
2026年9月16日 更新
中目黒で賃貸マンションを1棟、洗足で分譲マンションの理事長をされているオーナーさまから、去年の秋にご相談をいただきました。「9月11日の大雨で、中目黒のほうだけ地下の駐車場に水が入った。洗足は何ともなかった。同じ目黒区内なのに、なぜこんなに違うのか」。
私は株式会社明誠の本間幸紘と申します。東京都東大和市を拠点に、20年近くマンション・ビル・ホテルの外壁と向き合ってきました。仮設足場を組む工事も、ロープ1本でぶら下がる無足場の工事も、どちらも現場でやってきた人間です。
答えは単純でした。中目黒は目黒川が削った谷の底にあり、洗足は荏原台という台地の上にあります。目黒区は海に面していません。それなのに毎年のように水が出るのは、川からあふれる水ではなく、降った雨が谷底に集まってくるからです。
今日は、目黒区が公表している最新のハザード資料から逆算して、目黒区の分譲・賃貸マンションで先に手を打つべき漏水ポイントと、防災上の共用部の修繕優先度を整理します。
結論:目黒区は「谷底の内水」と「斜面の土砂」を別々に見る区です
先に結論です。目黒区の建物では、自分の建物が次の3つのどれに立っているかを地図で確定させてから、修繕の順番を組みます。
| 立地 | 該当エリアの例 | 最優先の対策 |
|---|---|---|
| 目黒川・蛇崩川・立会川の谷底 | 中目黒、上目黒、青葉台、東山、目黒本町、原町、洗足の谷筋 | 屋上ドレン清掃/止水板/地下の電気設備の位置確認 |
| 台地の縁の斜面地(土砂災害警戒区域) | 駒場一丁目、大橋二丁目、青葉台二・三丁目、中目黒一・四丁目、下目黒一・三丁目、三田一丁目、目黒一・三・四丁目、上目黒一丁目 | 擁壁の水抜き穴/斜面側の外壁とシーリング |
| 台地の上(淀橋台・荏原台) | 八雲、柿の木坂、平町、碑文谷、鷹番、中根、自由が丘の高い側 | 通常の劣化サイクルどおり。ただし雨水の行き先だけは確認 |
そのうえで、どの立地でも共通して最優先なのは屋上ドレン(屋上の排水口)の清掃履歴です。私が20年見てきた漏水事故の大半は、河川の氾濫ではなく、ドレンの詰まりとシーリングの切れから始まっています。派手な災害より、地味な詰まりのほうが高い確率で建物を傷めます。
目黒区には、読み違えやすい特徴がもうひとつあります。区の面積のうち高潮の想定区域はごくわずかで、洪水の想定も限定的という点です。だから「うちは海から遠いから大丈夫」と思われがちなのですが、実際に被害が出ているのは内水(ないすい)と土砂のほうです。ここからが本題です。
目黒区のハザード資料を4枚で読む
目黒区は、目黒区水害ハザードマップと土砂災害ハザードマップの2種類を公表しています。水害のほうは1枚に「洪水」「雨水出水」「高潮」の3種類がまとめて載っており、いずれも水防法に基づくものです(出典:目黒区「目黒区水害ハザードマップ」/更新日:2026年3月25日)。
理事会でお使いになるなら、この2枚で足ります。順に見ていきます。
1. 洪水(外水氾濫)
目黒川・渋谷川・立会川などが対象で、東京都建設局の「城南地区河川流域浸水予想区域図」に基づきます。想定した雨は総雨量690ミリ、時間最大雨量153ミリで、これは想定し得る最大規模の降雨として設定されたものです(出典:東京都建設局「城南地区河川流域浸水予想区域図」)。
東京の下水道は、おおむね時間50ミリ前後の雨を流せるように整備されてきました。153ミリはその3倍です。インフラ側の能力を大きく超える雨を前提にした地図だと押さえてください。
2. 雨水出水(内水氾濫)— 目黒区でいちばん効く地図
令和8年3月に東京都下水道局が都内の雨水出水浸水想定区域図を新たに作成し、これに伴って目黒区水害ハザードマップの雨水出水部分は、水防法に基づくものになりました(出典:東京都下水道局「城南地区河川流域 雨水出水浸水想定区域図」)。
「内水」とは、川から水が来るより先に、降った雨が足元からあふれてくる現象です。目黒川から離れた碑文谷・原町・洗足あたりでも、周囲より低い窪地なら水はたまります。
