大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

富士市のマンション補助金|大規模修繕2026年版

富士市のマンション補助金|大規模修繕2026年版

2026年8月21日 更新

富士市の分譲マンションで大規模修繕を控えている理事会の方から、いちばん多くいただく質問はこれです。

「富士市に、マンションの大規模修繕そのものに出る補助金はありますか?」

先に結論を申し上げます。2026年8月時点で、富士市が共用部の大規模修繕工事そのものに直接お金を出す補助制度は、市の公開情報からは確認できませんでした。

ただ、ここで読むのをやめないでください。富士市には、他の市にはない「管理組合にとって手続きのハードルがいちばん低い」仕組みが2つあります。しかも、そのどちらも市が意図的にそう設計したことが、市の公式文書から読み取れます。

  • 管理計画認定の申請手数料が「無料」(静岡市は3,800円〜26,900円)
  • マンション長寿命化促進税制の申告を、管理組合が一括で出せる(区分所有者ひとりひとりの申告書がなくても減額が適用される)

私は株式会社明誠の本間と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を、足場工法・無足場のロープアクセス工法・両者のハイブリッド工法の3つから提案する会社をやっています。この記事では、富士市の分譲マンション管理組合が2026年度に本当に使える制度を、市の一次情報だけを根拠に整理します。


この記事で答える5つの質問

  1. 富士市に、マンション共用部の大規模修繕への直接補助はあるか
  2. 富士市の管理計画認定制度は、なぜ手数料が無料なのか
  3. 長寿命化促進税制の申告を、理事会が一括でできるとはどういうことか
  4. 分譲マンションは、富士市の耐震補助やアスベスト補助の対象になるか
  5. 補助金より先に、富士市の管理組合が着手すべきことは何か

結論:富士市の管理組合が今すぐ確認すべき4制度

まず全体像を表にします。金額と根拠は、すべて富士市の公式ページから引いています。

制度 分譲マンション共用部への適用 補助率・限度額 窓口
大規模修繕そのものへの直接補助 公開情報では確認できず
マンション管理計画認定制度 ○ 市が受付。手数料は無料 手数料0円(別途センター利用料) 住宅政策課 0545-55-2814
マンション長寿命化促進税制 ○ 固定資産税を3分の1減額 1戸100㎡相当分まで・1年度分 資産税課 0545-55-2744
既存建築物耐震性向上事業(耐震診断) △ 「非木造建築物」が対象。要確認 基準額と経費の少ない額の2/3以内・1棟最大300万円 建築土地対策課 0545-55-2791
民間建築物吹付けアスベスト対策助成 △ 対象者は「所有者又は管理者等」 分析調査=全額(25万円/棟)/除去等=2/3以内(60万円/敷地) 建築土地対策課 0545-55-2791
ブロック塀等耐震改修促進事業 ○ 敷地の道路沿いの塀が対象 撤去 上限26万6千円/改善(新設)上限33万3千円 建築土地対策課 0545-55-2791

この記事の要点を一言でいうと、「富士市は、お金を配る制度ではなく、管理組合が手続きしやすくする制度で支援している市」です。そしてその設計思想を知っているかどうかで、総会に出す議案の中身が変わります。


富士市の分譲マンションは75棟しかない。だから相場が見えない

制度の話に入る前に、富士市という街の数字を押さえておきます。ここが理事会の判断に直結します。

富士市マンション管理適正化推進計画(令和5年12月策定)に、市自身がこう書いています。

本市のマンション棟数は、令和3年4月時点で 75 棟、そのうち 12 棟(16%)が築 40 年を超える状況(出典:富士市「富士市マンション管理適正化推進計画」)

築年数の内訳はこうです。

築年数 棟数 割合
10年未満 9棟 12%
10年以上20年未満 20棟 26.5%
20年以上30年未満 20棟 26.5%
30年以上40年未満 14棟 19%
40年以上 12棟 16%

そして計画は、10年後には26棟(35%)、20年後には46棟(61%)が築40年超になると見込んでいます。

75棟。これは決して多い数字ではありません。私が申し上げたいのは、この「少なさ」が管理組合に不利に働くという話です。

分譲マンションの絶対数が少ない街では、大規模修繕を専門にやっている地元の施工会社が育ちにくくなります。すると理事会は「相見積りを3社取ろう」と思っても、そもそも比較できる母数が限られる。近隣の話を聞こうにも、隣のマンションが工事をしたのが12年前、ということが普通に起こります。

相場感がない状態で見積書を1枚だけ見ると、人はその金額を「そういうものだ」と受け入れてしまう。現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのはこの瞬間です。

ただ、富士市には救いがあります。東名高速 富士IC・新東名 新富士IC、東海道新幹線 新富士駅、国道1号富士由比バイパスと、交通の便が非常に良い。静岡市からも沼津市からも、日帰りで職人が動ける距離です。宿泊費や長距離移動費が見積りに乗らない立地というのは、山間部の市にはない富士市の強みです。相見積りの候補を市内に限定する必要はありません。


