三鷹市のマンション漏水・防災対策|武蔵野台地の地盤と神田川・野川流域の浸水リスク、大規模修繕の優先順位【2026年度版】

2026年9月24日 更新

三鷹市のマンションで理事会にお邪魔したとき、理事長さまから「うちは高台だから、水害とは無縁だと思っていました」と言われたことがあります。私はそこで一度立ち止まっていただくようにしています。三鷹市は武蔵野台地の上にあり、たしかに東京23区の低地部と比べれば地盤は良好です。ただし神田川・野川・仙川という3本の川が市内を流れており、川沿いの低地や崖線沿いの傾斜地には、今も指定されたリスクが残っています。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に携わってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間として、今日は三鷹市のハザードマップの中身と、大規模修繕で先に手を打つべき場所を整理します。


結論:三鷹市の分譲・賃貸マンションで優先すべきは「川沿い・崖線沿いの建物の排水設備点検」と「地下・低層階の電気室・給水ポンプの浸水対策」です

先に結論を申し上げます。三鷹市の大規模修繕で私が最初に確認するのは、次の2点です。

1つ目は神田川・野川・仙川沿いに建つ物件の屋上防水とバルコニー・敷地排水経路の健全性。三鷹市は地盤の良さで知られる武蔵野台地上の街ですが、市内を流れる3つの河川の沿岸には浸水想定区域が指定されています(出典:三鷹市「三鷹市浸水ハザードマップ」)。台地の上だから大丈夫、と考えて排水設備の点検を後回しにしている管理組合さまを、私は何度も見てきました。

2つ目は地下・1階に電気室や給水ポンプを設置している建物の設備配置の見直し。神田川・野川流域では、想定最大規模降雨時の浸水に加えて、下水道の排水能力を超える内水氾濫のリスクも公表されています(出典:同上)。地下や低層階の設備が水没すれば、規模の大小にかかわらずエレベーター・給水・照明のすべてが止まります。この2点を大規模修繕の計画段階で見直すことが、三鷹市のマンションにとって優先度の高い対策になると私は考えています。


三鷹市のハザードマップを1枚で読む

市と都が公表している資料を、マンション修繕の視点で1枚に整理しました。

災害種別 三鷹市の該当 想定・該当範囲
洪水(神田川・野川・仙川等、想定最大規模降雨) あり 河川沿いの低地に浸水想定区域を指定(浸水深は5段階の色分けで表示)
内水氾濫(下水道の排水能力超過) あり 水防法に基づく指定ではないが、短時間豪雨で市内各所に発生し得る参考情報として公表
高潮・津波 該当なし 内陸に位置するため対象外
土砂災害(特別)警戒区域 あり 市内21箇所を指定(警戒区域・特別警戒区域とも)。かつての「土砂災害危険箇所」9箇所は令和6年4月に廃止・区域指定に一本化(出典:三鷹市「土砂災害(特別)警戒区域」、東京都建設局「土砂災害(特別)警戒区域の区市町村別指定状況」)
液状化 相対的に低い傾向 武蔵野台地上のため都内平均より良好とされるが、液状化予測図(東京都、令和3年度改訂版)で地点ごとの相対評価を確認できる(出典:三鷹市「東京の液状化予測図」)

三鷹市浸水ハザードマップは令和6年10月改訂の第11版で、令和6年2月に東京都が公表した最新の洪水浸水想定区域図を反映しています(最終更新2025年3月5日)。対象河川は神田川・野川・仙川・入間川等で、これらは国分寺市から世田谷区方面へと連なる国分寺崖線に沿って流れる中小河川です(出典:三鷹市「三鷹市浸水ハザードマップ」)。

正直に申し上げます。「三鷹は台地だから安全」という理事長さまの感覚は、市全体で見れば間違ってはいません。ただし川沿いと崖線沿いという2つの例外があることは事実です。ハザードマップは「怖がるための資料」ではなく、「自分の建物がどちらの立地にあるかを確認するための資料」だと私は理事会でお伝えしています。

あわせて確認しておきたいのが「地震に関する地域危険度測定調査」です。東京都は概ね5年ごとに都内5,192町丁目を対象に、建物倒壊危険度・火災危険度・災害時活動困難度・総合危険度を測定しており、三鷹市分は第9回(令和4年9月公表)が最新です(出典:三鷹市「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」)。三鷹市は都内でも危険度が低いエリアが多い一方、木造住宅が密集し道路が狭いエリアでは相対的に危険度が高く算定される町丁目もあります。自分の建物が属する町丁目の危険度ランクは、三鷹市防災課(電話:0422-24-9102)または東京都都市整備局のホームページで確認できます。


地域特性と漏水事故の関係

三鷹市は一つの顔ではなく、エリアごとにリスクの出方が違います。

三鷹駅前・下連雀・上連雀など台地上の中心部:武蔵野台地の平坦な地盤に位置し、地盤そのものは比較的安定しています。ただしこのエリアでも、屋上防水の経年劣化やバルコニー排水ドレンの詰まりによる漏水事故は、立地に関係なく起こります。

神田川・仙川沿いの低地(下連雀・新川・中原など):浸水想定区域に含まれる可能性があるエリアで、大雨のたびに敷地の排水能力が追いつかなくなりやすく、地下駐車場や半地下部分への浸水リスクが相対的に高くなります。

野川沿い・大沢地区(国分寺崖線沿い):崖線特有の傾斜地形を含み、土砂災害警戒区域の指定対象になり得るエリアです。斜面に近い擁壁や外構の点検も、大規模修繕の視野に入れておく必要があります。

いずれのエリアでも共通するのは、「日常の漏水対策」と「非常時の浸水・土砂災害対策」がつながっているという点です。日頃の屋上防水・排水ドレンの点検を怠っている建物は、大雨のたびに小さな漏水が積み重なり、結果として大規模な補修が必要になります。

三鷹市はジブリ美術館や井の頭恩賜公園、太宰治ゆかりの地としても知られ、緑地率の高さが街の魅力になっています。この緑の豊かさは、裏を返せば落葉・倒木による排水経路の閉塞や、樹木の根による外構・擁壁への影響も無視できないということです。私は現地調査のとき、必ず敷地内の樹木と排水経路の位置関係も合わせて確認するようにしています。


大規模修繕で必ずチェックすべき漏水ポイント7つ

私が漏水対応の現地調査で必ず見る7カ所です。三鷹市のような台地と低地が混在するエリアでは、立地によって劣化の進み方に差が出ます。

  1. 屋上防水層:経年劣化・膨れ・亀裂の有無。トップコートの摩耗だけでも雨水侵入のリスクが上がります。
  2. シーリング(目地):外壁パネル間・サッシまわりのシーリング材の硬化・ひび割れ。
  3. バルコニー排水(ドレン):落ち葉やゴミによる詰まりは、ゲリラ豪雨時に排水能力を一気に落とします。三鷹市は緑地・公園が多い街並みが特徴で、落葉による詰まりは他エリアより起きやすいと私は現場で感じています。
  4. 屋上ドレン・オーバーフロー管:屋上に水がたまる「ドレン詰まり」は、集中豪雨時の漏水事故の最多原因の一つです。
  5. パラペット・笠木の立上り部:雨水の吹き込みが起きやすく、防水層の切れ目になりやすい箇所です。
  6. サッシまわりのシール:強風を伴う台風時、サッシ枠からの雨水侵入が急増します。
  7. 擁壁・外構(崖線沿いの物件のみ):国分寺崖線沿いに建つ物件では、擁壁のひび割れや排水不良が土砂災害・漏水の両方のリスクにつながります。

これらは足場を組んでも、ロープアクセスでも点検・補修できます。ただし三鷹市のように住宅密集地と緑地が入り組んだエリアでは、足場を組むための敷地確保や近隣調整に時間がかかることが少なくありません。技術的な詳細は姉妹サイトのロープアクセスドットコムでも解説しています。


漏水緊急対応でロープアクセスが強い理由

台風接近が予報された段階で「屋上の防水が心配」というご相談をいただくことがあります。仮設足場は組み立てだけで数日、規模によっては1〜2週間かかります。一方、ロープアクセス工法であれば、資材と作業員の手配ができ次第、当日〜翌日には屋上やバルコニーの応急補修に着手できます。

目安として、10階建て・外周80m・工期3ヶ月の大規模修繕を想定した場合、足場費用は約168万円、ロープアクセスなら約59万円というケースがあります(物件の規模・形状により変動するため、あくまで目安の一例です)。緊急の部分補修であれば、この差はさらに大きくなります。三鷹市のように住宅が密集し、足場を組むための道路使用許可や近隣同意に時間がかかりやすいエリアでは、ロープアクセスの機動力が特に向いていると私は考えています。

株式会社明誠は日本で数少ない、足場・ロープアクセス・ハイブリッド工法の3つから建物に最適な工法を提案できる会社です。ロープアクセスの高所作業について、明誠と全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。工法選びの考え方は明誠の施工事例からもご確認いただけます。詳しい技術情報はロープアクセスドットコムにまとまっています。


防災上の共用部(避難通路/エレベーター/受電設備/給水ポンプ/自家発電)の位置と修繕優先度

三鷹市のように河川沿いの浸水想定区域と崖線沿いの土砂災害警戒区域が混在するエリアでは、共用部の設備配置そのものが防災計画の一部になります。私が理事会にお伝えしている優先順位は次のとおりです。

優先度 設備 チェックポイント
高 受変電設備・自家発電設備 地下・1階設置かつ河川沿い立地の場合、浸水想定を踏まえた移設・かさ上げを検討
高 給水ポンプ室 停電・浸水時の給水停止リスク。予備電源との連携を確認
中 エレベーター機械室 冠水・停電時の停止に備え、階段避難の動線と表示を確保
中 擁壁・外構(崖線沿いの物件) 定期点検とひび割れ・排水不良の早期補修
中〜高 防水層・外壁(本記事の主題) 日常の漏水対策が非常時の被害拡大を防ぐ土台

2019年の台風19号では、都内近郊のマンションで地下の電気室が浸水し、長期間にわたり停電・断水・エレベーター停止が続いた事例が広く報じられました。三鷹市の場合、市全域が同じリスクを抱えているわけではありませんが、川沿い・崖線沿いに建つ物件は他人事ではない数字だと私は感じています。大規模修繕のタイミングは、防水・外壁の更新と同時に、こうした設備の位置を見直す数少ない機会でもあります。


三鷹市の防災補助・耐震助成

三鷹市は分譲マンションを対象にした耐震助成制度を設けています(出典:三鷹市「分譲マンション耐震助成制度のご案内」、最終更新2026年7月27日)。

助成内容 助成率 限度額
耐震アドバイザー派遣 100% 5万円/回(5回まで)
耐震診断 3分の2 200万円
補強設計 3分の2 200万円
耐震改修(延床面積1,000㎡未満) 23.0% 2,000万円
耐震改修(延床面積1,000㎡以上) 3分の1 2,000万円

対象は「複数の区分所有者が存する居住用マンション(店舗兼用は延床面積1/2以下)」「昭和56年5月31日以前に建築基準法に基づく確認または通知を受けて工事着手」「地上3階以上の耐火・準耐火建築物」「特定緊急輸送道路沿道建築物でないこと」の全条件を満たす必要があります。具体的な申請手続きや年度内の受付状況は、三鷹市の担当窓口への確認をおすすめします。予算に達し次第、申請受付が終了する可能性がある制度のため、検討される場合は早めの相談をおすすめします。

なお三鷹市には木造住宅を対象にした別枠の耐震診断・耐震改修助成制度もありますが、分譲マンション(共同住宅)はこちらの対象外です。ご自身の建物がどちらの制度に該当するかを見誤ると、申請そのものが受理されないケースもあるため、まずは分譲マンション向けの制度であることを窓口で確認したうえで進めることをおすすめします。


まとめ|今週動くこと3点

三鷹市のマンション管理組合・オーナーさまに、今週すぐできることを3つお伝えします。

  1. 三鷹市浸水ハザードマップ(第11版)で、自分の建物が河川沿いの浸水想定区域や崖線沿いの土砂災害警戒区域に含まれるかを確認する
  2. 屋上防水・ドレン・バルコニー排水の点検記録を、直近3年分だけでも見直す
  3. 受変電設備・給水ポンプの設置階を確認し、地下や1階にある場合は大規模修繕の議題に加える

理事会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお問合せフォームからお声がけください。分譲マンションの管理組合さまは管理組合向けサービス、賃貸マンション・ビルのオーナーさまはビルオーナー向けサービスのページもご参照ください。


よくあるご質問

Q. 三鷹市は台地の上だから、水害の心配はないと聞きましたが本当ですか?

A. 市の大部分は武蔵野台地上にあり地盤は比較的良好ですが、神田川・野川・仙川沿いの低地には浸水想定区域が指定されています。建物の立地がどちらに該当するかをハザードマップで確認することをおすすめします。

Q. 崖線沿いにマンションがあるのですが、何を確認すればよいですか?

A. 土砂災害(特別)警戒区域に該当するかを三鷹市または東京都のマップで確認し、該当する場合は擁壁・外構の点検記録の有無を大規模修繕の議題に加えることをおすすめします。

Q. 屋上防水の工事はどのくらいの費用がかかりますか?

A. 防水工事は工法・面積により5,000〜8,000円/㎡が目安です。物件の規模や劣化状況により変動するため、無料で概算お見積りを提示できます。

Q. 台風が来る前に、緊急で屋上だけ直すことはできますか?

A. ロープアクセス工法であれば、足場を組まずに当日〜翌日に着手できるケースがあります。応急補修のご相談はお早めにお願いします。

Q. 分譲マンションでも耐震助成は使えますか?

A. 三鷹市の場合、3階建て以上・耐火または準耐火建築物・昭和56年5月31日以前に建築確認を取得しているなどの要件を満たせば対象になります。詳細は市の窓口でご確認ください。

Q. 液状化のリスクはどう考えればよいですか?

A. 三鷹市は武蔵野台地上にあるため都内平均より液状化の可能性は低い傾向にありますが、液状化予測図(令和3年度改訂版)で地点ごとの相対評価が公表されています。地盤調査の履歴がない古い建物は、大規模修繕の機会に基礎まわりの点検も合わせて検討することをおすすめします。

Q. 木造住宅向けの耐震助成と分譲マンション向けの助成は違うのですか?

A. 三鷹市では木造住宅(戸建て等)向けの耐震診断・改修助成制度と、分譲マンション向けの耐震助成制度が別枠で設けられています。共同住宅にお住まいの場合は、分譲マンション向けの制度が対象になりますので、申請前に窓口で対象制度をご確認ください。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月24日時点で公表されている三鷹市および東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に耐震助成を申請される前に、必ず三鷹市の担当窓口へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月24日

江戸川区のマンション漏水・防災対策|ゼロメートル地帯のハザードマップと大規模修繕の優先順位【2026年度版】

2026年9月24日 更新

小岩のマンションで理事会に呼ばれたとき、理事長さまから「うちは荒川にも江戸川にも近いから、正直、大雨のたびに落ち着かない」と言われたことがあります。私はその場で否定しませんでした。江戸川区は東京23区の中でも、水害のリスクを数字で見たときに一番正直に向き合わなければならない区の一つだからです。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に携わってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間として、今日は江戸川区のハザードマップの数字と、大規模修繕で先に手を打つべき場所を整理します。


結論:江戸川区の分譲・賃貸マンションで優先すべきは「屋上防水・排水設備」と「電気室・給水ポンプの浸水対策」です

先に結論を申し上げます。江戸川区の大規模修繕で私が最初に確認するのは、次の2点です。

1つ目は屋上防水とバルコニー排水経路の健全性。江戸川区は区面積の約7割が満潮位より低い「ゼロメートル地帯」です(出典:三井住友トラスト不動産「まちの防災情報 江戸川区」)。台風やゲリラ豪雨のたびに敷地の排水能力が追いつかなくなりやすく、屋上・バルコニーからの雨水侵入がそのまま漏水事故につながります。

2つ目は電気室・給水ポンプ・自家発電設備の設置位置。荒川と江戸川が氾濫した場合、区内には浸水深10m以上・浸水継続時間2週間以上になるエリアがあると想定されています(出典:同上、江戸川区水害ハザードマップ第2版)。地下や1階に電気室・ポンプ室がある建物では、水没した瞬間にエレベーター・給水・照明のすべてが止まります。この2点を大規模修繕の計画段階で見直すことが、江戸川区のマンションにとって最優先の対策になると私は考えています。


江戸川区のハザードマップを1枚で読む

区と国が公表している資料を、マンション修繕の視点で1枚に整理しました。

災害種別 江戸川区の該当 想定・該当範囲
洪水(荒川・江戸川、想定最大規模降雨) あり 浸水深10m以上・浸水継続2週間以上になるエリアを含む
内水氾濫(下水道の排水能力超過) あり 短時間豪雨で区内の低地に広く発生し得る
高潮 あり 台風・低気圧による海面上昇で河川へ海水が逆流
土砂災害警戒区域 指定なし 区内全域が平坦な沖積低地のため(出典:東京都建設局「土砂災害(特別)警戒区域の区市町村別指定状況」)
液状化 可能性あり 液状化予測図(令和6年3月改訂)で相対評価を確認できる(出典:江戸川区「液状化予測図」)
津波 限定的 東京湾内奥のため区独自のハザードマップは高潮想定に統合されている

過去の被害では、大正6年(1917年)の高潮で区内を含む一帯で240名が犠牲になり、昭和24年(1949年)のキティ台風では区の約6割が水没した記録が残っています(出典:三井住友トラスト不動産「まちの防災情報 江戸川区」)。荒川・江戸川が同時に氾濫した最悪のケースでは、江戸川区・江東区・墨田区・葛飾区・足立区の江東5区全体で最大約250万人が浸水被害に遭うと想定されており、江東5区広域避難計画の検討対象にもなっています(出典:内閣府「大規模・広域避難に関する定量的な算出方法~江東5区における具体的な検討~」)。

正直に申し上げます。この数字を最初に見たとき、私自身も「ここまでか」と思いました。ただし過去の水害と今の建物の防水性能・排水能力は別の話です。ハザードマップは「怖がるための資料」ではなく、「どこを優先して直すかを決めるための資料」だと私は理事会でお伝えしています。


地域特性と漏水事故の関係

江戸川区は一つの顔ではなく、エリアごとにリスクの出方が違います。

臨海部・タワーマンション(西葛西・南葛西・臨海町など):海風による塩害で、外壁のシーリング劣化と鉄部の腐食が早く進みます。共用部の給排水管や設備配管の腐食も、内陸部より数年早く表面化する傾向があると私は現場で感じています。

中央部・低地の中高層マンション(中央・松島・小岩など):ゼロメートル地帯特有の内水氾濫リスクが高く、地下・半地下の駐車場や電気室が浸水すると、建物全体が長期間使用不能になりかねません。

荒川・江戸川沿いの物件:洪水と高潮が重なる複合災害の想定区域に入りやすく、想定最大規模降雨時には浸水継続が2週間を超えるエリアもあります。避難のタイミングだけでなく、垂直避難(上層階への移動)を前提にした建物内の備えが必要になります。

いずれのエリアでも共通するのは、「日常の漏水対策」と「非常時の浸水対策」がつながっているという点です。日頃の屋上防水・排水ドレンの点検を怠っている建物は、台風時の内水氾濫でも被害が大きくなります。


大規模修繕で必ずチェックすべき漏水ポイント7つ

私が漏水対応の現地調査で必ず見る7カ所です。江戸川区のような低地・多湿エリアでは、特に排水系統の劣化が早く進みます。

  1. 屋上防水層:経年劣化・膨れ・亀裂の有無。トップコートの摩耗だけでも雨水侵入のリスクが上がります。
  2. シーリング(目地):外壁パネル間・サッシまわりのシーリング材の硬化・ひび割れ。
  3. バルコニー排水(ドレン):落ち葉やゴミによる詰まりは、ゲリラ豪雨時に排水能力を一気に落とします。
  4. 屋上ドレン・オーバーフロー管:屋上に水がたまる「ドレン詰まり」は、江戸川区のような多雨エリアで漏水事故の最多原因の一つです。
  5. パラペット・笠木の立上り部:雨水の吹き込みが起きやすく、防水層の切れ目になりやすい箇所です。
  6. サッシまわりのシール:強風を伴う台風時、サッシ枠からの雨水侵入が急増します。
  7. エキスパンションジョイント:建物の伸縮を吸収する部材の劣化は、地震後の漏水事故の引き金にもなります。

これらは足場を組んでも、ロープアクセスでも点検・補修できます。ただし江戸川区のように台風シーズンの緊急対応が読みにくいエリアでは、足場の設置に日数がかかる工法より、即日着手できる工法を選べるかどうかが被害の拡大を左右します。技術的な詳細は姉妹サイトのロープアクセスドットコムでも解説しています。


漏水緊急対応でロープアクセスが強い理由

台風接近が予報された段階で「屋上の防水が心配」というご相談をいただくことがあります。仮設足場は組み立てだけで数日、規模によっては1〜2週間かかります。一方、ロープアクセス工法であれば、資材と作業員の手配ができ次第、当日〜翌日には屋上やバルコニーの応急補修に着手できます。

目安として、10階建て・外周80m・工期3ヶ月の大規模修繕を想定した場合、足場費用は約168万円、ロープアクセスなら約59万円というケースがあります(物件の規模・形状により変動するため、あくまで目安の一例です)。緊急の部分補修であれば、この差はさらに大きくなります。台風シーズンにピンポイントで屋上・バルコニーの防水だけを直したいというご相談には、ロープアクセスの機動力が向いていると私は考えています。

株式会社明誠は日本で数少ない、足場・ロープアクセス・ハイブリッド工法の3つから建物に最適な工法を提案できる会社です。ロープアクセスの高所作業について、明誠と全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。工法選びの考え方は明誠の施工事例からもご確認いただけます。詳しい技術情報はロープアクセスドットコムにまとまっています。


防災上の共用部(避難通路/エレベーター/受電設備/給水ポンプ/自家発電)の位置と修繕優先度

江戸川区のような浸水継続2週間以上を想定すべきエリアでは、共用部の設備配置そのものが防災計画の一部になります。私が理事会にお伝えしている優先順位は次のとおりです。

優先度 設備 チェックポイント
高 受変電設備・自家発電設備 地下・1階設置の場合、浸水想定深を超える高さへの移設・かさ上げを検討
高 給水ポンプ室 停電・浸水時の給水停止リスク。予備電源との連携を確認
中 エレベーター機械室 冠水時の停止に備え、階段避難の動線と表示を確保
中 避難通路・共用廊下 浸水時に上層階へ垂直避難できる動線の明確化
中〜高 防水層・外壁(本記事の主題) 日常の漏水対策が非常時の被害拡大を防ぐ土台

