
中央区の管理組合が無料で使える相談・専門家派遣8つ|「有料の制度がタダになる」仕組みを使っていますか
2026年9月12日 更新
「東京都のアドバイザー制度、有料なので見送りました」
日本橋のマンションで、修繕委員の方からこう言われたことがあります。長期修繕計画(12年〜30年先までの修繕工事と費用をまとめた計画書)の見直しをどう進めるか、という話の途中でした。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンションやビルの外壁と向き合ってきました。足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、両方やってきた人間です。
そのとき私がお伝えしたのは、「中央区なら、その料金は区が全額出してくれますよ」ということでした。
これは中央区の制度設計の特徴です。東京都が有料で提供しているアドバイザー派遣の費用を、中央区が全額助成する。つまり管理組合の持ち出しはゼロになります。ところが「東京都の制度=有料」という情報だけが理事会に伝わっていて、区の助成とセットで考えられていないことが、驚くほど多い。
今日は、中央区のマンション管理組合とビルオーナーが、お金をかけずに使える相談・派遣の制度を8つ、令和8年度の一次情報で整理します。
結論:中央区で無料で使える相談・派遣は8つある
先に一覧でお見せします。
| # | 制度・窓口 | 誰が対応するか | 費用 | 申込先 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | マンション管理士派遣 | マンション管理士 | 無料(年度内5回) | 中央区都市整備公社 03-3561-5191 |
| 2 | 分譲マンション管理相談 | 建築士事務所協会・マンション管理士会・公社職員 | 無料(月2回・要予約) | 中央区都市整備公社 03-3561-5191 |
| 3 | 東京都の専門相談 | 弁護士 または 一級建築士 | 無料 | 中央区都市整備公社が受付 |
| 4 | アドバイザー制度利用助成 | 東京都のマンションアドバイザー | 区が全額助成=実質無料 | 中央区都市整備公社 03-3561-5191 |
| 5 | 東京都 マンションアドバイザー無料派遣 | マンション管理士等 | 無料(要届出) | 東京都防災・建築まちづくりセンター 03-5989-1453 |
| 6 | 東京都 マンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応) | 講習受講済みマンション管理士 | 無料 | 東京都マンション管理士会 |
| 7 | 中央区 法律相談(予約制) | 弁護士 | 無料(年度内3回) | まごころステーション 03-3546-9590 |
| 8 | 管理組合交流会/管理セミナー | 他マンションの役員・講師 | 無料 | 中央区都市整備公社 03-3561-5191 |
これに加えて、国指定の(公財)マンション管理センターの電話相談も無料で使えます。
ここからが本題です。1つずつ、回数・時間・申込方法まで見ていきます。
1. まず電話すべきは「中央区都市整備公社」
中央区のマンション施策は、一般財団法人中央区都市整備公社が実務を担っています。区役所の住宅課に電話するより、こちらが早いことが多い。
私は中央区の案件で理事長さまとお話しするとき、最初にこの番号をメモ用紙に書いてお渡しするようにしています。
中央区都市整備公社 まちづくり支援第一課 電話 03-3561-5191
所在地は中央区八丁堀一丁目25番3号、京華スクエア内です。八丁堀駅からすぐの場所にあります。
マンション管理士派遣
中央区の発表によれば、分譲マンションの維持管理・大規模修繕・建替えなどについて助言・提案等を行うマンション管理士を、管理組合の総会・理事会・勉強会等に無料で派遣しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 派遣対象 | 区内に所在する分譲マンションの管理組合 |
| 派遣回数 | 1管理組合につき同一年度内に5回まで |
| 1回の時間 | 2時間以内 |
| 派遣先 | 利用者の希望する場所 |
| 費用 | 利用者の負担なし |
