
海老名市で賃貸マンション、賃貸アパート、テナントビル、社宅・寮などの収益物件をお持ちのオーナーさまへ。2026年度(令和8年度)に「収益物件のオーナーが自分名義で申請できる」補助制度を、市・県・国の一次情報だけをもとに整理しました。
先に結論をお伝えします。海老名市は、賃貸オーナー本人(法人を含む)が申請者になれる市独自の補助制度を2本持っている、神奈川県内でも珍しい自治体です。多くの自治体の住宅系補助は「その住宅に居住していること」「住民登録があること」が要件になっていて、貸している物件では入口で弾かれます。海老名市の一般的なリフォーム補助も同じ構造です。
ところが海老名市には、それとは別枠でセーフティネット専用住宅への経済的支援制度があります。改修費を最大200万円まで、家賃を1戸あたり月4万円まで補助する制度で、申請者は「補助対象住宅の賃貸人又は所有者等」。つまり大家さんが主役の制度です。しかも2026年度は令和8年5月18日から受付が始まっています。
この記事では、海老名市の制度を「オーナーが使えるもの」と「使えないもの」に切り分け、県と国の本命制度(9月30日締切のものがあります)を加え、補助額の計算方法、10年間の管理義務というトレードオフ、そして受け取った後に必ず発生する税務の論点まで踏み込みます。最後に、海老名という市場で賃貸物件の外装をどう維持するか、工法選定でコストがどこまで動くかについても触れます。
この記事のポイントまとめ
- 【本命①】海老名市住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修費補助金は、補助対象者が「補助対象住宅の賃貸人又は所有者等」。補助額は補助対象経費の3分の2で、上限100万円(バリアフリー改修・耐震改修など特定の7工事を実施する場合は上限200万円)。省エネルギー改修工事(開口部・外壁・屋根・天井・床の断熱改修)も対象経費に入っています。
- 【本命②】海老名市住宅確保要配慮者専用賃貸住宅家賃低廉化補助金は、補助月額の上限が1戸あたり4万円。補助月額=本来の家賃-公営住宅並み家賃で計算し、管理月数を乗じます。空室期間は管理月数に含まれません。
- ただし改修費補助には「改修工事を行った後、少なくとも専用住宅として10年間管理すること」という重い条件が付きます。10年間の家賃設定の自由度と引き換えに補助を取る、という判断です。
- 【本命③】令和8年度 神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金は、申請できる者に「県内の賃貸共同住宅を所有する個人又は法人」が明記されています。太陽光は発電出力1kWあたり7万円、蓄電システムは1台あたり15万円。第2期は9月7日(月曜日)8時30分開始、9月30日(水曜日)締切、電子申請システムのみ・先着500件程度。
- 令和8年8月28日、県は「施工業者等による代行申請はできません」という注意喚起を追加しました。代行申請と判明した場合は不受理、受理後に判明した場合も交付されません。
- 【本命④】賃貸集合給湯省エネ2026事業(国)は、補助対象者が「賃貸集合住宅のオーナー等」。追い焚きなし5万円/台、追い焚きあり7万円/台が基本です。
- 【対象外】海老名市環境保全対策支援事業補助金(太陽光2万円/kW・上限20万円、蓄電池7万円など)は、令和8年8月25日に予算上限到達で受付終了しました。加えて「市内の自宅の場合は、そこに住民票を置くこと」が要件で、貸している住戸には使えません。
- 【対象外】海老名市住宅改修支援事業補助金(工事費の1/5・上限20万円)は、対象者が「申請日時点で当該住宅に居住し、引き続き10年以上居住する者」。オーナーの貸室は対象外です。
- 【対象外】海老名市住宅断熱改修促進事業補助金(最大50万円)は、対象住宅が戸建住宅または長屋住宅、店舗等併用住宅の住宅部分で、賃貸共同住宅は対象になりません。
- 補助金は受給時に雑収入(益金)として課税対象。修繕費か資本的支出かの判定で、初年度に落とせる損金額が大きく変わります。
- 海老名市の推計人口は142,244人、世帯数は64,949世帯(令和8年8月1日現在)。前月比で人口+61人、世帯+67世帯と、世帯数の伸びが人口の伸びを上回る単身・小世帯化が続いています。判断の物差しは補助額の大小ではなく、NOI(純営業収益=賃料収入から運営費を引いた利益)がいくら動くかです。
1. 結論:海老名市は「市に賃貸オーナー向けの窓口がある」珍しい自治体
海老名市で収益物件を所有するオーナーが、2026年度に自分名義で申請を検討できる制度を、実務上の優先順位で並べると次のようになります。
動くべき制度(4つ)
- 海老名市住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修費補助金(市)
→ 補助対象者は「補助対象住宅の賃貸人又は所有者等」。補助対象経費の2/3、上限100万円(特定工事を含む場合200万円)。令和8年5月18日9時から受付開始。 - 海老名市住宅確保要配慮者専用賃貸住宅家賃低廉化補助金(市)
→ 補助対象者は「市内のセーフティネット専用住宅の賃貸人」。補助月額の上限は1戸あたり4万円。 - 令和8年度 神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金(県)
→ 共同住宅枠で「県内の賃貸共同住宅を所有する個人又は法人」が申請者。太陽光7万円/kW、蓄電システム15万円/台。9月7日8時30分開始、9月30日締切、電子申請のみ先着500件程度。 - 賃貸集合給湯省エネ2026事業(国/資源エネルギー庁)
→ 補助対象者が「賃貸集合住宅のオーナー等」。従来型給湯器からエコジョーズ・エコフィールへの取替が対象。
諦めるべき制度(3つ)
- 海老名市環境保全対策支援事業補助金(住民票要件・令和8年8月25日受付終了)
- 海老名市住宅改修支援事業補助金(申請日時点で居住し、引き続き10年以上居住する者)
- 海老名市住宅断熱改修促進事業補助金(戸建住宅または長屋住宅・店舗等併用住宅の住宅部分)
この切り分けが、海老名市のオーナーにとって最初の分岐点です。リフォーム系のまとめサイトでよく見かける「海老名市で最大◯◯万円」といった見出しは、自宅所有者向けの制度を積み上げた数字であることがほとんどで、収益物件のオーナーがそのまま使えるものではありません。
そのうえで、海老名市の特徴をもう一度強調しておきます。神奈川県内の多くの自治体では「市の制度はオーナー全滅、県と国で取りにいく」という結論になりますが、海老名市は違います。市の住宅まちづくり課が所管するセーフティネット専用住宅の支援制度が、明確にオーナーを申請者として設計されています。制度の背景説明には、市自身の言葉でこう書かれています。
家賃滞納や近隣トラブルを懸念し、住宅確保要配慮者への貸し出しを躊躇う大家も少なくありません。そういった背景を踏まえて、大家の不安を解消し、かつインセンティブをもたらすことで、住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅として民間賃貸住宅ストックを有効活用する取り組みとして、当市ではセーフティネット専用住宅への経済的支援制度を始めました。
