
正直に申し上げます。7月から8月にかけて、私が現場で一番神経を使うのは、外壁でも防水でもありません。職人の体です。
株式会社明誠で大規模修繕の現場を預かってきて、猛暑の夏は年々「別物」になっています。数年前まで「暑いですね」で済んでいた気温が、今は「作業を止めるかどうか」を毎朝判断しなければならない水準になりました。そして2025年6月、この判断が現場の“気合い”や“経験則”ではなく、法律で定められた義務に変わりました。
この記事は、職人向けの安全講習ではありません。マンションの管理組合理事長さま、ビルやホテルを持つオーナーさま——つまり工事を発注する側の方に向けて書いています。「なぜ発注者が現場の熱中症を気にする必要があるのか」。ここには、工期・品質・費用、そして万一の責任まで、あなたの資産に直結する話が詰まっています。ここからが本題です。
2025年6月、現場のルールが変わった——熱中症対策の「義務化」
まず押さえていただきたい事実があります。2025年(令和7年)6月1日、改正された労働安全衛生規則(労働者の安全と健康を守るための国のルール)が施行され、職場での熱中症対策が「罰則付きで義務化」されました。これまで努力義務、つまり「やった方がよい」だった対策が、「やらなければ罰せられる」義務に格上げされたのです(出典:厚生労働省「職場における熱中症予防対策」)。
対象となるのは、暑さ指数(WBGT)が28以上、または気温が31以上の環境で、連続1時間以上、あるいは1日あたり4時間を超えて行われる作業です。夏場の外壁塗装や防水、タイル補修といった大規模修繕の作業は、ほぼこの条件に当てはまります。屋外の直射日光の下、しかも動きの多い肉体労働ですから、当然です。
義務化された内容は、大きく2つに整理できます。ひとつは、熱中症のおそれがある作業者を早期に見つけるための「報告体制」を整えて、現場の全員に周知しておくこと。もうひとつは、実際に具合が悪くなった人が出たときに、重篤化を防ぐための「対応手順」——作業からの離脱、体を冷やす措置、必要に応じた医療機関への搬送——をあらかじめ決めて、これも周知しておくことです。
罰則も明確です。これらを怠った場合、6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金が科され得ます。私はこれを、脅しの数字として受け取っていません。国が「人が死んでいるから、もう精神論ではやらせない」と腹を決めた、その本気度の表れだと受け止めています。
数字で見る現実——なぜ国はここまで踏み込んだのか
制度の背景には、看過できない数字があります。厚生労働省の確定値によると、令和6年(2024年)に職場での熱中症で亡くなったり、4日以上仕事を休んだりした人(死傷者)は1,257人。前年より151人、約14%も増えました。そのうち亡くなった方は31人にのぼります(出典:厚生労働省「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」)。
そして、この死傷者の約4割が建設業と製造業で発生しています。死亡災害に絞ると、建設業が最も多い10人。私たちの業界が、残念ながら「熱中症で人が亡くなりやすい業界」の筆頭なのです。
もうひとつ、私が現場の人間として重く受け止めているのが、死亡事例の「中身」です。厚生労働省の分析では、亡くなった多くのケースで、すでに重篤な状態になってから発見された、あるいは医療機関に搬送されなかった、といった「初期対応の遅れ」が見られたとされています。
つまり、暑さそのものだけが人を倒すのではありません。「あいつ、ちょっと休めば戻るだろう」という思い込み、報告のためらい、判断の遅れ——この“空白の30分”が、取り返しのつかない結果を招いています。義務化された「報告体制」と「対応手順」は、まさにこの空白を埋めるための仕組みなのです。
WBGT(暑さ指数)とは何か——「気温」ではなく「危険度」
ここで、繰り返し出てくる「WBGT」という言葉を、素人向けにかみ砕いておきます。WBGT(暑さ指数)は、気温だけでなく、湿度と、地面やコンクリートからの照り返し(輻射熱)を組み合わせて、人体が受ける暑さの危険度を数値化したものです。単位は気温と同じ「度」で表しますが、天気予報の気温とは別物だと考えてください。
