2026年8月16日 更新
「富士吉田市の分譲マンションで大規模修繕をするとき、市の補助金は使えるのか?」——この記事は、その問いに正面からお答えします。
先に結論を申し上げます。富士吉田市が2026年度(令和8年度)に公表している住まい系の支援制度のうち、分譲マンションの共用部大規模修繕そのものに直接お金が出る制度は、私が公開情報を確認した範囲では見当たりません。ただ、ここで話を終わらせてしまうのは、あまりにもったいない。富士吉田市にはアスベスト関連の補助制度という、マンション共用部にも接点があり得る制度が用意されています。そこに国の税制・認定制度・低利融資、そして工法の選択を重ねれば、実質的な負担は大きく変えられます。
私は株式会社明誠の本間と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年近く手がけ、足場工法とロープアクセス工法(ロープで吊り下がって施工する無足場工法)の両方を扱ってきました。富士吉田市の理事長さま・理事会の皆さまが総会の前に押さえておくべき論点を、公的な一次情報のリンク付きで整理します。
この記事の結論:富士吉田市の管理組合が握るべきは「四本柱+工法」
富士吉田市の分譲マンション管理組合が、2026年度に現実的に手を伸ばせる支援は、次の4つに集約されます。
- 富士吉田市のアスベスト関連補助制度(調査費は全額・限度額15万円、除去等は2/3・上限400万円)
- マンション管理計画認定制度(管理の質を国の基準で認定してもらう。融資・税制の入口になる)
- マンション長寿命化促進税制(大規模修繕の翌年度、建物の固定資産税が減額される)
- 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資/マンションすまい・る債(低利で借りる・有利に積む)
そして5つ目が、補助金ではありませんが効き目としては最も大きい工法の選択です。足場を全面に架けるのか、ロープアクセスで無足場にするのか、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法にするのか。ここで数百万円から千数百万円の差が生まれる現場を、私は何度も見てきました。
| 打ち手 | 種類 | 効き目の目安 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| アスベスト含有量調査の補助 | 市の補助 | 調査費の全額(限度額15万円) | 富士吉田市 都市政策課 |
| アスベスト除去等の補助 | 市の補助 | 対象経費の2/3(上限400万円) | 富士吉田市 都市政策課 |
| ブロック塀等の撤去改修補助 | 市の補助 | 撤去のみ上限15万円/改修まで上限30万円 | 富士吉田市 都市政策課 |
| マンション管理計画認定 | 認定制度 | 融資金利の引下げ・税制要件・市場評価 | 富士吉田市(要事前確認) |
| 長寿命化促進税制 | 税の減額 | 翌年度の建物固定資産税を減額 | 富士吉田市 税務課 |
| 機構の共用部分リフォーム融資 | 低利融資 | 全期間固定・理事長の個人保証不要 | 住宅金融支援機構 |
| 工法の最適化 | 工事側 | 総工費の1〜2割規模で変動 | 施工会社(明誠など) |
順番に、根拠となる一次情報とともに見ていきます。
富士吉田市の住宅支援メニューを「使える/使えない」で正直に仕分けする
まず、富士吉田市の公式ページ「住宅支援」に並んでいる制度を、分譲マンション管理組合の目線で仕分けします。ここを曖昧にしたまま話を進める業者が多いのですが、私は最初に正直な線引きをすることにしています。
| 富士吉田市の制度 | 共用部大規模修繕との関係 | 判定 |
|---|---|---|
| アスベストに関する補助制度 | 市内の建築物の吹付け材が対象。共用部にも接点あり得る | ◎ 要相談 |
| ブロック塀等の撤去改修補助制度 | 敷地の危険な塀の撤去・フェンス化に活用余地 | ○ 接点あり |
| 木造住宅の耐震化事業 | 木造在来工法・2階建以下・長屋/共同住宅以外 | × 対象外 |
| 中古物件改修支援奨励金 | 空き家・空き店舗バンク物件の改修+転入が前提 | × 不適 |
| 新築・中古物件取得支援奨励金 | 物件の取得(移住定住施策) | × 不適 |