目黒区のマンションで実際に起きやすいのは、圧倒的にこちらです。私が呼ばれる漏水・浸水の現場も、9割以上が内水側です。
3. 高潮
東京都港湾局が令和6年12月に高潮浸水想定区域図を改定しました。これにより目黒区内の高潮による浸水面積は縮小し、下目黒2丁目1番、2番、15番が浸水想定区域から外れています(出典:目黒区「目黒区水害ハザードマップ」高潮浸水想定区域図について)。
区域が縮小したこと自体は良いニュースです。ただし、古いハザードマップのコピーを管理室に貼ったままの物件がかなりあります。改定前の図と改定後の図では、対象になる住戸が違います。長期修繕計画の資料として使うなら、差し替えをおすすめします。
4. 土砂災害 — 警戒区域26か所、特別警戒区域16か所
目黒区は23区のなかでも意外に斜面地が多い区です。土砂災害防止法に基づく指定状況は、次のとおりです(出典:目黒区「土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等」/更新日:2025年8月6日)。
| 告示日 | 告示番号 | 警戒区域 | 特別警戒区域 | 内容 |
|---|---|---|---|---|
| 平成30年5月31日 | 東京都告示第806号 | 25 | 18 | 当初指定(K001〜K025) |
| 令和4年11月18日 | 東京都告示第1490号 | −2 | −2 | K002・K003を指定解除 |
| 令和7年4月25日 | 東京都告示第573号・第576号 | — | −2 | K009〜K011を解除・区域変更 |
| 令和7年4月25日 | 東京都告示第576号 | +3 | +3 | K026〜K028を新規指定 |
| 令和7年7月30日 | 東京都告示第821号・第829号 | — | −1 | K012を解除・指定 |
| 計 | 26 | 16 |
区域を含む町丁は、区の早見表(令和7年4月25日更新)によると駒場一丁目、大橋二丁目、青葉台一・二・三丁目、上目黒一丁目、中目黒一丁目、中目黒四丁目、下目黒一丁目、下目黒三丁目、三田一丁目、目黒一丁目、目黒三丁目、目黒四丁目です。このほかに駒場四丁目6番1号(東京大学の敷地の一部)にも警戒区域があります。
なお区は、この早見表について「記載の町丁全域が区域に該当しているということではない」と注記しています。必ず東京都の土砂災害警戒区域等マップで番地まで確認してください。区の土砂災害ハザードマップは、令和7年4月の東京都による新規指定を受けて令和7年10月に更新されています(出典:目黒区「土砂災害ハザードマップ」/更新日:2026年8月31日)。
令和7年の大雨で、目黒区で何が起きたか
ここは、ハザードマップのシミュレーションより重い情報です。
区の発表によると、令和7年7月10日と令和7年9月11日に区内各地で道路や緑道の冠水、家屋の浸水被害をもたらす大雨があり、特に9月11日の大雨では約400件の被害調査依頼がありました(出典:目黒区「目黒区豪雨対策サポートプランを取りまとめました」/令和7年11月26日発表)。
400件です。海に面していない区で、1日でこれだけの被害申告が出ています。
これを受けて区がまとめたのが「目黒区豪雨対策サポートプラン」です。主な内容は次のとおりです。
新規の取組
- 浸水被害に対する消毒対応の支援
- 排水ポンプの貸出(区内に10台程度を配備)
- 災害時の相談窓口ワンストップ化・コールセンター
- り災証明書の発行手続のオンライン化
拡充した取組
- 止水板設置工事費助成の大幅拡充(詳細は後述)
- 緊急用土のう保管箱の増設(地域偏在の軽減)
私がこの資料を読んで、管理組合さまに一番お伝えしたいのは排水ポンプの貸出が「10台程度」であるという点です。400件の被害が出た日に、区が貸せるポンプは10台。順番は回ってきません。自分の建物の排水は、自分の建物で持つ。これが目黒区の前提条件です。
浸水履歴は「町名・番」まで公表されています