なぜ気温だけでは足りないのか。私の経験上、これは湿度の問題です。人間は汗が蒸発するときに体を冷やしますが、湿度が高いと汗が乾かず、体温が下がりません。同じ32でも、カラッと乾いた日と、雨上がりで蒸す日とでは、現場の危険度がまるで違います。さらにマンションの外壁面は、日中ずっと日を浴びたコンクリートやタイルが「巨大な暖房器具」のように熱を放ちます。足場の中は、外気温より数度高くなることも珍しくありません。
だからこそ、現場では毎朝、その日その場所のWBGTを実測して作業計画を組みます。環境省と気象庁は「熱中症予防情報サイト」で地域ごとの暑さ指数を公表しており、私たちもこれを日々確認しています(出典:環境省・気象庁「熱中症予防情報サイト」)。「暑いから気をつけよう」ではなく、「今日は基準を超えているから、この作業は午前中に前倒しし、午後は別工程に振り替える」——そういう具体的な段取りに落とし込むための数字です。
環境省の区分では、WBGTがおおむね25以上で「警戒」、28以上で「厳重警戒」、31以上で「危険」とされ、31以上では原則として運動や激しい作業を中止すべき水準とされています。私たちの現場に置き換えると、28を超えたあたりから休憩の取り方や作業配置を組み替え始め、31に近づけば作業内容そのものを見直す、というのが実務の感覚です。同じ「暑い日」でも、この数字がひとつ違うだけで、現場の段取りはまるで変わります。
熱中症の危険サイン——現場で見逃してはいけない段階
発注者の方にも、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。熱中症は、いきなり倒れる病気ではありません。段階を追って進みます。この段階を早く捉えられるかどうかが、生死を分けます。
初期は、めまいや立ちくらみ、こむら返りのような筋肉のつり、大量の発汗です。この段階で気づいて涼しい場所に移し、水分と塩分を取れば、多くは回復します。次の段階になると、頭痛や吐き気、体がだるく力が入らない、集中力が落ちる、といった症状が出ます。ここまで来たら、本人の「大丈夫」を信じてはいけません。そして最も危険なのが、呼びかけへの反応がおかしい、まっすぐ歩けない、体温が異常に高い、汗が止まって皮膚が乾く——これは重症のサインで、ためらわず救急要請すべき状態です。
私が現場で怖いと感じるのは、真ん中の「だるさ」「判断力の低下」の段階です。本人は自分の異常に気づきにくく、周りも「疲れているだけ」と見過ごしがちだからです。高所やロープ上で判断力が落ちれば、熱中症そのものだけでなく、墜落や工具の落下といった二次災害にも直結します。だからこそ、義務化された「早期発見の報告体制」が、単なる書類仕事ではなく、命綱なのです。
現場で実際にやっている、猛暑期の具体策
では、明誠の現場で具体的に何をしているのか。抽象論では伝わらないので、実務の中身をお話しします。厚生労働省が展開する夏の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の考え方も踏まえた、私たちの標準的な段取りです。
まず作業計画です。WBGTの高い午後の時間帯に、負荷の重い作業を割り当てないよう工程を組みます。可能な作業は早朝や午前に前倒しし、日差しの強い時間帯は屋内側の作業や段取り替えに充てます。次に休憩。「1時間に1回」と決め打ちにするのではなく、暑さ指数が高い日はこまめに、そして長めに取ります。日陰やテント、送風機のある休憩場所を必ず確保します。
装備も年々変わりました。ファン付きの作業着(空調服)や、首元を冷やすクーリングアイテムは、もはや標準装備です。水分と塩分は「喉が渇く前に」を徹底し、経口補水液や塩分タブレットを現場に常備します。そして、私が最も重視しているのが「バディ制」です。職人を一人にせず、必ずお互いの様子を見合える体制にする。「顔色が悪いぞ」「今日は口数が少ないな」——この気づきは、機械には代えられません。
加えて、緊急時の手順を現場ごとに決めておきます。誰が救急車を呼ぶのか、最寄りの医療機関はどこか、体を冷やす道具はどこにあるか。これを朝礼で全員に共有します。義務化された「対応手順の整備・周知」とは、まさにこのことです。
発注者・管理組合にも関係がある——工期・品質・そして責任
さて、ここが発注する側の方にとって一番大事な部分です。「現場の安全は施工会社の責任でしょう」——確かに、直接の安全配慮義務を負うのは私たち施工会社です。ですが、猛暑対策は発注者にとっても、決して他人事ではありません。理由を3つに分けてお話しします。