| 申込 | マンション管理士派遣申込書を公社へ提出 |
(出典:中央区「マンション管理士派遣」、一般財団法人中央区都市整備公社「マンション管理士派遣」)
年度内5回、1回2時間。合計10時間分の専門家の時間が、無料で使えるということです。
これがどういう意味を持つか。大規模修繕の検討は、だいたい次のような順番で進みます。
- 劣化の状況を知る(調査・診断をどうするか)
- 修繕委員会を立ち上げる(誰が入るか、権限はどこまでか)
- 発注方式を決める(責任施工方式か、設計監理方式か)
- 業者を選ぶ(何社に声をかけ、何で比べるか)
- 総会で決議する(説明資料をどう作るか)
この5つの段階それぞれに1回ずつ管理士を呼ぶと、ちょうど5回です。設計事務所にコンサルティングを依頼すれば数十万円かかる部分の、かなりの割合がここでカバーできます。
私の経験上、修繕委員会が一番揉めるのは(3)の発注方式です。理事会のなかで「知り合いの業者に頼めばいい」という方と「設計事務所を入れないと不安だ」という方が対立する。ここに中立の第三者が1人入るだけで、話の進み方がまったく変わります。
派遣先は「利用者の希望する場所」とされています。つまりマンションの集会室に来てもらえるということです。役員が公社まで出向く必要がない。これは平日日中に働いている理事さまにとって、地味ですが大きい違いです。
2. 月2回・予約制の「分譲マンション管理相談」
派遣まで踏み切る前の、もっと軽い入口がこれです。
中央区都市整備公社では、分譲マンションの計画修繕・維持管理や日常のトラブルなど、管理組合の役員や区分所有者が抱える問題について相談を受け付けています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | (1) 区内の分譲マンション管理組合 (2) 区内の分譲マンション区分所有者 |
| 日時 | 原則として毎月第2・第4月曜日 午後1時/2時/3時(予約制・各回1時間以内) |
| 場所 | 京華スクエア(中央区八丁堀一丁目25番3号) |
| 相談員 | 一般社団法人東京都建築士事務所協会(建物維持管理等) 一般社団法人東京都マンション管理士会(管理全般) 中央区都市整備公社職員 |
| 費用 | 無料 |
| 予約 | 03-3561-5191(当日の飛び込みは不可) |
(出典:中央区「分譲マンション管理相談」、中央区都市整備公社「分譲マンション管理相談」)
ここで押さえておきたいのは、相談員に建築士事務所協会の建築士が入っていることです。
管理士だけが対応する窓口も多いなかで、建物の維持管理そのものを専門にする建築士が席に座っているのは、修繕を検討している組合にとって意味があります。「外壁のこのひび割れは放置していいのか」「管理会社が出してきた診断報告書の読み方が分からない」——こうした技術寄りの質問が、その場で処理できるからです。
なお、当日その場で申し込むことはできません。第2・第4月曜日と分かっていても、前もって電話が要ります。ここで「今日行けば聞ける」と勘違いして空振りする方が時々いらっしゃいます。
3. 弁護士・一級建築士が出てくる「東京都の専門相談」
意外と知られていないのがこれです。
東京都では、区市の分譲マンション相談窓口で相談を受けた上で「専門家による対応が必要」と認めたものについて、弁護士または一級建築士が対応する専門相談を行っています。無料、完全予約制です。
中央区の場合、申込は中央区都市整備公社で受け付けます。都に直接申し込むのではありません。
(出典:中央区都市整備公社「分譲マンション管理相談」、東京都マンションポータルサイト「専門相談」)
つまり、流れはこうなります。
<code>中央区都市整備公社の管理相談(無料・第2/第4月曜) ↓ 専門家の判断が要ると認められた場合 東京都の専門相談(無料・弁護士 or 一級建築士) </code>
一級建築士が無料で見てくれるという点が、修繕を考えている組合にとっては大きい。たとえば「管理会社から提示された修繕見積が妥当かどうか」「調査報告書の書きぶりが工事を煽っていないか」といった、判断に技術的な裏付けが要る話です。
私は工事をする側の人間です。だからこそ申し上げますが、発注する側にも技術が分かる人が1人いてくれたほうが、話は速く、そして公平になります。値切られるのが嫌だから第三者を入れないでほしい、という業者がいるとしたら、それは疑ってかかっていい相手です。
