
2026年8月23日 更新
稲城市で賃貸マンション・アパートをお持ちのオーナーさまから、この夏よくいただく質問があります。
「稲城市に、賃貸物件の修繕に使える補助金はありますか?」
この記事は、その一問に正面から答えるために書きました。結論から申し上げると、稲城市そのものが持っている補助金の多くは「そこに住んでいる市民」向けで、オーナーさまが賃貸に出している住戸には効きません。 ただし例外が一つあり、そこがむしろ稲城市の最大の穴場です。そして本命は、市ではなく東京都と国の賃貸住宅専用メニューにあります。
私は株式会社明誠の本間と申します。建設・改修の現場に20年近くおりまして、大規模修繕を足場仮設・ロープアクセス(無足場)・その組み合わせの3通りで提案しています。稲城のように丘陵と平地が混ざった街は、実は工法選定でコストが大きく振れる地域です。制度と工法の両面から、キャッシュフローの話をさせてください。
結論:稲城市の賃貸オーナーが2026年度に狙う「3本+1」
先に答えを置きます。2026年8月時点で、稲城市内の賃貸物件オーナーが現実的に使える主要メニューは次のとおりです。
| # | 制度名(正式名称) | 実施主体 | 補助率 | 上限 | 賃貸オーナー | 2026年度の受付状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 稲城市木造住宅耐震改修等助成金 | 稲城市 | 1/2(税抜) | 100万円 | ○(木造共同住宅が明記) | 受付中(申請書は12/11まで) |
| 2 | 令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業【省エネ診断・断熱改修】 | 東京都(クール・ネット東京) | 診断10/10、改修2/3 | 診断120万円/棟、窓30万円/戸ほか | ○(賃貸住宅所有者が申請者) | 受付中(事前申込は5/29開始) |
| 3 | 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 経済産業省 | 定額 | 機器・工事による | ○(オーナーが補助対象者) | 受付中(8/23時点で予算消化33%) |
| + | 稲城市生垣造成・ブロック塀等撤去等補助金 | 稲城市 | 定額 | 撤去5,000円/m ほか(30mまで) | △(適用除外規定に注意) | 受付中(申請は12/18まで) |
そして、使えないほうも先に潰しておきます。
| 制度名 | 賃貸オーナーが使えない理由 |
|---|---|
| 稲城市カーボンニュートラル住宅設備等補助金 | 「自家消費を目的として」「その居住する住宅で使用されること」が要件。オーナーが住んでいない賃貸住戸は対象外 |
| 稲城市商工会住宅改修等補助金事業 | 市民が現に居住している住宅が対象。加えて令和8年度は6月11日で受付終了 |
| 省エネ改修に係る固定資産税の減額措置 | 対象が「賃貸住宅ではない住宅」と国の制度要件で明記されている |
この「使えないリスト」を先に共有するのが、私は誠実だと思っています。使えない制度を前提に予算を組んでしまうと、着工直前に計画が崩れるからです。
以下、1本ずつ数字を詰めていきます(出典:稲城市 住宅関連制度等一覧)。
【本命①】稲城市の耐震助成は「木造共同住宅」が対象。木造アパートオーナーの穴場
稲城市で賃貸オーナーが最も見落としている制度が、これです。
対象に「木造共同住宅」と明記されている
稲城市木造住宅耐震改修等助成金の助成対象住宅は、要綱上「市内に存する民間の木造住宅又は木造共同住宅」とされています。共同住宅、つまり木造アパートが正面から対象です。
さらに助成対象者は「現に助成対象住宅の所有権を有すること」。居住要件ではなく所有要件です。実際、市が公開している申請様式には「同意書(居住者と所有者が異なる場合)」が用意されています。市の側が、貸している建物からの申請を最初から想定しているということです。
(出典:稲城市 木造住宅耐震改修等助成金)
金額と要件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成額(耐震改修) | 耐震改修に要した費用(税抜)の1/2、上限100万円 |
