大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

松崎町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

松崎町のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

2026年9月8日 更新

「松崎町で分譲マンションの大規模修繕をやりたい。町から補助は出るのか」——この記事は、その質問に町の一次情報だけで答えます。

結論から言うと、静岡県賀茂郡松崎町には「分譲マンションの共用部改修に直接効く町独自の補助金」はありません。ただ、それで終わらせてしまうと松崎町では大きく損をします。理由は、この町のブロック塀撤去補助に、私がこのシリーズで176件の自治体を調べてきて初めて出会った条件が入っているからです。町が定める津波避難路沿いであれば、補助率10分の10、限度額なし。負担ゼロで撤去できる枠が、条件付きとはいえ実在します。

株式会社明誠の本間です。私はマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年以上やってきました。足場を組む工事も、ロープアクセスという無足場の工事も、その両方を組み合わせるハイブリッド工法も、同じ社内で見積もれる立場にいます。だからこそ「補助金が出ないから何もできない」で終わらせず、制度と工法の両方から手を打つ話をこの記事に書きます。

この記事は、松崎町のマンション管理組合の理事長さま、賃貸アパート・マンションのオーナーさま、そして西伊豆で建物を持っている法人の方に向けて書いています。


この記事の結論:松崎町で先に確認すべきは「3つ」

長い記事なので、先に答えを置きます。松崎町で建物を維持していくうえで、私が最初に確認していただきたいのは次の3つです。

順位 確認すること なぜ先なのか
1 敷地のブロック塀が「町が定める津波避難路」に面していないか 該当すれば撤去費が10分の10補助・限度額なし。桁が変わります
2 工事を頼む会社が「町の資格登録を受けた町内施工業者」か 住宅改修事業補助金・空き家改修等補助金の両方で、これが入口条件です
3 その建物が「現に居住している住宅」か「空き家バンク登録物件」か 松崎町の補助はこの2本の道に分かれています。どちらでもない賃貸用の共用部は町補助の対象外です

この3つを外すと、松崎町では制度の入口に立てません。逆に言えば、この3つさえ押さえれば、町の制度は小さいながらもきちんと使えます。

そして、共用部の大規模修繕そのもののコストは、補助金ではなく工法の選択で下げる——これが松崎町のような町で私がいつもお伝えしている考え方です。理由は後半の「足場が組みにくい松崎町で、どう修繕するか」で数字を出して説明します。


松崎町という町を、3つの数字で見る

制度の話に入る前に、松崎町がどういう町なのかを数字で押さえます。ここを飛ばすと、なぜ町の補助制度がこの形なのかが分かりません。

数字1:人口6,038人、世帯2,663(令和2年国勢調査)

松崎町の令和2年国勢調査結果は、人口6,038人・2,663世帯でした(出典:松崎町「令和2年国勢調査の結果」)。

注目すべきは推移です。同じ町の公表数字を並べると、昭和35年は12,183人・2,749世帯。つまり65年で人口は半分以下になったのに、世帯数はほとんど減っていない。昭和35年に1世帯あたり4.43人だったものが、令和2年には2.27人になった計算です。

これが何を意味するか。建物の数は人口ほど減らない、ということです。世帯が分かれれば住戸は必要になる。だから松崎町には、人口規模のわりに維持すべき建物が多く残っています。そしてその多くが、住む人の高齢化とともに修繕の判断を先送りされやすい状態にあります。

数字2:冬の西風は「吹き始めると3日は止まない」

松崎町の建築を語るとき、外せないのがなまこ壁です。町の観光資源として有名ですが、私は建物屋として別の見方をしています。

なまこ壁は、平らな瓦を壁に貼り、目地を漆喰でかまぼこ状に盛り上げた工法です。松崎町でこれが発達した背景として、静岡県の観光公式情報では「松崎の冬の西風は猛烈で、吹き始めると3日は止まない」ため、より堅牢で火にも強い建物が求められたことが挙げられています(参考:松崎町「松崎町のなまこ壁」)。

