大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

老朽化マンションは「建て替え」か「大規模修繕」か——2026年4月施行の改正区分所有法で決議のハードルは下がった。それでも多くの管理組合が大規模修繕を選ぶ理由と、コストを最適化する工法戦略【2026年7月】

老朽化マンションは「建て替え」か「大規模修繕」か——2026年4月施行の改正区分所有法で決議のハードルは下がった。それでも多くの管理組合が大規模修繕を選ぶ理由と、コストを最適化する工法戦略【2026年7月】

老朽化マンションは「建て替え」か「大規模修繕」か——2026年4月施行の改正区分所有法で決議のハードルは下がった。それでも多くの管理組合が大規模修繕を選ぶ理由と、コストを最適化する工法戦略【2026年7月】

先日、「老朽化マンション再生へ法改正、建て替えの道広がるも、立ちはだかるコストの壁」という記事を目にしました。旧耐震基準で建てられたマンションが次々と寿命を迎える一方で、建て替えはほとんど進んでいない——その現実を、今年4月に施行された改正区分所有法とあわせて解説した内容でした。読みながら、私は現場でお会いする理事長さんやオーナーさんの顔を思い浮かべていました。「うちのマンションも、そろそろ考えないといけない」。ここ数年、そうおっしゃる方が本当に増えているからです。

私は東京・関東を中心に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事に長く携わってきました。従来の足場を架ける工法と、産業用ロープを使って足場を架けずに外壁作業を行うロープアクセス工法(無足場工法)の両方を扱い、建物ごとに最適な工法を提案するのが私たちの仕事です。その立場から、今日はあえて「建て替え」の話から始めたいと思います。なぜなら、建て替えという選択肢を正しく理解して初めて、「では大規模修繕でどこまで延命できるのか」「そのコストをどう抑えるのか」という現実的な判断ができるからです。

法律が変わり、建て替えのハードルは確かに下がりました。それでも、日本のほとんどのマンションにとっての現実解は、いまも「適切な大規模修繕による長寿命化」です。今日はその理由を公的なデータで確認したうえで、上がり続ける工事費のなかで資産価値を守るための工法戦略を、私なりに率直にお話しします。少し長くなりますが、築30年・40年を超えるマンションの理事長さん、そして収益物件をお持ちのオーナーさんに、必ず判断材料になる内容にします。

結論から——「建て替えか修繕か」は二択ではなく、順番の問題

先にいちばん大事なことをお伝えします。「建て替え」と「大規模修繕」は、対立する二択ではありません。多くのマンションにとって、正しい問いは「どちらを選ぶか」ではなく「まず何をして、いつ次の判断をするか」という順番の問題です。

というのも、後ほど数字でお示しするとおり、建て替えが実現するマンションは全体のごくわずかです。合意形成の難しさ、一戸あたり数千万円規模の追加負担、仮住まいの費用と期間——これらの壁は、法律が変わったからといって一夜で消えるものではありません。だからこそ現実には、ほとんどのマンションが「適切な修繕を重ねて建物の寿命を延ばしながら、いずれ来る大きな決断のための資金と合意を育てていく」という道を歩みます。

今回の法改正は、この道のりの「最後の決断」を少しだけ下しやすくしてくれました。しかし、そこにたどり着くまでの数十年を支えるのは、やはり日々の管理と、計画的な大規模修繕です。「建て替えの道が広がったから、修繕はほどほどでいい」という発想は、むしろ逆です。建て替えという最終手段を現実的な選択肢として残すためにこそ、それまでの修繕を丁寧に、かつコストを抑えて続けることが欠かせません。

何が変わったのか——2026年4月施行の改正区分所有法

まず、今回の法改正の中身を正確に押さえておきましょう。ここを曖昧にしたまま「建て替えしやすくなったらしい」という噂だけが独り歩きすると、判断を誤ります。

改正の背景にある「2つの老い」

2024年(令和6年)の国会で改正区分所有法が成立し、2026年(令和8年)4月1日に施行されました(法務省)。この改正の背景にあるのが、「2つの老い」という言葉です。ひとつは建物の老い、つまり高経年化。もうひとつは居住者の老い、つまり高齢化です。建物が古くなると同時に、そこに住む方々も高齢になり、修繕や再生の合意形成が難しくなっていく——この二重の課題に、マンションの新築から再生までのライフサイクル全体で対応しようというのが、今回の改正の狙いです。

