
2026年9月19日 更新
Q. 「老朽化が進んだので大規模修繕をやめて建て替える」という判断は、うちのマンションやビルにも起こりうるのでしょうか。起こるとしたら、その分かれ目はどこにあるのでしょうか。
A. 分かれ目は「築年数」ではなく、①躯体(くたい=建物の骨格)が修繕で使い続けられる状態か ②合意が取れるか ③建て替え後の取得費を負担できるか の3点です。日本のマンションの現実を数字で言えば、築40年以上のストックは2025年末で約158.8万戸あるのに対し、建替えの実績は累計323件・約26,000戸(2025年3月31日時点)にとどまります(出典:国土交通省「築40年以上の分譲マンション数の推移」「マンション建替え等の実施状況」)。つまり大半の建物にとって、現実解は「修繕で寿命を延ばしながら、資産価値を保つ」ことになります。
2026年9月17日、宮城県の村井知事が県議会で、老朽化した宮城県武道館について改修方針を転換し、現地での建て替えを表明したと各社が報じました。公共施設の話ではありますが、「大規模な改修を行っても繰り返し修繕が必要になる」「空調の設置に多額の費用がかかる」「エレベーターの設置が難しい」という判断理由は、築40年を超えたマンションやビルで私たちが日々ぶつかっている論点とほぼ同じです。
私は20年以上、東京・神奈川・埼玉・千葉をはじめとする関東一円で、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕の現場に立ってきました。この記事では、今回のニュースを入口に、「修繕で延命するか、建て替えに舵を切るか」を管理組合・オーナーがどう判断すればよいのかを、公的な一次情報の数字と、現場で見てきた実感の両方から整理します。
何が起きたのか|宮城県武道館が「大規模修繕を断念」した経緯
報道で示された3つの理由
2026年9月17日の宮城県議会で表明された内容は、報道によれば次の通りです。
- 県が2024年に定めた整備方針では、建物が頑丈であることを前提に、バリアフリー化や空調設備の設置などの改修にとどめる計画だった
- その後の調査で老朽化が著しく、大規模な改修を行っても繰り返し修繕が必要になることが判明した
- 空調設備の設置に多額の費用がかかり、エレベーターの設置も難しいことが分かった
(出典:khb東日本放送「宮城県武道館が現地建て替えへ 老朽化著しく大規模修繕を断念」、仙台放送「老朽化の宮城県武道館が現地建て替えへ」。工期・予算は今後検討とされています)
注目していただきたいのは、方針転換のきっかけが「調査」だったという点です。2024年の段階では「建物が頑丈だから改修で足りる」と判断されていたものが、詳細に調べたら前提が崩れた。これは公共施設に限った話ではありません。
「築45年」という年齢が持つ意味
宮城県武道館は1981年開館で、2026年時点で築45年です。1981年(昭和56年)6月1日は、建築基準法の新耐震基準が施行された日でもあります。マンションの世界では、この日より前に建築確認を受けた建物を「旧耐震マンション」と呼び、耐震診断や耐震改修の議論の起点になっています。
私がお付き合いのある管理組合でも、築40年を超えたあたりから「このまま直し続けていいのか」という声が理事会で出はじめます。正直に申し上げますが、その問いが出ること自体は健全です。問題は、問いに答えるための材料を持たないまま、印象論で議論が進んでしまうことのほうです。
結論|修繕か建て替えかの分岐点は「躯体」「合意」「資金」の3つ
先に結論をお伝えします。私が現場で見てきた限り、修繕と建て替えの分かれ目は次の3点に集約されます。築年数そのものではありません。
| 分岐点 | 修繕で進められるサイン | 建て替え・再生を検討し始めるサイン |
|---|---|---|
| ①躯体の状態 | 鉄筋の腐食が限定的、コンクリートの中性化が表層にとどまる、構造体に大きな損傷がない | 構造クラックが広範、鉄筋の断面欠損が進行、耐震性能が現行基準に大きく不足 |
| ②合意形成 | 総会で修繕の予算議案が通る、理事会の継続性がある | 区分所有者の高齢化・所在不明で決議が成立しない、賃貸化・空室が過半 |
| ③資金 | 修繕積立金と借入で工事費を賄える見通しがある | 修繕費が建て替え後の取得費に接近、追加負担金の合意が見込めない |
このうち①躯体の状態だけは、調査しなければ誰にも分かりません。宮城県武道館のケースがまさにそうでした。2024年時点の「頑丈だから改修でよい」という前提が、調査によって覆っています。