富士市の最大の特徴①:管理計画認定の手数料が「無料」

ここからが本題です。

マンション管理計画認定制度は、マンションの管理状態が国の基準を満たしていることを自治体が認定する仕組みです。2022年(令和4年)4月から始まりました。富士市は市長が認定を行う自治体で、窓口は都市整備部住宅政策課 住まい政策担当(市庁舎7階北側/電話 0545-55-2814)です。

そして、市のページにこう書かれています。

認定申請にかかる手数料は無料です。ただし、(公財)マンション管理センターのシステム利用料及び事前確認審査料が必要となります。(出典:富士市「マンション管理認定制度について」)

なぜ無料なのか。市が推進計画に理由を書いている

これは単なる「たまたま無料」ではありません。富士市マンション管理適正化推進計画に、政策判断としてこう明記されています。

(公財)マンション管理センター等の管理計画認定手続き支援サービスを利用し、市に提出する認定申請書に「事前確認適合証」の添付を必須とすることで、申請手数料を無料にすることとします

つまり富士市は、「専門家の事前確認を必ず通してもらう代わりに、市の審査手数料はゼロにする」という取引をしているわけです。

比較すると、この意味がはっきりします。同じ静岡県内でも、静岡市は事前確認適合証ありで3,800円、なしで26,900円の手数料がかかります。富士市は、事前確認を通す前提であれば市に払う手数料が0円。管理組合の負担は、マンション管理センターのシステム利用料と事前確認審査料だけです。

認定を取ると、何が変わるのか

市のページが挙げている効果は6つです。

  1. 区分所有者の管理への意識が高く保たれ、管理水準を維持向上しやすくなる
  2. 適正に管理されたマンションとして、市場において評価される
  3. 適正に管理されたマンションが存在することで、地域価値の維持向上につながる
  4. 住宅金融支援機構融資の「フラット35」やマンション共用部分リフォーム融資の金利引下げが受けられる
  5. 「マンションすまい・る債」における利率上乗せが受けられる
  6. マンション長寿命化促進税制の適用対象となる

理事会にとって現実的に効くのは4・5・6です。特に6は、この記事の次の章でくわしく説明します。

富士市の認定マンションは、現在3件

市は認定を受けたマンションを実名で公表しています。

マンション名 所在地 建築年月 戸数
エンゼルハイム富士壱番館 富士市水戸島 1988年10月 51戸
エンゼルハイム富士弐番館 富士市水戸島 1989年9月 68戸
エンゼルハイム富士参番館 富士市水戸島 1990年4月 84戸

3件とも水戸島、3件とも築35年以上、合計203戸。私はこの一覧を見たとき、率直に「もったいない」と思いました。75棟あるうちの3棟しか取っていない。そして取っているのは、いずれも築年数が古く、管理に本気で取り組んできたであろう組合です。

築年数が古いマンションほど認定のメリットが大きい、というのは理屈のうえでも正しい。長寿命化促進税制は築20年以上が要件ですし、共用部リフォーム融資の金利引下げが効くのは借入をする組合です。

認定の基準は、そのまま理事会のチェックリストになる

富士市は独自基準を設けていません。国の基準そのままです。推進計画に掲げられた主な数値要件を並べます。

分野 主な基準(要旨)
経理 修繕積立金の3か月以上の滞納額が、全体の1割以内であること
長期修繕計画 作成または見直しが7年以内に行われていること
長期修繕計画 計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること
長期修繕計画 計画期間の最終年度において、借入金の残高のない計画であること
名簿 組合員名簿・居住者名簿を備え、1年に1回以上内容の確認を行っていること
運営 管理者等が定められ、集会(総会)が年1回以上開催されていること
規約 管理規約を作成し、必要に応じて改正していること
その他 静岡県マンション管理適正化指針に照らして適切であること

正直に申し上げます。認定を取るかどうか以前に、この表を理事会で読み合わせるだけで価値があります。「うちは長期修繕計画を最後にいつ見直した?」という問いが出るだけで、その理事会は一歩前に進んでいます。

認定基準の詳細は市が管理計画の認定基準(PDF)を公開しています。


富士市の最大の特徴②:長寿命化税制を、管理組合が一括申告できる

ここが、私が今回いちばん驚いた一次情報です。

マンション長寿命化促進税制は、一定の要件を満たすマンションで長寿命化に資する大規模修繕工事を行うと、翌年度の固定資産税が減額される制度です。富士市の資産税課のページには、減額割合が明確に書かれています

1戸あたりの居住部分が100平方メートルまでに相当する固定資産税額の3分の1を減額(出典:富士市「大規模の修繕等が行われたマンションに対する減額を受ける場合」)

減額割合は市町村の条例で決まるため、市によっては公開ページから読み取れないことがあります。富士市は3分の1と明記しています。ここは助かります。

「区分所有者の申告書がなくても適用される」という一文

そのうえで、同じページの末尾にこう書かれています。

なお、マンション管理組合の管理者等から、減額に必要な書類の提出があった場合は、区分所有者から減額の申告書の提出がなかったとしても、減額が適用されます。

この一文の実務上の意味は、非常に大きい。

固定資産税は区分所有者ひとりひとりに課税されます。原則どおりなら、50戸のマンションなら50人が個別に申告書を出さなければならない。転勤中の方、相続で連絡がつきにくい方、賃貸に出していて市外に住んでいる方——現実には、全員から3か月以内に書類を回収するのは至難の業です。

