、全体像を一枚で示します。迷ったらこの表に戻ってきてください。
| 制度 | 管理組合が主語で使えるか | 内容のざっくり | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 耐震診断補助(分譲マンション) | ○(旧耐震・総会決議要) | 診断費2/3以内・戸数×3万円(上限150万円) | 建築指導課 |
| 耐震改修工事補助(分譲マンション) | ○(旧耐震・総会決議要) | 工事費1/3以内・戸数×50万円(上限2,500万円) | 建築指導課 |
| マンション管理計画認定制度 | ○ | 認定で税制・融資が有利に。市認定は手数料の枠組みあり | 建築指導課 |
| マンション長寿命化促進税制 | ○ | 翌年度の家屋固定資産税を1/3減額 | 税務課家屋係 |
| 埼玉県 分譲マンションアドバイザー派遣 | ○ | マンション管理士を県が2回まで無料派遣 | 埼玉県住宅課/富士見市建築指導課 |
| 地球温暖化防止活動支援補助金(省エネ設備) | △(集合住宅対象・共用部は要確認) | 太陽光5万・蓄電池5万・HEMS2万、他補助と併用可 | 環境課環境保全係 |
| 住宅リフォーム補助金 | ×(個人の自己所有住宅向け) | 市内業者利用・5%上限10万円 | 産業経済課 |
| 住宅金融支援機構 共用部分リフォーム融資 | ○ | 認定で金利引下げ・長期返済 | 住宅金融支援機構 |
ポイントは3つです。第一に、富士見市は耐震について「診断」だけでなく「改修工事」にも補助があり、しかも分譲マンションがきちんと対象になっている。第二に、「管理計画の認定」を軸に、税制・融資・専門家派遣がつながる設計になっている。第三に、住宅リフォーム補助は個人向けで、マンション共用部の大規模修繕には使いにくい。この順で読み進めましょう。
目玉①:富士見市は「耐震改修工事」にも補助が出る数少ない街
まず、富士見市で管理組合にとって最大の見逃せない制度が耐震診断・耐震改修工事補助金制度です。近隣自治体では「耐震診断まで」しか補助が出ないことが多い中、富士見市はここが決定的に違います。診断だけでなく、改修工事の費用にも補助が出て、しかも分譲マンションが明確に対象なのです(出典:富士見市 耐震診断・耐震改修工事に補助金を交付します)。
対象となるのは、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた市内の住宅や分譲マンション(昭和56年6月1日以後に増築されたものを除く)です。つまり、いわゆる「旧耐震基準」で建てられたマンションが対象になります。補助金額は、素人向けに噛み砕くと次のとおりです。
分譲マンションの耐震診断は、費用の3分の2以内で、金額は「戸数×3万円(上限150万円)」。分譲マンションの耐震改修工事は、費用の3分の1以内(階数・面積・構造によっては23%の場合もあります)で、金額は「戸数×50万円(上限2,500万円)」です。たとえば30戸のマンションであれば、診断で最大90万円、改修工事で計算上は30×50万=1,500万円が視野に入る計算です。もちろん実際の交付額は工事費や上限に左右されますが、「工事費そのものに、これだけの規模の補助が出る」自治体は、私の知る限りそう多くありません。
私がここで正直にお伝えしたい注意点が3つあります。まず、この補助は「旧耐震(昭和56年5月以前)」のマンションが前提です。新耐震のマンションは対象外ですので、まずは自分たちの建物がいつの建築確認かを管理会社に確認してください。次に、分譲マンションの場合は「管理組合等で決議がなされていること」が条件です。私はいつも理事長さまに「診断や改修を受けると決めたら、まず総会の議案に載せてください」とお伝えしています。三つ目に、補助金は事前に交付申請を行い、市から交付決定の通知を受ける前に契約を結んではいけません。決定前に着工・契約すると補助対象外になります。申請の受付期限は令和8年12月28日までと公表されていますので、動くなら早めに、建築指導課建築指導・住宅グループ(電話049-252-7127)へ一本電話を入れてください。
目玉②:マンション管理計画認定制度は「富士見市の実利の入口」
次にご紹介するのが、富士見市の支援策の背骨とも言えるマンション管理計画認定制度です。これは、管理組合の長期修繕計画や修繕積立金、規約、経理といった「管理の健康状態」を、国の基準に沿って自治体が認定する制度です。富士見市はすでに「マンション管理適正化推進計画」を策定しており、この認定申請を受け付けています(出典:富士見市 マンション管理適正化推進計画)。
