
「うちの管理、来年から受けられません」——ある日突然、そう言われたら
もし理事会の席で、管理会社の担当者から「来期をもって管理委託契約を終了させていただきたい」と切り出されたら、あなたはどう動くでしょうか。あるいは、契約は続けるものの「委託料を今より大幅に上げさせてください」と言われたら。
これは、特別な誰かの話ではありません。2026年のいま、全国の小規模なマンションで、静かに、しかし確実に増えている現実です。私は大規模修繕の現場で20年近く仕事をしてきましたが、ここ1〜2年、「管理会社に見放されそうだ」というご相談が明らかに増えました。
この記事は、築15〜25年で50戸前後、あるいはそれより小さいマンションの理事長さま・修繕委員の方、そして区分マンションを複数お持ちの収益物件オーナーの方に向けて書いています。「管理会社に切り捨てられる」という一見こわい話を、なぜそれが起きるのか、そして工事会社の立場から見て「本当に効く打ち手」は何かまで、順を追って整理します。結論から言えば、鍵は「管理を誰に頼むか」だけでなく、「一番大きな出費である大規模修繕を、どの工法で、いくらで直すか」にあります。
何が起きたのか——日経が報じた「切り捨てられる小型物件」
2026年7月、日本経済新聞が「マンション不都合な真実 あえぐ管理組合」という連載を掲載しました。その第1回(上)の見出しが、そのものずばり「切り捨てられる小型物件」です。記事では、管理会社が小規模マンションに対して「解約通知は突然に」届き、その理由として「40戸ないと採算合わず」という趣旨の業界の声が紹介されています(出典:日本経済新聞「マンション不都合な真実 あえぐ管理組合(上)」2026年7月20日)。
かつて、分譲マンションの管理は「一度受託したら長く続くストックビジネス」でした。ところが、その前提が崩れつつあります。人手不足で管理員や清掃の人件費が上がり、小さな物件ほど「1戸あたりで見たときの手間」が重くなる。管理会社からすれば、同じ労力をかけるなら戸数の多い物件に人を回したい——そういう選別が、静かに始まっているのです。
この連載は全3回で、第2回(中)は大規模修繕をめぐる不透明な取引、第3回(下)は築古マンションが自治の力でよみがえる事例を取り上げています。つまり日経は、「管理」「修繕」「再生」という、マンションの一生に関わる3つの局面をまとめて問い直しているわけです。私が注目したいのは、その入口が「小型物件の切り捨て」だった、という点です。一番弱い立場の物件から問題が噴き出す——それは、業界全体のひずみが、そこに集まっているということでもあります。
私はこのニュースを、単なる「管理会社の都合」とは受け止めていません。これは、日本の分譲マンションが「新築を売る時代」から「古い建物を維持し続ける時代」に本格的に入ったことの、ひとつの表れだと考えています。国土交通省によれば、分譲マンションのストックは全国で数百万戸規模に達し、築40年を超える住戸も年々増えています(出典:国土交通省「マンションに関する統計・データ等」)。維持しなければならない建物が増える一方で、それを支える人手とお金が細っている。その「しわ寄せ」が、まず小さな物件から表面化しているわけです。
なぜ今、小規模マンションが“管理難民”になるのか
「ある日突然、管理会社から契約解約や大幅な委託料増額を告げられ、次の引き受け手も見つからない」——こうした状態は、近年「マンション管理難民」と呼ばれるようになりました。なぜ、いま急に増えているのか。私が現場で感じている要因は、大きく3つに分けられます。
要因1:人件費の上昇と「1戸あたりコスト」の重さ
管理会社の費用の多くは人件費です。管理員・清掃員・フロントの人件費が上がれば、当然、委託料に反映されます。ここで小規模マンションが不利になるのは、「固定的にかかる手間」が戸数で割り切れないからです。総会の運営も、会計も、点検の立ち会いも、20戸でも100戸でも「一式」で発生する作業は少なくありません。戸数が少ないほど、1戸あたりの負担が重くなる。管理会社が「40戸ないと採算が合わない」と口にする背景には、この構造があります。
要因2:制度改正で“事務コスト”がさらに増える
2026年には、マンションの管理をめぐる制度も動いています。国土交通省は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律の施行規則を改正しました(出典:国土交通省「施行規則の一部を改正する省令の公布について」)。管理をより丁寧に、透明にしていく方向の改正で、居住者にとっては望ましいものです。