もうひとつ、目黒区で必ず見ていただきたい資料があります。浸水履歴です。平成16年度から令和7年度までに区内で発生し、報告があった浸水被害が記録されています(出典:目黒区「浸水履歴」/更新日:2026年7月28日)。
個人情報保護の観点から「号」は非公表ですが、「町名」と「番」までは公表されています。ここまで細かく出している区は多くありません。
私はいつも理事長さまに「シミュレーションの色より、この履歴を先に見てください」とお伝えしています。実際に水が来た場所は、地形が変わらない限り、また来ます。ただし区も「報告を受けた浸水被害であり、区内で発生した全ての浸水被害を示すものではない」と注記していますので、履歴に載っていない=安全、ではありません。
目黒川沿いには12か所のサイレンがあります
目黒区は、集中豪雨のときに目黒川の水位をサイレンで知らせています。スピーカーは区内の目黒川沿い12か所に設置されています(出典:目黒区「目黒川水位警報」)。
| 種別 | 発報条件 | 鳴り方 |
|---|---|---|
| 警戒水位情報 | 目黒川の水位が上部まで2.5メートルに達したとき | 15秒吹鳴+5秒休みを9回 |
| 危険水位警報 | 目黒川の水位が上部まで1メートルに達したとき | 3分吹鳴+1分休みを2回 |
管理員さんや防災担当理事の方には、この2つの違いを共有しておいてください。15秒刻みが9回なら準備、3分の長鳴りが来たら地下から車を出す。それだけ決めておくと、当日の判断が速くなります。
目黒区の地形と、漏水事故の関係
現場の話に移ります。目黒区は東西に細長く、北から南へ目黒川が流れ、その両側に台地が迫る地形です。この形が、建物の傷み方をはっきり分けます。
谷底の建物で起きること
中目黒・上目黒・東山・青葉台の川沿い、目黒本町・原町の谷筋にある建物では、道路面に水がたまる→半地下駐車場や1階共用廊下に入る→電気室・受水槽室・エレベーターピットが濡れる、という順で問題が出ます。外壁の漏水よりも、設備が止まることのダメージのほうが大きいのが谷底の物件です。エレベーターが2週間止まれば、高齢の居住者から苦情が出ます。賃貸なら退去が出ます。
目黒区は平成23年4月に「目黒区建築物浸水予防対策指導要綱」を定めており、周囲の地面より低い位置に床を有する建築物を計画する際は、浸水予防対策の検討結果報告書の提出を求めています。区はすでに半地下駐車場や地下室をお持ちの方にも、同様の対策をとるよう呼びかけています(出典:目黒区「目黒区建築物浸水予防対策指導要綱」)。「新築時に基準がなかった」ことは、今対策しない理由にはならないというのが区の立場です。
斜面地の建物で起きること
駒場・大橋・青葉台・中目黒一丁目・下目黒一丁目などの斜面地では、話がまったく変わります。擁壁の水抜き穴が詰まって擁壁の裏に水がたまる。斜面側の外壁が常に湿り、塗膜が早く浮く。そして斜面側は足場が組みにくいため、点検が後回しになります。
私が現場で一番悔しい思いをするのは、この「斜面側だけ点検されていなかった」というケースです。足場の見積りを取ったら斜面側の仮設費が跳ね上がり、結局その面だけ見送った。数年後に室内側からカビが出て、初めて全面をやり直す。よくあります。
区は、令和2年の神奈川県逗子市のがけ崩れを踏まえて、国土交通省が示した斜面の自主点検ポイントを案内しています。見るのは3つだけです。斜面に亀裂がないか。浮き石がないか。落石がないか。植生が貧弱な場所は風化が進みやすく、無降雨でも崩れることがあります。変状があれば区(建築課 構造指導係/03-5722-9647)に相談できます。
台地の上の建物で起きること
八雲・柿の木坂・碑文谷・鷹番・中根など台地の上は、浸水・土砂ともにリスクの低い区域です。ただし自分の敷地の雨水がどこへ抜けているかだけは確認してください。台地の上から敷地外へ流した雨が、下の谷に集まります。目黒区が浸透ます・浸透トレンチの助成を出しているのは、この「流域全体で受け止める」考え方に基づくものです。
大規模修繕で先に見るべき漏水ポイント7つ
ここからは、実際に建物のどこを見るかです。目黒区の物件で、私が優先順に並べるとこうなります。
