2026年7月22日 更新/株式会社明誠 代表取締役 本間幸紘(大規模修繕・ロープアクセス工法 実務20年)
この記事で答える質問:西東京市で賃貸マンション・アパート・ビルを持つオーナーは、2026年(令和8年度)にどの制度を、どの順番で取りに行けばいいのか?
先に結論を申し上げます。西東京市の賃貸・ビルオーナーが狙うべき本命は、東京都の「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(令和8年度218億円)」と、西東京市の「特定緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業(耐震改修は費用の10分の9)」の2本です。そして意外に見落とされているのが、市の耐震助成には「共同住宅は対象になりません」という条件が付いている点です。ここを知らずに動くと、時間だけを失います。
私は大規模修繕とロープアクセス工法(産業用ロープで作業員が壁面を上下する、足場を組まない施工方法)の現場に20年立ってきました。その立場から正直に言えば、補助金は「制度を知っていて、契約前に申請し、期日を守った人」だけが受け取れる仕組みです。制度は平等でも、結果は動きの速さで決まります。この記事では、西東京市のオーナーが実際に使える制度を、入居率とキャッシュフローの目線で並べ直します。
結論:西東京市の賃貸・ビルオーナーが狙う「三層マップ」
まず全体像です。賃貸物件を1棟以上お持ちのオーナー視点で、効き目の大きい順に整理しました。
| 層 | 制度名 | 主な対象 | オーナーにとっての旨味 |
|---|---|---|---|
| 都 | 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(令和8年度218億円) | 賃貸住宅の所有者等 | 断熱改修+太陽光で入居者満足と光熱費、賃料水準を守る |
| 都 | 既存住宅における省エネ改修促進事業 | 高断熱窓・ドア・断熱材・浴槽 | 窓は1住戸あたり上限200万円という大枠 |
| 国 | 住宅省エネ2026キャンペーン(窓・給湯・賃貸集合給湯) | 賃貸集合住宅を含む省エネ改修 | 「賃貸集合給湯省エネ2026」という賃貸専用枠がある |
| 市 | 特定緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業 | 新青梅街道・青梅街道等の沿道旧耐震建築物 | 耐震改修は費用の10分の9、補強設計も助成 |
| 市 | 木造住宅耐震改修等助成 | 旧耐震の木造住宅(共同住宅は対象外) | 改修1/2・上限90万円。使える/使えないの線引きが重要 |
| 市 | ブロック塀等安全対策促進助成 | 避難路(通学路等)に面する塀 | 診断・除却・建替え・改修を2/3助成、賠償リスクを消す |
| 市 | 分譲マンション耐震アドバイザー派遣(無料) | 分譲マンションの管理組合等 | 建築士・マンション管理士を年3回まで無料派遣 |
この記事では上から順に、「使える/使いにくい」を含めて解説します。金額や期間はすべて公的な一次情報のリンクを併記しました。制度は予算枠に達すると年度途中で締め切られるため、最終判断は必ずリンク先の最新情報でご確認ください。
西東京市という賃貸市場の読み方――2駅2核と、家賃7万円台がもたらす「補助金の効き目」
西東京市は2001年に田無市と保谷市が合併して生まれた市で、人口はおよそ20万3,000人。多摩地域のなかでも規模の大きい自治体です。市内の核となるのは、西武新宿線の田無駅と西武池袋線のひばりヶ丘駅という2つの駅。1つの街に人が集まる単核型ではなく、性格の違う2つの商圏が並び立つ「2駅2核」の構造をしています(出典:SUUMO 西東京市の家賃相場)。
家賃相場は、一人暮らし向けでおおむね7万円台、ファミリー向けで13万円台。23区に隣接しながら、都心部より明確に手が届く水準です(出典:Yahoo!不動産 西東京市の家賃相場・推移)。