| 助成額(耐震診断) | 診断費用(税抜)または10万円のいずれか低い額 |
| 対象年代 | 昭和56年5月31日以前の基準で建築、または昭和56年6月1日〜平成12年5月31日の基準で在来軸組工法により建築された平屋・2階建て |
| 用途要件 | 複数用途の建物は、延べ面積の過半が住宅の用途であること |
| 改修後の水準 | 耐震診断で倒壊の可能性ありと診断され、改修後の評点1.0以上 |
| 施工業者 | 建設業法第3条第1項の建設業許可を有する者 |
| 申請タイミング | 耐震改修工事の契約前に市へ申請 |
ここは太字で書きます。令和7年度から、いわゆる新耐震(1981年6月〜2000年5月)の在来軸組木造も対象に加わりました。 稲城市内で昭和末期から平成一桁に建てられた木造2階建てアパートは相当数あります。「うちは新耐震だから関係ない」と思い込んでいるオーナーさまこそ、一度確認する価値があります。
注意点(ここを外すと0円になります)
- 契約前の申請が大前提です。工事契約を結んでから相談に行っても、遡っては出ません。
- 令和8年度の耐震診断助成は、予算上限に達して受付終了しています。改修助成は受付中ですが、診断助成を使わずに自費で診断機関に依頼する形になります(改修助成の対象住宅要件は「診断機関で耐震診断を実施した住宅」でも満たせます)。
- 耐震除却(解体)助成は予算上限で新規受付を一時停止中です。建替え前提の除却を当てにしていた方は計画を組み直してください。
- 所有者および居住者(共同住宅の占有者は除く)に市税の滞納がないこと。
私の経験上、この手の「予算枠に達したら終わり」型の助成は、年度が変わった4月〜6月が最も通りやすいです。稲城市の耐震診断助成が令和8年度中に締まったのが何よりの証拠で、来年度に狙うなら年度明けすぐに動く前提で逆算してください。
代理受領制度は資金繰りに効く
稲城市は代理受領制度を用意しています。助成金を施工業者が代理で受け取る仕組みで、オーナーは工事費と助成金の差額だけを支払えばよい。100万円の助成が確定していれば、その分の立替キャッシュを持たずに着工できます。手元資金を他物件の空室対策に回したいオーナーさまには、地味ですが効きます。
【要注意】稲城市の”住民向け”補助金は、なぜ賃貸に効かないのか
期待させておいて申し訳ないのですが、ここは正直に申し上げます。
稲城市カーボンニュートラル住宅設備等補助金
太陽光1kWあたり2万円(上限8万円)、蓄電池定額4万円、既設窓・ドアの断熱改修は設置費用の1/6(上限5万円)――金額としては使いやすそうに見えます。申請対象者にも「戸建住宅、集合住宅」と書かれています。
しかし要件を読むと、太陽光は「発電した電力がその居住する住宅で使用されること」、蓄電池・エネファームも「その居住する住宅で使用されること」。制度の趣旨が「自家消費」なのです。オーナーが住んでいない賃貸住戸への設置は、この要件で外れます。
さらに窓・ドアの断熱改修には「管理組合が大規模改修等により住宅に設置した断熱窓は補助対象外」という一文もあります。共用部一括での改修は最初から想定外ということです。
(出典:令和8年度稲城市カーボンニュートラル住宅設備等補助金)
なお、この補助金は令和8年8月7日時点で予算に対する申請額が36.4%。オーナーさまご自身の自宅(稲城市内)であれば十分間に合うペースです。区分けして考えてください。
稲城市商工会住宅改修等補助金事業
工事費の10%・上限15万円、市内業者施工が条件。外壁塗装や張替えも対象工事に含まれるため、毎年問い合わせが多い制度です。
ただし対象は「市民の皆様が住宅のリフォームをする際」であり、市内に所在し市民が現に居住している住宅が前提です。加えて――
令和8年度は6月11日をもって受付終了しています。(出典:稲城市商工会)
年間の申請枠が早期に埋まる典型です。令和8年度の受付開始は4月13日でしたから、実質2か月で締まった計算になります。オーナーさまの自宅リフォームで狙う場合も、来年度は4月中に動く前提でお考えください。
【本命②】東京都「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」――ここが本丸