ただ、管理会社の側から見ると、1件の受託にかかる説明・書面・事務の手間は増える方向にあります。丁寧さを求められるほど、「手間の割に実入りの小さい小規模物件」から人手を引き上げたくなる——業界内でそういう見方が広がっているのは、残念ながら事実です。制度は住民の味方ですが、その運用コストが小さな物件を押し出してしまう、という皮肉が起きているのです。
要因3:担い手そのものの不足
建設業も管理業も、いま共通して抱えているのが「人がいない」という問題です。フロント担当者ひとりが持てる物件数には限りがあります。会社として人を増やせないなら、限られた担当者を効率よく配置するしかない。そのとき、真っ先に見直しの対象になるのが小規模物件です。これは意地悪ではなく、経営としての選択です。だからこそ、「相手の善意に期待する」対策には限界があると、私は考えています。
念のため申し添えますが、すべての管理会社が小規模物件を切り捨てているわけではありません。小さな物件を丁寧に支える会社も、管理組合支援に特化した会社もあります。ここでお伝えしたいのは「危機を煽る」ことではなく、「管理会社任せにしない備えを、いまのうちに」という一点です。
数字で見る、管理組合の“お財布事情”
管理難民が深刻なのは、それが「日々の管理」だけでなく「10年に一度の大工事」に直結するからです。ここで、公的な調査データを見てみましょう。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、長期修繕計画に対して修繕積立金が不足しているマンションは36.6%にのぼります。ほぼ3棟に1棟です。しかも、そのうち「計画に対して20%を超えて不足している」マンションが11.7%を占めます(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」)。
| 指標(令和5年度マンション総合調査) | 数値 |
|---|---|
| 修繕積立金が計画に対して不足しているマンション | 36.6% |
| うち「20%超の不足」 | 11.7% |
| 月額の修繕積立金(1戸あたり平均) | 約13,054円(25年間で約1.8倍) |
| 高経年マンションで世帯主が70歳以上 | 半数以上 |
この表を、私はいつも理事長さまに「読者ご自身の財布に置き換えて」ご覧いただくようお願いしています。積立金は25年で約1.8倍に上がったのに、なお3棟に1棟が不足している。しかも住んでいる方は高齢化していて、「これ以上の値上げは厳しい」という声が強い。つまり、「積立金をこれ以上増やしにくいのに、工事費は上がっている」という板挟みが、いまの管理組合の平均像なのです。
もう少し体感的な数字にしてみましょう。1戸あたり月額の修繕積立金が約13,000円だとすると、年間で約15万6千円。50戸のマンションなら、組合全体で年間約780万円が積み上がる計算です。しかし、資材費や人件費が上がった今、外壁・屋上防水・鉄部などをまとめて直す大規模修繕は、規模によっては数千万円に達します。10年から12年かけて積み上げたお金を、ほぼ一度の工事で使い切る——それが多くの組合の実像です。だからこそ、その一度の工事で「足場のかけ方ひとつで数百万円が動く」という事実は、決して他人事ではありません。積立金を増やす努力と同じくらい、「使うときに賢く使う」工夫が効いてくるのです。
そこへ「管理会社に切り捨てられる」が重なると、どうなるか。次の大規模修繕で、頼れる相談相手がいないまま、限られた予算で工事の判断を迫られることになります。
もう一点、見落とされがちなのが「合意形成の難しさ」です。高経年マンションで世帯主の半数以上が70歳を超えているということは、総会に出てくる方の多くが年金生活に入っている、ということでもあります。「今後20年住むかどうか分からない」「値上げはもう受け入れられない」という声が強くなると、必要な工事の決議さえ通りにくくなります。管理会社という“進行役”を失うと、この合意形成がさらに重くのしかかります。だからこそ、「専門的なことを噛み砕いて説明し、判断材料を並べてくれる相手」の価値が、以前より格段に上がっているのです。
収益物件オーナーにとっての意味——空室・利回りと修繕の関係