私が現場で感じてきた実感とも、この「2つの老い」はぴたりと重なります。築年数の古いマンションほど、理事会の担い手が高齢化し、総会での意思決定に時間がかかります。工事の必要性は誰もが分かっているのに、決議が集まらずに先送りになる——そういう現場を、私は何度も見てきました。今回の改正は、まさにその「決められない」を法律の側から少しでも解きほぐそうとするものだと理解しています。

建て替え決議の要件が「5分の4」から「4分の3」へ

改正の目玉のひとつが、建て替え決議の要件緩和です。これまで建て替えには区分所有者と議決権の各5分の4以上の賛成が必要でした。改正後は、一定の要件に該当する場合、この割合が4分の3へと引き下げられます(法務省)。

一定の要件とは、たとえば耐震基準を満たしていない場合、火災に対する安全性が不足している場合、高齢者の移動に著しい支障がある場合などです。旧耐震基準で建てられた古いマンションの多くは、この要件に当てはまる可能性があります。5分の4というのは、100戸のマンションなら80戸の賛成が必要という水準です。これが4分の3、つまり75戸で足りるようになる。数字だけ見れば小さな差に思えるかもしれませんが、合意形成の現場では、この5戸分の差が決議の成否を分けることは珍しくありません。

建て替え以外の再生手法も「5分の4」の多数決で可能に

もうひとつ、私が実務上とても重要だと考えているのが、建て替え以外の再生手法についての緩和です。これまで、建物と敷地の一括売却、一棟まるごとのリノベーション、建物の取り壊しといった手法は、原則として区分所有者全員の同意が必要でした。全員同意というのは、現実にはほぼ不可能に近いハードルです。改正後は、これらについても5分の4の多数決で決議できるようになりました(法務省)。

これが意味するのは、「建て替えか、そのまま我慢して住み続けるか」という極端な二択だった状況に、いくつもの中間の選択肢が加わったということです。たとえば、建て替えの費用負担が重すぎる場合でも、一棟リノベーションで建物を刷新する、あるいは敷地ごと売却して住み替える、といった道が現実的な決議事項になりました。再生の選択肢が広がったことは、マンションを持つすべての方にとって前向きな変化だと思います。

「所在不明の区分所有者」を決議の母数から外せるように

さらに、実務者の視点から見逃せないのが、所在等が分からない区分所有者への対応です。改正法では、裁判所の決定により、所在等不明区分所有者を集会の決議の母数から除外できる仕組みが整いました。所在等不明区分所有者は議決権を持たないものとして扱われます(法務省)。

これは地味な改正に見えて、現場では非常に大きな意味を持ちます。古いマンションほど、相続が繰り返されて所有者が分からなくなった住戸、連絡が取れない投資家の住戸が混じっています。従来はそうした一戸の「行方不明票」が分母に居座り、決議を事実上不可能にしていました。この母数調整の仕組みは、真面目に建物と向き合っている区分所有者の意思が、きちんと決議に反映されるようにするための重要な手当てです。

大規模修繕は「出席者の多数決」で決めやすくなる

そして、私たちの本業に最も近い改正がこれです。大規模修繕のように区分所有権の処分を伴わない事項については、集会に出席した人による多数決で決めてよい方向へと、決議が円滑化されます。あわせて、共用部分の変更についても、規約で定めることで区分所有者数の要件を過半数まで緩和できるようになり、バリアフリー基準への適合のための変更などは3分の2以上の賛成に緩められます。

平たく言えば、「総会に来ていない人、無関心な人のせいで、必要な修繕がいつまでも決まらない」という状況を減らすための改正です。大規模修繕は本来、建物の安全と資産価値を守るための当たり前のメンテナンスです。それが決議のハードルの高さゆえに先送りされ、傷みが進んでからようやく着手する——そういう悪循環を断ち切る後押しになると、私は期待しています。