◎ アスベスト補助は、管理組合が真っ先に確認すべき制度
富士吉田市は「アスベストに関する補助制度」として、次の2本立ての支援を用意しています(都市政策課/2025年3月27日更新)。
- 吹付アスベスト等の含有量調査:市内の建築物で、壁・柱・天井等に吹き付けられた建材のアスベスト含有調査に対し、調査費用の全額(限度額15万円)を補助(千円未満は自己負担)
- 吹付アスベスト等の除去等:含有が確認された建物の除去・封じ込め・囲い込みの費用に対し、対象経費の2/3(上限400万円)を補助
ここで注目していただきたいのは、対象が「本市内の建築物」と書かれている点です。木造住宅の耐震化事業のように「木造在来工法」「長屋、共同住宅以外」といった限定が付いていません。つまり、RC造・SRC造の分譲マンションであっても、共用部の機械室・電気室・駐車場天井・階段室・パイプスペースなどに吹付け材が残っていれば、対象範囲に入り得るということです。
正直に申し上げます。管理組合名義で申請できるのか、区分所有建物の共用部がどう扱われるのかは、市のページ上では明示を確認できませんでした。ここは断定しません。事前に都市政策課へご相談ください。市も「補助対象範囲等の確認のため、事前にご相談ください」と明記しており、相談時には「配置図」「平面図」「現況写真」など状況がわかる資料を持参するよう案内しています。
そしてもう一点、これは私が現場で何度も歯がゆい思いをしてきたところです。補助決定前に着手してしまうと補助金は交付されません。大規模修繕の工程を組んでから「そういえばアスベストが」と気づいても遅い。設計事務所や施工会社に相談する段階で、昭和50年代以前の竣工なら吹付け材の有無を先に洗い出しておく。これだけで、400万円を上限とする補助の可能性が残るか消えるかが変わります。
築40年前後、1970〜1980年代前半に建てられた富士吉田市内のマンションであれば、この確認は最優先事項だと私は考えています。
○ ブロック塀等の撤去改修補助も、敷地内で使える場面がある
「ブロック塀等の撤去改修補助制度」は、道路・公園等に面している高さ1m以上のブロック塀・石塀・レンガ塀等が対象です(都市政策課)。
| 区分 | 補助額の計算 | 上限(1敷地あたり) |
|---|---|---|
| 撤去のみ | [撤去費 または 10,000円×塀の長さ]のいずれか少ない額の2/3 | 15万円 |
| 撤去し、フェンス等へ改修 | [撤去・改修費 または 38,300円×塀の長さ]のいずれか少ない額の2/3 | 30万円 |
マンションの敷地境界に古いブロック塀が残っている物件は、富士吉田市内にも珍しくありません。大規模修繕で足場やゴンドラの搬入経路を確保するタイミングは、こうした塀を見直す絶好の機会でもあります。申込は申込用紙に必要事項を記入のうえ都市政策課へ。対象者の要件が管理組合名義で満たせるかは、こちらも事前確認をおすすめします。
× 木造住宅の耐震化事業は、分譲マンションでは使えません
念のため明記しておきます。富士吉田市の「木造住宅の耐震化事業」は、対象住宅の条件として次を掲げています。
- 個人が所有し、かつその個人が主に居住している木造住宅
- 延べ床面積が300平方メートル以下
- 木造在来工法で建てられた2階建以下の住宅
- 昭和56年5月31日以前に着工し、建てられた住宅
- 長屋、共同住宅(及び借家)以外のもの
RC造・SRC造の分譲マンションは、この条件のいずれからも外れます。耐震診断は無料(令和8年度は30件の実施予定)、耐震改修事業は一戸当たり143万7,500円、耐震シェルター設置は上限54万円と手厚い制度ですが、共同住宅は明確に対象外です。「富士吉田市 耐震 補助」で検索してこのページに行き着き、期待して読み進めてしまう理事長さまがいらっしゃるので、先にお伝えしておきます。
× 中古物件改修支援奨励金も、居住中の分譲マンションには不向き
「中古物件改修支援奨励金」は改修費用の2分の1以下・最大50万円(改修時1回のみ)と、金額だけ見れば魅力的です。ただし対象者は「請求日から起算して1年以内に本市に転入したこと」「空き家・空き店舗バンクに登録された物件を改修し入居すること」が前提。移住・定住促進のための制度であり、居住中の分譲マンションの共用部工事には当てはまりません(ふるさと魅力推進課/2026年4月1日更新)。
