大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

奈良ホテルが本館だけ先に開いた本当の理由——『全館休んで一気に直す』時代が終わり、ホテル・ビルオーナーが“稼ぎながら直す”ために知っておく工法と工程の話【2026年6月】

奈良ホテルが本館だけ先に開いた本当の理由——『全館休んで一気に直す』時代が終わり、ホテル・ビルオーナーが“稼ぎながら直す”ために知っておく工法と工程の話【2026年6月】

奈良ホテルが本館だけ先に開いた本当の理由——『全館休んで一気に直す』時代が終わり、ホテル・ビルオーナーが“稼ぎながら直す”ために知っておく工法と工程の話【2026年6月】

ホテルや一棟ビルをお持ちのオーナーさまから、私のところへ寄せられるご相談で、ここ数年とくに増えているのが「直したいのは分かっている。でも、その間どれだけ休まないといけないのか」という不安です。マンションの大規模修繕(建物全体を十数年に一度まとめて直す大工事)と違い、ホテルやテナントビルは「閉めている間、収益がまるごと止まる」という、もう一つの大きなコストを抱えているからです。

今日は、ちょうど本日2026年6月4日に動きのあった、あるニュースを入り口にお話しします。日本を代表するクラシックホテルである奈良ホテルが、大規模リニューアル工事を経て、本日「本館だけ」を先に営業再開しました。全部を一度に開けるのではなく、本館を先に開け、残りは後から開ける。この「先に開ける、後から開ける」という工程の組み方の中に、私がホテル・ビルオーナーさまに必ずお伝えしている考え方が、ぎゅっと詰まっています。

本日6月4日、奈良ホテルが「本館だけ」を再開した

まず事実関係を整理します。奈良ホテルは、大規模リニューアル工事のため2026年1月4日から全館を休館していました。そして2026年6月4日、つまり本日から、本館客室、メインダイニングルーム「三笠」、ティーラウンジ、バー「THE BAR」、ホテルショップの営業を再開します(出典:奈良ホテル公式「大規模リニューアル工事に伴う全館休業及び縮小営業のお知らせ」)。

注目していただきたいのは、ここで「全館リニューアルオープン」と打っていない点です。新館をリブランドした「西館」のリニューアルオープンは、2026年9月2日と発表されています(出典:株式会社ジェイアール西日本ホテル開発 プレスリリース)。つまり、1月から5カ月かけて全館を休んだうえで、まず本館を6月に開け、西館はさらに3カ月遅れて9月に開ける、という二段構えの再開なのです。

奈良ホテルは1909年(明治42年)創業、本館は東京駅を手がけた建築家・辰野金吾の設計で知られる、いわゆる「クラシックホテル」です。報道では、今回の改装は1984年以来、実に41年ぶりの全面改装とされています(出典:日本経済新聞「改装の奈良ホテル、9月全面開業」)。歴史的な意匠を守りながら水回りや客室を現代の基準に引き上げる——これは、私たちが現場でいつも頭を悩ませる「古い建物を、価値を壊さずに直す」という仕事の、最も難しい部類に入ります。

なぜ「一度に全部開ける」を選ばなかったのか

ここからが本題です。なぜ、本館と西館を同じ日に「せーの」で開けなかったのか。私は奈良ホテルさまの工事に関わったわけではありませんので、内部の事情を断定することはできません。ただ、ホテルや収益ビルの改修を数多く見てきた立場から、「段階的に開ける」工程には、オーナーにとって合理的な理由がいくつもあることは申し上げられます。

一つは、休館による機会損失を少しでも早く止められることです。全部が仕上がるのを待ってから一斉に開けると、本館が物理的には使える状態になっていても、西館の完成まで一円も稼げません。先に仕上がった本館だけでも開けてしまえば、その分だけ早く収益が戻り始めます。

もう一つは、工事と営業を「並走」させられることです。本館を開けながら西館の工事を続ける。これができれば、オーナーは「閉めっぱなしの数カ月」を短くできます。私はホテルのオーナーさまに、いつもこうお伝えしています。「直す費用と同じくらい、いや、立地の良いホテルではそれ以上に、休んでいる間に取り逃がす売上が痛いんです」と。