第一に、工期です。熱中症対策が義務化された以上、危険な時間帯の作業を無理に押し込むことはできません。WBGTが基準を超える真夏日には、作業を中断したり、涼しい時間帯に振り替えたりする日が必ず出ます。これを見込まずに「とにかく早く終わらせて」と発注すると、無理な突貫工事になり、事故と手抜きの温床になります。国も、建設業法にもとづく「工期に関する基準」の中で、猛暑などで作業ができない日を織り込んだ、余裕のある工期設定を求めています(参考:国土交通省「建設工事における工期の適正化」)。
第二に、品質です。塗装も防水もシーリングも、材料には「気温何度以下で施工」といった適用条件があります。炎天下で急いで塗れば、乾燥が早すぎて密着不良を起こしたり、職人が朦朧としたまま作業して塗りムラや施工不良が出たりします。私が「夏場は工程に余裕を」とお願いするのは、遠回りに見えて、実は10年20年もつ仕上がりを守るためなのです。
第三に、責任と信頼です。あなたの建物の敷地で、あなたが発注した工事の最中に人が倒れれば、直接の法的責任がどこにあるかとは別に、管理組合や所有者としても心を痛める事態になります。居住者への説明、近隣への影響、報道リスク——資産価値を守るために始めた工事が、逆に評判を落とすことにもなりかねません。安全に配慮した施工会社を選ぶことは、あなた自身の資産と評判を守る投資でもあります。
酷暑の夏、修繕を「止めない」ための工法選択
では、暑いなら工事を秋まで全部やめればよいのか。そう単純にはいきません。雨漏りやタイルの浮き、シーリングの劣化は、待ってくれません。放置すれば夏の集中豪雨や台風で一気に悪化します。「安全のために止める」と「資産を守るために進める」を両立させる——ここに、私たちが3つの工法を持っていることの意味があります。
明誠は、通常の足場を組む工法、ロープアクセス工法(産業用ロープで宙吊りになって作業する無足場工法)、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物に最適なやり方を選べる、日本でも数少ない会社です。この選択肢が、猛暑期にこそ効いてきます。
たとえば足場は、いったん組めば天候に左右されにくく、広い面を安定して施工できる強みがあります。一方でロープアクセスは、必要な面だけを狙って短期間で作業できるため、「WBGTが上がる前の早朝に、この面だけ一気に終わらせる」といった機動的な段取りが組みやすい。足場を全面に架けず、危険度の高い作業を短時間で区切れるので、猛暑下の暴露時間そのものを減らせる場面があります。
もちろん、ロープアクセスが万能というわけではありません。作業量が多く連続した面や、重い資機材を長時間扱う工程では、足場の方が安全で効率的です。夏場の観点で3つの工法を整理すると、次のようになります。
| 観点 | 通常足場工法 | ロープアクセス工法(無足場) | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|---|
| 猛暑下の暴露時間 | 長くなりがち(架設・解体含む) | 必要な面を短時間で区切りやすい | 部位ごとに最適化できる |
| 適する作業 | 広い連続面・重量物・長工程 | 急所の先行補修・調査・部分補修 | 大規模で形状が複雑な建物 |
| 居住者への影響 | 全面を覆い通風・採光が落ちる | 全面足場を避けられる場面がある | 影響の大きい面だけ足場を絞れる |
| 工期の柔軟性 | 天候に強く安定 | 早朝前倒しなど機動的 | 両者の良いとこ取り |
だからこそ私は、建物の形状・劣化状況・季節を見て、足場とロープアクセスをワンセットで比較提案するようにしています。「夏はロープで急所だけ先に、涼しくなってから足場で全面を」——こうした工程設計は、3つの工法を自前で持っていないと描けません。どれか一つの工法しか扱えない会社は、どうしても自社の得意なやり方に寄せた提案になりがちです。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介もご覧ください。
私が猛暑の現場で必ず確認していること
ここで、少し現場の話をさせてください。数字だけでは伝わらない部分だからです。