私はいつも理事長さまに、「まず建物に聞いてください」とお伝えしています。外壁の打診調査、赤外線調査、ドローンによる外観確認、コンクリートのコア抜き試験。これらは建て替えを判断するためにも、修繕を判断するためにも、同じだけ必要な材料です。調査を省いて出した結論は、数年後にひっくり返ります。明誠の調査メニューは建物の点検・調査サービスとドローンによる外壁点検にまとめています。
数字で見る現実|築40年以上158.8万戸に対し、建替えは累計323件
国土交通省の最新データ(2026年8月31日更新)
ここからが本題です。日本のマンションストックの現実を、公的な数字で押さえておきます。
| 指標 | 数値 | 時点 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 築40年以上のマンション | 約158.8万戸 | 2025年末 | 国土交通省 |
| 10年後(2035年末)の見込み | 約313.1万戸(約2.0倍) | 推計 | 同上 |
| 20年後(2045年末)の見込み | 約503.6万戸(約3.2倍) | 推計 | 同上 |
| マンション建替えの実績 | 累計323件・約26,000戸 | 2025年3月31日 | 国土交通省 |
| 建替円滑化法によるマンション敷地売却等 | 累計17件・約1,300戸 | 2025年3月31日 | 同上 |
築40年以上の約158.8万戸に対し、これまでに建て替えられたのは約26,000戸。単純に比べれば2%にも届きません(建替え実績には築40年未満の案件も含まれるため、厳密な比率ではなく規模感としてご覧ください)。
さらに、改正法の政府資料では、築40年以上のマンションの住戸のうち世帯主が70歳以上の世帯が5割以上と示されています(出典:法務省・国土交通省「改正法の概要」)。建物の老いと居住者の老いが同時に進む、いわゆる「2つの老い」です。
なぜ建て替えが進まないのか|新築価格という壁
建て替えが進まない最大の理由は、建て替え後の住戸を取得する費用です。ここで2026年9月17日に発表された、もうひとつのニュースが効いてきます。
不動産経済研究所の調査によれば、2026年8月の首都圏(1都3県)新築分譲マンションの1戸あたり平均価格は9,770万円(前年同月比5.4%下落)、発売戸数は1,140戸(同12.4%減)、初月契約率は61.1%でした(出典:不動産経済研究所 マンション市場動向、NOVAIST「首都圏新築マンション、8月平均9770万円」)。4カ月ぶりに1億円を下回ったとはいえ、9,770万円です。
建て替えでは、容積率に余裕がある敷地なら増床分を売却して費用の一部を賄えます。しかし増床余地が乏しい物件では、区分所有者が数千万円単位の追加負担金を負うことになります。世帯主が70歳以上の世帯が半数を超える建物で、この負担に全員が合意できるか。この一点が、建て替えが累計323件にとどまっている理由の大きな部分だと私は見ています。
一方で修繕は、後述するとおり戸あたり100万円台のレンジで回る工事です。桁が2つ違う。だからこそ、多くの管理組合・オーナーにとって「修繕で延命する」が合理的な第一選択になるわけです。
法改正で分岐点はこう動いた|2026年4月1日施行の改正区分所有法と、先行施行済みの関連法
建替え等の決議は原則4/5、一定の場合は3/4に
2025年5月23日に成立し、同月30日に公布された「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第47号)のうち、区分所有法および被災区分所有法の改正部分は2026年(令和8年)4月1日から施行されています(出典:法務省)。
改正のポイントを、修繕・建て替えの判断に関わる範囲で整理します。
- 建物・敷地の一括売却、一棟リノベーション、建物の取壊しを、建替えと同様に多数決決議(原則4/5)で可能にした
- 耐震性不足等に該当する場合は、決議要件を3/4に緩和した(政令で指定された災害による被災の場合は2/3)
- 修繕など区分所有権の処分を伴わない事項の決議は、集会出席者の多数決で足りることとした(改正前は全区分所有者の多数決)
- 裁判所が認定した所在不明者を決議の母数から除外する制度を創設した
(出典:法務省・国土交通省「改正法の概要」)
実務的に一番効くのは、実は3番目と4番目だと私は考えています。大規模修繕のような区分所有権の処分を伴わない議案は、出席者の多数決で決められるようになりました。政府資料には、賛成2/5で否決されていたケースが、改正後は賛成2/3で可決される例が示されています。所在不明の区分所有者が一定数いる建物で総会が動かない、という悩みに対する制度的な手当てです。