正直に申し上げます。「全館を閉めて一気に直して、きれいになってから開ける」というやり方は、工事をする側にとっては実は一番ラクです。誰もいない建物を自由に使えるからです。しかしそれは、オーナーの収益という観点から見ると、必ずしも最適ではありません。「いつ、どこを、どの順番で開けるか」を収益から逆算して設計することこそ、本来の腕の見せどころだと私は考えています。

ホテル・ビルの改修には「二つのコスト」がある

ここで、マンションの大規模修繕とホテル・テナントビルの改修の、決定的な違いを押さえておきましょう。

マンションの場合、工事中も住民の方はそこで生活を続けます。ですから最大の課題は「居住者の生活影響をどれだけ抑えるか」です。一方、ホテルやテナントビルの場合は、工事そのものの費用に加えて、「営業を止めることで失う収益」という、もう一つの大きなコストがのしかかります。私はこれを、オーナーさまに「工事費」と「機会損失」の二本立てで考えてください、とお話ししています。

たとえば客室単価が1泊2万円、稼働率8割のホテルが100室あったとします。単純計算で、満室に近い日の1日の客室売上はおよそ160万円。これを1カ月止めれば、客室だけで5,000万円近い売上が消えます。レストランや宴会を含めれば、その額はさらに膨らみます。だからホテルの改修では、「工事費を10%削る」よりも「休館期間を1カ月縮める」ほうが、オーナーの手元に残るお金が大きくなることすら、珍しくないのです(金額は説明のための仮定の試算です)。

この「機会損失」という二つ目のコストを見落としたまま、工事費の安さだけで施工会社を選んでしまうと、結果的に高くつくことがあります。「安いけれど、全館を長く閉めないと進められない工事」と、「多少手間はかかるけれど、営業しながら少しずつ進められる工事」。後者のほうがトータルで得になるケースは、実際の現場で何度も見てきました。

そして今は、その「並走して稼ぎながら直す」ことの価値が、これまで以上に大きくなっています。訪日外国人の回復で、宿泊需要が高い水準にあるからです。日本政府観光局(JNTO)の統計では、訪日外客数は近年、過去最高水準で推移しています(出典:日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計)。需要が強い局面で長く休業すれば、その間に取れたはずの売上を、まるごと取り逃がすことになります。「直すなら需要の谷で、できるだけ短く」——これが、いまのホテル改修における鉄則だと私は考えています。

建設費そのものが、構造的に上がり続けている

もう一つ、ホテル・ビルオーナーに知っておいていただきたい背景があります。改修にかかる費用そのものが、この十数年で構造的に上がり続けている、という事実です。

国土交通省は、令和8年(2026年)3月から適用する公共工事設計労務単価を、全国全職種の単純平均で前年度比4.5%引き上げました。全国全職種の加重平均値は25,834円となり、初めて25,000円を超えています。これは平成25年度の改定から数えて14年連続の上昇です(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。

公共工事設計労務単価とは、国が公共工事の予算を組むときに使う「職人一人を一日雇うといくらか」の基準額で、職人の賃金相場を映す代表的な指標です。これが14年連続で上がり、ついに一日2.5万円を超えたという事実は、人件費が「一時的に跳ねている」のではなく「戻らない水準で上がり続けている」ことを意味します。外壁の塗装や防水は人件費の比重が高い工事ですから、この上昇はホテル・ビルの改修費にも、じわじわと、しかし確実に効いてきます。

私が現場で20年やってきて一番もどかしいのは、この構造的な値上がりを、施工会社のさじ加減のように受け止められてしまうことです。値上がりの大半は、職人の正当な賃金と世界的な資材高から来ています。ここを誤解したまま「もっと安い会社を」と探し続けると、本当に効くコスト削減——工法と工程の見直し——にたどり着けません。だからこそ、足場を二度組まない、営業を止めないといった「段取りで削る」発想が重要になるのです。

足場を全面に組むと、ホテルは「商売ができなくなる」

では、営業しながら直すために、現場では何が壁になるのか。最も大きいのが「足場」です。

外壁の塗装や防水、タイルの補修をするとき、従来のやり方では建物の周囲をぐるりと仮設足場で囲い、その外側を養生シート(工事の粉じんや塗料の飛散を防ぐ覆い)で覆います。これは安全で確実な方法ですが、ホテルやテナントビルにとっては困った副作用があります。建物全体がシートで覆われ、看板もエントランスも隠れ、外から見れば「休業中」にしか見えなくなるのです。