稲城市が賃貸に薄いぶん、東京都が手厚い。オーナーさま向けとしては、これが2026年度の主役です。
診断費用は実質ゼロ、上限120万円/棟
| 対象 | 補助率 | 上限 |
|---|---|---|
| 省エネ診断等(省エネ性能表示含む) | 対象経費の10/10 | 120万円/棟 |
| 省エネ診断用現況図面の作成 | 対象経費の10/10 | 10万円/戸 |
| 高断熱窓 | 対象経費の2/3 | 30万円/戸 |
| 高断熱ドア | 対象経費の2/3 | 27万円/戸 |
| 断熱材(屋根・天井・外壁・床) | 対象経費の2/3 | 60万円/戸 |
(出典:令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業【省エネ診断・断熱改修】)
補助率10/10。つまり診断費用は原則として全額返ってくる設計です。これは「まず自分の物件の断熱等級を数字で知る」という行為を、東京都がタダにしてくれているのと同じ意味を持ちます。
私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。診断で等級を把握し、その数字を根拠に窓・断熱材の投資判断をする。順番を逆にすると、改修前の等級を把握していない工事は助成対象外という要件で弾かれます。ここは本当に多い失敗です。
対象と要件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成対象者 | 助成対象住宅を1棟所有している個人または法人(登記事項証明書で所有権者と証明できること) |
| 対象住宅 | 普通賃貸借契約を締結し貸し出される既存の住宅、かつ専用住宅 |
| 拡充点 | 令和8年度からオーナー及び3親等以内の親族が居住する住戸も対象 |
| 対象外 | 1住戸を店舗用と居住用で兼用している部屋 |
| 事前申込 | 令和8年5月29日から。事前申込受付前に契約・着工したものは対象外 |
| 交付申請兼実績報告 | 令和8年6月30日から(事前申込有効期限または令和11年3月30日の早い日まで) |
| 施工者 | 公社に登録された省エネ診断等事業者・断熱改修事業者との契約が必須 |
断熱材の熱抵抗値要件(屋根2.7以上/天井2.7以上/外壁2.7以上/床2.2以上)、高断熱ドアの熱貫流率2.3W/(㎡・K)以下など、製品側の縛りもあります。製品は北海道環境財団や先進的窓リノベ2026事業、みらいエコ住宅2026事業の登録製品一覧から選ぶ形です。
オーナー視点で、この制度の何が本当に効くのか
補助金額そのものより、私が重要だと思っているのは「省エネ性能表示(ラベル)」が義務づけられている点です。
建築物省エネ法に基づく省エネ性能表示制度により、賃貸募集の広告に省エネ性能ラベルを表示できるようになりました。つまりこの補助金は、改修費の補助であると同時に、募集図面に載せられる「性能の証明書」を作る補助でもあるわけです。
築25年・1LDKで月10万円の物件を10戸お持ちだとします。年間満室賃料は1,200万円。ここで入居率が92%から95%に3ポイント動けば、年間36万円の差です。10年で360万円。窓の断熱改修で「冬に結露しない」「夏に効きが早い」が実現し、それがラベルという第三者にわかる形で表示できるなら、この3ポイントは決して夢物語ではありません。
東京都は「断熱改修等による賃貸住宅の資産価値向上を強力に支援します」というタイトルでこの事業のプレスリリースを出しています。行政の側が資産価値という言葉を使っているのが、この制度の性格をよく表しています。
なお、所有する賃貸住宅の断熱改修について相談したい方向けに、東京都はコンシェルジュ支援の窓口も設けています。無料で使えるものは使いましょう。
【本命③】国「賃貸集合給湯省エネ2026事業」――予算消化33%、動くなら今
給湯器は、入居者の満足度に直結し、かつ故障時のクレームが最も痛い設備です。国はここに専用の補助枠を用意しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業名 | 賃貸集合給湯省エネ2026事業(経済産業省) |