4. 中央区の目玉:有料のアドバイザー制度が「全額助成」で実質無料になる
ここが中央区の最大の特徴です。冒頭で触れた話に戻ります。
東京都(公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター)が運営するマンションアドバイザー制度は、本来は有料です。ところが中央区は、区内の管理組合がこれを利用する際の費用を全額助成しています。
助成の対象と内容
| 建替え・改修アドバイザー | 管理アドバイザー | |||
|---|---|---|---|---|
| コース | Aコース(入門編) | Bコース(検討書の作成) | Aコース(講座編) | Bコース(相談編) |
| 内容 | 建替えか改修かの検討に必要な法律・税制・公的支援等のアドバイス | 建替えか改修かを比較検討できるよう、現況や法規制を確認し検討書を作成 | 基本的な事項をテキストを使いながら解説 | 具体的な個別の相談内容にアドバイス |
| 対象 | 区内の分譲マンション管理組合 | 概ね築30年以上経過している区内の分譲マンション管理組合 | 区内の分譲マンション管理組合 | 区内の分譲マンション管理組合 |
| 助成額 | まちづくりセンターの定める料金を全額助成(テキスト代は対象外) | 同左 | 同左 | 同左 |
| 助成回数 | 1管理組合につき各1回 | 1管理組合につき各1回 | 1管理組合につき同一年度内に各1回 | 1管理組合につき同一年度内に各1回 |
(出典:中央区「分譲マンションアドバイザー制度利用助成」)
テキスト代だけは自己負担ですが、それ以外は区が持ちます。
なぜこれが効くのか。次章で説明する東京都の「無料派遣」は、管理状況届出制度の届出をした要届出マンション(昭和58年以前の建物)に限られるからです。
中央区には晴海・勝どき・月島の湾岸エリアを中心に、築浅のタワーマンションが数多くあります。これらは要届出マンションではないので、東京都の無料派遣の対象外です。そこを中央区の全額助成が埋めている。築年数を問わず、区内の管理組合なら実質無料でアドバイザーを呼べるということです。
この構図を理解している理事会は、私の実感ではかなり少数派です。
5. 東京都のマンションアドバイザー無料派遣(届出制度とセット)
こちらは古い建物向けのルートです。
公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターは、管理状況届出制度の届出・更新を行った管理組合限定で、管理アドバイザーA・Bコース、建替え・改修アドバイザーAコース、B-0コースを無料で提供しています。
前提となる「管理状況届出制度」
「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」(平成31年3月制定)に基づき、令和2年4月から始まった制度です。
- 昭和58(1983)年12月31日以前に新築された
- 居住の用に供する独立部分が6以上ある分譲マンション
この条件に当てはまるマンションは、管理状況の届出が義務付けられています(要届出マンション)。前回の届出から5年以内ごとに更新が必要です。
無料になる回数
| 状況 | 無料回数 |
|---|---|
| 届出が受理、または更新を届け出た要届出マンション | 1回まで無料 |
| 上記のうち、管理不全の兆候があるマンション | 5回まで無料 |
1コースあたり2時間程度です。
使えるコース(大規模修繕に効くもの)
講座編(A)
| コース | 内容 |
|---|---|
| A-2 | 長期修繕計画作成ガイドライン活用の手引きの解説 |
| A-4 | 計画修繕工事の進め方 |
| A-5 | 滞納管理費・修繕積立金督促の仕方 |
相談編(B)
| コース | 内容 |
|---|---|
| B-4 | 修繕計画の作成や修繕積立金等の設定に関すること |
| B-5① | 修繕工事検討段階での相談(劣化状況の調査・診断、修繕工事の検討組織、工事の方式 等) |
| B-5② | 修繕工事準備段階での相談(工事の内容、業者選定の仕方、合意形成 等) |
※講座編には有料のテキストが必要なコースがあります。