富士市は、そこを理事長がまとめて出せるようにしている。私はこれを、他の自治体の記事を書いてきた中で初めて明文で見ました。

理事会の実務としてはこうなります。工事の完了日から3か月以内に、資産税課 家屋担当(市庁舎3階南側/電話 0545-55-2744)へ、管理者等として必要書類を提出する。それだけで区分所有者全員に減額が及ぶ。

要件と必要書類

区分 内容
対象期間 令和5年4月1日〜令和9年3月31日に工事完了
家屋の要件① 築後20年以上経過している10戸以上のマンション
家屋の要件② 長寿命化工事を過去に1回以上適切に行っている
家屋の要件③ 修繕積立金が確保されている(市の助言・指導を受けて長期修繕計画を見直し積立金を引き上げた場合、または管理計画認定マンションで令和3年9月1日以降に認定基準適合のため積立金を引き上げた場合)
工事の要件 2回目以降の長寿命化工事であること
工事の中身 屋根防水工事・床防水工事・外壁塗装等工事
減額の内容 1戸100㎡相当分までの固定資産税額の3分の1
減額の期間 工事完了日の属する年の翌年1月1日を賦課期日とする年度の1年間
申告期限 工事完了日から3か月以内
併用不可 耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修・長期優良住宅化改修の減額とは併用不可
対象外 都市計画税は減額されない

必要書類は7点です。

  1. 大規模の修繕等が行われたマンションに対する固定資産税の減額申告書
  2. 大規模の修繕等証明書
  3. 過去工事証明書
  4. 総戸数がわかる書類
  5. 管理計画認定通知書(管理計画認定マンションの場合)
  6. 修繕積立金引上証明書(同上)
  7. 助言・指導内容実施等証明書(助言・指導を受けた管理組合の場合)

理事会が見落としがちな2つの落とし穴

ひとつ目。工事の仕様書に「屋根防水・床防水・外壁塗装等」の3つが入っているか。この3点セットが揃っていないと、長寿命化工事として認められません。設計段階で「屋上防水は次回に回そう」と決めた瞬間に、この税制は消えます。私はこれを、必ず仕様確定の前に確認するようお伝えしています。

ふたつ目。「大規模の修繕等証明書」と「過去工事証明書」は、誰かが発行しなければ存在しない書類です。証明書の発行を工事契約や設計監理業務の中に含めておかないと、竣工後に慌てて探すことになります。3か月という期限は、想像よりずっと短い。

様式は市が減額申告書(PDF)を公開しています。各証明書の様式は国土交通省のマンション長寿命化促進税制のページからたどれます。


富士市が本当に困っているのは「長期修繕計画」だった

補助金の話をひととおりしたところで、富士市の管理組合にとっての本丸をお話しします。

富士市マンション管理適正化推進計画に、こんな調査結果が載っています。市内の分譲マンションが、修繕積立金の金額を何を根拠に決めているかという調査です。

修繕積立金の金額設定の根拠 棟数 割合
長期修繕計画(25年以上)に基づく 19棟 25%
長期修繕計画(25年未満)に基づく 4棟 5%
分譲時のまま 9棟 12%
なし 2棟 3%
不明 41棟 55%

55%が「不明」。そして市自身が、こう書いています。

令和3年度の 25 年以上の長期修繕計画に基づき修繕積立金を設定している管理組合の割合は 25%であり、国の平成 30 年度マンション総合調査の結果に基づく全国平均の 53.6% より低い

全国平均の半分以下です。市はこれを成果指標に据え、令和13年度までに54%へ引き上げるという目標を掲げています。

私はこの数字を見て、富士市の理事会に一番お伝えしたいことが決まりました。

補助金を探すより先に、長期修繕計画を開いてください。

理由は3つあります。

  1. 管理計画認定の基準に「7年以内の見直し」「計画期間30年以上」が入っている。ここが崩れていると認定が取れない
  2. 長寿命化促進税制の要件③(修繕積立金の確保)が、計画の見直しと積立金の引上げを前提にしている
  3. そもそも、計画がなければ工事金額が高いのか安いのか判断できない

つまり、この記事で紹介した富士市の「手数料無料」「一括申告」という優しい制度は、長期修繕計画がある組合しか使えないのです。入口はそこにしかありません。

市は「今後も5年に1度をめどに、定期的に市内のマンション管理組合に対しアンケート等を実施」するとしています。次の調査で「不明」を選ばずに済む状態にしておく。それがこの5年の宿題です。


分譲マンションは耐震補助の対象になるのか——正直な答え

富士市の耐震補助は「プロジェクトTOUKAI-0」の枠組みで、富士市既存建築物耐震性向上事業として運用されています。RC・SRCのマンションは「非木造建築物」に入ります。

耐震診断:使える可能性がある

市のページには「昭和56年5月31日以前に建築された非木造建築物を所有の方は、耐震診断・補強計画・耐震補強工事を行うことで補助金を受けることができます」とあり、共同住宅を除外する文言はありません。