ここが西東京市のオーナーにとって決定的に重要なところです。家賃水準が23区中心部より低いということは、同じ工事費をかけたときの利回りへの影響が、その分だけ重いということを意味します。窓の交換に1住戸30万円かかったとして、家賃20万円の物件と家賃7万円の物件では、投資回収に必要な期間がまったく違います。だからこそ、多摩地域のオーナーほど補助金の使い方で差がつきます。
もうひとつ、私が現場で感じている変化があります。西東京市は都心通勤者のベッドタウンとして育ってきた街ですが、いまの入居者は「安いから住む」だけでは決めません。冬の窓際の寒さ、結露によるカビ、給湯の立ち上がりの遅さ――こうした地味な不満は、更新のタイミングで静かに退去理由になります。派手なリノベーションよりも、こうした基礎性能の底上げのほうが、実は入居率と実質賃料収入(NOI=賃料収入から運営費を差し引いた手取り)に効いてきます。国と都の省エネ補助は、その底上げを実費を抑えながら実行できる、数少ない機会です。大規模修繕の全体像については大規模修繕工事のご紹介でも整理していますので、あわせてご覧ください。
【都・最重要】令和8年度 賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業(218億円)
賃貸オーナーにとっての本命は、東京都と公益財団法人東京都環境公社(クール・ネット東京)が実施する賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業です。令和8年度の予算規模は218億円。賃貸住宅のオーナーを名指しで支援する事業としては、破格の枠と言っていい規模です(出典:東京都 報道発表「賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進 令和8年度助成事業受付等」)。
この事業の狙いは明快です。入居者の健康確保や防音・防犯効果に資する断熱改修を実施する賃貸住宅オーナーを集中的に支援すること。さらに、太陽光発電と低圧一括受電を組み合わせて各住戸に再生可能エネルギー電力を供給する場合、太陽光発電設備や低圧一括受電の附帯設備にかかる経費も助成対象になります(出典:クール・ネット東京 賃貸住宅における省エネ化・再エネ導入促進事業)。
オーナー目線での使いどころを整理します。
第一に、省エネ性能の診断・表示がセットになっている点です。改修前に建物の省エネ性能を診断し、それを表示するところまでが事業の枠組みに含まれています。これは単なる工事補助ではなく、「この物件は断熱性能が高い」と募集広告で語れる材料が公的な形で手に入るということです。同じ家賃帯で競合が並んだとき、この一行が効きます。
第二に、太陽光+低圧一括受電の組み合わせです。共用部の電気代削減にとどまらず、各住戸に再エネ電力を届ける仕組みまで踏み込める設計になっています。田無・ひばりヶ丘エリアの3〜5階建て、10〜20戸規模の物件は、屋上面積と戸数のバランスが取りやすく、この枠と相性が良いと感じています。
注意点も申し上げます。この種の事業は事業者登録制をとることが多く、施工会社があらかじめ登録されていないと申請できません。工事会社を選ぶ段階で「この事業の登録事業者かどうか」を必ず確認してください。工事の見積もりを取ってから気づくと、そこから登録手続きで数週間を失います。
【都】既存住宅における省エネ改修促進事業――窓は1住戸あたり上限200万円
賃貸専用枠とは別に、東京都には既存住宅における省エネ改修促進事業(高断熱窓・ドア・断熱材・浴槽)があります。令和8年度の助成上限は、高断熱窓・ドアが1住戸あたり200万円(防犯性能を備えた窓の場合は300万円)、断熱材は工事費の3分の1相当で上限100万円/戸という水準です(出典:クール・ネット東京 令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業)。
窓は、賃貸物件で費用対効果が最も読みやすい部位のひとつです。理由は3つあります。ひとつは、冬の寒さと結露という退去理由に直接効くこと。ふたつめは、内窓(既存の窓の内側にもう一枚窓を設ける工法)なら住戸内の工事が1日で終わり、入居中でも施工しやすいこと。みっつめは、遮音性が同時に上がり、幹線道路沿いの物件では騒音クレームの減少という副次効果が得られることです。新青梅街道や青梅街道沿いの物件をお持ちなら、この3つめは無視できない価値があります。