しかも富士見市には、すでに認定を受けたマンションの実績があります。市の公表によれば、シアンズ鶴瀬(令和7年3月認定)、富士見ニューライフ(令和7年5月認定)、アーベイン鶴瀬ウェルディ(令和7年10月認定)、アステールふじみ野七番館(令和8年3月認定)といったマンションが、すでに認定を取得しています。制度が「絵に描いた餅」ではなく、市内で現実に動いている証拠です。
認定を受けると、独立行政法人住宅金融支援機構の「フラット35」や「マンション共用部分リフォーム融資」で金利が引き下げられるほか、次章の長寿命化税制の前提要件にもなります。つまり、認定は「それ自体が現金」ではありませんが、税と融資の両方を有利にする実利の入口なのです。
認定基準は国が定めるもので、主なものを素人向けに噛み砕くと、管理者(理事長など)と監事が定められている、総会が年1回以上開かれている、管理費と修繕積立金が区分して経理されている、修繕積立金の3か月以上の滞納が全体の1割以内である、長期修繕計画が7年以内に見直され、計画期間が30年以上で大規模修繕が2回以上含まれている——といった内容です。これらは「良い管理をしていれば自然と満たしている」項目が多く、裏を返せば、認定を目指す過程そのものが管理の点検になります。
手続きは、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」を使って事前確認(適合証の発行)を受け、その適合証をそえて市へ認定申請する流れです。私の経験上、この認定は「取れるなら取っておく」のが得です。取得の努力が管理の質を上げ、その質が税と融資で報われる——富士見市はその循環がきちんと用意され、しかも現に回っている街だと感じます。
目玉③:マンション長寿命化促進税制で固定資産税を1/3減らす
三つ目は税金です。マンション長寿命化促進税制は、令和5年度の税制改正で創設された国の制度で、一定要件を満たすマンションが長寿命化のための大規模修繕(屋根防水工事・床防水工事・外壁塗装等工事の「3点セット」すべて)を行うと、翌年度分の家屋の固定資産税が減額されます。富士見市もこの制度を運用しており、要件と減額割合を明確に示しています(出典:富士見市 長寿命化に資する大規模の修繕等が行われたマンションに対する固定資産税の減額措置について)。
富士見市の説明によれば、減額の要件は、(1)築後20年以上が経過している10戸以上のマンションであること、(2)過去に1回以上大規模修繕(長寿命化工事)を適切に実施し、2回目以降の工事を対象期間内に完了していること、(3)管理計画の認定を受けている(または助言・指導を受けて長期修繕計画を適合させている)こと、そして修繕積立金を認定基準以上に引き上げていること、です。減額割合は、1戸あたりの住宅部分の床面積が100平方メートル以下の場合、固定資産税額の3分の1。100平方メートルを超える部分は減額の対象外です。なお、都市計画税は減額されず、土地も対象外です。
ここで、先ほどの認定制度が効いてくることに気づいていただけると思います。長寿命化税制は「管理計画の認定」を前提の一つにしています。つまり、目玉②の認定を取っておくことが、目玉③の税減額への切符になるのです。手続き上の最大の注意点は、工事完了後3か月以内に、税務課家屋係(電話049-252-7117)へ必要な証明書を添付して申告することです。ここを忘れると、要件を満たしていても税は戻りません。私はこの「申告忘れ」で減額を取り逃した理事会を何度も見てきました。工事の完了と同時に、申告をスケジュール表に赤字で書いておいてください。
一点、正直にお伝えします。富士見市のこの案内ページには、2回目以降の工事の完了期限が「令和5年4月1日から令和7年3月31日まで」と記載されています。ただし、この国の特例は税制改正で適用期限が延長されており、市のページの記載が最新に追いついていない可能性があります。「もう期限切れだ」と早合点せず、また逆に「延びたはずだから大丈夫」と決めつけず、必ず税務課家屋係へ現在の対象期間を確認してください。数十万円単位の話になりますので、電話一本の確認を惜しまないでください。
目玉④:埼玉県の「アドバイザー無料派遣」で第三者の目を入れる
