横浜駅・みなとみらい・関内、そして鶴見・港北・戸塚・青葉――政令指定都市・横浜市は、人口約377万人を抱える日本最大の基礎自治体であり、賃貸需要の裾野が23区に匹敵するほど広い。私(本間)が現場で建物を見て回って感じるのは、「これだけ実需に支えられたマーケットなのに、築年数を理由に賃料も入居率も取りこぼしているオーナーがあまりに多い」という、もったいない現実だ。横浜駅西口の中規模RC造マンション、関内・伊勢佐木町の店舗併用ビル、鶴見・南区・磯子に広く残る旧耐震の分譲・賃貸マンション――横浜のオーナーが抱える悩みは、ざっくり言えば「築古を理由に空室期間が伸びる」「修繕にお金をかけても賃料に跳ね返らない」「売ろうとすると利回りで買い叩かれる」の三つに集約されつつある。
本稿の主読者は、横浜市内で2棟以上の賃貸物件(マンション・ビル・店舗併用・木造アパート)を保有するオーナー、あるいは医療法人・介護事業者として自社建物を運用しているオーナーだ。テーマは「2026年度(令和8年度)、横浜市で使える補助金・助成金を、どう投資判断に組み込むか」。単なる制度カタログではなく、NOI(実質賃料収入)の改善・出口価格の上振れ・税務処理の三段で、結局いくら手残りが変わるのかという視点で整理していく。
最初に言葉の整理をしておく。NOI(Net Operating Income)とは、賃料収入から空室損や運営費を差し引いた「実質的な手残り収益」のことだ。収益物件の売却価格は、このNOIをキャップレート(還元利回り)で割って求める「収益還元法」で決まるのが実務の基本である。つまり、修繕投資がNOIを1円押し上げれば、それは売却時に何十倍にもなって跳ね返る。この感覚が、補助金活用の出発点になる。
1. なぜ今、横浜市オーナーは「補助金を絡めた修繕」を急ぐべきか
横浜市は18区からなる広域都市で、駅力・エリア特性が区ごとに大きく異なる。横浜駅・みなとみらい・関内を擁する都心臨海部、新横浜・港北ニュータウンの業務・住宅複合エリア、青葉・都筑の郊外ファミリー層、鶴見・南・磯子の下町賃貸エリア――それぞれにマーケットの色がある。家賃相場で見ると、横浜市の1K・ワンルームはおおむね6万円前後、1LDK・二人暮らし向けで9万円前後が一つの目安とされる(出典:CHINTAI・横浜市の1Kの家賃相場、SUUMO・神奈川県の賃貸家賃相場)。横浜駅周辺のように相場が高い駅と、郊外駅とでは賃料が大きく分かれるため、立地で劣る物件ほど建物の状態で差をつけるしかないのが実情だ。
横浜市自身も、賃貸マンションへの投資需要の強さを認めている。市の地価・賃料・利回り動向レポートでは、関内地区について「安定的な収益が見込まれる賃貸マンションに対する投資意欲は引き続き強く、需給は引き締まった状況」と分析している(出典:横浜市「地価水準・賃料・利回り動向レポート」)。需要が強いということは、建物の状態を底上げすれば「取りにいける賃料」がそこにあるということでもある。
一方で、入居検討者の目線は年々シビアになっている。高断熱・宅配ボックス・オートロック・追い焚き――これらを「当たり前の前提」とする層が増え、築20年以上の物件が何もせずに従前賃料を維持し続けるシナリオは、もう成立しにくい。とりわけ横浜は新築・築浅の供給も多いエリアだけに、築古物件は「設備の世代差」で静かに選別される。
数字で考えてみよう。1棟20戸の物件で平均入居率が95%から93%に落ちると、表面利回りベースで概ね2%相当の減収、稼働ベースのキャッシュフローでは年間で家賃数か月分が静かに消える。これが3年続けば、想定売却価格(収益還元法、横浜市の賃貸マンションで実務上目安となるキャップレート4.5〜6.5%帯)は数百万円から1,000万円超の単位で下振れる。「修繕を先送りした年数 × 入居率の低下」が、そのまま売却価格に効いてくるのだ。