それでも建て替えは進まない——数字が示す現実

法律は前に進みました。では、これで老朽化マンションの建て替えが一気に進むのかというと、話はそう単純ではありません。ここで公的なデータを見ておきましょう。

築40年超のマンションは約137万戸

国土交通省の統計によると、マンションのストック総数は2024年度末で約713万戸に達しています。そして、そのうち築40年を超えるマンションは、2023年末時点で約137万戸あります(国土交通省)。築40年というのは、多くのマンションで大規模修繕を2回、3回と重ね、設備の更新も本格化する時期です。この137万戸という数字は、これからさらに増え続けていきます。

建て替えの累計実績は、たった323件

一方で、実際に建て替えられたマンションはどれくらいあるのでしょうか。国土交通省の集計では、マンション建て替えの実績は累計で323件、2025年3月末時点で発表ベースとして初めて300件を超えました(国土交通省)。

この二つの数字を並べてみてください。築40年超のマンションが約137万戸あるのに対し、建て替えの累計はわずか323件です。戸数に換算しても、これまで建て替えられたのは全国で数万戸にすぎません。老朽化のスピードに、建て替えの実績がまったく追いついていない——これが日本のマンションが直面している、動かしがたい現実です。マンション敷地売却制度による再生も、累計で10件・約600戸程度(2023年3月時点、国土交通省)にとどまっています。

なぜ建て替えは進まないのか

理由は主に3つあります。第一に、費用です。建て替えには、既存住戸の取り壊しから新築までの莫大な費用がかかります。容積率に余裕があって、増えた分の住戸を売却して費用を賄える立地でなければ、区分所有者一人ひとりに数千万円規模の追加負担が生じることも珍しくありません。第二に、合意形成の難しさです。決議要件が下がったとはいえ、4分の3や5分の4の賛成を集めるのは容易ではありません。とくに高齢の区分所有者にとっては、「残りの人生で、多額の負担と数年間の仮住まいを引き受けてまで新しい建物にしたいか」という問いは重いものです。第三に、仮住まいと期間の問題です。建て替えには数年単位の時間がかかり、その間の住まいをどうするか、賃貸中の住戸のオーナーであれば家賃収入がどうなるか、といった現実的な課題が立ちはだかります。

つまり、法改正で「決議のハードル」は下がっても、その先にある「費用のハードル」「合意のハードル」「時間のハードル」は依然として高い。だからこそ、多くのマンションにとっての現実解は、いまも「適切な大規模修繕による長寿命化」なのです。

長寿命化という現実解——大規模修繕で建物はどこまで持つのか

「建て替えが進まないなら、古いマンションはどうすればいいのか」。その答えが、計画的な大規模修繕による長寿命化です。

鉄筋コンクリート造のマンションは、適切なメンテナンスを続ければ、物理的には60年、条件がよければそれ以上使い続けることができるとされています。逆に言えば、メンテナンスを怠れば、その寿命は大きく縮みます。マンションの寿命を決めるのは、建てられた年ではなく、その後どれだけ手をかけてきたか——これは私が現場で確信していることです。

大規模修繕は、一般的に12年前後の周期で行われます。外壁の塗装や補修、屋上やバルコニーの防水、鉄部の塗装、シーリングの打ち替え、給排水管の更新といった工事を通じて、建物の劣化を食い止め、機能を回復させていきます。1回目、2回目、3回目と回を重ねるごとに、更新すべき設備は増え、工事の内容は重くなっていきます。だからこそ、築30年、40年を超えたマンションでは、「いかに質を落とさずにコストを抑えるか」が、長寿命化を続けられるかどうかの分かれ道になります。