2019年の台風19号では、都内近郊のタワーマンションで地下の電気室が浸水し、長期間にわたり停電・断水・エレベーター停止が続いた事例が広く報じられました。江戸川区は当時のその物件よりも浸水想定が大きいエリアを抱えており、他人事とは思えない数字だと私は感じています。大規模修繕のタイミングは、防水・外壁の更新と同時に、こうした設備の位置を見直す数少ない機会でもあります。


江戸川区の防災補助・耐震助成

江戸川区は住宅・建築物の耐震化助成制度の中で、分譲マンションも対象にしています(出典:江戸川区「分譲マンション」、最終更新2026年7月3日)。

助成内容 助成率 対象要件
耐震診断 3分の2 3階建て以上・耐火または準耐火建築物
耐震改修設計 3分の2 複数の区分所有者が自ら居住していること
耐震改修工事 2分の1(戸数に応じた上限額あり) 昭和56年5月31日以前に建築確認を取得

具体的な上限額は戸数によって変わるため、区の建築指導課耐震化促進係(電話:03-5662-6389)への確認が必要です。あわせて、令和8年度からは戸建て向けの老朽住宅除却工事助成の上限額が50万円から100万円に拡充されています(出典:江戸川区「住宅・建築物の耐震化助成制度」、最終更新2026年5月18日)。年度の予定予算額に達し次第、申請受付が終了する制度のため、検討される場合は早めの相談をおすすめします。


まとめ|今週動くこと3点

江戸川区のマンション管理組合・オーナーさまに、今週すぐできることを3つお伝えします。

  1. 区の水害ハザードマップ第2版で、自分の建物の浸水想定深と継続時間を確認する
  2. 屋上防水・ドレン・バルコニー排水の点検記録を、直近3年分だけでも見直す
  3. 受変電設備・給水ポンプの設置階を確認し、地下や1階にある場合は大規模修繕の議題に加える

理事会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお問合せフォームからお声がけください。分譲マンションの管理組合さまは管理組合向けサービス、賃貸マンション・ビルのオーナーさまはビルオーナー向けサービスのページもご参照ください。


よくあるご質問

Q. 江戸川区は本当にそんなに浸水するのですか?

A. 荒川・江戸川の両方が想定最大規模降雨で氾濫した場合の想定であり、毎年起きる規模の話ではありません。ただし区の7割がゼロメートル地帯であることは事実で、想定を知ったうえで建物の防水・設備配置を見直すことに意味があります。

Q. うちのマンションは高台にないので、防水以外にできることはありますか?

A. 受変電設備・給水ポンプの設置階の確認、止水板の準備、避難動線の見直しが有効です。大規模修繕のタイミングで設備移設を検討する管理組合さまも増えています。

Q. 屋上防水の工事はどのくらいの費用がかかりますか?

A. 防水工事は工法・面積により5,000〜8,000円/㎡が目安です。物件の規模や劣化状況により変動するため、無料で概算お見積りを提示できます。

Q. 台風が来る前に、緊急で屋上だけ直すことはできますか?

A. ロープアクセス工法であれば、足場を組まずに当日〜翌日に着手できるケースがあります。応急補修のご相談はお早めにお願いします。

Q. 分譲マンションでも耐震助成は使えますか?

A. 江戸川区の場合、3階建て以上・耐火または準耐火建築物・昭和56年5月31日以前に建築確認を取得しているなどの要件を満たせば対象になります。詳細は区の窓口でご確認ください。

Q. 液状化のリスクはどう考えればよいですか?

A. 江戸川区は液状化予測図(令和6年3月改訂)で相対的な評価が公表されています。地盤調査の履歴がない古い建物は、大規模修繕の機会に基礎まわりの点検も合わせて検討することをおすすめします。


出典・参考資料

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月24日時点で公表されている江戸川区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に耐震助成を申請される前に、必ず江戸川区の建築指導課耐震化促進係へ最新の内容をご確認ください。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月24日

桶川市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

桶川市の分譲マンションで大規模修繕を控えている管理組合が、まず知っておくべきことは何か。私が今回いちばん驚いたのは、桶川市には「マンション長寿命化促進税制」そのものが存在しないという事実でした。固定資産税・都市計画税の減免・特例制度一覧のページを隅々まで確認しましたが、大規模修繕を行ったマンションの固定資産税を減額する制度は、桶川市のどこにも見当たりませんでした。

もう1つ、見過ごせない変化がありました。桶川市が独自に開いていた「マンション管理相談」は、令和6年1月の相談をもってすでに終了しています。今は埼玉県が運営する「住まい相談プラザ」(JR大宮駅構内)への案内に切り替わっています。市に電話をして「マンション相談はいつですか」と聞いても、もうその窓口自体が存在しないのです。

株式会社明誠の本間です。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。この記事では、桶川市の管理組合が令和8年度に使える制度を、市の公式ページ・埼玉県の制度の原文にあたって整理します。数字はすべて出典リンク付きで書きます。

Q. 桶川市の分譲マンションで、大規模修繕に関連して使える制度は?
A. 共用部の工事費そのものに直接効く市独自の補助金は、公表情報からは確認できませんでした。使えるのは、①埼玉県の吹付けアスベスト等含有調査・除去補助金(該当する場合、除去等工事費は補助率3分の2・上限800万円)と、②埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣(無料相談、ただし令和8年度分はすでに予算上限に達し受付終了)の2本です(出典:埼玉県、埼玉県)。

この記事の結論(先にお伝えします)

桶川市の分譲マンション管理組合が押さえるべきことは、次の3点です。

  1. マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)は、桶川市には存在しません。 近隣の鴻巣市などでは大規模修繕後の固定資産税減額が用意されていますが、桶川市の固定資産税ページ・減免特例一覧のどこにも該当項目がありません。税制メリットを前提に資金計画を立てることはできません。
  2. 市のマンション管理相談窓口は令和6年1月で終了済み。 今は埼玉県の「住まい相談プラザ」(大宮駅、毎日10:00〜18:30)が受け皿です。理事会が「市に聞けば分かる」と思っていると、たらい回しになります。
  3. 埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣は桶川市も対象ですが、令和8年度分はすでに終了しています。 予算上限に達したためで、次に使えるのは令和9年度(最終年度)分からです。

なお、ロープアクセス工法(無足場工法)そのものの一般的な技術解説は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。

桶川市で令和8年度に管理組合が使える主な制度を、一覧にしておきます。

制度名 共用部に使えるか 金額 窓口
埼玉県 吹付けアスベスト等含有調査・除去補助金 使える可能性あり 調査:1検体8万円・1棟あたり25万円上限/除去等:費用の3分の2・上限800万円(延べ面積1,000㎡未満は400万円) 埼玉県建築安全課(048-830-5527)
マンション管理計画認定制度 制度の認定 市への申請手数料は無料(システム利用料・事前確認審査料は別途) 桶川市建築課 営繕・住宅係
マンション長寿命化促進税制 制度なし(確認できず) ― ―
埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣 相談が無料 無料・最大2回派遣。令和8年度分は受付終了、令和9年度が最終年度 埼玉県住宅課
桶川市住宅リフォーム資金補助金 使えない(専有部のみ) 工事費の5%・上限10万円(市内業者施工が条件) 産業観光課
桶川市既存木造住宅耐震化事業 使えない(木造戸建て限定) 診断上限5万円・改修上限80万円 建築課 建築指導係
桶川市脱炭素事業推進奨励金 共用部への適用は不明確 機器ごと定額(例:太陽光5万円)/令和8年度は受付終了 環境対策推進課

「使えない」も「制度自体がない」も、正直に並べました。期待させてから外すのが、私は一番よくないと思っています。

マンション長寿命化促進税制|桶川市には制度そのものがありません

大規模修繕を行ったマンションの固定資産税を減額する「マンション長寿命化促進税制」は、国の地方税法改正を受けて各市区町村が条例で導入するかどうかを判断する制度です(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制」)。

桶川市の「固定資産税・都市計画税の減免・特例制度」一覧ページを確認すると、掲載されている制度は次の10項目でした(出典:桶川市「固定資産税・都市計画税の減免・特例制度」)。

太陽光発電設備に係る固定資産税(償却資産)の申告及び課税の軽減措置/地域決定型地方税制特例措置(わがまち特例)/家屋の評価のしくみと新築住宅に対する固定資産税の減額/固定資産税・都市計画税の減免/高齢者等居住改修(バリアフリー改修)工事に伴う固定資産税の減額/認定長期優良住宅に係る固定資産税の減額/サービス付き高齢者向け住宅に係る固定資産税の減額/住宅耐震改修に伴う固定資産税の減額/住宅の熱損失防止(省エネ)改修工事に伴う固定資産税の減額

このリストに「マンション長寿命化促進税制」「大規模修繕」に関する項目は含まれていません。 導入するかどうかは市区町村の判断に委ねられている制度である以上、「桶川市が今後導入する可能性がゼロ」とまでは言い切れませんが、少なくとも令和8年9月時点の公表情報からは、この制度は確認できませんでした。

私がこれまで訪れた自治体の中には、この税制を条例化しているところとしていないところが両方あります。大規模修繕の資金計画を立てる際、「固定資産税が減額されるはず」という前提を桶川市の管理組合が持つと、後で計画が狂います。 総会資料には、この点を明記しておくことをお勧めします。

なお、一覧には「住宅耐震改修に伴う固定資産税の減額」という別の項目があります。これは旧耐震基準(昭和57年1月1日以前建築)の住宅が耐震改修を行った場合に固定資産税を減額する、地方税法に基づく全国共通の制度で、木造戸建てに限定した市の補助制度(後述)とは別枠です。分譲マンションが対象になり得るか、対象となる場合の減額率・期間について、桶川市の公開ページからは共同住宅への適用可否を明確に読み取ることができませんでした。該当しそうな旧耐震マンションの管理組合は、税務課へ直接ご確認ください。

埼玉県 吹付けアスベスト等含有調査・除去補助金|桶川市は対象区域です

この制度は埼玉県が運営しており、対象外となる市が12市定められています(出典:埼玉県「民間建築物のアスベスト除去等に対する補助制度のご案内」)。

さいたま市、川越市、熊谷市、川口市、所沢市、春日部市、狭山市、上尾市、草加市、越谷市、新座市及び久喜市

桶川市はこの12市に含まれていません。 つまり、桶川市内のマンションは埼玉県の制度をそのまま使える対象区域にあります。県のページの掲載日は2026年5月11日です。

いくらもらえるのか

項目 補助率・上限額
含有調査費 1検体あたり8万円、かつ1棟あたり25万円が上限
除去等工事費 費用の3分の2、上限800万円(延べ面積1,000㎡未満の建築物は上限400万円)

対象となるのは吹付けアスベスト・吹付けロックウール・吹付けパーライト・吹付けバーミキュライトで、アスベストを重量の0.1%を超えて含有するもの。除去・封じ込め・囲い込み、または解体工事が対象です。申請の窓口も桶川市役所ではなく埼玉県都市整備部建築安全課(048-830-5527)で、市を経由しません。

上限800万円という金額は、戸数で割ると体感しやすくなります。80戸のマンションなら1戸あたり10万円相当、40戸なら1戸あたり20万円相当です。仮設足場費が総工費の15〜25%を占めることを考えると、除去費用の補助だけで足場費の一部を相殺できる規模感だと私は見ています。築年数の古いマンションで、機械室・パイプシャフト・駐車場の天井などに吹付け材が残っている場合、大規模修繕の劣化診断とあわせて調査だけでも先に済ませておく価値があります。

桶川市のマンションは「新旧が同居する」まちです

ここが、桶川市を語るうえで避けて通れない特徴です。全国マンションデータベースに登録されている桶川市内の分譲マンション(確認できた範囲で54件)を見ると、最新の物件は2026年3月竣工の「サンクレイドル桶川2」、最も古いものは1992年2月竣工の「ウィズ桶川リエンテ」でした(出典:全国マンションデータベース「桶川市|登録分譲マンション一覧」)。竣工年の幅は34年に及びます。

立地は桶川駅周辺(駅から徒歩1〜20分圏内)に最も集中し、次いで北上尾駅周辺(徒歩3〜7分圏内)に多く見られます。町丁別では「若宮」に18件、「泉」に7件が登録されており、駅周辺の限られたエリアに、新耐震初期の物件から2026年築の新築まで幅広い世代のマンションが混在しているのが桶川市の実像です。

このデータベースはすべての物件を網羅した公式統計ではなく、桶川市が公表している分譲マンションの棟数・築年数の全数調査結果を私は確認できませんでした。ですので断定はできませんが、築30年を超える物件から築数年の新築まで、修繕サイクルがバラバラに存在するという傾向ははっきり見て取れます。この状況が意味することは、実務的には2つあります。

  1. 旧耐震(昭和56年5月31日以前)に該当する分譲マンションが桶川市に存在する可能性は、鴻巣市などの新しいまちより高い。 1992年築の物件でもすでに新耐震基準ですが、周辺により古い賃貸・戸建てが混在する地域特性を踏まえると、旧耐震の共同住宅がゼロとは言い切れません。
  2. 築20〜30年クラスの、2回目の大規模修繕を控えた管理組合が、桶川市では一定のボリュームを持っている可能性が高い。 この年代は、初回修繕の経験を踏まえた長期修繕計画の「実績に基づく見直し」が論点になります。

ご自身のマンションが何年に竣工したか、そして周辺に同世代の物件がどれくらいあるかは、理事会で一度共有しておく価値のある情報だと思います。

マンション管理計画認定制度|桶川市の独自基準はありません

マンション管理計画認定制度は、管理組合が作成した管理計画を自治体が認定する仕組みです(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。桶川市のページには、次のように明記されています(出典:桶川市「マンション管理計画認定制度」)。

市への申請手数料は無料です。ただし、公益財団法人マンション管理センターが運用する管理計画認定手続支援サービスのシステム利用料のほか、事前確認に係る審査料が別途必要です。

申請手数料そのものは無料という点は、管理組合にとって分かりやすいメリットです。一方で、システム利用料と事前確認審査料という2つの実費は発生しますので、私は総会資料には「市への申請手数料は無料。ただしシステム利用料と事前確認審査料は別途必要」と、両方セットで書くことをお勧めしています。

もう1つ、認定基準についてはこう明記されています。

市の独自基準はなく、国がマンション管理適正化指針に定める基準と同一の内容です。

上乗せ基準を設けている自治体もある中で、桶川市はシンプルな運用です。有効期間は認定日から5年間で、更新しなければ効力を失います。窓口は建築課 営繕・住宅係(048-788-4956)、所在地は桶川市泉一丁目3番28号です。総会での決議 → 認定申請依頼 → 事前確認 → 認定申請 → 認定 → 公表、という流れは他の自治体と共通しています。理事会だけでは前に進みませんので、逆算した準備が必要です。

桶川市既存木造住宅耐震化事業|マンションは対象外です

桶川市には木造住宅を対象にした耐震診断・耐震改修の補助制度がありますが、対象は明確に木造限定です(出典:桶川市「桶川市既存木造住宅耐震化事業」)。

工事種別 補助率 上限額
耐震診断 2分の1 5万円
耐震改修 23% 80万円
リフォーム(耐震改修と合算) 2分の1 80万円(耐震改修費との合算上限)
建替え 23% 80万円

対象は「在来軸組構法または枠組壁工法によって建築された建築物」で、着工が昭和56年5月31日以前(旧耐震基準)のものに限られます。鉄筋コンクリート造・鉄骨造の分譲マンションは、この補助制度の対象にはなりません。窓口は建築課 建築指導係(048-788-4957)です。

桶川市は「限定特定行政庁」|大きな建物は越谷建築安全センターが窓口です

建築基準法第12条に基づく定期報告制度(いわゆる12条点検)や建築確認は、「どこの市町村に建物があるか」だけでなく、「その市がどこまでの権限を持つ特定行政庁か」によって窓口が変わります。桶川市は、平成10年4月から「限定特定行政庁」という立場にあります(出典:埼玉県「建築行政法規等担当窓口一覧」)。

限定特定行政庁とは、建築確認・検査の権限を限定的にしか持たない特定行政庁のことです。桶川市の場合、次のように窓口が分かれます。

  • 桶川市建築課が担当:木造2階建て・延べ面積300㎡以下・高さ16m以下など、限定的な範囲の建築物(電話:048-788-4957)
  • 越谷建築安全センターが担当:それ以外の建築物(多くの分譲マンションはこちらに該当する可能性があります)

鴻巣市のように市が自前で建築確認を行う特定行政庁である自治体と、桶川市のような限定特定行政庁とでは、規模の大きな共同住宅の確認申請・定期報告の実質的な窓口が異なります。ご自身のマンションの12条点検の提出先・報告状況について、桶川市建築課(048-788-4957)と越谷建築安全センターのどちらが窓口になるかは、まず桶川市建築課に電話で確認するのが確実です。 マンション管理計画認定制度の審査でも、12条点検の報告状況が確認されることがありますので、認定を検討している管理組合はなおさら早めの確認をお勧めします。

桶川市住宅リフォーム資金補助金|専有部のみ・市内業者限定です

令和8年4月1日から受付が始まったこの補助金は、対象を次のように定めています(出典:桶川市「令和8年度桶川市住宅リフォーム資金補助金」)。

マンションの場合、個人の専用部分のみが対象となります。

補助額は工事費の5%(上限10万円)。ブロック塀等の撤去・処分については、費用の50%・上限10万円という別枠もあります。ただし共用部の外壁塗装や防水工事といった大規模修繕そのものには使えません。

もう1つ、見落とされがちな要件があります。

市内に事業所を有する施工業者が行うこと

これは施工業者が桶川市内に事業所を置いていることを求める要件です。株式会社明誠は東京都東大和市の会社であり、桶川市内に事業所を置いていないため、当社が施工する工事はこの補助金の対象にはなりません。 自社に不利な情報ですが、正直にお伝えしておきます。工事完了期限は令和9年3月19日、問い合わせは産業観光課(048-786-3211)です。

桶川市脱炭素事業推進奨励金|令和8年度分はすでに受付終了です

桶川市には太陽光発電・蓄電池・V2H充電設備などを対象にした奨励金制度もあります(出典:桶川市「桶川市脱炭素事業推進奨励金」)。太陽光発電・蓄電池・V2Hはそれぞれ定額5万円などの支給です。

ただし2点、注意が必要です。第一に、交付条件は「市内に住宅を所有し居住する住宅に機器を設置」となっており、分譲マンションの共用部設備(例えば共用灯の太陽光化や共用蓄電池)への適用可否は、ページ上では明確にされていません。 第二に、令和8年度の申請受付は令和8年6月11日ですでに終了しています。 機器の設置工事着工前の申請が必須で、この記事を公開している時点(9月)では、令和8年度枠は使えません。共用部への活用を検討する管理組合は、来年度の受付開始時期を環境対策推進課(048-788-4924)に確認しておくことをお勧めします。

桶川市のマンション管理相談は終了、今は埼玉県の「住まい相談プラザ」へ

もう1つ、桶川市の管理組合にとって知っておくべき変化があります。桶川市が独自に開催していた「マンション管理相談」は、令和6年1月の相談をもって終了しました(出典:桶川市「マンション管理相談」)。

現在案内されている代替窓口は、埼玉県が埼玉県住宅供給公社に委託して運営する「住まい相談プラザ」です(出典:桶川市「住まい相談プラザ」)。

項目 内容
場所 JR大宮駅コンコース西口内
営業時間 午前10時〜午後6時30分(12月29日〜1月3日を除き毎日)
相談内容 リフォーム、マンション管理、法律相談、県営住宅の案内など
費用 無料
問い合わせ 048-658-3017

市の窓口が終了しているため、「桶川市役所にマンション相談の予約を取りたい」と考えている理事長さまは、まず大宮駅の住まい相談プラザに問い合わせるのが早道です。 桶川駅から大宮駅までは高崎線で1本、20分弱です。

埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣|桶川市は対象ですが令和8年度分は終了しています

埼玉県は、分譲マンションの管理組合に対してマンション管理士等を無料で派遣する制度を運営しています(出典:埼玉県「市部における埼玉県分譲マンションアドバイザーの無料派遣について」)。桶川市はこの対象市に含まれています。

派遣は無料、1組合あたり最大2回まで利用できます。ここで大事な注意点があります。

令和8年度は予算上限に達しましたので、終了しました

令和8年度分の新規申込は、すでに締め切られています。 令和8年度は約13組合、令和9年度は約9組合が派遣対象の見込みで、令和9年度がこの制度の最終年度です。

令和10年度以降、派遣については各市にお問い合わせください。

つまり、県によるこの制度は令和9年度で終わり、令和10年度以降は市ごとの対応に移行する見通しです。桶川市が独自にこの制度を引き継ぐかどうかは、現時点の公表情報からは確認できませんでした。長期修繕計画の見直しで第三者の意見を聞きたい管理組合は、令和9年度の受付開始と同時に申し込むくらいの心づもりでいることをお勧めします。申込窓口は埼玉県都市整備部住宅課マンション・居住支援担当(048-830-5573)です。

紅花の集散地だったまちだからこそ言えること

桶川市は中山道六十九次の6番目の宿場「桶川宿」であり、江戸時代には「武州紅花」の一大集散地として栄えました。紅花は染料・口紅の原料として京都にまで運ばれ、桶川宿の商人たちが最上(山形)の紅花商人と肩を並べるほどの財を成したと伝えられています。

この歴史には、大規模修繕の実務にもつながる話があると私は考えています。紅花という一次産品を遠方まで安定して運び、価値を落とさず届けるには、荷造り・輸送・保管という一つひとつの工程の質が問われました。どこか一つの工程で手を抜けば、最終的な商品価値が下がる。 これは、劣化診断・工法選定・施工・アフター点検という大規模修繕の一連の工程にもそのまま当てはまります。足場代を削るために劣化診断を省略したり、安さだけで施工会社を選んだりすれば、10年後の建物価値という「最終的な商品」が損なわれます。

もう1つ、桶川駅周辺は江戸時代からの宿場町としての町割りが残るエリアと、高崎線沿線の宅地開発で生まれた比較的新しい住宅地が隣接しています。古いものと新しいものが同じまちの中で共存している点は、先ほど述べた「築1992年から2026年まで、世代の異なるマンションが同じ駅周辺に混在する」という桶川市の物件傾向とも重なる、私にとって印象的な符合でした。

桶川市で無料・低コストで使える相談窓口

  • 住まい相談プラザ(048-658-3017):リフォーム・マンション管理・法律相談(大宮駅、無料)
  • 埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣(048-830-5573):令和9年度受付開始を待つ(無料・最大2回)
  • 桶川市建築課 営繕・住宅係(048-788-4956):マンション管理計画認定制度
  • 桶川市建築課 建築指導係(048-788-4957):12条点検の窓口確認、耐震化事業(木造限定)
  • 埼玉県建築安全課(048-830-5527):吹付けアスベスト補助金の申請
  • 桶川市税務課(048-788-4916):固定資産税に関する確認(長寿命化促進税制は制度なし)