なお、この制度も改修前の申請が前提で、奨励金の請求は改修終了後かつ申請年度内という縛りがあります。制度の性格は違っても、「着工前申請」「年度内完了」というルールは富士吉田市の補助制度に共通する作法だと理解しておくと、実務で迷いません。
柱1:マンション管理計画認定制度——富士吉田市では「まず市に確認」が正解
ここからが本題です。
マンション管理計画認定制度は、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、管理組合が地方公共団体から「適切な管理計画を持つマンション」として認定を受けられる制度です(根拠:マンションの管理の適正化の推進に関する法律)。国土交通省の「マンション管理計画認定制度」に制度全体がまとまっています。
富士吉田市で申請するときの、最初の分岐点
ここに、山梨県内のマンションに特有の注意点があります。
山梨県の公式ページ「マンション管理計画認定制度について」(2025年12月24日更新)には、こう書かれています。
認定を受けることができるのは、自治体が「マンション管理適正化推進計画」を作成している地域にあるマンションです。県(町村部にあるマンションのみ対象)では、令和4年4月1日から認定の受付を開始しました。
つまり、山梨県が受け付けているのは町村部のマンションのみ。富士吉田市は市ですから、県の窓口では申請できません。市が独自にマンション管理適正化推進計画を作成しているかどうかが、認定を受けられるかの分かれ目になります。
そして正直に申し上げます。富士吉田市がマンション管理適正化推進計画を作成しているか、認定申請の受付を行っているかは、私が公開情報を確認した範囲では明示を確認できませんでした。ここを「使えます」とも「使えません」とも断定はしません。
理事会として取るべき最初の一手は、シンプルです。
富士吉田市役所 都市政策課(都市基盤部)/代表 0555-22-1111
「分譲マンションの管理計画認定制度について、市で申請を受け付けていますか」と電話で確認する。
電話1本、5分で終わります。この確認を先送りにしたまま長期修繕計画の見直しに入ってしまうと、後から認定要件に合わせて計画を作り直すことになり、余計な手戻りが発生します。私はいつも理事長さまに「認定を取る/取らないを決める前に、取れるのかどうかだけ先に確かめましょう」とお伝えしています。
参考:山梨県の認定申請手数料(町村部の場合)
富士吉田市の手数料体系は市が定めるため県とは異なりますが、金額感の目安として県の数字を挙げておきます。
| 区分 | 適合証あり | 適合証なし |
|---|---|---|
| 認定(更新)申請手数料(長期修繕計画1つ) | 3,600円 | 25,500円 |
| 長期修繕計画が2以上ある場合 | 1計画あたり1,600円加算 | 1計画あたり14,700円加算 |
| 変更認定申請手数料 | 適合証なしの額の1/2(100円未満切捨て) | 同左 |
注目していただきたいのは、適合証があるかないかで7倍近い差が出ている点です。適合証とは、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」で事前確認を受けると発行されるもの。実務としては、この事前確認を通してから行政に申請するのが王道です。山梨県も「1の方法(適合証を受けてから申請)を原則としています」と明記しています。
認定を取ると、何が変わるのか
認定は「賞状」ではありません。実利があります。
- 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で金利引下げの対象になる
- マンションすまい・る債で利率上乗せの対象になる
- 長寿命化促進税制の要件(管理計画の認定または助言・指導)を満たす経路になる
- 売買時に「管理が良好なマンション」として市場で評価されやすくなる
4つ目は、区分所有者の資産価値そのものに関わります。中古マンションの購入検討者が、管理状態を見て判断する時代になりました。私が関わった物件でも、認定取得後に「管理がしっかりしている物件だから」と成約が早まったという話を、仲介会社さんから聞いたことがあります。
柱2:マンション長寿命化促進税制——期限は令和9年3月31日