つまり松崎町の先人は、風と雨と塩から建物を守るために、外壁の仕上げを厚く硬くするという答えを出していた。これは現代のRC造マンションの外壁改修でもまったく同じ発想が要ります。西伊豆の西向き外壁は、東京の同じ築年数のマンションより確実に傷みが早い。私が実際に西伊豆の物件を見て感じるのは、そこです。

数字3:ブロック塀撤去の補助率「10分の10」

松崎町の補助金一覧を通しで読んで、私が声を上げたのがここでした。詳細は後述しますが、津波避難路沿いのブロック塀撤去は、事業費と「延長×32,000円/m」を比較して少ないほうの10分の10、限度額なし(出典:松崎町「ブロック塀等の撤去、改修に補助金がでます」)。

補助率10分の10・上限なしという設計は、自治体の補助金としてかなり踏み込んだものです。これは松崎町が、津波避難という一点に予算を集中させている証拠だと私は読みます。海に面した町だからこその制度設計です。


【背骨①】住宅改修事業補助金——20%・20万円、ただし「一生に1回」

松崎町の住宅系補助で、いちばん幅広く使えるのがこれです。

制度の骨格

項目 内容
制度名 松崎町住宅改修事業補助金
対象工事 住宅(居住部分に限る)の増築、改築および修繕工事
補助額 工事費の20%以内(限度額20万円、千円未満切り捨て)
工事規模 改修に要する費用が10万円以上(税抜)
施工業者 町の資格登録を受けた町内施工業者が行う事業
居住要件 町内に1年以上住民登録/その住宅に現在居住、または完了後速やかに居住
納税要件 所有者および同一世帯全員が町税等を滞納していない
完了期限 該当年度の3月10日までに完了する事業
回数制限 同一住居および同一人について1回限り
窓口 松崎町役場企画観光課(0558-42-3964)

(出典:松崎町「住宅改修事業補助金」松崎町「松崎町住宅建築・リフォーム補助制度一覧」

「1回限り」をどう使うか

この制度でいちばん重要なのは、太字にした同一住居および同一人について1回限りという一文です。

上限20万円ですから、工事費100万円で満額に達します。ということは、30万円の工事で使ってしまうと6万円で権利を使い切る。同じ住宅では二度目がありません。

私が松崎町の方に助言するとしたら、こうです。屋根・外壁・防水など、金額が張る工事をひとまとめにできるタイミングまで温存する。玄関ドアだけ、給湯器だけ、といった単発工事で権利を消費しない。20万円の枠は、100万円以上の工事にぶつけて初めて満額になります。

分譲マンションの共用部には使えるのか

率直に書きます。この制度は「住宅(居住部分に限る)」を対象としており、申請者に町内1年以上の住民登録と現に居住していることを求めています。管理組合という団体が共用部改修で申請する制度としては設計されていません。

ただし、専有部側の改修——たとえば区分所有者ご自身が住んでいる住戸の内装・設備・建具の改修であれば、要件を満たす可能性があります。共用部と専有部の切り分けは管理規約によりますので、そこは管理会社か町の窓口で確認してください。

賃貸オーナーの場合

「改修工事を行う住宅に現在居住している方または、改修工事完了後速やかに居住する方」が条件ですから、オーナーさまがご自身で住まない賃貸物件は対象外と読むのが自然です。ここは南伊豆町など近隣の町とも共通する考え方で、伊豆の町の住宅補助はおおむね「定住支援」の色が濃く、賃貸事業への補助ではありません。

賃貸オーナーさまが松崎町で使える可能性があるのは、次に説明する空き家改修等補助金と、県の制度のほうです。


【背骨②】ブロック塀等撤去事業——津波避難路沿いなら「10分の10・上限なし」

ここが松崎町の最大の特徴です。金額の桁が変わりますので、丁寧に整理します。

2つの事業に分かれている

事業名 対象
ブロック塀等撤去事業 地震発生時に倒壊・転倒の危険性のあるブロック塀等の撤去(石塀やレンガ塀なども対象
ブロック塀等改善事業 フェンス等の安全な塀への作り替え/既存のブロック塀を金具等により補強する工事