宿泊客やテナントから見れば、足場とシートに覆われたホテルは、それだけで魅力が半減します。窓からの眺望も損なわれ、騒音や振動も避けられません。結果として、「営業はしているが、足場のせいで実質的に商売がしづらい」という状態に陥ります。私が現場で一番悔しいのは、せっかく営業を続けようとしているオーナーさまの足を、足場という仮設物が引っ張ってしまうことです。

ここで効いてくるのが、足場を組まずに作業する「無足場工法」、いわゆるロープアクセス工法です。

ロープアクセス工法——足場を組まずに「必要な面だけ」直す

ロープアクセス工法とは、産業用のロープを使い、職人が建物の上から吊り下がって外壁の作業を行う無足場の工法です。もともとはビルの窓ガラス清掃などで使われてきた技術を、塗装・防水・タイル補修・調査といった修繕工事に応用したものです。

この工法のホテル・ビルにとっての利点は、はっきりしています。建物全体を足場とシートで覆わずに済むため、エントランスや看板を隠さず、外観の印象を保ったまま工事ができること。そして、傷んでいる「必要な面・必要な部位」だけをピンポイントで直せることです。たとえば「西側の外壁の劣化が激しいが、東側はまだ持つ」という建物なら、西側だけにロープアクセスで入る、という進め方ができます。足場のように「全面を組んでから外す」必要がないので、工期も読みやすくなります。

私はこれを、ホテルやテナントビルのオーナーさまに「営業を止めない改修の、有力な選択肢の一つ」としてご提案しています(ロープアクセス工法のご紹介)。足場費そのものがかからない分、工事費を抑えられる可能性があるうえに、何より「商売を止めずに直せる」ことの価値が大きいからです。

ただし、ロープアクセスは万能ではない

ここは正直にお伝えしなければなりません。ロープアクセス工法は、すべての建物・すべての工事に向いているわけではありません。

大きく重い資材を一度に大量に扱う工事や、外壁全面を一気に張り替えるような大規模な工事では、足場を組んだほうが効率的で安全なこともあります。また、建物の形状や周囲の状況、屋上にロープを固定できる場所があるかどうかによって、ロープアクセスが使える範囲は変わります。低層で複雑な形状の建物では、足場のほうが適している場合もあります。

ですから私は、「全部ロープアクセスでやりましょう」とは申し上げません。むしろ、足場が向いている部位は足場で、ロープアクセスが向いている部位はロープで、と部位ごとに使い分ける「ハイブリッド工法」を提案することが多いのです。足場・ロープアクセス・その組み合わせ。この三つの選択肢を持ち、建物ごとに最適な組み合わせを設計できることが、コストと工期、そして営業影響のバランスを取るうえで効いてきます。

奈良ホテルさまが本館と西館で再開時期をずらしたように、「建物のどこを、どの工法で、どの順番で直すか」を、収益と営業から逆算して組み立てる。これがホテル・ビル改修の肝だと、私は考えています。

三つの工法を、営業影響の観点で並べてみる

言葉だけでは分かりにくいので、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの三つを、ホテル・ビルオーナーが気になる観点で整理してみます。あくまで一般的な傾向であり、実際は建物ごとに変わりますが、判断の入り口にしてください。

観点 通常足場工法 ロープアクセス工法(無足場) ハイブリッド工法
足場費 かかる かからない 一部のみ
外観・看板の見え方 シートで全面が隠れやすい 隠さず保ちやすい 必要部位のみ覆う
営業への影響 大きくなりやすい 抑えやすい 中間
向く工事 全面の大規模な張替等 必要な面の塗装・防水・補修・調査 大規模かつ部位差の大きい建物
向く建物 低層・複雑形状 高層・足場架設が難しい・意匠重視 大規模で総合最適が必要

この表で私がお伝えしたいのは、「どれが優れている」という話ではない、ということです。大切なのは、自分の建物と、自分の営業の事情に、どれが一番合うかです。三つを並べて比べられること自体が、選択肢の幅になります。一つの工法しか持たない会社では、その工法に建物を合わせる提案になりがちですが、三つから選べれば、建物と営業に工法を合わせられます。

