大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

改正区分所有法(令和8年4月1日施行)でマンション大規模修繕の決議はこう変わる——理事長・修繕委員が今すぐ動くべき7つの実務対策【2026年5月最新】

改正区分所有法(令和8年4月1日施行)でマンション大規模修繕の決議はこう変わる——理事長・修繕委員が今すぐ動くべき7つの実務対策【2026年5月最新】

はじめに——「2つの老い」の時代に、決議だけが昭和のままだった

正直に申し上げます。私は現場で20年近く、大規模修繕の見積りと施工管理を見続けてきましたが、ここ10年で一番悔しい思いをしたのは、「工事をやるべき建物なのに、決議が通らずに先延ばしになる」という場面でした。

築40年を超え、外壁から鉄筋の爆裂が始まっているマンション。明らかに防水層の寿命が来ていて、雨漏りの相談が複数戸から上がっているマンション。それでも、総会で集まる人数が足りず、所在不明の区分所有者がいて、決議の母数すら満たせない——そういう物件は決して珍しくありません。

法務省は今回の改正の背景として、「マンションをはじめとする区分所有建物が高経年化し、居住者も高齢化する『2つの老い』が進行しているという社会経済情勢」を挙げています(出典:法務省民事局「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」)。

要するに、建物が古くなり、住む人も年を取り、相続が起きて区分所有者が散らばっていく。にもかかわらず、決議要件だけは1962年(昭和37年)に作られた区分所有法のままで動いていた——これが日本中のマンションで起きていた事態です。

今回の改正は、その「決議のボトルネック」に大きく手を入れる法律です。私たち施工会社にとっては、「やるべき工事が、やれる順番に回ってくるようになる」ことを意味します。理事長さま・修繕委員さまにとっては、「不在者・所在不明者に振り回されず、合理的な意思決定ができるようになる」ことを意味します。

ここからが本題です。


H2-1 改正区分所有法の3つの柱——大規模修繕の現場目線で読み解く

改正の全体像は、法務省の「改正の概要(1)(全体・概要版)」および「改正の概要(2)(改正区分所有法、被災区分所有法・詳細版)」にまとまっています。読み込むのはかなり骨が折れますが、大規模修繕に関わる部分だけを現場目線で要約すると、次の3本柱になります。

H3-1-1 柱(1):所在不明者を「決議の母数」から外せる仕組み

これが今回最大の改正です。

これまでは、総会の決議で「区分所有者および議決権の各○分の○以上」を計算するとき、所在不明の人も生きて意思を持っている人として母数に含めなければなりませんでした。極端な話、相続が3代続いて住民票も登記もぐちゃぐちゃ、誰が本当の所有者なのか分からない部屋が10戸あれば、その10戸はずっと「反対しているのと同じ扱い」で母数を圧迫し続けたのです。

改正後は、裁判所に申し立てて「所在等不明区分所有者」として認定を受ければ、その人を決議の母数から外せます(出典:法務省「改正の概要(2)」)。実質的に、決議要件のハードルを下げる効果を持つ重要な仕組みです。

私の経験上、この仕組みは「築古マンション×相続未登記の積み重なった物件」で爆発的に効きます。今まで「決議の母数を満たせないから工事を見送り続けてきた」物件が、ようやく前に進めるようになります。

H3-1-2 柱(2):共用部分の「軽微な瑕疵除去」は3分の2へ緩和

共用部分の変更については、これまで「区分所有者および議決権の各4分の3以上」が原則でした。たとえば外壁の意匠を大幅に変える改修などはこの「特別決議」が必要です。

ただし、改正法では、他人の権利または法律上保護される利益が侵害されるおそれがある共用部分の瑕疵を除去するために必要な変更については、決議要件が「4分の3」から「3分の2」に緩和されました(出典:法務省「改正の概要(2)」)。

これは、たとえば「外壁のタイルが剝離して通行人に当たる危険がある」「庇のコンクリートが落下する恐れがある」といった、放置すれば管理組合自身が損害賠償リスクを負うような瑕疵の除去工事を念頭に置いた緩和です。

