大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

大規模修繕の見積もりが安すぎる時|倒産リスクを見抜く5つの兆候

大規模修繕の見積もりが安すぎる時|倒産リスクを見抜く5つの兆候

2026年8月27日 更新

「相見積もりで一番安い会社に頼んで、本当に大丈夫なのでしょうか?」 ——この記事は、その一点にお答えします。

先日、年間家賃収入5,700万円という不動産投資家の方が、「最安値を出してきた建設会社が実は倒産寸前だった」という体験を語った記事が出ていました(出典:マネーポストWEB/Yahoo!ニュース)。私はこれを読んで、正直、背筋が寒くなりました。ヒヤリとした話ではなく、私自身が20年近くこの業界で何度も後始末をしてきた光景そのものだったからです。

株式会社明誠の本間です。今日は「安い見積もり」との向き合い方を、公的データと現場の実感の両方から整理します。


1. 結論:安い見積もりを疑い始める3つのライン

先に結論から申し上げます。相見積もりの中に極端に安い1社があるとき、私が最初に見るのは次の3つのラインです。ここを超えていたら、金額の話をする前に「なぜ安いのか」を潰しにいきます。

ライン 判断の目安 何を疑うか
① 戸あたり単価 国土交通省の実態調査の中央値を大幅に下回る 数量の拾い漏れ/仕様落ち
② 他社との乖離幅 最安と2番手の差が総額の20%以上 積算根拠の不成立/赤字受注
③ 内訳の粒度 主要工種が「一式」表記で数量が無い 後からの追加請求/実行予算の破綻

1-1. ライン①:戸あたり単価が国交省の中央値を大きく下回る

国土交通省が公表した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、944件の工事事例をもとに戸あたり工事金額の分布が整理されています。1回目の大規模修繕では「100万円超120万円以下/戸」が31.4%で最多、中央値は110.2万円。2回目は中央値106.1万円、3回目以降は中央値97.0万円という結果でした(出典:国土交通省 報道発表資料調査結果本体(PDF))。

この調査は2022年6月公表で、集計対象は直近3年間の工事です。つまり2026年の物価水準とは前提が違います。後述しますが、この4年間で建設コストは相当上がっています。それでもなお、この中央値を大きく割り込む見積もりが出てきたら、まず理由を確認する。これが私の基本姿勢です。

戸あたり単価は「総額 ÷ 総戸数」という単純な割り算で出せます。50戸のマンションで総額4,500万円なら90万円/戸。100戸で6,000万円なら60万円/戸。理事会の場でも1分で計算できますので、最初のスクリーニングとして非常に使いやすい指標です。

1-2. ライン②:最安と2番手の差が20%以上

3社見積もりを取って、A社4,500万円、B社4,900万円、C社5,100万円なら、これは健全なばらつきです。差は最大13%程度で、仕様の解釈や仮設計画の違いで十分に説明がつきます。

一方、A社3,400万円、B社4,900万円、C社5,100万円だとしたら、話が変わります。最安と2番手の差が30%。この幅は「企業努力」では出ません。同じ数量・同じ仕様を積み上げたら、まともな会社の見積もりは似た金額に収束するからです。収束しないのなら、数量か仕様か、そのどちらかが違っている。あるいは、会社の懐事情が違っている。

1-3. ライン③:内訳が「一式」で潰れている

見積書を開いて、「外壁補修工事 一式」「防水工事 一式」「仮設工事 一式」と並んでいたら、私はその時点で比較を止めます。数量が書かれていない見積書は、比較の土俵に乗らないからです。

私はいつも理事長さまに、「金額を見る前に、数量欄を見てください」とお伝えしています。タイル浮き補修なら「○○㎡」、シーリング打替なら「○○m」、外壁塗装なら「○○㎡」。この数字が入っていて初めて、A社とB社の単価を比べられます。数量が無い見積書は、安いのではなく「まだ見積もられていない」のです。