なお、管理計画認定制度の見直し(新築時の分譲事業者による認定申請の導入)や認定マンションの表示制度の創設に係る部分は、2027年(令和9年)4月1日施行とされています。改正法は段階施行ですので、ご自身の管理組合に関わる部分がいつ動くのかは、国土交通省マンション管理・再生ポータルサイトで最新の情報をご確認ください。
【2025年11月28日に先行施行】自治体が「外壁剥落等の危険なマンション」に勧告できるようになった
もうひとつ、私が外壁を扱う立場から重く見ているのが、地方公共団体の権限強化です。改正法では、外壁剥落等の危険な状態にあるマンションに対する報告徴収、助言指導・勧告、あっせん等が措置されました(出典:改正法の概要)。
こちらは区分所有法ではなく、国土交通省が所管するマンションの建替え等の円滑化に関する法律・マンションの管理の適正化の推進に関する法律の改正にあたる部分で、「都道府県知事等の建替え等及びマンションの管理に係る権限の強化関係」として2025年(令和7年)11月28日にすでに施行されています(出典:国土交通省「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法の一部の施行に伴う関係政令を閣議決定」令和7年8月26日)。つまり、この論点は「これから始まる話」ではなく、すでに動いている話です。
政府はこの改正のKPIとして、「外壁剥落等の危険なマンションを10年後におおむね解消できる水準」を掲げ、マンションの再生等の件数を472件(令和6年)から1,000件へ、管理計画認定の取得割合を約3%(令和6年)から20%へ引き上げる目標を置いています。
つまり、外壁の劣化を放置することのリスクが、これまでの「落下事故を起こしたら責任を問われる」から、「行政から指導・勧告を受ける対象になりうる」へと一段上がったということです。外壁の浮きやタイルの剥落は、建築基準法第12条に基づく定期報告(いわゆる12条点検)の全面打診調査で発見される代表的な劣化です。ここを先送りする理由は、制度面からもなくなりつつあります。
大規模修繕の費用構造|仮設工事が総工事費の22.8%を占める
戸あたり100〜125万円/戸がボリュームゾーン
では、修繕で延命すると決めた場合、いくらかかるのか。国土交通省が200社818件の工事事例を集計した調査から、代表的な数字を引きます。
| 項目 | 調査結果 |
|---|---|
| 平均修繕周期 | 「13年」が最多。全体の約7割が12〜15年 |
| 1回目の修繕周期 | 15.6年 |
| 2回目の修繕周期 | 14.0年 |
| 3回目の修繕周期 | 12.9年 |
| 戸あたり工事金額 | 「100〜125万円/戸」が最多、次いで「75〜100万円/戸」「125〜150万円/戸」 |
(出典:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」。工事金額に共通仮設費および消費税は含みません。なお本調査は令和3年度時点の集計で、その後の資材価格・建設労務単価の上昇を踏まえると、現在の実勢はこの水準を上回る可能性があります)
回数を重ねるほど修繕周期が短くなる、という結果に注目してください。1回目15.6年、2回目14.0年、3回目12.9年。建物は年齢を重ねるほど手がかかるという、現場の実感そのままの数字です。宮城県武道館の「大規模な改修を行っても繰り返し修繕が必要になる」という判断も、この延長線上にあります。
内訳を見ると、削れる場所がはっきりする
同じ調査から、総工事金額の内訳です。
| 区分 | 構成比 |
|---|---|
| 建築系工事(屋根防水・床防水・外壁塗装・鉄部塗装・建具等) | 60.3% |
| 仮設工事(足場等) | 22.8% |
| 諸経費(現場管理費・一般管理費・法定福利費、大規模修繕瑕疵保険料) | 10.3% |
さらに建築系工事の内訳は、外壁関係(外壁塗装・外壁タイル・シーリング)が49.4%、防水関係(屋根防水・床防水)が32.0%です。
ここが本題です。総工事費のおよそ4分の1近くを占める22.8%が、建物に何も付加しない「仮設」に消えている。足場は必要なときには当然必要ですが、全面に組む必要が本当にあるのかは、物件ごとに検証する価値があります。
参考までに、部位別の単価の目安をお伝えします(物件の規模・劣化状況・数量により大きく変動しますので、あくまでレンジとしてご覧ください)。
- 外壁塗装:3,500〜4,500円/㎡程度
