
2026年10月1日 更新
小平市のマンションで、私が現場調査のたびに最初に見るのは、外壁のひび割れではなく「雨水がどこへ逃げていくか」です。屋上のドレン(排水口)に落ち葉が詰まり、敷地の側溝には砂が溜まり、豪雨のたびに水が建物の足元へ回る。理事会では外壁の話ばかりが出て、排水まわりは誰も見ていない。小平市に限らず、多摩地域で何度も見てきた光景です。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近く、マンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本で壁面に降りる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。東大和市とは隣り合う小平市は、私にとっても身近な街です。
小平市は、土砂災害のリスクが低く、地震の地域危険度も低めの街です。一方で、市内の浸水予想区域図は複数の河川で作られており、「川が近くないから大丈夫」とは言い切れません。今日は小平市と東京都・国・気象庁の公式情報を数字で整理し、大規模修繕で先に手を打つべき場所をお伝えします。
結論:小平市で優先すべきは「屋上・敷地の排水」と「電気設備・ポンプの設置位置」です
先に結論を申し上げます。小平市の分譲・賃貸マンションで、私が最初に確認をお勧めするのは次の3つです。
- 屋上ドレンと敷地側溝の排水能力:雨水の逃げ場が詰まると、水は建物の足元と屋上に溜まります
- 受変電設備・給水ポンプ・エレベーターピットの設置階:浸水予想区域と重なる場合は、修繕計画の前倒しを検討する価値があります
- 令和9年3月31日までの長寿命化工事の完了:管理計画認定を受けた築20年以上のマンションは、固定資産税の減額が受けられる可能性があります(後述)
地震の面では、東京都の調査で小平市は74町丁目すべてがランク1か2に収まっています。ただし、これは建物の古さまでは映していません。「地域が安全だから建物も安全」とは考えない。これが、現場で20年やってきた私の基本姿勢です。
小平市のハザードマップを1枚で読む
小平市は、浸水予想区域図と土砂災害警戒区域図を1つの防災マップにまとめて公開しています。見ている水と土の種類を整理します。
| 種別 | 小平市での該当 | 公表・更新 |
|---|---|---|
| 洪水(外水) | あり。黒目川・落合川・柳瀬川・空堀川・奈良橋川、野川・仙川・入間川・谷沢川・丸子川、石神井川・白子川の浸水予想区域図 | 令和8年7月9日更新(市ページ) |
| 内水 | 水防法に基づく雨水出水(内水)浸水想定区域の指定はなし | 令和6年12月2日更新(市ページ) |
| 土砂災害 | 警戒区域1箇所、特別警戒区域0箇所 | 令和8年8月26日現在 |
| 津波・高潮 | 内陸のため対象外 | - |
| 液状化 | 東京都・国土地理院の地図で確認 | - |
出典:小平市「ハザードマップ(浸水予想区域図・土砂災害警戒区域図)」、小平市「ハザードマップについて(宅地建物取引業者の方へ)」、東京都建設局「土砂災害(特別)警戒区域の区市町村別指定状況」。
数字の意味を補足します。東京都の浸水予想区域図(想定最大規模降雨)は、野川・仙川流域も石神井川・白子川流域も、1時間最大雨量153ミリ、総雨量690ミリを前提に作られています(出典:東京都建設局・下水道局「浸水予想区域図【想定最大規模降雨】Q&A」、令和6年2月)。これは「備えの上限をどこに置くか」の目安であり、「起こらない」という意味ではありません。
ここで注意していただきたい点が1つあります。小平市の市ページには、雨水出水(内水)浸水想定区域は指定されていない、という趣旨の記載があります。ただ、これは「内水氾濫が起きない」という意味ではなく、水防法上の区域指定がない、という意味です。屋上や敷地の排水が詰まれば、どこの建物でも局所的に水は溜まります。
私が理事会でお伝えしているのは、「地図は1回見て終わりではなく、建物の設備の位置と重ねて見てください」という点です。自分のマンションの受変電設備、給水ポンプ、エレベーター機械室が地図のどこに当たるかを、重ねるハザードマップで確認してください。
小平市の地域特性と漏水事故の関係:玉川上水沿いの平坦な市街地と、豪雨の増加
小平市の地域特性を、漏水と防災の視点で整理します。
1. 平坦な市街地と排水