出典:海老名市「令和8年度『住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修費補助金』(セーフティネット専用住宅改修費用の補助)について」(2026年6月18日更新)
行政が「大家の不安を解消し、かつインセンティブをもたらす」と書いている制度は、そう多くありません。使うかどうかは別として、内容を知らずに素通りするのはもったいないというのが私の率直な感想です。
2. 【本命①】住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修費補助金 ── 補助対象者が「賃貸人又は所有者等」
海老名市の制度で、まず押さえていただきたいのがこれです。
2-1. 制度の骨格
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象者 | 補助対象住宅の賃貸人又は所有者等(共有名義の場合は共有者全員の同意を得ていること) |
| 補助額 | 補助対象経費の合算額の3分の2(千円未満切り捨て) |
| 補助上限 | 100万円(後掲の1〜7のいずれかの工事を実施する場合は上限200万円) |
| 受付開始 | 令和8年5月18日(月曜日)午前9時から |
| 交付申請の期限 | 対象工事の着手予定日の40日前、または着手予定日の属する年度の12月28日(休日の場合は直前の平日)のいずれか早い日 |
| 完了実績報告の期限 | 工事完了の日から起算して20日を経過した日、または交付決定を受けた日の属する年度の2月末日のいずれか早い日 |
| 窓口 | まちづくり部 住宅まちづくり課 住宅政策係 TEL 046-235-9606 |
出典:海老名市「令和8年度『住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修費補助金』」(2026年6月18日更新)
補助率3分の2という数字は、住宅系の補助制度としてはかなり高い部類です。300万円の改修工事なら200万円、150万円の工事なら100万円が補助される計算になります(上限の範囲内)。
2-2. 補助対象になる13の工事
要綱に列挙されている補助対象経費は次の13項目です。上限200万円が適用されるのは、このうち1〜7のいずれかを実施する場合です。
- バリアフリー改修工事(外構部分の改修工事を含む)
- 耐震改修工事
- 共同居住用住居に用途変更するための改修工事
- 間取り変更工事
- 子育て世帯対応改修工事
- 防火・消火対策工事
- 交流スペースを設置する改修工事
- 省エネルギー改修工事(開口部又は躯体(外壁、屋根、天井又は床)に係る断熱改修に限る)
- 安否確認のための設備の改修工事
- 防音・遮音工事
- 調査において居住のために最低限必要とする工事(従前賃貸住宅として使用されていたものを除き、かつ、3カ月以上空き家であったものに限る)
- 神奈川県居住支援協議会等が必要と認める改修工事(入居者の身体状況に応じて必要となる工事、ヒートショック対策工事など)
- 前各号の工事に係る調査設計計画(インスペクションを含む)
大規模修繕を検討しているオーナーの目線で見ると、8番の省エネルギー改修工事が重要です。外壁・屋根の断熱改修が明記されているため、外装改修の内容次第では対象になり得ます。ただし「断熱改修に限る」という限定が付いていますので、通常の外壁塗装や防水改修がそのまま対象になるわけではありません。この線引きは必ず事前に市の窓口で確認してください。
また、2番の耐震改修工事、1番のバリアフリー改修工事は、それ自体が上限200万円を引き上げるトリガーになります。築年数の古い賃貸マンション・アパートで耐震補強を検討していた物件なら、この制度との相性は良いといえます。
2-3. 最大の論点は「10年間の管理義務」
この制度には、補助を受ける代償として重い条件が付いています。
改修工事を行った後、少なくとも、専用住宅として10年間管理すること。
「専用住宅」とは、住宅確保要配慮者(低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯など)専用として神奈川県に登録する住宅のことです。入居者は住宅確保要配慮者に限られ、入居世帯(被災者世帯を除く)の収入が38万7千円以下であることが求められます。
つまり、10年間にわたって入居者ターゲットを絞るという契約を市と結ぶことになります。これはNOIに直接効いてくる話なので、補助額だけを見て飛びつく判断は危険です。
ただし要綱には例外規定が置かれていて、次のア〜ウをすべて満たす場合は、10年間の専用住宅管理義務が緩和されます。
- ア 改修工事を行った後、専用住宅として管理を開始し、最初の入居者は住宅確保要配慮者とすること
- イ 管理開始から10年間は、入居者が退去した場合には、次の入居者は住宅確保要配慮者を募集することとし、不動産ポータルサイトに掲載して募集したものの、2カ月以上入居がない場合であること
- ウ イにおいて住宅確保要配慮者以外の者を入居させた場合においても、改修費補助金による改修工事の完了の日から10年間は、登録住宅として管理すること
実務的にはこう読めます。最初の入居者は要配慮者でなければならない。以後は、ポータルサイトで2カ月募集して埋まらなければ、一般の入居者を入れてよい。ただし10年間は「登録住宅」であり続ける。専用住宅と登録住宅では制約の重さが違うため、この例外規定の意味は小さくありません。
2-4. 建物側の要件
補助対象住宅には、次の要件も課されています。
- 市の区域内にある住宅であること
- 建築基準法に適合する建築物であること(改修工事完了時において適合するものを含む)
- 新耐震基準(昭和56年6月1日施行)の基準を満たしていること(改修工事完了時において適合するものを含む)
- 家賃の額が近傍同種の住宅の家賃と均衡を失しない水準以下であること
- 入居者が不正の行為によって専用住宅に入居したときは、賃貸借契約の解除をすることを賃貸の条件とすること
- 改修工事実施後において、神奈川県の住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅登録基準を満たし、専用住宅として登録されること
補助対象者側の要件は、個人の場合は世帯員全員が、法人の場合は法人及び代表者のいずれもが市税等の滞納がないこと、暴力団関係者でないことです。法人所有でも申請できる設計になっている点は、実務上ありがたいところです。
2-5. 手続きの順番を間違えないこと
この制度でもっとも事故が起きやすいのが順番です。市の案内には明確にこう書かれています。
必ず工事を実施する前かつセーフティネット専用住宅として神奈川県へ登録する前に補助金の交付申請が必要です。
県への登録より先に、市への交付申請。この順番を逆にすると補助は受けられません。しかも交付申請は「着手予定日の40日前」までです。工事の着工日から逆算して、40日以上前に書類を整える必要があると覚えておいてください。