モデルケース|桶川市の2つの典型でいくらになるか

桶川市の物件傾向(駅近・新旧混在)を踏まえて、2つのケースで試算します。金額はいずれも目安で、実際は現地調査のうえでお見積りします。

ケースA:桶川駅圏の単棟型 築14年 10階建て・70戸

初回の大規模修繕を検討する段階です。足場工法での見積り概算は約7,900万円。ハイブリッド工法(外壁は足場、屋上・上層部の点検はロープアクセスを併用)に切り替えると約6,850万円(▲1,050万円、1戸あたり約15万円の圧縮)。工期は足場の架け払いが1回分減ることで、約5.5か月から約4.5か月に短縮できる見込みです。桶川市には長寿命化促進税制がないため、税制メリットを見込まず、純粋な工事費の圧縮効果として資金計画に組み込むことをお勧めします。

ケースB:北上尾駅圏の団地型 築29年 5階建て×3棟・90戸

過去に一度、外壁塗装のみの部分修繕歴があるケースです。全面的な大規模修繕(外壁塗装等・床防水・屋根防水を一体実施)を足場工法で行うと約1億400万円。ロープアクセス主体のハイブリッド工法では約8,800万円(▲1,600万円、1戸あたり約17.8万円の圧縮)。築29年で旧耐震・新耐震の境界に近い年代のため、まずは12条点検の報告状況と、越谷建築安全センター・桶川市建築課どちらが窓口かの確認を優先することをお勧めします。㎡単価の目安は、外壁塗装等3,500〜4,500円、タイル打診調査250〜500円、防水5,000〜8,000円。仮設足場費は総工費の15〜25%が一般的な水準です。

見積書で必ず確認していただきたい5点

  1. 足場・養生の仮設費が総工費に占める割合(一式表記でなく内訳を出してもらう)
  2. 含有調査(アスベスト等)の有無と、埼玉県補助金の申請サポートの可否
  3. 見積り時点で判明していない仮定数量が超過した場合の追加単価(契約書に明記してもらう)
  4. 足場リース期間が延びた場合の追加費用の負担者
  5. 設計監理者と施工会社との資本関係(利益相反の有無)

正直に申し上げます|私は施工会社の人間です

ここまでお読みいただいた方に、あらためてお伝えしておきたいことがあります。私は施工会社の人間であり、自社の工法を勧める立場にあります。その前提でこの先を読んでください。

ロープアクセス工法が万能というわけではありません。次のような条件では、足場工法のほうが適していることが実際にあります。

  • タイルの浮きが外壁面積のおおむね20%を超えている
  • バルコニー内部の防水や下地補修が主体になる
  • サッシ・開口部の交換を伴う
  • 敷地の外周に十分な平場が確保できる

また、「ロープアクセスなら住戸への立ち入りは一切不要」というのも正確ではありません。バルコニー内部や住戸まわりのシーリング打ち替えなどは、工法にかかわらず立ち入りが必要になる場合があります。曖昧なまま契約して後で叱られるのは、施工会社ではなく、それを住民に説明した理事会です。

私が3つの工法(通常の足場仮設、無足場工法であるロープアクセス、両者を組み合わせたハイブリッド)を持っている意味は、ここにあります。足場しか持たない会社は足場を勧めるしかなく、ロープしか持たない会社はロープを勧めるしかありません。3つ持っているからこそ、状況によっては足場を勧めることもできます。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員、ISO9001品質マネジメントシステム、日本ロープ高所作業協会の事務局。そして、日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しています。

フランチャイズの仕組みで各分野の専門会社が直接施工に入るため、中間マージンを圧縮しながら品質を保てます。これが「高品質で低価格」を成り立たせている仕組みです。技術面の詳しい解説はロープアクセスドットコムでご覧いただけます。

当社のロープアクセス工法そのものについてはロープアクセス工法のご紹介で、大規模修繕工事の総合的な進め方は大規模修繕工事のご紹介でご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容はマンション管理組合向けの大規模修繕サービスに、これまでの施工実績は明誠の施工事例にまとめています。漏水が起きている物件については漏水調査・止水工事もあわせてご覧ください。工法選定でお悩みの際はピンポイント施工のページも参考にしていただけます。

この秋、桶川市の管理組合がやることの順番

時期 やること 窓口・備考
9月〜10月 ご自身のマンションの竣工年・旧耐震か新耐震かを確認 登記簿・確認済証で確認
9月〜10月 吹付け材(機械室・PS・駐車場天井等)の有無を確認 該当すれば埼玉県建築安全課へ相談
10月 12条点検の窓口(桶川市建築課/越谷建築安全センター)を確認 048-788-4957
10月〜11月 大規模修繕の劣化診断を実施・前倒し アスベスト調査と同時実施を検討
11月〜12月 見積を3社取得。足場費の内訳・仮定数量超過単価を必須項目に 固定資産税減額は見込めない前提で試算
12月〜1月 管理計画認定を総会議案へ(市の手数料は無料) 長期修繕計画の見直しとセット
随時 埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣の令和9年度受付を待つ 埼玉県住宅課、令和8年度分は終了済み

よくあるご質問

Q. 桶川市の分譲マンションで、共用部の大規模修繕費用そのものに直接使える市の補助金はありますか。

A. 令和8年度の公表情報からは確認できませんでした。共用部そのものに直接効くのは、埼玉県の吹付けアスベスト補助金(該当する場合)です。桶川市住宅リフォーム資金補助金は専有部分のみが対象で、市内業者施工が条件です。

Q. 桶川市にはマンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)はありますか。

A. 桶川市の固定資産税・都市計画税の減免・特例制度一覧を確認しましたが、該当する制度は見当たりませんでした。近隣市にある制度と同じものが桶川市にもあると思い込まず、税務課(048-788-4916)へ直接ご確認ください。

Q. 埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣は、今すぐ申し込めますか。

A. 令和8年度分はすでに予算上限に達し受付が終了しています。次に申し込めるのは令和9年度(この制度の最終年度)分からです。埼玉県住宅課(048-830-5573)に、令和9年度の受付開始時期を確認しておくことをお勧めします。

Q. うちのマンションの12条点検は、桶川市とどちらが窓口になりますか。

A. 桶川市は限定特定行政庁のため、木造2階建て・延べ面積300㎡以下等の限定的な範囲を除き、多くの分譲マンションは越谷建築安全センターが窓口になる可能性があります。まずは桶川市建築課(048-788-4957)に、ご自身のマンションがどちらの窓口になるかをご確認ください。

Q. ロープアクセス工法にすれば、必ず費用は安くなりますか。

A. そうとは限りません。タイルの浮きが広範囲に及ぶ場合や、バルコニー内部の工事が主体になる場合は、足場工法のほうが効率的なことがあります。敷地条件や劣化状況によって最適な工法は変わりますので、まずは現地調査でご相談ください。

この記事のポイントまとめ

  • 桶川市にはマンション長寿命化促進税制(固定資産税減額)が存在しない
  • 市のマンション管理相談は令和6年1月で終了、今は県の住まい相談プラザ(大宮駅)
  • 埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣は対象市だが令和8年度分は受付終了
  • 桶川市は限定特定行政庁、大きな建物の12条点検は越谷建築安全センターが窓口の可能性
  • 分譲マンションは1992年〜2026年築と世代混在、54件が桶川・北上尾両駅周辺に集中

出典・参考資料


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月24日時点で公表されている桶川市および国土交通省・埼玉県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず桶川市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。特に住宅耐震改修に伴う固定資産税減額の共同住宅への適用可否、脱炭素事業推進奨励金の共用部への適用可否、12条点検の対象規模と窓口区分については、公開情報から断定できなかったため、窓口でのご確認をお願いします。

桶川市の管理組合さまへ。固定資産税の減額が見込めない分、埼玉県のアスベスト補助金と分譲マンションアドバイザー派遣(令和9年度分)をどう使うかが、資金計画のポイントになる方もいらっしゃると思います。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

ご相談は株式会社明誠のお問い合わせフォームから承っています。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月24日

葛飾区のマンション管理計画認定制度|手数料無料と事前確認ルートを本間社長が解説【2026年度版】

結論:葛飾区で管理計画認定を取ると何が変わるか、手数料はいくらか

先に結論からお伝えします。葛飾区でマンション管理計画認定を取得する場合、区への認定申請手数料(新規・変更とも)は無料です。ただし区の窓口に直接申請することはできず、必ず(公財)マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」を経由した事前確認を受けたうえで区へ申請する流れになります。事前確認のシステム利用料や審査料は別途かかります(出典:葛飾区「管理計画認定制度」、令和5年12月28日更新)。

私はこれまで多くの理事長さまから「認定を取ると具体的に何が変わるんですか」とご質問をいただいてきました。答えは、固定資産税の減額、フラット35の金利引下げ、共用部リフォーム融資の金利引下げという3つの経済効果に加え、修繕積立金が適正に積み立てられ、長期修繕計画がきちんと機能している「管理状態の良いマンション」であることが対外的に証明される点にあります。葛飾区は令和6年1月に認定行政庁としての運用を開始した比較的新しい自治体で、区独自の防災訓練やコミュニティ活動といった上乗せ基準を設けていない点も、申請を検討する管理組合にとっては取り組みやすい材料になります。

認定主体はどこか(葛飾区が認定行政庁)

マンション管理計画認定制度は令和4年4月に始まった国の制度ですが、実際に審査・認定を行う「認定行政庁」は自治体ごとに異なります(用語補足:認定行政庁とは、認定の申請を受け付けて審査し、認定書を交付する権限を持つ役所のことです)。特別区や中核市・施行時特例市はその区市自身が認定行政庁となり、それ以外の市町村(東京都では島しょ部など)は都道府県が担う仕組みです。

葛飾区は特別区のため、葛飾区長が認定行政庁です。区の公式サイトによると、葛飾区での運用開始は令和6年1月からとされており、東京23区の中では比較的あとから制度運用に加わった区にあたります(出典:葛飾区「管理計画認定制度」)。認定の有効期間は他の自治体と同様に5年間で、期限が来れば更新申請が必要になります(出典:東京都マンションポータルサイト「マンション管理計画認定制度」)。私は現場で「一度取れば安心」と誤解されている理事さんに何度もお会いしてきましたが、5年ごとの更新が前提の制度だという点は最初に必ずお伝えするようにしています。

認定17要件(総会・修繕計画・修繕積立金・長期修繕計画 等)

国が定める認定基準は、大きく5分野・合計17項目に整理されています(出典:国土交通省 認定基準)。

管理組合の運営に関する2項目では、管理者等と監事が定められていること、総会(区分所有者の集会)が定期的に開催されていることが求められます。管理規約に関する3項目では、規約そのものが整備されていることに加え、緊急時の専有部分への立入りに関する規定、修繕履歴の保管や情報提供に関する規定が必要です。管理組合の経理に関する3項目では、管理費と修繕積立金を区分経理していること、修繕積立金を他の会計に充当していないこと、滞納に適切に対処していることが確認されます。

もっとも項目数が多いのが長期修繕計画に関する7項目で、標準様式に準拠した長期修繕計画と修繕積立金額が総会で決議されていること、7年以内に作成または見直しがされていること、計画期間が30年以上かつ大規模修繕が2回以上含まれていること、一時金徴収を予定していないこと、修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと、計画最終年度に借入金残高が残らないこと、その計画に基づく資金計画が適切であることが審査されます。最後にその他の2項目として、組合員名簿・居住者名簿の適切な管理と、都道府県等が定めるマンション管理適正化指針への適合性が確認されます。葛飾区の場合、この最後の項目は「葛飾区マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること」という形で審査に組み込まれています(出典:葛飾区「管理計画認定制度」)。

独自基準の有無と実務への影響

ここが自治体ごとに差が出やすいポイントです。東京都内でも渋谷区のように、防災(マニュアル整備・訓練・自主防災組織・備蓄など)やコミュニティ活動(自治会加入・地域連携の担当者選任など)に関する独自の上乗せ基準を追加した区が出てきています(出典:渋谷区ポータル「マンション管理計画認定制度」)。

一方で葛飾区は、私が区の公式ページや適正化指針・適正化推進計画の公開資料を確認した範囲では、渋谷区のような具体的な防災訓練実施やコミュニティ活動の担当者選任といった追加要件は明記されていません。区が定める「葛飾区マンション管理適正化指針」(出典:葛飾区マンション管理適正化指針、令和7年12月2日更新)は、国が定めた17要件のうち「都道府県等が定める指針への適合性」という項目を区として具体化したもので、これに沿っていれば足り、それ以上に独立した上乗せ基準を課しているわけではないというのが実務上の理解になります。つまり葛飾区内のマンションは、国の17要件と区の適正化指針への適合を満たせば認定を受けられ、防災訓練の実施記録や自治会加入の証明といった追加書類を別途そろえる必要が基本的にはありません。

とはいえ、上乗せ基準がないからといって、修繕積立金の水準や長期修繕計画の中身が甘くて良いわけではありません。私が現場で一番悔しい思いをするのは、修繕積立金が「著しく低額」と判定されるほど乏しいまま大規模修繕の時期を迎えてしまった管理組合を見るときです。工事費そのものを圧縮できれば、同じ積立金額でも計画の実現性は上がります。実際に私たちが手がけた案件では、8階建て・外周90m程度の建物で、足場を組む従来工法だと概算150万円ほどかかる仮設費が、ロープアクセスドットコムで紹介している無足場工法(ロープアクセス工法)を使うと55万円程度に収まり、差額にして95万円ほど圧縮できたケースがありました(工事内容・建物条件により変動するため、あくまで目安としてご覧ください)。こうしたコスト最適化の積み重ねが、長期修繕計画の実現性、ひいては認定取得のしやすさにもつながっていきます。

手数料と申請ルート(事前確認あり・マンション管理センター経由)

手数料については冒頭でお伝えした通り、葛飾区への申請手数料は新規・変更とも無料です。ただし新規申請では区の窓口へ直接書類を持ち込むことができず、必ず(公財)マンション管理センターが運営する「管理計画認定手続支援システム」を経由して「事前確認適合証」を取得する必要があります(出典:葛飾区「管理計画認定制度」)。変更認定についても、軽微な変更を除きすべて変更申請の対象になる点は、私の経験上、見落とされやすいポイントです。

事前確認のルートはいくつかのパターンに分かれており、個別のマンション管理士に依頼する方法、管理業協会の適正評価制度を使う方法、日本マンション管理士会連合会の診断サービスを利用する方法、マンション管理センターに直接依頼する方法などがあります。いずれのルートでも、マンション管理センターへのシステム利用料として1申請あたり10,000円(税込)が必要で、日管連の診断サービスを使う場合は事前確認審査料として長期修繕計画1計画あたり10,000円(税込)が別途かかります(出典:マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。個別のマンション管理士や管理業協会のルートでは、審査料は管理組合と委託先の間で個別に決まります。私はいつも理事長さまに「区の手数料は無料でも、事前確認の実務費用はかかります」とお伝えするようにしています。総額の目安としては、ケースによって2万円台からそれ以上まで幅がありますので、事前に見積りを取ることをおすすめします。

認定の3つの経済効果(長寿命化促進税制/フラット35/共用部リフォーム融資)

管理計画認定を取得すると、主に3つの経済的なメリットにつながります。

1つ目は固定資産税の減額です。マンション長寿命化促進税制では、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事の3工事すべてを実施し、築20年以上・総戸数10戸以上などの要件を満たした認定マンションについて、工事完了の翌年度分の固定資産税(家屋部分)が減額されます。東京23区では減額率が2分の1と定められており、工事完了日から3か月以内に申告する必要があります。対象となる工事の完了時期は令和5年4月1日から令和9年3月31日までとされています(出典:東京都主税局、国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。

2つ目はフラット35の金利引下げです。認定マンションを購入する場合、借入金利が当初5年間で年0.25%引き下げられる制度が用意されています。3つ目は住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で、認定マンションが計画に基づいて修繕工事を行う際、基準金利から年0.2%程度の引下げが受けられます(出典:府中市「マンションの管理計画認定制度」広報資料)。金利や税制の数字は年度や制度見直しによって変わり得るため、正直に申し上げると、実際に申請される時点で最新の数値を住宅金融支援機構(jhf.go.jp)や葛飾区の窓口で確認していただくのが確実です。

逆算スケジュール(総会決議→書類準備→認定申請→交付)

認定取得までの流れは、おおむね次のように逆算して考えるとスムーズです。まず理事会・総会で長期修繕計画と修繕積立金額の見直しを決議します。標準様式に沿った計画になっているか、7年以内の見直しか、30年以上・大規模修繕2回以上を含むかを、この段階で確認しておく必要があります。

次に管理規約や総会議事録、組合員名簿・居住者名簿などの必要書類を整えます。ここで規約に緊急時の立入り規定や情報提供規定が盛り込まれているかを再確認してください。書類がそろったら、マンション管理センターの手続支援システムから事前確認を申し込み、事前確認適合証の交付を受けます。最後にその適合証を添えて葛飾区へ申請し、審査を経て認定書が交付されるという流れです。私の経験上、書類準備から適合証の取得までに数週間から1〜2か月程度を見込んでおくと、総会シーズンに慌てずに済みます。

まとめ+今週動くこと3点

葛飾区は区の手数料が無料で、渋谷区のような独自の上乗せ基準もない分、他区に比べて申請のハードルが低い自治体だと私は感じています。ただし新規申請は区の窓口への直接申請ができず、マンション管理センターの事前確認を経る必要がある点、そして令和6年1月に運用が始まったばかりの制度である点は見落とされがちです。

今週動けることとして、まず1つ目は長期修繕計画が7年以内に見直されているか、標準様式に沿っているかを理事会で確認すること。2つ目は修繕積立金の水準が著しく低額になっていないか、次回の大規模修繕費用の見積りと照らして点検すること。3つ目はマンション管理センターの事前確認ルートのうち、自分たちの管理組合にはどのパターンが合うか、費用感を含めて情報収集を始めることです。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがありますので、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。

大規模修繕そのものの費用を圧縮したい場合は、ロープアクセスドットコムで公開している無足場工法の技術情報や、明誠の大規模修繕工事の料金の考え方のページもあわせてご覧ください。管理組合さま向けのご相談は管理組合さま向けサービスのご案内から、実際の工事のイメージは明誠の施工事例でもご紹介しています。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけており、ロープアクセス工法における高所作業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。

よくあるご質問

Q. 葛飾区への申請手数料は本当に無料ですか?

A. はい、新規・変更とも区への認定申請手数料は無料です。ただしマンション管理センターの事前確認にかかるシステム利用料や審査料は別途必要になります。

Q. 葛飾区には独自の上乗せ基準がありますか?

A. 現時点で確認できる公開資料の範囲では、渋谷区のような防災訓練やコミュニティ活動に関する独立した上乗せ基準はありません。国の17要件の一部である「区の適正化指針への適合」という枠組みの中で審査されます。

Q. 区の窓口に直接申請できますか?

A. 新規申請はできません。必ず(公財)マンション管理センターの管理計画認定手続支援システムを経由し、事前確認適合証を取得したうえで区へ申請する流れになります。

Q. 認定の有効期間はどれくらいですか?

A. 5年間です。期限が近づいたら更新申請が必要になりますので、理事会の引き継ぎ事項として記録しておくことをおすすめします。

Q. 認定を取ると具体的にどんな経済的メリットがありますか?

A. 一定の要件を満たす大規模修繕を行った場合の固定資産税減額(東京23区は建物部分が2分の1)、フラット35購入時の金利引下げ、共用部分リフォーム融資の金利引下げの3つが主な効果です。数値は制度改定により変わることがあるため、申請時点の最新情報をご確認ください。

Q. 長期修繕計画がどんな内容だと認定を受けにくいですか?

A. 計画期間が30年未満だったり、大規模修繕が2回分含まれていなかったり、修繕積立金の平均額が著しく低額だったりすると、審査を通りにくくなります。7年以内の見直しがされているかもあわせて確認してください。

Q. 事前確認にはどのくらい費用がかかりますか?

A. パターンによって異なりますが、システム利用料が1申請あたり10,000円(税込)、日本マンション管理士会連合会の診断サービスを使う場合は長期修繕計画1計画あたり10,000円(税込)の審査料が目安です。個別の管理士や管理業協会に依頼する場合は、委託先との間で費用が決まります。

Q. 申請から認定までどのくらいの期間を見ておけばよいですか?

A. 書類準備から事前確認適合証の取得までに数週間から1〜2か月程度を見込んでおくと安心です。総会での決議事項が多いため、総会シーズンの前から準備を始めることをおすすめします。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月24日

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月24日時点で公表されている葛飾区、東京都、国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・要件変更があり得ます。実際に申請される前に、必ず葛飾区の担当窓口(住環境整備課)へ最新の内容をご確認ください。

出典・参考資料

足立区のマンション管理計画認定制度|手数料無料化と独自基準なしの申請ルート【2026年度版】

結論:足立区で管理計画認定を取ると何が変わるか、手数料はいくらか

先に結論からお伝えします。足立区でマンション管理計画認定を取得する場合、区への申請手数料は当面のあいだ無料です(変更認定申請も含みます)。ただし、区の窓口に直接申請することはできません。新規申請は必ず(公財)マンション管理センターの「管理計画認定手続支援システム」を経由する必要があり、そこでシステム利用料などが別途かかります(出典:足立区「マンション管理計画認定制度について」、2026年4月1日更新)。

私はこれまで多くの管理組合の理事長さまから「認定を取ると何が変わるんですか」とご質問をいただいてきました。答えはシンプルで、固定資産税の減額、フラット35の金利引下げ、共用部リフォーム融資の金利引下げという3つの経済効果に加え、修繕積立金が適正に積み立てられている「安心なマンション」であることが対外的に証明される点にあります。足立区は現時点で区独自の上乗せ基準を設けておらず、国が定めた17項目の基準をクリアすれば認定される、比較的取り組みやすい制度設計になっています。

認定主体はどこか(足立区が認定行政庁)

マンション管理計画認定制度は、令和4年4月に始まった国の制度ですが、実際に審査・認定を行う「認定行政庁」は自治体ごとに異なります(用語補足:認定行政庁とは、認定の申請を受け付けて審査し、認定書を交付する権限を持つ役所のことです)。特別区や中核市・施行時特例市はその区市自身が認定行政庁となり、それ以外の市町村(東京都では島しょ部など)は都道府県が担います。

足立区は特別区のため、足立区長が認定行政庁です。神奈川県や千葉県内の町村部のように、まず都道府県に申請するケースとは窓口が異なりますので、足立区内の分譲マンションであれば足立区が定めた手続きに従うことになります。認定の有効期間は5年間で、期限が来たら更新申請が必要です(出典:東京都マンションポータルサイト「マンション管理計画認定制度」)。私は現場で「一度取れば終わり」と誤解されている理事さんに何度もお会いしましたが、5年ごとの更新が前提の制度だという点は最初にお伝えするようにしています。