小平市は武蔵野台地の平坦な地形に市街地が広がっています。傾斜が少ないぶん、ゲリラ豪雨では排水の逃げ場が限られます。気象庁によると、1時間降水量80ミリ以上の大雨の発生回数は、1980年ごろと比べて約1.8〜2.1倍に増えています(出典:気象庁「大雨や猛暑日等のこれまでの変化」、令和5年1月24日発表)。築25年前後のマンションは、建設当時の排水設計が、現在の雨の降り方に合っていない可能性があります。
2. 土砂災害は限定的、ただし敷地の擁壁は別問題
市内の土砂災害警戒区域は1箇所で、特別警戒区域はありません。崖崩れの心配が少ないのは、小平市の大きな特徴です。とはいえ、敷地に段差や擁壁がある場合、水抜き穴が詰まると雨水が地中に溜まります。区域指定の有無とは別に、擁壁の水抜き穴は点検の対象です。
3. 地震の危険度は低め、ただし建物は別
東京都の第9回地域危険度測定(令和4年9月公表)では、小平市の74町丁目のうち48町丁目が総合危険度でもっとも低いランク1です。ランク4以上の町丁目はなく、ランクが相対的に高い地域は小川西町3丁目などに見られ、ランク3にとどまります(出典:東京都都市整備局「地震に関する地域危険度一覧表(小平市)」、小平市「地震に関する地域危険度測定調査について」)。
私の経験上、地域の危険度が低いことに安心して、屋上や外壁の点検が後回しになる建物が少なくありません。地震が少ない地域でも、雨は毎年降ります。漏水は地震より頻度が高い、日常の災害です。
大規模修繕で押さえるべき漏水ポイント7つ
ここからが本題です。大規模修繕の事前調査で、私が漏水の観点から確認する7か所を、優先度の高い順に並べます。
- 屋上防水:膨れ、ひび割れ、立上りとの取り合い。防水工事は5,000〜8,000円/㎡が一般的な目安です(物件条件で大きく変わります)
- シーリング(目地のゴム状の充填材):外壁パネルの継ぎ目やサッシまわり。ひび割れや肉やせは、雨水の入口になります
- バルコニーの排水(ドレン・排水溝):落ち葉や砂の詰まりで、水が溜まって室内側へ回ります
- 屋上・庇のドレン:1か所の詰まりで屋上全体に水が溜まることがあります
- 立上り(防水層の端部):防水層の端が剥がれると、そこから水が入ります
- サッシまわり:窓枠と外壁の取り合いは、漏水相談の中でも特に多い部位です
- エキスパンションジョイント:建物の動きを逃がす継ぎ目で、劣化すると雨水が内部に入ります
7つに共通するのは、「水の入口になる、端部と取り合い」だということです。平面の防水層そのものより、端と継ぎ目から漏れる。これが現場で20年見てきた実感です。
外壁の劣化を調べる打診調査は、250〜500円/㎡が一般的な目安です。外壁塗装は3,500〜4,500円/㎡が目安ですが、いずれも下地の状態や建物形状で変わります。見積りを取る前に、現状の調査から入ることをお勧めしています。
漏水緊急対応でロープアクセスが強い理由
台風や豪雨のあとに「最上階の部屋で天井から水が落ちてきた」という相談を受けることがあります。足場を組んでから調査する場合、手配と架設に時間がかかり、その間に被害が広がります。
ロープアクセス工法(産業用ロープで壁面に降りて作業する無足場工法)は、足場を組む時間が要りません。原因箇所の特定と応急処置を、足場工法より早く着手できるのが強みです。応急処置としては、シーリングの打ち替えや防水の部分補修などがあります。
費用面でも差が出ます。一例として、10階建て・外周80m・工期3か月の物件で、足場費168万円に対し、ロープアクセスは59万円という試算があります(参考値。実際の見積は物件により大きく変動します)。工期も足場工法の約6割が目安です。
安全面については、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では、ロープアクセス工法での高所作業で、過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。当社はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。
技術の詳細は、同業者・加盟希望者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムで解説しています。足場工法・ロープアクセス・ハイブリッドの使い分けは、ロープアクセスドットコムの工法比較も参考にしてください。発注者向けの工法説明はロープアクセス工法のご紹介、漏水対応の考え方は漏水対応のご案内にまとめています。
防災上の共用部の位置と修繕優先度
漏水は、防水の問題であると同時に、設備の問題でもあります。共用部の位置を、浸水予想区域と重ねて見てください。
| 共用部 | 確認すること | 優先度 |
|---|---|---|