なお、都の複数事業と国の事業は、対象部位や併用条件が細かく定められています。「窓は国、断熱材は都」といった振り分けが有利になるケースもあるため、見積もり段階で施工会社に併用可否の確認を文書で取ることをお勧めします。
【国】住宅省エネ2026キャンペーン――「賃貸集合給湯省エネ2026」という賃貸専用枠
国の支援は、国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携による住宅省エネ2026キャンペーンに集約されています。令和8年度は「みらいエコ住宅2026事業」「給湯省エネ2026事業」「賃貸集合給湯省エネ2026事業」が実施され、交付申請(予約を含む)の受付は令和8年3月31日から開始されています(出典:経済産業省 報道発表/住宅省エネ2026キャンペーン公式)。
賃貸オーナーがまず見るべきは、賃貸集合給湯省エネ2026事業です。これは賃貸集合住宅における小型の省エネ型給湯器への交換を対象とする、文字どおり賃貸専用の枠です(出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト)。
給湯器は、賃貸経営における「壊れてから慌てる設備」の代表格です。10戸の物件で給湯器が一斉に寿命を迎えると、突発的な支出が短期間に集中します。私がオーナーさまにお伝えしているのは、壊れる前に、補助金のある年度に、まとめて替えるという考え方です。故障してからの緊急交換は、補助金の対象外になるだけでなく、単価も高くつきます。計画的に束ねれば、1台あたりの工事費も下がります。
窓については先進的窓リノベ2026事業が対象になります。都の事業との併用可否は事業ごとに異なるため、ここも必ず事前確認を。
【市・本丸】特定緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業――沿道の築古ビルは改修費の10分の9
ここからが西東京市独自の制度です。築古のビル・マンションをお持ちのオーナーにとって、最もインパクトが大きいのが西東京市特定緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業助成制度です。
西東京市内では、新青梅街道、青梅街道の一部、所沢街道の一部、保谷新道の一部、五日市街道の一部が特定緊急輸送道路に指定されています。この沿道にあり、次の条件をすべて満たす建築物が対象です(出典:西東京市 特定緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業助成制度)。
- 敷地が特定緊急輸送道路に接する建築物
- 昭和56年5月31日以前に建築された建築物(旧耐震基準)
- 道路幅員のおおむね2分の1以上の高さの建築物
助成の中身は次のとおりです。
- 補強設計助成:実費または助成対象基準額(延べ面積×基準単価)のいずれか低い額。基準単価は1,000平方メートル以下の部分で1平方メートルあたり5,000円、1,000超〜2,000平方メートル以下で3,500円、2,000平方メートル超で2,000円
- 耐震改修助成:実費・基準額等のうち最も低い額の10分の9(分譲マンション以外で5,000平方メートルを超える部分は2分の1)。基準単価は用途の過半が住宅以外なら1平方メートルあたり50,300円、住宅なら33,500円(マンションは49,300円)、免震等の特殊工法は82,300円
- 建替え助成・除却助成:同様に10分の9の枠組み
10分の9という数字は、公費支援としては相当に踏み込んだ水準です。しかも見落とされがちですが、この沿道建築物の所有者には耐震診断の実施が義務とされており、耐震改修等についても努力義務が課されています。つまり、これは「使える制度」であると同時に「向き合わなければならない義務」でもあります。
オーナーにとっての出口戦略の観点も申し上げておきます。売却時、買主は必ず耐震性を確認します。旧耐震の建物は、それだけで金融機関の融資条件が厳しくなり、収益還元価格(家賃収入を利回りで割り戻した物件評価額)を押し下げます。9割助成で耐震性を確保できる期間は、資産価値を守るという意味でも貴重です。手続きの順番だけは絶対に守ってください。交付決定通知前に工事契約を結ぶと、助成金は交付されません。