大規模修繕を実施した年の翌年度、建物の固定資産税が減額される制度です。国土交通省の「マンション税制」に制度概要がまとまっています。
制度の骨格
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象工事の完了期限 | 令和5年4月1日〜令和9年3月31日に完了する大規模修繕等 |
| 減額される税 | 翌年度分の建物(家屋)の固定資産税 |
| 対象範囲 | 居住用専有部分、1戸あたり100平方メートル相当分まで |
| 適用回数 | 1回限り |
| 減額割合 | 市町村の条例で定める(参酌基準1/3、1/6〜1/2の範囲) |
富士吉田市の減額割合は「市に確認」が前提
減額割合は市町村の条例で決まります。東京23区や小田原市のように1/2を採用する自治体もあれば、高崎市・太田市・佐野市のように1/3の自治体もあります。富士吉田市が何分の1を採用しているかは、公開情報から確認できませんでしたので、ここも断定しません。
確認先は富士吉田市役所 税務課(代表 0555-22-1111)です。着工前に、次の3点をまとめて聞いてください。
- 富士吉田市の減額割合は何分の1か
- 申告期限はいつまでか(工事完了後3か月以内としている自治体が多い)
- 必要書類は何か(証明書の発行に日数がかかることがある)
適用要件のチェックリスト
一般的な要件は次のとおりです。自分の組合が該当するか、理事会で1つずつ確認してみてください。
- 築20年以上が経過している
- 10戸以上のマンションである
- 過去に1回以上の長寿命化に資する修繕工事を実施している
- 修繕積立金が一定の基準以上に引き上げられている(管理計画の認定、または助言・指導を受けていること)
- 屋根防水・床防水・外壁塗装等を一体的に実施した工事である
- 工事完了後、期限内に市へ申告している
耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修の減額措置とは重複適用できない点にもご注意ください。どれを選ぶかで有利不利が変わります。団地型マンションの場合は、工事を行った当該棟のみが対象になるのが通例です。
なお、2026年度の税制改正で床面積の条件に変更があったという情報を目にしましたが、私が公的な一次情報で確認しきれていないため、この記事では断定を避けます。申告の際は、国土交通省の最新ページと市の窓口で現行の要件をご確認ください。
柱3:住宅金融支援機構の融資と債券——理事長個人の保証は不要です
積立金が足りない。しかし工事は待ってくれない。この場面で、私がいつもご案内しているのが住宅金融支援機構の制度です。
マンション共用部分リフォーム融資
管理組合が管理組合名義で借りられる、全期間固定金利の融資です(詳細:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資)。
理事長さまが最も気にされるのは「私が個人で保証するのか」という点です。答えは、公益財団法人マンション管理センターの債務保証を利用すれば、理事長個人の連帯保証は不要になります。ここを知らずに借入をためらう組合が、まだ多い。
そして管理計画認定を取得していると、返済期間や金利の面で優遇の対象になります。柱1と柱3が、ここでつながります。金利は毎月見直されるため具体的な数字は挙げませんが、機構のサイトで当月の適用金利を確認できます。
マンションすまい・る債
こちらは借りるのではなく、積立金を有利に積む制度です(マンションすまい・る債)。管理組合が積立金を債券で運用する仕組みで、管理計画認定を取得している組合向けの「認定すまい・る債」では利率の上乗せがあります。
修繕積立金は、放っておけばインフレで実質的に目減りしていきます。「安全に置いておく」だけでは守れない時代になりました。募集期間は毎年度決まっているため、機構のサイトで年度ごとの日程をご確認ください。
柱4:国の住宅省エネ2026キャンペーンをどう使うか
2026年度も、国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携による「住宅省エネ2026キャンペーン」が動いています。構成は「みらいエコ住宅2026事業」「先進的窓リノベ2026事業」「給湯省エネ2026事業」「賃貸集合給湯省エネ2026事業」の4本柱です。
管理組合の目線で整理すると、こうなります。