3. 【本命②】家賃低廉化補助金 ── 空室リスクを月4万円まで市が肩代わりする仕組み
改修費補助と対になっているのが、家賃低廉化補助金です。オーナーの収益に直接効く制度なので、数字で理解しておく価値があります。
3-1. 補助額の計算式
補助金の額=補助月額×管理月数
補助月額=補助対象住宅の本来の家賃-公営住宅並み家賃
補助月額は最大4万円/月・戸まで。4万円を超える場合は4万円が上限。
管理月数には、空家又は空室である期間と入居者の要件を満たしていない期間は含まれません。ここが重要です。埋まっている月だけがカウントされます。
出典:海老名市「令和8年度『住宅確保要配慮者専用賃貸住宅家賃低廉化補助金』」(2026年5月13日更新)
3-2. 数字で見たときのインパクト
仮に、本来の家賃が7万円、公営住宅並み家賃が3万5千円と算定された住戸を考えます。差額は3万5千円なので、上限4万円の範囲内。補助月額は3万5千円です。
- オーナーの受取総額:入居者から3万5千円+市から3万5千円=月7万円(本来の家賃と同額)
- 入居者の負担:月3万5千円
- 12か月満室なら:3.5万円×12か月=年42万円の補助
つまりオーナーから見れば、家賃を下げずに、入居者の負担だけを半分にできる構造です。入居者側から見れば公営住宅並みの家賃で民間賃貸に住める。市から見れば公営住宅を新たに建てずに住宅セーフティネットを確保できる。三者の利害が一致するように設計されています。
さらに実務的な観点でいえば、滞納リスクの低減という副次効果があります。家賃の半分を市が直接補助する形になるため、入居者が実際に支払う金額が下がる。滞納の発生確率は、家賃負担率と強く相関します。
3-3. 入居者・契約の要件は細かい
一方で、要件はかなり細かく設定されています。主なものを挙げます。
補助対象住宅の要件
- 海老名市内の住宅であること
- セーフティネット専用住宅として神奈川県に登録されていること
- 子育て世帯、新婚世帯、多子世帯が入居する場合は、住戸面積が40平米以上であること(ひとり親世帯を除く)
入居者の要件
- 住宅確保要配慮者であること
- 海老名市に引き続き1年以上居住していること
- 世帯の所得が一定以下であること(原則:15.8万円以下/子育て世帯・新婚世帯:21.4万円以下/多子世帯(18歳未満の子どもが3人以上):25.9万円以下)
- 生活保護法の住宅扶助、生活困窮者自立支援法の住宅確保給付金等を受けていないこと
- 賃貸人の親族でないこと
- 入居日時点で賃貸人が所属する法人等の職員及び従業員でないこと
- 住宅を所有していないこと
賃貸借契約の要件
- 入居者は原則として公募し、抽選その他公正な方法により選定すること(すでに入居者がいる専用住宅を対象として申請する場合も公募が必要)
- 交付決定通知書が交付された後に入居予定者と賃貸借契約を締結すること
- 入居者から権利金、謝金等の金品を受領しないこと(家賃、敷金を除く)
- 入居者から家賃低廉化後の額を徴収することを賃貸借契約に定めること
「住戸面積40平米以上」という要件は、単身向けワンルームを多く持つオーナーには効いてきます。子育て世帯・新婚世帯・多子世帯を入れる場合の要件なので、単身高齢者や障害者を対象にする場合は面積要件が外れるという読み方になりますが、ここは必ず窓口で確認してください。
3-4. 補助金は四半期ごとに後払い
手続きの流れは次のとおりです。
- セーフティネット専用住宅として神奈川県へ登録
- 交付申請(入居者を公募後、賃貸借契約を締結する前に提出)
- 賃貸借契約を締結
- 入居届を提出
- 実績報告(四半期ごと)
- 補助金の請求・支払い(四半期ごと)
実績報告の期間は、4〜6月分は7月中、7〜9月分は10月中、10〜12月分は翌年1月4日〜同月末日、1〜3月分は3月31日と定められています。報告を出さなければ補助金は入りません。四半期ごとの事務負担を、管理会社と分担できるかどうかは事前に詰めておいたほうがよいでしょう。
3-5. NOIで判断する ── 補助額の大小ではない
ここで、収益不動産のオーナーとして押さえておきたい考え方を整理します。
判断の物差しはNOI(Net Operating Income:純営業収益=賃料収入から運営費を引いた利益)です。補助金がいくらもらえるかではなく、NOIが何円動くかで見てください。
セーフティネット専用住宅化を検討する場合、NOIに影響する要素は次のように整理できます。
プラス方向
- 家賃低廉化補助(最大4万円/月・戸)が実質的な家賃収入として入る
- 空室期間の短縮(要配慮者は住まいを探す競争力が弱く、条件が合えば長期入居しやすい)
- 滞納率の低下(入居者の実負担が下がるため)
- 改修費補助(2/3・上限100万〜200万円)による初期投資の圧縮
マイナス方向
- 10年間の管理義務による賃料設定の自由度低下
- 公募・実績報告など事務コストの発生
- 将来の売却時、専用住宅としての制約が買主の評価にどう影響するか(出口戦略への影響)
最後の点は特に重要です。10年の管理義務が残った状態で売却する場合、その義務は買主に引き継がれるのか、補助金の返還が発生するのか。出口を含めた10年間のシミュレーションをしてから判断すべき案件です。市の窓口と、できれば顧問税理士・不動産仲介にも同時に確認してください。
私の感覚では、この制度が向いているのは「築古で空室が慢性化している物件」「相続で引き継いだが用途が定まっていない物件」「10年以上保有する前提が固まっている物件」です。逆に、3〜5年内の売却を視野に入れている物件では、慎重に判断されたほうがよいと思います。
4. 【本命③】神奈川県の太陽光・蓄電池補助 ── 9月7日8時30分、先着500件程度
海老名市の環境保全対策支援事業補助金が令和8年8月25日に受付を終了したいま、海老名市内の賃貸共同住宅で再エネ設備の補助を狙うなら、県の制度が唯一の現実解です。
4-1. 申請者に賃貸オーナーが明記されている
県の交付要綱には、申請できる者がこう書かれています。
【戸建住宅】補助対象住宅を所有又は区分所有する個人
【共同住宅】県内の分譲共同住宅の管理組合、県内の賃貸共同住宅を所有する個人又は法人
補助の対象となる住宅は「戸建住宅(賃貸住宅を除く。)又は共同住宅」で、神奈川県内にあり、耐震性能を確保した住宅であること。事務所・店舗等との併用住宅も含まれます。
つまり、戸建の賃貸は対象外だが、共同住宅(マンション・アパート)の賃貸は対象という切り分けです。海老名市内で賃貸マンション・アパートを所有しているオーナーは、個人でも法人でも申請者になれます。
出典:神奈川県「令和8年度神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金」(2026年8月28日更新)
4-2. 補助額は機械的に決まる
| 設置機器 | 補助対象経費 | 補助額 |
|---|---|---|
| 太陽光発電設備 | 設備費・設置工事費 | 発電出力に1kWあたり7万円を乗じた額 |