| 受変電設備(キュービクル) | 設置階。地下・1階なら浸水対策を検討 | 高 |
| 給水ポンプ | 地下ピットの有無。水没時は断水につながる | 高 |
| 自家発電設備 | 燃料の保管位置、設置階 | 中〜高 |
| エレベーター機械室・ピット | ピットの止水。浸水するとエレベーターが長期停止 | 高 |
| 避難通路・階段 | 荷物の放置がないか、排水が通路に溜まらないか | 中 |
国土交通省は「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を公表しています(出典:国土交通省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」)。電気設備が水に浸かると、復旧に長い時間がかかります。上階への移設は費用がかさむため、止水板や、設備まわりの防水・排水の改善から検討するのが現実的です。
私は理事長さまに、「大規模修繕の見積りを取る前に、まず設備の位置だけ図面に落としてみてください」とお伝えしています。それだけで、優先順位が見えてきます。
小平市で使える制度:管理計画認定と、大規模修繕後の固定資産税の減額
小平市で、大規模修繕を検討する管理組合にとって特に重要なのが、次の2つの制度です。
マンション管理計画認定制度
小平市内の分譲マンションが対象で、申請者は管理組合の管理者等です。申請手数料は、基本手数料が4,100円、加算手数料が長期修繕計画1つにつき1,800円です。窓口は都市計画課計画担当(電話042-346-9554)で、市ページには「令和8年9月1日現在、小平市認定マンションは18棟」と記載されています(出典:小平市「マンションの管理計画認定制度について」、令和8年9月3日更新)。
大規模修繕後の固定資産税の減額
これは見落とされやすい制度です。次の4つの要件をすべて満たすと、工事完了の翌年度分の固定資産税が3分の1減額されます(住宅1戸あたり100㎡相当分まで)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 建物 | 居住用の専有部分が2分の1以上、築20年以上、10戸以上のマンション |
| 過去の工事 | 外壁塗装、床防水、屋根防水の工事を、過去に1回以上実施 |
| 工事の時期 | 令和5年4月1日から令和9年3月31日までに、長寿命化工事が完了 |
| 認定要件 | 管理計画認定を受けた、または市から助言・指導を受けたマンション |
申告は、工事が完了した日から3か月以内です(出典:小平市「大規模修繕が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」、令和8年9月9日更新、税務課)。
工事の完了期限が令和9年3月31日である点に注意してください。大規模修繕は、見積り、総会決議、工事で1年以上かかることが珍しくありません。「期限に間に合うか」を逆算して、早めに動くことが大切です。要件の細部(長寿命化工事の範囲など)は、必ず税務課と都市計画課に最新の内容をご確認ください。
制度の組み合わせ方や、使える制度の整理は、管理組合向けのご案内や、収益物件の場合はビルオーナー向けのご案内からご相談いただければ、お手伝いします。
小平市のマンション所有者が、いま見ておきたい数字の整理
ここまでの数字を、理事会の資料に使いやすい形で整理します。
| 項目 | 数字 | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 想定最大規模降雨 | 1時間最大153ミリ・総雨量690ミリ | 東京都建設局・下水道局、令和6年2月 |
| 土砂災害警戒区域 | 1箇所(特別警戒区域は0箇所) | 東京都建設局、令和8年8月26日現在 |
| 地震の地域危険度 | 74町丁目のうち48がランク1、ランク4以上はなし | 東京都、第9回(令和4年9月) |
| 管理計画認定の手数料 | 基本4,100円+長期修繕計画1つごとに1,800円 | 小平市、令和8年9月3日更新 |
| 固定資産税の減額 | 翌年度分の3分の1(100㎡相当まで) | 小平市、令和8年9月9日更新 |
| 長寿命化工事の完了期限 | 令和9年3月31日 | 小平市、令和8年9月9日更新 |
数字の読み方に唯一の正解はありませんが、「地図の前提」と「制度の期限」を先に押さえておくと、見積りの比較や総会での説明が格段に楽になります。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 小平市で、川が近くなくても浸水の心配はありますか?