富士見市には市独自のアドバイザー派遣制度は見当たりませんが、その代わりに埼玉県の「分譲マンション管理適正化支援事業」を案内しています。これは、管理運営上の課題を抱える県内の分譲マンション管理組合を対象に、マンション管理士(マンション管理の国家資格者)を埼玉県が派遣し、現地まで来てアドバイスをしてくれる仕組みで、派遣費用は2回まで無料です(出典:富士見市 分譲マンションの管理などでお困りのときは)。
問い合わせ先は、埼玉県都市整備部住宅課マンション担当(電話048-830-5573)、または埼玉県住宅供給公社「住まい相談プラザ」(電話048-658-3017)です。あわせて、埼玉県は「分譲マンション維持管理アドバイスブック」も公開していますので、理事会の勉強用に一読をおすすめします。
私がこの制度をおすすめするのは、「大規模修繕の前段階で、第三者の目を一度入れておく」ことの価値が大きいからです。施工会社である私たちがどれだけ誠実に説明しても、「工事を売りたい会社の話でしょう」と身構える住民は必ずいます。そこで、利害関係のないマンション管理士に長期修繕計画や積立金の妥当性を見てもらうと、理事会の説明に客観性が加わり、総会での合意が驚くほどスムーズになります。無料で呼べる専門家を使わない手はありません。
目玉⑤:省エネ設備の補助は「集合住宅も対象」
環境の分野では、富士見市地球温暖化防止活動支援補助金(再生可能エネルギー機器等設置奨励補助金)があります。家庭向けの補助として、太陽光発電システムに5万円、定置用リチウムイオン蓄電池に5万円、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)に2万円が交付されます。注目すべきは、この補助が注釈で「集合住宅および併用住宅も対象となります」と明記している点、そして他の補助金との併用に制限を設けていない点です(出典:富士見市 地球温暖化防止活動支援補助金(再生可能エネルギー機器等設置))。
令和8年度の家庭向けの受付期間は令和8年6月1日から令和9年2月15日まで(予算がなくなり次第終了)、窓口は環境課環境保全係(電話049-252-7129)です。ただし、これらは基本的に「住宅の設備」向けの制度です。マンションの共用部で管理組合名義で使えるかは運用によりますので、大規模修繕にあわせて太陽光や蓄電池の導入を検討する場合は、必ず事前に環境課へ確認してください。金額は大きくありませんが、「併用制限がない」という点は、他の制度と組み合わせて総額を積み上げるうえで見逃せない特徴です。
使えるが限定的:住宅リフォーム補助金は「個人の住宅向け」
ここからは「使えるが条件つき」「マンション共用部には使いにくい」ものを、正直にお伝えします。営業的には触れたくない部分ですが、後で「話が違う」となるほうが理事会にとって不幸だからです。
富士見市住宅リフォーム補助金制度は、市内在住のかたが市内の施工業者を利用して住宅をリフォームする場合に、20万円(消費税を除く)以上の対象工事費の5パーセント以内・上限10万円を補助する制度です(出典:富士見市 住宅リフォーム補助金制度について)。ただし対象は「自己が所有し、居住している市内の住宅への工事」で、増改築を伴わない工事に限られ、利用は1度のみです。つまりこれは基本的に個人の区分所有者が自室(専有部)をリフォームする際の制度であって、管理組合が主体となる共用部の大規模修繕にはそのまま使えません。金額も上限10万円と小さく、大規模修繕の主役にはなりにくい制度です。窓口は産業経済課(電話049-257-6827)、受付は令和8年4月1日から予算終了までです。
旧耐震マンションは「法律の武器」も選択肢に
耐震診断で「弱い」と判定された旧耐震のマンションでは、富士見市の改修補助が大きな味方になりますが、それに加えて「法律の武器」もあります。
耐震改修促進法25条の認定を受けると、耐震改修に伴う共用部分の変更決議に必要な賛成要件が、区分所有法の原則「各4分の3以上」から「各過半数」に緩和されます。旧耐震マンションで一番のネックになる合意形成のハードルを、法律の力で下げられるのです。私はこの25条認定を、旧耐震物件では一度は検討の俎上に載せるようにしています。診断補助で弱点を把握し、法律で決議を通しやすくし、改修補助で工事費を抑え、工法選択でさらにコストを圧縮する——この合わせ技が、富士見市の旧耐震マンションでは現実的な進め方です。
富士見市で管理組合が動く「順番」8ステップ
制度は、使う順番を間違えると取りこぼします。私が理事会にお配りしている段取りを、富士見市向けに整理しました。
- 建築指導課建築指導・住宅グループに電話(049-252-7127):耐震診断・改修補助、管理計画認定をまとめて相談。あわせて自分たちの建物が旧耐震か新耐震かを確認。