| 蓄電システム等 | 設備費・設置工事費 | 蓄電システム台数に1台当たり15万円を乗じた額 |
発電出力は、太陽電池モジュールの公称最大出力の合計値と、パワーコンディショナーの定格出力合計値のいずれか低い方です。ここを勘違いすると補助額の見込みがずれます。見積段階でパワコンの定格出力を必ず確認してください。
蓄電システムの台数はパッケージ型番ごとにカウントされ、蓄電池ユニットの数ではありません。
そして重要な制約が一つ。蓄電システムの設置が必須です。太陽光単独では対象になりません。
計算例を出します。共用部向けに10kWの太陽光と蓄電システム2台を導入する場合。
- 太陽光:10kW × 7万円=70万円
- 蓄電システム:2台 × 15万円=30万円
- 合計:100万円(補助対象経費が上限)
4-3. 第2期のスケジュールは「9月7日8時30分・先着500件程度・9月30日締切」
| 期 | 内容 |
|---|---|
| 第1期 | 受付終了(令和8年5月11日開始、5月12日締切) |
| 第2期 | 電子申請にて9月7日(月曜日)午前8時30分から受付開始(先着順)/申請期限:令和8年9月30日(水曜日)/電子申請システムのみ・500件程度 |
第1期は5月11日に始まり、翌12日には「申請額が予算額に達する見込み」として締め切られました。実質2日です。第2期が先着順であることを踏まえると、9月7日8時30分の時点で申請できる状態を作っておくことが、事実上の必須条件になります。
県はQ&Aでもこう明言しています。
第2期は先着順での受付となるため、受付可能件数(500件程度)を超過してからの申請であった場合には、不受理になる可能性があります。
電子申請システム上で処理状況が「完了」になっていても、それは受付完了を意味するだけで、交付決定ではありません。
4-4. 令和8年8月28日追加の注意喚起 ── 代行申請は不受理
昨日(2026年8月28日)、県のページに次の注意喚起が追加されました。オーナーにとって実務インパクトが大きい内容です。
本補助金は、申請者御本人が申請手続きを行う必要があります。施工業者等による代行申請はできません。代行申請であることが分かった場合は、不受理となります。また、申請受理後に代行申請が判明した場合は補助金の交付(決定)はできません。
☞行政書士又は行政書士法人でない者が、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは、法律で禁止されています。
「不受理となる可能性のある案件」にも、申請をした者と別の者の書類が添付されている申請(施工業者の法人アカウントで申し込むなど代行申請が疑われる申請を含む)が明記されています。
これまで「業者さんがやってくれるだろう」と考えていたオーナーは、9月7日に自分(または法人の担当者)が電子申請システムを操作する前提で準備を組み替えてください。施工業者は書類の内容面で協力できますが、申請そのものはオーナー側の作業です。
4-5. 賃貸共同住宅で申請する場合の必要書類
共同住宅枠で必要になる主な書類は次のとおりです。
- 交付申請書(今年度の様式。昨年度様式は受付不可)
- 事業計画書
- 契約書(写し)又はこれに代わるもの
- 補助事業に係る経費の内訳書類(宛名が申請者と一致していること/太陽光・蓄電システムそれぞれの設備費・設置工事費/型番と数量)
- 補助対象設備の仕様が確認できる書類(製品カタログ等)
- 補助事業者の住民票の写し(個人)または現在事項・履歴事項証明書(法人/発行日から3か月以内)
- 役員等全員の氏名一覧表(法人の場合。県指定の今年度様式)
- 建物の登記関係書類(賃貸共同住宅を所有する個人又は法人の場合。登記事項証明書は発行日から3か月以内、登記情報提供サービス等でダウンロードしたものは不可、または検査済証の写し)
- 昭和56年6月1日より前に建築確認を得て着工した共同住宅は、耐震基準適合証明書等
登記事項証明書のダウンロード版が不可という点は、意外と見落とされます。法務局で正規の証明書を取得する時間を織り込んでおいてください。
4-6. 交付決定前の着工は絶対にNG
県は繰り返し警告しています。
必ず交付決定を受けた後に事業に着手してください。交付決定の前に事業に着手した場合は補助金を交付できません。審査に2〜3か月程度かかることがありますので、着手予定までの日程に余裕をもって申請を行ってください。
そして事業は令和9年3月31日(水曜日)までに完了していなければならず、実績報告は事業の完了から2か月以内または令和9年4月30日(金曜日)のいずれか早い期日まで(必着)です。
9月末に申請 → 審査2〜3か月 → 12月頃に交付決定 → 3月末までに完了、というのが最短の現実的スケジュールです。冬季の施工になる可能性が高いことは、あらかじめ計算に入れてください。
5. 【本命④】賃貸集合給湯省エネ2026事業 ── 補助対象者が「オーナー等」
国の制度で、名称に「賃貸」と入っている数少ない事業です。
5-1. 制度の骨格
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象者 | 賃貸集合住宅のオーナー等 |
| 対象工事 | 既存賃貸集合住宅で、従来型給湯器を小型の省エネ型給湯器(エコジョーズ・エコフィール等)へ取り替える工事 |
| 補助額 | 追い焚きなし5万円/台、追い焚きあり7万円/台(一定の排水工事を伴う場合は最大8万円/台・10万円/台まで加算) |
| 着工時期 | 2025年11月28日以降に着工した工事が対象 |
| 申請 | 登録された「賃貸集合給湯省エネ事業者」が手続きを行う |
出典:資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業」/賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト
5-2. 「県は本人申請、国は事業者申請」という逆転に注意
同じ時期に走る2つの制度で、申請主体が逆になります。
- 県の太陽光・蓄電池補助 → オーナー本人が申請。代行申請は不受理。
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業 → 登録事業者が申請を代行。オーナーは直接申請できないのが原則。
この違いを取り違えると、片方は不受理、片方は手続きが進まないという事態になります。制度ごとに「誰が申請するのか」を確認してから動いてください。
5-3. 数字で見たときのインパクト
20戸の賃貸マンションで、追い焚きあり給湯器を全戸更新する場合を考えます。
- 7万円/台 × 20戸=140万円
給湯器の更新は、老朽化すればいずれ発生する支出です。「壊れてから一台ずつ交換する」のではなく、補助が出るタイミングでまとめて更新することで、1戸あたり7万円が戻り、かつ入居者の給湯トラブルによる退去リスクを下げられます。給湯器の故障は、真冬に発生すると入居者満足度に致命的な影響を与えます。
6. 【併用検討】住宅省エネ2026キャンペーンの4事業