【市】木造住宅耐震改修等助成――「共同住宅は対象外」という壁と、それでも使える2つのケース
西東京市の木造住宅耐震改修等助成制度は、耐震改修に要した費用の2分の1以内で上限90万円、除却(建替えに伴うものを含む)は3分の1以内で上限30万円という内容です。対象は昭和56年5月31日以前に建築された市内の木造住宅で、耐震診断の結果、評点1.0未満だったものを1.0以上に改修する工事です。助成限度額の90万円への引き上げと、緊急耐震重点区域の市内全域への拡大を含む取組期間は、平成31年4月1日から令和8年3月31日までとされています(出典:西東京市 木造住宅耐震改修等助成制度)。
ここで賃貸オーナーが必ず知っておくべき条件があります。対象は「現に所有者が居住している住宅(店舗等の併用住宅を含む)」であり、共同住宅は助成の対象になりません。木造アパートを1棟お持ちのオーナーが、この制度で耐震改修費用の助成を受けることはできない、という意味です。
正直にお伝えしておきます。この点を曖昧にしたまま「西東京市にも耐震助成があります」と説明する情報は少なくありません。しかし現場では、この一行を知らずに準備を進めて時間を失うケースを見てきました。
そのうえで、賃貸オーナーでも使える場面は2つあります。
ひとつは、店舗等併用住宅のケースです。1階を貸店舗、2階をご自身の住居としてお使いの旧耐震木造建物なら、併用住宅として対象になり得ます。多摩地域では珍しくない形態です。
もうひとつは、ご自宅そのものです。オーナーご自身が旧耐震の木造住宅にお住まいなら、これは個人資産の防衛として使う価値があります。加えて、耐震改修には所得税の特別控除制度があり、耐震改修をした家屋の固定資産税が一定期間減額される制度も用意されています。助成金と税制を合わせて考えるのが正しい使い方です。
なお、助成を受ける場合、改修前後の耐震診断を行う診断機関は市が指定する機関に限られます。一般社団法人東京都建築士事務所協会北部支部の会員、「東京都木造住宅耐震診断事務所登録制度要綱」に基づく耐震診断事務所、または市長が認めた建築士のいずれかです。ここも工事会社任せにせず、必ず確認してください。
【市】ブロック塀等安全対策促進助成――通学路に面した塀は「賠償リスク」そのもの
ブロック塀等安全対策促進助成制度は、避難路(通学路等)に面するブロック塀等の倒壊による人的被害を防ぐための制度です。耐震診断、除却、建替え、耐震改修のそれぞれの費用が助成対象になります(出典:西東京市 ブロック塀等安全対策促進助成制度)。
助成額は、実費(税抜)または「助成対象ブロック塀等の総延長×1メートルあたり80,000円」のいずれか低い額に、3分の2を乗じた額が限度です。除却の場合は、撤去後の高さが60センチメートル以下になることが条件となります。
対象となるには、①避難路に面していること、②明らかな違反建築物でないこと、③簡易点検シートで不適項目があるか、目視で破損・ぐらつきが確認できること――といった基本要件を満たす必要があります。「避難路」は市内各小学校が定める通学路のほか、児童・生徒が自宅から指定避難所に至る経路を指します。
私がこの制度を強くお勧めするのは、金額の大きさよりもリスクの性質のためです。ブロック塀の倒壊で通行人が負傷した場合、工作物責任として所有者が問われます。1棟のアパートの敷地境界にある古い塀が、数千万円規模の賠償リスクを抱えている――という構図は、決して大げさな話ではありません。所有物件の敷地に高さのある古い塀があり、その前を子どもが通学しているなら、優先度は一気に上がります。
ここでも契約前の申請が必須です。「先に壊してから申請」は認められません。また、土地の販売を目的とする場合や、他の補助金の交付を受ける(予定の)場合は対象外となります。
【市】分譲マンション耐震アドバイザー派遣(無料・年3回)――区分所有オーナーの動き方
西東京市には、管理組合等に建築士およびマンション管理士を無料で派遣する制度があります。耐震化の必要性、耐震改修に至るまでの取り組み方法の説明、区分所有者間の合意形成に必要な助言などを受けられ、派遣回数は1年度につき3回までです(出典:西東京市 分譲マンション耐震アドバイザー派遣制度)。