私がオーナーと話していていつも感じるのは、「修繕は出費」という発想から「修繕は投資」という発想へ切り替えた瞬間に、補助金の見え方が一変するということだ。補助金を絡める意義は三つある。第一に、投下キャッシュアウトの圧縮(数万円〜数千万円が戻る、あるいは工事費に充当される)。第二に、税務上の取り扱いの最適化(資本的支出として減価償却する項目と、修繕費として全額損金算入できる項目を切り分け、節税効果を確保する)。第三に、テナント募集時の差別化材料化(「耐震改修済」「断熱改修済」は、賃料を維持しやすくする定量効果が見込める)。
ただし、補助金は受給時に雑収入として課税される点には常に注意が必要だ。手取りで考えるなら、補助率1/2や2/3の制度でも、所得税・法人税合算で30〜40%を逆算した「実質補助率」を計算しておくべきである。本稿ではこの点も、各制度の説明箇所で逐一触れていく。
2. 横浜市マンション耐震改修促進事業――旧耐震マンションを持つオーナーの本丸
横浜のオーナーがまず押さえるべき制度は、横浜市マンション耐震改修促進事業だ。市は「分譲マンションの耐震改修を促進し、地震に強い安全な街づくりを推進するため、耐震改修を実施するマンション管理組合に対して、耐震改修設計費、耐震改修工事費及び耐震改修工事に係る工事監理費を補助します」と明示している(出典:横浜市「マンション耐震改修促進事業のご案内」。建築局企画部建築防災課 電話045-671-2943)。
2-1. 補助内容――設計2/3・工事監理2/3・工事1/3、限度額は最大5,000万円
補助の中身は、オーナー目線で見るとかなり手厚い。整理すると次のとおりだ(出典:同・横浜市マンション耐震改修促進事業)。
| 項目 | 補助率 | 限度額の考え方 |
|---|---|---|
| 耐震改修設計 | 2/3 | 延べ面積×1,000円/m²+540万円、の2/3が上限 |
| 工事監理 | 2/3 | 工事監理費の2/3 |
| 全体改修工事 | 1/3 | 5,000m²未満2,000万円/5,000〜10,000m²未満3,500万円/10,000m²以上5,000万円 |
さらに、マンションの敷地が「地震災害時に通行を確保すべき道路」に接し、かつ一定の高さ以上に該当する場合は、改修工事費の補助率が1/3から2/3に引き上げられる(出典:同上)。横浜は緊急輸送道路の指定が市内に張り巡らされており、幹線道路沿いの物件オーナーには見逃せない上乗せだ。段階改修(2回に分けて全体を安全化)や、ピロティ階等の弱点を先行改修する部分改修にも、それぞれ限度額が設定されている。
2-2. オーナー特有の落とし穴①――「区分所有者本人居住」の要件
ここがオーナー記事として最も重要なポイントだ。この制度の対象は「昭和56年5月末日以前に建築確認を得て着工された区分所有法が適用される分譲マンション」で、なおかつ次のいずれかを満たすものとされている(出典:同上)。
ひとつは「住戸数の半分以上に区分所有者本人が居住しているマンション」。もうひとつは「地階を除く階数が3以上で、かつ延べ面積が1,000m²以上のマンション」(ただし延べ面積の半分以上が店舗等の場合は対象外)。
投資目的でワンルームを多数所有しているような「賃貸割合の高い分譲マンション」では、前者(区分所有者本人居住が半数以上)の要件を満たさないケースが多い。その場合でも、後者の「3階以上かつ延べ1,000m²以上」という規模要件を満たせば対象になり得る――ここを知らずに「うちは投資物件だから無理だ」と諦めてしまうオーナーが少なくない。自分の物件がどちらのルートで対象になるのか、事前相談の段階で必ず確認しておきたい。
2-3. オーナー特有の落とし穴②――本診断と「耐震改修が必要」判定が前提
もうひとつの前提が、市の制度による本診断(精密診断)の結果、「耐震改修が必要」と判定されていることだ(出典:同上)。つまり、いきなり改修工事の補助に飛びつくことはできず、「診断 → 設計 → 工事」という順番を踏む必要がある。横浜市には別途、マンション耐震診断支援事業も用意されているので、まだ診断を受けていないオーナーは、そこからの設計が出発点になる。素人感覚では遠回りに見えるが、診断結果という客観的な根拠があるからこそ、後の工事費補助が正当化される。この順序は崩せない。
2-4. 致命的な落とし穴③――事前相談と3者見積り、そして予算枠