- 外壁打診調査:250〜500円/㎡程度
- 屋上・バルコニー防水:5,000〜8,000円/㎡程度
(いずれも明誠の自社実績に基づく目安であり、公的な統計単価ではありません)
大規模修繕全体の考え方と費用の組み立ては、大規模修繕工事のご案内と明誠の料金の考え方にまとめています。
足場をロープアクセスに置き換えると、何がどれだけ変わるか
10階建て・外周80mの試算例
明誠は、通常の足場仮設による工事、無足場工法であるロープアクセス工法、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物特性に応じた最適な工法をご提案しています。日本でも数少ない体制だと自負しています。
10階建て・外周80m・工期3か月というモデルケースで、足場の架設・解体とメッシュシートに係る直接仮設費のみを比べた試算例をお示しします(養生、共通仮設、資材運搬、現場管理費などは含みません)。
| 工法 | 対象数量 | 直接仮設費の目安 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 全面足場 | 約2,400㎡(外周80m×高さ約30m)×約700円/㎡ | 約168万円 | — |
| ロープアクセス(無足場) | 同数量を降下作業で対応 | 約59万円 | 約▲109万円 |
(自社試算による目安です。建物形状、外周長、階数、施工数量、養生範囲、近隣条件により金額は大きく変動します。また上表は直接仮設費のみを切り出した比較であり、工事全体の仮設費とは範囲が異なります。実際の金額は現地調査のうえお見積りいたします)
国の統計で仮設工事が総工事金額の22.8%を占めることと併せて考えれば、仮設をどう組むかが、大規模修繕の総額に効く変数のひとつであることがお分かりいただけると思います。
費用以外の効果も申し上げておきます。足場を全面に組まないということは、居住者の窓の外に他人が立たない、防犯上の不安が生じない、洗濯物が干せる、日照が遮られないということです。私が理事長さまから最も感謝されるのは、実は金額の話ではなく、この生活影響の話であることが多いのです。ロープアクセス工法の技術的な背景や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。
ハイブリッド工法という現実解
誤解のないように申し上げますが、私は「足場をやめてすべてロープアクセスにすべきだ」とは考えていません。バルコニー内部の作業量が多い物件、タイルの張り替え面積が広い物件、低層で足場の効率がよい物件では、足場のほうが合理的です。
私が最も多くご提案しているのは、ハイブリッド工法です。たとえば、足場が架けにくい道路側や隣地ギリギリの面だけをロープアクセスで受け持ち、残りは通常足場で組む。あるいは、全面足場を組む前の段階で、ロープアクセスで先行して打診調査だけを済ませ、正確な数量を掴んでから見積りを固める。
正直に申し上げます。工事の金額が膨らむ最大の原因は、数量が読めないまま契約し、着工後に「開けてみたら想定以上でした」となることです。私はこれを、必ず調査工程とワンセットでご提案するようにしています。3つの工法を一社で持っている強みは、まさにここにあります。明誠の工法の考え方は明誠の3工法と理念をご覧ください。
修繕で延命すると決めたときの7つの判断材料
建て替えではなく修繕で進める、と決めた管理組合・オーナーに、私が必ずお伝えしている7点です。理事会の議題としてそのまま使っていただけるよう、順番に並べています。
- 躯体の状態を数字にする:外壁の打診調査結果を「浮き面積○㎡/全体○㎡(○%)」の形で押さえる。印象ではなく比率で共有すると、議論が一気に進みます。
- 長期修繕計画を実勢価格で引き直す:建設労務単価と資材価格の上昇で、10年前に作った計画は現実と乖離しています。周期13年・戸あたり100〜125万円/戸という国の統計を物差しに、自分たちの計画を検算してください。
- 仮設費を単独の項目として見る:見積書の「仮設工事」が総額の何%かを確認します。22.8%が全国平均です。ここが30%を超えているなら、工法の選択肢を広げる余地があります。
- 調査と施工の順番を逆にしない:数量が確定する前に総額を固めると、追加工事で揉めます。先に調べる。これに尽きます。
- 決議のハードルが下がったことを織り込む:2026年4月1日施行の改正区分所有法により、修繕など区分所有権の処分を伴わない議案は集会出席者の多数決で決議できます。過去に「決議が成立しなかったから先送り」となった案件は、再検討の価値があります。