いずれも道路に面しているものに限るという共通条件があります(出典:松崎町「ブロック塀等の撤去、改修に補助金がでます」)。

補助金額——ここが本題

区分 補助率・算定 限度額
ブロック塀等撤去事業(通常) 「事業費」と「延長×8,900円/m」を比較して少ないほうの2/3 10万円
ブロック塀等撤去事業(町が定める津波避難路沿い 「事業費」と「延長×32,000円/m」を比較して少ないほうの10/10 なし
ブロック塀等改修事業 「事業費」と「延長×38,400円/m」を比較して少ないほうの2/3 25万円

数字で並べると差が見えます。通常の撤去は単価8,900円/mの2/3、つまり実質5,933円/m相当。津波避難路沿いは単価32,000円/mの10/10、つまり32,000円/m。単価だけで5.4倍、しかも上限がありません。

たとえば延長20mのブロック塀を撤去する場合を試算します。

ケース 算定 補助額
通常(事業費30万円・20m) 20m×8,900円=17.8万円と30万円を比較→17.8万円の2/3=11.87万円だが限度額10万円 10万円
津波避難路沿い(事業費30万円・20m) 20m×32,000円=64万円と30万円を比較→30万円の10/10 30万円(全額)

同じ塀、同じ工事でも、道路の指定次第で20万円違う。これが松崎町の制度です。

何を確認すればいいか

「町が定める津波避難路」がどの路線を指すかは、町が指定するものです。敷地に面した道路が該当するかどうかは、松崎町役場総務課(0558-42-3963)に確認するのが確実です。マンションの敷地境界に古い塀が残っているケースは西伊豆でもよく見ますし、石塀・レンガ塀も対象に含まれる点は見落とされやすいところです。

生垣づくり奨励補助金との関係

松崎町にはもう1つ、生垣づくり奨励補助金があります。新設の場合は経費の1/2(限度額3万円)、そしてブロック塀を撤去する場合は延長1m(ブロック塀高80cm以上)につき2,000円補助(限度額3万円)という枠です。窓口は企画観光課(0558-42-3964)。

塀を撤去して生垣にする、という筋道が町として用意されているわけです。ただし住宅改修事業補助金の説明に「他の補助金等の交付を受ける事業(交付金額を超える工事費については対象)」という記載があるとおり、同じ経費に複数の補助を重ねる場合の扱いは制度ごとに異なります。併用の可否は必ず事前に窓口へ確認してください。

申請は「施工前」

撤去・改修とも、施工前の事前申請が必須です。町のページには「工事完了後では補助金の交付はできませんので、必ず施工前に申請してください」と明記されています。必要書類は交付申請書、事前計画書、位置図、施工前の写真、見積書の写し、そして改善事業の場合は計画図(平面図・立面図・断面図)。

私が現場で何度も見てきた失敗が、これです。工事屋に「ついでに塀も壊しておいて」と頼んで、後から補助金の存在を知る。写真も見積も残っていない。この順番だけは動かせません。


【背骨③】空き家改修等補助金——改修50万円と家財10万円は別枠

賃貸オーナーさま、そして相続で松崎町に建物を持つことになった方に関係するのがこの制度です。

制度の骨格

項目 内容
制度名 松崎町空き家改修等補助金
目的 町内への移住・定住の促進による地域の活性化
対象物件 松崎町空き家バンク登録物件
改修工事の補助 改修工事費用の1/2または50万円のいずれか少ない額
家財処分の補助 家財処分費用の4/5または10万円のいずれか少ない額
対象者 所有者、入居者または入居予定者
施工業者 改修は資格登録を受けた町内施工業者の請負、家財処分は町内事業者
窓口 松崎町役場企画観光課(0558-42-3964)

(出典:松崎町「空き家改修等補助金」

見落としやすい3つの条件

条件1:3親等以内の親族には出ない

入居者・入居予定者は「登録物件所有者の3親等以内の親族でない者」と定められています。親御さんの空き家をお子さんが直して住む、という使い方はできません。

条件2:所有者には登録継続義務がある

所有者が申請する場合、「補助事業完了の日から継続して3年以上松崎町空き家バンクに登録する者」が条件です。ただし売買・賃借が成立した場合は「契約期間を2年間以上とする者」となります。つまり直したあと自分で使う、という選択はできない設計です。