国は複数の省エネ支援事業を「住宅省エネ2026キャンペーン」としてまとめています。賃貸住宅のオーナーが対象になり得る枠があるため、工事内容によっては検討の価値があります。
代表的なものは、先進的窓リノベ2026事業(開口部の断熱改修)、給湯省エネ2026事業(高効率給湯器)、みらいエコ住宅2026事業(開口部・躯体の断熱改修や設備更新)などです。工事内容と住戸タイプによって単価と要件が変わるため、事前に登録事業者を通じて対象可否を確認する必要があります。
なお、海老名市の住宅断熱改修促進事業補助金のページには、「他の補助制度と申請する工事箇所が重複する工事は申請できません(例:先進的窓リノベ2026事業、みらいエコ住宅2026事業、給湯省エネ2026事業など)」と明記されています。国と市の重複取りはできない、という原則は覚えておいてください。
7. 【対象外①】海老名市環境保全対策支援事業補助金 ── 8月25日に受付終了
海老名市の再エネ設備補助は、太陽光1kWあたり2万円(上限20万円)、蓄電池7万円、エネファーム6万円、HEMS1万円、V2H3万円と、市の制度としては充実した内容でした。3設備を同時設置した場合のスマートハウス加算2万円もありました。
ところが、市のページ冒頭に次の告知が出ています(令和8年8月25日追記)。
令和8年度環境保全対策支援事業補助金(太陽光発電施設・蓄電池・エネファーム・HEMS・V2H・電気自動車・燃料電池自動車)の補助金交付申請の件数が予算上限に達したため、当該申請の受付を終了いたしました。
当初の申請受付期間は令和8年4月1日から令和9年2月26日まででしたが、約5か月で予算を使い切りました。
出典:海老名市「令和8年度環境保全対策支援事業補助金について」(2026年8月25日更新)
7-1. そもそも賃貸物件には使いにくい設計だった
受付終了前であっても、この制度は賃貸オーナーにとって使いにくい設計でした。補助を受けることができる方の要件に、次の記載があるためです。
市内の自宅または事業所に設備を設置する方又は車両を導入する方(設備付き建売住宅も可)
注1:市内の自宅の場合は、そこに住民票を置くこと
さらに「事業が完了した日」の定義にも、「補助対象設備を設置した住宅への居住(住民票の異動)」が含まれています。貸している住戸にオーナーの住民票を置くことはできませんから、収益物件では要件を満たせません。
「事業所」に設置する場合は対象になり得ますが、賃貸マンション・アパートは事業所ではありません。オーナーが自社ビルの一部を事務所として使っているようなケースでは検討の余地がありますが、一般的な賃貸住宅では該当しないと考えるのが妥当です。
2027年度(令和9年度)に同様の制度が再開された場合も、この住民票要件が残るかどうかがオーナーにとっての分岐点になります。年度替わりの4月に、市のページを一度確認する価値はあります。
8. 【対象外②】海老名市住宅改修支援事業補助金 ── 「引き続き10年以上居住する者」
工事費の1/5・上限20万円(多世代同居は30万円)という、海老名市のリフォーム補助の主力制度です。対象住宅には「個人が所有する海老名市内にあるマンション等の共同住宅の専有部分」も入っているため、一見すると賃貸マンションでも使えそうに見えます。
しかし対象者の要件が、次のように定められています。
1 住宅の所有者であること(共有名義の場合は共有者全員の承諾を得ている代表者であること)
2 申請日時点で当該住宅に居住し、引き続き10年以上居住する者
「当該住宅に居住し」の一文で、貸している住戸は外れます。オーナーが自ら住んでいる住戸のリフォームであれば対象になりますが、それは収益物件の話ではありません。
なお、この制度には他にも実務的な制約があります。
- 工事施工者が「海老名市住宅改修支援事業取扱事業者」または「海老名商工会議所会員」であること
- 施工業者ごとの受注枠が10件(市外に所在する海老名商工会議所会員は5件)
- 申請場所は市役所ではなく海老名商工会議所(海老名市めぐみ町6-1 海老名市文化会館3階)
- 募集期間は令和8年7月1日〜令和9年2月15日、予算は約200件
- 「着工前」「施工中」「完成」の各段階の写真が揃っていること(揃わなければ補助対象外)
- 国又は神奈川県、もしくは市が実施する他の補助制度等を利用する工事ではないこと
出典:海老名市「令和8年度『住宅改修支援事業補助金』(リフォーム費用の補助)について」(2026年8月25日更新)
9. 【対象外③】海老名市住宅断熱改修促進事業補助金 ── 戸建・長屋・併用住宅に限定
ZEH水準相当なら補助率4/5・上限50万円という、単価の高い制度です。しかし対象住宅がこう限定されています。
・個人が所有する海老名市内の戸建住宅または長屋住宅
・個人が所有する海老名市内の店舗等併用住宅の住宅部分
上記のいずれかに該当し、現にZEH水準を満たしていない住宅
賃貸共同住宅(マンション・アパート)が入っていません。さらに対象者の要件にも「申請日時点で当該住宅に継続して1年以上居住し、工事後も引き続き当該住宅へ居住するもの」とあり、居住要件で二重に外れます。
募集件数は25件、募集期間は令和8年4月15日から令和8年12月25日まで。令和8年度からは補助対象事業費が「直接工事費(労務費及び材料費等)のみ」に見直され、諸経費は対象外になりました。なお労務費の考え方として、足場代・養生費・高所作業費は補助対象、水道光熱費・採寸費・消費税・補助金申請手数料は対象外と整理されています。
出典:海老名市「令和8年度『住宅断熱改修促進事業補助金』(断熱リフォーム費用の補助)について」(2026年8月4日更新)
10. 海老名市オーナー向け・制度早見表(2026年8月29日時点)
| 制度名 | 実施主体 | オーナー可否 | 補助額 | 期限 |
|---|---|---|---|---|
| 住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修費補助金 | 海老名市 | ○(賃貸人・所有者等) | 経費の2/3、上限100万円(特定7工事を含む場合200万円) | 着手予定日の40日前/年度内12月28日のいずれか早い日 |
| 住宅確保要配慮者専用賃貸住宅家賃低廉化補助金 | 海老名市 | ○(専用住宅の賃貸人) | 最大4万円/月・戸×管理月数 | 賃貸借契約締結前に交付申請 |
| 住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金 | 神奈川県 | ○(賃貸共同住宅を所有する個人・法人) | 太陽光7万円/kW、蓄電システム15万円/台 | 第2期 9/7 8:30〜9/30、先着500件程度 |
| 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 国 | ○(賃貸集合住宅のオーナー等) | 追い焚きなし5万円/台、あり7万円/台 | 予算上限まで(登録事業者が申請) |
| 環境保全対策支援事業補助金 | 海老名市 | ×(住民票要件) | 太陽光2万円/kW 他 | 令和8年8月25日 受付終了 |