| 対象 | 既存賃貸集合住宅の小型省エネ型給湯器(エコジョーズ、エコフィール) |
| タイプ | リフォーム工事タイプ/リース利用タイプ |
| 申請者 | オーナーではなく「賃貸集合給湯省エネ事業者」(登録済の施工業者・リース事業者)が申請 |
| 予算消化 | 2026年8月23日午前0時時点で33%(毎日午前中更新) |
(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】)
ポイントはオーナーが直接申請できないことです。登録事業者との契約が前提で、補助金は事業者が受け取ってオーナーへ還元する流れになります。したがって、依頼先が登録事業者かどうかが最初の分岐点。公式サイトに事業者検索があるので、見積を取る前に必ず確認してください。
予算消化33%という数字は、8月下旬にしては速くも遅くもないペースです。ただし、この手の国庫補助は秋以降に一気に伸びる傾向があります。今年度の給湯器更新を検討しているなら、年内着手を前提に段取りするのが安全です。
なお、国内に所有・管理する既存賃貸集合住宅が200戸以上の事業者は、自ら手続きを行うことを希望できる相談窓口があります。規模の大きい法人オーナーはこちらの選択肢も検討価値があります。
敷地まわり:ブロック塀の撤去補助は「使えるか」を先に確認する
外壁や設備の話ばかりしてきましたが、私が現場で最も肝を冷やすのは、実は敷地境界の古いブロック塀です。
稲城市の補助額は次のとおりです。
| 種類 | 補助額 |
|---|---|
| 生垣の設置 | 8,000円/m(30mまで) |
| ブロック塀等の撤去 | 5,000円/m(30mまで) |
| ブロック塀等の撤去に伴うフェンス等の新設 | 8,000円/m(30mまで) |
要件は、高さ1.2mを超えるブロック塀等であること、総延長3m以上であること、そして稲城市地域防災計画で定める避難路および公共用地に面していること。地震時に倒壊して通行を妨げるおそれがあるもの、が前提です。
(出典:稲城市 生垣造成・ブロック塀等の撤去・フェンス等の新設の補助について)
ここで賃貸オーナーが必ず確認すべき一文があります。適用除外に「不動産業者及び開発事業者が業として行うもの」と規定されています。個人オーナーが自己所有物件の危険なブロック塀を撤去するケースがこれに当たるかどうかは、所有形態や事業形態によって判断が分かれ得ます。申請前に、まちづくり再生課(042-378-2111 内線324)へ事実関係を伝えて確認してください。 ここは私が断定できる領域ではありません。
交付申請書の提出期限は令和8年12月18日、完了報告書は令和9年2月5日。こちらも交付決定前の着工は対象外です。
稲城市の賃貸市場を、NOIの目で読む
制度の話から、少し物件の話に寄せます。
稲城市の人口は令和8年6月1日現在で95,110人、44,461世帯(住民基本台帳・外国人住民を含む/出典:稲城市 最新の人口及び世帯数)。多摩地域では中規模ですが、多摩ニュータウンの開発と京王相模原線・小田急多摩線の沿線整備によって人口が伸びてきた、比較的「新しい」街です。
オーナー視点で押さえるべき地理的な特徴は3つあります。
1. 平地(南武線沿線)と丘陵(京王相模原線沿線)で物件性格がまったく違う
矢野口・稲城長沼・南多摩といったJR南武線沿線は、多摩川に近い平地。単身向け・コンパクト物件が厚く、ワンルーム〜1Kのゾーンが主戦場です。一方、若葉台・向陽台・長峰といった丘陵側は計画的に整備された住宅地で、ファミリー向けの比重が上がります。同じ「稲城市の賃貸」でも、断熱改修が賃料に跳ね返る度合いはファミリー層の物件のほうが大きい、というのが私の実感です。単身者は数年で退去しますが、ファミリーは光熱費と快適性で住み続けを決めるからです。
2. 「築25〜35年」のボリュームゾーンが厚い
多摩ニュータウン系の街区や沿線開発の第一世代が、いま大規模修繕2回目・3回目の時期に差しかかっています。ここが今回ご紹介した制度群のターゲットとぴたり重なります。
3. 斜面地・高低差が多い
これは工法選定の話に直結します。後述します。
入居率1ポイントの重み
数字で体感していただくため、モデルを置きます。
