大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

遮熱塗料は本当に効くのか──2026年の記録的猛暑と大規模修繕|JIS K 5675で見抜く屋上・屋根の選び方

2026年8月17日 更新

この記事で答える質問:遮熱塗料(高日射反射率塗料)は、マンションやビル、ホテルの大規模修繕で本当に費用に見合う効果があるのか? あるとしたら、どこに、どんな仕様で塗るべきなのか?

こんにちは。株式会社明誠の本間です。

この夏、私のところに理事長さまやビルオーナーさまから同じ質問が続いています。「最上階の住戸から暑いと苦情が出ている」「屋上の防水がもう限界だが、どうせやるなら遮熱にしたほうがいいのか」「遮熱塗料は高いだけで効かないと聞いたが本当か」。

正直に申し上げます。遮熱塗料は「効きます」。ただし、効く場所と効かない場所がはっきり分かれる材料です。そして残念なことに、効かない場所に効かない仕様で塗られている現場を、私は現場で20年近くやってきて何度も見てきました。

この記事では、2026年の記録的な暑さという事実から出発して、遮熱塗料の仕組み、品質を見抜くための日本産業規格(JIS)の読み方、塗る優先順位、費用の考え方、そして稼働中の建物で工期と費用を抑える工法選択まで、発注する側の立場で整理します。


1. 結論:遮熱塗料は効く。ただし「効くのは屋根面と最上階」で、性能は色と規格で決まる

ここからが本題です。長い記事になりますので、先に結論だけお伝えします。

1-1. 3行でわかる結論

  1. 効果が最も大きいのは「陸屋根・屋上・金属屋根」への施工。外壁への施工は効果が小さくなる(太陽が真上から当たる面ほど効く)。
  2. 性能の裏付けは「JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料」。カタログでこの規格適合と、近赤外波長域日射反射率の数値を確認する。
  3. 効果は「最上階の室温」と「屋上防水層の延命」に現れる。建物全体の電気代が劇的に下がるという期待の仕方は避けたほうが安全。

1-2. 数字で見る効果のレンジ

環境省や自治体、研究機関の実証で報告されている効果の目安を整理します。数値は施工条件・気象条件で大きく変わるため、あくまで「レンジ」としてご覧ください。

測定対象 報告されている低減幅の目安 補足
屋根・屋上の表面温度 約10〜20℃程度の低下報告あり 夏季日中のピーク時。色(明度)で大きく変わる
直下階(最上階)の室温 約1〜1.5℃程度の低減報告あり 断熱材の有無で結果が変わる
夜間の室温 深夜帯にも約1℃程度の低減報告あり 屋上スラブへの蓄熱抑制による

(出典:環境省ヒートアイランド対策大綱、国立環境研究所 環境展望台ヒートアイランド対策技術、国土交通省ヒートアイランド対策

表面温度が10℃以上下がるというのは、かなり大きな数字です。しかし室温は1℃台。この「差」に、遮熱塗料をめぐる誤解のほとんどが詰まっています。理由は後ほど説明します。

1-3. 「効かなかった」と言われる典型的な3つのケース

私が相談を受けて調べたとき、期待外れに終わっていた現場には共通点がありました。

  • ケースA:外壁だけに塗った……垂直面は太陽光の入射角が浅く、屋根面ほど熱を受けません。効果が小さいのは当然です。
  • ケースB:濃い色を選んだ……遮熱塗料でも、明度が低い(濃い)色は反射できる量が構造的に限られます。
  • ケースC:JIS適合品でない「遮熱をうたう塗料」を使った……「遮熱」という言葉自体には法的な定義がありません。ここが最大の落とし穴です。

この3つを避けるだけで、遮熱塗料に対する満足度はかなり変わります。


2. なぜ今年これを考えるべきなのか──2026年の暑さは「統計に残るレベル」

「今年はたまたま暑いだけでは」と言われることがあります。データはそう言っていません。

2-1. 2026年7月:統計開始以来の高温

気象庁は2026年8月3日、2026年7月中旬から下旬にかけての顕著な高温について報道発表を行っています。西日本では7月中旬・下旬の平均気温が、統計を開始した1946年以降で最も高い記録となりました。日最高気温40℃以上を観測した延べ地点数も、8月上旬の時点で前年を上回る水準に達しています。