1. 屋上ドレン(排水口)と、その周辺の防水立ち上がり
最優先です。ストレーナー(ゴミよけのかご)が付いているか、直近1年で何回清掃したか。目黒区は住宅地に街路樹と緑が多く、落ち葉が屋上に乗ります。落ち葉1枚が詰まりの起点になります。
清掃の目安は年2回、台風シーズン前(6月)と落葉後(12月)。1回あたりの費用は小規模マンションで2〜4万円程度が目安です(物件の規模と屋上形状により変動します)。
2. 開口部まわりのシーリング
サッシ・面格子・換気口の周囲。目黒区の谷筋は湿度が高く、日照条件も面によって大きく違います。南面と北面でシーリングの寿命が2〜3年ずれるのは普通です。全面一律に交換するより、面ごとに劣化度を見て優先順位を付けたほうが費用対効果は高くなります。打ち替えの単価は、材料と部位にもよりますが1メートルあたり900〜1,600円程度が目安です。
3. 外壁のひび割れ(クラック)と浮き
幅0.3ミリを超えるひび割れは、雨水の侵入経路になり得ます。斜面側・谷側は特に注意してください。打診調査の単価は1平方メートルあたり250〜500円程度が目安です。
4. バルコニー・共用廊下の床防水と立ち上がり
床の防水は切れていないのに、立ち上がり(壁との取り合い)から漏るのが一番多いパターンです。ウレタン防水の改修単価は1平方メートルあたり5,000〜8,000円程度が目安になります。
5. 屋上・塔屋の笠木(かさぎ)とジョイント
笠木の継ぎ目から入った水が壁の中を伝い、離れた場所の天井に出る。「原因が特定できない漏水」と呼ばれるものの多くは、これです。
6. 擁壁の水抜き穴(斜面地の物件)
水抜き穴が土やコケで詰まっていないか。詰まっていれば擁壁の裏に水圧がかかります。外壁の問題ではなく構造の問題なので、優先度は高いと考えてください。
7. 地下ピット・電気室・エレベーターピットの位置
図面で確認してください。地下または1階にあるなら、止水板の設置と、可能なら設備の嵩上げ(かさあげ)を検討します。令和8年度の目黒区の止水板助成は、後述のとおりかなり手厚い内容です。
漏水の緊急対応で、ロープアクセスが強い理由
漏水は待ってくれません。「9月の台風で漏った、来月の総会まで待てない」という状況で、足場を組む選択肢はほぼ取れません。見積り、近隣挨拶、架設で着工まで2〜4週間が普通です。その間も雨は降ります。
明誠のロープアクセス工法なら、屋上からロープを下ろして当日または翌日に調査に入れます。原因箇所を特定し、その場で応急のシーリング補修まで済ませられるケースも少なくありません。
コスト面の差も無視できません。目安として、10階建て・外周80メートル・工期3ヶ月の物件で仮設足場を組むと約168万円。同じ条件でロープアクセスを使えば約59万円で、差額は約109万円です。30戸規模のマンションの大規模修繕総額が3,500〜5,000万円、そのうち仮設足場が15〜25パーセントを占めることを考えると、この差は修繕積立金の使い方を変えます。
なお、これらはあくまで参考値です。建物形状、外周の道路条件、隣地との距離、工事の範囲によって実際の見積りは大きく変わります。現地を見ないで金額を断定する会社には、気をつけてください。
株式会社明誠はこれまでに約6,000棟のマンション・ビル・ホテルの大規模修繕を手がけてきました。ロープアクセス工法での高所作業について、明誠および全国のフランチャイズ加盟企業では過去16年間、墜落による労働災害はゼロを維持しています。作業員はIRATA(国際産業ロープアクセス協会)水準の技能訓練を受けています。
技術的な仕組みや安全基準をもう少し詳しく知りたい方は、同業者・技術者向けの姉妹サイトロープアクセスドットコムにまとめていますので、あわせてご覧ください。
目黒区で特に相性がいいのは、斜面地の物件と、隣地が迫っている谷底の物件です。どちらも足場の架設条件が悪く、仮設費が跳ね上がる立地だからです。斜面側だけロープアクセス、平場側は足場、という組み合わせ(ハイブリッド工法)も現実的な選択肢になります。
防災上の共用部と、修繕の優先度
