「築古のビルを民泊や宿泊用途で回せば、賃貸より利回りが上がるらしい」。インバウンドが戻り、宿泊需要が高止まりするなかで、そんな話に心が動いた収益不動産オーナーさんは少なくないと思います。けれど2026年6月、その追い風に冷や水を浴びせるようなニュースが流れました。日本経済新聞が「『グレーゾーン民泊』に国がメス 投資うまみで違法建築横行」と報じ、国が宿泊用途の建物に対する建築基準法適合の確認を、これまでより厳しく求める方向に動き出したのです。
私は東京・関東を中心に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕に長く携わってきました。足場を架ける従来工法だけでなく、ロープアクセス(無足場工法)、そして両者を組み合わせるハイブリッド工法まで、建物ごとに最適な工法を提案することを仕事の柱にしています。だからこそ今回の動きは、単なる「民泊規制の話」ではなく、収益不動産を持つすべての方にとっての「建物の安全と資産価値の話」だと受け止めています。
この記事では、まず何が起きたのかを正確に整理し、そのうえで宿泊用途を考えるオーナーさんが直面する具体的なリスク、そして「建築基準法への適合」と「資産価値の維持」を、大規模修繕という機会にどうまとめて解決していくかを、現場の目線でお伝えします。煽るつもりはありません。淡々と、事実と根拠で。なお、本記事は制度の解説であって、個別の法的助言ではありません。最終的な判断は、必ず所管行政庁や専門家にご確認ください。
何が起きたのか——「グレーゾーン民泊」に国がメスを入れる方針
旅館業の許可に「建築士の適合確認」が求められる方向へ
2026年6月、日本経済新聞は「『グレーゾーン民泊』に国がメス 投資うまみで違法建築横行」と題し、宿泊ビジネスをめぐる規制強化の動きを報じました。報道によれば、国土交通省と厚生労働省は2026年5月、自治体に対して通知を出し、宿泊事業の「適正化」を促しています。
ポイントは、床面積が200平方メートル以下の建築物が旅館業法上の営業許可を取得する際に、建築士による建築基準法への適合を示す書類の提出を求める、という点です。これまで小規模な物件では、こうした確認が必須とされていませんでした。つまり「小さい建物だから細かいチェックは入らない」という、これまでの“すき間”が埋められていく方向にあるということです。
報道ではあわせて、こうした規制強化が金融機関の融資判断にも波及しうると指摘されています。グレーゾーンで運営されてきた宿泊物件は、建築基準法をめぐる扱いが厳しくなることで、金融機関からの評価が下がり、金利の引き上げや追加担保の要求、場合によっては融資そのものが受けられなくなる可能性がある、というわけです。
違法民泊は予約サイトからも排除されていく
宿泊をめぐる「適正化」の流れは、今回の通知だけではありません。報道ベースでは、観光庁が2026年度に、違法な民泊を予約サイトから排除するためのシステム運用を進めるとされています。届出や許可のない物件、あるいは法令に適合していない物件は、そもそも集客の入り口である予約プラットフォームから締め出されていく——そういう時代に入りつつあるということです。
「行政から指導が来なければ大丈夫」「指摘されてから直せばいい」という発想は、もう通用しにくくなっています。集客チャネル、金融機関、行政の三方向から、適法性を問われる構造が整いつつあるのです。
なぜ「グレーゾーン」が生まれるのか——3つの法律の交差点
宿泊用途の物件で「グレーゾーン」が生まれてしまう背景には、関係する法律が複数あり、それぞれの線引きが分かりにくいという事情があります。ここを整理しておくと、自分の物件がどの土俵に立っているのかが見えてきます。
1.住宅宿泊事業法(民泊新法)——年間180日という上限
いわゆる民泊の代表的な枠組みが、住宅宿泊事業法、通称「民泊新法」です。観光庁の公式サイトによれば、この法律は平成29年(2017年)6月に成立し、平成30年(2018年)6月に施行されました。最大の特徴は、人を宿泊させる日数の上限が年間180日とされている点です。算定期間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までと定められています。