認定17要件(総会・修繕計画・修繕積立金・長期修繕計画 等)

国が定める認定基準は、大きく5分野・合計17項目に整理されています(出典:国土交通省 認定基準)。

管理組合の運営に関する2項目では、管理者等と監事が定められていること、総会(区分所有者の集会)が定期的に開催されていることが求められます。管理規約に関する3項目では、規約そのものが整備されていることに加え、緊急時の専有部分への立入りに関する規定、修繕履歴の保管や情報提供に関する規定が必要です。管理組合の経理に関する3項目では、管理費と修繕積立金を区分経理していること、修繕積立金を他の会計に充当していないこと、滞納に適切に対処していることが確認されます。

もっとも項目数が多いのが長期修繕計画に関する7項目で、標準様式に準拠した長期修繕計画と修繕積立金額が総会で決議されていること、7年以内に作成または見直しがされていること、計画期間が30年以上かつ大規模修繕が2回以上含まれていること、一時金徴収を予定していないこと、修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと、計画最終年度に借入金残高が残らないこと、その計画に基づく資金計画が適切であることが審査されます。最後にその他の2項目として、組合員名簿・居住者名簿の適切な管理と、都道府県等が定めるマンション管理適正化指針への適合性が確認されます。

独自基準の有無と実務への影響

ここが自治体ごとに差が出るポイントです。東京都内でも渋谷区のように、令和8年4月から防災(マニュアル整備・訓練・自主防災組織・備蓄など)やコミュニティ活動(自治会加入・地域連携の担当者選任など)に関する独自の上乗せ基準を追加した区が出てきています(出典:渋谷区ポータル「マンション管理計画認定制度」)。

一方で足立区は、区の公式ページに「足立区マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること(区の独自基準による上乗せは、現在行っていません)」と明記されています。つまり足立区内のマンションは、国の17要件と適正化指針への適合を満たせば認定を受けられ、防災訓練の実施記録や自治会加入の証明といった追加書類を別途そろえる必要がありません。私の経験上、これは理事会の事務負担という観点で大きな違いです。上乗せ基準がある区では、認定準備と並行して自主防災組織の立ち上げから始めなければならない管理組合を何度も見てきました。

ただし独自基準がないからといって、修繕積立金の水準や長期修繕計画の中身が甘くて良いわけではありません。私が現場で一番悔しい思いをするのは、修繕積立金が「著しく低額」と判定されるほど乏しいまま大規模修繕の時期を迎えてしまった管理組合を見るときです。工事費そのものを圧縮できれば、同じ積立金額でも計画の実現性は上がります。実際に私たちが手がけた案件では、10階建て・外周80m程度の建物で、足場を組む従来工法だと概算168万円ほどかかる仮設費が、ロープアクセスドットコムで紹介している無足場工法(ロープアクセス工法)を使うと59万円程度に収まり、差額にして109万円ほど圧縮できたケースがありました(工事内容・建物条件により変動するため、あくまで目安としてご覧ください)。こうしたコスト最適化の積み重ねが、長期修繕計画の実現性、ひいては認定取得のしやすさにもつながっていきます。

手数料と申請ルート(事前確認あり・マンション管理センター経由)

手数料については冒頭でお伝えした通り、足立区への申請手数料は当面のあいだ無料です(変更認定申請を含む)。ただし新規申請では区の窓口へ直接書類を持ち込むことができず、必ず(公財)マンション管理センターが運営する「管理計画認定手続支援システム」を経由して「事前確認適合証」を取得する必要があります(出典:足立区「マンション管理計画認定制度について」)。変更認定の申請については、郵送または区の窓口への提出が認められています。

事前確認のルートはいくつかのパターンに分かれており、個別のマンション管理士に依頼する方法、管理業協会の適正評価制度を使う方法、日本マンション管理士会連合会の診断サービスを利用する方法などがあります。いずれのルートでも、マンション管理センターへのシステム利用料として1申請あたり10,000円(税込)が必要で、日管連の診断サービスを使う場合は事前確認審査料として長期修繕計画1計画あたり10,000円(税込)が別途かかります(出典:マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。個別のマンション管理士や管理業協会のルートでは、審査料は管理組合と委託先の間で個別に決まります。私はいつも理事長さまに「区の手数料は無料でも、事前確認の実務費用はかかります」とお伝えするようにしています。総額の目安としては、ケースによって2万円台からそれ以上まで幅がありますので、事前に見積りを取ることをおすすめします。

認定の3つの経済効果(長寿命化促進税制/フラット35/共用部リフォーム融資)

管理計画認定を取得すると、主に3つの経済的なメリットにつながります。

1つ目は固定資産税の減額です。マンション長寿命化促進税制では、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事の3工事すべてを実施し、築20年以上・総戸数10戸以上などの要件を満たした認定マンションについて、工事完了の翌年度分の固定資産税(家屋部分)が減額されます。東京23区では減額率が2分の1と定められており、工事完了日から3か月以内に申告する必要があります。対象となる工事の完了時期は令和5年4月1日から令和9年3月31日までとされています(出典:東京都主税局、国土交通省 マンション長寿命化促進税制)。なお足立区では、認定ルートとは別に、区の助言・指導を受けて是正した管理組合向けに証明書を発行する制度も設けられています(出典:足立区「マンション長寿命化促進税制の創設に伴う助言・指導内容実施等証明の交付について」、手数料1通300円)。

2つ目はフラット35の金利引下げです。認定マンションを購入する場合、借入金利が当初5年間で年0.25%引き下げられる制度が用意されています。3つ目は住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で、認定マンションが計画に基づいて修繕工事を行う際、基準金利から年0.2%程度の引下げが受けられます(出典:府中市「マンションの管理計画認定制度」広報資料)。金利や税制の数字は年度や制度見直しによって変わり得るため、正直に申し上げると、実際に申請される時点で最新の数値を住宅金融支援機構(jhf.go.jp)や足立区の窓口で確認していただくのが確実です。

逆算スケジュール(総会決議→書類準備→認定申請→交付)

認定取得までの流れは、おおむね次のように逆算して考えるとスムーズです。まず理事会・総会で長期修繕計画と修繕積立金額の見直しを決議します。標準様式に沿った計画になっているか、7年以内の見直しか、30年以上・大規模修繕2回以上を含むかを、この段階で確認しておく必要があります。

次に管理規約や総会議事録、組合員名簿・居住者名簿などの必要書類を整えます。ここで規約に緊急時の立入り規定や情報提供規定が盛り込まれているかを再確認してください。書類がそろったら、マンション管理センターの手続支援システムから事前確認を申し込み、事前確認適合証の交付を受けます。最後にその適合証を添えて足立区へ申請し、審査を経て認定書が交付されるという流れです。私の経験上、書類準備から適合証の取得までに数週間から1〜2か月程度を見込んでおくと、総会シーズンに慌てずに済みます。

まとめ+今週動くこと3点

足立区は区の手数料が当面無料で、独自の上乗せ基準もない分、他区に比べて申請のハードルが低い自治体だと私は感じています。ただし新規申請は区の窓口への直接申請ができず、マンション管理センターの事前確認を経る必要がある点は見落とされがちです。

今週動けることとして、まず1つ目は長期修繕計画が7年以内に見直されているか、標準様式に沿っているかを理事会で確認すること。2つ目は修繕積立金の水準が著しく低額になっていないか、次回の大規模修繕費用の見積りと照らして点検すること。3つ目はマンション管理センターの事前確認ルートのうち、自分たちの管理組合にはどのパターンが合うか、費用感を含めて情報収集を始めることです。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがありますので、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。

大規模修繕そのものの費用を圧縮したい場合は、ロープアクセスドットコムで公開している無足場工法の技術情報や、明誠の大規模修繕工事の料金の考え方のページもあわせてご覧ください。管理組合さま向けのご相談は管理組合さま向けサービスのご案内から、実際の工事のイメージは明誠の施工事例でもご紹介しています。株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけており、ロープアクセス工法における高所作業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。

よくあるご質問

Q. 足立区への申請手数料は本当に無料ですか?

A. はい、当面のあいだ区への申請手数料は無料です(新規・変更ともに)。ただしマンション管理センターの事前確認にかかるシステム利用料や審査料は別途必要になります。

Q. 足立区には独自の上乗せ基準がありますか?

A. 現時点ではありません。足立区マンション管理適正化指針への適合は必要ですが、渋谷区などのような防災・コミュニティ活動の独自要件は設けられていません。

Q. 区の窓口に直接申請できますか?

A. 新規申請はできません。必ず(公財)マンション管理センターの管理計画認定手続支援システムを経由し、事前確認適合証を取得したうえで区へ申請する流れになります。変更認定は郵送または窓口提出が可能です。

Q. 認定の有効期間はどれくらいですか?

A. 5年間です。期限が近づいたら更新申請が必要になりますので、理事会の引き継ぎ事項として記録しておくことをおすすめします。

Q. 認定を取ると具体的にどんな経済的メリットがありますか?

A. 一定の要件を満たす大規模修繕を行った場合の固定資産税減額(東京23区は建物部分が2分の1)、フラット35購入時の金利引下げ、共用部分リフォーム融資の金利引下げの3つが主な効果です。数値は制度改定により変わることがあるため、申請時点の最新情報をご確認ください。

Q. 長期修繕計画がどんな内容だと認定を受けにくいですか?

A. 計画期間が30年未満だったり、大規模修繕が2回分含まれていなかったり、修繕積立金の平均額が著しく低額だったりすると、審査を通りにくくなります。7年以内の見直しがされているかもあわせて確認してください。

Q. 事前確認にはどのくらい費用がかかりますか?

A. パターンによって異なりますが、システム利用料が1申請あたり10,000円(税込)、日本マンション管理士会連合会の診断サービスを使う場合は長期修繕計画1計画あたり10,000円(税込)の審査料が目安です。個別の管理士や管理業協会に依頼する場合は、委託先との間で費用が決まります。

Q. 申請から認定までどのくらいの期間を見ておけばよいですか?

A. 書類準備から事前確認適合証の取得までに数週間から1〜2か月程度を見込んでおくと安心です。総会での決議事項が多いため、総会シーズンの前から準備を始めることをおすすめします。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月24日

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月24日時点で公表されている足立区、東京都、国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・要件変更があり得ます。実際に申請される前に、必ず足立区住宅課および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

出典・参考資料

【令和8年度】葛飾区の12条点検・外壁全面打診|報告年次の判定と提出先、打診調査の㎡単価

葛飾区でマンションやビルを所有されている方から、この時期によくいただくご相談があります。「区から定期報告のお知らせは来ていないが、うちは対象なのか」「報告書は葛飾区役所に出せばいいのか」。

結論から申し上げると、葛飾区の建物であっても特定建築物の定期調査報告書の提出先は葛飾区役所ではありません。そして令和8年度に報告年次を迎えるかどうかは、建物の用途によって決まります。ここを取り違えたまま9月・10月を過ごし、報告期限の直前で慌てるケースを毎年見ています。

この記事では、令和8年度(2026年度)に葛飾区で定期報告の対象年を迎えるのはどの用途の建物か、外壁の全面打診が必要になる10年トリガーの数え方、そして立石・新小岩・金町といった葛飾区特有の街並みのなかで、打診調査を足場とロープアクセスのどちらで進めるべきかを、費用の目安まで含めて整理します。

私は本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。葛飾区では立石、新小岩、金町、柴又、四つ木あたりの物件を数多く見てきました。制度の教科書的な解説ではなく、理事会やオーナーさまと実際に交わしている話をそのまま書きます。

更新日:2026年9月24日

結論:令和8年度に葛飾区で報告年を迎えるのは事務所・店舗系。共同住宅は令和9年度

先に結論を表でまとめます。

項目 内容
令和8年度の特定建築物定期調査の報告年次 用途コード30番台(事務所、物販店舗、飲食店、遊技場など)
報告期間 令和8年5月1日〜令和8年10月31日
共同住宅(用途コード40番台) 令和8年度は報告年次ではない(3年周期で、次は令和9年度)
特定行政庁 葛飾区(敷地内に延べ面積1万㎡を超える建築物がある場合は東京都)
特定建築物・防火設備の報告書の提出先 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター 建築防災課(03-5989-1929)
葛飾区の相談窓口 都市整備部 建築課審査係(03-5654-8557/ファクス03-3697-1660)
外壁全面打診の周期 竣工または外壁改修からおおむね10年に一度

出典:葛飾区「建築物等の定期報告制度について」(更新日令和7年10月2日)、東京都都市整備局「3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」

この記事で答える質問

  • 令和8年度に葛飾区で12条報告が必要なのは、どんな用途の建物か
  • 報告書はどこに出すのか(葛飾区役所ではありません)
  • 外壁の全面打診が必要になるのはいつか。起算日はどう数えるか
  • 令和7年7月に施行された告示改正で、何が変わったのか
  • 立石・新小岩など葛飾区特有の街並みで、打診調査はどう進めるべきか
  • 打診調査は実際いくらかかるのか。足場とロープアクセスでいくら差が出るのか

建築基準法第12条とは:4種類の報告があり、提出先がそれぞれ違います

ここでつまずく方が非常に多いので、最初に整理します。

建築基準法第12条は、共同住宅、デパート、劇場、ホテルなど「大勢の人が利用するもので、火災が起こった場合に大惨事になる恐れのある建築物」(特定建築物)について、有資格者による定期的な調査・検査と、特定行政庁への報告を所有者・管理者に義務づけています。葛飾区は公式サイトでこの制度をそう説明しています。

報告は4種類に分かれ、葛飾区は公式サイトで提出先をそれぞれ明記しています。

種類 対象 提出先 電話 周期
特定建築物(調査) 敷地、一般構造、構造強度、防火・避難関係 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1929 用途・規模により1〜3年
防火設備(検査) 防火戸、防火シャッター、耐火クロススクリーン等 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1937 毎年
建築設備(検査) 機械換気設備、排煙設備、非常用照明、給排水設備 日本建築設備・昇降機センター 03-3591-2421 毎年
昇降機等(検査) エレベーター、エスカレーター等 東京都昇降機安全協議会 03-6304-2225 毎年

出典:葛飾区「建築物等の定期報告制度について」

外壁の打診調査が関わるのは、一番上の「特定建築物(調査)」だけです。ここを押さえてください。

エレベーターの保守業者から「12条の検査は終わっています」と言われても、それは昇降機等の定期検査であり、外壁の話は一切含まれていません。この混同のまま10年以上が過ぎていた葛飾区内の賃貸マンションを、私自身これまでに何件も見てきました。消防設備点検とも別の制度です。所管する法律も報告先も周期も別物ですので、混同しないようご注意ください。

葛飾区の窓口と、1万㎡が分かれ目になる所管の区分

葛飾区内の建物について、どこが所管するかは延べ面積で決まります。

建物の規模 所管
敷地内に延べ面積1万㎡を超える建築物がある場合 東京都 都市整備局 市街地建築部 建築企画課
上記以外(1万㎡以下) 葛飾区(特定行政庁)

出典:東京都都市整備局「3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」

葛飾区にある分譲マンション・賃貸マンション・中小ビルの大半は、1万㎡以下の枠に入ります。制度に関する相談窓口は葛飾区役所 都市整備部 建築課審査係(〒124-8555 葛飾区立石5-13-1 区役所3階305番窓口、電話03-5654-8557、ファクス03-3697-1660)です。区の建築関連の総合案内は建築関連総合窓口(区役所3階306番窓口、電話03-5875-6959)でも受け付けています。

ただし繰り返しますが、報告書そのものの提出先は葛飾区役所ではなく、新宿区西新宿の東京都防災・建築まちづくりセンター建築防災課(〒160-8353 新宿区西新宿7-7-30 小田急西新宿O-PLACE 2階、電話03-5989-1929)です。窓口・郵送・オンライン申請のいずれかで提出でき、部数は1部(控えが必要な場合は2部)となっています。

出典:葛飾区「建築物等の定期報告制度について」(更新日令和7年10月2日)

令和8年度に報告年次を迎えるのは、どの用途の建物か

東京都の特定建築物定期調査は、用途ごとに1〜3年の周期で報告年度が定められており、この報告年次のローテーションは葛飾区を含む都内共通の仕組みです。直近のサイクルでは次のように整理されています。

報告年度 主な対象用途
令和7年度 児童福祉施設、病院・診療所、学校、博物館・体育館など
令和8年度 事務所、物販店舗、飲食店、遊技場など(用途コード30番台)
令和9年度 共同住宅・寄宿舎(5階以上、延べ面積1,000㎡超)、高齢者・障がい者等就寝施設

出典:東京都都市整備局「3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」

つまり令和8年度に葛飾区で報告義務があるのは、店舗・事務所・飲食店・遊技場が入る建物が中心です。分譲マンション・賃貸マンションの多くは令和8年度は報告年次に当たらず、次の報告年次は令和9年度(令和9年5月1日〜10月31日)になります。ただし1階に店舗が入る複合用途のマンションは、用途構成によって判定が変わることがあるため、葛飾区建築課審査係に個別に確認することをおすすめします。

準備期間はおよそ7か月です。令和9年度の報告開始まで時間があるように見えますが、外壁の全面打診が必要な建物は調査会社の手配に時間がかかります。長期修繕計画の見直しと合わせて、いま理事会の議題に載せておくのがちょうどよいタイミングです。

外壁の全面打診が必要になるのは、いつからか

ここが本題です。

国土交通省は、外装仕上げ材等におけるタイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く)、モルタル等の劣化および損傷の状況の調査について、平成20年国土交通省告示第282号で次のように定めています。

  • おおむね6か月から3年以内に一度:手の届く範囲の打診等
  • おおむね10年に一度:落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等

出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」

10年の起算日の数え方

実務での数え方はシンプルです。

状況 起算日
竣工後、一度も全面打診をしていない 竣工日(検査済証交付日が属する年度の翌年度4月1日を起算点とする実務運用が一般的)
前回、全面打診を実施した 前回の全面打診の実施日
外壁の全面改修工事(塗替え・タイル張替え等)を行った その改修工事の完了日

この起算日から10年を超えた後の、最初の報告時期に全面打診が必要になります。逆に言えば、大規模修繕で外壁を全面改修すれば、そこから10年のカウントがリセットされます。大規模修繕と12条点検のタイミングを合わせると、調査費用と足場費用の二重払いを避けられます。理事会で必ず検討してほしい論点です。

なお、令和4年1月18日付けで平成20年国土交通省告示第282号が一部改正され、無人航空機(ドローン)による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものが調査方法として明確化されました。ただし現場感覚で言うと、ドローン赤外線は形状が単純で周囲に十分な離隔があり、日射条件が整った建物で威力を発揮します。葛飾区に多い、隣地との隙間が狭い中層マンションでは条件が合わないことも少なくありません。明誠ではドローンを使った外壁調査とロープアクセスによる直接打診を、建物ごとに使い分けています。

令和7年7月施行の告示改正で、調査項目と判定基準が変わりました

葛飾区は公式サイトの定期報告制度ページで、次の改正を案内しています。

  • 令和6年国土交通省告示第974号(令和6年6月28日公布、令和7年7月1日施行)
  • 令和7年国土交通省告示第53号(令和7年1月29日公布、令和7年7月1日施行)

これにより、定期調査・検査等の項目、事項、方法および結果の判定基準、ならびに調査結果表等の見直しが行われました。実務上の意味はひとつです。令和7年7月1日以降に実施する調査は、新しい判定基準と新しい様式で行う必要があるということ。前回報告時の書式をそのまま使い回すと差し戻されます。調査会社に見積を依頼するときは「令和7年7月施行の改正後の様式・判定基準に対応していますか」と一言確認してください。

出典:葛飾区「建築物等の定期報告制度について」、東京都都市整備局「2.定期調査・検査制度改正の内容」

葛飾区の街並みと、12条点検・大規模修繕への影響

葛飾区の建物事情も押さえておきます。

葛飾区は立石、新小岩、金町、柴又、四つ木、堀切といったエリアに、昭和期から平成初期にかけて建てられた中低層のマンション・ビルが密集して残る、いわゆる「下町」の性格が色濃いまちです。とりわけ京成立石駅の周辺は、狭あいな道路と老朽建築物が密集する市街地として長年知られており、区は立石駅北口地区第一種市街地再開発事業を進めています。区画整理後の東西街区では36階建ての複合施設(住宅・商業・区役所新庁舎機能)の新築工事が令和7年11月に着工しており、今後も駅周辺の建て替え・再整備が続きます。

出典:葛飾区「立石駅北口地区第一種市街地再開発事業」、東京都都市整備局「立石駅北口地区第一種市街地再開発事業」

一方で、再開発区域の外側に残る既存の分譲マンション・賃貸ビルは、建て替えではなく大規模修繕と12条点検で建物を維持していく選択が現実的です。私が葛飾区の物件を見て感じるのは、次の2つの傾向です。

  • 立石・四つ木・堀切:狭あいな道路に接する中低層の建物が多く、足場の設置スペースを確保しづらい現場が目立ちます。資材搬入路の調整だけで工程が数日ずれることもあります。
  • 金町・新小岩・柴又:金町駅前の再開発で生まれた比較的新しい高層マンションと、昔ながらの中規模マンションが混在し、建物ごとに求められる調査・修繕のフェーズが大きく異なります。

こうした「道路が狭い」「隣地との距離が近い」「敷地に余裕がない」という葛飾区特有の条件は、まさにロープアクセス工法が力を発揮する場面です。屋上から産業用ロープで降下して直接打診するため、足場の設置スペースや資材搬入路の確保に悩まされません。工法の技術的な背景については、同業者・加盟希望者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。

葛飾区で外壁全面打診を進めるときの3つの工法

全面打診には「手が届かない高所までアクセスする手段」が必要です。選択肢は実質3つです。

工法 概要 葛飾区での向き・不向き
仮設足場 建物全周に足場を組む 敷地に余裕がある建物、大規模修繕と同時実施の場合に有利
ロープアクセス(無足場工法) 屋上から産業用ロープで降下して直接打診 狭あい道路に接する物件、調査だけを先行したい場合に有利
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分け 低層部は足場、高層部・狭隘部はロープ。総合コストを最適化できる

株式会社明誠は、この3工法をすべて自社の判断で提案できる、日本でも数少ない会社です。発注者側の視点での整理は明誠のロープアクセス工法のページを、明誠の理念と工法選定の考え方は明誠の理念のページをご覧ください。