A. あります。東京都の浸水予想区域図は、野川・仙川・石神井川・黒目川など複数の河川で作られており、想定は1時間153ミリ、総雨量690ミリです。区域に入っていなくても、屋上や敷地の排水が詰まれば局所的に水は溜まります。自分の建物の位置は、重ねるハザードマップで確認してください。
Q. 屋上防水の費用はどのくらいですか?
A. 一般的な目安は5,000〜8,000円/㎡です。屋上の面積、既存防水の種類、下地の状態で変わります。無料で概算お見積りを提示できますので、お問合せフォームからご連絡ください。
Q. ロープアクセスで工事をすると、防水や塗装の品質は下がりませんか?
A. 品質は工法ではなく、施工管理で決まります。作業前の調査、下地補修、防水・塗装の工程ごとの検査を行っています。技術の詳細はロープアクセスドットコムをご覧ください。
Q. 工期はどれくらい短くなりますか?
A. 足場工法の約6割が目安です。10階建て・外周80mのマンションで、足場3か月に対しロープアクセス1.5〜2か月です。物件の条件で変わります。
Q. 固定資産税の減額を受けるには、いつまでに工事を終える必要がありますか?
A. 小平市の制度では、令和9年3月31日までに長寿命化工事が完了している必要があります。あわせて管理計画認定などの要件もあります。詳細は市の税務課にご確認ください。
Q. 賃貸マンションのオーナーでも相談できますか?
A. できます。収益物件は、漏水1件で原状回復費と空室期間の両方が効いてきます。まずは現状の調査から承ります。
Q. 管理組合として、最初に何をすればよいですか?
A. 屋上ドレン、敷地の側溝、擁壁の水抜き穴を目視で確認することです。費用がかからず、効果の大きい確認です。
まとめ:今週、小平市の理事会で動けること3つ
- 屋上ドレン・敷地の側溝・擁壁の水抜き穴の詰まりを目視で確認する — 費用がかからず、いちばん効く確認です
- 受変電設備・給水ポンプの位置を、浸水予想区域と重ねて確認する — 区域に入る、または低い階にある場合は、優先的に対策を検討します
- 築20年以上なら、固定資産税の減額と管理計画認定の要件を、市の窓口(税務課・都市計画課042-346-9554)に確認する — 令和9年3月31日の完了期限から逆算して動きます
自分のマンションが、川の側にあるのか、平坦地の真ん中にあるのか。ここを最初に確認して修繕計画を組めば、限られた予算でも効果が出やすくなります。
秋の台風シーズンは、まだ続きます。理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。ご相談はお問合せフォームからどうぞ。
明誠の施工事例もご覧いただけます。これまでに手がけた約6,000棟のうち、公開できるものを掲載しています。
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年10月1日時点で公表されている小平市および国土交通省・気象庁・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、小平市および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
出典・参考資料
- 小平市「ハザードマップ(浸水予想区域図・土砂災害警戒区域図)」(令和8年7月9日更新)
- 小平市「小平市防災マップ地図面のダウンロード」(令和8年5月29日更新)
- 小平市「ハザードマップについて(宅地建物取引業者の方へ)」(令和6年12月2日更新)
- 小平市「マンションの管理計画認定制度について」(令和8年9月3日更新)
- 小平市「大規模修繕が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」(令和8年9月9日更新)
- 小平市「地震に関する地域危険度測定調査について」(令和4年9月27日)
- 東京都建設局・下水道局「浸水予想区域図【想定最大規模降雨】Q&A」(令和6年2月)
- 東京都建設局「土砂災害(特別)警戒区域の区市町村別指定状況」(令和8年8月26日現在)
- 東京都都市整備局「地震に関する地域危険度一覧表(小平市)」(第9回、令和4年9月公表)
- 気象庁「大雨や猛暑日等のこれまでの変化」(令和5年1月24日)
- 国土交通省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」
- 国土交通省・国土地理院「重ねるハザードマップ」
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年10月1日
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