申込みは申込書をFAX・メール・郵送でセンターへ。申込後1〜2週間程度で担当アドバイザーから日程調整の連絡が入ります。押印書類は郵送が必要です。
(出典:公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」)
お問い合わせ:公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター まちづくり推進課 TEL 03-5989-1453
私がこの制度で一番おすすめするのはB-5①です。「調査・診断をどこに頼めばいいか分からない」という段階で呼べる。ここで判断を誤ると、必要のない工事が数百万円単位で見積書に乗ることがあります。
なお、日本橋・京橋・八丁堀のあたりには昭和58年以前の建物が相当数残っています。「うちは届出したっけ?」が分からない状態は、無料派遣の権利を眠らせているのと同じです。理事が交代すると、この記憶はあっさり消えます。
また、中央区の全額助成(前章)と、東京都の無料派遣(本章)は、どちらも同じアドバイザー制度を指しています。自分のマンションがどちらのルートで無料になるのかは、公社に電話すれば整理してもらえます。二重に申し込む必要はありません。
6. 東京都のマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)
東京都が令和5年度から実施している事業で、令和8年度も継続しています。
防災力向上や認知症対応の講習を受講したマンション管理士が、実践的なノウハウの習得や手続を支援し、円滑な合意形成に向けたアドバイスを行うものです。
令和8年度の募集内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 都内に所在するマンション管理組合 |
| 回数 | 防災力向上・認知症対応 それぞれ2回まで(無料) |
| 通算 | 令和5〜7年度に派遣を受けている場合、その回数も上限に含まれる |
| 受付期間 | 令和8年6月23日(火)〜令和9年2月26日(金) |
| 募集数 | 防災力向上・認知症対応 合わせて160件(達し次第、新規受付を締切) |
| 申込先 | 東京都マンション管理士会 https://www.kanrisi.org/ |
(出典:東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」)
アドバイスの例として公表されているのは次のような内容です。
- 自主防災組織の設置や強化の方法
- 災害時にも活用できる居住者等名簿の作成
- 発災時の緊急対応を定める管理規約の整備方法
- 認知症の可能性のある居住者への理解や対応方法
- バリアフリー改修を含む長期修繕計画の策定
注意点を2つ、正直に申し上げます。
1つは、都内全体で160件しか枠がないということ。都内の分譲マンション数を考えれば、これは相当に少ない枠です。受付は9月時点でまだ開いている可能性がありますが、年明けに動こうとすると締め切られていることも考えられます。
もう1つは、過去の利用回数が通算されること。令和5〜7年度にすでに2回使っている場合、そのテーマではもう無料枠が残っていません。申込前に管理会社か前任の理事長さまに確認しておくと、二度手間を防げます。
中央区の湾岸エリアは、高層階からの避難という固有の課題を抱えています。停電時にエレベーターが止まったあと、上層階の高齢居住者をどうするか。この論点は防災力向上のテーマとして相談できる範囲です。そして避難計画は、外壁工事中の仮設計画とも無関係ではありません。
問い合わせ先:東京都住宅政策本部 民間住宅部 マンション課 マンション管理担当 03-5320-5004(直通)
管理が行き詰まっている場合の「伴走型」支援
もう1つ、東京都には管理不全予防・改善支援事業(伴走型)という枠組みがあります。
管理組合や管理規約がない等、管理不全の兆候があり、区分所有者のみでは管理の適正化が困難なマンションに対して、一定期間、マンション管理士を管理組合の役員等として無料で派遣するものです。派遣された管理士は現地調査を行って支援提案書を作成し、説明会を経て外部管理者方式等の導入を支援します。
(出典:東京都マンションポータルサイト「管理不全予防・改善支援事業(伴走型)」)