費用の目安:打診調査の㎡単価と、足場との差額

金額の話をします。実際の見積は建物の規模・形状・立地で大きく変動するため、あくまで目安・レンジとしてお読みください。

打診調査そのものの単価

項目 単価の目安
外壁全面打診調査 250〜500円/㎡
外壁塗装(大規模修繕時) 3,500〜4,500円/㎡
屋上防水 5,000〜8,000円/㎡

足場とロープアクセスの差額(モデルケース)

葛飾区によくある「10階建て・外周80m・工期3か月」のマンションを想定した参考値です。

項目 仮設足場 ロープアクセス
仮設費用の目安 約168万円 約59万円
差額 — ▲約109万円
調査だけの工期 足場架設・解体を含めて数週間 数日〜1週間程度
居住者への影響 窓が塞がれる、洗濯物が干せない、防犯面の不安 該当面の作業時間帯のみ

30戸規模のマンションの大規模修繕は総額3,500〜5,000万円程度、そのうち仮設足場が15〜25%を占めます。調査のためだけに足場を組むかどうかは、この比率を見れば判断材料になります。料金の考え方は明誠の料金に対する考え方にまとめています。

ただし、足場が正解になるケースも確実にあります。 打診調査と同時に大規模修繕を実施するなら、足場を一度組んで全工程を終わらせたほうが総額は下がります。「調査だけ先に、修繕は2〜3年後に」という段階的な進め方をするときに、ロープアクセスの費用対効果が最も大きくなります。ここを取り違えないでください。工法ごとの単価の考え方や技術基準は、姉妹サイトロープアクセスドットコムでも公開しています。

安全と品質をどう担保するか

高所作業である以上、安全管理が品質の前提です。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けており、明誠は日本ロープ高所作業協会の事務局も担当しています。

また明誠は、日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職に加盟いただいています。打診で不具合が見つかった後、補修まで同じ体制で一貫して対応できるのはこのためです。安全管理の具体的な取り組みは明誠の安全管理の考え方を、訓練体制や技術基準の詳細はロープアクセスドットコムをご覧ください。

明誠のこれまでの施工事例は明誠の施工事例からご覧いただけます。

葛飾区で打診調査を依頼する前のチェックリスト

理事会やオーナーさまにお渡ししている確認項目です。

  1. 建物の用途コードは何番台か(令和8年度は30番台が報告年次)
  2. 検査済証の交付日はいつか
  3. 前回の全面打診の実施日、または外壁の全面改修工事の完了日はいつか
  4. 見積が令和7年7月施行の改正後の様式・判定基準に対応しているか
  5. 打診調査の見積は㎡単価で提示されているか(一式表記は比較できません)
  6. 仮設費用が足場前提かロープアクセス前提か、内訳で分かれているか
  7. 打診で不具合が出た場合の補修工事の単価まで提示されているか
  8. 大規模修繕の実施予定時期と、調査時期を揃えられないか検討したか
  9. 建物が狭あい道路に接しているか(足場架設に支障がないか)

特に5番と6番です。「外壁調査一式」としか書かれていない見積書は、他社と比較できません。㎡単価と数量で出してもらってください。

よくあるご質問

Q. 葛飾区の建物ですが、報告書は区役所に持って行けばいいですか?

A. いいえ。特定建築物と防火設備の報告書の提出先は、公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター(新宿区西新宿7-7-30 小田急西新宿O-PLACE 2階、03-5989-1929)です。葛飾区建築課審査係(03-5654-8557)は、制度の問い合わせ窓口という位置づけです。

Q. 令和8年度にうちのマンションは報告が必要ですか?

A. 共同住宅(用途コード40番台、5階以上・延べ面積1,000㎡超)は3年周期で、令和8年度は報告年次ではありません。次の報告年次は令和9年度(令和9年5月1日〜10月31日)です。ただし店舗や事務所が併設された複合用途の建物は判定が変わることがあるため、葛飾区建築課審査係へお問い合わせください。

Q. 外壁の全面打診の費用はいくらかかりますか?

A. 打診調査そのものは250〜500円/㎡が目安です。これに高所へのアクセス費用が加わります。10階建て・外周80mの建物で、仮設足場なら約168万円、ロープアクセスなら約59万円が参考値で、差額は約109万円です。物件の形状や立地で変動しますので、無料で概算のお見積りをお出しします。

Q. ロープアクセスだと打診の精度は落ちませんか?

A. 落ちません。ロープアクセスは作業員が壁面に直接張り付いてテストハンマーで打診するため、足場上の打診とまったく同じ直接打診です。むしろ足場の布板の位置に縛られないぶん、目地際や開口部まわりなど確認したい箇所へ自由に寄れます。

Q. 立石や四つ木のような狭あい道路の物件でも打診調査はできますか?

A. できます。むしろ道路が狭く足場の設置スペースが確保しにくい物件ほど、屋上から降下するロープアクセスが向いています。事前に建物の高さ・形状・屋上の設備配置を確認すれば、多くの現場で対応可能です。

Q. 工期はどれくらい短くなりますか?

A. 調査だけであれば、足場は架設と解体を含めて数週間かかるのに対し、ロープアクセスは数日〜1週間程度で完了します。修繕工事まで含めた場合も、ロープアクセス工法は足場工法のおおむね60%程度の工期が目安です。

Q. 報告を出さないとどうなりますか?

A. 建築基準法第12条に基づく報告は所有者・管理者の法的義務です。報告をしなかった場合や虚偽の報告をした場合には、同法に罰則の定めがあります。それ以上に、外壁タイルが落下して通行人に当たれば、所有者が工作物責任を問われます。葛飾区は商店街や住宅密集地に面した中低層のマンション・ビルが多いエリアです。リスクの所在を具体的に考えてみてください。

まとめ:葛飾区の12条点検で、今日決められること

  • 令和8年度の報告年次は用途コード30番台(事務所・店舗・飲食店等)、期限は令和8年10月31日
  • 共同住宅の次の報告年次は令和9年度。準備期間はおよそ7か月
  • 報告書の提出先は葛飾区役所ではなく東京都防災・建築まちづくりセンター
  • 外壁全面打診は竣工または外壁改修から10年。大規模修繕で起算日はリセットされる
  • 令和7年7月1日施行の告示改正に対応した新様式・新判定基準での調査が必要
  • 立石・四つ木など狭あい道路の多いエリアでは、足場スペースの制約がロープアクセス選定の判断材料になる
  • 調査単価は250〜500円/㎡。足場とロープアクセスの仮設費差は約109万円が参考値

葛飾区の物件で「うちは足場とロープアクセスのどちらが得か」を判断したい方は、建物の階数・外周長・竣工年・前回調査時期の4点をお知らせください。概算の比較表をお出しします。ご相談は明誠のお問い合わせフォームから承ります。管理組合の皆さま向けの進め方は管理組合向けサービスのページ、収益物件をお持ちのオーナーさま向けにはオーナー向けサービスのページもご用意しています。

本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月24日時点で公表されている葛飾区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。葛飾区の「建築物等の定期報告制度について」のページは更新日が2026年10月2日(令和7年10月2日)ですが、令和8年度の運用について今後変更が生じる可能性があります。制度は年度途中でも改正があり得ます。実際に報告される前に、必ず葛飾区建築課審査係(03-5654-8557)および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。

参考にした一次情報

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月24日

【令和8年度版】足立区の12条点検・外壁全面打診|対象建築物と報告時期の考え方

足立区で分譲マンションやビルをお持ちの方から、私が最近特によくいただくご相談があります。

「区から定期報告のお知らせが届いたのですが、うちのマンションは外壁の全面打診まで必要なのでしょうか」

この記事で答える質問はひとつです。足立区にある自分の建物は、いつ外壁の全面打診が必要になるのか。そして、その費用をどう抑えるのか。

私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、足立区を含む東京・関東一円でマンション・ビル・ホテルの大規模修繕に20年以上たずさわってきました。足立区は北千住・綾瀬の再開発エリアから、竹ノ塚・西新井・梅島といった昔ながらの住宅密集地まで、建築年代の幅が広いまちです。ここでは足立区の一次情報にあたりながら、実務のコスト感まで含めて整理します。


結論:足立区で12条点検の対象になる建物と、全面打診が必要になるタイミング

先に結論から申し上げます。

A. 足立区内の一定規模以上の共同住宅・ビル・ホテル等は、建築基準法第12条第1項に基づき、特定行政庁への定期調査報告の対象です。共同住宅の場合、報告はおおむね3年ごとです。

B. 延べ面積が1万平方メートルを超える建築物は東京都、それ以外は足立区が特定行政庁として所管します。(出典:東京都都市整備局「3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」)

C. 外壁にタイル、石貼り(乾式工法を除く)、モルタル等が使われている建物は、竣工または外壁の全面改修からおおむね10年を超えて最初に迎える報告時期までに、落下により歩行者などに危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等が求められます。(出典:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」平成20年国土交通省告示第282号、令和4年1月18日改正)

私はこのA・B・Cの3点を、初回のご相談で順番にご説明するようにしています。


建築基準法第12条第1項とは何か(定期調査報告のしくみ)

建築基準法第12条第1項は、多数の方が利用する建築物を「特定建築物」と位置づけ、所有者・管理者に対して、劣化・損傷および維持保全の状況を有資格者に調査させ、その結果を特定行政庁へ定期的に報告することを求める規定です。調査できるのは、一級建築士、二級建築士、または特定建築物調査員に限られます。管理会社の担当者や理事の方が目視で済ませる、というものではありません。

現場では「12条点検」とひとくくりに呼ばれることが多いのですが、正確には近い制度がいくつか並走しています。

制度 対象 頻度の目安
特定建築物定期調査報告 建築物本体(外壁・避難施設等) 共同住宅はおおむね3年ごと
建築設備定期検査報告 換気・排煙・非常照明等 毎年
防火設備定期検査報告 防火戸・防火シャッター等 毎年
昇降機等定期検査報告 エレベーター等 毎年

このうち、外壁の全面打診が関わってくるのは「特定建築物定期調査報告」です。足立区の窓口でも、この4種類は別々の制度として案内されています(出典:足立区「定期報告制度」)。


全面打診が必要になる4つのトリガー

私が現場で管理組合さまにお伝えしているのは、全面打診の要否を分ける主なトリガーが4つあるということです。

  1. 竣工から10年を超えている。検査済証の交付日が属する年度の翌年度4月1日を起算点として、10年を超えて最初に迎える報告時期までに全面打診等が必要です。
  2. 前回の外壁全面改修から10年を超えている。大規模修繕で外壁を全面改修していれば、その完了日が新しい起算点になります。
  3. 前回の調査で「要是正」「要修繕」等の判定を受けている。部分的な浮きや劣化が指摘されている場合、次回報告までに手当てが前提になります。
  4. 落下事故または落下のおそれが現に生じている。タイルや外壁材の落下があった、あるいは近隣から通報があった場合は、報告時期を待たず対応を求められるケースがあります。

このうち1と2が、実務でもっとも多くご相談を受けるパターンです。逆に言えば、竣工10年未満で前回改修から日が浅い建物は、今回の報告では全面打診まで求められないことがほとんどです。なお、乾式工法によるタイル・石貼りは打診の対象から外れます。


足立区固有の運用:窓口・提出先・地域特性

足立区の場合、特定建築物定期調査報告と防火設備定期検査報告の受付窓口は、区役所ではなく公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター建築防災課です(東京都新宿区西新宿7-7-30小田急西新宿O-PLACE2階、電話03-5989-1929)。延べ面積が1万平方メートルを超える建築物は、東京都都市整備局の所管になります(出典:足立区「特定建築物定期調査報告」更新日2025年4月1日)。

制度に関するご相談は、足立区都市建設部建築室 建築審査課(電話03-3880-5278、総合案内はお問い合わせコールあだち 03-3880-0039)へ。

私が現場で見ている足立区の建物特性は、大きく2つに分かれます。

  • 北千住・綾瀬の再開発エリア:ここ10〜15年で建った比較的築浅の共同住宅が多く、まだ全面打診の対象になっていない物件が中心です。今後数年で最初の報告時期を迎える物件がまとまって出てきます。
  • 竹ノ塚・西新井・梅島・千住といった昔ながらの住宅密集地:東武スカイツリーライン沿線を中心に、築30〜40年台の中規模マンションが多く残り、外壁改修や全面打診の要否判定が現実の論点になっている段階です。

竹ノ塚駅周辺は鉄道高架化に伴う再整備が進み、周辺の建物でも大規模修繕のタイミングを合わせて検討する動きが出てきています。私は足立区の物件を拝見するとき、まずこの2つのエリア特性のどちらに当たるかを確認します。

足立区には「マンション管理計画認定制度」もあります。認定基準は国基準と同一で、管理組合の運営・管理規約・経理・長期修繕計画の作成など複数項目にわたります。区窓口での新規申請はできず、公益財団法人マンション管理センターの認定手続支援システムを経由しますが、区の手数料は当面無料です(出典:足立区「マンション管理計画認定制度について」)。

この認定、または助言・指導実施証明を受けたうえで長寿命化に資する大規模修繕工事を行うと、工事翌年度の建物部分の固定資産税が2分の1に減額される「マンション長寿命化促進税制」(令和9年3月31日まで延長)の対象になり得ます(出典:足立区「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額措置)について」、公益財団法人マンション管理センター「マンション長寿命化促進税制の期間が延長されました」)。全面打診への直接補助ではありませんが、長期修繕計画・認定制度・税制優遇をワンセットで考える価値はあります。


実務コスト感:打診調査の㎡単価と、足場費の重さ

理事会で真っ先に出るのがお金の話なので、目安のレンジを正直に書きます。

項目 費用の目安(参考値) 備考
外壁打診調査 250〜500円/㎡ 調査方法・階高・足場の有無で変動
仮設足場 800〜1,200円/㎡(架面積) 建物形状・道路条件で大きく変動
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡ 塗料グレードによる
防水(屋上・バルコニー) 5,000〜8,000円/㎡ 工法による
30戸規模マンションの大規模修繕総額 3,500〜5,000万円程度 うち仮設足場が15〜25%を占めることが多い

すべて目安・レンジであり、実際の見積は物件の規模や立地、劣化状況で変動します。ここは正直に申し上げます。仮設足場が総工費の15〜25%を占めるため、12条点検の全面打診のためだけに足場を架けると、この費用が丸ごと調査費に乗ってきます。

具体例で比べます。10階建て・外周80m・工期3か月の物件で試算すると、足場を組む場合の仮設費が約168万円に対し、ロープアクセス工法なら約59万円。差額はおよそ109万円です(当社の標準的な試算例。物件条件により変動します)。

打診調査だけのために168万円の足場を架けるか、59万円でロープアクセスにするか。修繕積立金が潤沢とは言えない管理組合にとって、この差は小さくありません。


ロープアクセス工法が足立区の12条打診で選ばれる3つの理由

私はロープアクセス工法(無足場工法。産業用ロープで作業員が壁面に直接アクセスする工法です)を、12条点検の全面打診と相性の良い手段としてご提案しています。技術的な背景や安全基準は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。理由は3つです。

理由1:仮設コストが下がる

足場を架けずに全面打診ができるため、調査費の大半を占めていた仮設費を圧縮できます。「調査だけで100万円超」という理事会の心理的ハードルが、ぐっと下がります。

理由2:居住者の生活影響が小さい

足場を組むと、バルコニーの使用制限、洗濯物、防犯(足場からの侵入懸念)、日照と、居住者の不満が一気に噴き出します。足立区は子育て世帯とご高齢の世帯が同じ棟に混在するマンションが多く、この負担が特に重く出ます。ロープアクセスなら屋上からの吊り下げで作業しますので、足場の設置・解体の期間がなく、生活影響の期間そのものが短くなります。私はこれを「住みながら直せる工法」とお伝えしています。

理由3:狭小地・道路条件の厳しい物件に対応できる

足立区は、竹ノ塚や西新井の商店街周辺、千住地域の旧市街地など、道路が狭く隣地と近接した建物が少なくありません。足場の架設が物理的に難しい、あるいは道路占用許可の調整で工期が読めない、という物件です。こうした条件でロープアクセスが効いてきます。実際の施工手順や訓練体制はロープアクセスドットコムの技術解説を、明誠側の対応範囲は明誠のロープアクセス工法の技術詳細をご覧ください。

なお、株式会社明誠はこれまでに約6,000棟の大規模修繕を手がけ、ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。


12条点検を大規模修繕と一体化する、という考え方

ここからが本題です。私が足立区の管理組合さまに最もお伝えしたいのは、12条点検の全面打診と大規模修繕を別々に発注しないでください、ということです。理由は3つあります。

1つ目。仮設費が一度で済みます。 打診調査で足場を架け、1〜2年後の修繕工事でまた足場を架ける。これは同じ費用を二度払っているのと変わりません。ロープアクセスの場合も、調査と補修を同じ体制で連続して行えば、段取り替えのコストが消えます。

2つ目。調査結果がそのまま工事仕様になります。 打診で拾った浮きの位置と数量が、そのままタイル張替え・アンカーピンニング工法の数量に直結します。調査会社と施工会社が別だと、この受け渡しで情報が落ちます。私は打診と補修を一体で受けるとき、浮きの位置を図面に落として理事会にお出ししています。

3つ目。「3年以内の改修が確実」という猶予を使える場合があります。 定期調査の実施から3年以内に外壁改修または全面打診等が行われることが確実である場合、あるいは落下物防護ネットの設置など別途歩行者の安全を確保する対策を講じている場合は、今回の報告で全面打診を見送れる取り扱いがあります。長期修繕計画に大規模修繕の実施年を明記しておけば、報告年度と修繕年度を無理に重ねる必要がなくなるということです。私はこれを、いつもワンセットでご提案するようにしています。

管理組合さま向けの進め方は管理組合向けの大規模修繕サポート、賃貸ビル・テナントビルのオーナーさま向けはビルオーナー向けの改修サービスにまとめています。


まとめ:足立区のオーナーさま・理事長さまが今週動けること3点

この記事のポイント

  • 足立区の共同住宅の定期調査報告はおおむね3年ごと、提出先は区役所ではなく東京都防災・建築まちづくりセンター(1万㎡超は東京都)
  • 全面打診のトリガーは竣工・改修から10年、前回調査の判定、落下事故の有無の4パターン
  • 北千住・綾瀬は比較的築浅、竹ノ塚・西新井・梅島は築30〜40年台の物件が多く、地域でフェーズが異なる
  • マンション管理計画認定制度と組み合わせると、固定資産税減額(マンション長寿命化促進税制)につながる場合がある
  • 打診だけに足場を架けると仮設費が丸ごと乗る。ロープアクセスで差額100万円超の例もある

そのうえで、今週できることを3つ挙げます。

  1. 検査済証の日付を確認する。 管理室のファイルか、前回の大規模修繕の完了報告書に挟まっているはずです。ここから起算日が決まります。
  2. 前回の外壁全面改修の完了日を確認する。 これが起算日をリセットしている可能性があります。10年を超えていなければ、今回は部分打診で足ります。
  3. 長期修繕計画に外壁改修の実施年が明記されているか確認する。 明記されていれば、3年以内の改修が確実という扱いで報告年度の全面打診を調整できる場合があります。

足立区は建物ストックの厚いまちです。同じ年代の物件がまとまるエリアほど報告年度が重なりやすく、調査会社も施工会社も手が埋まります。動き出すのが早いほど、選べる選択肢が多くなります。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。概算のお見積りや現地確認のご依頼は明誠のお問い合わせフォームから、工法選定の考え方は明誠の理念と3工法の使い分けをご覧ください。

明誠のこれまでの施工事例は明誠の施工事例からご覧いただけます。ロープアクセス工法の一般的な安全基準や技術情報はロープアクセスドットコムで解説しています。


よくあるご質問

Q. 足立区の共同住宅は、何年ごとに定期報告が必要ですか?

A. 用途と規模によりますが、共同住宅の特定建築物定期調査報告はおおむね3年ごとです。正確な報告年度は建物の検査済証交付年度などによって決まりますので、東京都都市整備局または提出先の窓口でご確認ください。

Q. 竣工から10年ちょうどですが、今回の報告で全面打診が必要ですか?

A. 起算点は検査済証の交付日が属する年度の翌年度4月1日です。そこから10年を超えて最初に迎える報告時期までに全面打診等が求められます。ご自身の建物の起算日は、検査済証または前回の外壁全面改修の完了日からお確かめください。

Q. 打診調査の費用はどれくらいですか?

A. 打診調査そのものは250〜500円/㎡が目安ですが、費用の大半を左右するのは足場です。10階建て・外周80m・工期3か月の物件では、仮設足場が約168万円に対しロープアクセス工法は約59万円という試算例があります。物件条件で変動しますので、概算のお見積りは無料でお出しします。

Q. ドローンの赤外線調査で打診の代わりになりますか?

A. 平成20年国土交通省告示第282号の令和4年1月18日付の一部改正により、無人航空機による赤外線調査であってテストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものが調査方法として明確化されました。建物の立地や外壁の状態によって適否が分かれますので、事前の現地確認が必要です。

Q. 報告書はどこに提出するのですか?

A. 足立区の場合、特定建築物定期調査報告と防火設備定期検査報告は公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターが受付です。ただし延べ面積1万平方メートル超の建築物は東京都都市整備局の所管になります。制度に関するご相談は足立区都市建設部建築室建築審査課で受け付けています。


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月24日時点で公表されている足立区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請・報告される前に、足立区都市建設部建築室建築審査課(電話03-3880-5278)または該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月24日


出典・参考資料

鴻巣市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

鴻巣市の分譲マンションで大規模修繕を控えている管理組合が、まず知っておくべき制度は何か。私が今回いちばん驚いたのは、熊谷市や久喜市にはない「埼玉県の制度がそのまま使える」という鴻巣市の立ち位置でした。吹付けアスベストの含有調査・除去費用について、鴻巣市は独自の補助制度を持たない代わりに、埼玉県の補助制度をそのまま利用できる対象区域に入っています。

もう1つ、意外な発見がありました。鴻巣市に登録されている分譲マンションを民間データベースで見ると、最新の物件は2025年2月竣工、確認できた範囲で最も古いものでも2007年築です。旧耐震(昭和56年5月31日以前)のマンションを前提にした補助金が、鴻巣市ではそもそも噛み合わない可能性があるのです。

株式会社明誠の本間です。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。この記事では、鴻巣市の管理組合が令和8年度に使える制度を、市の要綱・埼玉県の制度の原文にあたって整理します。数字はすべて出典リンク付きで書きます。

Q. 鴻巣市の分譲マンションで、大規模修繕に関連して使える制度は?
A. 共用部の工事費そのものに直接効くのは、①埼玉県の吹付けアスベスト等含有調査・除去補助金(該当する場合、除去等工事費は補助率3分の2・上限800万円)と、②マンション長寿命化促進税制(2回目以降の大規模修繕で固定資産税を3分の1減額、期限は令和9年3月31日完了)の2本柱です(出典:埼玉県、鴻巣市)。