民泊新法では、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」という3つのプレーヤーが位置づけられ、それぞれに役割と義務が課されています。事業を始めるには都道府県知事等への届出が必要で、家主が不在となる物件では、管理業務を登録された住宅宿泊管理業者に委託することが義務づけられています。「届出さえすれば自由」ではなく、衛生確保、騒音防止の説明、近隣からの苦情対応、宿泊者名簿の作成・備付けといった義務がついてくる、という点は押さえておきたいところです。
2.旅館業法——180日を超えて回すなら原則「許可」
「年180日では物足りない、もっと稼働させたい」となると、土俵は旅館業法に移ります。原則として、宿泊料を受けて反復継続的に人を宿泊させる事業は、旅館業法に基づく許可が必要です。180日を超えて宿泊事業を行うのであれば、民泊新法の届出ではなく、旅館業(簡易宿所や旅館・ホテル営業など)の許可が前提になります。
ここで効いてくるのが、今回報じられた「200平方メートル以下でも建築士の適合確認書類を求める」という運用の厳格化です。旅館業の許可を取る段階で、建物が建築基準法に適合しているかどうかが、これまで以上にはっきりと問われるようになる、ということです。
3.建築基準法——「用途」と「安全」を担保する土台
そして三つ目が建築基準法です。住宅として建てられた建物を、不特定多数が泊まる宿泊施設として使う場合、建物の「用途」が変わります。一定規模を超える用途変更には、建築確認の手続きが必要になりますし、宿泊施設として求められる防火・避難の基準(非常用照明、排煙、防火区画、避難経路の確保など)を満たさなければなりません。
「住宅としては合法だった建物」が、「宿泊施設としては不適合」になる——この“ねじれ”こそが、グレーゾーンの正体です。住宅としての見た目は何も変わらないのに、使い方を変えた瞬間に求められる基準が跳ね上がる。ここを軽く見たまま運営を始めてしまうと、後から大きな手戻りが発生します。
2025年4月の建築基準法改正が、じわりと効いてくる
宿泊用途を考えるうえで見落とせないのが、2025年4月に施行された建築基準法の改正です。報道や専門解説によれば、この改正で、これまで「4号特例」として建築確認の審査の一部が省略されていた小規模な木造建築物などの扱いが見直されました。従来の4号建築物は「新2号建築物」「新3号建築物」に振り分けられ、延べ面積200平方メートルを超えるものや階数が2以上のものは、原則として建築確認の審査対象が広がっています。
この改正は新築だけの話ではありません。既存の建物を増改築したり、用途を変更したりする場面でも、求められる図書や審査の範囲が変わってきます。つまり、「築古の建物を宿泊用途に転用しよう」と考えたとき、以前なら簡略化されていた確認手続きが、今はより本格的に問われる可能性があるということです。
宿泊事業の入り口(旅館業許可・民泊届出)でも、建物の改修・用途変更の場面でも、「建築基準法にきちんと適合しているか」を証明する必要性が、確実に高まっている。これが2026年6月時点の、収益不動産オーナーを取り巻く制度環境です。
収益不動産オーナーが直面する3つのリスク
では、こうした流れのなかで宿泊用途を検討する、あるいはすでに運営しているオーナーさんは、具体的に何を恐れるべきなのでしょうか。私が現場で感じている「効いてくるリスク」を、3つに整理します。
リスク1.行政指導・営業停止のリスク
最も直接的なのが、行政からの指導や是正命令、最悪の場合の営業停止です。建築基準法に不適合のまま宿泊事業を続けていれば、是正を求められ、改修が完了するまで営業ができないという事態も起こりえます。稼働を前提に資金計画を立てている物件で営業が止まれば、ローンの返済原資が一気に細ります。これは収益不動産にとって致命傷になりかねません。
リスク2.金融機関の評価低下と融資のリスク
前述のとおり、報道では規制強化が金融機関の評価に波及しうると指摘されています。適法性に疑義がある物件は、担保価値が割り引かれ、金利が上がったり、追加の担保を求められたり、借り換え・新規融資が難しくなったりする可能性があります。収益不動産の出口(売却)を考えるときにも、「適法に運営できる建物か」は買い手と金融機関が必ず見るポイントです。適合性は、もはや資産価値そのものに直結しています。
リスク3.第三者事故と賠償のリスク