「これは管理組合の話で、オーナーには関係ない」と思われるかもしれません。しかし区分所有で複数戸を賃貸に出しているオーナーにとって、この制度は使い道があります。
理由は合意形成です。区分所有の大規模修繕や耐震改修は、賃貸に出している所有者と実際に住んでいる所有者とで、優先順位がずれがちです。住んでいる方は「今の暮らしを乱されたくない」、貸している方は「資産価値と入居率を守りたい」。この温度差を、当事者だけで埋めるのは簡単ではありません。第三者の専門家が無料で3回入ってくれる制度は、議論の土台を作る道具として使えます。
【市】省エネ機器の助成――「事業者向け」の枠を見落とさない
環境分野では、西東京市は省エネ家電(エアコン)買い換え助成金を実施しています。令和8年度は、令和8年5月15日から令和8年11月30日までに購入したものが対象で、市内の住宅で使用しているルームエアコンまたは冷蔵庫を未使用の対象家電に交換する場合が対象。市に住民登録があり市税の滞納がない方が対象で、1世帯につき3台までとされています(新規設置は対象外)(出典:西東京市 省エネ家電(エアコン)買い換え助成金)。
この住民向けの枠は、あくまで「自らが居住する住宅」が対象です。賃貸に出している住戸のエアコンには使えません。
ただし西東京市には、事業者向けの業務用エアコン・ルームエアコン買い換え助成金という別枠があります(出典:西東京市 事業者向け 業務用エアコン・ルームエアコン買い換え助成金)。賃貸経営は事業ですから、ここを確認する価値があります。市の補助制度は年度ごとに要件と受付期間が変わりますので、西東京市 市の補助制度のページで当年度の募集要項を直接ご確認ください。
なお、太陽光発電や蓄電池について、西東京市には市独自の助成がなく、東京都と国の制度を使う形になります。市も東京都の補助金のご案内(太陽光発電等)というページで都の制度を案内しています。「市にないから使えない」ではなく、「都の枠を市の窓口経由で確認する」のが正しい動き方です。
補助金を「手取り」で考える――圧縮記帳・雑収入・資本的支出
補助金の話をするとき、金額だけを見て判断される方が多いのですが、オーナー経営では税引後にいくら残るかが結論を決めます。押さえるべきは3点です。
1つめは、受け取った助成金の扱いです。事業として賃貸経営を行っている場合、受け取った助成金は原則として収入(雑収入)に計上されます。100万円の助成を受けても、そのまま100万円が手元に残るわけではありません。国庫補助金等については圧縮記帳という取り扱いが認められる場合がありますが、制度や状況によって可否が分かれます。
2つめは、工事費が修繕費か資本的支出かです。原状回復に近い工事なら修繕費として一括で損金算入できますが、建物の価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする工事は資本的支出として資産計上し、減価償却していくことになります。断熱改修や耐震改修は、内容によってこの判断が分かれます。
3つめは、固定資産税の減額制度です。前述のとおり、耐震改修をした家屋の固定資産税は一定期間減額されます。西東京市では資産税課家屋償却資産係が窓口です。助成金・所得税の特別控除・固定資産税の減額を合わせると、実質負担は表面的な数字よりかなり下がることがあります。
税務判断は個別事情で大きく変わります。ここに書いた内容は一般的な整理であり、実際の申告は必ず顧問税理士にご確認ください。私は税理士ではありませんので、断定は避けます。ただ、工事の見積もりを取る段階で税理士に相談しておく――これだけで結果が変わることは、現場で何度も見てきました。
申請カレンダーと工事の束ね方――足場か、ロープアクセスか
最後に、実務の順番です。西東京市のオーナーが2026年度に動くなら、私はこう組み立てます。
ステップ1:物件が特定緊急輸送道路の沿道かを確認する。 新青梅街道、青梅街道、所沢街道、保谷新道、五日市街道の沿いで、昭和56年5月以前の建物なら、ここが最優先です。耐震診断は義務でもあります。市の住宅課(保谷東分庁舎2階/電話042-438-4052)と建築指導課へ、申請内容と技術的内容の両方を事前相談してください。