この記事の結論(先にお伝えします)

鴻巣市の分譲マンション管理組合が押さえるべきことは、次の3点です。

  1. 吹付けアスベストの調査・除去費用は、埼玉県の補助金がそのまま使える(鴻巣市は除外12市に入っていないため)。除去等工事費は補助率3分の2・上限800万円。旧耐震で吹付け材を使っている可能性のある物件は、まずここを確認する価値があります。
  2. マンション管理計画認定制度は、鴻巣市への申請手数料が無料。しかも鴻巣市は認定基準に市独自の上乗せをしておらず、国のマンション管理適正化指針とそのまま同じ内容です。
  3. マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)は、令和9年3月31日完了が期限。公開時点で残り半年程度です。ただし2回目以降の大規模修繕が対象のため、初回の大規模修繕を控えている管理組合には使えません。

なお、ロープアクセス工法(無足場工法)そのものの一般的な技術解説は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。

鴻巣市で令和8年度に管理組合が使える主な制度を、一覧にしておきます。

制度名 共用部に使えるか 金額 窓口
埼玉県 吹付けアスベスト等含有調査・除去補助金 使える可能性あり 調査:1検体8万円・1棟25万円が上限/除去等:費用の3分の2・上限800万円(延べ面積1,000㎡未満は400万円) 埼玉県建築安全課(県庁に直接申請)
マンション管理計画認定制度 制度の認定 市への申請手数料は無料(システム利用料・事前確認審査料は別途) 建築住宅課
マンション長寿命化促進税制 使える(2回目以降の工事に限る) 家屋の固定資産税を1年度分3分の1減額(100㎡相当まで) 税務課 家屋担当
埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣 相談が無料 無料・最大2回派遣。令和8年度は約13組合、令和9年度が最終年度 埼玉県住宅課
鴻巣市住宅リフォーム資金補助事業 使えない(専有部のみ) 補助対象経費の5%・上限10万円 建築住宅課
木造住宅耐震診断・改修助成 使えない(木造戸建て限定) 診断上限5万円・改修上限20万〜30万円 建築住宅課

「使えない」も正直に並べました。期待させてから外すのが、私は一番よくないと思っています。

埼玉県 吹付けアスベスト等含有調査・除去補助金|熊谷市・久喜市にはない鴻巣市の強み

この制度は、実はここまでのシリーズで訪れた熊谷市・久喜市では使えませんでした。両市は独自の補助制度を持つため、埼玉県の制度の対象区域から外れているからです(出典:埼玉県「民間建築物のアスベスト除去等に対する補助制度のご案内」)。

埼玉県の制度が対象外とする市は、次の12市です。

さいたま市、川越市、熊谷市、川口市、所沢市、春日部市、狭山市、上尾市、草加市、越谷市、新座市及び久喜市

鴻巣市はこの12市に含まれていません。 つまり、鴻巣市内のマンションは埼玉県の制度をそのまま使える対象区域にあります。この制度は平成21年度から続いており、県のページの掲載日は2026年5月11日です。

いくらもらえるのか

項目 補助率・上限額
含有調査費 1検体あたり8万円、かつ1棟あたり25万円が上限
除去等工事費 費用の3分の2、上限800万円(延べ面積1,000㎡未満の建築物は上限400万円)

延べ面積1,000㎡未満の建築物については、県のページに「定期報告の対象となる建築物(共同住宅、寄宿舎を除く)に限る」という条件が付されています。これをそのまま読むと、延べ面積1,000㎡未満の共同住宅(マンション)は、この例外規定の対象から外れるとも解釈できます。一方、延べ面積が1,000㎡以上のマンションであれば、この条件そのものが関係なくなります。中規模以上の分譲マンションであれば延べ面積1,000㎡を超えることが多いため、実務上は多くの物件が該当し得ると私は見ていますが、条文の解釈が読み手によって分かれ得る部分ですので、ご自身のマンションが対象になるかどうかは、申請前に埼玉県建築安全課へ直接ご確認ください。

申請の窓口も、鴻巣市役所ではなく埼玉県都市整備部建築安全課です。市を経由しないという点が、他の制度と違うところなので注意してください。

上限800万円という金額は、戸数で割ると体感しやすくなります。80戸のマンションなら1戸あたり10万円相当、40戸なら1戸あたり20万円相当です。仮設足場費が総工費の15〜25%を占めることを考えると、除去費用の補助だけで足場費の一部を相殺できる規模感だと私は見ています。

対象となるのは「吹付けアスベスト」「吹付けロックウール」で、アスベストを重量の0.1%を超えて含有するもの。除去・封じ込め・囲い込み、または解体工事が対象です。築年数の古いマンションで、機械室・パイプシャフト・駐車場の天井などに吹付け材が残っている場合、大規模修繕の劣化診断とあわせて調査だけでも先に済ませておく価値があります。

鴻巣市のマンションは、実は「新しい」まちです

ここが、鴻巣市を語るうえで避けて通れない特徴です。全国マンションデータベースに登録されている鴻巣市内の分譲マンション(確認できた範囲で104件)を見ると、最新の物件は2025年2月竣工の「グランセンチュリー鴻巣」、確認できた最も古いものでも2007年1月竣工でした(出典:全国マンションデータベース「鴻巣市|登録分譲マンション一覧」)。

このデータベースはすべてのマンションを網羅した公式統計ではなく、鴻巣市が公表している分譲マンションの棟数・築年数の全数調査結果を私は確認できませんでした。ですので「鴻巣市に旧耐震マンションが1棟もない」と断定するつもりはありません。ただし、掲載されている物件が鴻巣駅・北鴻巣駅・吹上駅の周辺、駅から徒歩1〜8分の範囲に集中しており、いずれもJR高崎線の開通後、特に平成後期から令和にかけて分譲されたマンションが目立つという傾向は、はっきり見て取れます。

この傾向が意味することは、実務的には2つあります。

  1. 旧耐震(昭和56年5月31日以前)を前提にした耐震診断助成のような制度は、鴻巣市では対象になる物件そのものが少ない可能性がある。私がこれまで訪れた自治体の中には、旧耐震マンションを対象にした専用の助成金を持つところが複数ありましたが、鴻巣市の公表情報からは、そうした制度を見つけることができませんでした。
  2. 築15〜25年クラスの、初回の大規模修繕を控えた管理組合が、鴻巣市ではボリュームゾーンになっている可能性が高い。この年代のマンションは、耐震性そのものより、長期修繕計画の見直しと修繕積立金の水準が最初の論点になります。

ご自身のマンションが何年に竣工したか、そして周辺に同世代の物件がどれくらいあるかは、理事会で一度共有しておく価値のある情報だと思います。

マンション管理計画認定制度|鴻巣市の独自基準はありません

マンション管理計画認定制度は、管理組合が作成した管理計画を自治体が認定する仕組みです(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。鴻巣市のページには、次のように明記されています(出典:鴻巣市「マンション管理計画認定制度について」)。

市への申請手数料は無料です。ただし、公益財団法人マンション管理センターが運用する「管理計画認定手続支援サービス」のシステム利用料がかかるほか、事前確認に係る審査料が別途必要です。

申請手数料そのものは無料という点は、管理組合にとって分かりやすいメリットです。一方で、システム利用料と事前確認審査料という2つの実費は発生しますので、「無料」という言葉だけを総会資料に書くと、後から「手数料が発生するじゃないか」という指摘を受けかねません。私は総会資料には「市への申請手数料は無料。ただしシステム利用料と事前確認審査料は別途必要」と、両方セットで書くことをお勧めしています。

もう1つ、鴻巣市ならではの特徴として、認定基準についてこう書かれています。

市の独自基準はなく、国がマンション管理適正化指針に定める基準と同一の内容です。

これまで訪れた自治体の中には、「地域独自の管理適正化指針に照らして適切であること」といった上乗せ基準を設けているところもありました。鴻巣市はそうした上乗せをしていない、シンプルな運用です。有効期間は5年で、更新しなければ効力を失います。申請の流れは、総会での決議 → 認定申請依頼 → 事前確認 → 認定申請 → 認定 → 公表、という順番です。総会決議が最初のステップになる点は、他の自治体と共通しています。理事会だけでは前に進みませんので、逆算した準備が必要です。

問い合わせ先は建築住宅課(Tel:048-541-1321)。認定そのものより、私は「認定基準を埋めていく過程で、理事会が長期修繕計画の現実を直視することになる」点にこそ価値があると考えています。

マンション長寿命化促進税制|期限まで残り半年です

長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減額措置も、鴻巣市は独自に運用しています(出典:鴻巣市「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る固定資産税の減額について」)。

対象要件を整理すると、次のとおりです。

項目 内容
建物要件 建築後20年以上が経過している、総戸数10戸以上のマンション
工事の要件 過去に大規模修繕工事(外壁塗装等、床防水、屋根防水)を1回以上実施していること
対象期間 令和5年4月1日から令和9年3月31日までに工事が完了
積立金要件 修繕積立金が適切に確保されていること
減額の内容 工事完了翌年度分の家屋の固定資産税額を3分の1減額(1戸あたり床面積100㎡が限度)
対象外 都市計画税は対象外
申告期限 大規模修繕工事完了後3か月以内
適用回数 1回限り

ここで見落とされやすいのが「過去に大規模修繕工事を1回以上実施していること」という要件です。これは2回目以降の大規模修繕が対象という意味で、初回の大規模修繕を控えている管理組合には使えません。 先ほど書いたとおり、鴻巣市は比較的新しいマンションが多い可能性があるまちですので、この制度の対象になる物件はまだ限られているかもしれません。

期限は令和9年3月31日完了です。この記事を書いている時点で、残り半年程度しかありません。工事完了から逆算すると、この秋のうちに契約・着工していなければ間に合わない工程になります。申告は税務課家屋担当(Tel:048-541-1321、新館2階)で受け付けています。

なお、鴻巣市役所は本庁舎と新館という2つの建物に分かれています。建築住宅課は本庁舎2階、税務課は新館2階です。電話番号はどちらも同じ048-541-1321ですが、実際に訪ねる建物が違いますので、来庁前にどちらの窓口かを確認されることをお勧めします。

12条点検(定期報告)|鴻巣市は自分で建築確認を行う特定行政庁です

建築基準法第12条に基づく定期報告制度(いわゆる12条点検)は、共同住宅の規模によっては報告義務が生じます。ここで大事なのは、報告書の提出先が「どこの市町村に建物があるか」で変わるという点です(出典:埼玉県「定期報告制度について」)。

鴻巣市は、自前で建築確認を行う立場にあります。鴻巣市のページには次のように明記されています(出典:鴻巣市「建築主の皆様へ」)。

建築確認申請は、国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者(指定確認検査機関)又は鴻巣市建築住宅課へ提出して下さい。

これは、鴻巣市が建築確認を市自身で行える立場、つまり特定行政庁であることを示しています。小規模な町村では、建築確認や12条点検の窓口が県の建築安全センターに一本化されているケースがありますが、鴻巣市はそうではなく、建築住宅課が窓口になっている可能性が高いということです。

ただし、正直に申し上げると、共同住宅について何階建て・延べ面積何㎡以上が報告義務の対象になるかという具体的な規模要件を、私は鴻巣市の公開ページから確認することができませんでした。特定行政庁ごとに指定内容が異なる場合があることは埼玉県自身も明記しており、他市の指定をそのまま鴻巣市に当てはめるのは危険です。ご自身のマンションが対象かどうか、また最後に報告した年度がいつだったかは、建築住宅課(048-541-1321)へ直接お電話でご確認ください。 マンション管理計画認定制度の審査でも、12条点検の報告状況が確認されることがありますので、認定を検討している管理組合はなおさら早めの確認をお勧めします。

埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣|鴻巣市は対象20市に入っています

埼玉県は、分譲マンションの管理組合に対してマンション管理士を無料で派遣する制度を運営しています(出典:埼玉県「分譲マンションアドバイザー派遣」)。市部の対象は次の20市です。

川越市、熊谷市、飯能市、狭山市、鴻巣市、上尾市、戸田市、入間市、朝霞市、志木市、和光市、桶川市、久喜市、北本市、八潮市、富士見市、三郷市、坂戸市、鶴ヶ島市、吉川市

鴻巣市はこの対象20市に含まれています。 これまでのシリーズで訪れた東松山市はこの対象から外れていましたので、鴻巣市の管理組合にとってはありがたい制度です。

派遣は無料、1組合あたり最大2回まで利用できます。令和8年度は約13組合、令和9年度は約9組合が派遣対象の見込みです。ここで大事な注意点があります。

令和10年度以降、派遣については各市にお問い合わせください。

つまり、県によるこの制度は令和9年度で終わり、令和10年度以降は市ごとの対応に移行する見通しです。鴻巣市が独自にこの制度を引き継ぐかどうかは、現時点の公表情報からは確認できませんでした。長期修繕計画の見直しや管理計画認定の準備で第三者の意見を聞きたい管理組合は、県の制度が続いているうちに一度使っておくことをお勧めします。

鴻巣市で「使えない制度」もはっきり書いておきます

鴻巣市には、住宅関連の補助金がいくつかありますが、共用部の大規模修繕にそのまま使えるものではありません。正直に並べておきます。

鴻巣市住宅リフォーム資金補助事業|専有部分のみが対象

令和8年4月1日から受付が始まったこの補助金は、対象工事について次のように定められています(出典:鴻巣市「鴻巣市住宅リフォーム資金補助事業」)。

集合住宅の場合は、専有部分の工事のみが対象です。

補助額は税抜き工事費の5%(上限10万円)、65歳以上の方や障害者手帳をお持ちの世帯がいる場合は一律2万円が加算されます。ただし共用部の外壁塗装や防水工事といった大規模修繕そのものには使えません。区分所有者が自室のリフォームをする際には使える可能性がありますので、総会資料に「個人でお使いいただける制度としてこういうものがあります」と1行添えるのは、理事会が住民の側に立っていることを伝える、コストのかからない工夫だと思います。

もう1つ、見落とされがちな要件があります。

本市に主たる事業所を有する法人又は住所を有する個人事業主に限ります

これは施工業者が鴻巣市内に主たる事業所を置いていることを求める要件です。株式会社明誠は東京都東大和市の会社であり、鴻巣市内に主たる事業所を置いていないため、当社が施工する工事はこの補助金の対象にはなりません。 自社に不利な情報ですが、正直にお伝えしておきます。

木造住宅耐震診断・改修助成|戸建て限定

鴻巣市には木造住宅の耐震診断・改修に対する助成もありますが、対象は「平成12年5月31日以前に建築確認を受けた2階以下の木造戸建住宅」です。鉄筋コンクリート造・鉄骨造の分譲マンションには使えません。

川幅日本一とひな人形のまちだからこそ言えること

鴻巣市には、荒川にかかる御成橋付近に「日本一広い川幅」の地点があります。この土地の特徴は、大規模修繕の実務にもつながる話があると私は考えています。

広い河川敷を持つまちは、水はけと風の通り道が独特です。荒川沿いの立地にあるマンションでは、洗濯物や外壁への砂ぼこりの付着、河川からの風による足場の養生シートのばたつきといった、内陸の物件とは違う条件が出やすくなります。私の経験上、これは川沿いの現場で足場の養生ネットの固定を一段厳重にする理由の1つです。ロープアクセス工法であれば、そもそも面で覆う養生シート自体を必要としないため、この種の風対策の手間自体がなくなります。

もう1つ、鴻巣市は「人形の鴻巣」として知られ、毎年開催される鴻巣びっくりひな祭りでは、ピラミッド状に組まれた巨大なひな段が名物になっています。何段にも積み重ねる構造物は、下段の土台がしっかりしていないと全体が傾く、という点で、実は分譲マンションの長期修繕計画とよく似た構造をしています。土台(=1回目の大規模修繕・耐震性・修繕積立金の水準)が整っていないまま、上に工事を積み重ねようとしても、どこかで無理が出る。私が理事会でよくお話しするたとえ話です。

鴻巣市で無料で使える相談窓口

鴻巣市は、マンション管理に関する無料相談会を継続的に開催しています(出典:鴻巣市「第40回マンション管理無料相談会」)。「第40回」という回数が示すとおり、この相談会は長年にわたって定期的に開催されてきました。 1回きりの単発イベントではなく、継続的な仕組みとして根づいている点は、管理組合にとって心強い材料です。

開催内容の詳細(日時・定員・申込方法)はページごとに更新されますので、直近の開催回の情報は建築住宅課(048-541-1321)または鴻巣市のホームページで最新のものをご確認ください。あわせて、次の窓口も無料で使えます。

  • 建築住宅課(048-541-1321):マンション管理計画認定制度、12条点検、住宅リフォーム補助
  • 税務課(048-541-1321、新館2階):長寿命化促進税制の申告
  • 埼玉県建築安全課:吹付けアスベスト補助金の申請
  • 埼玉県住宅課:分譲マンションアドバイザー派遣の申込

モデルケース|鴻巣市の2つの典型でいくらになるか

鴻巣市の物件傾向(駅近・比較的新しい築年数)を踏まえて、2つのケースで試算します。金額はいずれも目安で、実際は現地調査のうえでお見積りします。

ケースA:鴻巣駅圏の単棟型 築18年 8階建て・60戸

初回の大規模修繕を検討する段階です。足場工法での見積り概算は約6,800万円。ハイブリッド工法(外壁は足場、屋上・上層部の点検はロープアクセスを併用)に切り替えると約5,900万円(▲900万円、1戸あたり約15万円の圧縮)。工期は足場の架け払いが1回分減ることで、約5.5か月から約4.5か月に短縮できる見込みです。この規模はまだ長寿命化促進税制の対象(2回目以降)にはなりませんが、管理計画認定の取得を同時に進めておくことをお勧めします。

ケースB:荒川沿い立地の団地型 築24年 5階建て×4棟・80戸

過去に一度、外壁塗装のみの部分修繕歴があるケースです。全面的な大規模修繕(外壁塗装等・床防水・屋根防水を一体実施)を足場工法で行うと約9,200万円。ロープアクセス主体のハイブリッド工法では約7,800万円(▲1,400万円、1戸あたり約17.5万円の圧縮)。3つの防水・塗装を一体で実施すれば、長寿命化促進税制の対象になり得ますので、令和9年3月31日の完了期限から逆算したスケジュールが重要になります。㎡単価の目安は、外壁塗装等3,500〜4,500円、タイル打診調査250〜500円、防水5,000〜8,000円。仮設足場費は総工費の15〜25%が一般的な水準です。

見積書で必ず確認していただきたい5点

  1. 足場・養生の仮設費が総工費に占める割合(一式表記でなく内訳を出してもらう)
  2. 含有調査(アスベスト等)の有無と、埼玉県補助金の申請サポートの可否
  3. 見積り時点で判明していない仮定数量が超過した場合の追加単価(契約書に明記してもらう)
  4. 足場リース期間が延びた場合の追加費用の負担者
  5. 設計監理者と施工会社との資本関係(利益相反の有無)

正直に申し上げます|私は施工会社の人間です

ここまでお読みいただいた方に、あらためてお伝えしておきたいことがあります。私は施工会社の人間であり、自社の工法を勧める立場にあります。その前提でこの先を読んでください。

ロープアクセス工法が万能というわけではありません。次のような条件では、足場工法のほうが適していることが実際にあります。

  • タイルの浮きが外壁面積のおおむね20%を超えている
  • バルコニー内部の防水や下地補修が主体になる
  • サッシ・開口部の交換を伴う
  • 敷地の外周に十分な平場が確保できる

また、「ロープアクセスなら住戸への立ち入りは一切不要」というのも正確ではありません。バルコニー内部や住戸まわりのシーリング打ち替えなどは、工法にかかわらず立ち入りが必要になる場合があります。曖昧なまま契約して後で叱られるのは、施工会社ではなく、それを住民に説明した理事会です。

私が3つの工法(通常の足場仮設、無足場工法であるロープアクセス、両者を組み合わせたハイブリッド)を持っている意味は、ここにあります。足場しか持たない会社は足場を勧めるしかなく、ロープしか持たない会社はロープを勧めるしかありません。3つ持っているからこそ、状況によっては足場を勧めることもできます。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員、ISO9001品質マネジメントシステム、日本ロープ高所作業協会の事務局。そして、日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部として、塗装・防水・タイル・電気・看板の各分野の専門職が加盟しています。

フランチャイズの仕組みで各分野の専門会社が直接施工に入るため、中間マージンを圧縮しながら品質を保てます。これが「高品質で低価格」を成り立たせている仕組みです。技術面の詳しい解説はロープアクセスドットコムでご覧いただけます。

当社のロープアクセス工法そのものについてはロープアクセス工法のご紹介で、大規模修繕工事の総合的な進め方は大規模修繕工事のご紹介でご覧いただけます。管理組合さま向けのサービス内容はマンション管理組合向けの大規模修繕サービスに、これまでの施工実績は明誠の施工事例にまとめています。アスベスト含有調査の結果、劣化が判明した場合の対応など、漏水が起きている物件については漏水調査・止水工事もあわせてご覧ください。工法選定でお悩みの際はピンポイント施工のページも参考にしていただけます。

この秋、鴻巣市の管理組合がやることの順番

時期 やること 窓口・備考
9月〜10月 ご自身のマンションの竣工年・旧耐震か新耐震かを確認 登記簿・確認済証で確認
9月〜10月 吹付け材(機械室・PS・駐車場天井等)の有無を確認 該当すれば埼玉県建築安全課へ相談
10月 12条点検の報告状況と対象規模を建築住宅課に確認 048-541-1321
10月〜11月 大規模修繕の劣化診断を実施・前倒し アスベスト調査と同時実施を検討
11月〜12月 見積を3社取得。足場費の内訳・仮定数量超過単価を必須項目に
12月〜1月 管理計画認定を総会議案へ(市の手数料は無料) 長期修繕計画の見直しとセット
1月〜3月 総会・契約。長寿命化促進税制を使う場合は令和9年3月31日完了から逆算 2回目以降の工事のみ対象・申告は完了後3か月以内
随時 埼玉県分譲マンションアドバイザー派遣を申込(令和9年度が最終年度) 埼玉県住宅課

よくあるご質問

Q. 鴻巣市の分譲マンションで、共用部の大規模修繕費用そのものに直接使える市の補助金はありますか。

A. 令和8年度の公表情報からは確認できませんでした。共用部そのものに直接効くのは、埼玉県の吹付けアスベスト補助金(該当する場合)と、2回目以降の大規模修繕を対象にしたマンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)です。住宅リフォーム資金補助事業は専有部分のみが対象です。