ここまでは管理組合を主役に書いてきましたが、区分マンションを複数お持ちの収益物件オーナーの方には、もう一段“わがこと”の話があります。管理難民の問題は、そのまま「持っている部屋の資産価値」に跳ね返ってくるからです。
考えてみてください。管理が行き届かず、外壁が汚れ、共用部が傷んだ建物は、入居希望者から敬遠されます。空室が長引けば家賃を下げざるを得ず、利回りは下がる。さらに、修繕がまともに進まない建物は、売却しようとしたときに「大規模修繕の見通しが立たない物件」として評価が下がりやすい。つまり、管理と修繕の停滞は、家賃・空室・売却価格の三方向から、オーナーの収益をじわじわ削っていきます。
私は、収益物件をお持ちのオーナーさまには「区分所有でも、建物全体の修繕方針に一票を投じる意識を持ってください」とお伝えしています。所有戸数が多いほど、その一票の重みは増します。管理組合が“管理難民”に陥りそうなとき、工法や見積もりの知識を持ったオーナーが理事会にいるかどうかで、その物件の10年後は大きく変わります。ご自身の資産を守るという意味でも、修繕のコスト構造を知っておくことは、決して損になりません。
「見放される」が一番痛いのは、大規模修繕のとき
日々の清掃や点検なら、最悪、自主管理という手もあります。掃除当番を決め、会計を輪番でこなす。大変ですが、なんとか回している組合もあります。
けれど、大規模修繕(外壁・屋上防水・鉄部などを12年前後の周期でまとめて直す、マンション最大の工事)は話が別です。数百万円から、規模によっては数千万円が動きます。足場を組み、下地を直し、塗装・防水を重ねる。専門的な判断が連続し、見積書は分厚く、素人がひとつずつ妥当性を確かめるのは容易ではありません。ここで「信頼できる相談相手がいない」状態は、本当に危うい。
私が現場で20年やってきて一番悔しい思いをするのは、「本当は半分の費用で、十分な品質の工事ができたのに」という物件に、後から出会ってしまうときです。相見積もりを取らないまま、あるいは工法の選択肢を知らないまま、言われるがままに契約してしまう。小規模マンションほど、この「情報の非対称」が命取りになります。
私が現場で見た、小規模ほど“足場費”で損をする構造
ここからが本題です。大規模修繕の見積書を開くと、多くの方が驚くのが「仮設足場」の金額です。建物をぐるりと囲う足場は、工事費全体の中でもおおむね2割前後を占めるとされ、決して小さくありません。しかも足場費は、実際に塗ったり直したりする面積とは別に、「組んで・かけて・ばらす」ことそのものにかかる固定費に近い性格を持っています。
小規模マンションは、この足場費の重さをまともに受けます。戸数が少ないぶん、1戸あたりで足場費を割ると割高になりやすいからです。以前、東京都内のある小規模物件で、当初のプランでは足場だけで見積の大きな部分を占めていたケースがありました。建物の形状を一枚一枚見ていくと、「全面に足場を組まなくても直せる面」がかなりある。そこをロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が壁面を昇降し、足場を組まずに施工する無足場の工法)に置き換えることで、足場の範囲を絞り込めた。結果として、居住者の生活への影響も、工事の全体像も、ずいぶん軽くなりました。
私はこれを、「工法でコストを下げる」と呼んでいます。材料や職人の腕を削るのではなく、建物の形と傷み方に合わせて、足場のかけ方そのものを設計し直す。ここに、小規模マンションが生き残るための余地が、まだ十分に残っているのです。詳しくはロープアクセス工法のご紹介もあわせてご覧ください。
足場・ロープアクセス・ハイブリッド——3つの工法をどう選ぶか
「工法でコストを下げる」と言われても、具体的にどう違うのか、イメージしにくいかもしれません。私がご相談の場で必ずお見せするのが、次のような比較の考え方です。大切なのは、どれが一番良いかではなく、「あなたの建物にはどれが合うか」です。
| 比較の観点 | 全面足場工法 | ロープアクセス工法(無足場) | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|---|
| 向いている建物 | 全面を大きく直す・低中層で複雑な形状 | 高層・足場を組みにくい・部分補修が中心 | 大規模で、面ごとに傷み方が違う建物 |
| 足場の仮設費 | 全面にかかる(固定費が重い) | 原則かからない | 必要な面だけに絞れる |