気象庁は要因として、上層のジェット気流が平年より北を流れたこと、西日本上空でチベット高気圧が強まったこと、太平洋高気圧の縁辺から暖かい空気が流れ込んだこと、そして地球温暖化に伴う長期的な気温上昇の寄与を挙げています(出典:気象庁2026年7月中旬~下旬の顕著な高温と今後の見通しについて)。

2-2. 2025年夏も過去最高だった

前年の2025年についても、気象庁は6〜8月の全国平均気温が平年より2.36℃高く、1898年の統計開始以降で最も高い夏だったと発表しています。群馬県伊勢崎市では国内歴代最高となる41.8℃が観測されました(出典:環境省 脱炭素ポータル2025年夏の記録的高温の要因とは)。

つまり、2年連続で「過去最高」が更新されています。私はこれを、建物側の設計思想を見直す合図だと受け止めています。

2-3. 建物側で何が起きているか

暑さは、居住者の快適性の問題であると同時に、建物の耐久性の問題でもあります。

現象 建物への影響
屋上防水層の表面温度上昇 塩化ビニル系・ウレタン系の防水層は熱で劣化が進み、想定より早く更新時期が来る
昼夜の温度差による伸縮 シーリング材の切れ、防水層の膨れ・シワの発生
最上階の室温上昇 賃貸物件では退去要因、分譲では住民不満・理事会案件化
空調負荷の増大 ホテル・テナントビルでは共用部を含めた運営コストに直結

賃貸マンションやホテルを運営されているオーナーさまにとって、最上階の暑さは「クレーム」ではなく「稼働率」の話です。私はいつも、そこを起点に整理することをお勧めしています。


3. 遮熱塗料の仕組み──「断熱」との違いを1分で

専門用語が続くので、ここで一度整理します。

3-1. 反射しているのは「近赤外線」

太陽光のエネルギーは、大きく分けて紫外線・可視光線・近赤外線から成り立っています。このうち熱として建物を温める主犯は近赤外線です。

遮熱塗料(正式には高日射反射率塗料)は、この近赤外線を効率よく反射する特殊な顔料を含んでいます。反射してしまえば、そのぶん屋根が受け取る熱量が減る──これが原理のすべてです。

一般社団法人 日本塗料工業会も、高日射反射率塗料を「太陽光に含まれる近赤外線成分をより多く反射させる性能を持つ塗料」と説明しています(出典:日本塗料工業会高日射反射率塗料)。

3-2. 遮熱・断熱・断熱材の違い

現場でも混同されがちなので、表にしました。

種類 何をするか 主な効果 冬はどうか
遮熱塗料(高日射反射率塗料) 日射(近赤外線)を反射する 夏の屋根面の温度上昇を抑える 日射熱も反射するため、冬の日射取得はわずかに減る
断熱塗料 塗膜自体の熱伝導を下げる(中空ビーズ等) 熱の伝わりを遅らせる 夏冬とも作用するが、塗膜厚が薄いため効果は限定的
断熱材(工事) 屋上に断熱層を新設・増設する 効果は最も大きい 通年で効く。ただし費用と工期は最も大きい

遮熱塗料は「安価で施工性の良い一次対策」、断熱改修は「本格対策」。この位置づけを間違えなければ、期待値のズレは起きません。

3-3. 「表面温度は15℃下がるのに室温は1℃」の理由

先ほどの数字の謎に戻ります。

屋根の表面温度が下がっても、その熱が室内に伝わる経路には、屋根スラブのコンクリート、断熱材、天井裏の空気層という何段もの抵抗があります。遮熱塗料が減らしているのは「入口で受け取る熱量」であって、室内温度はその何段も先の結果です。

したがって、こう考えるのが実務的です。

  • すでに屋上に十分な断熱材がある建物 → 室温への効果は小さい。狙いは防水層の延命に絞る。
  • 断熱材が薄い・ない旧耐震世代の建物や、金属屋根の建物 → 室温への効果が体感レベルで出やすい。

私は現地調査のとき、まず竣工図で屋上の断熱仕様を確認します。ここを見ずに「遮熱にしましょう」と言う業者がいたら、その提案は一度立ち止まって検討されたほうがよいと思います。