| 前提 | 数値 |
|---|---|
| 総戸数 | 12戸 |
| 平均賃料 | 85,000円/月 |
| 満室年間賃料 | 1,224万円 |
| 入居率92% → 95%(+3pt) | 年間 約36.7万円の増収 |
| 同・10年累計 | 約367万円 |
これに対し、東京都の断熱改修助成で窓を12戸分改修した場合、上限ベースでは30万円/戸×12戸=360万円が補助されうる計算になります(実際は対象経費の2/3が上限を下回れば、その額)。補助で投資額を圧縮し、性能向上で入居率を持ち上げる。 2つを重ねて初めて、この投資は「利回り改善」として成立します。
税務:補助金は雑収入、修繕費か資本的支出かで手残りが変わる
ここは税理士の領域なので、私は事実関係だけを整理します。最終判断は必ず顧問税理士にご確認ください。
① 補助金は受け取った年度に「雑収入」として課税対象
これを忘れているオーナーさまが本当に多い。100万円の補助金が入れば、その年度の収入が100万円増えます。法人・個人を問わず、課税所得への影響を織り込んで資金計画を立てる必要があります。国庫補助金等については圧縮記帳という取り扱いが用意されている場合もありますので、適用可否を含めて事前相談を。
② 修繕費か資本的支出か
| 区分 | 処理 | オーナーへの影響 |
|---|---|---|
| 修繕費 | その年の必要経費・損金に一括算入 | 当年の課税所得を大きく圧縮できる |
| 資本的支出 | 資産計上し、耐用年数にわたり減価償却 | 当年の効果は小さいが、長期で費用化 |
原状回復・維持管理の色が濃い工事は修繕費、使用可能期間を延ばしたり価値を高めたりする工事は資本的支出、というのが基本的な考え方です。外壁塗装ひとつでも、既存同等仕様での塗り替えか、高耐久・高断熱仕様へのグレードアップかで判断が変わり得ます。 見積書の内訳の書き方が後々効いてきますので、施工会社にも「税務上の区分を意識した内訳で出してほしい」と伝えておくのが実務的です。
③ 省エネ改修の固定資産税減額は、賃貸住宅は対象外
これは明確です。省エネ改修に係る固定資産税の減額措置は、対象が「賃貸住宅ではない住宅」と要件で定められています(出典:国土交通省 住宅:省エネリフォーム税制(所得税・固定資産税)、東京都主税局 省エネ改修工事をした住宅に対する固定資産税の減額)。
「断熱改修すれば固定資産税が下がる」と説明されたら、その相手は賃貸の制度を正確に把握していません。オーナーの税メリットは固定資産税ではなく、修繕費の損金算入と減価償却で取りにいく――ここが管理組合向けの記事とオーナー向けの記事で最も大きく分かれる点です。
出口戦略:省エネラベルは「収益還元価格」に効く
賃貸経営の最終利益は、毎月のキャッシュフローと、売却時の価格の合算で決まります。
収益還元法で価格を考えるなら、価格 ≒ NOI ÷ 還元利回り(キャップレート)です。式の分子であるNOIが上がれば価格は上がり、分母のキャップレートが下がっても価格は上がります。
断熱改修が効くのは、実はこの両方です。
- 分子(NOI):入居率の改善、賃料下落圧力の緩和、共用部光熱費の低減
- 分母(キャップレート):省エネ性能表示ラベルという客観指標があることで、買主側のリスク認識が下がり得る
とりわけ後者は、これから効いてくる論点だと私は見ています。金融機関や機関投資家が建物の環境性能を評価軸に入れる流れは、住宅分野にも降りてきています。ラベルのない築30年と、ラベル付きの築30年が並んだとき、5年後の買主がどちらを選ぶか。 私はここに賭ける価値があると思っています。
築年数なりの劣化は、賃料の下落圧力として静かに効いてきます。出口を見据えた修繕投資は、利回り改善よりも物件価値そのものを底上げする――オーナーさまにはこの順番でお伝えするようにしています。
工法選定:稲城の高低差では、足場が「見えないコスト」になることがある
最後に、私の本業の話をさせてください。
稲城市は多摩川沿いの平地と、多摩丘陵の斜面地が混在しています。丘陵側の物件では、こんなことが起こります。
- 建物の一方が擁壁・法面に接していて、足場が組みにくい/組めない