2. 今回のニュース:4,500万円の最安値を蹴ったオーナーの判断

2-1. 何が起きたのか

冒頭で触れた記事の要旨はこうです。複数社から見積もりを取り、最も安い4,500万円の建設会社と契約する直前まで進んでいた。ところが取引銀行から、その会社について良くない情報があると知らされる。調べてみると、大型案件で契約を反故にし、下請への支払いも滞り、現場が止まっている状態だった。最終的に4,900万円の別会社と契約し、400万円のコスト増を受け入れた——という話です(出典:マネーポストWEB/Yahoo!ニュース)。

2-2. 400万円の差額は「高くついた」のか

私は、この400万円は保険料として極めて安かったと考えます。理由を、施工者側の目線で申し上げます。

工事の途中で元請が倒れると、現場では次のことが同時に起こります。

  1. 足場が撤去できない/されない — 仮設リース会社は元請と契約しています。元請が払えなくなれば、リース料は止まり、足場は宙に浮きます。撤去費用を誰が持つかで揉めます。
  2. 下請の職人が全員引く — 支払いが飛べば、翌日から人は来ません。塗装の中塗りまで終わって上塗り前、という最悪のタイミングで止まることもあります。
  3. 出来高の査定でもめる — 前払金や中間金を払っていた場合、「どこまで出来ているか」を第三者に査定してもらう必要が出ます。
  4. 引き継ぎ業者が割高になる — 他社が途中から入る工事は、前工程の品質を保証できないため、健全な会社ほど値段を高く出します。私の経験上、残工事の見積もりは当初単価の1.3〜1.5倍になることが珍しくありません。
  5. 瑕疵の受け皿が消える — 一番痛いのはここです。倒産した会社の保証書は紙切れです。

2-3. 私が現場で見てきた「安値の後始末」

数年前、私は都内の築28年・42戸のマンションで、途中で止まった大規模修繕の残工事を引き継いだことがあります。当初契約は約3,800万円。相見積もりの中で最も安く、2番手より600万円ほど安かったと後から聞きました。

現場に入って最初に驚いたのは、足場が組まれてから4か月半が経過していたことでした。工期は5か月の予定でしたから、ほぼ工期いっぱいを使って、外壁の下地補修が半分終わったところで止まっていた。シーリングは撤去済みで打っていない箇所が残り、そこから雨が回って室内側にシミが出ていました。

理事長さまと最初にお会いしたとき、「もう誰も信用できない」と言われたのを今でも覚えています。現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、こういう瞬間です。工事そのものより先に、信頼の回復から始めなければならない。

結果として、残工事に約2,400万円かかりました。当初契約からの持ち出しは、居住者アンケートの再実施や仮設の延長も含めて1,000万円を超えたと聞いています。600万円を惜しんだ結果でした。


3. 見積もりが安くなる理由は、突き詰めると4つしかない

安い見積もりのすべてが危険なわけではありません。むしろ、正当な理由で安い見積もりは存在します。ここを混同すると、良い提案まで一緒に捨ててしまいます。私が使っている4分類を共有します。

分類 内容 危険度 見分け方
A:工法が違う 足場を使わない、または部分的にしか使わない 低(正当) 仮設工事費の項目と数量を確認
B:仕様が落ちている 塗料グレード、防水の層厚、保証年数が下がっている 材料メーカー名・品番・保証年数を突合
C:数量が拾えていない 補修数量を過少に見積もり、後から追加請求 数量根拠(調査報告書)の有無
D:資金繰りのための受注 赤字と分かっていて受注、手元資金を回す 最高 決算・経審・支払サイトの確認

3-1. 理由A:工法が違う(これは正当な安さ)

大規模修繕工事の総額のうち、仮設足場が占める割合は決して小さくありません。建物の形状や階数によりますが、一般的な中高層マンションで総額の15〜25%程度を仮設が占めるケースがあります。

ここで、ロープアクセス工法(無足場工法。産業用ロープで作業員が壁面を昇降しながら施工する工法) を使えば、その仮設費の相当部分を圧縮できます。全面をロープアクセスで行うケースもあれば、足場が必要な部位だけ足場を組み、それ以外をロープで対応する ハイブリッド工法 もあります。

これは「安かろう悪かろう」ではなく、仮設という費目そのものを設計し直しているだけです。見積書を見れば一目で分かります。仮設工事費の行が小さく、そのぶん本工事の単価は他社と大きく変わらない。これがAパターンです。