構造・用途 延べ面積 補助基準額
木造以外の一戸建て住宅 130,000円/戸
その他の建築物 1,000㎡未満の部分 2,000円/㎡
その他の建築物 1,000㎡以上2,000㎡未満の部分 1,500円/㎡
その他の建築物 2,000㎡以上の部分 1,000円/㎡

補助額は「基準額と耐震診断経費を比較して少ない額の3分の2以内」、1棟最大300万円まで(出典:富士市「非木造建築物の耐震対策について」)。

延べ3,000㎡のマンションで計算すると、1,000㎡×2,000円+1,000㎡×1,500円+1,000㎡×1,000円=450万円が基準額。その3分の2は300万円で、限度額にちょうど届きます。

補強計画・補強工事:要件が厳しい

一方、補強計画と耐震補強工事は、次の要件をすべて満たす建築物が対象です。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された建築物(木造住宅以外)
  • 耐震改修促進法または建築基準法の認定
  • 災害時の拠点となる建築物、又は不特定多数の者が利用する建築物
  • 敷地に接する道路の中心線以内の面積が500㎡以上
  • 地上3階以上の耐火または準耐火建築物
  • 延べ面積1,000㎡以上

問題は3つ目です。分譲マンションは「特定多数」が利用する建築物であって、「不特定多数」とは通常呼びません。一般の分譲マンションがこの要件に該当するかは、市のページからは判断できませんでした。

ここは断定を避けます。静岡市のように「3階以上かつ延べ面積1,000㎡以上の非木造共同住宅(マンション)」と明文で書いている市もあれば、富士市のように書いていない市もある。建築土地対策課 建築安全推進担当(0545-55-2791)に電話で1行確認するのが確実です。聞くべきことはシンプルです。

「分譲マンションは、既存建築物耐震性向上事業の耐震診断・補強計画・補強工事の対象になりますか」

なお、この事業は「年度毎の予算の範囲内で交付する補助事業」と明記されています。予算枠がある制度は、早く動いた組合が有利です。

富士市固有のリスク:富士川河口断層帯

富士市耐震改修促進計画(第4期・令和8〜12年度)は、富士市が備えるべき地震を3つ挙げています。

想定地震 規模 静岡県全体の被害想定
南海トラフ巨大地震 マグニチュード9.0程度 全壊・焼失 約30万棟/死者 約105,000人
相模トラフ沿いの地震(元禄型関東地震) マグニチュード8.2程度 全壊・焼失 約2.7万棟/死者 約6,000人
富士川河口断層帯における地震 駿河トラフの海溝型地震と連動しM8程度の可能性

3つ目の富士川河口断層帯は、まさに富士市の足元を走る断層帯です。計画は「駿河トラフで発生する海溝型地震と連動して同時に活動すると推定されており、この場合、海溝型地震と併せてマグニチュード8程度の地震となる可能性がある」としています。

一方で、富士市の耐震化はかなり進んでいます。

区分 耐震化率 時点
住宅全体 94.9% 令和5年
うち非木造住宅 96.3% 令和5年
多数の者が利用する特定建築物 93.9% 令和6年度末
要緊急安全確認大規模建築物 100% 令和6年度末
沿道建築物 耐震診断を完了し耐震性を確保

非木造住宅の耐震化率96.3%。富士市の分譲マンションにとって、躯体の耐震性はほぼ解決済みの論点だと言っていい数字です。

だからこそ、計画の次の一文が効いてきます。

新築時は耐震性能が確保されていても、時間の経過とともに、ひび割れや変形、老朽化などに見舞われ、経年劣化による耐震性能の低下が懸念される。適切なメンテナンスが行われていない建築物はなおのことである。

そして——

地震によって瓦屋根、窓ガラス、外装材等(以下「非構造部材等」という。)や屋外広告物が落下すると、通行人等に死傷者が出るおそれがある

躯体が新耐震でも、浮いたタイル・傷んだ手すり・劣化したシーリングは落ちます。大規模修繕は美観の問題ではなく、安全の問題です。私が理事長さまに毎回お伝えしているのは、この一点です。

計画は「リフォーム工事に併せて耐震改修工事を行うことは、所有者等にとって費用及び手間を軽減できるという面で有効である」とも書いています。足場を2回架けるか、1回で済ませるか。これは工程の問題であると同時に、数百万円単位の金額の問題です。


アスベスト:調査は全額補助、除去は自己負担を覚悟する

民間建築物吹付けアスベスト対策助成制度は、大規模修繕の隠れたリスクに直結します。

補助対象事業 補助額 限度額
分析調査事業(吹付け建材のアスベスト含有の有無に係る分析調査) 費用の全額 25万円/棟
除去等事業(除去、封じ込め又は囲い込みの工事) 費用の3分の2以内 60万円/敷地

補助対象者は「補助申請建築物の所有者又は管理者等」と書かれています。管理者=管理組合の理事長が申請できる余地のある表現です。ただし受理されるかは個別判断ですので、事前に建築土地対策課へご確認ください(出典:富士市「アスベスト対策事業(補助制度)」)。