数年前の8月、都内のあるマンションの外壁改修で、午後2時前後に若い職人の様子がおかしいことに、班長がいち早く気づきました。本人は「大丈夫です、続けられます」と言い張りました。現場では、この「大丈夫です」が一番怖い。私はすぐに作業を止めさせ、日陰で体を冷やし、水分と塩分を取らせて、少しでも回復が鈍ければ受診、という手順を踏みました。幸い大事には至りませんでしたが、あのとき「もう少しだから」と続けさせていたらと思うと、今でも背筋が寒くなります。
現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、防げたはずの事故です。だから私は、猛暑期の現場で必ずいくつかのことを確認します。その日のWBGTを実測しているか。休憩は「時間が来たら」ではなく「暑さ指数が高い日は前倒しで」取れているか。塩分と水分、体を冷やす設備、日陰の休憩場所が用意されているか。そして何より、「体調が悪い」と誰もが声を上げやすい空気が班にあるか。最後のひとつは設備では買えません。班長と職人の信頼関係が要ります。
これは私が現場で見てきた、嘘偽りのない実感です。義務化された報告体制も、突き詰めれば「言い出しやすさ」という人の問題に行き着きます。
「工期に余裕を」は、結局オーナーの得になる
ここで、発注者の方が抱きがちな不安に正面からお答えします。「猛暑で作業できない日を織り込むと、工期が延びて費用も上がるのではないか」。もっともなご心配です。
確かに、工期が延びれば足場のリース期間や仮設費が増える可能性はあります。ですが、私の経験上、本当に高くつくのは「無理な突貫工事」のほうです。炎天下で急いだ塗装が数年で膨れて塗り直し、乾燥不良の防水から雨漏りが再発——こうした手戻りは、当初の工事費を軽く上回る出費になります。しかも、やり直しの間じゅう、資産価値は目減りし続けます。
さらに、事故が起きれば工事は止まります。原因究明、行政への対応、居住者への説明——工期は延び、費用は膨らみ、何より現場の士気は地に落ちます。安全に配慮した余裕のある工程は、遠回りに見えて、トータルでは最も安く、最も確実に仕上がる道なのです。私が「工期に余裕を」と申し上げるのは、施工会社の都合ではなく、オーナーさまの財布と資産を守るための提案だと、正直に受け止めていただければと思います。
そして、費用を抑える工夫は工期以外にもあります。明誠は日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズ展開を進めており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。中間マージンを重ねず、必要な専門職を必要なだけ組み合わせられるため、高品質と低価格を両立しやすい体制です。「安全にお金をかけると高くなる」を、少しでも打ち消すための仕組みでもあります。
夏の工事だからこそ、居住者・利用者への配慮が効く
大規模修繕は、人が住み、働き、泊まっている建物で行うのが普通です。夏は特に、この「生活への影響」が大きくなります。ここを丁寧に設計できるかどうかも、発注先を選ぶ大切な物差しです。
夏は窓を開けて風を通したい季節です。ところが全面に足場とメッシュシートを張ると、通風も採光も落ち、室内が蒸します。エアコンの室外機の前に足場がかかれば、効きが悪くなることもあります。在宅時間の長い高齢の居住者や、小さなお子さんのいるご家庭にとっては、これは想像以上のストレスです。
ロープアクセスを併用すれば、全面足場を避けて、影響の大きい面や時間帯を絞れる場合があります。「南側の居室が集中する面は足場を最小限にし、必要な補修はロープで短期集中」——こうした設計は、住みながらの工事のつらさを和らげます。私はいつも理事長さまに、「工事の品質と同じくらい、住んでいる方の夏の暮らしを守ることが、合意形成の成否を分けます」とお伝えしています。居住者の不満が募れば、次の総会も、次の工事も進めにくくなるからです。
管理組合・オーナーが夏の発注前にチェックすべき5項目
最後に、発注する側の方が、夏場の大規模修繕を検討する際に確認していただきたいポイントを、5つにまとめます。理事会で1分、この話題を出していただくだけでも意味があります。
第一に、工期に猛暑の中断日が織り込まれているか。カツカツの日程を提示してくる会社より、「真夏は作業できない日が出る前提で組んでいます」と正直に言う会社を、私は信頼します。
第二に、熱中症対策の体制を具体的に説明できるか。WBGTの測定、休憩・水分・冷却の段取り、緊急時の連絡・搬送手順——ここを曖昧にせず答えられるかは、安全への本気度の試金石です。
