
大規模修繕の見積書を前に、「この金額を、このまま総会にかけて本当に大丈夫だろうか」と手が止まった理事長さまは、決して少なくありません。私はこれまで20年近く、マンションやビルの大規模修繕の現場に立ってきましたが、埼玉県三郷市の管理組合さまからのご相談で一番多いのが、まさにこの「修繕積立金と工事費のにらめっこ」です。
先に、正直に申し上げます。三郷市には、東京23区のように「分譲マンションの大規模修繕そのものに何百万円も出ます」という華やかな現金補助は、残念ながらありません。けれども、令和6年(2024年)4月に三郷市で始まったマンション管理計画認定制度をはじめ、管理体制・税制・融資という切り口で見れば、管理組合さまが使える公的な後押しは確かにあります。しかも、これらを正しい順番で組み合わせると、工事のタイミングと資金計画がぐっと立てやすくなります。
三郷市は、つくばエクスプレスの三郷中央駅、JR武蔵野線の三郷駅・新三郷駅を抱え、都心へのアクセスの良さから住まいの選択肢としてマンションが根づいてきた街です。市の資料によれば、三郷市内の分譲マンションは令和4年1月時点でおよそ300棟・約14,000戸にのぼり、市民のおよそ2割にあたる約3万人がマンションで暮らしています。つくばエクスプレス開業からおよそ20年、三郷中央エリアなどに建った建物が、いままさに1回目・2回目の大規模修繕を迎える時期に差しかかっています。この記事では、三郷市のマンション管理組合さまが2026年(令和8年度)に活用できる制度を、私が現場で理事会に説明するときと同じ順番で整理しました。使えるものは使える、使いにくいものは使いにくいと、はっきりお伝えします。
この記事でわかること(3行まとめ)
まず結論からお伝えします。三郷市の管理組合さまが押さえるべき柱は、次の3つです。
- マンション管理計画認定制度:令和6年4月に三郷市で始まった制度です。直接お金が出るわけではありませんが、住宅ローン金利や国の税制優遇の「入口」になります。
- マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額):計画的に修繕を重ねてきた組合ほど、翌年度の固定資産税が減額される形で報われる、国の税制です。
- 埼玉県の無料アドバイザー派遣と機構融資:三郷市は県の無料アドバイザー派遣の対象市です。合意形成や長期修繕計画の見直しを、専門家の力を借りて進められます。
ここに住宅金融支援機構の融資、そして工法の最適化を重ね、資産価値の維持という長い視点で組み立てる——これが私のおすすめする考え方です。それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
1. マンション管理計画認定制度(三郷市が令和6年に始めた「新しい入口」)
最初にご紹介するのは、令和6年(2024年)4月から三郷市で始まったマンション管理計画認定制度です。三郷市は令和6年3月に「三郷市マンション管理適正化推進計画」を策定し、その計画期間の始まりにあわせて認定を開始しました。対象となるのは、三郷市内の分譲マンションです。
「これは補助金なんですか」と理事長さまによく聞かれます。正直にお答えすると、この制度そのものから直接お金が振り込まれるわけではありません。それでも私が毎回おすすめするのは、この認定が「管理のしっかりしたマンションである」という市の公的なお墨付きになり、そこから金融・税制の実利につながっていくからです。
どんな制度か
マンション管理計画認定制度とは、管理組合が作成した管理計画が一定の基準を満たす場合に、市が「適切な管理計画を有するマンション」として認定する制度です。手続きの流れは、まず公益財団法人マンション管理センターに基準適合の事前確認を依頼し、同センターが発行する事前確認適合証を得たうえで、「管理計画認定手続支援サービス」(インターネット上の電子申請システム)を通じて市へ申請する、という順番になります。三郷市では、この事前確認適合証を認定申請の必須の添付書類としているため、必ずマンション管理センターの事前確認を受ける必要があります。
代表的な流れは、(1)総会で管理計画認定申請の決議をとる、(2)事前確認の情報をシステムに入力し添付書類をアップロードする、(3)基準に適合すれば事前確認適合通知メール(事前確認適合証)が届く、(4)その適合証と自動作成された申請書を添えてシステム上で市に申請する、(5)市の審査を経て認定通知書が発行される——という5ステップです。
三郷市の認定基準
三郷市の認定基準は、国のガイドラインと同じ内容としており、三郷市独自の上乗せ基準はありません。大きく5つの分野に整理されています。管理組合の運営(管理者等が定められ、監事が選任され、総会が年1回以上開催されていること)、管理規約(緊急時の専有部立ち入りや修繕履歴の管理などが定められていること)、管理組合の経理(管理費と修繕積立金が明確に区分され、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること)、長期修繕計画の作成および見直し(計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれ、7年以内に見直されていることなど)、そしてその他(組合員名簿・居住者名簿を備え、年1回以上内容を確認していること)です。
「当たり前のようでいて、意外とできていない」項目ばかりだと感じられたかもしれません。私の経験上、この基準に沿って自分たちの管理状態を点検するだけでも、組合の運営はかなり引き締まります。
費用と有効期間
気になる費用ですが、市への認定申請手数料はかかりません。ただし、管理計画認定手続支援サービスのシステム利用料、これに加えてマンション管理センターの事前確認審査料が別途かかります。金額は公益財団法人マンション管理センターのホームページに掲載されていますので、申請前にご確認ください。認定の有効期間は5年で、5年ごとに更新の認定申請を行わないと効力を失います。更新は、有効期間満了の6か月前以内に手続きが必要です。窓口は三郷市 まちづくり推進部 都市デザイン課 住宅政策係(電話048-930-7833)です。
認定を取ると何が変わるか