私たち施工側から見ると、「明らかに必要な安全工事なのに、決議が通らず工期が後ろにずれる」というケースが減ることを意味します。

H3-1-3 柱(3):管理規約の電磁的記録化と総会オンライン化

書面と印鑑の世界だった管理規約の運用にも、ようやくデジタル化の道筋が引かれます。

法務省は「建物の区分所有等に関する法律施行規則及び法務省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する規則の一部を改正する省令(法務省令第16号)」も同時に整備しました。電磁的記録による管理規約の保存・閲覧、そして総会のオンライン実施が現実的な選択肢として制度化されました。

国土交通省も、これに合わせて「マンション管理・再生ポータルサイト」で標準管理規約の見直しを進めています。

築20年以上のマンションで管理規約がほぼ昭和の文言のまま放置されているケースは、私の感覚では半数近くにのぼります。今回の改正は、「規約を見直さないと、せっかくの緩和を使えない」状態を生むため、規約改正の議論自体が動きやすい追い風になっています。


H2-2 大規模修繕の決議要件は実務上どう変わるのか——3つのパターンで具体的に整理

ここからは、大規模修繕工事の実務でよく出てくる3つの決議パターンで、改正前後の違いを整理します。

H3-2-1 パターンA:通常の大規模修繕(修繕積立金を使って原状回復)

外壁塗装の塗り替え、屋上防水の張り替え、鉄部塗装、シーリング打ち替え——これらの「現状の機能を維持する」工事は、区分所有法第18条の「共用部分の管理」に該当します。

決議要件は、区分所有者および議決権の各過半数で、改正前後で変わりません。

ただし、ここでも先述の「所在不明者を母数から外せる仕組み」が効きます。たとえば100戸のマンションで20戸が所在不明だった場合、これまでは100戸の過半数=51票が必要でしたが、所在不明20戸を外せれば80戸の過半数=41票で済むようになります。

私はいつも理事長さまに「改正法の真価は、難しい法律論より、母数が変わることで普通の修繕が動きやすくなることにある」とお伝えしています。

H3-2-2 パターンB:機能向上を伴う改修(断熱化・バリアフリー化など)

外壁のタイル張りを塗装仕上げに変えたり、エントランスをバリアフリー化したり、廊下に手すりを増設したり——「形状または効用の著しい変更を伴う」工事は、区分所有法第17条の「共用部分の変更」に該当します。

決議要件は、区分所有者および議決権の各4分の3以上で、これも改正前後で変わりません。

しかしながら、軽微な瑕疵除去のための共用部分変更は3分の2に緩和されたため、大規模修繕の現場では「これは普通の修繕(過半数)か、機能向上の変更か、瑕疵除去(3分の2)か」を仕分ける議論が今まで以上に重要になります。

H3-2-3 パターンC:建替え決議

建替え決議は区分所有法第62条で、原則区分所有者および議決権の各5分の4以上が必要です。改正法では、一定の要件下で3分の2まで緩和される場合があります(出典:法務省「改正の概要(2)」)。

大規模修繕と建替えはそもそも別物ですが、「もう修繕では追いつかないから建替えに切り替える」という判断は、築50年に近づく団地・マンションでは現実の選択肢として浮上します。私が現場で見てきた中でも、外壁の改修だけでも億単位の予算が出てきて、住民が「これなら建替えを真剣に考えたい」と感じる場面が増えています。

決議の種類 改正前 改正後
通常の大規模修繕(共用部分の管理) 区分所有者・議決権の各過半数 同左(ただし所在不明者を母数から除外可)
機能向上を伴う共用部分の変更 区分所有者・議決権の各4分の3以上 同左(ただし所在不明者を母数から除外可)
軽微な瑕疵除去のための共用部分変更 各4分の3以上 各3分の2以上に緩和
建替え決議 各5分の4以上 一定の要件下で各3分の2まで緩和

H2-3 私が現場で目撃した「決議が通らない」3つのパターン

ここで少し、私が現場で20年近く見てきた「決議が通らない」典型例を、固有名詞を伏せた形で紹介させてください。今回の改正によって、それらがどう変わりうるのかも併せてお伝えします。

