
理事会で配られた一枚の見積書。一番下の合計金額だけを見て、「まあ専門家が作った数字なら」とハンコを押す——もし、あなたの管理組合やお持ちの物件で、そんな決め方をしているなら、今日の話は他人事ではありません。
2026年6月、マンションの大規模修繕をめぐる「談合」に、公正取引委員会がついにメスを入れたと報じられました。対象は施工会社30社超と設計コンサルタント2社、巻き込まれたマンションは100件以上にのぼると伝えられています。業界の大手がほぼ軒並み名前を連ねた、と。
私は大規模修繕の現場に20年近く身を置いてきました。足場を架ける工事も、ロープ1本で外壁に下りていく無足場の工事も、その両方を提案できる立場で、たくさんの理事長さま・オーナーさまと見積書を挟んで向き合ってきました。だからこそ、今回の報道を「業者の不祥事」で終わらせたくありません。これは、発注する側が知識という武器を持てば防げる話だからです。
正直に申し上げます。ここからは、自社サービスの宣伝ではなく、まず「どうすれば大切な修繕積立金を守れるのか」を、公的機関が公表している一次情報をもとに整理します。そのうえで、私が現場で痛感している「工法の選択肢を持つこと」の意味を、最後に少しだけお話しさせてください。
そもそも何が起きたのか——2026年6月の報道を整理する
報道によれば、公正取引委員会は、関東のマンション大規模修繕工事で談合を繰り返したとして、施工会社30社超と設計コンサルタント2社に独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)違反、いわゆる「不当な取引制限」にあたるとして、再発防止のための排除措置命令を出す方針を固めたとされています。対象となったマンションは100件以上と報じられています(出典:日本経済新聞 2026年6月3日「マンション修繕談合、公取委が30社超に排除命令へ」)。
ここで「談合」という言葉を、念のため平易にしておきます。談合とは、本来は競い合って価格を提示すべき複数の工事会社が、裏で「次はあなたが受注する番」「うちは高めの金額を出しておく」と申し合わせる不正行為のことです。競争が消えるので、工事費は不当に高止まりします。横浜市の公式コラムは、これを「せっかく積み立てた修繕資金が相場以上に支出され、本来受けられるべき工事の質や範囲が損なわれる恐れがある」と表現しています(出典:横浜市「マンション大規模修繕工事の談合とは?」)。
つまり、被害を受けるのは発注者である管理組合であり、区分所有者一人ひとりであり、収益物件であればそのオーナーです。談合は「業者同士の問題」ではなく、「あなたの財布の問題」なのです。
なぜ「設計監理方式」が談合の温床と指摘されるのか
今回の一連の報道で、繰り返し焦点が当たっているのが「設計監理方式」という発注のかたちです。これは、管理組合が設計コンサルタント(一級建築士などの専門家)に建物の劣化診断・改修設計・工事監理を委託し、そのコンサルタントの主導で施工会社を選定していく方式を指します。
念のため申し上げますが、設計監理方式そのものは、決して悪い仕組みではありません。専門知識のない管理組合に代わって、中立の第三者が仕様を決め、施工をチェックする——本来はオーナーの味方になる制度です。私自身、信頼できるコンサルタントの先生方とご一緒した現場で、品質が一段引き上がる場面を何度も見てきました。
問題は、その「中立であるべき立場」が悪用されたときに起こります。コンサルタントが、特定の施工会社を裏で受注させる役回りを担い、見返りを得る。すると、施工会社を「選ぶ目」であるはずの存在が、談合を仕切る「司令塔」に変わってしまう。報道で設計監理方式の「死角」と呼ばれているのは、まさにこの構造です。発注者から見れば、もっとも信頼していた専門家が、実は反対側を向いていた、という最悪のかたちです。
国土交通省は9年前から警鐘を鳴らしていた
ここで強調したいのは、これが「突然降ってわいた問題」ではない、ということです。国土交通省は、ずっと以前から注意を呼びかけてきました。
国交省は平成29年(2017年)1月に通知を発出し、設計コンサルタントの利益相反について注意喚起を行い、管理組合向けの相談窓口を周知しています。利益相反の典型例として、国交省は「設計コンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導する」ケースを挙げています(出典:国土交通省 報道発表資料)。