| 住宅改修支援事業補助金 | 海老名市 | ×(10年以上居住要件) | 工事費の1/5・上限20万円 | 令和9年2月15日/予算約200件 |
| 住宅断熱改修促進事業補助金 | 海老名市 | ×(戸建・長屋・併用住宅限定) | 最大50万円 | 令和8年12月25日/25件 |
※各制度の詳細要件は必ず公式ページでご確認ください。
11. 補助金は「もらって終わり」ではない:オーナーが必ず押さえる税務3点
ここからは、補助金を受け取った後の話です。収益物件のオーナーにとっては、むしろこちらのほうが金額インパクトが大きいことがあります。
11-1. 補助金は雑収入(益金)として課税対象になる
補助金は、原則として受給が確定した事業年度の益金(個人事業なら不動産所得等の総収入金額)に算入されます。100万円の補助金を受け取れば、100万円がそのまま手元に残るわけではありません。
法人税・所得税の実効税率を仮に30%とすると、100万円の補助金に対して約30万円の税負担が発生する計算になります。手取りベースで70万円。この前提で投資判断をしてください。
11-2. 修繕費か資本的支出かで、初年度の損金額が大きく変わる
工事費の税務処理は、修繕費(その年に全額損金)と資本的支出(資産計上し減価償却)に分かれます。この判定は金額ではなく、工事の性質で決まります。
- 修繕費:通常の維持管理、原状回復、毀損部分の補修
- 資本的支出:資産の使用可能期間を延長させる、または価値を増加させる支出
外壁塗装や防水改修は、同じ「外装工事」でも内容によって判定が分かれます。既存と同等の仕様に戻す塗り替えは修繕費、断熱性能を大きく向上させる改修や、明らかにグレードを上げる工事は資本的支出と判定される可能性があります。
セーフティネット専用住宅の改修費補助で対象になるバリアフリー改修・間取り変更・用途変更などは、性質上、資本的支出と判定されやすい工事です。補助金は初年度に益金として立つのに、支出は減価償却で数年〜数十年に分散する。この期ズレが、初年度のキャッシュフローと課税所得を圧迫します。
工事の内訳書を作る段階から、税理士に「どこまでが修繕費として整理できるか」を相談しておくことをお勧めします。工事後に領収書だけ持って行っても、判定に必要な情報が足りないことが多いのです。
11-3. 圧縮記帳という選択肢
国庫補助金等で固定資産を取得した場合、一定の要件を満たせば圧縮記帳により、補助金相当額を取得価額から減額し、その年度の課税を繰り延べることができます(法人税法第42条等)。
ただし適用には要件があり、対象となる補助金の性質、資産の取得時期、返還不要が確定しているかなどを個別に確認する必要があります。圧縮記帳は「税金が消える」制度ではなく「先送りする」制度である点も、正しく理解しておいてください。減価償却費が減る分、翌年度以降の課税所得は増えます。
具体的な適用可否は、必ず顧問税理士にご確認ください。私は税理士ではありませんので、ここでは「こういう選択肢がある」という事実のご紹介にとどめます。
12. 海老名市という市場で、賃貸物件はどう戦うか
補助金の話から少し離れて、市場としての海老名を数字で見ておきます。
12-1. 数字で見る海老名市
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 推計人口 | 142,244人(令和8年8月1日現在) |
| 世帯数 | 64,949世帯(同上) |
| 前月比 | 人口+61人、世帯+67世帯 |
| 1世帯あたり人員 | 約2.19人 |
| 令和8年7月中の自然動態 | 出生85人、死亡124人 → ▲39人 |
| 令和8年7月中の社会動態 | 転入568人、転出468人 → +100人 |
出典:海老名市「海老名市の世帯数と人口(令和8年分)」(2026年8月4日更新)
この数字は、賃貸オーナーにとって示唆に富んでいます。
第一に、自然減を社会増が上回っている。出生より死亡が多く自然動態は▲39人ですが、転入が転出を100人上回って、結果として人口は増えています。外から人が入ってくる街であり、賃貸需要の源泉が維持されているということです。神奈川県内でも、この構図を保てている自治体は限られます。
第二に、世帯数の伸びが人口の伸びを上回っている。7月中に人口は61人増、世帯は67世帯増。1世帯あたり人員は約2.19人まで下がっています。単身世帯・二人世帯の比率が上がり続けているということで、1LDK〜2DKクラスの需要が構造的に支えられる一方、ファミリー向けの大型住戸は競争が厳しくなりやすい。
第三に、転入568人・転出468人という回転の大きさ。月あたり1,000人以上が出入りしている市場です。回転が速いということは、募集条件が競合に劣ると空室期間が伸びやすいということでもあります。外観の第一印象が決定率に直結する市場だと考えたほうがよいでしょう。
12-2. 海老名の立地特性 ── 「3路線が交わる結節点」
海老名は、小田急小田原線・JR相模線・相鉄本線の3路線が集まる交通結節点です。都心方面へのアクセスと、県央エリアの生活利便性を両立する立地で、駅周辺には大型商業施設が集積しています。県央の中核として、周辺市町からの買い物・通勤・通学の流入も受けています。
賃貸市場の観点で見ると、この立地は「都心通勤層」と「県央域内通勤層」の二層構造を意味します。前者は駅近・築浅・設備を重視し、後者は駐車場付き・広さ・家賃水準を重視する傾向があります。所有物件がどちらの層に向いているかで、修繕投資の優先順位は変わります。
駅からやや離れた立地の物件で、駅近の築浅物件と設備競争をするのは分が悪い。そういう物件では、外観・共用部の清潔感と、管理が行き届いている印象のほうが、決定率への効きが大きいというのが現場での実感です。エントランスの塗装が褪せている、外壁に雨だれの黒い筋が走っている、鉄部の錆が浮いている。これらは内見時に必ず目に入ります。
12-3. 判断軸はNOI ── 補助額の大小ではない
繰り返しになりますが、判断はNOIで行ってください。
たとえば20戸の賃貸マンションで、家賃6.5万円・入居率90%だとします。年間の満室想定賃料は6.5万円×20戸×12か月=1,560万円。入居率90%なら1,404万円。
ここで外装改修により入居率が95%に改善したとすると、賃料収入は1,482万円。年78万円の差です。10年で780万円。外装改修の投資判断は、補助金がいくら出るかよりも、この78万円が本当に取れるのかどうかで決まります。
逆に言えば、入居率が既に高く、賃料も市場水準を取れている物件では、外装改修の主目的は「攻め」ではなく「守り」になります。資産価値の維持と、劣化の進行による将来コストの回避です。躯体に水が回ってからでは、修繕費は跳ね上がります。
13. 海老名の物件に、足場は本当に必要か ── 工法選定でコストが動く
最後に、私の本業の話をさせてください。
13-1. 仮設足場が総工事費に占める重さ
大規模修繕工事の見積書を開いたとき、多くのオーナーが驚くのが仮設工事費の比率です。建物の形状や立地条件によって幅はありますが、外壁改修を伴う工事では、仮設足場が総工事費のかなりの部分を占めることがあります。