H3-3-1 ケース1:相続未登記で母数が永遠に埋まらない築45年のマンション

都内のある築45年・80戸規模のマンションで、修繕委員会の方からご相談を受けたことがあります。理事長さまは80代の元教員の方で、ご自身もそろそろ役を降りたいと真剣に悩んでおられました。

そのマンションでは、相続が起きた住戸の登記が放置されたまま2代・3代と進んでおり、実質的に連絡が取れない部屋が15戸ありました。総会の決議で過半数を取ろうにも、80戸の過半数=41票という壁が、登記上の所有者15戸を引いた実質65戸の中で41票取らねばならず、出席率が60%を切ると物理的に通らない、という状態でした。

私はこの理事長さまに、「いまの法律ではどうしようもないところがある」と正直に申し上げました。今回の改正法で、ようやく前に進める道が開けたと思っています。

H3-3-2 ケース2:外壁タイル剝離が再三発生していたが、決議が通らなかったホテル管理組合形態の物件

複合用途のビルで、一部が区分所有・一部が共用というやや特殊な物件です。エントランス上部の庇から外壁タイルが何度か剝離し、警察への通報が2回入っていた物件でした。

私は「これは安全工事として急がなければまずい」と何度も提案しましたが、機能向上を伴う改修と同じ扱いで4分の3決議が必要とされてしまい、一部の所有者が「費用が高い」と反対して通らない状態が続きました。

改正法では、こうした「他人の権利が侵害されるおそれがある瑕疵の除去」については3分の2決議で可能になります。私はこのケースを念頭に、施行から間もないながら「これは3分の2でいけるはずだから、議題の建て付けをこう整理しましょう」と修繕委員さまにお伝えする場面が、最近確実に増えています。

H3-3-3 ケース3:理事会の説明力不足で、住民の不安が決議反対票に化けたマンション

これは法律というより、コミュニケーションの問題です。築25年・120戸のマンションで、大規模修繕の見積りが想定より2割上振れし、修繕積立金からの取り崩しに不安を持った住民が反対票を投じ、決議が1票差で否決されました。

私はこのとき、「決議要件以前に、説明会の質と、見積りの根拠を住民が納得できる形で示せていたか」を、理事長さまと一緒に振り返りました。

改正法で母数が緩むからといって、説明をおろそかにしていいわけではありません。むしろ、母数が緩んだぶん、「数字の説明」と「工法選択の根拠」が今まで以上に問われる時代になります。私はこれを、施工会社として真摯に受け止めなければならないと考えています。


H2-4 理事長・修繕委員が今すぐ動くべき7つの実務対策

ここからは、改正法施行を踏まえて、理事長さま・修繕委員さま・収益物件オーナーさまがいますぐ動ける具体的なアクションを7つに絞ってお伝えします。

H3-4-1 対策(1):所在不明区分所有者の「棚卸し」を今期中にやる

改正法の「所在等不明区分所有者を母数から外す」仕組みを使うためには、まず自分のマンションで実際に何戸が所在不明なのかを正確に把握する必要があります。

具体的には、次のような作業を理事会主導で進めることをおすすめしています。

  • 登記簿謄本(不動産登記情報)を全戸分取得し、所有者の住所・氏名を一覧化する
  • 住民票上の住所と登記住所の不一致がある戸を抽出する
  • 過去2年間の総会・通知発送のうち、返戻になった戸を一覧化する
  • 管理会社が把握している連絡先の最新性を確認する

この棚卸しは、外注すれば数万円〜十数万円の費用がかかりますが、私の経験上、「やってみて初めて、想定の2倍の所在不明戸が浮かび上がる」ことが珍しくありません。

H3-4-2 対策(2):長期修繕計画を「改正法前提」で見直す

これまでの長期修繕計画は、4分の3決議が通る前提で組まれているケースが大半です。今回の改正で、瑕疵除去工事は3分の2でいけるようになり、所在不明者を母数から外せば実質的なハードルはさらに下がります。