- 埼玉県のアドバイザー無料派遣を活用:第三者のマンション管理士に長期修繕計画と積立金を点検してもらう(2回まで無料)。
- 長期修繕計画と修繕積立金の健康診断:認定基準・長寿命化税制の要件に届いているかを確認。
- 積立金の引上げ・計画見直しの決議(必要な場合):総会でここを先に通す。認定・税制の要件にも直結。
- 管理計画の認定申請:マンション管理センターの支援サービスで事前確認(適合証)→市へ申請。
- 耐震診断・改修の申請(旧耐震の場合):総会決議のうえ、交付決定の通知を受けてから契約・着工。
- 工事の実施:3工法から建物に合った方法で施工(次章)。3点セットで長寿命化税制の要件を満たす設計に。
- 税の申告:工事完了後、3か月以内に税務課家屋係へ長寿命化税制の減額申告。
3から5の順番が特に大事です。認定を先に取っておくと、税制も融資も有利になります。「認定→工事→申告」の3点を、理事会のスケジュール表に並べて書いておいてください。
大規模修繕のコストは「工法選択」で下げられる
制度で負担を軽くしたら、次は工事そのもののコスト最適化です。ここが私たち明誠の本業であり、一番お力になれるところです。
大規模修繕というと「建物全体に足場を組む」のが当たり前と思われがちですが、実は方法は一つではありません。私たちは次の3つを、建物の形状・立地・予算に応じて使い分けてご提案しています。
| 工法 | 特徴 | 向いている建物 |
|---|---|---|
| 通常足場工法 | 従来型の仮設足場。面で作業でき、大規模な打診・補修に強い | 中低層、複雑な形状、全面改修 |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 産業用ロープで施工。足場費を削減し工期も短縮、居住者の生活影響が小さい | 高層、足場を組みにくい立地、部分補修・コスト最重視 |
| ハイブリッド工法 | 足場とロープアクセスを部位ごとに使い分け | 大規模・複雑物件で総合コストを最適化したいケース |
特にロープアクセス工法(足場を架けずロープで作業する無足場の工法)は、足場の設置・撤去費用が丸ごと不要になるため、条件が合えば工事費を大きく圧縮できます。鶴瀬駅やみずほ台駅の周辺のように、隣地との距離が近く足場を組みにくい立地では、この方法が効きやすいのです。窓を塞がないので居住者の暮らしへの影響も小さく済みます。「ロープでの作業だと品質が落ちるのでは」とよく聞かれますが、打診・補修・塗装の一つひとつは足場作業と同じ基準で行いますので、品質は変わりません。詳しくはロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。
私はこの3工法を、ワンセットで比較してご提案するようにしています。1社が1つの工法しか持たないと、その工法に合わせた見積もりしか出せません。私たちは3つの引き出しから、建物にとって一番安く・一番負担の少ない組み合わせを選べる。これが、富士見市のマンションで効く、実質的なコストダウンです。大規模修繕工事のご紹介もあわせてご確認ください。
モデルケースで具体的にイメージする
数字だけだと実感が湧きにくいので、富士見市で想定される2つのケースで考えてみます(いずれも一般的な想定に基づく試算で、実際の金額は建物により異なります)。
ケースA:鶴瀬駅近く・築28年・10階建て・40戸・新耐震
2回目の大規模修繕を計画。通常足場で見積もると約8,000万円のところ、隣地が迫る面はロープアクセス、開けた面は足場というハイブリッド工法に切り替え、約7,000万円まで圧縮できたと仮定すると、差額は約1,000万円・率にして約13%の削減です。新耐震なので耐震改修補助の対象にはなりませんが、管理計画の認定を取ったうえで屋根防水・床防水・外壁塗装等の3点セットを行い、長寿命化税制で翌年度の固定資産税を3分の1減額。省エネ設備を組み合わせれば、さらに上乗せの効果が見込めます。
ケースB:みずほ台・築42年・5階建て・24戸・旧耐震
積立金が心もとなく、合意形成も難航しがち。まず耐震診断補助(戸数×3万円・上限150万円)で建物の弱点を把握し、耐震改修促進法25条の認定で決議要件を各過半数に緩和して総会を通す。改修は富士見市の耐震改修補助(戸数×50万円・上限2,500万円)を活用しつつ、工事はロープアクセス中心で足場費を抑え、不足分は住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資でまかなう。補助金・法律・工法・融資の合わせ技で、旧耐震でも前に進められます。