第三に、季節と建物に合った工法を比較提案してくれるか。足場ありきでもロープありきでもなく、「なぜこの建物にこの工法か」を、費用と工期の両面で説明できるかを見てください。
第四に、居住者・利用者への配慮設計があるか。夏は窓を開けたい季節です。足場やメッシュシートで通風・採光がどう変わるか、洗濯物や在宅時間への影響をどう抑えるか。ロープアクセスなら全面足場を避けられる場面もあります。
第五に、見積書に安全対策の費用がきちんと計上されているか。極端に安い見積もりは、どこかにしわ寄せが行きます。その「どこか」が職人の安全であってはなりません。相見積もりを取る際も、金額の大小だけでなく、安全や工程の考え方まで含めて比べていただくと、本当に信頼できる一社が見えてきます。
この5項目は、専門知識がなくても確認できることばかりです。理事会や修繕委員会で、この記事を一枚プリントして配っていただくだけでも、議論の質はぐっと上がるはずです。安全に真剣な会社を選ぶことは、そのまま「長持ちする工事」を選ぶことにつながります。
よくある質問(FAQ)
Q. 熱中症対策の義務化で、工事費は上がるのですか。
A. 安全設備や休憩の段取りにコストがかかるのは事実です。ただし、事故による工事中断や手戻り、品質不良のやり直しに比べれば、はるかに小さな費用です。私は「安全は削るところではない」とお伝えしています。
Q. 夏を避けて、秋や春に工事すればよいのでは。
A. 劣化の進行度によります。緊急性の低い工事なら時期をずらす選択も有効ですが、雨漏りやタイル剥落のリスクがある場合は、夏の間に危険な箇所だけ先行して手当てし、本格施工を涼しい時期に回す、といった工程分割が現実的です。工法の使い分けで対応できます。
Q. ロープアクセスなら、真夏でも問題なく作業できますか。
A. ロープアクセスは機動的で暴露時間を抑えやすい工法ですが、宙吊り作業も当然、熱中症のリスクは負います。WBGTに応じた作業時間の管理は、足場でもロープでも同じく徹底します。「工法を選べば安全」ではなく、「工法を選んだ上で対策を徹底する」が正解です。
Q. 発注者として、施工会社の熱中症対策を確認する具体的な方法はありますか。
A. 見積もりや契約の段階で、「暑さ指数(WBGT)をどう管理していますか」「作業を中断する基準はありますか」「緊急時の連絡・搬送の手順は決まっていますか」と、三つ質問してみてください。すらすら具体的に答えられる会社は、日頃からやっている証拠です。逆に言葉に詰まるようなら、対策が形だけの可能性があります。難しい専門知識は要りません。この三つを聞くだけで、施工会社の姿勢はかなり見えてきます。
Q. 猛暑で近隣や居住者から工事の苦情が出ないか心配です。
A. 夏の工事は、騒音や振動に加えて、窓を開けにくい・室外機がふさがれるといった不満が出やすい時期です。だからこそ、着工前の丁寧な説明と、影響の大きい面や時間帯を絞る工程設計が効きます。ロープアクセスの併用で全面足場を避けられる場合もあります。私は、工事そのものと同じくらい、近隣・居住者への向き合い方を大切にしています。
出典・参考資料
- 厚生労働省「職場における熱中症予防対策/職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(改正労働安全衛生規則 2025年6月1日施行、令和6年確定値)
- 環境省・気象庁「熱中症予防情報サイト(暑さ指数 WBGT)」
- 国土交通省「建設工事における工期の適正化」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的判断を示すものではありません。制度の詳細・最新の運用は必ず上記の一次情報をご確認ください。数値は令和6年確定値(2025年5月公表)に基づきます。
猛暑は、これから毎年きつくなることはあっても、和らぐことはおそらくありません。だからこそ、暑さと上手に付き合いながら建物を守る知恵が、これまで以上に大切になります。8月までに動けるか、秋を待つべきか——建物の状態や劣化の進み具合によって、答えは一棟ごとに変わります。理事会やご自身の判断の前に、まずは一度、現地を見せてください。工事を急かすためではなく、安全と品質と資産価値のバランスをどう取るか、一緒に整理させていただきます。お問合せフォームから、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