条件3:改修と家財処分は「それぞれ1回限り」

補助金は同一の空き家に対して、改修に係るものと家財処分に係るもの、それぞれ1回限りの交付です。逆に言えば、改修50万円と家財処分10万円は別枠で両方使える。合計60万円になります。ここは知らないと片方しか申請しません。

家財処分4/5という補助率の意味

改修が1/2なのに、家財処分は4/5です。この差は、松崎町が「空き家が動かない最大の理由は残置物だ」と見ている表れだと私は読みます。

伊豆の空き家は、家財が丸ごと残っているケースが本当に多い。処分費用が12.5万円かかれば10万円が出る計算ですから、実質負担2.5万円。動かすなら、まずここからです。


木造住宅耐震補強は60万円。RC造マンションは対象外

静岡県といえばプロジェクト「TOUKAI-0」です。松崎町でも一式が用意されています。

事業名 対象 補助額
わが家の専門家診断事業 昭和56年5月31日以前に建築された既存木造住宅 専門家(静岡県耐震診断補強相談士)による無料の耐震診断
木造住宅補強計画策定事業 同上 96,000円/戸以内(費用の2/3以内)
木造住宅耐震補強助成事業 同上で、耐震診断の総合評点1.0未満を1.0以上に補強する工事(ただし総合評点が0.3以上あがる工事に限る) 60万円/戸以内(高齢者世帯等は80万円/戸以内
家庭内家具等固定推進事業 家具等の転倒による被害の防止・軽減 災害時要援護世帯:2/3以内(限度額40,000円)/一般世帯:1/2以内(限度額30,000円)

(出典:松崎町住宅建築・リフォーム補助制度一覧静岡県「TOUKAI-0+」

「高齢者世帯等」は、①65歳以上のみの世帯、②下肢・体幹・視覚障害のいずれかで障害者手帳(1級または2級)の交付を受けた方が同居する世帯、③介護保険法による要介護者・要支援者が同居する世帯、④療育手帳または精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方が同居する世帯、と定義されています。窓口は産業建設課(0558-42-3965)。

私がここで一言申し上げたいこと

この一式は木造住宅が対象です。RC造・鉄骨造の分譲マンションは入りません。

このシリーズで静岡県内の市町を順に見てきましたが、木造耐震補強の上限額は自治体によってかなり差があります。松崎町は60万円(高齢者世帯等80万円)。近隣の南伊豆町が115万円という水準だったことを考えると、松崎町は控えめな設定です。同じ伊豆半島でも町の財政規模と方針で変わる、ということです。

とはいえ、耐震診断が無料という点は動かしません。昭和56年5月31日以前の木造をお持ちなら、まずここを使ってください。診断結果は、その建物を直すのか手放すのかを決める材料になります。


浄化槽補助は令和8年4月に「新設」だけ下がった

これは2026年度(令和8年度)に動いた制度なので、独立した項として書きます。

松崎町の浄化槽設置整備事業費補助金は、令和8年4月1日より、合併処理浄化槽の新設に対する補助額を変更しています(出典:松崎町「浄化槽設置整備事業費補助金について」、2026年4月1日公開)。

人槽区分 新設 単独処理浄化槽・くみ取便槽から合併処理浄化槽へ付替え
5人槽 168千円 414千円
6〜7人槽 207千円 516千円
8〜50人槽 276千円 684千円

同じ町の制度一覧(旧情報)では新設5人槽が332千円と記載されていましたので、新設分はおおむね半減した形です。一方、付替えの額は414千円・516千円・684千円で据え置かれています。

この差をどう読むか

新設と付替えで、5人槽なら168千円対414千円。2.5倍近い差です。町として「まだ単独処理浄化槽やくみ取りが残っている住宅を、合併処理に切り替えさせたい」という意思が数字にはっきり出ています。

補助対象区域は、三浦地区(岩地・石部・雲見)の集落排水施設整備事業の計画区域を除く松崎町全域。8〜50人槽まで区分がある点は、小規模な共同住宅や併用住宅にも射程が及ぶことを意味します。