横浜市の耐震助成で最も致命的なのが、申請タイミングと予算枠だ。市は「予算の状況によっては受付ができない場合がありますので、見積書の徴収及び管理組合の総会の決議等の前に、必ず建築防災課に事前相談をしてください」と明記している(出典:同上)。さらに「3者以上からの見積書の徴収を行ってください」とも定めている。
つまり、見積りを取る前・意思決定の前に、まず市へ相談するのが鉄則だ。順序を間違えて先に契約・着工してしまうと、補助対象から外れる恐れがある。なお、令和7年度の補助申請の受付はすでに終了している(出典:同上、最終更新2025年12月1日時点)。令和8年度の受付開始時期・予算枠は新年度の公表を必ず確認したい。年度予算には限りがあり、「枠が埋まれば締切」という性質の制度であることを忘れてはいけない。
2-5. 税制優遇――補助金と固定資産税・所得税の合わせ技
耐震改修には、補助金とは別に税制優遇が乗る。横浜市は、耐震改修工事を行った住宅・建築物について、所得税の特別控除、固定資産税・都市計画税の減額の制度を案内している(出典:横浜市「耐震改修工事を行われた方が所得税の特別控除、固定資産税・都市計画税の減額を受けるために」)。補助金で初期キャッシュアウトを圧縮し、税制優遇でランニングの負担を軽くする――この二段構えを取りこぼさないことが、オーナーの手残りを最大化する。ただし制度ごとに要件・期限が異なるため、税理士と連携して適用可否を早めに確認しておくのが安全だ。
3. 横浜市特定建築物耐震改修等補助事業――事業用ビル・店舗・病院オーナーの切り札
分譲マンション以外の「事業用建物」を持つオーナーにとっての本丸が、横浜市特定建築物耐震改修等補助事業だ。市は「病院、学校、店舗、事務所等の多くの人が利用する建築物等や地震災害時に通行を確保すべき道路沿道の建築物の耐震診断、耐震改修設計、耐震改修、除却に対して、費用の一部を補助する制度です」と説明している(出典:横浜市「特定建築物の耐震化」、補助金交付要領は令和8年6月1日施行)。対象は昭和56年5月31日以前着工の民間建築物で、大規模建築物や緊急輸送道路の沿道建築物などが該当する。
オーナー目線で押さえるべきポイントは四つある。
第一に、診断から除却まで一気通貫で補助があること。耐震診断は「大規模補助」「沿道補助」の場合、最大360万円が一つの上限の目安になる。耐震改修工事は補助率1/3〜2/3(沿道義務は2/3)で、補助対象床面積に応じて5,000m²未満2,000万円、5,000〜10,000m²未満3,500万円、10,000m²以上5,000万円という限度額が設定されている(出典:同上)。
第二に、テナントを抱えるビルオーナーへの賃料補償的な上乗せがあることだ。市の要領では、緊急輸送道路の沿道義務に該当し、かつテナント等を有する建築物の場合、耐震改修や除却に伴い「賃貸借契約に基づく6箇月分の賃料の合計に2/3を乗じた額(上限180万円)」などを加算できる仕組みが用意されている(出典:同上)。工事中のテナント退去・休業に伴う減収を一定程度カバーできる、実務的にありがたい設計だ。
第三に、除却(解体)も沿道義務の場合は補助対象になること。耐震性が不足し、改修より除却・建替えが合理的なケースでは、除却工事費の2/3(限度額2,000万〜4,000万円)が補助され得る。築古ビルの出口戦略として、建替え前提の解体を後押しする制度だと捉えるとよい。
第四に、「処分制限」と「消費税の扱い」という二つの注意点だ。市は「補助金を受けて耐震改修した建築物を、規定された耐用年数(本事業においては10年間)の期間に、取壊し、譲渡(有償含む)、交換、貸し付け等の処分をする場合は、市及び国等の承認が必要」とし、承認には補助金の返還が必要となる場合があると明記している(出典:同上)。売却や建替えを近い将来に予定しているオーナーは、この10年縛りを出口計画に織り込んでおく必要がある。 また「原則、消費税は補助対象外」である点も、事業費の試算で見落としやすい。
4. 国の省エネ補助2026――賃貸オーナーが主役になれる制度群