私はいつも修繕委員さまに、「長期修繕計画は5年単位での見直しが原則。今回の改正は、まさに見直しの絶好のタイミング」とお伝えしています。

特に次の3点を計画書に書き込むことをおすすめします。

  • 改正法に基づく決議要件の整理(どの工事がどの決議要件に該当するか)
  • 所在不明区分所有者の現状と、母数除外の手続きスケジュール
  • 想定される瑕疵除去工事と、それに必要な決議の建て付け

H3-4-3 対策(3):管理規約を「電磁的記録対応」に改正する

改正法では管理規約の電磁的記録化が認められるようになりました。総会のオンライン併用も含めて、規約改正をしない限り、改正法のメリットの一部を使えません

国土交通省の標準管理規約の見直し版がマンション管理・再生ポータルサイトで順次公開されています。私はいつも理事長さまに、「自分のマンションの管理規約を、標準管理規約と並べて差分をマークするだけでも、議論のたたき台になる」とお伝えしています。

H3-4-4 対策(4):「瑕疵除去工事」を切り出して議題化する

これは特に効きます。これまで「大規模修繕」という大きな塊で4分の3決議をかけていた工事を、

  • 安全に関わる瑕疵除去工事(外壁タイル剝離、庇コンクリート爆裂など)→ 3分の2決議
  • 機能向上を伴う改修(断熱化、バリアフリー化など)→ 4分の3決議
  • 通常の修繕(塗装、防水など現状回復)→ 過半数決議

3層に分けて議題化することで、それぞれに適切な決議要件で進められるようになります。

私は最近、施工会社の立場として、見積書も「決議要件別の3層構造」で出すように切り替え始めています。理事会の議題作成と決議の取りやすさが、見違えるほど変わります。

H3-4-5 対策(5):工法選択を「決議の取りやすさ」から逆算する

ここで私が一番お伝えしたいのが、工法選択と決議要件は密接に関係しているということです。

たとえば外壁の改修工事の場合、

  • 全面足場を架けて従来工法で施工する → 工期長期化・住民の生活影響大・足場費が見積り全体の20〜30%を占める
  • ロープアクセス工法(無足場工法)で施工する → 工期短縮・住民の生活影響最小・足場費ゼロ
  • 足場とロープアクセスを組み合わせたハイブリッド工法 → 部位ごとに最適化、総額の最適バランス

の3つの選択肢があります。私たち株式会社明誠は、この3工法をすべて自社で提案できる日本でも数少ない会社です。詳しくはロープアクセス工法のご紹介もご覧ください。

なぜこれが決議に効くかというと、ロープアクセス工法やハイブリッド工法は、足場架設による居住者の生活影響を大幅に減らせるため、住民からの反対票が出にくいのです。私の感覚では、足場ありの工事に対して2〜3票分の賛成票を上乗せできる効果があります。

決議が通りやすい工法を最初から提案できる施工会社を選ぶこと——これは見積金額の比較と同じくらい、いやそれ以上に重要な選定軸です。

H3-4-6 対策(6):通常総会の議案書を「改正法準拠」で書き直す

今年の通常総会(多くのマンションで5月〜7月)が、施行後最初の総会になります。議案書のフォーマットを改正法に合わせて書き直すことをおすすめします。

  • 決議要件の根拠条文を議案ごとに明示する(区分所有法第17条なのか第18条なのか、改正後の条文番号で書く)
  • 所在不明区分所有者の取扱いを冒頭で明示する
  • 賛否の集計方法を母数の定義から書き起こす

これは管理会社が標準フォーマットを更新してくれるはずですが、「更新が間に合っていない管理会社もある」ため、自分のマンションの議案書が最新版かどうかは、理事会で必ず確認していただきたいポイントです。

H3-4-7 対策(7):弁護士・マンション管理士に「事前壁打ち」をしておく

改正法の運用は、施行から間もない今がまさに実務の試行錯誤期です。判例も解釈通達も、これから積み上がっていきます。

私はいつも理事長さまに、「決議の建て付けで迷ったら、必ず専門家に事前に当てておくこと」とお伝えしています。具体的には、

の3者のいずれかに、議案の建て付けを事前にチェックしてもらうのが安心です。費用は数万円〜十数万円ですが、決議が無効になって工事が止まる損失と比べれば桁違いに安い保険です。