ロープアクセス工法の一般的な安全基準や技術的な背景は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。工法の中身を先に知っておくと、見積書の読み方が変わります。

3-2. 理由B:仕様が落ちている(要確認)

外壁塗装の塗料は、アクリル系・ウレタン系・シリコン系・フッ素系・無機系と幅があり、期待耐用年数も価格も大きく異なります。屋上防水も、ウレタン塗膜防水・塩ビシート防水・アスファルト防水で単価と耐用年数が違います。

A社が「シリコン系・保証7年」、B社が「フッ素系・保証10年」を提案していれば、金額差が出るのは当たり前です。問題は、見積書に材料メーカー名と品番が書かれていないケース。これだと比較のしようがありません。

私はこれを、必ずワンセットで提案するようにしています。「材料の品番」と「保証年数」と「保証の主体(メーカー保証か施工店保証か)」の3点セットです。この3つが揃っていない見積書は、金額の比較に使えません。

3-3. 理由C:数量が拾えていない(危険)

これが最も多い「後で揉める安さ」です。

タイル張りの建物で、打診調査をせずに「浮き補修 500㎡」と置いておき、着工後に実測したら1,200㎡だった——という事態は起こり得ます。差分の700㎡は追加工事として請求されます。当初の見積もりは確かに安かった。しかし最終の支払額は他社より高くなる。

これを避ける方法はシンプルです。発注前に、劣化診断(建物調査)を工事会社とは別に、あるいは工事会社に実施させたうえで、その報告書の数量を全社共通の条件として渡すこと。同じ数量表で見積もらせれば、比較は一気に楽になります。

なお、建築基準法第12条に基づく定期報告制度では、竣工後10年を超えた一定の建築物について外壁全面打診等の調査が求められています。この報告資料が手元にあれば、数量根拠の出発点として使えます。

3-4. 理由D:資金繰りのための受注(最も危険)

今回のニュースの会社は、おそらくこれに該当します。手元資金が細っている会社は、赤字と分かっていても受注します。前払金と中間金で当座を凌ぎ、次の受注で穴を埋める。自転車を漕ぎ続けている状態です。

そして、漕ぐのを止めた瞬間に倒れます。倒れる先が、たまたま自分の物件の工事期間中だった——それが今回のオーナーが回避したシナリオです。


4. 倒産リスクを見抜く5つの兆候

では、Dパターンをどう見抜くか。私が実務で使っているチェックポイントを5つ挙げます。すべて、理事会やオーナーご自身の手で確認できるものです。

4-1. 兆候①:前払金の比率が異常に高い

工事契約における前払金は、材料の先行手配などの理由で一定額を支払うこと自体は一般的です。しかし、契約時に総額の40%、50%を求めてくるようであれば、資金使途を確認したほうが良いと私は考えます。

対策としては、「前払金保証」を付けてもらう方法があります。保証事業会社による前払金保証は公共工事で広く使われている仕組みですが、民間工事でも同種の保証やエスクロー的な取り扱いを相談できる場合があります。少なくとも「なぜその比率が必要か」に明確な回答が返ってこない場合は、慎重に判断するのが無難です。

4-2. 兆候②:建設業許可と経営事項審査を自分で調べる

これは無料でできます。国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で、会社名から建設業許可の有無、許可番号、業種、そして経営事項審査(経審)の結果を確認できます。

見るべきポイントは3つです。

  • 許可業種:塗装工事業・防水工事業・とび土工工事業など、今回の工事に必要な業種の許可があるか
  • 許可の更新履歴:5年ごとの更新が途切れていないか
  • 経審のY点(経営状況分析):自己資本比率や負債回転期間などが反映された指標

経審は公共工事を受注する会社が受ける審査ですので、民間専業の会社は受けていないこともあります。その場合は次の項目で補います。

4-3. 兆候③:下請への支払サイトを聞く

これは私が一番重視している質問です。管理組合やオーナーの立場から、「御社は下請さんに、何日サイトで支払っていますか」と聞いてみてください。

建設業法では、元請負人は下請代金を、注文者から出来高払や竣工払を受けた日から1か月以内のできる限り短い期間内に支払わなければならないと定められています(建設業法第24条の3)。また、下請代金の支払いは、原則として現金払いが望ましいとされ、手形期間についても短縮の方向で行政指導が進んでいます。