現場で実際にあった話——足場を半分にして営業を続けた建物

抽象的な話ばかりでは伝わりにくいので、私が実際に関わった現場の話を一つ。物件が特定されないよう、細部はぼかしてお話しします。

ある中規模の宿泊施設で、外壁の劣化が進み、塗装と防水のやり直しが必要になっていました。当初、別の会社からは「全面に足場を組み、その間は休業」という前提の見積もりが出ていたそうです。オーナーさまは「繁忙期に丸ごと休むのは、いくら何でも痛い」と頭を抱えておられました。

私たちが現地を拝見すると、劣化が激しいのは主に一面と、共用部まわりの限られた範囲でした。そこで、傷みの大きい面はロープアクセスで先に手当てし、どうしても足場が必要な範囲だけ部分的に足場を組む、というハイブリッドの工程を組み直しました。結果として、足場の規模はおおむね半分程度まで減り、建物の正面とエントランスは足場で覆わずに済みました。オーナーさまは、フロアを絞りながらではありましたが、営業を完全には止めずに工事期間を乗り切ることができました。

この時、オーナーさまが最後におっしゃった一言が忘れられません。「工事費が安くなったこと以上に、お客さまに『休んでいる』と思われずに済んだのが一番ありがたかった」。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。工事の中身だけでなく、その間も商売を止めない段取りまで含めて設計することを、です。

クラシックな建物ほど「壊さずに直す」技術が問われる

奈良ホテルの本館は、100年以上の歴史を持つ建築です。こうした古い建物の改修では、新しくきれいにすること以上に、「元の価値を壊さないこと」が重要になります。

歴史的な意匠を持つ建物では、外壁の素材や装飾、窓まわりのディテールが、その建物の価値そのものです。ここを画一的な工法で塗りつぶしてしまえば、せっかくの資産価値を自ら損なうことになりかねません。足場を全面に組む工事は、こうした繊細な部位への配慮がしにくい一方、ロープアクセスのように「必要な部位に職人が直接アプローチする」工法は、傷んだ箇所だけを丁寧に扱える利点があります。

これはクラシックホテルに限った話ではありません。築年数を重ねた収益ビルやデザイナーズマンションでも、「外観の個性をどう守りながら直すか」は、家賃や稼働率に直結する重要な論点です。私はいつもオーナーさまに、「直すことと、この建物の良さを残すことは、両立できます」とお伝えしています。

ホテル改修は「専門職の束」で決まる——だから低価格と品質を両立できる

もう一つ、ホテルやテナントビルの改修で見落とされがちな論点があります。それは、ホテルの修繕が「外壁を塗って終わり」ではない、ということです。

実際の現場では、外壁の塗装や防水だけでなく、タイルの補修、外構や看板の付け替え、照明や電気設備の更新まで、いくつもの専門工事が同時に絡みます。とくにホテルは、看板やファサード(建物正面の見せ方)が集客に直結しますから、塗装屋だけ、防水屋だけ、では片付きません。ここで、それぞれの工事を別々の業者に発注して取りまとめると、間に何重もの管理費が乗り、結果として割高になりがちです。

私たちが、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職とネットワークを組み、無足場のロープアクセスを軸にフランチャイズとして全国に広げているのは、まさにここに理由があります。専門職が一つの枠組みでつながっていれば、余計な中間マージンを省きながら、それぞれの工事を必要なタイミングで束ねられます。高い品質を保ちながら、価格を抑える。これは、専門職がバラバラに動いていては実現できないことです。ホテルのように工種が多い建物ほど、この「束ねる力」が効いてきます。

収益物件オーナーへ——修繕は「稼働率」と「出口」を左右する

収益不動産をお持ちの方にとって、修繕は単なる出費ではありません。稼働率と資産価値、そして将来の売却(出口)を左右する、攻めの投資でもあります。

外観が傷んだホテルやビルは、それだけで宿泊単価やテナント賃料を下げる圧力になります。逆に、適切なタイミングで、営業を止めずに、価値を壊さずに直せれば、稼働率と単価を守りながら資産価値を維持できます。そして売却を考える局面では、「いつ、どこを、どんな工法で直したか」という修繕履歴が、買い手から見た物件の信頼性を大きく左右します。きちんと手入れされてきた建物は、出口でも評価されます。