4. 品質を見抜く唯一の物差し──JIS K 5675 の読み方

ここが、この記事で最もお伝えしたい部分です。

4-1. 「遮熱塗料」という言葉に定義はない

驚かれるかもしれませんが、「遮熱塗料」という商品名・呼称そのものには法的な性能基準がありません。極端に言えば、性能の低い塗料でも「遮熱」と名乗ることは可能です。

これに対して、日本産業規格には明確な物差しがあります。それが JIS K 5675「屋根用高日射反射率塗料」 です。

この規格は、建築物の屋根・屋上の塗装に用いる自然乾燥形の高日射反射率塗料について、日射反射率、近赤外波長域日射反射率、日射反射率保持率などの試験方法と品質基準を定めたものです(出典:一般財団法人 建材試験センターJIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料)。

4-2. 見るべき数値は「近赤外波長域日射反射率」

国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)でも、高日射反射率塗料の判断基準としてこの数値が採用されています。基準は塗料の明度L*値によって変わります。

明度L*値 求められる近赤外波長域日射反射率
40.0以下(濃い色) 40.0%以上
40.0超〜80.0未満 明度L*値と同じ数値以上
80.0以上(明るい色) 80.0%以上

(出典:日本塗料工業会高日射反射率塗料

この表が意味しているのは、色を濃くするほど、規格上求められる反射率も下がるということです。裏を返せば、濃い色を選んだ時点で、得られる遮熱効果には上限がかかります。

「屋上をダークグレーにしたいが遮熱もほしい」というご要望はよくいただきます。私はそのとき、必ず数字でトレードオフをお見せするようにしています。デザインを取るのか、性能を取るのか。決めるのは発注者であるべきで、業者が黙って決めていい話ではありません。

4-3. 見落とされがちな「日射反射率保持率」

もう一つ、私が見積比較のときに必ず確認する項目があります。日射反射率保持率です。

新品のときに反射率が高くても、汚れや紫外線で塗膜が劣化すれば、反射性能は落ちていきます。グリーン購入法の判断基準では、近赤外波長域の日射反射率保持率の平均が80%以上であることが求められており、その算出には屋外暴露耐候性試験の開始から24か月経過後の測定が必要とされています(出典:日本塗料工業会高日射反射率塗料)。

つまり、2年経ってもどれだけ性能が残っているかが規格化されているということです。カタログの「新品時の反射率」だけを比べると、この差が見えません。

4-4. 発注時に必ず求める3つの書類

まとめると、以下の3点を業者に求めれば、品質の見極めはかなり楽になります。

  1. JIS K 5675 適合の有無(適合していない場合、その理由)
  2. 採用色の明度L*値と、近赤外波長域日射反射率の実数値
  3. 日射反射率保持率のデータ(屋外暴露試験に基づくもの)

「出せません」と言われたら、その塗料の性能は検証できないということです。判断材料としては、それ自体が十分な情報になります。


5. どこに塗ると効くのか──優先順位は「上から」

限られた予算をどこに配分するか。これは工法選定と同じくらい重要な判断です。

5-1. 費用対効果の優先順位

順位 施工部位 効果の出やすさ 補足
1 陸屋根・屋上(防水層のトップコート) 太陽が真上から当たる。面積も広い
2 金属屋根(折板屋根・瓦棒屋根) 断熱層が薄いことが多く、直下階への効果が大きい
3 勾配屋根(スレート・瓦) 最上階への効果が期待できる
4 西面・南面の外壁 入射角が浅く、効果は限定的
5 北面の外壁 × 直射日光がほぼ当たらず、費用対効果は乏しい

「外壁を全面遮熱にしましょう」という提案を受けたら、その根拠を尋ねてみてください。面積が増えれば金額も増えますが、効果は面積に比例しません。

5-2. マンション・ビルの陸屋根は「防水改修とセット」が基本

分譲マンションや賃貸マンション、テナントビルの多くは陸屋根です。ここで大事なのは、遮熱塗料を単独の工事として発注しないことです。

理由は3つあります。

  • 屋上に上がるための仮設・安全設備の費用が二重にかかる
  • 防水層が劣化していれば、その上に遮熱塗料を塗っても寿命は防水層に引きずられる
  • 防水改修のトップコートを遮熱仕様にすれば、追加費用は差額だけで済む

長期修繕計画で屋上防水の改修時期が近づいているなら、そのタイミングで遮熱トップコートを選ぶ。これが最も無駄がありません。私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。

なお、JIS K 5675 は「防水層のトップコート」そのものを対象外としている点には注意が必要です。防水材メーカーが供給する遮熱トップコートについては、そのメーカーが公表する反射率データで判断することになります。