なお、家屋の解体を伴う場合は、付替えであっても「新設」扱いになる、という備考があります。建て替え計画とセットで考える方は、ここで金額が変わります。付替えの場合は、廃止する単独処理浄化槽・くみ取便槽を完全に撤去・処分することが求められます。


太陽光・県制度——小さいが効く制度をもう一段

住宅用太陽光発電システム設置事業補助金

項目 内容
補助額 最大出力の値に5万円/kWを乗じた額(限度額20万円、千円未満切り捨て)
システム要件 系統連系していること/太陽電池容量10kW未満/電力受給契約締結/未使用品
対象者 町内に住民登録/現在お住まいの住宅(店舗併用住宅を含む)または新築する住宅に設置/町税等の滞納がない
窓口 生活環境課(0558-42-3969)

4kW載せれば20万円で上限に達します。10kW未満という制限があるため、規模の大きい共同住宅の全戸分をまかなう設計には向きませんが、店舗併用住宅が対象に含まれている点は覚えておく価値があります。

静岡県:ふじのくに緊急リフォーム支援事業

町の制度ではありませんが、共同住宅も対象になる県制度なので触れます。

主な条件 補助額
一般型リフォーム 一戸建て・マンション等の共同住宅のいずれも対象/昭和56年6月1日以降着手、または昭和56年5月31日以前着手でも耐震診断・耐震補強後の評点1.0以上/20㎡以上/静岡県産材を使用した床・壁等のリフォーム/施工者は県内に本店を有する建設業者等 限度額10万円/戸
TOUKAI-0型リフォーム 耐震補強工事と併せてリフォームを行う木造住宅/20㎡以上/県産材使用/施工者は県内に本店 限度額20万円/戸

(出典:松崎町住宅建築・リフォーム補助制度一覧

「マンション等の共同住宅のいずれも対象」と明記されている点、そして県産材の床・壁リフォームが要件である点がポイントです。外壁塗装や防水といった共用部工事そのものには向きませんが、専有部の内装更新を計画している方には検討の余地があります。制度の年度ごとの実施状況は静岡県住まいづくり課(054-221-3081)にご確認ください。


マンション管理計画認定制度の窓口は「静岡県」

分譲マンションの管理組合さまに、補助金と並んで押さえていただきたいのが管理計画認定制度です。

マンション管理計画認定制度は、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、地方公共団体が認定する仕組みです(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。

松崎町は町域のため、この制度の窓口は静岡県になります(参考:静岡県「マンションの管理」)。市部であればその市が窓口ですが、町村部は県が担います。このシリーズで静岡県内の町を扱うたびに繰り返しお伝えしている点です。手数料や必要書類、事前確認サービスの取り扱いは年度により改定されますので、申請前に県へ直接ご確認ください。

認定を取ると何が変わるか

認定を取得すると、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」で金利引下げの対象になるなど、資金調達面での効果があります(参考:住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」)。また、公益財団法人マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを使うと、事前確認を経た電子申請ができます(参考:マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」)。

認定基準には、長期修繕計画が7年以内に見直されていること、計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること、といった項目が入ります。つまり「大規模修繕の計画を立てること」自体が認定の中身になっている。補助金がない町だからこそ、私はこの制度をおすすめします。町の補助金は数十万円ですが、認定と長期修繕計画の見直しは、この先30年の資金計画そのものを変えます。


松崎町の建物を痛める3つの力

ここからは建物屋としての話です。松崎町の建物には、内陸のマンションとは違う3つの力がかかっています。

力1:冬の西風

先ほど触れたとおり、松崎の冬の西風は「吹き始めると3日は止まない」と言い伝えられるほどのものです。西向きの外壁、西側のサッシまわり、西面のシーリングは、他の面と同じ周期で診てはいけません。

風そのものが壁を壊すわけではありません。壊すのは、風が運んでくるものです。

力2:塩

海に面した町ですから、風が運ぶのは塩分です。塩分はコンクリートの中に入り込み、内部の鉄筋を錆びさせます。錆びた鉄筋は体積が膨張し、コンクリートを内側から押し割る。これが爆裂です。