Q. 埼玉県のアスベスト補助金は、管理組合が直接申請できますか。

A. 県のページでは「民間建築物が対象」とされていますが、分譲マンションの管理組合が申請者になれるかどうかの明記は確認できませんでした。申請前に必ず埼玉県建築安全課へ、管理組合として申請可能かをご確認ください。

Q. うちのマンションは築30年を超えていますが、まだ大規模修繕を1度もしていません。長寿命化促進税制は使えますか。

A. 使えません。この税制は「過去に大規模修繕工事を1回以上実施していること」が要件で、2回目以降の工事が対象です。初回の大規模修繕には使えませんが、その工事自体が2回目以降の工事の前提になりますので、まずは初回の工事を計画どおりに進めてください。

Q. マンション管理計画認定は、費用がかかりますか。

A. 鴻巣市への申請手数料そのものは無料です。ただし、管理計画認定手続支援サービスのシステム利用料と、事前確認に係る審査料が別途発生します。総会資料には両方を明記することをお勧めします。

Q. 鴻巣市に相談に行きたいのですが、どこに行けばよいですか。

A. マンション管理計画認定制度・12条点検・住宅リフォーム補助は建築住宅課(本庁舎2階、048-541-1321)、長寿命化促進税制の申告は税務課(新館2階、048-541-1321)です。電話番号は同じですが、訪ねる建物が違いますので、来庁前にどちらの窓口かを確認されることをお勧めします。

Q. ロープアクセス工法にすれば、必ず費用は安くなりますか。

A. そうとは限りません。タイルの浮きが広範囲に及ぶ場合や、バルコニー内部の工事が主体になる場合は、足場工法のほうが効率的なことがあります。敷地条件や劣化状況によって最適な工法は変わりますので、まずは現地調査でご相談ください。

この記事のポイントまとめ

  • 鴻巣市は埼玉県の吹付けアスベスト補助金の対象区域(熊谷市・久喜市は対象外)
  • マンション管理計画認定は市への申請手数料無料・独自基準なし
  • 長寿命化促進税制は令和9年3月31日完了が期限、2回目以降の工事のみ対象
  • 鴻巣市は特定行政庁で建築確認を市自身が担当、12条点検の詳細は要確認
  • 埼玉県マンションアドバイザー派遣は対象20市に鴻巣市を含む・令和9年度で終了見込み

出典・参考資料


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月24日時点で公表されている鴻巣市および国土交通省・埼玉県の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず鴻巣市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。特に12条点検の対象規模、埼玉県アスベスト補助金の管理組合による申請可否、鴻巣市の分譲マンション全数統計については、公開情報から断定できなかったため、窓口でのご確認をお願いします。

鴻巣市の管理組合さまへ。埼玉県のアスベスト補助金と、長寿命化促進税制の期限、2つのタイミングが効いてくる方もいらっしゃると思います。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

ご相談は株式会社明誠のお問い合わせフォームから承っています。

この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月24日

老朽マンション改修に国交省32.4億円|令和9年度予算要求で一棟リノベ補助拡充、空き家賃貸への新融資まで管理組合とオーナーが今知るべきこと【2026年9月】

この記事で分かること

「国交省の来年度予算で、マンションの大規模修繕やロープアクセス工事に使える補助金は増えるのか、減るのか」——この記事はその疑問に、公表されたばかりの令和9年度(2027年度)予算概算要求の数字でお答えします。

2026年8月、国土交通省住宅局は令和9年度の予算概算要求概要を公表しました(出典:国土交通省「令和9年度住宅局関係予算概算要求概要」)。この中で、老朽化したマンションの再生を支援する「マンション総合対策モデル事業」に32.40億円が計上され、一棟リノベーションや給排水設備の長寿命化工事への補助が拡充される見込みとなりました。同時に、空き家をリフォームして賃貸に出す事業者向けに、住宅金融支援機構を通じた低利融資制度も新たに創設される方向です。

私は株式会社明誠の本間と申します。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年近くやってきましたが、正直に申し上げると、こうした予算のニュースは管理組合の理事長さまや収益不動産のオーナーさまにはあまり届いていません。数字だけ見ても「自分の建物に関係あるのか」が分かりにくいからです。今日はこの令和9年度予算概算要求の中身を、私なりに現場目線でかみ砕いてお伝えします。


令和9年度予算概算要求、結論から言うとマンション関連は増額基調

先に結論をお伝えします。国土交通省住宅局の令和9年度予算概算要求は、前年度から大きく積み増しされており、その中でもマンションの老朽化対策・空き家活用に関する項目が明確に拡充されています(出典:国土交通省「令和9年度住宅局関係予算概算要求概要」)。

主なポイントは次の3つです。

1. マンション総合対策モデル事業:32.40億円
老朽化したマンションの改修・再生を支援する事業で、一棟リノベーション工事や給排水設備の長寿命化工事などが補助対象に含まれています。

2. 空き家対策総合支援事業・空き家再生等推進事業:70.80億円(社会資本整備総合交付金等の内数)
空き家の除却・活用を支援する事業で、除却は国費1/3〜1/2、活用は国費1/3〜2/5が補助率の目安として示されています。

3. 住宅ストックを活用した賃貸住宅融資制度の創設
住宅金融支援機構が事業主体となり、出資金21億円の内数を使って、空き家のサブリース事業や状態の良い空き家を賃貸流通させる取り組みを金融面から支援する制度が新設される見込みです。

いずれも「まだ決まった」ではなく「予算として要求した」段階である点には注意が必要です(出典:国土交通省「令和9年度予算」)。年末の予算編成で金額や制度設計が変わる可能性はありますが、国が老朽マンションと空き家の再生に本気で予算をつけようとしている方向性そのものは、管理組合・オーナーの皆さまが知っておいて損はない情報だと思います。

私がこのブログでお伝えしている範囲だけでも、2026年9月は区分所有法改正やマンション管理適正化法の改正、大規模修繕を巡る談合問題への対応など、マンションに関する制度面のニュースが立て続けに動いた月でした。今回の令和9年度予算概算要求も、単発の話ではなく、こうした一連の制度整備の流れの延長線上にあると私は見ています。全国的に築年数の古いマンションが年々増えていることは、国土交通省が公表しているマンションストック関連の統計からも明らかで(出典:国土交通省「マンションに関する統計・データ等」)、制度・予算・法律の3方向から国が老朽化対策を後押ししようとしている、というのが私の受け止め方です。


「マンション総合対策モデル事業」とは何か

まず主役となる「マンション総合対策モデル事業」について、私の理解を整理してお伝えします。この事業は国土交通省が公表している制度で、マンションの「建物の老い」と「居住者の老い」という2つの老いに対応するための先導的な取り組みを支援するものです(出典:国土交通省「マンション総合対策モデル事業」)。

大きく分けると、次の2つの柱で構成されています。

事業名 主な対象 支援内容
マンションストック長寿命化等モデル事業 個別のマンション・管理組合等 先導的再生モデルタイプ(新工法・材料導入など創意工夫に富む改修の計画・工事支援)/管理適正化モデルタイプ(管理水準の低いマンションが自治体と協力して大規模修繕等を実施)
老朽マンション対策モデル事業 マンション管理適正化推進計画を策定した地方公共団体 ソフト事業(実態調査・専門家派遣・相談窓口設置)とハード事業(劣化調査・再生設計・工事実施)

補助対象となる工事の例としては、一棟リノベーション、劣化部材の補修、給排水設備などの設備改修・長寿命化、管理不全マンションの再生工事が挙げられています。申請主体はコンサルタントや設計事務所、管理会社、施工業者、買取再販事業者などで、管理組合が直接申請するというよりは、専門家や事業者と組んで活用する制度という位置づけです。

公募のスケジュールも参考になります。令和8年度(今年度)は4月、6月、9月と複数回に分けて公募が行われており、直近の第3回は2026年9月14日から18日の日程で受け付けが行われました(出典:国土交通省「マンション総合対策モデル事業」)。年に複数回チャンスがある制度だということは、覚えておいて良いポイントだと思います。


一棟リノベーション・給排水長寿命化への補助、現場ではどう使うか

ここからは、私が現場で工事に携わる立場として感じていることをお伝えします。マンション総合対策モデル事業が対象とする「一棟リノベーション」や「給排水設備の長寿命化工事」は、築30年、40年を超えるマンションで特に相談が増えているテーマです。

私の経験上、これは築年数が古い建物ほど顕著になる話ですが、外壁や屋上防水といった「見える劣化」への対応は理事会でも合意が取りやすい一方、給排水管のように「壁の中・床下に隠れている劣化」は、実際に漏水事故が起きるまで後回しにされがちです。ところが給排水設備の更新は、一棟あたりの工事費が高額になりやすく、修繕積立金だけでは賄いきれないケースも少なくありません。国の補助金・補助率(国1/3〜1/2程度)が使える制度があると知っているかどうかで、理事会の議論の進め方は大きく変わってきます。

ここで一つ、現場の話をさせてください。私が数年前に担当したあるマンションでは、屋上防水と外壁塗装だけを検討していた理事会に、給排水管の劣化診断も同時に行うことをご提案しました。結果として、劣化診断で配管の内部腐食が想定より進んでいることが分かり、次回の大規模修繕で給排水更新も一体で計画することになりました。もし劣化診断をせずに外壁だけで終えていたら、数年後にまた別工事で足場やロープアクセスの仮設費用が二重にかかっていたはずです。補助制度の有無にかかわらず、こうした「まとめて診断し、まとめて直す」視点は、長期的なコスト圧縮につながると私は考えています。

補助金を使う・使わないにかかわらず、まず押さえておきたいのは次の3点です。

  • 一棟リノベーション・給排水長寿命化は国の補助対象になり得る工事である
  • 申請は管理組合単独ではなく、設計事務所や施工業者など専門家との連携が前提となる
  • 公募は年に複数回あるため、次回大規模修繕の計画段階から情報収集を始めることが望ましい

自治体経由の「老朽マンション対策モデル事業」、対象になる条件

マンション総合対策モデル事業のもう一つの柱である「老朽マンション対策モデル事業」は、管理組合が直接申請する制度ではなく、地方公共団体が事業主体となる仕組みです。対象となるのは「マンション管理適正化推進計画」を策定した地方公共団体に限られます(出典:国土交通省「マンション総合対策モデル事業」)。

内容はソフト事業とハード事業の2段階に分かれています。ソフト事業では、管内マンションの実態調査、専門家の派遣、相談窓口の設置といった、いわば「困っているマンションを見つけて伴走する」取り組みが支援対象です。ハード事業に進むと、劣化調査、再生設計、実際の工事実施までを自治体が後押しする形になります。

つまり、この制度が実際に自分たちの建物で使えるかどうかは、「お住まいの自治体がマンション管理適正化推進計画を策定済みかどうか」にかかっています。東京都内・関東一円だけでも策定状況は自治体ごとに差があるのが実情です。管理組合の理事長さまにおかれては、まずは物件所在地の自治体窓口(住宅課・建築指導課など)に、マンション管理適正化推進計画の策定状況と、老朽マンション対策モデル事業の活用実績を問い合わせてみることをおすすめします。制度を知っているだけで終わらせず、自治体側の準備状況とセットで確認することで、実際に使える制度かどうかが見えてきます。


空き家対策総合支援事業70.80億円の内訳、除却と活用で補助率が違う

先ほど触れた空き家対策総合支援事業・空き家再生等推進事業についても、もう少し詳しく見ておきます。令和9年度予算概算要求では、社会資本整備総合交付金等の内数として70.80億円が計上されており、空き家の除却(取り壊し)と活用(改修して使う)とで、補助率の目安が分けて示されています(出典:国土交通省「令和9年度住宅局関係予算概算要求概要」)。

対応の種類 補助率の目安 主な対象
除却(取り壊し) 国費1/3〜1/2 管理不全な空き家等
活用(改修して活用) 国費1/3〜2/5 賃貸活用・地域活性化に資する空き家等

「除却より活用の方が補助率が低い」という設計自体は、老朽化した建物を安易に壊すのではなく、直して使う方向に誘導したい国の意図の表れだと私は受け止めています。この事業の対象は主に地方公共団体・NPO・民間事業者ですが、収益不動産を複数保有されているオーナーさまであれば、空き家化した保有物件について自治体の空き家対策窓口に相談する価値は十分にあると思います。


フラット35・管理計画認定マンション制度ともあわせて確認したい

国の住宅関連の優遇策という意味では、フラット35における「管理計画認定マンション」向けの金利優遇制度も、あわせて知っておきたいところです。管理計画認定を受けたマンションは、住戸を購入する個人がフラット35を利用する際に金利優遇の対象となる仕組みがすでに用意されています。今回の令和9年度予算概算要求の一連の施策も、老朽化したマンションの「管理」と「修繕」の両面を国が下支えしようとしている流れの中にあると私は捉えています。

管理計画認定制度そのものは自治体ごとに申請窓口や審査の運用が異なり、当ブログでも自治体別の解説記事を別途お届けしています。今回ご紹介したマンション総合対策モデル事業や空き家関連の予算とあわせて、管理計画認定の取得状況もセットで見直しておくと、今後の資産価値維持・資金調達の両面で選択肢が広がるはずです。


新設・空き家賃貸活用への低利融資制度は、老朽賃貸マンションにも関係するのか

もう一つの注目点が、住宅金融支援機構を通じた新しい融資制度です。時事通信の報道によれば、国土交通省は空き家をリフォームして子育て世帯や中低所得層向けの賃貸住宅として提供する事業者、または老朽化した公営住宅をリフォームして活用する事業者を対象に、低利融資制度を創設する方針です(出典:nippon.com「空き家の賃貸活用を促進=国交省、事業者の資金調達支援」)。

仕組みとしては、政府が住宅金融支援機構に資金を拠出し、その運用益を活用してリフォーム資金を低利で融資するというものです。背景には、空き家は資産価値の低さから金融機関の担保評価が付きにくく、リフォームして賃貸に活用する事例がごく一部の小規模事業者に限られてきたという課題があります(出典:国土交通省「令和9年度住宅局関係予算概算要求概要」)。

この制度は空き家が主な対象ですが、私が注目しているのは、この考え方の延長線上に「老朽化した賃貸マンション・アパートのリノベーション資金調達」の問題があるという点です。区分マンションを5戸、10戸と保有されているオーナーさまの中には、築古の賃貸住戸を持て余していたり、リノベーションしたくても金融機関の担保評価がネックになっているという声を、私自身もお客さまとのやり取りの中でよく耳にします。空き家対策として始まった低利融資の枠組みが、将来的に賃貸住宅全般の改修支援へと広がっていく可能性は、注視しておく価値があると思います。

現時点での制度設計はあくまで「空き家をリフォームして子育て世帯・中低所得層向け賃貸住宅として提供する事業者」と「老朽公営住宅をリフォームして活用する事業者」が対象であり、個人が区分所有する賃貸マンションの一室をリノベーションする際に直接使えるかどうかは、今後の詳細設計を見る必要があります。ただし、住宅金融支援機構という同じ実施主体が、空き家分野で低利融資の実績を積み上げていけば、その仕組みが将来的にマンション・アパートといった他の住宅ストックにも応用されていく流れは十分に考えられます。私自身、こうした制度の広がり方は今後も継続してこのブログで追いかけていきたいと思っています。


既存の「マンション共用部分リフォーム融資」との違いと使い分け

ここで、管理組合の皆さまにとってより身近な既存制度についても整理しておきます。住宅金融支援機構には、管理組合が大規模修繕の資金を借り入れる際に使える「マンション共用部分リフォーム融資」という制度が以前からあります(出典:住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資・災害復興住宅融資(管理組合申込み)等の融資金利について」)。修繕積立金だけで大規模修繕の費用を賄えない管理組合が、借入という形で資金を調達する際に使われてきた制度です。

令和9年度予算概算要求で新設が検討されている制度と、既存のマンション共用部分リフォーム融資は、対象も申込者も異なります。両者の違いを整理すると、次のようになります。

項目 マンション共用部分リフォーム融資(既存) 住宅ストック活用賃貸住宅融資制度(新設予定)
申込者 マンション管理組合 空き家等をリフォームして賃貸活用する事業者
主な対象 共用部分の大規模修繕工事 空き家・老朽公営住宅のリフォーム
実施主体 住宅金融支援機構 住宅金融支援機構
開始時期 運用中 令和9年度予算成立後(2027年度予定)
出典 住宅金融支援機構 国土交通省

管理組合として大規模修繕の資金を借り入れたい場合は既存のマンション共用部分リフォーム融資、区分所有する賃貸住戸を個別にリノベーションして貸し出したい場合は今回新設が検討されている制度、というように、立場によって見るべき制度が変わってくる点は誤解のないようにお伝えしたいところです。

私の経験上、管理組合の理事会で「借入」という言葉が出ると、それだけで慎重論が強くなりがちです。ただ、修繕積立金の値上げか、借入か、工事の範囲を縮小するか、といった選択肢を並べて比較検討すること自体は、決して後ろ向きな話ではありません。マンション共用部分リフォーム融資は住宅金融支援機構が長年運用してきた制度で、金利や返済期間の条件は公式サイトで確認できます(出典:住宅金融支援機構)。次回の大規模修繕に向けて資金計画を立てる段階で、積立金だけで賄えるのか、一部を借入で補うのかを、早めに専門家を交えて試算しておくことを私はおすすめしています。


明誠の視点:補助金頼みにしない工法選びで工事費そのものを圧縮する

ここまで補助金・融資制度の話をしてきましたが、私が現場で20年近く見てきた実感として、補助金はあくまで「使えたら助かるもの」であり、工事費そのものを適正に抑える工法選びの方が、管理組合・オーナーさまの負担を左右する影響は大きいと感じています。

株式会社明誠では、通常の足場仮設工事、無足場工法であるロープアクセス工事、そして足場とロープアクセスを組み合わせたハイブリッド工法という3つの工法から、建物にとって最適な提案ができる体制を整えています。この3工法すべてを中立的に提案できる会社は、日本国内でも数が限られていると私は認識しています。ロープアクセス工法は足場を組まずに高所へ直接アプローチできるため、足場の仮設・解体コストの削減、工期の短縮、入居者さまや利用者さまへの生活影響の軽減につながりやすい点が特徴です。今回ご紹介した一棟リノベーションや給排水長寿命化工事のように、部分的・ピンポイントな改修が必要な場面では、全面足場を組むよりロープアクセスやハイブリッド工法の方が費用対効果に優れるケースも少なくありません。

ロープアクセス工法についてさらに詳しく知りたい方は、ロープアクセス工法のご紹介のページもご参照ください。また、ロープアクセス工法・無足場工法そのものの技術的な背景や安全基準については、姉妹サイトであるロープアクセスドットコムに詳しくまとめられていますので、あわせてご覧いただければと思います。当社はロープアクセス工事の分野で日本初のフランチャイズ展開も行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟することで、高品質かつ低価格な施工体制を全国に広げています。

具体的な工法選びの流れとしては、私はいつも理事長さまに、まず建物全体の劣化診断を行ったうえで、外壁・屋上防水のように面で広く点検・補修が必要な箇所は通常足場、給排水配管の立て管や一部のひび割れ補修のように点で対応できる箇所はロープアクセス、というように部位ごとに工法を使い分けることをお伝えしています。全面足場を組むと、足場の仮設・解体だけで数週間、費用も工事全体の一定割合を占めることが珍しくありません。ピンポイントの補修であれば、その仮設コストと工期を圧縮できる余地が生まれます。もちろん建物の形状や劣化の広がり方によっては全面足場の方が合理的な場合もあり、私はどのケースでもロープアクセスを優先すべきだとは考えていません。大切なのは、足場・ロープアクセス・ハイブリッドのどれか一つに偏らず、建物の状態に応じて選べる体制を持っているかどうかだと思います。


管理組合・オーナーが今すぐやっておきたい3つのこと

令和9年度予算はまだ概算要求の段階で、年末の予算編成を経て確定します。とはいえ、「予算が確定してから動く」のでは、公募のタイミングに間に合わないことも起こり得ます。私からは、今の段階でできる準備として、次の3つをおすすめしています。

1. 次回大規模修繕の劣化診断を、外壁・防水だけでなく給排水設備まで含めて計画する
補助対象になり得る工事の範囲を把握しておくことで、公募が具体化した際にすぐ動けます。

2. 設計事務所・施工業者など、制度に詳しい専門家との接点を早めに持つ
マンション総合対策モデル事業の申請主体はコンサルタントや施工業者などの専門家であり、管理組合単独では申請が完結しません。

3. 修繕積立金の水準と、既存のマンション共用部分リフォーム融資の要否を並行して確認する
補助金がついても自己負担分は残ります。積立金の不足が見込まれる場合は、借入も選択肢に入れて早めに資金計画を立てることが安心につながります。積立金の値上げは総会での合意形成に時間がかかるテーマですから、次回大規模修繕まで数年の余裕がある今のうちに、理事会内で問題提起しておくことが結果的に近道になると私は考えています。

予算が確定するのはまだ先の話ですが、劣化診断や資金計画の検討そのものは、今日からでも始められます。「制度が固まってから」ではなく「制度が固まる前から」動き始めた管理組合ほど、いざ公募が始まったときにスムーズに専門家と連携できる、というのが私の現場での実感です。これから大規模修繕や給排水設備の更新を検討される管理組合・オーナーさまは、ロープアクセス・足場・ハイブリッドのどの工法が建物に合っているかも含めて、無料調査・お見積りだけでもご相談いただければと思います。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談はお問合せフォームから承っております。管理組合向けのサービス詳細は管理組合さま向けページ、大規模修繕工事全般については大規模修繕工事のご紹介もあわせてご覧ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 令和9年度予算概算要求のマンション関連補助金は、いつから使えますか?
A. 2026年9月時点ではまだ概算要求の段階で、年末の予算編成・国会審議を経て正式に決まります。開始時期は令和9年度(2027年度)予算成立後となる見込みです(出典:国土交通省)。

Q2. マンション総合対策モデル事業は、うちの管理組合が単独で申請できますか?
A. 申請主体はコンサルタントや設計事務所、施工業者、買取再販事業者などの専門家です。管理組合単独ではなく、専門家と連携して活用する制度です(出典:国土交通省)。

Q3. 給排水設備の更新工事は、この補助の対象になりますか?
A. マンション総合対策モデル事業では、給排水設備などの設備改修・長寿命化工事が補助対象の例として挙げられています。詳細な要件は募集要領で確認する必要があります。

Q4. 空き家向けの新しい融資制度は、賃貸マンションのオーナーも使えますか?
A. 現時点で公表されている内容では、対象は空き家をリフォームして賃貸活用する事業者や、老朽公営住宅をリフォームする事業者です。区分所有の賃貸住戸を保有する個人オーナーが直接対象になるかは、今後の制度設計の詳細を確認する必要があります。

Q5. ロープアクセス工法は、こうした国の補助対象工事にも使えますか?
A. 工法そのものを指定する補助金ではないため、一棟リノベーションや設備改修といった対象工事の中で、足場・ロープアクセス・ハイブリッドのいずれの工法を採用するかは施工計画次第です。ロープアクセス工法を含めた工法選定については、明誠までご相談ください。