| 工期 | 仮設・解体の分だけ長くなりがち | 部分作業なら短縮しやすい | 全面足場より短くできる場合が多い |
| 居住者の生活影響 | 窓が長期間ふさがれる・防犯面の不安 | 影響が短く・限定的 | 足場部分のみ影響 |
| 注意点 | 費用と工期がかさみやすい | 大面積・重作業には不向きなことも | 設計・工程管理に経験が要る |
この表を見て、「うちは高層で足場が組みにくいから、ロープアクセス中心が合いそうだ」「全面を一気に直したいから足場が向くかもしれない」と、ざっくりでも当たりをつけていただくだけで十分です。実際には、外壁の傷み具合、タイルの浮き、シーリング(外壁の目地を埋める防水材)の劣化などを一枚一枚見て、面ごとに最適な工法を組み合わせていきます。私が「3つの工法を持っている意味」とよく口にするのは、選択肢が多いほど、ムダな足場を減らし、居住者の負担を軽くできるからです。1つの工法しか持たない会社では、どうしても「自分たちのできるやり方」に建物を合わせることになりがちです。私は逆に、建物にやり方を合わせたいのです。
打ち手——管理会社に依存せず、修繕コストを“工法”で守る
では、管理会社の選別が進む時代に、収益物件オーナーや小規模マンションの管理組合は、具体的に何をすればいいのか。私がいつもお伝えしている3つの視点を挙げます。
打ち手1:足場を「かける・かけない」から設計し直す
まず、次の大規模修繕では、足場ありきの見積を鵜呑みにしないことです。建物の形状によっては、全面足場が最適な場合もあれば、ロープアクセスや、足場とロープを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法のほうが、コストと工期のバランスが良い場合もあります。当社は、この3つの工法から建物にとって最適なものをご提案できる、日本でも数少ない会社です。「足場を減らせるか」は、実物を見て初めて判断できます。だからこそ、最初の調査が肝心です。
一点だけ、誤解のないように申し上げます。ロープアクセスは「何でも足場より安い魔法」ではありません。全面的に大きく手を入れる必要がある建物や、作業員が同時に多く入る大規模な現場では、足場のほうが効率的なこともあります。大切なのは「工法ありき」で決めないこと。傷んでいる面はどこか、生活への影響をどこまで抑えたいか、工期はどれくらい許容できるか——この条件を並べたうえで、足場・ロープ・ハイブリッドの中から一番合うものを選ぶ。その判断材料を、私たちは無料の建物調査でお出しするようにしています。
打ち手2:相見積もりを“工法違い”で取る
相見積もりというと、同じ足場工事で2〜3社に価格を出させることを想像しがちです。もちろんそれも有効ですが、私がおすすめしたいのは「工法違いの見積もり」を取ることです。全面足場のプランと、無足場・ハイブリッドのプランを並べて比べれば、「自分の建物では、どの直し方が一番割に合うのか」が数字で見えてきます。判断の軸が、価格だけから「価格×工期×生活への影響」に広がります。大規模修繕全体の考え方は大規模修繕工事のご紹介でも整理しています。
このとき、ひとつだけ気をつけていただきたいことがあります。見積書の「一式」という言葉です。項目が「外壁補修 一式」「防水 一式」とだけ書かれていると、何にいくらかかっているのかが分かりません。私はいつも理事長さまに、「一式の中身を、面積や数量で出してもらってください」とお伝えしています。足場の面積、塗る面積、補修する箇所の数——ここが数量で書かれている見積書は、それだけで信頼度が上がります。逆に、そこを濁す見積もりは、あとで追加費用が膨らみやすい。工法を比べる前に、まず「比べられる形の見積書」をもらうこと。これが、限られた積立金を守る最初の一歩です。
打ち手3:小規模ほど「早め・小分け」の相談を
大きな組織を持たない小規模マンションほど、直前に慌てるほど不利になります。積立金の見通し、劣化の進み具合、次の工事の時期。この3つを、総会の1年前くらいから少しずつ整理しておくだけで、いざというときの選択肢がまるで変わります。管理会社に頼れないなら、工事の相談先を早めに複数持っておく。これは、管理難民時代の“保険”のようなものだと私は考えています。
打ち手4:専門職のネットワークで「高品質×低価格」を確保する