さらに国交省は、平成30年(2018年)5月、直近3年間に行われた大規模修繕工事944事例について、初めて実態調査を実施し、公表しました。狙いは「工事を発注しようとする管理組合等が、適正な見積りかどうか検討する際の指標」を提供することです(出典:国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査を初めて実施」)。
この調査は、いわば公的な「相場のものさし」です。同じ調査のなかで、国交省は管理組合が事前に検討した方がよいポイントを、次の3つに整理しています。
- 工事内訳に、過剰な工事項目・仕様の設定等がないか。
- 戸あたり、床面積あたりの工事金額が割高となっていないか。
- 設計コンサルタントの業務量(人・時間)が著しく低く抑えられていないか。特に、業務量のウェートの多くを占める「工事監理」の業務量が低すぎないか。
3つ目が、私には特に刺さります。コンサルタント料が不自然に安いとき、その先生はどこで採算を取るのか——という視点です。極端に安い監理料の裏に、施工会社からの見返りが隠れていないか。国交省が「監理の業務量が低すぎないか」と名指しで注意しているのは、ここに談合の入口があるからにほかなりません。
なお、この実態調査はマンションの戸数規模別にデータが整理されています。50戸のマンションと200戸のマンションでは、戸あたりの単価感がまるで違います。ご自分の物件と「同じ規模帯」の数字と見比べることが有効だと、国交省自身が案内しています。
発注の「方式」を選ぶことも、立派な自衛になる
設計監理方式の死角を知ると、「ではどうやって発注すればいいのか」という疑問が湧くはずです。ここで知っておいていただきたいのが、大規模修繕の発注には大きく分けて二つの方式がある、ということです。
ひとつは、いま問題になっている設計監理方式です。コンサルタントが設計と工事監理を担い、施工会社を選定・監督します。第三者がチェック役に入るので、うまく機能すれば品質確保に強い方式です。
もうひとつが、責任施工方式です。これは、調査・設計から施工までを一つの施工会社に一括して任せ、管理組合が直接やり取りする方式です。窓口が一本化されてスピードが速く、設計と施工の間で責任のなすり合いが起きにくいという利点があります。一方で、チェックする第三者がいないぶん、発注者側に「比べる目」が一段と求められます。
どちらが正解、という話ではありません。大切なのは、「自分たちの管理組合は、どちらの方式を、なぜ選んでいるのか」を理事会として説明できることです。方式を無自覚に「管理会社に言われたまま」で決めているとき、そこに死角が生まれます。私はいつも理事長さまに、「方式の選択も、立派な意思決定です」とお伝えしています。どちらの方式でも、複数の選択肢を比べる姿勢さえあれば、談合がつけ入る隙は確実に狭まります。
談合の典型的な手口——“相見積もり”を装った出来レース
「うちはちゃんと相見積もりを取っているから大丈夫」。理事会でよく聞く言葉です。ところが、横浜市の公式コラムが紹介する談合の手口を読むと、その安心が揺らぎます。代表的なものを、平易に並べてみます。
第一に、受注業者の事前内定とダミー見積もりです。あらかじめ受注する会社を決めておき、他社にはわざと高い「当て馬」の見積もりだけ出させる。相見積もりの体裁は整っているのに、勝者は最初から決まっている——出来レースです。
第二に、設計監理者と施工業者の癒着です。コンサルタントが極端に安い監理料で契約し、裏で提携業者の高額な工事費から差額を得る。見積もりの段階から特定業者が関与し、仕様をわざと割高に操作する、という手口です。
第三に、バックマージンの授受です。工事代金の一部、たとえば契約額の1割を裏で関係者にキックバックする。当然、その分は不要な経費として見積もりに上乗せされ、管理組合の負担が増えます(以上の手口の出典:横浜市「マンション大規模修繕工事の談合とは?」)。
横浜市はまた、2025年3月に公正取引委員会が首都圏の大手修繕業者約20社へ一斉立ち入り検査を実施したと記しています。これがマンション修繕業界で初の本格調査であり、今回2026年6月の排除措置命令方針へとつながった、という時間軸が見えてきます。
これらの手口に共通するのは、「一見、適正なプロセスに見える」ことです。書類はきれいに揃い、相見積もりも複数社から取られている。だからこそ、専門知識のない区分所有者には見破りにくい。私が「合計金額だけ見てハンコを押すのは危ない」と冒頭で申し上げたのは、このためです。
私が現場で一番悔しい思いをする瞬間