5-3. ホテル・工場・倉庫の金属屋根は効果が出やすい

一方、ホテルの別棟、工場、倉庫、商業施設のような金属屋根(折板屋根)の建物は、遮熱塗料の効果がはっきり出やすい類型です。金属は熱伝導率が高く、断熱層も薄いことが多いためです。

ホテルの客室階最上部や、テナントビルの最上階オフィスで「夏だけ空調が効かない」という声が出ている場合、屋根面の対策は検討する価値が高いと考えています。

5-4. 外壁に塗る価値がまったくないわけではない

誤解のないよう補足します。外壁への遮熱塗装は、効果が屋根より小さいというだけで、ゼロではありません。特に西日を強く受ける面や、隣接建物からの照り返しを受ける面では意味があります。

ただし、外壁については遮熱よりも先に検討すべきことがあります。ひび割れ(クラック)の処理とシーリングの打ち替えです。防水性能が落ちている外壁に遮熱塗料を塗っても、建物の資産価値を守ることにはつながりません。優先順位を間違えないことが肝心です。

大規模修繕全体の考え方については、大規模修繕工事のご紹介でも整理していますので、あわせてご覧ください。修繕の優先順位が資産価値にどう跳ね返るかについては、関連記事「築40年マンションの資産価値|修繕で差がつく3つの判断軸」でも詳しく書いています。


6. 費用と回収──「電気代で元が取れます」とは申し上げません

ここは慎重にお話しします。

6-1. 見るべきは「総額」ではなく「差額」

遮熱塗料は、同グレードの一般的な塗料と比べて材料費が高くなります。ただし、屋上防水や屋根塗装をどのみち実施するのであれば、比較すべきは工事総額ではなく、遮熱仕様にしたことによる差額です。

比較の仕方 判断への影響
工事総額どうしを比べる 遮熱が高く見え、判断を誤りやすい
仕様変更の差額で比べる 実態に即した判断ができる

理事会や取締役会に諮るときも、この整理で出したほうが議論が早く進みます。

6-2. 「何年で回収」の話をするなら、順序を守る

省エネ効果による電気代削減額は、建物の断熱仕様、空調機の効率、稼働時間、契約電力、そしてその年の気象によって大きく変わります。したがって、特定の回収年数を言い切ることはできません

私が理事会でお伝えしているのは、この順序です。

  1. 一次的な便益:屋上防水層の熱劣化を抑え、更新周期を延ばせる可能性がある
  2. 二次的な便益:最上階の居住環境が改善し、賃貸なら退去抑制、分譲なら住民満足につながる
  3. 三次的な便益:空調負荷の低減による電気代の抑制(数値は建物ごとに検証が必要)

3番目を1番目に持ってくる提案書を見たら、私は少し警戒します。検証しにくい数字を先頭に置くのは、誠実なやり方ではないと思うからです。

6-3. 数字を「戸あたり」に直す

50戸のマンションで、屋上防水のトップコートを遮熱仕様に変更した場合の差額が仮に100万円だとします。これを戸あたりに直せば2万円です。12年周期の大規模修繕で考えれば、1戸あたり月あたり約139円という計算になります。

金額の大小の感じ方は人それぞれですが、この単位に直すと総会での説明がぐっと通りやすくなります。私はいつも理事長さまに、「総額のままでは可決しにくいので、戸あたり・月あたりに直しましょう」とお伝えしています。


7. 足場か、ロープアクセスか──猛暑期の工事では工法選択が効いてくる

屋上や屋根に塗る、という話をしてきましたが、そこにどうやって職人が到達するかで、費用も工期も変わります。

7-1. 3つの工法の比較

工法 仮設費 工期 居住者・利用者への影響 向いているケース
通常足場工法 大(工事費の2〜3割を占めることが多い) 長い 大(バルコニー使用制限、防犯上の懸念、日照・通風の悪化) 外壁全面の打診・補修を伴う中低層、複雑形状
ロープアクセス工法(無足場工法) 短い 小(作業日のみ・部分的) 高層、足場架設が困難な立地、屋上・外壁の部分改修
ハイブリッド工法 部位ごとに条件が違う大規模・複雑物件

株式会社明誠は、この3つの工法をすべて自社で提案できる、日本でも数少ない改修会社です。詳しくはロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。ロープアクセス工法の技術的な背景や一般的な安全基準については、姉妹サイトロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