これは「相談」ではなく「介入」に近い支援です。そもそも理事会が機能していないという段階のマンション向けで、応募は先着順。お問い合わせ先は東京都住宅政策本部 マンション課 マンション施策調整担当(03-5320-7532)です。
自分のマンションがここに当てはまるかもしれない、と思われた場合は、まず中央区都市整備公社に相談されるのが順序として自然です。
7. 中央区の法律相談(令和8年4月からオンライン予約に)
管理費・修繕積立金の滞納、区分所有者間のトラブル、管理委託契約の解約——こうした法律寄りの問題は、中央区の法律相談が使えます。
令和8年度から、オンライン予約が始まりました。 これは実務上かなり大きい変更です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 中央区在住または在勤の方(個人) |
| 相談料 | 無料 |
| 相談時間 | 1回30分 |
| 回数 | 令和8年度内(令和8年4月1日〜令和9年3月31日)に1人3回まで |
| 予約 | 相談日の60日前から前日まで/オンラインフォームまたは電話 |
| 電話予約 | まごころステーション 03-3546-9590(午前8時30分〜午後5時) |
相談場所と日時
| 場所 | 日程 |
|---|---|
| 中央区役所 区民相談室 | 毎週金曜日 午後1時〜4時 |
| 日本橋特別出張所 | 毎月第2・第4水曜日 午後1時〜4時 |
| 月島特別出張所 | 毎月第1・第3月曜日 午後1時〜4時 |
| 晴海特別出張所 | 毎月第3木曜日 午後1時〜4時 |
各会場とも13時00分/13時35分/14時10分/14時45分/15時20分の5枠(各30分)です。
(出典:中央区「法律相談(予約制)」掲載日:2026年4月1日)
ここで見逃されがちなのが、「在勤」も対象に含まれる点です。中央区は昼間人口が夜間人口を大きく上回る地域です。区内の会社にお勤めで、区外のマンションの理事をされている方——この方も、中央区の法律相談は使えます。
また、月島・晴海の特別出張所でも相談できるのは湾岸エリアの方にとって現実的です。区役所(築地)まで出向く必要がない。
なお、この相談は個人が対象です。賃貸マンションやビルを法人で所有しているオーナーさまの場合は、対象の考え方が変わりますので、まごころステーション(03-3546-9590)に確認されることをおすすめします。
経済的に余裕のない方向けには、日本司法支援センター(法テラス東京 050-3383-5300)が無料法律相談と弁護士・司法書士費用の立替を行っています。
8. 交流会・セミナー・国のセンター
分譲マンション管理組合交流会
分譲マンションの管理組合の運営に係る知識や情報を交換する会です。入会申込みは随時受け付けられています。対象は区内の分譲マンションの管理組合代表者または区分所有者です。
(出典:中央区「分譲マンション管理組合交流会」)
私はこれを軽視していません。理由は単純で、他のマンションの実際の工事金額と失敗談が聞ける場だからです。
現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、相場より明らかに高い金額で契約してしまった組合に、工事が終わってから出会うときです。「なんで着工前に一言、近所のマンションに聞かなかったんだろう」と思うことがある。交流会は、その一言を聞ける場所です。
中央区都市整備公社は、このほかに分譲マンション管理セミナーとマンション情報誌の発行も行っています(出典:中央区都市整備公社「マンション管理支援」)。情報誌は、新任の理事さまへの引き継ぎ資料として使い勝手がいい。理事会の役員は1年〜2年で交代することが多く、そのたびに知識がリセットされます。紙で残るものは、意外と効きます。
国の指定センターにも無料で電話できる
(公財)マンション管理センターは、マンション管理適正化法に基づく「マンション管理適正化推進センター」の指定を受けている唯一の団体です。
| 相談内容 | 電話番号 |
|---|---|
| 管理組合運営、管理規約等 | 03-3222-1517 |
| 建物・設備の維持管理 | 03-3222-1519 |
- 受付:月曜日〜金曜日(祝日・年末年始を除く)9時30分〜17時
- 1件あたり15分前後でアドバイスできるよう運用
- メール相談フォームあり(回答は口頭)
- 面談は事前予約制