少しだけ、現場の話をさせてください。私が20年やってきて一番悔しいのは、技術でも工期でもありません。「もっと早く相談してくれていれば、この管理組合は数百万円を守れたのに」と気づく瞬間です。
以前、ある中規模マンションの理事長さまから、すでに契約寸前まで進んだ見積書を見せていただいたことがあります。足場を建物の全面に架ける前提で、防水も塗装も「念のため」を理由に広めに数量が取られていました。図面と現地を照らすと、足場が本当に必要な範囲は限られ、一部はロープアクセス(産業用ロープで作業員が外壁に下りて施工する無足場工法)で十分に対応できる箇所でした。仕様を実態に合わせるだけで、金額は大きく動きました。
誤解しないでいただきたいのは、その見積もりが必ずしも「談合」だったと申し上げているのではありません。悪意がなくても、「足場ありき」「前回どおり」で組まれた見積もりは、知らぬ間に割高になりがちだ、ということです。発注する側に比べるための「ものさし」と「選択肢」がないと、過剰や割高は見えてきません。
そのとき私が理事長さまにお伝えしたのは、「金額を値切ってください」ではありませんでした。「同じ建物を、違う前提でもう一度見積もらせてください」というお願いです。値切りは関係をぎくしゃくさせますが、前提を変えた相見積もりは、誰も傷つけずに適正化への道を開きます。結果として、品質を落とさずに必要なところへ予算を回し直すことができました。比較とは、相手を疑う作業ではなく、納得して任せるための作業なのだと、私はこのとき改めて教わりました。
オーナー・管理組合が今すぐできる5つの自衛策
では、どうすればよいのか。横浜市のコラムと国交省の指針をもとに、明日からできることを5つに整理します。特別な専門知識は要りません。
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複数業者から、本当の意味で見積もりを取る。管理会社やコンサルタントの推薦だけに頼らず、ルートの異なる施工会社から相見積もりを取り、内訳まで比較します。当て馬を避けるには、紹介元が重ならない会社を選ぶのがコツです。
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第三者の専門家にセカンドオピニオンを求める。マンション管理士や、選定に利害のない一級建築士に、見積内容と工事仕様をチェックしてもらいます。他者の目が入るだけで、不自然な数量や仕様は浮き上がります。
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選定の過程を記録し、組合員に共有する。誰が、どの基準で、なぜその会社を選んだのか。議事録に残し、理事会の外にも開く。透明にしておくこと自体が、不正への強い抑止力になります。
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契約書に違約金条項を入れる。「談合が発覚した場合は違約金を支払う」という一文を契約に盛り込みます。違法行為への牽制になり、万一のときは経済的な補償につながります。
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国交省の「相場のものさし」と照らす。戸あたり・床面積あたりの金額、工事項目の過不足、そして監理料が安すぎないかを、国交省の実態調査(戸数規模別データ)と見比べます。公的な数字は、交渉のいらない中立の根拠になります。
この5つは、どれも「競争」と「透明性」を取り戻すための行動です。談合は競争が消えたときに生まれます。逆に言えば、本物の競争と開かれた情報を発注者が握り続けるかぎり、談合は成立しにくくなります。
見積書は「合計」ではなく「内訳の3か所」を見る
自衛策を頭で分かっていても、いざ分厚い見積書を前にすると、どこを見ればいいか迷うものです。専門家でなくても確認できる勘所を、3か所に絞ってお伝えします。
一か所目は、「仮設工事」の欄です。足場の架設・撤去費がいくらで、本当に建物全面に必要なのかを見ます。前回の修繕と同じ金額がそのまま引き写されていないか、現地の形状に照らして過大ではないかを確認してください。ここは金額の塊が大きいぶん、見直しの効果も大きい部分です。
二か所目は、「数量」です。塗装や防水の面積、シーリングの長さといった数量が、図面や現況と合っているか。「念のため」を理由に広めに取られていないか。過剰な数量は、過剰な金額に直結します。国交省が「過剰な工事項目・仕様の設定等がないか」と注意しているのは、まさにこの欄です。