7-2. 稼働中のホテル・テナントビルでの現実

私が最も強く工法選択の価値を感じるのは、営業しながら工事をしなければならない建物です。

ホテルであれば、足場が組まれた期間中の客室単価と稼働率がどうなるか。テナントビルであれば、テナントさまからの賃料減額交渉が発生しないか。オーナーさまにとっては、工事費そのものより、工事期間中の逸失利益のほうが大きな金額になることさえあります。

ロープアクセス工法であれば、足場を組まずに屋上・外壁の必要な範囲だけを施工できます。バルコニーが長期間ふさがれることもありません。ここは、居住者さま・利用者さまへの説明のしやすさという点でも大きな違いになります。

7-3. 猛暑期の施工で私が一番気にしていること

ここは現場の話をさせてください。

夏の陸屋根は、下地の表面温度が60℃を超えることが珍しくありません。塗料には適正な塗装環境(気温・湿度・下地温度)があり、下地が高温すぎると、塗膜が乾く前に溶剤が急激に揮発してピンホールや膨れの原因になります。

私が現場で20年やってきて一番悔しい思いをするのは、材料も工法も正しいのに、施工時間帯の選び方だけで仕上がりが落ちるケースです。だからこそ夏場は、午前中の早い時間帯に屋根面を進める、日中は日陰側の外壁に人員を振り分ける、といった段取りを組みます。

そしてこれは職人の安全にも直結します。令和7年(2025年)6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、事業者には熱中症の自覚症状がある作業者等を把握するための報告体制の整備悪化防止のための措置の手順作成関係作業者への周知が義務づけられました。対象となるのは、WBGT値28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施することが見込まれる作業です(出典:厚生労働省職場における熱中症対策の強化について)。

夏の陸屋根はまさにこの条件に該当します。工期の話をする前に、この体制が組めているかどうか。発注者側からも一度お確かめいただきたい点です。

「工期を1週間縮められます」という提案が、実は職人に無理をさせる前提で組まれていないか。発注者としてそこを一言確認いただけると、現場は本当に助かります。


8. 2026年度に押さえておきたい公的支援

制度は年度ごとに変わります。ここでは2026年8月時点で確認できる情報を整理しますが、申請前には必ず公式サイトで最新情報をご確認ください

8-1. 国:マンションストック長寿命化等モデル事業(令和8年度)

国土交通省は、高経年マンションの再生検討から長寿命化に資する先導的なプロジェクトを公募する「マンションストック長寿命化等モデル事業」を令和8年度も実施しています。令和8年度の提案受付は3回に分けて設定されており、第3回募集は令和8年9月14日(月)から9月18日(金)、採択公表は11月を目途とされています(出典:国土交通省「マンションストック長寿命化等モデル事業」を実施します!~令和8年度提案募集のお知らせ~)。

先導性が求められる事業のため、通常の大規模修繕がそのまま対象になるわけではありません。長寿命化・省エネ性能向上といった要素をどう組み込むかが鍵になります。

8-2. 自治体:遮熱塗装を対象とする助成制度

東京都内をはじめとする多くの自治体で、住宅リフォームや省エネ改修に対する助成制度が設けられており、その要件として遮熱塗料など高機能塗料の使用を求めるケースが増えています。反射率の証明書類の提出を求める自治体もあります。

ただし、以下の点にご注意ください。

  • 金額・要件・受付期間は自治体ごとに大きく異なる
  • 分譲マンションの共用部が対象か、賃貸物件のオーナーが申請できるかは制度による
  • 予算枠に達した時点で受付終了となる制度が多い

「うちの区にも同じ制度がある」と決めつけず、必ず当該自治体の公式ページ(lg.jpドメイン)でご確認ください。

8-3. 申請でつまずかないための3つの注意

  1. 契約前・着工前の申請が原則。工事を始めてしまうと対象外になる制度がほとんどです。
  2. 見積書の書き方が問われる。遮熱塗装部分の金額が分離して記載されている必要がある場合があります。
  3. 管理組合の議決が必要。総会・理事会のスケジュールと申請期限が合うか、逆算して確認します。

3番目が理由で間に合わなかった管理組合を、私は何度も見てきました。制度を調べるより先に、総会の日程を確認する。これが実務上いちばん確実な順序です。

なお、修繕を先送りしたときに費用がどう膨らむかについては、関連記事「大規模修繕の先送りが招く費用増|首都高110億円の教訓」で数字を挙げて整理しています。


9. 発注前チェックリスト(12項目)