さらに足場には、金額以外のコストがあります。
- 工期の長さ:足場の架設・解体だけで数日から1週間以上
- 入居者の生活影響:窓の外に足場が立ち、養生シートで日照と眺望が失われる
- 防犯上の不安:足場は侵入経路になり得るため、入居者から不安の声が上がる
- 駐車場・駐輪場の一時停止:資材置場と架設スペースの確保が必要
賃貸物件の場合、これらは退去リスクに直結します。工事中の減額交渉や、更新時期と重なった場合の非更新。オーナーが負担するのは工事費だけではありません。
13-2. ロープアクセス工法(無足場工法)という選択肢
ロープアクセス工法は、産業用ロープを使って作業員が壁面を上下しながら施工する無足場工法です。足場を組まないため、次のような特徴があります。
- 仮設足場費が不要になる(または大幅に圧縮できる)
- 架設・解体の工期がゼロ
- 窓の外に構造物が立たないため、日照・眺望・防犯面の影響が小さい
- 部分補修や緊急対応に機動的に動ける
一方で、万能ではありません。全面的な打診調査や大面積のタイル張替えなど、作業量が多い工事では足場のほうが効率的な場面もあります。屋上にアンカーを設置できるか、壁面の形状が複雑すぎないかといった建物側の条件も必要です。
ロープアクセス工法の適用条件や施工事例については、ロープアクセス工法専門サイト(rope-access-method.com)と、明誠のロープアクセス工事のご案内にまとめています。海老名市を含む神奈川県内の物件でも施工実績があります。
13-3. ハイブリッド工法という現実解
実際の現場でもっとも多いのは、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法です。
たとえば、道路に面していて足場が組みにくい面はロープアクセス、隣地との離隔が確保できる面は足場。バルコニー側は足場、外廊下側はロープアクセス。こうした組み合わせで、仮設費と工期のバランスを取ります。
株式会社明誠は、通常の足場仮設工法、ロープアクセス工法、ハイブリッド工法の3つすべてを自社で提案できる数少ない会社です。工法ありきではなく、建物の形状・立地・劣化状況・入居者の属性から逆算して選びます。工事の進め方や品質管理の考え方については、明誠が選ばれる理由もあわせてご覧ください。
13-4. 私が海老名の現場で感じていること
海老名エリアの賃貸物件を見せていただくと、「駅からの距離で明暗が分かれている」と感じることが多くあります。駅近の築浅物件は放っておいても埋まりますが、バス便や徒歩15分圏の物件では、内見時の印象が決定率をはっきり左右します。
そういう物件で私がよくご提案するのは、「全部やる」ではなく「見えるところから直す」という順序です。予算に限りがあるなら、まず内見動線から見える部分——エントランス、外廊下、階段室、道路側の外壁——に集中投資する。裏側の外壁は次回に回す。ロープアクセス工法なら、こうした部位を絞った施工が足場工法よりはるかに機動的に組めます。
もう一つ、補助金がらみで申し上げたいのは、「補助対象工事だけを切り出して発注しないでください」ということです。太陽光だけ、給湯器だけを別業者に出すと、屋上の防水層に穴を開けた責任の所在が曖昧になったり、後から防水改修をしようとしてパネルが邪魔になったりします。補助金で50万円を得て、5年後に150万円を失う。この構図は、決して珍しいものではありません。
工事全体の設計と順序を先に描き、そのうえで「この部分は補助が取れる」と当てはめていく。順番が逆になっていないか、一度立ち止まって確認していただければと思います。明誠がどういう考え方でコストを組み立てているかは、適正価格への考え方にまとめています。
14. 海老名市の収益物件オーナーが、9月30日までにやるべきこと
時間軸で整理します。
【今週中(8月末まで)】
- 物件の登記事項証明書を法務局で取得する(ダウンロード版は不可)
- 法人所有の場合、現在事項または履歴事項証明書を取得する(発行日から3か月以内)
- 昭和56年6月1日より前に建築確認を得た物件は、耐震基準適合証明書の有無を確認する
- 神奈川県の交付要綱・実施要領・手引きをダウンロードして通読する
【9月第1週(9月1日〜6日)】
- 太陽光・蓄電池の見積を取得し、パワーコンディショナーの定格出力を確認する(補助額はここで決まる)
- 役員等全員の氏名一覧表を県指定の今年度様式で作成する
- 電子申請システムのアカウントを準備し、申請フォームプレビューで入力項目を事前確認する
【9月7日(月)8時30分】
- 電子申請システムで交付申請を行う。先着500件程度。オーナー本人(法人)が申請すること
【9月中】
- 給湯器更新については、賃貸集合給湯省エネ2026事業の登録事業者に相談する
- 空室が慢性化している物件があれば、海老名市住宅まちづくり課(046-235-9606)にセーフティネット専用住宅の制度について問い合わせる
- 顧問税理士に、工事内容と補助金額を伝えて修繕費/資本的支出の見通しを確認する
【交付決定後】
- 交付決定通知を受けてから着工する(決定前の着手は補助対象外。審査に2〜3か月かかります)
- 令和9年3月31日までに工事完了・支払完了。実績報告は事業の完了から2か月以内、または令和9年4月30日(金曜日)のいずれか早い期日まで(必着)
よくある質問(FAQ)
Q1. 海老名市には、賃貸マンションのオーナーが使える市独自の補助金はありますか。
A. あります。住宅確保要配慮者専用賃貸住宅の改修費補助金と家賃低廉化補助金の2本です。いずれも補助対象者が賃貸人・所有者等と明記されています。ただし、住宅確保要配慮者専用住宅として神奈川県に登録し、改修費補助については原則10年間管理するという条件が付きます。一般的なリフォーム補助(住宅改修支援事業、住宅断熱改修促進事業、環境保全対策支援事業)は、いずれも居住要件や住宅種別の要件で対象外です。
Q2. 法人名義で所有していますが、市のセーフティネット改修費補助は使えますか。
A. 使えます。補助対象者の要件に「個人の場合には世帯員全員が、法人の場合には法人及び代表者のいずれもが市税等の滞納がないこと」と書かれており、法人が申請者になることが前提の記載になっています。
Q3. 県の太陽光・蓄電池補助を、施工業者に申請してもらうことはできますか。
A. できません。2026年8月28日の注意喚起で代行申請は不受理と明示されました。オーナーご本人(法人の場合は法人)による申請が必要です。一方、賃貸集合給湯省エネ2026事業は逆に、原則としてオーナーが直接申請できず、登録された事業者が手続きを行います。制度ごとに申請主体が逆になる点に注意してください。
Q4. 太陽光だけ導入したいのですが、県の補助は使えますか。
A. 使えません。県の制度は「太陽光発電設備と併せて蓄電システム等を導入する事業」が対象で、蓄電システムの設置が必須です。太陽光単独では対象になりません。
Q5. 9月7日に申請すれば、確実に交付されますか。