長寿命化を実現するうえで、私が特に大切だと考えているのが、工事の前段階での劣化診断です。外壁のタイルやモルタルが浮いていないか、コンクリートの中性化がどこまで進んでいるか、防水層がどれだけ傷んでいるか——こうした建物の「今の状態」を正確に把握しないまま、周期だけで一律に工事を発注すると、必要な補修が漏れたり、逆に不要な工事に費用をかけたりしてしまいます。ここでもロープアクセスは力を発揮します。足場を架けずに外壁の近くまで作業員が接近できるため、打診調査(壁を専用の道具で叩いて浮きや剥離を調べる調査のことです)を機動的に行い、傷んでいる箇所を的確に見つけ出すことができます。正確な診断があってこそ、限られた予算を本当に必要な工事に集中させることができるのです。

そして、国も長寿命化を後押ししています。国土交通省は「マンションストック長寿命化等モデル事業」などを通じて、老朽化マンションの再生や長寿命化に取り組む管理組合を支援しています。建て替えという最終手段の手前で、建物を大切に使い続ける取り組みが、政策としても重視されているということです。

工事費が上がり続けるいま、コストをどう抑えるか

ここで避けて通れないのが、工事費の高騰です。建て替えを見送って大規模修繕で延命する、という判断をしたとしても、その修繕自体のコストがこの10年で大きく膨らんでいます。

国土交通省が公表する建設工事費デフレーターを見ると、建設総合の指数は基準の2015年度を100として、近年は130を超える水準まで上昇しています。つまり、この10年で建設コストは約3割上がったということです。加えて、職人さんの人件費の目安となる公共工事設計労務単価は、14年連続で引き上げられています。資材が上がり、人件費も上がる。この二重の上昇のなかで、以前と同じ内容の修繕をしようとすれば、当然、費用は膨らみます。

とくに古いマンションでは、修繕積立金の不足が深刻な課題になりがちです。分譲当初に「当面は安く」と低めに設定された積立金が、そのまま据え置かれてきたケースは少なくありません。国土交通省も修繕積立金に関するガイドラインを示し、段階的な増額よりも、長期にわたって均等に積み立てる方式が望ましいとの考え方を打ち出しています。積立金が計画に対して不足しているのであれば、工事の直前になって慌てるのではなく、早い段階で長期修繕計画とセットで見直しておくことが、結果として住民の負担を平準化することにつながります。

修繕積立金には限りがあります。工事費が上がったからといって、積立金が自動的に増えるわけではありません。そこで私が申し上げたいのは、「工事の質を落としてコストを下げる」のではなく、「工事のやり方(工法)を最適化してコストを下げる」という発想です。同じ品質の外壁補修や防水を、より少ない仮設費用と短い工期で実現できれば、限られた積立金の効き目は大きく変わります。ここに、私たちのような施工会社が価値を出せる余地があると考えています。

足場か、ロープアクセスか——3つの工法を建物に合わせて選ぶ

大規模修繕のコストのなかで、意外に見落とされがちなのが「仮設足場」の費用です。外壁工事のために建物の周囲に足場を組み、工事が終われば解体する。この足場の架設・解体には、決して小さくない費用と時間がかかります。工事費全体のなかで、足場をはじめとする仮設費用が相当な割合を占めることも珍しくありません。

私たちは、この仮設のあり方から見直すことで、コストと工期、そして居住者の皆さまの負担を同時に軽くできると考えています。そのために持っているのが、3つの工法という選択肢です。

ロープアクセス工法(無足場工法)とは

ロープアクセス工法は、産業用のロープを使い、作業員が屋上などから吊り下がって外壁の点検や補修、塗装、防水、シーリングの打ち替えといった作業を行う工法です。足場を架けないため「無足場工法」とも呼ばれます。足場の架設・解体が不要なので、その分の費用と工期を削減でき、工事期間も短くできます。

高経年で高齢化が進んだマンションにとって、この工法にはもうひとつ大きな利点があります。足場を組まないため、窓の外に他人が立つ期間が短く、日当たりや通風、防犯上の不安といった居住者のストレスを最小限に抑えられるのです。「2つの老い」を抱えたマンションで、長期間にわたって足場に囲まれて暮らすことの負担は、想像以上に大きいものです。工事中の生活影響を軽くできることは、合意形成の面でも見逃せない価値だと私は考えています。