| 事業 | 分譲マンション共用部との関係 |
|---|---|
| 先進的窓リノベ2026事業 | 開口部(窓)の断熱改修が対象。共用部扱いの窓を管理組合として一括改修する場合、活用の余地がある |
| みらいエコ住宅2026事業 | 断熱改修等が対象。要件は事業ごとに細かく異なる |
| 給湯省エネ2026事業 | 高効率給湯器の設置。専有部の設備が中心 |
| 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 賃貸集合住宅向け。分譲マンションの管理組合とは前提が異なる |
富士吉田市は標高が高く、冬の冷え込みが厳しい土地です。窓の断熱性能が住み心地と光熱費に直結します。大規模修繕でサッシまわりのシーリングを打ち替えるタイミングは、窓の断熱改修を同時に検討する好機でもあります。ただし各事業は登録事業者を通じた申請が必要で、予算に達し次第受付終了となる仕組みですから、年度の早い段階で動くのが定石です。
富士吉田市の気候と、大規模修繕の「やるべき時期」
ここからは補助金の話を離れて、私の本業の話をさせてください。制度をどれだけ調べても、工事のタイミングを外すと費用は膨らみます。
富士吉田市は富士山北麓、標高おおむね650〜850メートルに市街地が広がる高冷地です。同じ山梨県でも、甲府盆地とは建物への負荷がまったく違います。
富士吉田の建物に効いてくる3つの気候要因
1. 凍結融解(とうけつゆうかい)
昼間に融けた水が夜に凍り、体積が膨らんでコンクリートやモルタルを内側から押し広げる現象です。これが冬の間、毎日繰り返される。私の経験上、富士北麓の物件は関東平野部の同築年数の物件と比べて、外壁のひび割れ(クラック)の進行が明らかに速い。ひび割れから水が入り、凍り、さらに広がる。この悪循環が、富士吉田市のマンションにとって最大の敵です。
2. 強い紫外線
標高が高いぶん、紫外線量が多くなります。屋上防水のウレタン・シート、外壁の塗膜、シーリング材——どれも紫外線で劣化が進みます。特に南面と屋上は、平地の物件より早く傷むと考えたほうがいい。
3. 積雪と融雪水
屋上やバルコニーに積もった雪は、融けながら排水経路に流れ込みます。ドレン(排水口)が詰まっていれば、水は逃げ場を失って滞留する。滞留した水が凍る。防水層が押し上げられる。冬明けに膨れやふくらみが見つかる物件は、たいていこのパターンです。
一方で、海から遠いため塩害はほとんど心配ありません。この点は沿岸部の物件より恵まれています。
工事に向く季節、向かない季節
| 時期 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 4月下旬〜6月中旬 | ◎ 最適 | 気温が安定し、塗料・防水材の乾燥条件が良い |
| 6月下旬〜7月中旬 | △ | 梅雨の降雨で工程が延びやすい |
| 7月下旬〜8月 | ○ | 高地のため平地より作業環境は良好。ただし夕立に注意 |
| 9月〜10月中旬 | ◎ 最適 | 空気が乾き、仕上がりが安定する |
| 10月下旬〜11月 | △ | 朝晩の低温で塗料・防水材の施工可能温度を下回る日が出る |
| 12月〜3月 | × 不適 | 凍結・積雪により、多くの防水・塗装工事が施工不可 |
富士吉田市で大規模修繕を計画するなら、春(4月下旬〜6月中旬)か秋(9月〜10月中旬)に工期の山を持ってくるのが基本です。逆算すると、総会での議決は前年秋か、その年の初春。この段取りを外すと1年待つことになります。
現場のエピソード:畳1枚の膨れが、1年で数倍になった話
数年前、寒冷地の物件で屋上防水の膨れを見つけたことがあります。大きさは畳1枚ぶんほど。理事会では「来年度の予算でやりましょう」となりました。判断としては、ごく普通です。
ところが翌年、同じ場所を見に行くと、膨れは数倍に広がり、最上階の天井にシミが出ていました。冬の間に水が入って凍り、防水層を押し上げ、さらに水の通り道を広げていたのです。防水層の張り替えだけで済むはずが、下地のコンクリートまで水が回り、下地補修を含む工事になりました。費用は当初見積りの数倍です。
私が現場で20年やってきて、一番悔しい思いをするのはこういう場面です。あのとき応急処置だけでもしていれば、と。防水の不具合は、寒冷地では1シーズンで様相が変わります。富士吉田市で「膨れ」「浮き」「シミ」を見つけたら、冬を越させないでください。