だからこそ私は、修繕の相談を「工事の見積もり」だけで終わらせず、「この物件をこの先どう運用し、いつ出口を迎えるのか」まで含めて一緒に考えることにしています(大規模修繕工事のご紹介)。工法選びは、その運用計画の一部だからです。

ホテル・ビルオーナーが必ず聞かれる5つの質問と、私の答え

実際にオーナーさまや運営会社の方とお話しすると、決まって出てくる質問があります。現場での私の答えを、そのままお伝えします。

第一に、「営業を止めずに外壁を直せますか」。多くの場合、可能です。ロープアクセスで必要な面だけに入り、稼働しているフロアや時間帯に配慮して工程を組めば、全館を閉めずに進められるケースは多くあります。ただし建物の形状や工事範囲によるので、現地を見て判断します。

第二に、「足場をなくすと、本当に安くなりますか」。足場費の比重が大きい建物ほど、効果は出やすい傾向です。ただし「必ず安くなる」とは申し上げません。物件ごとに、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの概算を並べて比較するのが確実です。

第三に、「工期はどれくらい短くなりますか」。これも物件次第ですが、「全面足場を組んで外す」工程が省ける分、計画の自由度は上がります。先に開けたい部分から手を付ける、という順番も組めます。

第四に、「古い建物の意匠を残せますか」。残せます。むしろ、傷んだ部位だけに丁寧にアプローチできるロープアクセスは、繊細なディテールを持つ建物と相性が良いことがあります。

第五に、「相談したら、必ず発注しないといけませんか」。そのようなことはありません。工法の比較や、いま動くべきかどうかの整理だけでも、お力になれます。

いま、オーナー・運営会社が動くべき順番

最後に、ホテルや収益ビルをお持ちの方が、今日から動ける順番を整理します。

まず、自分の建物の「傷んでいる面」と「まだ持つ面」を切り分けて把握すること。全面を一律に直す前提を、いったん外してみてください。次に、「休館・休業した場合に失う収益」を、ざっくりでよいので数字にしてみること。工事費と並べて初めて、本当の最適解が見えてきます。そのうえで、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの三つで概算を比較し、「どこを、どの工法で、どの順番で直すか」を、収益から逆算して設計する。この順番です。

奈良ホテルさまが本館を先に開け、西館を9月に開けるという二段構えを選んだように、「全部を一度に」ではなく「収益から逆算した順番で」開けていく。その発想こそ、これからのホテル・ビル改修の標準になっていくと、私は見ています。

よくあるご質問(FAQ)

Q. うちは小さなビジネスホテルですが、ロープアクセスは大げさではないですか。
A. 規模の大小よりも、建物の形状と「営業を止めたくないかどうか」で考えます。小規模なホテルでも、足場で全面を覆うと商売がしづらくなる立地なら、無足場のメリットは十分にあります。

Q. テナントが入っている一棟ビルでも、稼働中に外壁を直せますか。
A. 多くの場合可能です。テナントの営業時間や搬入動線に配慮しながら、必要な面にロープアクセスで入る計画を組みます。テナントへの説明資料づくりも含めてお手伝いできます。

Q. 築古で、どこから手を付けるべきか分かりません。
A. まずは劣化の優先順位を一緒に整理しましょう。「いま直すべき面」と「次の周期まで持つ面」を切り分けるだけで、予算配分がはっきりします。

Q. 相談料はかかりますか。発注前提ですか。
A. 総会前・予算編成前の整理や、見積もりの読み解きだけでも構いません。発注を前提にする必要はありません。

おわりに

奈良ホテルが本館だけを先に開けたというニュースは、見方を変えれば「これからの建物の直し方」を象徴しています。全部を閉めて一気に直し、きれいになってから開ける時代から、収益と営業から逆算して「開けられるところから開けていく」時代へ。そのために、工法は一つではなく、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの三つから選べたほうがいい——これが、現場で20年やってきた私の正直な実感です。

ホテルでも、テナントビルでも、築古の収益物件でも構いません。「営業を止めずに直せないか」「どこから手を付けるべきか」——その入り口の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください(お問合せフォーム)。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料