補助率の落差から読み取るべきこと

調査は全額、除去は3分の2で上限60万円。この落差には意味があります。

調査は手厚い。だから先に走らせる。除去は薄い。だから自己負担前提で長期修繕計画に載せる。これが富士市での正しい読み方です。

実際の除去工事は、面積によっては数百万円規模になります。60万円で足りる想定は危険です。

平成29年度から「建築物石綿含有建材調査者」(アスベストの調査ができる有資格者)の関与が義務付けられています。また、市のページには「補助制度については令和2年度末で終了予定でしたが、延期することとなりました」とあり、終期は明示されていません。制度が続いているうちに調査だけでも終わらせるのが賢い判断だと私は思います。

現場で本当にあった話

これは私が経験した話です。築40年を超えるマンションで、足場を架けて外壁の下地を開けたところ、機械室の天井裏から吹付け材が出てきました。

工事は止まります。調査、分析、対策方針の決定、追加の総会——全部やり直しです。足場は架かったまま、日数だけが過ぎていく。仮設足場は借りている期間ぶんお金がかかりますから、待っているだけで費用が積み上がります。

吹付け材が見つかりやすいのは、機械室・電気室・屋内駐車場の天井・階段室の裏・エレベーター機械室・パイプスペースです。設計に入る前に、この6か所だけでも調査しておく。分析調査は全額補助なのですから、やらない理由がありません。

なお注意点として、市は「除去等事業の補助を受ける場合は、工事を実施する前に助成金の交付申請手続きをし、交付決定を受けていただく必要があります」「交付申請の後、交付決定日(工事着手可能日)まで期間を要する場合があります」と明記しています。工程表を組むときは、この待ち時間を必ず見込んでください。


ブロック塀:撤去は「すべて撤去」が条件

敷地の道路沿いにブロック塀があるマンションは、富士市ブロック塀等耐震改修促進事業を確認する価値があります。

対象は「道路に面し、高さが60センチメートルを超えるもの」。そして重要な条件があります。

撤去する場合、すべて撤去することが条件となります。

部分撤去は認められません。

対象事業 対象区域 補助額
撤去(通学路・避難路等) 小学校の通学路、緊急輸送路、避難地に面するもの 工事費と「1mにつき20,000円」の少ない方の3分の2(上限26万6千円
撤去(道路) 通学路・避難路等以外の市内全域の道路 工事費と「1mにつき9,200円」の少ない方の2分の1(上限10万円
改善(新設) 小学校の通学路、緊急輸送路、避難地に面するもの 工事費と「1mにつき38,400円」の少ない方の3分の2(上限33万3千円

(出典:富士市「危険なブロック塀等の撤去・改善を支援します。」)

塀は「別契約」に切り出す

ここで実務上の注意を申し上げます。市はこう明記しています。

補助制度を利用される場合には、手続きが必要ですので、事前に建築土地対策課へ相談をお願いします。なお、手続き前に補助対象事業を進めた場合には、補助の対象になりませんのでご注意ください。

大規模修繕の総合契約に塀の撤去を混ぜ込むと、契約日が交付決定より前になって補助対象から外れる恐れがあります。塀だけは別契約に切り出し、交付決定を待ってから着工する。この段取りだけで26万6千円が残ります。

市はブロック塀の点検と改善(PDF)を公開しています。理事会で配って、まず自分たちの塀が何段あるかを確認するところからで十分です。


誤解しやすい制度を、先回りで仕分けしておきます

「富士市 マンション 補助金」で検索すると、実は分譲マンションの共用部には使えない制度がたくさん出てきます。総会で「あの補助金は使えないの?」と聞かれる前に、理事会で答えを用意しておきましょう。

制度 分譲マンション共用部への適用 理由
富士市木造住宅耐震補強事業(上限100万円) × 対象は「昭和56年5月以前に建築された木造住宅」。RC・SRCは対象外
耐震シェルター・防災ベッド設置(上限40〜50万円) × 旧耐震の木造住宅が対象
市民ゼロカーボンチャレンジ補助金 × 市内の自ら居住する住宅において対象設備等を導入・改修すること」が要件。加えて令和8年6月30日で受付終了
富士市空き家リフォーム支援補助金 × 空き家が対象
富士地域材使用住宅取得費補助金(富士ヒノキの家) × 住宅取得が対象

とくに「富士市は耐震改修に最大100万円」という情報は、ネット上でよく見かけます。これは木造住宅の補強計画一体型の金額(耐震評点1.0未満の木造住宅が、工事後に1.0以上かつ0.3ポイント以上上がる場合、経費の10分の8と比較して少ない額・上限1戸100万円)であって、RC・SRCのマンション共用部には当たりません。ここを混同したまま総会に持ち込むと、後で訂正するはめになります。

ただし、木造の制度が無意味かというとそうではありません。理事の方が市内に旧耐震の木造戸建てを所有していることは珍しくない。掲示板に市のTOUKAI-0パンフレットを貼るだけで、区分所有者の何人かは助かります。理事会が「住民のために動いている」と伝わる、費用ゼロの一手です。