最後に、実際に見積を取るときにお使いいただける形にまとめます。

9-1. 仕様書で確認する(性能)

  • [ ] JIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)に適合しているか
  • [ ] 採用色の明度L*値と近赤外波長域日射反射率の実数値が明記されているか
  • [ ] 日射反射率保持率のデータが提示されているか
  • [ ] 防水層のトップコートの場合、防水材メーカーの適合仕様になっているか

9-2. 見積書で確認する(費用)

  • [ ] 一般仕様と遮熱仕様の差額が分かる形になっているか
  • [ ] 下地調整・高圧洗浄・下塗りの回数が明記されているか
  • [ ] 仮設費(足場かロープアクセスか)が別建てで示されているか
  • [ ] 助成金申請に必要な内訳表記になっているか

9-3. 施工中に確認する(品質)

  • [ ] 施工時の気温・湿度・下地温度の記録が残されているか
  • [ ] 使用材料の出荷証明・ロット番号が提出されるか
  • [ ] 各工程の写真(着手前・下地・中塗り・上塗り・完了)が撮られているか
  • [ ] 猛暑期の作業時間帯と熱中症対策の計画が示されているか

このチェックリストをそのまま業者にお渡しいただいても構いません。誠実な会社であれば、むしろ話が早くなって喜ぶはずです。


よくある質問(FAQ)

Q1. 遮熱塗料は本当に効果があるのですか?
A. 屋根・屋上の表面温度については、環境省や研究機関の資料で約10〜20℃程度の低下報告があり、効果は確認されています。ただし室内温度への効果は約1〜1.5℃程度と報告されており、屋上の断熱仕様によって差が出ます。詳しくは本文の「1. 結論」をご覧ください。

Q2. 遮熱塗料と断熱塗料は何が違いますか?
A. 遮熱塗料は日射(近赤外線)を反射して熱の入口を減らす材料、断熱塗料は塗膜自体の熱伝導を下げる材料です。夏の屋根対策としては遮熱、通年の効果を求めるなら断熱材の改修が基本になります。

Q3. 品質の良し悪しはどこで見分けられますか?
A. JIS K 5675「屋根用高日射反射率塗料」への適合と、近赤外波長域日射反射率日射反射率保持率の3点です。グリーン購入法の判断基準では保持率の平均80%以上が求められています(出典:日本塗料工業会)。

Q4. 濃い色でも遮熱効果はありますか?
A. あります。ただし明度L*値が40.0以下の場合、規格上求められる近赤外波長域日射反射率は40.0%以上と、明るい色(80.0%以上)より低い水準になります。デザインと性能はトレードオフになるとお考えください。

Q5. 大規模修繕とは別に、遮熱塗装だけ先に実施すべきですか?
A. 屋上防水の改修時期が近いのであれば、同時実施をお勧めします。仮設費が二重にかからず、追加は仕様の差額だけで済むためです。ただし雨漏りが発生している場合など、緊急性のある事象は先行して対処すべきケースもあります。


この記事のポイントまとめ

  • 遮熱塗料が最も効くのは屋上・金属屋根。外壁単独施工は効果が限定的
  • 表面温度は約10〜20℃低下報告、室温は約1〜1.5℃低下報告と差がある
  • 品質判定の物差しはJIS K 5675と近赤外波長域日射反射率、日射反射率保持率
  • 明度が低い(濃い)色ほど、規格上の反射率要求も下がるトレードオフがある
  • 屋上防水の改修と同時実施すれば、追加費用は仕様の差額のみで済む
  • 2026年7月は西日本で1946年統計開始以降最も高い平均気温を記録
  • 稼働中のホテル・ビルではロープアクセス工法で仮設費と逸失利益を抑えられる

いま、屋上の防水がそろそろ更新時期という建物をお持ちの方は、次の大規模修繕の仕様書に「遮熱」の2文字を入れるかどうかを、今年のうちに検討する価値があると思います。工事の直前に決めようとすると、材料の選択肢も助成金のタイミングも狭まってしまうからです。

理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

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執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル・ホテルの大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がける改修会社。通常足場工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案します。日本初となるロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年8月17日

※本記事に記載した制度の内容・金額・期間は2026年8月17日時点で確認できた情報です。制度は変更される可能性がありますので、申請前に必ず各公式サイトで最新情報をご確認ください。


出典・参考資料

関連リソース