外壁のひび割れから始まって、塗膜のふくれ、そして鉄筋が見えるところまで進行する。私が西伊豆・南伊豆で見てきた海沿いの物件は、内陸の同じ築年数の建物と比べて、この進行が明らかに早い。「築25年だからまだ大丈夫」という内陸の常識を、海沿いの建物に当てはめないでください。

力3:雨と紫外線

伊豆半島は雨も多い地域です。降った雨は、シーリングの切れ目、笠木の隙間、屋上防水の立ち上がりから入ります。そして夏の紫外線が塗膜とシーリングを痩せさせる。

この3つは単独では効きません。組み合わさって効きます。紫外線でシーリングが痩せる→そこから雨が入る→塩分が鉄筋まで届く。この連鎖を、どこで断つか。それが修繕計画の本質です。

なまこ壁が瓦と漆喰で壁を厚く硬くしたのは、まさにこの連鎖を断つためでした。使う材料は変わっても、考え方は150年前と変わりません。


足場が組みにくい松崎町で、どう修繕するか

松崎町で建物を持っている方が直面するのが、この問題です。

松崎町の地形が持つ制約

松崎町は海と山の間に集落が入り込んだ地形をしています。道が狭い。隣地との距離が近い。斜面に建っている建物も多い。町並み保存の対象になっているエリアでは、景観への配慮も要ります。

こうした条件は、そのまま足場の架設コストと難易度に跳ね返ります。足場が組めない、あるいは組むために特殊な計画が要る現場では、工事費に占める仮設費の比率が跳ね上がります。

さらに、松崎町のような遠隔地では職人の移動と宿泊のコストが乗ります。都市部の現場なら日帰りできる工程が、西伊豆では宿泊前提になる。工期が長引けば、その分だけ費用が積み上がります。

だから工法の選択が効く

一般に、マンション・ビルの大規模修繕では、仮設足場費が工事費全体の2割前後を占めるとされます。ここが松崎町のような現場では、さらに膨らむ。

私が代表を務める株式会社明誠は、この一点に答えを持っています。

  • 通常の足場仮設工事:全面的な打診調査や大量の躯体補修が必要な場合、足場に勝るものはありません
  • ロープアクセス工法(無足場工法):産業用ロープで作業員が壁面に取り付き、足場なしで施工します。足場費が丸ごと不要になり、工期も短縮できます
  • ハイブリッド工法:足場が必要な部位だけ組み、他はロープアクセスで施工します

ロープアクセス工法は、足場が組めない狭小地、斜面地、道路占用が難しい立地で威力を発揮します。松崎町の地形は、まさにこの工法が向いている条件です。ロープアクセス工法の技術情報や安全基準は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。

明誠のロープアクセス工事の考え方はロープアクセス工法のご紹介、3工法を建物ごとに選び分ける考え方は明誠のコンセプトをご覧ください。

3工法の比較

比較軸 通常足場工法 ロープアクセス工法 ハイブリッド工法
仮設費 高い(工事費の2割前後) 原則不要 必要な部位のみ
工期 長い 短い 中間
居住者への影響 大きい(窓が塞がる・防犯面の不安) 小さい 部位により変動
適する工事 全面打診・大量の躯体補修 部分補修・塗装・シーリング・調査 大規模・複雑形状
松崎町での適性 道路条件次第 狭小地・斜面地で有効 総合コスト最適化に有効

大事なのは「ロープアクセスが常に安い」という話ではないことです。全面打診調査と大規模な躯体補修が必要な建物なら、足場を組んだほうが結果的に安く、確実です。 建物を診てから工法を決める。逆はやりません。

コストの考え方は適正価格へのこだわり、資産価値の視点は建物の価値を守るにまとめています。賃貸オーナーさま向けの内容はビル・アパートオーナーさまへ、管理組合さま向けはマンション管理組合さまへ、宿泊施設をお持ちの方はホテル・旅館オーナーさまへをご覧ください。