A. いいえ。第2期は先着順(500件程度)で、電子申請システム上で受付が「完了」と表示されても、受付可能件数を超過していた場合は不受理になる可能性があります。第1期は5月11日開始・5月12日締切という実績でした。8時30分の開始時点で申請できる準備が必要です。
Q6. セーフティネット専用住宅にすると、家賃を自由に決められなくなりますか。
A. 「家賃の額が近傍同種の住宅の家賃と均衡を失しない水準以下であること」という要件があり、周辺相場を大きく超える設定はできません。また家賃低廉化補助を受ける場合は、入居者から徴収する額を「本来の家賃-補助額」とすることを賃貸借契約に定める必要があります。10年間の管理義務と合わせて、賃料設定の自由度が下がることは事実です。補助額とのトレードオフとして判断してください。
Q7. 補助金の入金は工事前ですか、工事後ですか。
A. すべて工事後です。市のセーフティネット改修費補助も、県の太陽光・蓄電池補助も、完了実績報告の審査を経てから支払われます。工事費は一度全額を自己資金または借入で立て替える必要があります。キャッシュフロー計画にこの立替期間を織り込んでおいてください。
Q8. 交付決定前に着工してしまったらどうなりますか。
A. 補助金は交付されません。県の制度は「必ず交付決定を受けた後に事業に着手してください」と明記しています。市のセーフティネット改修費補助も、工事を実施する前かつ県への登録前の交付申請が必要です。審査期間を見込んだ逆算が不可欠です。
Q9. 大規模修繕と補助対象工事は、同じタイミングでやったほうがいいですか。
A. 一概には言えません。補助対象工事は交付決定を待つ必要があり、大規模修繕の工期をそれに合わせられるかが判断の分かれ目です。ただし、足場を使う工事を一度にまとめられれば仮設費を圧縮できるため、日程が合うなら同時施工のメリットは大きいといえます。太陽光パネルの設置と屋上防水は特に相性がよく、パネル設置後に防水改修を行うと施工が難しくなるため、順序の設計が重要です。
Q10. 築45年の賃貸マンションですが、補助金の対象になりますか。
A. 制度によります。県の太陽光・蓄電池補助は耐震性能を確保した住宅であることが要件で、昭和56年6月1日より前に建築確認を得て着工した共同住宅の場合、耐震基準適合証明書等の提出が必要です。市のセーフティネット改修費補助も新耐震基準を満たしていることが要件ですが、こちらは「改修工事完了時において適合するものを含む」とされているため、耐震改修工事(上限200万円のトリガーとなる工事の一つ)を同時に行うという組み立てが可能です。築古物件では、むしろ市の制度のほうが道が開けている場合があります。
Q11. 海老名の物件は前面道路が狭く、足場を組むスペースが限られています。何か選択肢はありますか。
A. ロープアクセス工法(無足場工法)が選択肢になり得ます。屋上や躯体にアンカーを設置できるかなど、建物側の条件を現地で確認する必要がありますので、まずは現況をご相談ください。足場が組める部位と組みにくい部位を分けて、ハイブリッドで対応するケースもあります。
制度は変わります。最新は必ず公式でご確認ください
本記事は2026年8月29日時点で公開されている一次情報をもとに作成しています。補助金制度は、予算の消化状況によって受付が前倒しで終了することがあり、要件や様式も年度途中で変更される場合があります。海老名市の環境保全対策支援事業が8月25日に受付終了した例、県の太陽光補助の第1期が実質2日で締め切られた例のように、「まだ大丈夫」と思っているうちに枠が埋まることは珍しくありません。
申請を検討される際は、必ず各制度の公式ページで最新情報をご確認いただき、判断に迷う点は各窓口へ直接お問い合わせください。
- 海老名市のセーフティネット専用住宅支援・住宅施策について:海老名市 まちづくり部 住宅まちづくり課 住宅政策係 電話 046-235-9606
- 海老名市の環境保全対策支援事業について:海老名市 経済環境部 環境政策課 環境共生係 電話 046-235-4912
- 海老名市の住宅改修支援事業(受付)について:海老名商工会議所 電話 046-231-5865
- 神奈川県 太陽光・蓄電池補助について:神奈川県脱炭素戦略本部室補助金審査事務局 電話 050-1784-5835(平日8時45分〜17時00分、12時〜13時を除く)
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業について:同事業の公式サイト
株式会社明誠では、海老名市を含む神奈川県内の収益物件について、大規模修繕の工法選定と概算のご相談を承っています。「補助金の対象工事とそれ以外をどう切り分けるか」「太陽光設置と屋上防水をどの順序で組むか」「前面道路が狭い物件で足場とロープアクセスにどれだけ差が出るか」といった具体的なご相談も歓迎です。ご相談はお問い合わせフォームからお寄せください。
執筆:株式会社明誠 代表取締役 本間幸紘
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を手がけ、通常の足場仮設工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案しています。ロープアクセス工事では日本初となるフランチャイズ展開を行い、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟することで、高品質と低価格を両立しています。
最終更新:2026年8月29日
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出典・参考資料
- 海老名市「令和8年度『住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修費補助金』(セーフティネット専用住宅改修費用の補助)について」(2026年6月18日更新)
- 海老名市「令和8年度『住宅確保要配慮者専用賃貸住宅家賃低廉化補助金』(セーフティネット専用住宅家賃低廉化補助金)について」(2026年5月13日更新)
- 海老名市「令和8年度環境保全対策支援事業補助金について」(2026年8月25日更新)
- 海老名市「令和8年度『住宅改修支援事業補助金』(リフォーム費用の補助)について」(2026年8月25日更新)
- 海老名市「令和8年度『住宅断熱改修促進事業補助金』(断熱リフォーム費用の補助)について」(2026年8月4日更新)
- 海老名市「海老名市の世帯数と人口(令和8年分)」(2026年8月4日更新)
- 海老名市「住宅」(住宅関連の補助事業一覧)
- 神奈川県「令和8年度神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金」(2026年8月28日更新)
- 資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業」
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト
- 住宅省エネ2026キャンペーン【公式】
- 株式会社明誠 ロープアクセス工法専門サイト