そして忘れてはならないのが、宿泊客や通行人の安全に関わるリスクです。防火・避難の基準を満たさない建物で万一の火災や事故が起きれば、人命に関わるだけでなく、オーナーが重い賠償責任を負う可能性があります。外壁タイルやモルタルの剥落、手すりやバルコニーの劣化なども同じです。不特定多数が出入りする宿泊施設は、自分や家族だけが使う建物よりも、はるかに高い安全水準が求められる——この感覚は、収益化を考える前提として持っておくべきだと思います。
宿泊用途と「建物の安全」は地続き——大規模修繕の出番
ここまで読んで、「では建築基準法に適合させ、安全も確保するには、結局どうすればいいのか」と感じた方も多いはずです。私がお伝えしたいのは、宿泊用途への適合と、建物そのものの安全・資産価値の維持は、実はバラバラの工事ではなく、地続きだということです。そして、それらをまとめて解決する最大の機会こそが、大規模修繕です。
宿泊施設として問われる安全基準の多くは、建物の外皮(外壁・屋上・バルコニー)や避難経路と密接に関わります。たとえば外壁タイルの浮きや剥落は、通行人や宿泊客への落下事故のリスクであり、外壁の防水性能の低下は、雨漏りによる内装劣化や避難経路の不具合にもつながります。屋上防水の劣化を放置すれば、最上階の居室や共用部に被害が及びます。これらはすべて、大規模修繕で計画的に手を入れるべき部位です。
逆に言えば、宿泊用途を見据えるなら、行き当たりばったりの補修ではなく、「建物全体をどう適法・安全な状態に保ち、長期にわたって稼ぐ資産にしていくか」という長期修繕計画の視点で考えることが、遠回りのようで一番の近道になります。修繕積立金が話題になる今、計画的な備えの重要性は、分譲マンションだけでなく収益物件にも等しく当てはまります。
宿泊用途で実際につまずきやすい「不適合パターン」
制度の話だけだとイメージしにくいので、私が現場で見聞きしてきた、宿泊用途への転用でつまずきやすい典型的なパターンを挙げておきます。自分の物件に当てはまるものがないか、チェックリスト代わりに読んでみてください。
ひとつ目は、用途変更の手続きをしないまま運営を始めてしまうケースです。住宅や事務所として建てられた建物を、確認手続きを経ずに宿泊施設として使い始める。見た目は何も変わらないので問題が表に出にくいのですが、許可申請や行政の調査の段階で「用途が違う」と指摘されると、是正までの間、営業が止まってしまいます。
ふたつ目は、防火・避難の設備が宿泊施設の基準を満たしていないケースです。不特定多数が泊まる施設には、非常用照明、排煙のための窓や設備、火災を一定範囲で食い止める防火区画、そして安全に逃げられる避難経路の確保が求められます。住宅としては不要だったこれらの基準が、宿泊用途では一気に問われます。とくに、内装をおしゃれにリノベーションすることばかりに目が向き、防火・避難という地味な部分が後回しになっている物件は要注意です。
三つ目は、いわゆる「既存不適格」の扱いを誤解しているケースです。建てた当時は適法でも、その後の法改正で現在の基準に合わなくなっている建物は少なくありません。住宅としてそのまま使う分には問題なくても、用途を変えたり大きく改修したりするタイミングで、現行基準への適合を求められることがあります。「昔からあるから大丈夫」という思い込みは、宿泊用途では通用しないことがあるのです。
四つ目は、外壁や屋上といった建物外皮の劣化を「内装ほど気にしていない」ケースです。宿泊客は室内のきれいさには敏感ですが、外壁タイルの浮きや屋上防水の劣化は目に見えにくく、つい後回しになります。しかし、落下事故や雨漏りは、内装の古さよりはるかに重大なトラブルにつながります。安全と資産価値という観点では、外皮こそ優先して点検すべき部位です。
これらはいずれも、「気づいたときには手戻りが大きい」という共通点があります。だからこそ、運営を始める前、あるいは大規模修繕を計画する段階で、まとめて洗い出しておくことが大切なのです。
大規模修繕の「工法選択」が、コストと稼働を左右する
大規模修繕というと、「建物全体に足場を架けて、数か月かけて行う大がかりな工事」というイメージが強いと思います。もちろんそれが最適なケースも多いのですが、収益不動産、とりわけ宿泊稼働中の物件では、「いかに稼働を止めず、コストを抑えて、必要な部位を直すか」が極めて重要になります。ここで効いてくるのが、工法の選択肢を複数持っているかどうかです。