松崎町で大規模修繕を進める、18か月の逆算表

補助金の申請期限と工事の段取りは、逆算しないと噛み合いません。松崎町の条件を踏まえた標準的な流れをお示しします。

時期 やること 松崎町固有の注意点
18か月前 長期修繕計画の確認、修繕積立金残高の確認 管理計画認定を狙うなら、計画の見直し時期をここで確認
15か月前 建物調査・劣化診断 海沿い物件は鉄筋の腐食度合いを重点的に。西面を厚めに診る
12か月前 敷地内のブロック塀・石塀の有無を確認、面する道路が津波避難路指定か町へ照会 総務課(0558-42-3963)。該当すれば撤去は10/10
10か月前 工法の比較検討(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)、概算見積の取得 遠隔地のため、移動・宿泊費を含めた総額で比較する
9か月前 町の資格登録を受けた町内施工業者を確認 住宅改修・空き家改修の補助を使うなら、この確認が入口
8か月前 総会に向けた資料作成、修繕積立金不足なら融資の検討 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資も選択肢
6か月前 総会決議、施工業者の決定
5か月前 補助金の事前申請(ブロック塀等、住宅改修等) 施工前の申請が要件です。着工してからでは交付されません
4か月前 交付決定を待つ 交付決定前の着工は対象外になります
3か月前 居住者・入居者への説明、工程周知
着工 工事開始 施工前写真を必ず残す
完工 完了届・実績報告、請求書 住宅改修事業補助金は該当年度の3月10日までに完了が要件

私が強調したいのは、「12か月前」の行です。ブロック塀が津波避難路沿いかどうかの照会は、電話1本で済みます。それで補助額が20万円変わる可能性がある。やらない理由がありません。


修繕積立金が足りないとき、どう考えるか

松崎町のような小規模自治体のマンションでは、これが最大の論点になります。

選択肢は4つ

選択肢 内容 留意点
積立金の値上げ 月額を引き上げて原資を作る 総会決議が要る。高齢の区分所有者の負担感が課題
一時金の徴収 工事直前に不足分を集める 合意形成の難易度が高い
借入 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資等を使う 管理計画認定・マンションすまい・る債の積立などで金利優遇の可能性
工事範囲・工法の見直し 優先順位をつけ、工法で仮設費を圧縮する 私が最初に検討をおすすめする選択肢

住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資は、管理組合が借入主体になれる制度です。返済シミュレーションも公開されています(参考:住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」返済プラン比較シミュレーション)。あわせて、マンションすまい・る債による計画的な積立という選択肢もあります(参考:住宅金融支援機構「マンションすまい・る債」)。

私が最初に見るのは工事範囲です

借入や値上げの話をする前に、私が見るのは工事範囲と工法です。

理由は単純で、仮設費は建物の価値を1円も上げないからです。足場は工事が終われば解体します。そこに工事費の2割を投じている構造を、まず疑う。松崎町のような遠隔地・狭小地では、この比率がさらに大きくなりがちです。

ロープアクセスで足場費を圧縮した分を、躯体補修や防水の仕様を上げることに回す。同じ予算でも、建物に残るものが変わります。これが私の考え方です。

もちろん、全面打診が必要な建物で無理にロープアクセスを勧めることはしません。診断結果を見て決めます。調査の考え方は建物調査・診断にまとめています。


私が松崎町の理事長さま・オーナーさまにお伝えしていること

長く書いてきましたので、私が現場で実際に申し上げていることを3つに絞ります。

1. 補助金の額でがっかりしないでください

松崎町の住宅改修事業補助金は上限20万円です。大規模修繕の総額から見れば小さい。でも、ブロック塀が津波避難路沿いなら話は変わりますし、空き家バンク物件なら改修50万円+家財10万円が別枠で使えます。「使える枠を全部並べてから諦める」——順番はこれです。

2. 診断を先にしてください

松崎町の建物は、内陸の建物と傷み方が違います。西風と塩が主犯です。だから「築何年だからそろそろ」ではなく、いま実際にどこまで進行しているかを見てから計画を立てる。昭和56年5月31日以前の木造なら、町の無料耐震診断が使えます。RC造なら、まず外壁の打診と鉄筋の状態です。