H2-5 改正法を機に見直すべき「修繕積立金」と「コスト最適化」

改正法で決議が通りやすくなることは、「やるべき工事が、やれる順番に動き始める」ことを意味します。これは喜ばしいことですが、同時に、修繕積立金の不足を露わにする副作用もあります。

H3-5-1 修繕積立金の不足が「先送りできなくなる」

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査結果」によれば、計画上の積立額に対し現状が不足しているマンションは全体の36.6%、うち20%超の不足は11.7%にのぼります。

これまでは「決議が通らないから工事が動かない=積立金不足が顕在化しない」という、ある意味でぬるま湯の構造がありました。改正法で決議が通りやすくなれば、その構造は崩れます。

私はいつも修繕委員さまに、「改正法は決議を緩めるけれど、お金は緩めてくれない。むしろ、お金の話が現実になるのが早まる」とお伝えしています。

H3-5-2 工法選択でコストを2〜3割削れる時代

修繕積立金不足を埋める方法は、(1)値上げ、(2)借入、(3)補助金、(4)工事コストの最適化、の4つです。最も即効性があり、住民の負担を増やさないのが(4)の工事コストの最適化です。

私たち明誠の事例では、ロープアクセス工法やハイブリッド工法を採用することで、従来の全面足場工法と比較して総工費を15〜25%程度削減できたケースが複数あります。これは足場費の削減(見積り全体の20〜30%を占めることが多い)が直接効くためです。

詳しくは大規模修繕工事のご紹介で施工事例とともにまとめています。

H3-5-3 補助金・助成金のフル活用

東京都の「マンション改良工事助成」をはじめ、各自治体には大規模修繕に使える補助金・助成金制度があります。改正法の話と補助金の話は別物ですが、修繕積立金不足の現実問題として、両方を組み合わせて使い倒すのが理にかなっています。

私たち明誠では、施工提案の段階で「使える補助金の洗い出し」も併せて行います。理事会単独でこれを調べきるのは時間的にも情報量的にもかなり厳しいため、施工会社と一緒に進めるのが現実的です。


H2-6 オーナー目線で見る改正法——収益物件への影響

ここまでは管理組合の理事長さま・修繕委員さま目線でお伝えしてきましたが、収益物件をお持ちのオーナーさまにとっても、今回の改正は無視できない論点を含みます。

H3-6-1 区分所有のオフィスビル・店舗ビル・ホテルにも適用

区分所有法は住居用マンションだけの法律ではありません。区分所有のオフィスビル・店舗ビル・ホテル・倉庫にも同じ法律が適用されます。

オーナーさまが複数戸を保有している場合、改正法の決議要件の変化は、ご自身の議決権の影響力にも直結します。たとえば、ビルの過半数を1社で保有している場合は影響が大きくなく、複数オーナーが拮抗している場合は所在不明者の取扱いが争点になりやすい——という具合です。

H3-6-2 賃借人の利益保護条項にも注意

改正法は区分所有者だけでなく、その建物の賃借人の利益にも一定の配慮を求めています。たとえば賃借権の終了に関する手続きや、補償金の算定方法については、法務省が賃貸借終了請求等に伴う補償金の算定方法等に関する調査研究を進めており、今後の運用に注目が必要です。

収益物件オーナーさまにとっては、「自分の物件の入居者を、改正法の手続きでいきなり追い出すことはできない」という安全装置でもありますが、同時に「自分が借りている側になっているケース」では権利関係の整理が必要になることもあります。

H3-6-3 「修繕履歴」が物件価値の差別化要因になる

これは少し先の話ですが、改正法で大規模修繕が動きやすくなれば、「きちんと修繕履歴がある物件」と「ない物件」の差が、これまで以上に売買価格に出るようになります。

私はいつもオーナーさまに、「修繕履歴は資産価値の証明書。施工会社からきちんと写真・図面・施工管理記録を引き取って、PDF化して保管しておいてください」とお伝えしています。明誠でも、施工完了後の引渡資料は紙とデジタルの両方でお渡ししています。