3つの工法の比較

もちろん、ロープアクセスがすべての建物に最適というわけではありません。建物の形状、高さ、工事の内容によって、最適な工法は変わります。私たちは次の3つを、建物ごとに使い分けています。

工法 特徴 向いている建物・場面
通常の足場工法 従来型の仮設足場を組んで施工。作業範囲が広く、大量の部位を一度に扱える 中低層、複雑な形状、全面的な補修が必要な建物
ロープアクセス工法(無足場) 産業用ロープによる無足場施工。足場費を削減し、工期を短縮。居住者の生活影響も最小 高層、足場の架設が難しい立地、コストと工期を重視する建物、部分的な補修
ハイブリッド工法 足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける 大規模・複雑な物件で、総合的なコスト最適化が必要なケース

ここで強調しておきたいのは、「どの工法が優れているか」ではなく、「この建物にはどの工法の組み合わせが最適か」を提案できることこそが価値だ、という点です。足場かロープか、という二択ではなく、両方を知り尽くしたうえで、部位ごとに最適な方を選ぶ。全面は足場で効率よく、狭小部や一部の高所はロープアクセスで、というように組み合わせるハイブリッド工法が、結果として総額を最も抑えられるケースは少なくありません。

私たちのロープアクセスの取り組みについてはこちらのページで、大規模修繕全般の考え方についてはこちらのサービス案内で、それぞれ詳しくご紹介しています。あわせてご覧いただければと思います。

フランチャイズという仕組みが、高品質と低価格を両立させる

もうひとつ、コストの面でお伝えしておきたいことがあります。私たちは、ロープアクセス工事において、日本で初めてとなるフランチャイズ展開を行っています。塗装、防水、タイル、電気、看板工事など、各分野の専門職の会社が加盟しているネットワークです。

なぜこれがコストに効くのか。大規模修繕は、外壁塗装だけで完結する工事ではありません。防水、タイルの補修、鉄部の塗装、電気設備、時には看板の付け替えまで、多くの専門分野が関わります。これらを、それぞれの分野に長けた専門職が、ロープアクセスという共通の技術基盤のうえで連携して施工する。だからこそ、品質を保ちながら、余分な中間コストを抑えた価格を実現できるのです。

老朽化したマンションほど、修繕すべき部位は多岐にわたります。ひとつの窓口で、各分野の専門職を適材適所に配置できる体制は、限られた修繕積立金を最大限に活かすうえで、大きな意味を持つと考えています。

理事長さん・オーナーさんが、いま取るべき行動

ここまで、法改正の中身、建て替えが進まない現実、そして大規模修繕でコストを抑える工法戦略についてお話ししてきました。最後に、築30年・40年を超えるマンションの理事長さん、そして収益物件をお持ちのオーナーさんに向けて、いま取っていただきたい行動を整理します。

第一に、自分のマンションの「立ち位置」を正確に知ることです。旧耐震か新耐震か、容積率に余裕があるか、築何年でこれまで何回大規模修繕をしてきたか。これらによって、建て替えが現実的な選択肢になり得るのか、それとも長寿命化に軸足を置くべきなのかが変わってきます。今回の法改正で建て替え決議の要件が下がったとはいえ、それが現実的かどうかは、建物と敷地の条件次第です。

第二に、長期修繕計画と修繕積立金を、いまの工事費水準で見直すことです。工事費はこの10年で約3割上がりました。前回の大規模修繕のときの金額を前提に組まれた計画は、すでに現実と乖離している可能性があります。積立金が不足するなら、値上げか、工法の見直しによるコスト圧縮か、あるいはその両方か。早く気づくほど、打てる手は多くなります。

第三に、次の大規模修繕にあたっては、足場ありきで考えず、工法の選択肢を広げて見積もりを取ることです。「足場を組むのが当たり前」という前提を一度外し、ロープアクセスやハイブリッド工法を含めて比較検討すれば、同じ品質でもコストと工期、居住者の負担が変わってくることがあります。少なくとも、比較の土俵に乗せる価値は十分にあります。