補助金より効く話:3つの工法から選べるということ
正直に申し上げます。補助金や税制で動く金額より、工法の選択で動く金額のほうが大きいことが少なくありません。
大規模修繕の総工費のうち、仮設足場が占める割合はおおむね15〜25%です。5,000万円の工事なら、750万〜1,250万円が足場代ということになります。ここに手を入れられるかどうかは、決して小さな話ではありません。
3工法の比較
| 工法 | 仮設費 | 工期 | 居住者への影響 | 向いている建物 |
|---|---|---|---|---|
| 通常足場工法 | 大(総工費の15〜25%) | 長い | 全面に足場・養生シート。日照・通風・防犯面の負担が大きい | 中低層、複雑な形状、全面的な打診・補修が必要な建物 |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 小 | 短い | 足場を架けないため生活影響が小さい | 高層、敷地に余裕がない、部分補修が中心の建物 |
| ハイブリッド工法 | 中 | 中 | 必要な面だけ足場を架ける | 大規模・複雑で、総合的なコスト最適化が要る建物 |
ロープアクセス工法は、産業用ロープで作業員が建物の外壁を上下しながら施工する無足場工法です。足場を架けないぶん仮設費が抑えられ、工期も短くなります。何より、居住者の生活への影響が小さい。バルコニーが足場とシートで覆われる数か月間のストレスを経験された方なら、この差の意味がおわかりいただけると思います。ロープアクセス工法の技術情報や安全基準については、姉妹サイト「ロープアクセスドットコム」に詳しくまとめています。
一方で、ロープアクセスが万能というわけではありません。外壁全面の打診調査が必要な場合、大量の材料を扱う工事、複雑な形状の建物では、足場のほうが適していることもあります。だからこそ建物ごとに最適な工法を選べることに意味があるのです。明誠が3つの工法をすべて自社で提案できる体制を取っているのは、そのためです。
弊社の大規模修繕工事のご紹介、ロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕を適正価格で行う考え方、管理組合さま向けサービスもあわせてご覧ください。
モデルケース1:富士山駅周辺・築25年・11階建て48戸
- 従来の全面足場工法での見積り:9,000万円
- ハイブリッド工法(低層部は足場、高層部と部分補修はロープアクセス):7,800万円
- 差額:1,200万円(1戸あたり約25万円)
工期も約3週間短縮できました。総会で「1戸25万円の差」と説明すると、議論の空気が変わります。
モデルケース2:郊外・築40年超・5階建て18戸
- 従来工法での見積り:3,200万円
- ロープアクセス主体での見積り:2,600万円
- 差額:600万円(1戸あたり約33万円)
さらにこの組合では、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資を併用し、一時金の徴収をゼロに抑えました。
※上記は工法比較の考え方を示すための試算例です。実際の金額は建物の形状・劣化状況・仕様によって変わります。お問合せフォームからご相談いただければ、現地調査のうえで具体的な数字をお出しします。
修繕積立金が足りないとき、理事会が取れる4つの手
「そもそも積立金が足りない」。これが、富士吉田市に限らず全国の管理組合が抱える最大の悩みです。私が理事会でご提案しているのは、次の4つです。
1. 工法の見直しで工事費そのものを下げる
前章のとおりです。まず金額の分母を小さくする。ここから始めるのが順序として正しい。
2. 工事範囲の優先順位づけ
「今回やるべきこと」と「次回に回せること」を仕分けます。屋上防水と外壁の躯体補修は先送りが致命傷になりますが、共用廊下の美観改修は次回に回せることもある。劣化診断の結果をもとに、技術的な根拠を持って線を引くことが肝心です。
3. 住宅金融支援機構の融資を使う
一時金の徴収は、区分所有者の合意形成が最も難航するポイントです。融資を使えば、月々の積立金の範囲内で返済していく形にできます。理事長個人の保証も不要です。
4. 積立金の段階的な引上げ