補助金の桁と、仮設足場の桁を並べてみてください

ここまで富士市の補助制度を細かく見てきました。最後に、少し引いた視点でお話しします。

大規模修繕工事において、仮設足場は総工事費のおおむね15〜25%を占めます。実額にするとこうです。

総工事費 仮設足場の概算(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

一方、この記事で紹介した富士市の補助金は、ブロック塀撤去で上限26万6千円、アスベスト除去で上限60万円です。

桁が2つ違います。

私は補助金を軽んじているのではありません。取れるものは取るべきです。ただ、理事会が議論に費やす時間の配分は、金額の大きさに合わせるほうが合理的だと申し上げたい。補助金の書類に3回の理事会を使い、工法の検討には30分しか使わない——それでは順番が逆です。

「敷地に余裕があるから足場」で思考を止めない

富士市は、静岡市や沼津市の中心部と比べて敷地に余裕のあるマンションが多い。だからこそ「足場が組めるのだから足場でいい」と、そこで検討が終わってしまいがちです。

理事会で3つだけ問いを立ててみてください。

  1. 今回は全面改修なのか、部分補修なのか
  2. 居住者が2〜3か月バルコニーを塞がれる生活を受け入れられるか
  3. 見積書の「仮設工事」という費目の内訳は何か

3つの工法を並べて考える

私の会社は、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つから提案しています。施工会社である私が言うのですから、当然そこには利害があります。そのうえで、フラットに比較表を置きます。

項目 通常足場工法 ロープアクセス工法(無足場) ハイブリッド工法
仮設費 大(総工事費の15〜25%)
工期 長い 短い やや短い
居住者への影響 大(バルコニー使用制限・視線・防犯)
全面改修への適性 △(部位による)
部分補修・緊急対応 △(架設に時間)
足場が組めない面 ×

ロープアクセス工法がすべての建物に向くわけではありません。全面的な下地補修が必要な建物、タイルの浮きが広範囲に及ぶ建物は、足場を架けたほうが結果的に安く早いこともあります。ここを正直に言わない会社は、私は信用しません。

だから私は、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法を提案することが多いのです。ロープアクセス工法の技術的な解説や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。工法そのものを知りたい理事の方は、そちらのほうが読みやすいはずです。明誠のサービスとしての説明はロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。

富士市でのモデルケース

実際の建物条件で金額は変わりますので、あくまで考え方の例として2本挙げます。

ケース1:富士駅周辺/築26年・8階建て・42戸
全面足場で7,000万円の見積り。バルコニー側は足場、妻面と屋上まわりはロープアクセスというハイブリッドに組み替えて6,100万円。差額900万円、1戸あたり約21万円。工期は約1か月短縮。

ケース2:市郊外/築42年・5階建て・18戸
足場で3,300万円。ロープアクセス主体に切り替えて2,700万円。差額600万円、1戸あたり約33万円。さらに住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資を使い、一時金の徴収をゼロに。

ケース2で注目していただきたいのは、18戸で3,300万円=1戸あたり183万円という重さです。戸数が少ないマンションほど、1戸の負担は跳ね上がります。富士市の75棟には、こういう規模の建物が相当数あるはずです。


修繕積立金が足りないとき、打ち手は4つある

総会で「お金が足りない」となったとき、選択肢は4つです。

打ち手 内容 注意点
① 一時金の徴収 区分所有者から工事直前にまとめて集める 反対が最も出やすい。合意形成に時間
② 借入 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資など 管理組合名義。全期間固定。マンション管理センターの債務保証で理事長個人の連帯保証は不要
③ 段階施工 工事を2回・3回に分ける 仮設費が回数ぶんかかり、総額はむしろ増える
④ 工法の見直し 足場前提の仕様を組み直す 設計に入る前でないと選べない

私が申し上げたいのは順番です。④を最初に検討してください。

設計に入る前なら選択肢は4つあります。しかし設計事務所と仕様を固め、業者選定に入ってしまうと、④は事実上消えます。仮設計画を含んだ図面と数量が確定した後で「やっぱりロープアクセスで」とはなりません。

管理計画認定を取っていれば、②の金利が引き下げられます。「一時金50万円」という議案と、「月々3,000円の積立金見直し」という議案は、同じ金額を集める話でも、総会での通り方がまったく違う。ここが認定を取る現実的なメリットです。

住宅金融支援機構の制度はマンション共用部分リフォーム融資マンションすまい・る債の2本立てです。すまい・る債は年1回募集・口数上限があり実質的に先着順ですので、検討するなら年度の早い段階で。


富士市の気候・立地が、外壁に与える3つの影響

富士市には、この街ならではの劣化要因があります。

要因 起きること 仕様への反映
駿河湾からの塩害(田子の浦・海沿いエリア) 鉄部から先に傷む。手すりの付け根、避難ハッチ、外部階段 ケレン等級と防錆下塗りの仕様を、海側と山側で分ける
富士山からの吹き下ろしと強風 シーリングの追従疲労、笠木・パラペットからの雨水浸入、飛来物による塗膜の傷 高追従型シーリング、笠木まわりの重点点検
日照時間の長さと紫外線 南面・西面の塗膜劣化が北面より明らかに早い 方位別の劣化評価。全面同一グレードは無駄が出る

ここが重要なのですが、方位や面によって傷み方が違うということは、面によって最適な工法も違うということです。

海側の鉄部が集中している面は、点検と補修を頻繁にやりたい。だからロープアクセスで機動的に。全面的に下地を打ち直す必要がある面は、足場を架けたほうが早い。これがハイブリッド工法が富士市で効く、技術的な理由です。