(出典:公益財団法人マンション管理センター「相談窓口について」)
公平・中立の立場でアドバイスする窓口で、特定の弁護士や企業を紹介することはしないと明記されています。一方で、専門家レベルの法律相談や、修繕等の個別具体的なアドバイスは行っていない、当事者間の仲裁には立たない、という限界もはっきり書かれています。
賃貸マンションの相談は対象外です。賃貸をお持ちのオーナーさまはご注意ください。
相談に行くとき、何を持っていけばいいか
ここが一番実務的な話です。
無料相談は30分〜2時間と時間が限られています。手ぶらで行くと、状況の説明だけで持ち時間が終わります。私は理事長さまに、3点セットをお持ちくださいとお伝えしています。
持参する3点セット
| # | 資料 | なぜ要るか |
|---|---|---|
| 1 | 直近の総会議事録(できれば2期分) | 何が決まっていて、何が保留かが一発で伝わる |
| 2 | 長期修繕計画書 | 次の工事時期と、積立金の残高・不足額が分かる |
| 3 | 管理規約(最新の改正版) | 決議要件、専有部と共用部の境界がここで決まる |
余裕があれば、この3つに加えて直近の決算書(収支報告)と、建物の全景写真・気になる箇所の写真があると話が速く進みます。スマートフォンで撮った写真で構いません。
相談前に決めておくこと
資料より大事なのが、「今日、何を持ち帰りたいか」を1行で決めておくことです。
- ×「大規模修繕について相談したい」
- ○「調査・診断を、管理会社に頼むか第三者に頼むかを決めたい」
前者だと一般論で30分が終わります。後者なら、判断材料が手に入る。私はいつも理事長さまに「相談の目的を、総会の議案書の1行のつもりで書いてみてください」とお伝えしています。
中央区の場合、管理士派遣はマンションの集会室に来てもらえるのが強みです。理事会の日程に合わせて呼べば、役員全員が同じ説明を同時に聞ける。これは伝言ゲームによる誤解を防ぐ意味で、かなり効きます。
無料相談で聞いたあと、工事の話はどうなるか
ここは私の立場から、正直に書いておきます。
無料の相談・派遣で得られるのは、中立の情報と判断の枠組みです。実際に足場を組むのか、ロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が壁面に降下して施工する、足場を架けない工法)で行くのか、部位ごとに使い分けるのか——具体的な施工の話は、最終的に施工会社との対話になります。
中央区は、建物の性格が地域ごとにはっきり分かれる区です。
日本橋・京橋・八丁堀は、狭い敷地に中低層のビル・マンションが密集しています。隣地との離隔がほとんどなく、道路使用の制約も厳しい。私が八丁堀エリアで関わった建物では、4面のうち1面が隣のビルと50cmしか離れておらず、その面だけ足場が入らないという状況がありました。
このとき使えるのが、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法です。足場が組める3面は足場で、組めない1面はロープで。仮設費を抑えながら、施工品質は落とさない。
晴海・勝どき・月島の湾岸エリアは、逆に超高層です。20階を超える建物に全面足場を架けると、仮設費だけで工事費の3割前後に達することがあります。しかも海に近いため、風の影響を強く受ける。この条件では、足場の一部をロープアクセスに置き換える検討に、はっきり意味が出てきます。
工法ごとの向き・不向きは、ロープアクセス工法のご紹介と、工法解説専門サイトのロープアクセス工法の基礎知識(rope-access-method.com)に整理してあります。無料相談に行かれる前に目を通していただくと、アドバイザーへの質問の質が上がると思います。
特に「うちの建物で無足場工法が成立するのか」を判断したい方は、無足場工法が向く建物・向かない建物の見極め方を先に読んでおかれると、専門家との会話が早く進みます。
私たち明誠がどういう考え方で工法を選んでいるかは明誠の工事に対する考え方に、管理組合さま向け・オーナーさま向けのサービス内容は管理組合の皆さまへ、ビルオーナーの皆さまへにまとめています。
誤解のないように書きますが、無料相談に行ったから見積を取らなければいけない、ということはありません。むしろ順番は逆で、無料相談で判断の軸を作ってから見積を取ったほうが、業者の比較が正確になります。私は自社が比較されることを嫌だと思ったことがありません。比較されて選ばれない仕事は、そもそも受けても長続きしないからです。