小規模マンションのもうひとつの悩みは、「小さな工事だと、良い職人がなかなかつかまらない」ことです。塗装、防水、タイル、シーリング、電気、看板——大規模修繕はいくつもの専門工事の集まりですが、規模が小さいと、それぞれの分野に一流の職人を手配しづらい。ここが、じつは仕上がりの差になって出ます。
当社は、ロープアクセス工法として日本で初めてフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。だからこそ、小規模な物件でも、分野ごとに“その道のプロ”を組み合わせて、高い品質と抑えたコストの両立を目指せます。私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。「安かろう悪かろう」でも「高品質だから高い」でもない、その真ん中を狙えるのが、専門職ネットワークの強みだと考えています。
よくあるご質問
Q. 管理会社に解約を告げられました。まず何をすべきですか。
A. あわてて次の1社に飛びつく前に、「日々の管理」と「次の大規模修繕」を切り分けて考えることをおすすめします。管理の引き受け手を探すのと並行して、直近の大きな出費である修繕の見通しを立てておくと、交渉の土台ができます。相談だけでも、状況整理のお手伝いはできます。
Q. うちは30戸未満の小規模ですが、ロープアクセスは割高になりませんか。
A. 一概には言えません。むしろ小規模ほど、足場の固定費が1戸あたりで重くなりやすいため、足場を減らせる工法との相性が良い場合があります。建物の形状と傷み方によって答えは変わりますので、実物を見てのご判断になります。
Q. 積立金がかなり不足しています。工事は先送りすべきでしょうか。
A. 傷みを放置すると、後の工事がかえって高くつくことがあります。先送りの前に、「工法を変えれば、いまの予算でどこまでできるか」を一度確かめてみる価値はあります。何を優先し、何を次回に回すか——その順番を一緒に整理するだけでも、無駄な出費は避けやすくなります。
Q. 自主管理に切り替えても、大規模修繕は乗り切れますか。
A. 乗り切っている組合はあります。ただし、日々の管理と違い、大規模修繕は金額も専門性も一段大きくなります。会計や点検は自主管理でこなしつつ、修繕のような大きな工事だけは、工法や見積もりを客観的に見てくれる工事会社や専門家に早めに相談する——この“いいとこ取り”が現実的だと、私は考えています。
Q. 相見積もりを取ると、いまの管理会社との関係が悪くなりませんか。
A. 相見積もりは、管理組合の当然の権利です。むしろ、複数の工法・価格を比較した記録は、総会で居住者に説明する際の強い裏付けになります。角が立たない進め方も含めて、経験のある工事会社なら心得ています。まずは情報を集めることを優先されて構いません。
まとめ——「切り捨てられる側」から「選ぶ側」へ
管理会社が小規模マンションを選別し始めた、というニュースは、たしかに気の重い話です。けれど私は、これを「受け身で怯える話」で終わらせたくありません。
管理を誰に頼むかは、相手のあることです。しかし、一番大きな出費である大規模修繕を「どの工法で、いくらで直すか」は、あなた自身が主導権を握れる領域です。足場を設計し直し、工法違いで見積もりを比べ、早めに相談先を持つ。この3つを押さえるだけで、「切り捨てられる側」から「工事を選ぶ側」へと、立ち位置は変えられます。小さな物件だからと諦める必要はありません。むしろ小さいからこそ、動きの速さと工夫で、大きな物件に負けない賢い選択ができるのです。
これは、私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。管理会社に見放されそうな小さな物件こそ、工法の工夫で守れる余地が大きい。もし、次の修繕のことで少しでも不安があれば、お問合せフォームから、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 日本経済新聞「マンション不都合な真実 あえぐ管理組合(上)切り捨てられる小型物件」(2026年7月20日)
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果(とりまとめ)」
- 国土交通省「マンションに関する統計・データ等」
- 国土交通省「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則の一部を改正する省令の公布について」
- 国土交通省「マンション関係法令」