痛みを伴う話ですが、避けて通れません。ただし、これは長寿命化促進税制の要件(積立金の引上げ)にもつながります。「値上げのお願い」ではなく「税制優遇と将来の安心を得るための計画的な見直し」として提案すれば、総会での受け止められ方が変わります。
2026年4月施行の改正区分所有法——決議のハードルが下がりました
2026年に管理組合が知っておくべき最大の制度変更が、改正区分所有法の施行(令和7年法律第47号、2026年4月1日施行)です。約20年ぶりの大きな改正でした。
管理組合にとって実務的に効いてくるのは、次の点です。
- 共用部分の大規模修繕等の決議要件が、集会に出席した区分所有者を母数とする形へ緩和された
- 欠席者・無回答者は母数から除外される
- 所在不明の区分所有者は、裁判所の関与のもとで母数から除外する手続きが整備された
これまで「区分所有者全体の頭数」を母数としていたため、賃貸化が進んで所有者と連絡が取れない住戸が増えると、決議そのものが不可能になる組合がありました。富士吉田市のように観光地を抱え、セカンドハウスや投資用の所有が一定数あり得る地域では、この改正の恩恵は小さくありません。
「出席率が低くて総会で決められなかった」という理由で修繕を先送りしてきた組合は、もう一度、決議の可能性を検討する価値があります。
逆算カレンダー:総会の18か月前から動く
大規模修繕は、思い立ってから着工まで、通常1年半ほどかかります。富士吉田市のように施工可能期間が限られる地域では、この段取りがなおさら重要です。
| 着工までの期間 | やること |
|---|---|
| 18か月前 | 劣化診断・建物調査の実施を理事会で決定。アスベストの有無の確認もこの段階で。長期修繕計画の見直しに着手 |
| 12か月前 | 診断結果をもとに工事範囲・工法の方向性を決定。複数社から概算見積りを取得。市の補助制度・税制の適用可否を窓口に確認 |
| 9か月前 | 資金計画の確定(積立金・一時金・融資の組み合わせ)。管理計画認定を目指す場合は申請準備 |
| 6か月前 | 施工会社の選定。総会での議決 |
| 3か月前 | 契約締結、着工前説明会、居住者への周知 |
| 着工 | 春(4月下旬〜6月中旬)または秋(9月〜10月中旬)に工期の山を設定 |
補助金の申請は「着工前」が原則です。このカレンダーの12か月前〜6か月前の間に窓口確認を済ませておくことが、制度を取りこぼさないコツです。
相見積りで失敗しないための3つのポイント
複数社から見積りを取るのは当然ですが、そのまま金額だけを比べても意味がありません。私が理事会でお伝えしている3点です。
1. 数量を揃える
外壁補修の数量(ひび割れの延長メートル、欠損部の平方メートル)が各社バラバラなら、金額の比較は成立しません。共通の数量表を作り、それに基づいて見積りを出してもらってください。
2. 仕様を揃える
塗料のグレード(アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素)、防水の工法(ウレタン塗膜・塩ビシート・アスファルト)で単価は大きく変わります。「安い会社」ではなく「安い仕様」だっただけ、というケースは本当に多い。
3. 「別途」の中身を確認する
見積書の末尾に「〇〇は別途」と書かれている項目こそ、後から膨らむ部分です。仮設電気・仮設水道・産業廃棄物処理費・下地補修の数量増——ここが空欄の見積りは、比較の土俵に乗りません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 富士吉田市に、マンションの大規模修繕に直接使える補助金はありますか?
A. 共用部の大規模修繕そのものへの直接補助は、公開情報では確認できませんでした。ただし、アスベストの含有量調査(調査費全額・限度額15万円)と除去等(対象経費の2/3・上限400万円)の補助制度があり、共用部にも接点があり得ます。都市政策課へ事前相談を。
Q2. アスベスト補助は、管理組合の名義で申請できますか?
A. 市のページでは対象者の詳細まで確認できませんでした。市は「補助対象範囲等の確認のため、事前にご相談ください」と案内していますので、配置図・平面図・現況写真を持って都市政策課へご相談ください。補助決定前に着手すると交付されない点にご注意ください。
Q3. 富士吉田市で管理計画認定の申請はできますか?