まとめ:今週、理事会で動ける3つのこと
長くなったので、今週できることだけに絞ります。
1. 中央区都市整備公社に電話して「うちはどのルートで無料になるか」を聞く
03-3561-5191(まちづくり支援第一課)
築30年超か築浅かで、使える無料枠が変わります。東京都の無料派遣(要届出マンション)なのか、中央区の全額助成(築年数不問)なのか。これは電話1本、5分で整理できる確認です。
2. マンション管理士派遣の申込書を取り寄せておく
年度内5回・1回2時間、集会室まで来てもらえます。年度は3月末で切り替わり、使わなかった回数は繰り越されません。9月の時点で残り半年という事実は、意識しておいて損はないと思います。
3. 3点セットをPDFにして共有フォルダに置く
総会議事録・長期修繕計画書・管理規約。この3つをスキャンしてPDFにし、理事会で共有できる状態にしておく。相談に行くときも、業者に見積を依頼するときも、この3つが起点になります。理事が交代しても消えない形にしておくことが、結局は組合の資産を守ります。
9月です。年度の折り返しを過ぎました。東京都のマンション管理士無料派遣は令和9年2月26日までの受付で、枠は都内160件。中央区の管理士派遣は年度内5回で、3月末にリセットされる。動ける期間は、思っているより短いというのが、カレンダーから見た実際のところです。
中央区の建物は、私たち施工側から見ても難易度の高い物件が多い地域です。日本橋の狭い敷地、晴海の超高層、築地・月島の入り組んだ路地。だからこそ、判断を1人で抱え込まないでいただきたいと思っています。無料で使える窓口が8つもあるのに、使われないまま年度が終わるのを何度も見てきました。
工法や仮設の相談だけでも構いません。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームから、遠慮なくお声がけください。
出典・参考資料
- 中央区「マンション管理士派遣」
- 中央区「分譲マンション管理相談」
- 中央区「分譲マンションアドバイザー制度利用助成」
- 中央区「分譲マンション管理組合交流会」
- 中央区「その他の分譲マンション管理支援」
- 中央区「法律相談(予約制)」(掲載日:2026年4月1日)
- 一般財団法人中央区都市整備公社「マンション管理士派遣」
- 一般財団法人中央区都市整備公社「分譲マンション管理相談」
- 一般財団法人中央区都市整備公社「マンション管理支援」
- 公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター「マンションアドバイザー無料派遣」
- 東京都マンションポータルサイト「分譲マンション向けマンション管理士無料派遣(防災力向上・認知症対応)」
- 東京都マンションポータルサイト「管理不全予防・改善支援事業(伴走型)」
- 東京都マンションポータルサイト「専門相談」
- 東京都マンションポータルサイト「管理状況届出制度」
- 公益財団法人マンション管理センター「相談窓口について」
- 国土交通省「マンション政策」
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月12日時点で公表されている中央区、一般財団法人中央区都市整備公社、および東京都・国土交通省の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず中央区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。なお、中央区のマンション管理支援に関する各ページ(マンション管理士派遣・分譲マンション管理相談・アドバイザー制度利用助成・交流会)は表示上の掲載日が2023年1月18日であり、令和8年度の運用と異なる可能性があります。回数・日時・助成額は、申込前に中央区都市整備公社(03-3561-5191)へ電話でご確認ください。法律相談のページは掲載日2026年4月1日で、令和8年度の情報です。
ロープアクセス工法・無足場工法の技術情報は、専門サイト https://rope-access-method.com/ にまとめています。