支払サイトが長い会社ほど、資金繰りが苦しいというのは、業界の中では常識に近い経験則です。逆に「うちは月末締め翌月末現金です」と即答できる会社は、少なくともその点では健全です。

4-4. 兆候④:主任技術者・監理技術者の専任配置を確認する

建設業法では、一定金額以上の工事について、監理技術者または主任技術者の専任配置が求められます。要は、その現場に張り付く技術者が名前入りで決まっているかということです。

「工事が始まったら決めます」「複数現場を掛け持ちします」という回答が返ってくる場合、その会社は技術者が足りていない可能性があります。技術者不足は、受注過多か、離職の進行か、どちらかのサインです。

契約前に、配置予定の技術者の氏名・資格・経験を書面で出してもらう。これだけで、かなりの会社がふるいにかかります。

4-5. 兆候⑤:金融機関・保険・保証で裏を取る

今回のニュースのオーナーが助かったのは、取引銀行からの情報でした。これは非常に示唆的です。

管理組合の場合、修繕積立金を預けている金融機関や、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資を利用する場合の窓口が、間接的な情報源になり得ます。また、以下のような「第三者が関与する保証」の有無も判断材料になります。

  • 住宅瑕疵担保責任保険法人によるリフォーム瑕疵保険(工事会社が倒産しても保険法人に直接請求できる仕組みがあります)
  • 完成保証(元請が倒産した場合に、保証会社が代替履行や損害の補填を行う仕組み)

保険や保証に加入するには、保険法人・保証会社の審査を通る必要があります。つまり、これらに入れる会社は、第三者の与信審査を一度通過しているということです。これは非常に分かりやすいシグナルです。


5. 数字で押さえる、2026年の工事費の「地合い」

「今年は安く出せます」という営業トークを聞いたら、私は必ず根拠を尋ねます。なぜなら、2026年の建設コストは、構造的に下がりにくいからです。

5-1. 公共工事設計労務単価は14年連続で上昇

国土交通省が2026年2月に公表し、2026年3月から適用されている令和8年度の公共工事設計労務単価は、全国全職種平均で25,834円。前年度比4.5%の引き上げで、平成25年度から数えて14年連続の上昇、そして初めて25,000円を超えました(出典:一般財団法人 建設物価調査会)。

労務単価は公共工事の積算に使う数字ですが、職人の賃金相場を反映しているため、民間の改修工事の原価にも直結します。人件費が14年連続で上がっている市場で、「今年は安い」は成立しにくいというのが私の実感です。

5-2. 実態調査の中央値は「4年前の物価」である

先に挙げた国交省の実態調査(中央値110.2万円/戸など)は、2022年6月公表・直近3年間の事例集計です。単純に考えれば、そこから労務単価だけでも複数年分の上昇が乗っています。

したがって、私は次のように考えています。

  • 実態調査の中央値を上回る見積もり → 直ちに割高とは言えない(物価上昇分がある)
  • 実態調査の中央値を大きく下回る見積もり → 工法の違い(Aパターン)で説明がつかない限り、要確認

5-3. 修繕積立金ガイドラインとの突合

国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」は令和6年6月に改定され、専有面積あたりの積立金額の目安が示されています(出典:国土交通省(PDF))。

ここで大事なのは、「積立金が足りないから安い業者を選ぶ」という順番にしないことです。積立金が不足しているなら、まず検討すべきは工法の見直し、工事範囲の優先順位付け、時期の分割、そして融資の活用です。品質を下げる方向で辻褄を合わせると、次の周期でツケが回ってきます。

私はいつも理事長さまに、「削るなら仮設から」とお伝えしています。塗膜や防水層は建物を守る本体ですが、足場は工事のための手段です。手段のコストを先に見直す。これが順番だと考えています。