横浜市の制度が「耐震・防災」を軸とするのに対し、国の制度は「省エネ・脱炭素」を軸とする。2026年度は「住宅省エネ2026キャンペーン」として複数事業が走るが、賃貸オーナーが主役になれる制度がはっきり存在するのが今年の特徴だ。
4-1. 賃貸集合給湯省エネ2026事業――まさに賃貸オーナーのための制度
注目は賃貸集合給湯省エネ2026事業だ。これは資源エネルギー庁の令和7年度補正予算「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」に基づくもので、設置スペースの制約からヒートポンプ給湯機(エコキュート)の導入が難しい既存の賃貸集合住宅に、省エネ性能の高い小型給湯器(エコジョーズ等)への交換を支援する(出典:資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業について」、賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】)。
補助額は1台あたり5万円〜最大10万円が一つの目安とされ、対象は賃貸集合住宅を所有し賃貸経営を行うオーナー(個人・法人)。賃貸住戸を2戸以上所有する区分所有者や、オーナーから委託を受けた管理会社等が対象になる場合もある。ただし、販売目的で保有する買取再販事業者は対象外だ。申請手続きはオーナーが直接行うのではなく、登録された「賃貸集合給湯省エネ事業者」が代行し、オーナーへ還元する仕組みになっている(出典:同上)。1棟あたりの戸数が多い物件ほど、給湯器の一斉更新で受給総額が積み上がるのがこの制度の妙味だ。古い給湯器は入居者からのクレーム源でもあり、更新は入居満足度の改善とも直結する。
4-2. 窓リノベ・給湯省エネ――断熱と光熱費で「選ばれる部屋」に
国はこのほか、先進的窓リノベ2026事業(高断熱窓への改修)、給湯省エネ2026事業(高効率給湯器の導入)などをラインナップしている。窓の断熱改修は、入居者にとって「冬暖かく、夏涼しく、結露しにくい」という体感価値に直結し、光熱費の削減という定量メリットも訴求できる。築古物件で「なんとなく古い」という第一印象を覆すうえで、窓まわりの刷新は費用対効果が高い投資だ。国の制度は予算上限に達し次第終了するため、年度の早い段階で事業者と段取りを組んでおきたい。
5. 横浜市の既存住宅断熱改修補助制度――「賃貸集合は対象外」を正直に押さえる
横浜市は2026年度から既存住宅断熱改修補助制度を新設した。子育て世代の住替えで最大150万円、定住で最大120万円という手厚い内容で、本申請は令和8年5月1日〜11月30日に受け付けている(出典:横浜市「令和8年度 既存住宅断熱改修補助制度」)。
ただし、オーナー読者には正直にお伝えしておく。この制度は「戸建ての既存住宅」を対象とし、市内に定住する方が要件となっているため、賃貸目的の集合住宅には基本的に使えない。 制度本文も「戸建ての既存住宅に対し……市内に定住する方へ」と明記している(出典:同上)。
では無関係かというと、そうとも限らない。戸建てを賃貸に出しているオーナーが自ら居住する形で取得・改修するケースや、相続した戸建てを断熱改修して活用するケースでは、要件次第で射程に入る可能性がある。また、固定資産税・都市計画税の減額措置がこの制度に紐づいており(出典:同上)、自宅兼用物件の改修では検討価値がある。「自分の保有形態ならどう使えるか」を、対象外と決めつける前に一度確認しておく姿勢が、取りこぼしを防ぐ。
6. マンションストック長寿命化等モデル事業――大規模・築古マンションオーナーの選択肢
築年数が進んだ大規模物件を持つオーナーには、国土交通省のマンションストック長寿命化等モデル事業という選択肢もある。老朽化マンションの長寿命化に資する改修や建替えのうち、先導性が高く創意工夫を含む取組を支援する制度だ(出典:国土交通省「マンションストック長寿命化等モデル事業」、建築研究所・特設サイト)。