A. 山梨県が受け付けているのは町村部のマンションのみで、市部は各市が主体となります。富士吉田市の受付状況は公開情報で確認できませんでしたので、まず都市政策課(代表 0555-22-1111)へ電話でご確認ください。
Q4. 長寿命化促進税制の減額割合は、富士吉田市では何分の1ですか?
A. 減額割合は市町村の条例で定まります(参酌基準1/3、1/6〜1/2の範囲)。富士吉田市の割合は公開情報で確認できませんでしたので、税務課へ着工前にご確認ください。
Q5. 木造住宅の耐震補助は、マンションでも使えますか?
A. 使えません。富士吉田市の木造住宅耐震化事業は「木造在来工法で2階建以下」「長屋、共同住宅(及び借家)以外」が条件で、RC造・SRC造の分譲マンションは対象外です。
Q6. 積立金が足りません。工事を先送りすべきでしょうか?
A. 富士吉田市のような寒冷地では、防水・外壁の不具合を放置すると1シーズンで劣化範囲が広がり、費用がかえって膨らみます。工法の見直し、工事範囲の優先順位づけ、住宅金融支援機構の融資を組み合わせて、着手できる形を作ることをおすすめします。
Q7. ロープアクセス工法は、どんな建物に向いていますか?
A. 高層、敷地に余裕がない、部分補修が中心の建物に適しています。逆に外壁全面の打診調査が必要な場合や、大量の材料を扱う工事では足場のほうが適することもあります。建物ごとの判断が必要です。
Q8. 2026年の法改正で、何が変わりましたか?
A. 改正区分所有法が2026年4月1日に施行され、共用部分の大規模修繕等の決議要件が「集会に出席した区分所有者を母数とする形」へ緩和されました。所在不明の区分所有者を裁判所の関与のもとで母数から除外する手続きも整備されています。
この記事のポイントまとめ
- 富士吉田市に共用部大規模修繕への直接補助は確認できず、国の制度と工法で組み立てる
- 市のアスベスト補助(調査費全額・除去等は2/3上限400万円)は共用部にも接点があり得る
- 木造住宅耐震化事業は「共同住宅以外」が条件で、分譲マンションは対象外
- 管理計画認定は山梨県が町村部のみ受付。市部は富士吉田市への確認が第一歩
- 標高が高く凍結融解が厳しい土地柄、防水の不具合は冬を越させないこと
- 足場を工法で削れば、48戸規模で1,000万円超の差が出ることもある
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法(無足場工法)と従来足場工法、その両方を組み合わせたハイブリッド工法を提案できる改修会社です。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟することで、高品質と適正価格を両立しています。
最終更新:2026年8月16日
富士吉田市の理事長さま・理事の皆さまへ。補助金の有無だけで工事の可否を決めてしまうのは、もったいない話です。この土地は建物への負荷が大きいぶん、早く手を打った組合ほど、生涯コストが軽くなります。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。
※本記事に記載した制度の内容・金額・期日は、2026年8月16日時点で公開されている情報にもとづきます。制度は変更される可能性がありますので、申請前に各窓口の最新情報をご確認ください。
出典・参考資料
- 富士吉田市「住宅支援」
- 富士吉田市「アスベストに関する補助制度」(都市政策課/2025年3月27日更新)
- 富士吉田市「ブロック塀等の撤去改修補助制度」(都市政策課/2025年3月27日更新)
- 富士吉田市「木造住宅の耐震化事業」(都市政策課/2025年3月27日更新)
- 富士吉田市「中古物件改修支援奨励金」(ふるさと魅力推進課/2026年4月1日更新)
- 山梨県「マンション管理計画認定制度について」(2025年12月24日更新)
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 国土交通省「マンション税制(長寿命化促進税制)」
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資等の融資金利」
- 住宅金融支援機構「マンションすまい・る債」
- 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
- 国土交通省ほか「住宅省エネ2026キャンペーン」
- 姉妹サイト「ロープアクセスドットコム」