H2-7 私たち施工会社にも問われる「説明責任」と「工法選択」

ここまで読んでくださった理事長さま・オーナーさまには、ぜひ次の視点も持っていただきたいと思います。それは、改正法は施工会社の側にも責任を重くする法律だということです。

H3-7-1 「決議要件別の見積り」が標準になる時代

先ほどお伝えしたとおり、改正法では工事内容によって決議要件が変わります。施工会社の見積書も、これからは「決議要件別の3層構造」で出すのが標準になります。

私は社内でも、見積書のフォーマットを「瑕疵除去工事(3分の2決議)」「機能向上工事(4分の3決議)」「通常修繕(過半数決議)」の3層で整理するよう切り替えています。これは事務作業としてはやや手間が増えますが、理事会の議論を円滑にするための投資だと考えています。

H3-7-2 工法提案の幅が「決議の取りやすさ」を左右する

足場工法しかできない会社、ロープアクセスしかできない会社、両方できる会社——この3者では、提案できる工法の幅が違います。改正法時代には、工法選択の幅が決議の取りやすさを左右する場面が確実に増えます。

私たち明誠は、足場仮設工法、ロープアクセス工法、ハイブリッド工法の3つを建物特性に応じて使い分けられる、日本でも数少ない施工会社です。これは私が現場で20年やってきたなかで、「お客様の選択肢を増やすことが、私たちの存在意義だ」と腹を据えてきた結果です。

H3-7-3 フランチャイズ展開と業界全体のレベルアップ

私たちは日本で初めて、ロープアクセス工事のフランチャイズ展開も進めています。塗装・防水・タイル・電気・看板など、各分野の専門職が加盟することで、高品質と低価格の両立を実現しようとしています。

改正法時代に求められるのは、個社の力だけではなく、業界全体の説明能力と工法選択力の底上げです。私たち明誠は、JCSA(一般社団法人全国建設業支援協会)を通じて、業界全体の経営支援にも取り組んでいます。


H2-8 まとめ——改正法は「決議を緩める」のではなく「決議を健全にする」法律

今回お伝えした7つの実務対策を、もう一度整理しておきます。

  1. 所在不明区分所有者の「棚卸し」を今期中にやる
  2. 長期修繕計画を「改正法前提」で見直す
  3. 管理規約を「電磁的記録対応」に改正する
  4. 「瑕疵除去工事」を切り出して議題化する
  5. 工法選択を「決議の取りやすさ」から逆算する
  6. 通常総会の議案書を「改正法準拠」で書き直す
  7. 弁護士・マンション管理士に「事前壁打ち」をしておく

私は現場で20年近く、大規模修繕の現場を見てきました。そのなかで何度も思い知らされたのは、「マンションは、住む人がいて、所有する人がいて、それを支える理事会と修繕委員会があって、はじめて動く生き物だ」ということです。

改正区分所有法は、ただ決議要件を緩めただけの法律ではありません。「2つの老い」が進む日本のマンションを、もう一度動ける状態に戻すための、社会的な再起動装置だと私は受け止めています。

施工会社の私たちは、その再起動を支える側として、説明責任と工法選択の幅で応えるしかありません。だからこそ、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法を持つこと、そして見積りを決議要件別に整理する姿勢が、これからの大規模修繕には不可欠だと考えています。

これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

もし、改正法を踏まえた長期修繕計画の見直しや、決議要件別の見積りの組み立て方、ロープアクセス・ハイブリッド工法の費用感など、具体的にご相談されたいことがあれば、お問合せフォームから遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。


出典・参考資料


※本記事は2026年5月20日時点の情報をもとに作成しています。改正区分所有法の運用は施行から間もないため、最新の解釈・通達・判例については、法務省民事局および国土交通省の公式情報を都度ご確認ください。具体的な決議の建て付けや法的判断については、弁護士・マンション管理士など専門家への個別相談をおすすめします。