私たちは、建物の特性に応じて、大きく3つの工法から最適な方法をご提案しています。それぞれの特徴を整理すると、次のとおりです。
| 工法 | 特徴 | 向いている建物・場面 |
|---|---|---|
| 通常足場工法 | 建物の周囲に仮設足場を架けて施工する従来型。広い面を一度に、安定して施工できる。 | 中低層、複雑な形状、外壁全面を一括で改修したい場合 |
| ロープアクセス工法(無足場) | 産業用ロープで作業員が懸垂し、足場を架けずに施工する。足場費を抑え、工期を短縮しやすく、居住者・宿泊客の生活や動線への影響を最小化できる。 | 高層、足場の架設が難しい立地、部分補修、コストと稼働を最重視する物件 |
| ハイブリッド工法 | 足場とロープアクセスを部位ごとに使い分ける。総合的にコストと工期を最適化できる。 | 大規模・複雑な物件で、全体最適を図りたい場合 |
足場を組む従来工法は、外壁全面をまとめて直すような大がかりな改修に強い一方、足場の設置・撤去に費用と時間がかかり、足場が建物を覆う期間は景観や採光、出入りにも影響します。宿泊稼働中の物件では、これが集客や満足度の低下につながることもあります。
その点、ロープアクセス工法は足場を架けないため、足場の架設・撤去にかかるコストと工期を抑えられ、建物の利用者への影響を小さくできるのが強みです。とくに、外壁の一部補修や、高層部・足場をかけにくい立地での作業では、その効果が大きく出ます。一方で、広い面を一気に施工する場面では足場のほうが効率的なこともあり、万能ではありません。
だからこそ、「足場ありき」でも「ロープありき」でもなく、建物の形状・立地・劣化状況・稼働状況を見て、足場・ロープ・ハイブリッドの3つから本当に最適な工法を選べることが、結果としてオーナーさんのコストと稼働を守ることにつながります。複数の工法を一社の中で比較・提案できる会社は、実はそれほど多くありません。見積もりを取る際は、「御社で対応できる工法は何種類ありますか」と一言聞いてみると、その会社の引き出しの多さが見えてきます。
ロープアクセスが「稼働を止めない修繕」を可能にする理由
宿泊稼働中の物件にとって、工事期間中に営業を止めずに済むかどうかは、収益を大きく左右します。ここで、私たちが力を入れているロープアクセス工法(無足場工法)の強みを、もう少し具体的にお伝えします。
足場を架ける従来工法では、足場の架設と撤去そのものに相応の費用と日数がかかります。さらに、足場が建物を覆っている間は、外観が損なわれ、窓からの採光が遮られ、足場を伝った侵入を防ぐための防犯対策も必要になります。宿泊施設では、こうした要素が宿泊客の満足度や予約数に直接響くことがあります。
ロープアクセス工法は、産業用ロープで作業員が建物の上部から懸垂しながら作業するため、足場を架けません。その結果、足場費がかからず、架設・撤去の工期も不要になります。建物の利用者から見ても、生活動線や出入り口がふさがれにくく、日常への影響を小さく抑えられます。とくに、外壁の一部にだけ劣化が出ているような部分補修や、高層部・狭小地で足場をかけにくい立地では、コストと工期の両面で効果が大きく出ます。
もちろん、外壁全面を一度に塗り替えるような大規模な改修では、足場のほうが効率的なこともあります。だからこそ、足場・ロープ・ハイブリッドという3つの選択肢を持ち、建物ごとに使い分けられることが重要なのです。「稼働を止めたくない」「足場費を抑えたい」というニーズに対して、ロープアクセスやハイブリッドという答えを持っているかどうかで、提案の幅はまったく変わってきます。
高品質と低価格を両立させる「専門職ネットワーク」という選択肢
大規模修繕は、塗装、防水、タイル補修、電気、看板など、複数の専門工事の集合体です。これらをどう束ねるかで、品質とコストは大きく変わります。私たちは、各分野の専門職がネットワークとして連携する仕組みを築くことで、それぞれの工事を専門性の高い職人が担いながら、中間マージンを抑えて高品質と低価格を両立させることを目指しています。
ロープアクセスの分野では、専門職が加盟するフランチャイズの仕組みを通じて、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の技術を、地域を越えて提供できる体制づくりも進めています。一社ですべてを抱え込むのではなく、得意分野を持つ専門職が連携することで、難易度の高い建物にも、適正な価格で品質を担保しながら対応できる——これが、これからの大規模修繕に求められる体制だと考えています。