Q6. 予算が概算要求の段階でも、今から理事会で話し合う意味はありますか?
A. あると私は考えています。制度が確定してから劣化診断や専門家探しを始めると、公募のタイミングに間に合わないことがあります。予算が固まる前の今の段階から、次回大規模修繕の計画づくりと情報収集を並行して進めておくことをおすすめします。


この記事のポイントまとめ

  • 国交省令和9年度予算要求でマンション総合対策モデル事業が32.40億円に
  • 一棟リノベーション・給排水長寿命化工事が補助対象の例に含まれる
  • 空き家賃貸活用への低利融資制度が住宅金融支援機構を通じて新設予定
  • 既存のマンション共用部分リフォーム融資とは対象・申込者が異なる
  • 補助金確定前の今こそ、劣化診断と専門家との接点づくりが有効

執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年9月24日


出典・参考資料


▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア

足立区の管理組合が無料で使える相談・派遣12選|管理計画認定は手数料無料、非木造の耐震助成は診断・改修とも5割【令和8年度版】

2026年9月23日 更新

先日、北千住駅から歩いて15分ほどの分譲マンションの修繕委員長さまから、こんなご相談をいただきました。

「築38年、5階建て・64戸のマンションで、2回目の大規模修繕をそろそろ動かしたい。ただ理事会の予算資料には『管理会社からの見積り一式』としか書かれておらず、その金額が高いのか安いのかを判断する材料が誰の手元にもない」

伺うと、長期修繕計画そのものは残っていたものの、直近の改定は6年前で止まっていました。理事は毎年入れ替わる輪番制。前の理事会が何を検討し、どこで判断を保留したのかは、議事録を遡ってようやく分かる状態でした。

私はこの手のご相談を受けるたびに思うことがあります。足立区の管理組合には、実はお金をかけずに呼べる第三者の専門家がいくつも用意されているのに、その存在自体があまり知られていない、と。しかも足立区の場合、マンション管理計画認定の区の手数料が当面のあいだ無料という、23区の中でも珍しい設計になっています。

申し遅れました。私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁の仕事をしてきました。足場を組んで建物をすっぽり囲う工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらの現場も自分の足で踏んできた人間です。

今日は、足立区の管理組合とビル・収益不動産オーナーさまが使える相談・派遣・助成を12個、令和8年度(2026年4月1日から2027年3月31日まで)の一次情報で整理します。


結論:足立区で使える支援は12ある

先に一覧でお示しします。費用ゼロのものと、費用の一部が助成で戻るものを分けて並べました。

# 制度・窓口 誰が対応するか 費用 申込先
1 足立区 分譲マンション出張相談会 マンション管理士 無料/個別相談+ミニセミナー(原則年度内1回) 住宅課住宅計画係 03-3880-5963
2 足立区 分譲マンション管理アドバイザー派遣制度 マンション管理士 無料/年度内12時間(1名派遣)または6時間(2名派遣) 住宅課住宅計画係 03-3880-5963
3 足立区 マンション管理計画認定制度 区+(公財)マンション管理センター 区の手数料無料(当面のあいだ)/システム利用料は別途 住宅課住宅計画係 03-3880-5963
4 足立区 非木造住宅・建築物耐震化助成(分譲マンション対象) 区登録の耐震診断士等 診断費用5割助成(上限500万円または戸数×10万円の低い方)、改修工事費用5割助成(上限3,000万円) 建築防災課 03-3880-5317
5 足立区 不動産相談(予約制) 宅地建物取引士 無料/1回35分・月2回(第1・3水曜) 区民の声相談課 03-3880-5359
6 足立区 すまいの建築相談 建築士 無料/月1回(第2水曜) 住宅課住宅計画係 03-3880-5963
7 足立区 法律相談(予約制) 弁護士 無料/1回40分以内、同一内容は原則1回 区民の声相談課 03-3880-5359
8 足立区 消費生活相談 消費生活相談員 無料(通話料等は自己負担) 03-3880-5380
9 東京都 マンションアドバイザー無料派遣(管理状況届出制度) マンション管理士等 無料(届出済みが条件) 東京都防災・建築まちづくりセンター
10 東京都 マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応) 講習修了のマンション管理士 無料/各2回まで 東京都マンション管理士会(令和9年2月26日まで)
11 (公財)マンション管理センター 電話相談 専門相談員 無料 03-3222-1517/設備は03-3222-1519
12 一般社団法人マンション管理業協会 相談窓口 専門相談員 無料 050-3733-8982

1〜3・5〜12がお金のかからない相談・派遣・認定手数料、4だけは費用の一部を自己負担する助成制度です。順番に見ていきます。


足立区の分譲マンション支援は「相談会」と「アドバイザー派遣」の二段構え

足立区の分譲マンション支援は、区が年に何度か開く出張相談会と、より腰を据えて相談したいときに呼べるアドバイザー派遣制度の二段構えになっています。

1. 分譲マンション出張相談会(原則年度内1回)

区が公表している内容をそのまま引用します。

項目 内容
対象 区内分譲マンション居住者(原則、年度内1回限り)
開催頻度 年8回(5月から翌年3月まで、月1〜2回程度)
内容 マンション管理士による個別相談。管理・修繕・トラブルなど分譲マンションのさまざまな問題に対応。60分のミニセミナーも併催
費用 無料
申込方法 電話(平日午前9時〜午後4時)または区のオンライン申請システムから事前申込。会場ごとに申込開始日が異なる
申込先 住宅課住宅計画係 03-3880-5963

(出典:足立区「分譲マンション出張相談会開催のお知らせ」/更新日2026年4月3日)

個別相談とミニセミナーが同じ日にセットで受けられるのが足立区の特徴です。相談だけでなく、他の管理組合がどんな課題に直面しているかをミニセミナーで俯瞰してから個別相談に入ると、限られた時間の使い方が変わってきます。私の経験では、質問を3つまでに絞って持っていく理事会ほど、この手の相談枠を使いこなしています。

2. 分譲マンション管理アドバイザー派遣制度 — 足立区の目玉

出張相談会よりも踏み込んだ相談をしたいとき、あるいは理事会に来てもらってじっくり議論したいときに使えるのがこちらです。

項目 内容
対象 区内分譲マンション管理組合
派遣時間 年度内12時間まで(マンション管理士1名派遣の場合)または6時間まで(2名派遣の場合)、1回1時間単位
費用 完全無料
手続の流れ ①オンライン申請システムで仮予約(希望日の2週間以上前)②本申込③アドバイザー派遣・相談実施
申込条件 管理組合理事長が申込者、区分所有者2名以上の参加が条件
申込先 住宅課住宅計画係 03-3880-5963(平日午前9時〜午後4時)

(出典:足立区「分譲マンション管理アドバイザー派遣制度」/更新日2025年4月1日)

この制度のポイントは、年度内12時間という枠の広さです。1回1時間単位で使えるので、「今月は長期修繕計画の見直し方針だけ」「来月は見積り査定の視点だけ」というように、論点ごとに小分けして呼ぶこともできます。私はいつも理事長さまに「1回で全部解決しようとせず、論点を分けて何度も呼んでください」とお伝えしています。無料の枠を使い切らずに終わる管理組合が、実は少なくありません。

外壁の劣化がどの程度進んでいるかを客観的に把握する方法については、明誠のロープアクセス工法による外壁調査の考え方をご覧いただくと、足場を組まずにどこまで見られるのかが分かります。技術的な仕組みそのものをもう少し深く知りたい方は、同業者向けに書いている姉妹サイトロープアクセスドットコムのほうが詳しいです。


足立区で使える弁護士・宅建士・建築士の無料相談

管理費の滞納、区分所有者間のトラブル、工事契約をめぐる紛争、賃貸トラブル。これらは管理士の守備範囲を超えることがあります。足立区にはこの領域の無料窓口も複数用意されています。

5. 不動産相談(予約制)

項目 内容
相談員 宅地建物取引士
相談内容 借地・借家の賃料、更新、立退き、借地権など
日時 毎月第1・3水曜日 午後1時〜4時(祝日・年末年始を除く)
相談時間 1回35分以内
費用 無料
対象 区内在住・在勤・在学の方
会場 足立区役所北館2階 区民の声相談課
予約先 03-3880-5359(平日8時30分〜17時15分)

(出典:足立区「不動産相談(予約制)」/更新日2026年6月19日)

区分所有のマンションだけでなく、賃貸マンションを所有するビルオーナーさまの立退き・更新トラブルにも対応できる窓口です。賃料改定を巡って入居者と揉めそうなときは、契約書を持参して相談に臨むと話が早く進みます。

6. すまいの建築相談

項目 内容
相談員 建築士
日時 毎月第2水曜日 午後2時〜4時
費用 無料
予約方法 事前予約制
申込先 住宅課住宅計画係 03-3880-5963

(出典:足立区「住まいの相談」)

新築・改築・リフォームが主な対象ですが、大規模修繕の進め方に建築的な疑問がある場合も相談材料になります。月1回・枠が限られるため、予約は早めが確実です。

7. 法律相談(予約制)

項目 内容
相談員 弁護士
相談時間 1回40分以内
回数 原則、同一内容の相談は1回限り(異なる内容なら再利用可)
費用 無料
相談形式 窓口・電話(平日・第4日曜日)・オンライン(午後2時30分開始のみ)
予約先 03-3880-5359(平日8時30分〜17時15分)

(出典:足立区「法律相談(予約制)」/更新日2026年6月19日)

40分という時間は、練馬区や他の自治体でよく見る30分よりやや長めです。私は「争点を1つに絞って行く」ことをいつもお勧めしています。「滞納が3年分たまっている区分所有者に、どの手続きから着手すべきか」まで絞れていれば、40分で具体的な道筋が見えます。

なお、収入・資産が一定基準以下の方であれば、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助による無料法律相談も選択肢になります。同一の問題につき1回30分・3回まで無料で、弁護士・司法書士に相談できます(出典:法テラス「無料法律相談のご利用の流れ」)。

8. 消費生活相談

工事契約のトラブル、訪問業者による強引な勧誘への対応は、消費生活相談の領域です。

  • 相談電話:03-3880-5380
  • 相談時間:月〜金 午前9時〜午後4時45分(祝日・年末年始を除く)
  • 費用:無料(通話料・オンライン通信料は自己負担)

(出典:足立区「消費生活相談」/更新日2025年2月1日)

「地震のあと点検に来たという業者に、その場で契約書を書かされた」という相談は、残念ながら現場で今も耳にします。この手の話は法律相談より先に、消費生活相談に入れたほうが早いことが多いです。


足立区マンション管理計画認定制度 — 区の手数料は当面のあいだ無料

3. マンション管理計画認定制度

足立区のマンション管理計画認定制度は、多くの自治体が数千円の手数料を設定している中で、区の手数料を当面のあいだ無料にしている点が際立っています(更新申請含む)。

項目 内容
区の手数料 当面のあいだ無料(変更認定申請含む)
別途費用 (公財)マンション管理センター「管理計画認定手続支援システム」の利用料等は別途発生
申請方法 区窓口での直接申請は不可。マンション管理センターのシステム経由でのみ申請可能
必要書類 電子化した管理規約、長期修繕計画書、事前確認適合証など
標準審査期間 30日間
認定有効期間 5年(更新は満了前に同システム経由で申請)

(出典:足立区「マンション管理計画認定制度について」/更新日2025年2月14日)

認定を取ると、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資の金利引き下げや、長寿命化促進税制の適用要件など、修繕積立金の負担に効いてくる場面があります。国の制度概要は国土交通省「マンション管理計画認定制度」にまとまっています。区の手数料がかからない分、マンション管理センターのシステム利用料だけを見込んでおけば予算化しやすいはずです。


非木造建築物の耐震助成 — 分譲マンションも対象、診断・改修とも5割

4. 非木造住宅・建築物耐震化助成

足立区の分譲マンションで見落とされがちなのが、旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)の非木造建築物を対象にした耐震診断・耐震改修の助成制度です。賃貸・分譲の区別を問わず、居住部分が延べ面積の過半を占める建物が対象になります。

項目 内容
対象建築物 昭和56年5月以前に建築された非木造建築物(分譲マンション含む)
耐震診断助成 費用の5割、上限500万円または住宅戸数×10万円のいずれか低い方
耐震改修工事助成 費用の5割、上限3,000万円
拡充期間 令和9年3月まで延長
注意点 契約前に事前申請が必要。契約後の申請は助成対象外
申込先 建築室建築防災課 03-3880-5317

(出典:足立区「非木造住宅・建築物の耐震化に助成を行っています」/更新日2026年4月2日)

練馬区などで見られる「アドバイザー派遣10回まで無料」のような専門家派遣そのものは、足立区の非木造制度には含まれていません。その代わり、診断・改修とも実費の半分を助成という、金額のインパクトが大きい設計になっています。旧耐震の分譲マンションで「診断すら踏み出せていない」管理組合ほど、この助成の対象になる可能性が高いはずです。

一番大事な注意点は、契約前の事前申請が必須ということです。「診断業者と契約してから申請しよう」と考えると、その時点で助成の対象から外れてしまいます。理事会で診断の実施を決めた段階で、契約前に建築防災課へ一報を入れることを強くお勧めします。


東京都・国の相談窓口を重ねて使う

足立区の枠を使い切っても、まだ残っています。ここからは東京都と国の制度です。

9. マンションアドバイザー無料派遣(管理状況届出制度が前提)

東京都は「管理状況届出制度による届出を行った管理組合に対し、その管理状況に応じて、マンション管理士などの専門家を派遣し、マンションの管理や建替え・改修について、講義や個別具体的な相談に対するアドバイスを行います」としています(出典:東京都マンションポータルサイト「マンションアドバイザー無料派遣のご案内」)。

肝は「届出を出していること」が条件という点です。足立区の分譲マンションも、「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づく管理状況届出制度の対象になります。届出の具体的な手続については、住宅課(03-3880-5963)に確認するのが確実です。

  • 通常の届出済みマンション:1回まで無料
  • 管理不全の兆候があるマンション:5回まで無料
  • 申込先:(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター

順番としては「届出 → 無料派遣」です。まだ届出をしていない管理組合は、まずここから動くとよいでしょう。

10. マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)

こちらは届出の有無を問わない枠です。

項目 内容
対象 都内に所在するマンション管理組合
回数 防災力向上・認知症対応それぞれ2回まで(合計最大4回)
費用 無料
受付期間 令和8年6月23日(火)から令和9年2月26日(金)まで
募集枠 防災力向上・認知症対応あわせて160件程度
申込 東京都マンション管理士会のホームページから

(出典:東京都「本日からマンション管理士無料派遣事業の受付を開始(マンション管理組合向け)」/東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)

都内全域で160件程度という枠です。締切の令和9年2月26日まで残り約5か月。年内に理事会で決議しておくと安心です。賃貸マンションのオーナーさま向けには、賃貸マンション向け防災アドバイザー無料派遣という別枠も用意されています。

11. (公財)マンション管理センターの電話相談

全国の管理組合が使える、国のマンション管理適正化推進センター指定団体の窓口です。

  • 管理組合運営・管理規約などの相談:03-3222-1517
  • 建物・設備の維持管理の相談:03-3222-1519(電話で事前予約)
  • 相談時間:月〜金 9時30分〜17時00分

(出典:(公財)マンション管理センター「相談窓口について」)

12. 一般社団法人マンション管理業協会の相談窓口

管理会社の団体である日管協(マンション管理業協会)も、管理組合向けの相談窓口を設けています。

  • マンション管理に関する相談:050-3733-8982(10時〜16時30分、12時〜13時は昼休み)

(出典:一般社団法人マンション管理業協会「お問い合わせ」)

「区に相談するほどでもないが、誰かに確認したい」という程度の疑問なら、11番・12番のどちらかが一番手軽です。


お金の話:足立区で大規模修繕を検討するときの目安

支援制度の話ばかりでは実感が湧かないと思いますので、費用の目安も出しておきます。すべて参考値のレンジです。実際の見積は建物の形状・劣化状況・立地によって大きく変動します。

工種 ㎡単価の目安
外壁塗装 3,500〜4,500円/㎡
外壁打診調査 250〜500円/㎡
屋上・バルコニー防水 5,000〜8,000円/㎡

60戸規模のマンションで大規模修繕を一巡させると、総額のレンジは3,500〜5,000万円程度。このうち仮設足場が15〜25%を占めます。つまり足場だけで500万〜1,200万円という計算になります。

私がロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が懸垂し、足場を組まずに外壁作業を行う無足場工法)をお勧めする理由は、ここにあります。10階建て・外周80m・工期3か月というモデルケースでは、足場の仮設費が約168万円に対し、ロープアクセスなら約59万円。差額は約109万円です。

もちろん、どんな建物でもロープアクセスが最適というわけではありません。低層で形状が複雑な建物、外壁の改修範囲が広い建物は、足場を組んだほうが総合コストで有利になります。だからこそ明誠では、通常足場・ロープアクセス・両者を併用するハイブリッド工法の3つから選べる体制をとっています。3工法を自社で提案できる会社は、国内でも多くありません。料金の考え方については明誠の大規模修繕の料金の考え方にまとめています。

株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けています。この安全体制の詳細はロープアクセスドットコムで公開しています。


相談に行くとき、何を持っていけばいいか

限られた時間を最大限に使うために、私がいつもお伝えしている3点セットがあります。

  1. 直近3期分の総会議事録 — 何が決まり、何が先送りされてきたかが一目で分かります
  2. 長期修繕計画書 — 更新が止まっていても構いません。むしろ止まっていること自体が相談材料です
  3. 管理規約(最新版) — 標準管理規約は令和7年に改正されています。自組合の規約がどの版に準拠しているかで、打てる手が変わります

余裕があれば、これに修繕積立金の残高が分かる直近の決算書と、気になっている箇所のスマホ写真を加えてください。写真は強力です。「北側外壁のタイルに浮きが出ている」と口で説明するより、1枚見せたほうが専門家の判断は10倍速くなります。

法令面では、令和7年5月30日公布の「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律」(令和7年法律第47号)が令和7年11月28日に一部施行されています。旧耐震のマンションで大規模な改修や建替えを視野に入れている管理組合は、この改正を踏まえた助言を受けられるかどうかで、相談の価値が変わってきます。


よくあるご質問

Q. 分譲マンション管理アドバイザー派遣制度は、何度でも呼べますか?

A. 年度内で1名派遣なら12時間まで、2名派遣なら6時間まで無料です。1回1時間単位で申し込めるため、論点ごとに小分けして複数回呼ぶことができます。オンライン申請システムでの仮予約は希望日の2週間以上前が必要です。

Q. マンション管理計画認定制度は、本当にお金がかかりませんか?

A. 区の手数料は当面のあいだ無料です(更新申請も含みます)。ただし(公財)マンション管理センターの管理計画認定手続支援システムの利用料は別途発生しますので、その点はご留意ください。

Q. 非木造建築物の耐震助成は、うちのマンションが対象か分かりません。

A. 対象は昭和56年5月31日以前に建築された非木造建築物で、居住部分が延べ面積の過半を占めるものです。賃貸・分譲の区別は問いません。確実な判断は建築室建築防災課(03-3880-5317)にご確認ください。契約前の事前申請が必須という点が最大の注意点です。

Q. 東京都のマンション管理士無料派遣は、いつまでに申し込めばいいですか?

A. 令和8年度の受付期間は令和8年6月23日から令和9年2月26日までで、防災力向上・認知症対応あわせて160件程度という募集枠が公表されています。年度末ぎりぎりではなく、年内の理事会で決議しておくほうが安心です。

Q. 法律相談と法テラス、どちらを使えばいいですか?

A. 足立区の法律相談(予約制)は区内在住・在勤・在学であれば所得に関わらず利用でき、1回40分以内です。法テラスは収入・資産の要件を満たす方が対象で、同一の問題につき3回まで無料です。まずは要件を問わない区の法律相談から検討されるのがよいと思います。

Q. 大規模修繕の工期はどれくらい違いますか?

A. ロープアクセス工法は足場の組立・解体の期間がまるごと不要になるため、足場工法のおよそ60%の工期が目安です。10階建て・外周80mのマンションであれば、足場工法で3か月程度のところ、ロープアクセスなら1.5〜2か月程度になります。ただし改修範囲が広い場合は差が縮まります。

Q. 管理会社を通さずに、明誠に直接相談してもいいのでしょうか?

A. もちろんです。セカンドオピニオンとしてお使いいただくケースが一番多いです。既存の見積書を拝見して、数量と単価の妥当性を一緒に確認するだけでも結構です。お問合せフォームからご連絡ください。


まとめ:今週、足立区の管理組合が動けること3つ

長くなりましたので、動き出しの3手に絞ります。

1. 住宅課(03-3880-5963)に電話して、分譲マンション管理アドバイザー派遣制度の仮予約を確認する

年度内12時間まで無料、1回1時間単位です。論点を分けて何度も呼べることを理事会で共有してください。

2. 旧耐震(昭和56年5月以前)の非木造建築物かどうかを確認し、該当すれば耐震診断助成を検討する

該当すれば診断費用の5割(上限500万円または戸数×10万円の低い方)が助成対象です。契約前の事前申請を忘れずに。

3. マンション管理計画認定制度の申請を理事会の議題に載せる

区の手数料は当面のあいだ無料です。住宅金融支援機構のリフォーム融資の金利引き下げなど、修繕積立金の負担軽減につながる場面があります。


足立区は、北千住・西新井・竹ノ塚のような駅前再開発で新しい住棟が増えているエリアから、昭和期に建てられた団地型マンションが数多く残るエリアまで、建物のタイプが幅広い区です。旧耐震の非木造建築物が今も一定数残る一方で、駅前の再開発でタワー型マンションに入れ替わったエリアもある。だからこそ、「よその管理組合がこうしたから」ではなく、自分の建物の状態と築年を自分で把握することが効いてきます。

そして、その第一歩にかかるお金は、足立区の場合ほとんどゼロにできます。区の相談会、アドバイザー派遣、管理計画認定、不動産相談、建築相談、法律相談、消費生活相談。これだけ呼んでも、支出は郵送代と電話代くらいのものです。

私は現場でこう思うことがあります。管理組合が損をするのは、悪い業者に当たったときよりも、相談しないまま時間だけが過ぎたときのほうがずっと多い、と。壁の浮きも、防水の切れも、待っていて良くなることはありません。

明誠のこれまでの明誠の施工事例もあわせてご覧いただければ、実際にどんな建物でどんな判断をしてきたかが伝わると思います。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。


出典・参考資料


本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月23日時点で公表されている東京都足立区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず東京都足立区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。


この記事の執筆者

本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)

株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市

マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。

最終更新:2026年9月23日

お気軽にご相談ください!