三か所目は、「コンサルタント業務料・諸経費」です。監理料が不自然に安すぎないか、内訳の見えない「諸経費」が総額の何割を占めるか。前述のとおり、安すぎる監理料の裏に見返りが隠れていることがあります。逆に、諸経費が妙に厚いときは、その根拠を遠慮なく質問してください。まっとうな会社なら、きちんと説明できます。
この3か所を押さえるだけで、見積書は「読めるもの」に変わります。そして、複数の会社・複数の工法の見積もりを並べたとき、この3か所の差こそが、判断の決め手になります。
最大の自衛は「工法の選択肢」を持つこと
ここからが、私が現場の人間として一番お伝えしたいことです。相見積もりも、セカンドオピニオンも、突き詰めれば「比べられる状態」をつくる作業です。そして大規模修繕でもっとも比べにくく、もっとも金額が動くのが「工法」です。
多くの見積もりは、建物の全面に足場を架ける前提で組まれています。足場の仮設・撤去費は、工事全体のなかでも大きな費目のひとつです。ここが「前回どおり」で固定されてしまうと、本当はもっと圧縮できる部分が、検討の俎上にすら載りません。
私たちは、ひとつの建物に対して、足場仮設による通常工法、ロープアクセスによる無足場工法、そして足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法——この3つを比較したうえでご提案するようにしています。日本でも、3つの工法を建物特性に応じて出し分けられる会社は多くありません。なぜそこにこだわるかと言えば、選択肢が増えるほど、見積もりは「比べられる=透明になる」からです。
たとえば、足場を架ける前提と、ロープアクセス併用の前提では、足場費という大きな塊そのものが変わります。発注者にとっては、同じ建物で複数の見積もり構造を手にできる。これは、特定業者の言い値を見破るうえで、何より強力な「ものさし」になります。詳しくはロープアクセス工法のご紹介と大規模修繕工事のご紹介でも整理しています。
3つの工法をどう使い分けるか(比較表)
工法選びの勘所を、表に整理します。あくまで一般的な傾向であり、最終的には建物の形状・劣化状況・居住者の生活への影響で判断します。
| 観点 | 通常足場工法 | ロープアクセス工法(無足場) | ハイブリッド工法 |
|---|---|---|---|
| 仮設の考え方 | 建物全面に足場を架設 | 足場を架けずロープで施工 | 部位ごとに足場とロープを併用 |
| 向いている建物 | 中低層、複雑な形状、全面的な改修 | 高層、足場架設が難しい立地、部分補修やコスト最重視 | 大規模・複雑で総合コスト最適化が要る物件 |
| コスト面の特徴 | 足場費が大きく計上される | 足場費を圧縮しやすい | 必要な箇所だけ足場、無駄を削りやすい |
| 居住者・利用者への影響 | 足場・養生で日照や視界に影響 | 足場がなく生活影響が小さい | 影響範囲を限定できる |
| 工期の傾向 | 架設・撤去の時間が必要 | 架設不要で部分的に短縮余地 | 区画ごとに段取りを最適化 |
表を見ていただくと分かるのは、「どの工法が一番偉い」という話ではない、ということです。建物に合った工法を、比べたうえで選ぶ。その比較プロセスこそが、割高や過剰を締め出す力になります。
ただし、ロープアクセスが万能というわけではない
両論併記のために、デメリットも正直に書きます。ロープアクセスは魅力的ですが、すべての現場に最適なわけではありません。
たとえば、外壁の広範囲にわたって下地から大規模に作り直すような改修や、重量物・大型機材を多用する工事では、安定した足場の上で進めた方が品質も安全も確保しやすい場面があります。バルコニー内部の込み入った作業や、全面打診で広範囲の確認が要る場合も、足場の方が向くことがあります。また、ロープアクセスは作業員の高度な技能と安全管理が前提で、施工できる会社が限られます。
安全面についても、正直にお話しします。ロープアクセスは、ロープ高所作業に関する特別教育を受け、フルハーネス型墜落制止用器具を正しく使いこなす、訓練された作業員によって初めて成り立つ工法です。メインのロープと、万一に備えるライフライン(命綱)を二重に取る——この基本を徹底できる体制があるかどうかが、施工会社を見分ける一つの目安になります。安さだけを売りにして、技能や安全管理の裏付けが見えない会社には、工法を問わず注意が必要です。