6. 発注方式のリスク:設計監理方式と責任施工方式

安い見積もりの話をするうえで、避けて通れないのが発注方式です。

6-1. 国土交通省も注意喚起している「不適切コンサル」問題

国土交通省は、設計コンサルタントを活用した大規模修繕工事について、コンサルタントと施工会社の癒着やバックマージンの懸念に関する注意喚起を行っています。2023年4月には、公益財団法人マンション管理センターおよび一般社団法人マンション管理業協会宛てに、大規模修繕工事の発注等の適正化に関する通知が出されています(出典:国土交通省(PDF))。

通知で強調されているのは、コンサルタントが利益相反を起こさない中立的な立場を保つことの重要性です。実際に、コンサルタントに依頼したはずの調査診断や設計を、施工会社の社員が行っていたという事例も紹介されています。

6-2. 2つの方式の比較

項目 設計監理方式 責任施工方式
設計・監理者 第三者コンサルタント 施工会社が一貫して担当
コスト コンサル費用が別途(総額の3〜6%程度が一般的) 別途費用は不要
比較のしやすさ 同一仕様で相見積もりが取りやすい 各社の提案内容が異なり比較しにくい
リスク コンサルと施工会社の癒着 施工会社によるチェック機能の弱さ
向くケース 大規模・複雑、組合に専門知識が乏しい 小〜中規模、信頼できる施工会社がある

どちらが優れているという話ではありません。それぞれのリスクが違うだけです。設計監理方式を選ぶなら、コンサルタントの独立性をどう担保するか。責任施工方式を選ぶなら、施工会社の技術力と誠実さをどう検証するか。論点はそこに絞られます。

6-3. 相見積もりの「同一条件」をどう作るか

比較できる見積もりを取るために、私が推奨している手順は次の通りです。

  1. 劣化診断を先に実施し、補修数量の根拠を作る
  2. 数量表(内訳明細のひな形)を作成し、全社に同じ様式で提出させる
  3. 材料の指定はグレードで行う(「シリコン系以上、期待耐用年数10年以上」など)
  4. 仮設計画は各社の提案に委ねる(ここで工法の差が出る)
  5. 保証条件を明記(年数・対象・保証主体)

4番目がポイントです。本工事は同一条件で揃え、仮設だけ各社の創意工夫に開く。こうすると、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの差が金額に素直に出ます。


7. 【自社サービスのご案内】工法で正当にコストを下げるという選択肢

※このセクションは弊社サービスのご紹介を含みます。中立的な情報をお求めの場合は、前章までをご参照ください。

7-1. 3つの工法の比較

株式会社明誠では、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3つから、建物特性に応じた提案を行っています。

工法 仮設コスト 工期 居住者への影響 向く建物
通常足場工法 長め 全面シート養生、防犯面の配慮が必要 中低層、複雑形状、全面的な打診・補修が必要な建物
ロープアクセス工法 短め 窓周りの一時的な作業のみ 高層、足場架設が困難な立地、部分補修中心
ハイブリッド工法 足場部位のみ限定的 大規模・複雑物件で総合コスト最適化が必要なケース

3つを持っているからこそ、「この建物なら足場を組んだほうが結果的に安い」という提案もできます。ロープアクセスありきではないことが、私たちの提案の前提です。

7-2. ロープアクセスは法令の枠組みが整備されている

「ロープで作業して大丈夫なのか」というご質問を、私は本当によく受けます。結論から申し上げると、ロープ高所作業は労働安全衛生規則で明確に規定された作業です。

労働安全衛生規則第36条第40号は、ロープ高所作業を「高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、昇降器具を用いて、労働者が当該昇降器具により身体を保持しつつ行う作業(40度未満の斜面における作業を除く)」と定義し、特別教育の対象としています。あわせて、ライフライン(作業用ロープとは別の墜落防止用ロープ)の設置、作業計画の作成、要求性能墜落制止用器具の使用などが義務づけられています(出典:安全衛生情報センター厚生労働省(PDF))。

この規定は2016年1月1日から施行されています。つまり、ロープアクセスは「規制の外側にある工法」ではなく、規制の中で運用されている工法です。工法の技術的な詳細はロープアクセスドットコムにまとめていますので、理事会での説明資料をお探しの方はご覧ください。