理事会で議論が割れたときの、優先順位の考え方を書いておきます。
| 優先度 | 対象 | 理由 |
|---|---|---|
| 最優先 | 屋上ドレン清掃、排水経路の確保 | 費用が小さく、効果が大きい。今週でもできる |
| 高 | 電気室・受水槽・EVピットの止水(止水板・嵩上げ) | 止まると生活が止まる。令和8年度は助成が手厚い |
| 高 | 擁壁の水抜き穴(斜面地のみ) | 構造リスク。放置すると工事規模が跳ね上がる |
| 中 | シーリング打ち替え、防水改修 | 計画修繕に組み込める。面別の優先順位付けが有効 |
| 中 | 外壁塗装 | 単価の目安は1平方メートルあたり3,500〜4,500円程度 |
| 検討 | 非常用電源、備蓄倉庫 | 大規模修繕と同時発注でコスト圧縮できる場合がある |
もうひとつ、目黒区固有の重要な情報があります。風水害時には開設されない避難所があるという点です。
区は、下目黒小学校、向原小学校、田道小学校について「浸水想定区域内にあるため、風水害時に避難所の開設は行いません」と明記しています。一方、土砂災害の危険が高まったときに開設するのは、目黒区立第一中学校(大橋二丁目11番1号)、菅刈小学校(青葉台三丁目3番26号)、中目黒小学校(中目黒三丁目13番32号)、大鳥中学校(下目黒三丁目23番18号)の4か所です(出典:目黒区「土砂災害ハザードマップ」)。
管理組合の防災マニュアルに「最寄りの小学校へ避難」とだけ書いてある物件は、災害の種類によって開かない可能性があります。大規模修繕の打ち合わせのついででかまいませんので、記載を見直してください。マンションでは上階への「垂直避難」のほうが現実的なことも多く、その場合は非常用照明が生きているかも修繕時のチェック項目になります。
目黒区で使える令和8年度の助成制度
ここが今年の目玉です。目黒区の止水板助成は、令和7年11月の豪雨対策サポートプランで大幅に拡充されました。
目黒区止水板設置工事助成(令和8年度)
台風やゲリラ豪雨による浸水被害を軽減するため、住宅・店舗・事務所などに止水板等を設置する工事に対して、工事費の一部を助成する制度です。助成額は次のとおりです(出典:目黒区「住宅や店舗に止水板等を設置するための工事に対する助成」/更新日:2026年9月16日)。
| 区分 | 条件 | 限度額 | 助成率 |
|---|---|---|---|
| 個人 | 目黒区内に住所を有する個人 | 100万円 | 工事費の10分の9 |
| 個人 | その他の個人 | 50万円 | 工事費の10分の9 |
| 法人 | 申請日の1年以上前から区内に本店または支店等の登記がある法人 | 150万円 | 工事費の4分の3 |
| 法人 | その他の法人 | 75万円 | 工事費の4分の3 |
区の発表によると、拡充前の個人への助成率は4分の3、法人への助成額は100万円でした。個人への助成率は特別区でトップの水準、法人への助成率4分の3も特別区でトップの水準と区は説明しています。この拡充は令和10年度までの期限付きを予定しており、対象は令和7年7月10日以降の設置です。
助成対象になるのは、出入口等に浸水を防ぐ目的で設置する取り外しまたは移動が可能な金属板の設置工事、および止水効果を高めるための内外壁の止水工事・土間コンクリート打設工事です。止水板の購入だけでは対象になりません。
ここは間違えやすいので強調します。工事開始前に申請が必要です。道路公園課 補修調整係(03-5722-9775)への事前相談が前提で、着工後の申請は受け付けられません。また予算の範囲内での助成ですので、検討されている管理組合さま・オーナーさまは、残枠を窓口へご確認ください。
雨水流出抑制施設等(浸透ます・浸透トレンチ・雨水タンク)の助成
流域全体で雨を受け止めるための制度です(出典:目黒区「雨水流出抑制施設等の助成」/更新日:2026年8月7日)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成限度額 | 40万円 |