だからこそ「ハイブリッド」という発想が効いてきます。足場が要る部位には足場を、ロープで足りる部位はロープで——建物を分けて考えれば、品質を落とさずに総コストを最適化できます。「無足場にすれば必ず安くなる」と断定する業者がいたら、むしろ慎重になってください。大切なのは、断定ではなく比較です。
戸あたりで考えると、損得が体感できる
金額の話は、総額だと実感が湧きにくいものです。そこで「戸あたり」で考えてみてください。国交省の実態調査も、戸あたり・床面積あたりという見方を推奨しています。
仮に100戸のマンションで、工法選びや仕様の見直しによって工事費を500万円圧縮できたとします。総額では大きく感じても、戸あたりにすれば5万円です。逆に、談合や過剰仕様で500万円割高になっていれば、区分所有者一人ひとりが知らないうちに5万円を余計に負担している、ということでもあります。これが10戸の小規模物件なら、戸あたりの影響は一気に50万円に跳ね上がります。規模が小さいほど、一件あたりの判断が家計に直結するのです。
収益物件のオーナーにとっては、この圧縮分はそのまま手元に残るキャッシュであり、ネット利回りを押し上げる要素になります。修繕費は、家賃のように相場で決まるものではなく、発注の工夫で自分でコントロールできる数少ない変数です。
よくある質問(FAQ)
Q. 談合は公共工事の話で、民間マンションには関係ないのでは?
いいえ。横浜市のコラムは「民間のマンション工事であっても決して許されない」と明記しています。今回の2026年6月の報道も、対象は民間の分譲マンションの大規模修繕です。
Q. 設計監理方式はやめた方がよいのですか?
そうとは限りません。方式自体は有用で、中立のコンサルタントが入ることで品質が上がる現場も多くあります。問題は方式ではなく、その中立性が悪用されることです。コンサルタントの監理料が不自然に安くないか、利害関係がないか、という目で選ぶことが大切です。
Q. 相見積もりを取っていれば安心ですか?
残念ながら、当て馬を使った「相見積もりを装った出来レース」が手口として報告されています。紹介ルートの異なる会社から取る、内訳まで比較する、第三者にチェックしてもらう——この3点をセットにしてください。
Q. 工法は誰が決めるべきですか?
最終的に決めるのは発注者である管理組合・オーナーです。だからこそ、複数の工法を比較できる情報を、選定の早い段階で手元に揃えておくことをおすすめします。
Q. 工事中の住民や入居者への影響が心配です。
そこは私たちが最も気を配る部分です。足場を架けると、どうしても窓まわりの日照や視界、防犯面に影響が出ますし、養生期間も長くなります。ロープアクセスを併用できれば、足場を架けない区画では生活への影響を小さく抑えられます。賃貸物件であれば、入居者の満足度や退去抑制にもつながる、見落とされがちなメリットです。
まとめ——競争と透明性が、積立金を守る
今回の公取委の動きは、業界にとって痛みを伴うものですが、発注する側にとっては「知識を持てば守れる」ことを示した出来事でもあります。国交省は9年前から指針を示し、横浜市のような自治体も具体的な防止策を公開しています。武器は、すでに用意されているのです。
私が現場で20年見てきて、嘘偽りなく感じるのは、トラブルの多くは「比べられなかったこと」から生まれる、ということです。工法を比べ、見積もりを比べ、専門家の意見を比べる。その当たり前を取り戻すだけで、大切な修繕積立金は驚くほど守れます。
私たちは、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つを並べてご提案できる立場から、まずは「比べるための材料」をお出しすることを大切にしています。工法をどうするか、今の見積もりが割高でないか——ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せはこちらからどうぞ。なお、金利上昇局面で修繕費をどうコントロールするかについては、前回の記事や本間社長ブログの一覧もあわせてご覧ください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査を初めて実施」(平成30年5月11日報道発表)
- 国土交通省「マンションの大規模修繕工事に関する実態調査について」
- 横浜市「【コラム】マンション大規模修繕工事の談合とは?」(最終更新2026年2月9日)
- 日本経済新聞「マンション修繕談合、公取委が30社超に排除命令へ 100件以上が対象」(2026年6月、報道)
- 公正取引委員会(独占禁止法に関する一次情報・相談窓口)https://www.jftc.go.jp/