7-3. 日本初のフランチャイズ体制

明誠は、ロープアクセス工事として日本で初めてのフランチャイズ展開を行っています。塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門会社が加盟しており、専門職が専門工事を担当する体制です。中間マージンの階層を減らせるため、品質を落とさずに価格を抑えられる構造になっています。

工法の詳細はロープアクセス工法のご紹介、大規模修繕全体の進め方は大規模修繕工事のご紹介にまとめています。過去の記事は本間社長ブログにも蓄積していますので、あわせてご覧いただければと思います。


8. 今日からできる5つのステップ

最後に、理事会やオーナーの方が明日から動ける形に落とし込みます。

  1. 総額 ÷ 戸数を計算する(1分で終わります)。国交省の実態調査の中央値と並べて、位置を把握する。
  2. 見積書の数量欄を確認する。「一式」が並んでいたら、数量入りの再提出を依頼する。
  3. 建設業許可を検索する。国土交通省の企業情報検索システムで、許可業種と更新履歴を確認する。
  4. 支払サイトと配置技術者を質問する。回答の速さと具体性が、そのまま会社の体力を映します。
  5. 保証の主体を確認する。施工店保証なのか、メーカー保証なのか、第三者保証(リフォーム瑕疵保険等)が付くのか。

このうち1〜2は、理事会の場でその場でできます。3〜5は、事務局や修繕委員の方が1日あれば揃えられます。

安い見積もりが悪いのではありません。安い理由を説明できない見積もりが危ないのです。 説明を求めて、納得できる答えが返ってくるなら、その安さは信じていい。答えが濁るなら、そこで立ち止まる。それだけの話だと私は思っています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 相見積もりは何社取るのが適切ですか?

A. 3社前後が実務的です。多すぎると比較の手間が増え、各社の提案の質も下がりやすくなります。ただし、同一の数量表・同一の仕様条件を渡すことが前提です。条件が揃っていない5社より、条件が揃った3社のほうが判断できます。

Q2. 最安の会社が倒産寸前かどうか、素人でも調べられますか?

A. 完全な判定はできませんが、手がかりは取れます。国土交通省の建設業者等企業情報検索システムで許可と経営事項審査を確認し、支払サイトと配置技術者を質問し、リフォーム瑕疵保険や完成保証に加入できるかを尋ねる。この3点で、かなりの情報が集まります。詳しくは本文の「倒産リスクを見抜く5つの兆候」を参照ください。

Q3. 戸あたり単価の目安はいくらですか?

A. 国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、1回目の中央値110.2万円/戸、2回目106.1万円/戸、3回目以降97.0万円/戸と報告されています(出典:国土交通省)。ただし2022年公表の調査であり、その後の労務単価上昇分は反映されていません。目安としてお使いください。

Q4. ロープアクセス工法にすれば、どんな建物でも安くなりますか?

A. いいえ。全面的な打診調査と広範囲の下地補修が必要な建物や、バルコニー内部の作業が多い建物では、足場を組んだほうが総額で有利になるケースがあります。低層でタイル面積が大きい建物なども、ロープアクセス単独では割高になり得ます。建物ごとの判断が必要です。

Q5. 積立金が不足していますが、工事の質を落とすしかないでしょうか?

A. 質を落とす前に検討できることがいくつかあります。仮設工法の見直し、工事範囲の優先順位付け(漏水リスクの高い部位を先行)、工期の分割、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資などの活用です。優先順位の整理だけでも、選択肢が見えてくることがあります。


この記事のポイントまとめ

  • 最安と2番手の差が総額の20%以上なら、金額より先に理由を確認する
  • 国交省の実態調査では1回目の大規模修繕の戸あたり中央値は110.2万円
  • 令和8年度の公共工事設計労務単価は25,834円、14年連続の上昇
  • 安さの理由は「工法・仕様・数量・資金繰り」の4分類で切り分けられる
  • 支払サイトと配置技術者の質問だけで、会社の体力はかなり見える

執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)

専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画

実務経験:建設・改修業界 20年以上

所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年8月27日

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※本記事の制度・単価情報は2026年8月27日時点のものです。制度や基準は変更される場合がありますので、最新の内容は各公式サイトでご確認ください。


出典・参考資料