| 浸透ます・浸透トレンチ | 標準工事費単価表に設置数量を乗じた額と実際の工事費のいずれか低い額 |
| 雨水タンク | 5万6千円と実際の工事費のいずれか低い額(原則、浸透施設との併用かつ容量200リットル以上) |
| 対象者 | 助成対象事業に係る住宅等の所有者で、個人に限る(個人所有の共同住宅も対象) |
| 除外 | 敷地面積500平方メートル以上の新築住宅 |
注意点が2つあります。ひとつは、個人所有の共同住宅は対象になるが、法人所有は対象外であること。もうひとつは、こちらも工事着工前の交付申請が必須で、着工日以降の申請は対象外になることです。窓口は都市整備課 開発係(03-5722-9715)です。
予算枠のある事業は、年度途中で受付を終えることがあります。着工前に、残枠と申請順序を窓口へご確認ください。
背景データ:雨の降り方が変わっています
「昔はこんなに漏らなかった」というお声を、本当によくいただきます。感覚の問題ではありません。
気象庁は、全国のアメダスで観測した1時間降水量50ミリ以上の年間発生回数について、1980年ごろと比べて最近10年間はおおむね増加していることを公表しています。強い雨ほど頻度の増加率が高いという評価です(出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」、気象庁「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」)。
目黒区も、豪雨対策サポートプランのなかで「東京都の役割である河川・下水道施設の取組が長期に渡ることが想定される現状を踏まえ」と書いています。インフラ側の整備には時間がかかる。その間の差は建物側で埋めるしかない——区も同じ認識だということです。区境をまたぐリスクは、国土地理院の重ねるハザードマップでも確認できます。
よくあるご質問
Q. 目黒区は海に面していないのに、なぜ浸水被害が出るのですか?
A. 川からあふれる外水氾濫ではなく、降った雨が下水道の処理能力を超えてあふれる内水氾濫が主な原因です。目黒川が削った谷の底に水が集まる地形のため、令和7年9月11日の大雨では区内で約400件の被害調査依頼がありました。
Q. 自分のマンションが土砂災害警戒区域に入っているか、どこで調べられますか?
A. 目黒区の早見表(令和7年4月25日更新)に該当する13町丁が載っていますが、町丁全域が対象というわけではありません。番地単位の確認は東京都の土砂災害警戒区域等マップで行うのが確実です。目黒区建築課や東京都建設局河川部で公示図書を閲覧することもできます。
Q. 止水板の工事に、いくらくらいかかりますか?
A. 出入口の幅や仕様によって大きく変わりますが、令和8年度の目黒区の助成を使えば、個人であれば工事費の10分の9(限度額100万円または50万円)、法人であれば4分の3(限度額150万円または75万円)が助成されます。事前相談が必須で、着工後の申請は受け付けられませんのでご注意ください。
Q. 漏水の原因調査だけをお願いすることはできますか?
A. できます。ロープアクセス工法なら足場を組まずに屋上から下りて調査できるため、足場を組む場合と比べて着工までの時間も費用も抑えられます。調査だけ、ご相談だけでも構いません。漏水・雨漏り調査のご案内もあわせてご覧ください。
Q. ロープアクセス工法だと工期はどれくらい短くなりますか?
A. 建物の形状によりますが、足場工法のおおむね60パーセント程度の工期が目安です。10階建て・外周80メートルのマンションであれば、足場工法で3ヶ月かかる工事が、ロープアクセスでは1.5〜2ヶ月程度になるケースが多くあります。
Q. 斜面地の物件で、斜面側だけ工事することはできますか?
A. できます。斜面側はロープアクセス、平場側は通常の足場、という組み合わせ(ハイブリッド工法)もご提案しています。斜面側は足場の架設費が跳ね上がりやすい部位なので、目黒区の斜面地の物件ではこの組み合わせが有効なことが多いです。料金の考え方もご参照ください。