また、建設業界全体の底上げという観点から、私たちは一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)の運営にも関わっています。建設業の経営支援に役立つ情報発信、オンラインセミナー、交流会、事業者同士のビジネスマッチングなどを通じて、業界全体の技術と経営の質を高めていく取り組みです。オーナーさんにとっては、「きちんとした技術とネットワークを持つ会社かどうか」を見極めるひとつの目安にしていただければと思います。
オーナーが今すぐできる5つのチェック
最後に、宿泊用途を検討している、あるいはすでに運営している収益不動産オーナーさんが、今すぐ着手できる自衛策を5つにまとめます。どれも、お金をかける前にできる「確認」が中心です。
第一に、自分の物件が今どの土俵に立っているのかを整理することです。民泊新法(年180日)なのか、旅館業の許可が必要な水準で回しているのか。届出や許可の内容と、実際の運営実態が一致しているかを、まず棚卸ししてください。
第二に、建築基準法への適合状況を確認することです。住宅として建てられた建物を宿泊用途で使っている場合、用途変更や防火・避難の基準を満たしているか。これは自己判断が難しい領域なので、建築士など専門家の目を入れるのが安全です。今回の運用厳格化で、許可・更新の場面で適合確認を求められる可能性が高まっています。
第三に、外壁・屋上・バルコニーなど、建物外皮の劣化状況を点検することです。タイルの浮きや剥落、防水の劣化、手すりの腐食などは、安全と資産価値に直結します。落下事故のリスクがある部位は、優先して手を打つべきです。
第四に、長期修繕計画の有無と中身を見直すことです。場当たり的な補修を繰り返すより、いつ・どこを・どの工法で・いくらで直すかを計画として持っておくほうが、トータルコストは下がり、金融機関や買い手への説明力も上がります。
第五に、大規模修繕を検討する段階で、複数の工法を提案できる会社に相談することです。足場工法しか選択肢がない会社に依頼すれば、足場ありきの見積もりになります。足場・ロープアクセス・ハイブリッドを比較したうえで、稼働とコストの両面から最適解を出せるかどうか。ここで、最終的な負担額が大きく変わってきます。
まとめ——「適法であること」が、これからの資産価値を決める
2026年6月の「グレーゾーン民泊」報道は、宿泊ビジネスの一部の話に見えて、実は収益不動産を持つすべての方への警鐘だと、私は受け止めています。行政・金融・集客プラットフォームの三方向から、「その建物は適法か、安全か」が問われる時代に入りました。建築基準法への適合は、もはやコストではなく、資産価値そのものを守るための投資です。
そして、その適合と安全を、計画的に・コストを抑えて・稼働を止めずに実現する最大の機会が、大規模修繕です。足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から建物にとって本当に最適な方法を選べば、同じ「直す」でも、かかる費用と建物利用者への影響は大きく変わります。
「うちの建物は今のままで大丈夫だろうか」。少しでもそう感じたら、まずは現状を点検し、長期の視点で計画を立てることから始めてみてください。建物を“稼ぐ資産”として長く守っていくために、私たちにできるお手伝いがあれば、いつでもご相談いただければと思います。
※本記事は2026年6月時点の報道および公開情報に基づく解説であり、個別の法的・税務的助言ではありません。制度や運用は変更される場合があります。実際の届出・許可・改修にあたっては、必ず所管の行政庁および建築士・専門家にご確認ください。
出典・参考
- 日本経済新聞「『グレーゾーン民泊』に国がメス 投資うまみで違法建築横行」(2026年6月)
- 観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」/住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?(mlit.go.jp)
- 国土交通省・厚生労働省 自治体向け通知(2026年5月/報道による)
- 建築基準法改正(2025年4月施行・4号特例の見直し)に関する各種解説