- 外壁の劣化を「行政リスク」として扱う:改正法により、外壁剥落等の危険な状態にあるマンションに対する助言指導・勧告等が措置され、この部分は2025年11月28日にすでに施行されています。放置のコストが上がったと考えてください。
- 相見積りは「同じ数量」で取る:数量が業者ごとに違う見積りを比べても意味がありません。第三者の調査数量を共通の前提として配布するのが公平です。
ビルオーナー・ホテルの場合|区分所有ではない建物の判断軸
ここまでは分譲マンション(区分所有建物)を中心に書いてきました。一棟所有のビル・賃貸マンション・ホテルの場合、合意形成の問題がない代わりに、収益の問題が前面に出ます。
判断軸はシンプルです。
- 修繕:支出は一時的に大きいが、稼働を止めずに実施でき、内容によっては修繕費として費用化できる場合がある(税務上の取扱いは工事内容により資本的支出となることもありますので、顧問税理士にご確認ください)
- 建て替え:稼働をゼロにする期間が発生する。テナント退去交渉・営業補償・解体費が上乗せされる
とくにホテルは、客室稼働を止めた瞬間に収益がゼロになります。私どもがホテルの大規模修繕でロープアクセス工法をご提案する理由は、まさにここです。足場を組まない=営業を止めない、宿泊客の視界を塞がない。明誠はホテル案件については全国で対応しています。詳しくはホテルオーナー向けサービスとビル・マンションオーナー向けサービスをご覧ください。管理組合の皆さまには管理組合向けサービスをご用意しています。
なお、2026年8月の首都圏新築マンション平均価格が9,770万円という水準は、賃貸経営にとっては追い風の側面もあります。新築が買いにくい層が賃貸に流れるからです。既存物件を直して貸し続けることの経済合理性は、むしろ上がっているというのが私の見立てです。
私が現場で見てきた「手遅れ」と「間に合った」の差
現場で20年以上やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、あと数年早く調査していれば修繕で足りたはずの建物に出会うときです。
具体的な物件名は申し上げられませんが、築38年のRC造・5階建てのビルで、3階の入口付近の天井に雨の日だけ漏水が出る、という相談を受けたことがあります。点検口を開けて追いかけると、原因は天井裏ではなく、上階の外壁のクラックとシーリングの破断でした。水は入った場所から真下に落ちるとは限りません。外壁を伝い、スラブの上を流れ、まったく別の場所から顔を出します。
このケースは間に合いました。外壁のクラック補修とシーリングの打ち替え、部分的な防水の増し打ちで止まり、費用も全面改修の数分の一で済みました。決め手は、入口付近の1点だけを見るのではなく、ロープで降りて上から下まで通して外壁を見たことです。
逆に間に合わなかったケースでは、鉄筋の発錆がコンクリートを内側から押し広げ(爆裂)、断面欠損が構造に及んでいました。こうなると補修の範囲が一気に広がり、費用は跳ね上がります。
差はどこにあったのか。最初の異変から調査までにかかった時間です。それだけです。だから私は、しつこいくらいに「まず調べましょう」と申し上げます。調査は工事を売るための入口ではなく、工事をしなくて済む範囲を確定する作業でもあるのです。
明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました(自社集計)。ロープアクセス工法による高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています(自社集計・フランチャイズ加盟企業を含む)。IRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けた作業員が施工にあたり、品質面ではISO9001のマネジメントシステムを運用、日本ロープ高所作業協会の事務局も担っています。工法の技術的な詳細は明誠のロープアクセス工法と、ロープアクセスドットコムの技術解説をあわせてご覧ください。
これまでの施工事例は明誠の施工実績(約6,000棟)からご覧いただけます。
よくあるご質問
Q. 築何年を過ぎたら建て替えを検討すべきですか?
A. 築年数そのものには明確な境界線はありません。判断は躯体の状態・合意形成の可否・資金の3点で行います。現実の数字として、築40年以上のマンションが約158.8万戸あるのに対し、建替えの実績は累計323件・約26,000戸(2025年3月31日時点)にとどまっており、大半の建物は修繕で運用されています(出典:国土交通省)。