Q. 大規模修繕と防災対策を、同時にやる意味はありますか?
A. あります。仮設費・足場費は工事の回数だけかかるため、止水板設置や設備の嵩上げを大規模修繕と同じタイミングで発注すると、共通仮設のコストを1回分に圧縮できます。ただし目黒区の止水板助成には工事着工前の申請という条件があるため、修繕工事のスケジュールに合わせて逆算しておく必要があります。
まとめ:今週、理事会・管理会社に投げられる3点
長くなりました。目黒区の建物で、今週すぐ動けることを3つに絞ります。
1. 水害ハザードマップと浸水履歴を、両方見る
目黒区水害ハザードマップで洪水・雨水出水・高潮の3つを確認し、そのうえで浸水履歴(平成16年度〜令和7年度)で自分の建物の「町名・番」が載っていないかを確認してください。10分で終わります。斜面地の物件は土砂災害ハザードマップもあわせて。
2. 屋上ドレンの清掃記録を、管理会社に出してもらう
直近1年で何回清掃したか。ストレーナーは付いているか。地下ピットがある物件は、排水ポンプの点検記録もあわせて。区が貸せる排水ポンプは区内で10台程度です。順番は回ってきません。台風シーズンの真っ最中ですから、今週が一番効きます。
3. 止水板助成の事前相談を、1本入れる
電気室・受水槽・エレベーターピットが地下または1階にある物件は、道路公園課 補修調整係(03-5722-9775)へ事前相談を入れてください。令和8年度の助成率は個人10分の9、法人4分の3で、令和10年度までの期限付き拡充です。斜面地の物件は、擁壁の水抜き穴の詰まりを現地で確認し、変状があれば建築課 構造指導係(03-5722-9647)へ。
令和10年度までに動けるかどうかが、この助成を使えるかどうかの分かれ目です。理事会で1分だけでもこの話題を出してみてください。調査だけ、ご相談だけでも構いません。総会前の整理の段階から、お力になれることがあります。お問合せフォームからお声がけください。
冒頭のオーナーさまには、結局こうお伝えしました。「中目黒と洗足は、別の建物として修繕計画を立ててください」と。同じ区内、同じ管理会社、同じ塗料でも、立っている地形が違えば傷み方が違う。目黒区で修繕積立金を有効に使う一番の近道は、区内の平均ではなく、自分の建物の地形で考えることだと、私は思っています。
明誠のこれまでの施工事例は https://rita-construction.com/blog/category/works/ からご覧いただけます。ロープアクセス工法の技術情報・安全基準はロープアクセスドットコムにまとめています。
この記事の執筆者
本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役/東京都東大和市
マンション・ビル・ホテルの大規模修繕20年以上の実務経験。3工法(通常足場/ロープアクセス/ハイブリッド)から建物特性に応じて最適提案。日本初のロープアクセス工事フランチャイズ本部を運営。JCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)代表理事。
最終更新:2026年9月16日
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月16日時点で公表されている目黒区および国土交通省・気象庁・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます。実際に申請される前に、必ず目黒区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。ハザードマップの被害想定は東京都および区が公表したものであり、実際の被害状況と異なることがあります。また、費用に関する記述は当社の見積実績に基づく目安であり、公的な単価ではありません。
出典・参考資料
- 目黒区「目黒区水害ハザードマップ」(更新日:2026年3月25日)
- 目黒区「土砂災害ハザードマップ」(更新日:2026年8月31日/令和7年10月更新版)
- 目黒区「土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等」(更新日:2025年8月6日/早見表は令和7年4月25日更新)
- 目黒区「浸水履歴」(更新日:2026年7月28日/平成16年度〜令和7年度)
- 目黒区「住宅や店舗に止水板等を設置するための工事に対する助成(目黒区止水板設置工事助成)」(更新日:2026年9月16日)
- 目黒区「目黒区豪雨対策サポートプランを取りまとめました」(令和7年11月26日発表)
- 目黒区「雨水流出抑制施設等(浸透ます、浸透トレンチ、雨水タンク)の助成」(更新日:2026年8月7日)
- 目黒区「目黒区建築物浸水予防対策指導要綱」(平成23年4月制定)
- 目黒区「目黒川水位警報」
- 東京都下水道局「城南地区河川流域 雨水出水浸水想定区域図」(令和8年3月作成)
- 東京都建設局「城南地区河川流域浸水予想区域図」(総雨量690ミリ/時間最大雨量153ミリ)
- 東京都建設局「土砂災害警戒区域等マップ」
- 気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」
- 気象庁「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」
- 国土地理院「重ねるハザードマップ」
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