- 隣地との離隔が数十センチしかなく、足場の足元が取れない
- 敷地内通路が狭く、資材搬入の動線が確保できない
- 足場を組むと入居者の駐車区画を数か月潰すことになる
こういう現場で従来の全面足場にこだわると、特殊足場の割増、仮設計画のやり直し、工期延長という形でコストが膨らみます。 そして最後の一つ――駐車場を数か月使えなくすることの機会損失は、見積書には絶対に載りません。載らないから、多くのオーナーさまが見落とします。
ここで選択肢になるのがロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用ロープで作業員が屋上から吊り下がり、外壁の塗装・シーリング打ち替え・タイル補修・調査を行う工法で、足場の架設・解体が不要になります。足場費用そのものの圧縮に加えて、入居者の生活影響と工期を短くできるのが賃貸物件にとっての本質的な価値です。ロープアクセス工法の技術情報や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。
一方で、正直に申し上げます。ロープアクセスが常に有利なわけではありません。
| 条件 | 向いている工法 |
|---|---|
| 全面的な下地補修・大量のタイル張替えがある | 足場仮設(作業効率で勝る) |
| バルコニー内部の作業比率が高い | 足場仮設 |
| 高層・塔状で足場架設費が跳ね上がる | ロープアクセス |
| 隣地離隔が取れない/擁壁に面している | ロープアクセス |
| 一部の面だけ足場が組めない | ハイブリッド(部位ごとに使い分け) |
明誠は、この3通りを同じテーブルで比較してご提案できる、日本でも数少ない会社です。加えて、ロープアクセス工事では日本で初めてとなるフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。だから高品質と低価格を同時に成立させられる。手前味噌ですが、これは10年かけて作ってきた仕組みです。
詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。
2026年度 稲城市オーナー向け 申請カレンダー
締切だけを抜き出しました。カレンダーに転記してお使いください。
| 期限 | 内容 | 制度 |
|---|---|---|
| 受付終了済(6/11) | 令和8年度分の受付終了 | 稲城市商工会住宅改修等補助金事業 |
| 受付終了済 | 令和8年度の耐震診断助成は予算上限で終了 | 稲城市木造住宅耐震診断助成金 |
| 一時停止中 | 耐震除却助成は予算上限で新規受付停止 | 稲城市木造住宅耐震改修等助成金(除却) |
| 令和8年12月11日(金) | 耐震改修助成の交付申請書提出期限 | 稲城市木造住宅耐震改修等助成金 |
| 令和8年12月18日(金) | 変更等承認申請書 / 生垣・ブロック塀の交付申請書 | 稲城市(両制度) |
| 令和9年2月5日(金) | 完了報告書提出期限 | 稲城市(耐震・生垣ブロック塀) |
| 令和9年3月5日(金)17:00 | 申請受付終了 | 稲城市カーボンニュートラル住宅設備等補助金 |
| 随時(予算上限まで) | 事前申込 → 契約 → 交付申請兼実績報告 | 東京都 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業 |
| 随時(予算上限まで) | 登録事業者経由で申請 | 賃貸集合給湯省エネ2026事業 |
制度は年度途中でも変更・終了する可能性があります。着手前に必ず各制度の公式ページと担当窓口で最新情報をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 稲城市に、賃貸マンションの外壁塗装や屋上防水そのものに出る補助金はありますか?
A. 2026年8月時点で、稲城市が賃貸物件の外壁塗装・屋上防水そのものを対象に単独で交付している補助金は確認できていません。狙うのは、耐震改修助成(木造共同住宅)、東京都の断熱改修助成、国の給湯省エネ事業の3本です。
Q2. 木造アパートのオーナーですが、自分は市外に住んでいます。稲城市の耐震改修助成は使えますか?