屋上防水の膨れを1年放置した話

以前、屋上防水に畳1枚ほどの膨れができているのを見つけたことがありました。理事会にお伝えしたのですが、「次の大規模修繕でまとめてやりましょう」となり、1年が経ちました。

翌年、膨れは数倍に広がっていました。下地まで水が回り、最上階の天井にシミが出ていた。補修費用は当初の数倍になり、シミが出た住戸の方との関係を修復するのに半年かかりました。

膨れは、放っておくとまず間違いなく大きくなります。中に入った水が夏に膨張し、冬に収縮し、防水層を内側から押し広げていくからです。台風シーズンが終わった秋に、年1回の屋上点検を——これは費用のかからない予防策です。


富士市の大規模修繕、工事に適した時期はいつか

静岡県東部は温暖なので、山梨県内の市のように「冬は施工条件を下回るからできない」という制約はほとんどありません。ただし富士市には別の事情があります。

時期 評価 理由
3月下旬〜6月上旬 気温・湿度とも安定。最も条件が良い
6月中旬〜7月上旬 梅雨。塗装・防水は乾燥待ちで工期が延びる
7月中旬〜8月 猛暑。作業効率は落ちるが施工は可能
9月〜10月中旬 台風シーズン。足場の倒壊リスクと養生の手間
10月下旬〜11月 空気が乾き、条件が良い
12月〜2月 温暖なので作業可能日が多い。ただし強風日に注意

年間で本当に良い窓は、春と晩秋の2つ。そしてこの窓は、市内の他のマンションも狙っています。

春の窓を押さえたければ、前年の秋までに業者選定を終えている必要があります。逆算すると、いま8月に理事会で話題に出すのは、決して早すぎません。


着工18か月前からの逆算カレンダー

理事の任期が1年という管理組合がほとんどです。だからこそ、やるべきことを日付に落としておく。それが次の理事会への最大の引き継ぎになります。

時期 やること 連絡先
18か月前 劣化診断を実施。長期修繕計画の最終見直しが7年以内かを確認
17か月前 過去の大規模修繕の記録を集める(過去工事証明書に必要)
16か月前 管理計画認定の基準を、理事会で自己点検。規約改正の要否を判断 住宅政策課 0545-55-2814
15か月前 アスベスト分析調査を交付申請(全額補助なので先に走らせる) 建築土地対策課 0545-55-2791
14か月前 分譲マンションが耐震診断補助の対象か電話で確認 建築土地対策課 0545-55-2791
12か月前 工法を選定(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)。設計はこの後
11か月前 長寿命化促進税制の要件と減額割合を確認。仕様に3工事が入るか点検 資産税課 0545-55-2744
10か月前 マンション管理センターへ事前確認を依頼、適合証を取得 03-5801-0858
9か月前 資金計画。機構融資の事前相談。相見積り先を市外にも広げる
8か月前 富士市へ管理計画認定を申請(手数料無料 住宅政策課 0545-55-2814
6か月前 ブロック塀の交付申請。塀は別契約に切り出す 建築土地対策課 0545-55-2791
4か月前 交付決定を受けてから契約
竣工後3か月以内 長寿命化促進税制の申告(管理組合が一括で提出可 資産税課 0545-55-2744
引き継ぎ時 電話した日付・担当課・聞いたこと・答えをA4 1枚にまとめて次期理事会へ

最後の行を軽く見ないでください。「いつ、どこに、何を聞いて、どう答えられたか」の4点セットをA4 1枚で残す。これができている管理組合は、理事が交代しても議論が振り出しに戻りません。


相見積りで、必ず確認していただきたい3点

工法を決めた後、複数社から見積りを取る段階でのお願いです。

1. 数量の根拠は、図面拾いか現地実測か
図面から拾った数量と、実際に測った数量は違います。とくに築年数の古い建物では、竣工図と現況が一致しないことが珍しくない。「どちらで出しましたか」と一言聞くだけで、その会社の姿勢が分かります。

2. 仕様は、メーカー名・製品名・グレードまで書かせる
「シリコン系塗料」では比較になりません。同じシリコン系でも、耐用年数が倍違う製品があります。メーカー名と製品名が入って、初めて3社の金額が同じ土俵に乗ります。

3. 「別途」の中身と、下地補修が想定を超えたときの追加単価
見積書の「別途」は、後から請求される項目だと考えてください。何が別途なのかを契約前に確認する。そして下地補修は、開けてみないと数量が確定しません。想定数量を超えた場合の㎡単価を、契約前に見積書へ明記させてください。これが工事中の紛争を防ぐ、いちばん確実な方法です。

大規模修繕全体の進め方については大規模修繕工事のご紹介にまとめています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 富士市に、マンション共用部の大規模修繕そのものへの補助金はありますか。
A. 2026年8月時点の市の公開情報からは確認できませんでした。ただし、管理計画認定(申請手数料無料)とマンション長寿命化促進税制(固定資産税の3分の1減額)は分譲マンションが対象です。