「先導的再生モデルタイプ」では、計画段階の調査・検討に対する計画支援(年間500万円を上限に最大3年)、基本設計・実施設計・実工事に対する改修工事支援・建替え工事支援(費用の1/3以内)が用意されている(出典:同上)。区分所有のマンションが主対象ではあるが、長期修繕計画の抜本見直しや、エレベーター・配管といったインフラの更新を「補助を絡めて一気にやる」発想は、投資型・大規模物件のオーナーにも示唆が大きい。先進性が評価のカギになるため、設計の早い段階で、こうした制度に通じた施工パートナーを巻き込むことが採択の近道になる。
7. 制度をどう組み合わせるか――順序と税務で手残りが変わる
ここまで横浜市の耐震系(マンション耐震改修・特定建築物)、国の省エネ系(賃貸集合給湯・窓リノベ・給湯省エネ)、長寿命化モデル事業を見てきた。実務では、これらを「順序」と「税務」の二軸で設計することで手残りが大きく変わる。
順序の原則は三つだ。第一に、耐震系は「事前相談 → 診断 → 設計 → 工事」の順を崩さないこと。横浜市は見積り・意思決定の前の事前相談を必須としており、ここを飛ばすと補助そのものが消える。第二に、併用可否を先に確認すること。市の制度間、あるいは国と市の制度間では、同一工事への重複適用ができないものがある。どの制度を主軸に据えれば手残りが最大かを、工事の切り分けと合わせて設計する。第三に、予算枠の早い者勝ちを意識すること。市の耐震助成も国のキャンペーンも、予算到達で締め切られる。年度の前半に動くオーナーが有利だ。
税務の原則も三つだ。第一に、資本的支出と修繕費の切り分け。耐震補強や設備のグレードアップは資本的支出として減価償却、原状回復に近い工事は修繕費として全額損金算入、というのが基本だ。同じ工事費でも、この区分で当期の節税効果が変わる。第二に、補助金は雑収入として課税されること。補助率2/3でも、税引き後の「実質補助率」で手取りを評価する。第三に、圧縮記帳など課税繰延べの検討。国庫補助金等で取得した資産には圧縮記帳が使える場合があり、受給年度の税負担を平準化できることがある。いずれも個別性が高いため、必ず顧問税理士と詰めてほしい(本稿は税務助言ではなく、一般的な考え方の整理である)。
8. 「足場を架けない」という選択肢――ロープアクセスで補助金の効果をさらに伸ばす
最後に、私たち明誠の本業の話を少しだけさせてほしい。補助金で工事費の一部が戻るとしても、そもそもの工事費を下げられれば、オーナーの手残りはさらに増える。 その鍵を握るのが「足場をどう架けるか」という工法選択だ。
横浜のように高層・中高層が混在し、隣地が近く敷地に余裕のない物件、あるいは商業地で足場が通行・営業の支障になる物件では、従来型の全面足場が大きなコスト・工期・機会損失を生む。私たちは、産業用ロープによる無足場工法(ロープアクセス)、従来の足場仮設工法、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物ごとに最適な工法を提案できる、日本でも数少ない会社だ(株式会社明誠・本間社長ブログ)。足場費を圧縮できれば、その分を補助対象の本体工事に回せるし、テナントや入居者の生活・営業への影響も最小化できる。「工事中だから」という理由での解約・休業リスクを抑えられることは、稼働率を重視するオーナーにとって直接の収益貢献になる。
近隣の自治体オーナー向けの補助金ガイドも公開している。あわせて読みたい方は、江戸川区で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイド、葛飾区で使える賃貸オーナー向け補助金活用ガイドも参考にしてほしい。エリアごとに制度の力点は違うが、「事前相談・予算枠・税務処理」という鉄則は共通している。
9. まとめ――横浜市オーナーが2026年度に取るべき動き
横浜市のオーナーが2026年度に取るべき動きを、優先順位で整理する。
まず、旧耐震(昭和56年5月末日以前着工)の分譲マンションを持つオーナーは、横浜市マンション耐震改修促進事業の事前相談を最優先で。投資物件でも規模要件で対象になり得るので、諦めずに建築防災課(045-671-2943)へ確認したい。次に、事業用ビル・店舗・病院・介護施設を持つオーナーは、特定建築物耐震改修等補助事業を。沿道のテナントビルなら賃料補償的な加算や除却補助まで射程に入る。そして、全オーナー共通で、国の賃貸集合給湯省エネ2026事業・窓リノベ・給湯省エネを給湯器・窓の更新計画に組み込む。これは戸数の多い物件ほど効く。最後に、大規模・築古マンションは長寿命化モデル事業も選択肢に加える。