3. 工法を1つに決めつけないでください

足場を組むと決めてから見積を取ると、足場ありきの金額しか出てきません。足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3つで比較して初めて、その建物にとっての適正価格が見えます。 3つ全部を自社で見積もれる会社はまだ多くありません。私たちがそこにこだわってきた理由です。

松崎町、そして西伊豆エリアの建物についてのご相談は、お問合せフォームからお寄せください。現地調査とお見積りは無料でお受けしています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 松崎町に、分譲マンションの共用部大規模修繕に直接使える町の補助金はありますか。
A. 2026年9月時点で、共用部の大規模修繕に直接充てられる町独自の補助金は確認できません。町の住宅改修事業補助金は「住宅(居住部分に限る)」が対象で、申請者に町内1年以上の住民登録と居住が求められます(出典:松崎町「住宅改修事業補助金」)。

Q2. ブロック塀の撤去が全額補助になると聞きました。本当ですか。
A. 町が定める津波避難路沿いのブロック塀等撤去事業は、「事業費」と「延長×32,000円/m」を比較して少ないほうの10分の10、限度額なしと公表されています。通常は2/3・限度額10万円です。該当路線かどうかは松崎町役場総務課(0558-42-3963)へご確認ください(出典:松崎町「ブロック塀等の撤去、改修に補助金がでます」)。

Q3. 住宅改修事業補助金は何度でも使えますか。
A. 同一住居および同一人について1回限りです。上限20万円は工事費100万円で満額に達しますので、金額の張る工事にまとめて使うことをおすすめします。

Q4. 空き家改修等補助金は、親の空き家を子どもが直して住む場合にも使えますか。
A. 入居者・入居予定者は「登録物件所有者の3親等以内の親族でない者」と定められているため、その使い方は対象外です(出典:松崎町「空き家改修等補助金」)。

Q5. 浄化槽の補助金額が変わったと聞きました。
A. 松崎町は令和8年4月1日より、合併処理浄化槽の新設に対する補助額を変更しています。新設は5人槽168千円・6〜7人槽207千円・8〜50人槽276千円、単独処理浄化槽やくみ取便槽からの付替えは414千円・516千円・684千円です(出典:松崎町「浄化槽設置整備事業費補助金について」)。

Q6. マンション管理計画認定制度の申請先はどこですか。
A. 松崎町は町域のため、窓口は静岡県です。手数料や必要書類は改定されることがありますので、申請前に県へご確認ください(参考:静岡県「マンションの管理」)。

Q7. 補助金の申請は工事の後でもできますか。
A. できません。松崎町のブロック塀等、住宅改修事業、空き家改修等のいずれも事前申請が要件で、ブロック塀等のページには「工事完了後では補助金の交付はできません」と明記されています。


この記事のポイントまとめ

  • 松崎町に共用部大規模修繕への町独自補助はないが、使える枠は複数ある
  • ブロック塀等撤去は津波避難路沿いなら10分の10・限度額なし(通常は2/3・10万円)
  • 住宅改修事業補助金は工事費20%・上限20万円、同一住居・同一人で1回限り
  • 空き家改修等補助金は改修50万円と家財処分10万円が別枠で使える
  • 木造住宅耐震補強は60万円(高齢者世帯等80万円)、RC造マンションは対象外
  • 浄化槽補助は令和8年4月1日に新設分のみ減額、付替えは据え置き
  • マンション管理計画認定制度の窓口は町域のため静岡県
  • 西風・塩・雨の3つが西伊豆の建物を痛める。診断を先に
  • 狭小地・斜面地の松崎町では、足場費の圧縮が総額に効く
  • 補助金の事前申請と交付決定前の着工禁止は、どの制度にも共通する

出典・参考資料

※本記事の制度内容は2026年9月8日時点で公開されている情報にもとづきます。補助金は年度ごとに予算・要件・受付期間が変わり、予算上限に達した時点で受付を終了する場合があります。申請前に各窓口で最新情報をご確認ください。


関連リソース


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円および静岡県内で、ロープアクセス工法・通常足場工法・ハイブリッド工法の3つを建物ごとに選び分けて提案できる改修会社です。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月8日