A. 助成対象者の要件は「現に助成対象住宅の所有権を有すること」で、居住地の要件は課されていません。所有者と居住者が異なる場合の同意書様式も市が用意しています。詳細はまちづくり再生課(042-378-2111 内線324)へご確認ください(出典:稲城市)。
Q3. 東京都の断熱改修助成は、工事を始めてからでも申請できますか?
A. できません。事前申込の受付完了後に契約を締結する必要があり、事前申込受付前に契約または着工したものは助成対象外です。また、改修前の断熱等級を把握していない工事も対象外になります。
Q4. 断熱改修をすると固定資産税は安くなりますか?
A. 賃貸住宅は対象外です。省エネ改修に係る固定資産税の減額措置は「賃貸住宅ではない住宅」が要件とされています。オーナーの税メリットは、修繕費としての損金算入や減価償却の側で設計してください。
Q5. 足場を組まずに大規模修繕はできますか?
A. ロープアクセス工法により、外壁塗装・シーリング打ち替え・タイル補修・外壁調査などは足場なしで施工可能です。ただし下地補修が広範囲に及ぶ場合やバルコニー内部の作業比率が高い場合は足場のほうが効率的です。部位ごとに使い分けるハイブリッド工法が最適解になるケースも多くあります。
この記事のポイントまとめ
- 稲城市の補助金は「居住要件」が壁。賃貸オーナーは市の制度の大半が使えない
- 例外は木造住宅耐震改修等助成金。木造共同住宅が対象で1/2・上限100万円、申請は12月11日まで
- 本丸は東京都の賃貸住宅断熱・再エネ集中促進事業。省エネ診断は10/10・120万円/棟
- 給湯器は賃貸集合給湯省エネ2026事業。オーナーは直接申請不可、登録事業者経由
- 省エネ改修の固定資産税減額は賃貸住宅は対象外。税メリットは損金算入と減価償却で取る
最後に
制度を並べてきましたが、私が本当にお伝えしたいのは、「稲城市は市の補助金が薄いから何もできない」ではないということです。市が薄いぶん、東京都と国の賃貸専用メニューをどう組み合わせるかで差がつきます。そして稲城の丘陵地形は、工法選定でさらに差がつく土地です。
お持ちの物件で、まだこの補助金の検討を始めていないオーナーさまは、ぜひ一度お声がけください。1棟の現地調査と、補助金を織り込んだ利回り改善シミュレーションだけでもお受けしています。「今年度は間に合わないので、来年度の4月に照準を合わせましょう」という結論になることもあります。それでも、来年度に間に合わせるための逆算ができるだけで、判断は変わるはずです。
ご相談だけでも遠慮なく、お問合せフォームからお声がけください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
関連記事・関連リソース
- 狛江市の賃貸マンション補助金|オーナー向け2026年版
- 武蔵村山市の賃貸マンション補助金|オーナー向け2026年版
- ロープアクセス工法の技術情報・安全基準:ロープアクセスドットコム
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社です。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板の専門職が加盟しています。
最終更新:2026年8月23日
出典・参考資料
- 稲城市「住宅関連制度等一覧」
- 稲城市「木造住宅耐震改修等助成金」
- 稲城市「木造住宅耐震診断助成金」
- 稲城市「【申請受付中!】令和8年度稲城市カーボンニュートラル住宅設備等補助金のご案内」
- 稲城市「生垣造成・ブロック塀等の撤去・フェンス等の新設の補助について」
- 稲城市「最新の人口及び世帯数」
- 稲城市商工会「令和8年度 稲城市商工会住宅改修等補助金事業について」
- クール・ネット東京「令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業」
- クール・ネット東京「令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業【省エネ診断・断熱改修】」
- 経済産業省「賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】」
- 国土交通省「住宅:省エネリフォーム税制(所得税・固定資産税)」
- 東京都主税局「省エネ改修工事をした住宅に対する固定資産税の減額」
免責:本記事は2026年8月23日時点の公開情報に基づいています。補助金・税制は予算状況により年度途中で変更・終了する場合があります。実際の申請にあたっては各制度の公式ページおよび担当窓口で最新情報をご確認ください。税務上の取り扱いは個別事情により異なりますので、顧問税理士へご相談ください。