いずれの制度も、共通する鉄則は「事前相談を工事契約より先に」「予算枠は早い者勝ち」「税務は資本的支出と修繕費を切り分け、補助金の雑収入課税まで含めて手残りで判断」の三つだ。築年数なりの劣化は、賃料の下落圧力として静かに効いてくる。賃料が上がっている今だからこそ、補助金を絡めて設備を底上げし、「上がった相場をきちんと取りにいく」べき局面である。
10. よくある質問(FAQ)
Q1. 賃貸に出している分譲マンションでも、横浜市のマンション耐震改修補助は使えますか。
A. 可能性はある。対象は「住戸数の半分以上に区分所有者本人が居住」または「3階以上かつ延べ面積1,000m²以上」のいずれかを満たす旧耐震分譲マンションだ。投資割合が高く前者を満たさなくても、後者の規模要件で対象になり得る。本診断で「耐震改修が必要」と判定されていることも前提になる。まずは建築防災課への事前相談を(出典:横浜市マンション耐震改修促進事業)。
Q2. テナントビルの耐震改修で、工事中の家賃減収は何かカバーされますか。
A. 緊急輸送道路の沿道義務に該当し、かつテナントを有する建築物の場合、特定建築物耐震改修等補助事業で「賃貸借契約に基づく6箇月分の賃料の合計に2/3を乗じた額(上限180万円)」などを加算できる仕組みがある。要件はパンフレットで確認のうえ、建築防災課(045-671-2928)へ相談を(出典:横浜市特定建築物の耐震化)。
Q3. 補助金をもらった建物を数年内に売却・建替えする予定です。問題ありますか。
A. 特定建築物耐震改修等補助事業では、耐用年数(本事業では10年間)の期間内に取壊し・譲渡・貸付け等の処分をする場合、市・国等の承認が必要で、補助金の返還が生じることがある。近い将来の出口を予定しているなら、この10年縛りを計画に織り込むべきだ(出典:同上)。
Q4. 横浜市の既存住宅断熱改修補助(最大150万円)は賃貸物件に使えますか。
A. 原則使えない。同制度は「戸建ての既存住宅」で「市内に定住する方」が対象であり、賃貸目的の集合住宅は対象外だ。ただし自宅兼用や、自ら居住して取得・改修するケースでは射程に入る可能性がある。保有形態ごとに確認を(出典:横浜市 令和8年度 既存住宅断熱改修補助制度)。
Q5. 補助金は「もらった分まるごと得」と考えてよいですか。
A. いいえ。補助金は受給時に雑収入として課税される。補助率2/3でも、所得税・法人税を逆算した「実質補助率」で手取りを評価すべきだ。あわせて、工事費を資本的支出と修繕費に切り分けると当期の節税効果が変わる。圧縮記帳が使える場合もあるため、顧問税理士と詰めてほしい。
Q6. 工事費そのものを下げる方法はありますか。
A. ある。足場の架け方を見直すことだ。明誠は無足場のロープアクセス、従来の足場仮設、両者を組み合わせるハイブリッドの3工法から、建物に最適な方法を選べる。足場費を圧縮できれば、その分を補助対象の本体工事に回せるうえ、入居者・テナントへの影響も小さくできる。
結語
横浜は、需要の強さでは全国屈指の賃貸マーケットだ。だからこそ、築年数を理由にした「静かな取りこぼし」が、もったいない。補助金は、その取りこぼしを止め、上がっている相場を取りにいくための強力な追い風になる。ただし、制度は事前相談・予算枠・税務処理という「順序とタイミング」で結果が大きく変わる。情報を持って早く動いたオーナーが、確実に得をする世界だ。
お持ちの横浜の物件で、まだこの補助金の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お問合せいただきたい。1棟の現地調査と、補助金活用を前提にした利回り改善シミュレーション・キャッシュフロー試算だけでも、ご相談を承る。数字でご納得いただいたうえで、足場を架けるか架けないかという工法の選択まで含め、いちばん手残りの増える道筋を一緒に描かせていただく。
――株式会社明誠 代表取締役 本間幸紘