ステップ2:都の賃貸住宅向け断熱・再エネ事業の登録事業者を押さえる。 218億円の枠は大きくても、無限ではありません。事業者登録の確認と省エネ診断の予約を先に動かします。
ステップ3:国の給湯・窓の枠と、都の窓・断熱材の枠を振り分ける。 併用可否を文書で確認したうえで、どの部位をどの制度に載せるかを決めます。
ステップ4:ブロック塀を点検する。 簡易点検シートで不適項目があれば、契約前に申請します。
そして工事そのものの組み立て方です。外壁改修と窓改修、太陽光設置を別々の年に別々の業者で行うと、そのたびに仮設費が発生します。足場は一度架けると解体まで費用が発生し続けるコストです。
ここで工法の選択が効いてきます。私どもは、通常の足場仮設による工事、産業用ロープで作業する無足場のロープアクセス工法、そして両者を部位ごとに使い分けるハイブリッド工法の3つから、建物にとって最適な組み合わせをご提案しています。
判断の目安をお伝えします。外壁の全面打診・全面塗り替えが必要なら足場が合理的です。一方、部分補修やシーリングの打ち替え、鉄部塗装、調査・診断が中心なら、ロープアクセスのほうが仮設費と工期を圧縮できます。田無・ひばりヶ丘エリアに多い、隣地との距離が近い物件や、駐車場を潰したくない物件では、足場を架けないという選択肢そのものに価値が出ます。入居者の生活動線を塞がない、駐車場収入を止めない――これは家賃収入を守るという意味で、直接キャッシュフローに効きます。
そして大規模・複雑な物件では、ハイブリッド工法が総合コストで有利になることが少なくありません。「足場かロープか」の二択ではなく、部位ごとに最適解を組み合わせるという発想です。この提案ができる会社は日本でもまだ多くありません。
まとめ:西東京市のオーナーが2026年に動く理由を、数字で
最後に数字で整理します。
- 東京都の賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業は令和8年度218億円。賃貸オーナーを名指しで支援する枠
- 都の既存住宅省エネ改修促進事業は、高断熱窓・ドアで1住戸あたり上限200万円(防犯窓は300万円)
- 国は住宅省エネ2026キャンペーンで賃貸集合給湯省エネ2026事業という賃貸専用枠を用意し、受付は令和8年3月31日開始
- 西東京市の特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震改修助成は費用の10分の9。対象道路は新青梅街道・青梅街道の一部・所沢街道の一部・保谷新道の一部・五日市街道の一部
- 市の木造住宅耐震改修助成は1/2・上限90万円だが、共同住宅は対象外。取組期間は令和8年3月31日まで
- ブロック塀等安全対策促進助成は、1メートルあたり80,000円を上限とする額の3分の2
- 分譲マンション耐震アドバイザーは無料・年3回
補助金は、建物を良くするための手段であって、目的ではありません。ただ、家賃7万円台〜13万円台という西東京市の相場のなかで1棟を回していくとき、公費で工事費の一部をまかなえるかどうかは、10年単位のキャッシュフローに確実に効いてきます。
どの制度も共通しているのは、契約前の申請が原則であり、予算枠に達すれば年度途中でも締め切られるということです。金額や期限は年度ごとに変わりますので、必ず各制度の公式ページで最新情報をご確認ください。
「うちの建物はどの制度が使えるのか」「足場とロープアクセス、どちらが安く済むのか」――そうしたご相談は、株式会社明誠までお気軽にお寄せください。西東京市を含む多摩地域でも、現地を拝見したうえで、3つの工法から建物にとって最適なご提案をいたします。
本記事の制度内容・金額は2026年7月時点で公開されている情報に基づいています。制度は予算の消化状況により年度途中で受付を終了する場合があり、要件・金額・期限は変更されることがあります。申請にあたっては必ず各制度の公式ページおよび窓口でご確認ください。税務の取り扱いについては顧問税理士にご相談ください。
株式会社明誠|西東京市の賃貸物件・ビルの大規模修繕、ロープアクセス工法(無足場工法)、ハイブリッド工法のご相談承ります。