積立金が足りないとき、打てる手は4つ
2回目以降の修繕でよく出るのが「積立金が足りない」問題です。打ち手は大きく4つあります。第一に、修繕積立金の段階的な引上げ(認定・税制要件にもつながる)。第二に、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資による借入(認定で金利引下げ)。第三に、工法の見直しによる工事費そのものの圧縮。第四に、長期修繕計画の周期・仕様の適正化で「過剰な工事」を削ること。私の経験上、いきなり一時金を集めようとすると総会でもめます。まずは工事費を下げ、次に借入で平準化し、それでも足りない分だけを積立金で埋める——この順が、住民の納得を得やすいです。
総会を通す「合意形成」のコツ、現場からの3点
どんなに良い制度と工法を組んでも、総会で決議が通らなければ工事は1ミリも進みません。私が現場で20年見てきて、合意形成でつまずく理事会には共通点があります。逆に言えば、次の3点を押さえた理事会は、驚くほどスムーズに前へ進みます。
第一に、「数字は戸あたりに翻訳する」ことです。「工事総額7,000万円」と言われても、住民の財布感覚には届きません。「1戸あたり月いくらの積立で、何年で回収できる」と、自分の家計に落とし込んだ数字に翻訳して初めて、人は納得します。40戸のマンションなら、総額を40で割った数字が住民一人ひとりの「自分ごと」の入口になります。
第二に、「反対意見を先に潰さず、先に拾う」ことです。総会でいきなり賛否を問うと、不意を突かれた住民は防衛的になって反対に回りがちです。総会の前に説明会やアンケートを挟み、反対や不安を「事前に」テーブルに載せてしまえば、総会当日は淡々と決を採るだけになります。ここで先ほどの埼玉県のアドバイザー派遣を使い、第三者のマンション管理士に説明会へ同席してもらうのも有効です。
第三に、「工法の選択肢を見せる」ことです。「足場を組んで何千万円です」と一択で出されると、住民は高いか安いか判断できません。通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3案を並べ、それぞれの金額・工期・生活への影響を表で見せる。選択肢があると、住民は「自分たちで選んだ」という当事者意識を持てます。一択で押し切るより、結果的に決議が通りやすい、というのが現場の実感です。
いま動くべき理由——「あと1年」が命取りになる
「まだ数年は先でいい」——このお気持ちはよく分かります。ですが、大規模修繕を先延ばしにすると、静かに、しかし確実にコストが膨らみます。
外壁のひび割れを放置すると、そこから雨水が入り、鉄筋が錆びて膨張し、コンクリートを内側から押し割る「爆裂」という現象が起きます。私が現場で一番見たくないのがこれです。ひび割れのうちに補修すれば数万円で済んだものが、爆裂まで進むとコンクリートのはつり・鉄筋の防錆・断面修復と、桁が一つ増える工事になります。建物は待ってくれません。
補助金や税制の側にも「時間切れ」があります。省エネ補助は予算枠に達し次第、年度の途中でも受付終了。耐震補助の受付にも期限があり、令和8年12月28日までと公表されています。長寿命化税制も、要件を満たす工事を対象期間内に完了しなければ使えません。認定の取得や積立金の引上げ決議のように、「工事の何年も前」に手を打っておくべきものもあります。制度は、動き出した理事会にだけ味方します。
だからこそ、まだ計画段階の今が一番おいしいタイミングです。使える制度も、選べる工法も、いま最大限に残っています。理事会で1分だけでも、「うちは富士見市でどんな制度が使えるのか、一度調べてみないか」という話題を出してみてください。その一言が、数百万円の差を生むことがあります。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 富士見市には大規模修繕の工事費そのものへの補助はありますか?
旧耐震(昭和56年5月以前)のマンションであれば、耐震改修工事補助が使えます。分譲マンションは工事費の3分の1以内・戸数×50万円(上限2,500万円)が対象です。新耐震のマンションはこの補助の対象外ですが、管理計画認定・長寿命化税制・国の融資などの合わせ技で実質負担を軽くできます。
Q2. うちはRC造のマンションですが、耐震診断や改修の補助は本当に使えますか?
昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた分譲マンションであれば使えます。診断は費用の3分の2以内・戸数×3万円(上限150万円)、改修工事は費用の3分の1以内・戸数×50万円(上限2,500万円)です。いずれも管理組合等の決議が必要で、交付決定の通知を受ける前に契約してはいけません。
Q3. 管理計画認定は富士見市で申請できますか?実績はありますか?
できます。富士見市はマンション管理適正化推進計画を策定済みで、すでにシアンズ鶴瀬など複数のマンションが認定を取得しています。手続きはマンション管理センターの支援サービスで事前確認(適合証)を受けてから市へ申請します。
Q4. 長寿命化税制の減額は何分の1ですか?
1戸あたりの住宅部分の床面積が100平方メートル以下の場合、固定資産税額の3分の1です。築20年以上・10戸以上・管理計画の認定取得・2回目以降の工事完了などの要件があります。市のページの対象期間の記載は最新でない可能性があるため、税務課家屋係(049-252-7117)に必ず確認してください。
Q5. アドバイザー派遣は無料ですか?
埼玉県の分譲マンション管理適正化支援事業により、マンション管理士が2回まで無料で現地派遣されます。問い合わせは埼玉県住宅課(048-830-5573)または住まい相談プラザ(048-658-3017)へ。
Q6. 旧耐震で不安ですが、何から始めればいいですか?
まず建築指導課(049-252-7127)に電話し、自分たちの建物が補助対象かを確認しましょう。耐震診断補助で弱点を把握し、必要なら耐震改修促進法25条の認定で決議要件を緩和、改修補助で工事費を抑える、という順が現実的です。
Q7. ロープアクセスだと本当に安くなりますか?
足場の設置・撤去費が不要になるため、条件が合えば大きく圧縮できます。ただし全面改修など足場が有利な工事もあるので、建物ごとの比較が前提です。私たちは3工法を並べて比較提案します。
Q8. 省エネ設備の補助はマンションでも使えますか?
富士見市の家庭向け補助は集合住宅も対象と明記され、他の補助金との併用制限もありません。ただし共用部で管理組合名義で使えるかは運用によりますので、環境課(049-252-7129)へ事前確認してください。
建設業者どうしの支え合いも、この街の力になる
最後に一つ。私たちは大規模修繕の施工会社であると同時に、JCSA(一般社団法人全国建設業支援協会)を運営し、全国の建設業者向けに経営支援の情報発信やオンラインセミナー、交流会、ビジネスマッチングを行っています。地域の工事は、地域の職人と会社が元気でこそ成り立ちます。富士見市を含む埼玉県南部の建物を長く守っていくために、業界の横のつながりも大切にしています。
まとめ:富士見市は「耐震改修補助×認定」で勝つ街
富士見市は、耐震について「診断」だけでなく「改修工事」にも補助を出す、数少ない街です。旧耐震マンションなら診断(戸数×3万円)・改修(戸数×50万円)の補助が使え、そこに管理計画認定、長寿命化税制(1/3減額)、埼玉県のアドバイザー無料派遣、省エネ設備補助、国の融資、そして工法選択によるコストダウンを重ねれば、実質的な負担はしっかり軽くできます。まず動くべきは、建築指導課建築指導・住宅グループ(049-252-7127)への1本の電話です。
私たち明誠は、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つの工法から、富士見市の建物に一番合った方法をご提案できる、数少ない会社です。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理や、補助金・認定と工事の時期合わせだけでも、お力になれることがあります。まずはお問合せフォームから、気軽にご連絡ください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 富士見市「耐震診断・耐震改修工事に補助金を交付します」
- 富士見市「マンション管理適正化推進計画」
- 富士見市「長寿命化に資する大規模の修繕等が行われたマンションに対する固定資産税の減額措置について」
- 富士見市「分譲マンションの管理などでお困りのときは」
- 富士見市「地球温暖化防止活動支援補助金(再生可能エネルギー機器等設置)」
- 富士見市「住宅リフォーム補助金制度について」
- 国土交通省「住宅:管理計画認定制度」
本記事は2026年7月時点で公表されている情報をもとに作成しています。補助金・税制・融資は年度ごとに要件や予算が変わります。特に長寿命化税制の対象期間や各補助の受付状況は変動しますので、申請前に各担当窓口で最新情報をご確認ください。