Q2. 管理計画認定の手数料は本当に無料ですか。
A. 市のページに「認定申請にかかる手数料は無料です」と明記されています。ただし公益財団法人マンション管理センターのシステム利用料と事前確認審査料は別途必要です(出典:富士市)。

Q3. 長寿命化促進税制は、区分所有者全員が申告しなければいけませんか。
A. 富士市の場合、管理組合の管理者等から必要書類の提出があれば、区分所有者からの申告書がなくても減額が適用されると市が明記しています。申告期限は工事完了日から3か月以内、窓口は資産税課 家屋担当(0545-55-2744)です。

Q4. 分譲マンションは富士市の耐震補助の対象になりますか。
A. 耐震診断は「非木造建築物」が対象で、共同住宅を除く文言はありません。ただし補強計画・補強工事は「不特定多数の者が利用する建築物」等の6要件をすべて満たす必要があり、一般の分譲マンションが該当するかは市の公開情報から判断できませんでした。建築土地対策課(0545-55-2791)へご確認ください。

Q5. アスベストの調査費用は補助されますか。
A. 分析調査は費用の全額が補助され、限度額は25万円/棟です。除去等工事は3分の2以内・60万円/敷地が限度で、実際の除去費用には足りないことが多いため、自己負担を前提に長期修繕計画へ載せることをお勧めします。

Q6. ブロック塀の撤去補助は、大規模修繕の契約に含めても大丈夫ですか。
A. 市は「手続き前に補助対象事業を進めた場合には、補助の対象になりません」と明記しています。塀は別契約に切り出し、交付決定を受けてから着工する段取りが安全です。

Q7. ロープアクセス工法は、どんなマンションでも使えますか。
A. すべての建物に向くわけではありません。全面的な下地補修が必要な建物は足場のほうが結果的に安く早いこともあります。技術的な解説はロープアクセスドットコムをご参照ください。

Q8. 修繕積立金が足りません。何から手をつけるべきですか。
A. 設計に入る前であれば、一時金・借入・段階施工・工法見直しの4つの選択肢があります。段階施工は仮設費が回数ぶんかかり総額が増えることが多いため、まず工法の見直しから検討されることをお勧めします。


この記事のポイントまとめ

  • 富士市に共用部の大規模修繕への直接補助は、公開情報では確認できず
  • 管理計画認定の申請手数料は無料。市が推進計画で意図的にそう定めている
  • 長寿命化促進税制は減額割合3分の1。申告先は資産税課(0545-55-2744)
  • 管理組合が一括申告でき、区分所有者個々の申告書は不要と市が明記
  • 市内の分譲マンションは75棟、うち16%が築40年超。20年後には61%
  • 修繕積立金の設定根拠が「不明」55%。市自身が全国平均より低いと認めている
  • 耐震診断は非木造建築物が対象・1棟最大300万円。補強工事は要件が厳しい
  • アスベスト分析調査は全額補助(25万円/棟)。除去は60万円が限度
  • ブロック塀はすべて撤去が条件、上限26万6千円。手続き前着工は対象外
  • 仮設足場は総工事費の15〜25%。補助金とは桁が2つ違う
  • 工法の見直しは設計に入る前でないと選べない

最後に

富士市の制度をひととおり調べて、私が受けた印象を正直に書きます。

富士市は、管理組合を信用している市だと思いました。

認定申請の手数料を無料にする。税制の申告を管理組合がまとめて出せるようにする。どちらも「管理組合がちゃんとやってくれるなら、行政の手続きは軽くする」という姿勢です。75棟という規模だからこそできる設計かもしれませんが、それでも、他の市の記事を書いてきた私から見ると珍しい。

だからこそ、その優しさを受け取れる状態になっているかが問われます。長期修繕計画の見直しが7年以内か。名簿を年1回確認しているか。積立金の根拠を説明できるか。市の調査で55%が「不明」だったという事実は、裏を返せば、あと一歩の組合がそれだけあるということです。

まずは電話2本、合計20分で足ります。

  • 住宅政策課 0545-55-2814(管理計画認定について)
  • 建築土地対策課 0545-55-2791(耐震診断・アスベスト・ブロック塀について)

そのうえで、工法の話を聞いてみたいと思われたら、お問合せフォームからご連絡ください。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がける改修会社です。通常の足場工法、無足場のロープアクセス工法、両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な工法をご提案しています。日本初となるロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年8月21日


出典・参考資料

主なお問い合わせ先

用件 部署 電話番号
マンション管理計画認定・住宅施策 都市整備部 住宅政策課 住まい政策担当 0545-55-2814
耐震診断・耐震補強・アスベスト・ブロック塀 都市整備部 建築土地対策課 建築安全推進担当 0545-55-2791
マンション長寿命化促進税制の申告 財政部 資産税課 家屋担当 0545-55-2744
管理計画認定制度・マンション管理適正化法全般 一般社団法人 日本マンション管理士会連合会 03-5801-0858
富士市役所(代表) 0545-51-0123

本記事は2026年8月21日時点で公開されている情報をもとに作成しています。補助制度の内容・金額・受付期間は変更される場合がありますので、申請前に必ず各窓口の最新情報をご確認ください。また、制度の適用可否は個別の建物の状況によって判断されます。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の適用を保証するものではありません。