Q. 大規模修繕の費用は戸あたりいくらが目安ですか?
A. 国土交通省の実態調査では「100〜125万円/戸」が最も多く、次いで「75〜100万円/戸」「125〜150万円/戸」となっています(出典:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査)。ただし劣化状況・仕様・数量で大きく変わりますので、現地調査のうえ無料でお見積りいたします。
Q. ロープアクセス工法にすると、どれくらい安くなりますか?
A. 削減できるのは主に仮設費です。国の統計では仮設工事が総工事金額の22.8%を占めます。10階建て・外周80m(足場面積約2,400㎡)のモデルケースで直接仮設費のみを比べると、全面足場の約168万円に対しロープアクセスは約59万円という試算例があります(自社試算の目安。養生・共通仮設・運搬費等は含みません)。建物形状や施工数量により変動しますので、比較試算をご希望の場合はお申し付けください。
Q. 2026年4月に施行された区分所有法の改正で、修繕の決議は変わりましたか?
A. 変わりました。改正により、区分所有権の処分を伴わない事項(修繕等)の決議は、集会出席者の多数決によることとされました。また、裁判所が認定した所在不明者を決議の母数から除外する制度も創設されています(出典:法務省)。過去に決議が成立せず先送りになった修繕議案は、再検討の余地があります。
Q. 外壁を放置すると、行政から指導を受けることがありますか?
A. 改正法では、外壁剥落等の危険な状態にあるマンションに対する報告徴収、助言指導・勧告、あっせん等が措置されました(出典:改正法の概要)。都道府県知事等の権限強化に関する部分は2025年11月28日に施行済みです(出典:国土交通省報道発表)。政府は外壁剥落等の危険なマンションを10年後におおむね解消する水準を目標に掲げています。制度の詳細や運用は自治体により異なりますので、所管の窓口でご確認ください。
Q. 足場とロープアクセス、どちらが自分の建物に向いているか分かりません。
A. 建物形状・階数・外周長・施工数量・近隣条件で答えが変わります。明誠は通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法をすべて自社で扱っていますので、どれかに誘導する必要がありません。現地を拝見したうえで、工法ごとの概算を並べてご提示します。ご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。
Q. 調査だけをお願いすることはできますか?
A. 可能です。打診調査、赤外線調査、ドローンによる外壁点検、ロープアクセスによる近接目視など、必要な範囲だけをご依頼いただけます。調査結果は数量表の形でお渡ししますので、他社との相見積りの共通前提としてもお使いいただけます。
この記事のポイントまとめ
- 修繕か建て替えかの分岐点は築年数ではなく、躯体の状態・合意形成・資金の3点
- 築40年以上のマンションは2025年末で約158.8万戸、建替え実績は累計323件・約26,000戸
- 2026年8月の首都圏新築マンション平均9,770万円が、建て替えの資金的な壁になっている
- 2026年4月1日施行の改正区分所有法で、修繕の決議は集会出席者の多数決に変わった
- 大規模修繕の総工事費のうち仮設工事が22.8%。ここが工法選択で動かせる最大の変数
自分たちの建物が修繕で行けるのか、それとも再生を考える段階なのか。その答えは、建物の中にしかありません。私たちにできるのは、その答えを正確に読み取ってお渡しすることです。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月19日
出典・参考資料
- 国土交通省「築40年以上の分譲マンション数の推移(2025年末現在)」(2026年8月31日更新)
- 国土交通省「マンション建替え等の実施状況(2025年3月31日現在)」
- 国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」
- 国土交通省「マンションに関する統計・データ等」
- 法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」
- 法務省・国土交通省「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法(概要)」
- 国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」
- 不動産経済研究所「マンション市場動向」(2026年8月首都圏新築分譲マンション市場動向、2026年9月17日発表)
- khb東日本放送「宮城県武道館が現地建て替えへ 老朽化著しく大規模修繕を断念」(2026年9月17日)
-
仙台放送「老朽化の宮城県武道館が現地建て替えへ 改修断念し現在の駐車場にバリアフリーの新施設整備」(2026年9月17日)
-
国土交通省「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法の一部の施行に伴う関係政令を閣議決定」(令和7年8月26日)
※本記事の制度に関する記述は2026年9月19日時点の公表情報に基づきます。個別の法的手続(所在不明区分所有者に関する裁判所の認定など)や税務上の取扱いについては、弁護士・マンション管理士・税理士などの専門家にご相談ください。制度は変更される可能性がありますので、最新の内容は各公式サイトでご確認ください。また、費用の記載はいずれも目安であり、実際の金額は建物の状態・数量・条件により変動します。