第四に、決議が難しいという理由だけで、必要な修繕を先送りしないことです。今回の法改正は、まさにこの「決められない」を解きほぐすためのものでした。所在不明者を母数から外せる仕組みや、出席者による多数決の円滑化を活かせば、これまで止まっていた意思決定が動き出す可能性があります。

よくいただく質問——建て替えと大規模修繕をめぐって

現場で理事長さんやオーナーさんからよくいただく質問に、いくつかお答えしておきます。

「法律が変わったのだから、建て替えを目指すべきでは?」

決議のハードルが下がったこと自体は前向きな変化ですが、それがそのまま「建て替えを目指すべき」を意味するわけではありません。建て替えが現実的に成り立つのは、容積率に余裕があって増えた住戸を売却でき、区分所有者の追加負担を抑えられる、恵まれた立地の建物です。多くのマンションでは、まず長期修繕計画を精査し、大規模修繕でどこまで延命できるかを見極めたうえで、それでも難しい場合の選択肢として再生手法を検討する、という順番が現実的です。焦って結論を出す必要はありません。

「築40年を超えたら、もう修繕してもムダではないか?」

そんなことはありません。鉄筋コンクリート造は、適切なメンテナンスを続ければ60年、条件がよければそれ以上使えるとされています。築40年は、多くの建物にとってまだ折り返し地点です。むしろこの時期に給排水管の更新や外壁・防水の的確な補修を行えるかどうかが、その後の20年の資産価値を大きく左右します。「もう古いから」と手を抜くのではなく、「あと何年、どう使うか」を決めて、それに見合った修繕を計画的に行うことが大切です。

「収益物件のオーナーとして、工事中の家賃収入が心配」

これは投資用にマンションを一室、あるいは一棟お持ちのオーナーさんから、非常に多くいただく声です。ここでこそ、工期を短くできる工法の選択が効いてきます。足場に長期間囲まれると、入居者の満足度が下がり、退去や家賃交渉のリスクが高まります。ロープアクセスやハイブリッド工法で工期を圧縮し、生活影響を抑えられれば、こうしたリスクを小さくできます。工法の選択は、施工品質だけでなく、オーナーの収益にも直結する経営判断だと私は考えています。

おわりに——建物の寿命は、選び取れる

「老朽化マンション再生へ法改正、建て替えの道広がるも、立ちはだかるコストの壁」。冒頭に紹介した記事の見出しは、いまのマンションが置かれた状況を的確に言い表しています。道は広がった。けれど、壁はまだ高い。

私は、この壁を「大規模修繕という現実的な手段で、時間をかけて越えていくもの」だと捉えています。建て替えという最終手段を、いざというときに選べるように残しておくためにも、それまでの数十年を支える修繕を、質を落とさず、しかしコストは賢く抑えて続けていく。そのために、足場とロープアクセスという二つの技術を建物ごとに最適に組み合わせる——これが、私たちが提供できる価値です。

マンションの寿命は、建てられた瞬間に決まっているわけではありません。その後、どう手をかけ、どんな判断を積み重ねるかで、いくらでも延ばすことができます。建物の寿命は、選び取れるのです。次の大規模修繕をどうするか、あるいは建て替えを含めて再生をどう考えるか——お悩みの理事長さん、オーナーさんがいらっしゃれば、まずは建物の状態を一緒に見るところから、お手伝いさせてください。ご相談はこちらのお問い合わせページからお気軽にどうぞ。


本記事は2026年7月時点の公表情報にもとづいています。改正区分所有法の具体的な適用や決議要件の判断、個別の建て替え・修繕の可否については、専門家や管轄の窓口にご確認ください。工事費や建物の寿命に関する数値は一般的な目安であり、個別の建物の状態によって異なります。

出典(公的一次情報)
– 法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」
– 国土交通省「マンションに関する統計・データ等」(マンションストック数、築40年超戸数、建替え等実績)
– 国土交通省「建設工事費デフレーター」「公共工事設計労務単価」