管理計画認定を受けたマンションには、一般に次のようなメリットが期待できます。適正に管理されたマンションとして売買時に市場で評価されやすくなること、住宅金融支援機構の「フラット35」および「マンション共用部分リフォーム融資」の金利が優遇されること、「マンションすまい・る債」の利率上乗せが適用されること、そして後述するマンション長寿命化促進税制による固定資産税の減額が適用される場合があること——です。認定そのものは現金給付ではありませんが、この先の税制と融資の優遇へとつながる「入口」だとお考えください。
2. マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)
次にご紹介するのが、国の制度であるマンション長寿命化促進税制です。三郷市のマンション管理計画認定制度の案内でも、認定のメリットとして「マンション長寿命化促進税制による固定資産税の減額が適用される場合があります」と明記されています。要件を満たすマンションが、令和5年(2023年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までに長寿命化に資する大規模修繕工事を完了した場合、工事完了年の翌年度分の固定資産税を減額する制度です。
減額の内容
減額されるのは、1住戸あたり床面積100平方メートルまでを限度に、建物の固定資産税額の一定割合です。減額割合は市区町村の条例で6分の1から2分の1の範囲内で定められ、多くの自治体が3分の1としています。三郷市の具体的な減額割合は、公表資料からは断定できませんでしたので、実際に適用を検討される際は三郷市役所の資産税課(家屋係 電話048-930-7709)へ必ずご確認ください。都市計画税は対象外で、適用は1度限りです。48戸規模のマンションであれば、翌年度に組合員全体で見て相応の負担軽減になります。
適用を受けるための3つの要件
要件は大きく3つです。第一に、築後20年以上が経過している10戸以上のマンションであること。第二に、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事という3つの大規模修繕工事を過去に1回以上適切に行っていること(過去の工事は3つを一体で行っている必要はありません)。第三に、長寿命化に資する大規模修繕を適切に行うために必要な修繕積立金が確保されていることです。
この「積立金の確保」は、(1)管理計画認定マンションで、令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を認定水準まで引き上げた場合、または(2)長期修繕計画に係る助言・指導を受けて計画を作成・見直しし、一定の基準に適合した場合——のいずれかで認められます。ここで、先ほどの管理計画認定が効いてくるわけです。認定を取っておくと、この税制の入口にも立てるのです。
なお、この税制は当初、令和7年(2025年)3月末までの工事完了分が対象でしたが、その後の税制改正で令和9年(2027年)3月末まで延長されています。さらに国は、令和8年度の税制改正で本特例をもう一段延長する方針を示しています。ただし、市の窓口での最新の運用や減額割合は変わり得るため、着工前に必ず資産税課で確認しておきましょう。
申告の手続き
減額を受けるには、大規模修繕工事の完了後3か月以内に、三郷市役所の資産税課へ必要な証明書等を添付して申告する必要があります。総戸数を確認できる書類、大規模修繕等証明書(建築士等が発行)、過去工事証明書、そして認定通知書または助言・指導内容実施等証明書などが必要です。工事が終わってから慌てないよう、着工前の段階から証明書の段取りを組んでおくことを強くおすすめします。
3. 埼玉県 分譲マンションアドバイザーの無料派遣(三郷市は対象市)
三郷市の管理組合さまにぜひ知っておいていただきたいのが、埼玉県による分譲マンションアドバイザーの無料派遣です。これは、市が独自の派遣制度を整えるまでの間、県が対象市のマンション管理組合へアドバイザーを無料で派遣する仕組みで、三郷市はこの対象市に含まれています。
令和8年度の派遣回数の目安は県全体で13組合程度、申請期間は令和8年(2026年)4月1日から12月11日までですが、予算の上限(令和8年度は13件)に達すると期間内でも受付を終了します。数に限りがあるため、活用を考える組合さまは早めに動くのが得策です。申請は埼玉県の電子申請・届出サービスからオンラインで行えます。
マンション管理士などの専門家が、長期修繕計画の見直し、修繕積立金の適正化、合意形成の進め方といった、理事会だけでは判断に迷いがちなテーマに助言をくれます。「管理計画認定を目指したいが、何から手をつければいいか分からない」という段階でこそ、この無料派遣は力を発揮します。窓口は埼玉県の住宅課(マンション居住支援担当)で、埼玉県住宅供給公社が運営に協力しています。
4. 住宅金融支援機構 共用部分リフォーム融資+すまい・る債
現金補助が薄い三郷市だからこそ、資金計画の柱として検討したいのが、独立行政法人住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資です。管理組合が借主となって大規模修繕の資金を借りられる制度で、返済期間は最長で長期にわたって設定できます。
ここでも管理計画認定が効きます。管理計画認定を取得していると、この融資の金利が引き下げられます。あわせて、計画的に積立てを行うための「マンションすまい・る債」を活用すれば、認定マンションは利率の上乗せも受けられます。積立てで貯めながら、足りない分を有利な条件で借りる——この2本立てが、無理のない資金計画の基本形です。最新の金利は毎月見直されますので、着工時期を検討する段階で機構のホームページをご確認ください。
5. 耐震の備え(木造戸建て制度・固定資産税の減額・そして「法律の武器」)
旧耐震(昭和56年5月31日以前)の建物をお持ちの組合さまには、耐震の話も避けて通れません。三郷市に関係する耐震の仕組みは、次のように整理できます。
まず、三郷市が独自に行っている木造一戸建て住宅の耐震診断・耐震改修補助制度です。令和8年度の受付はすでに始まっており、昭和56年5月31日以前に建てられた木造2階建て以下の一戸建て住宅が対象です。補助額は、耐震診断が費用の10分の10(上限10万円)、耐震改修が費用の3分の1(上限50万円)で、同時に行うリフォームにも補助があります。ただし、これは名前のとおり木造の一戸建て住宅が対象で、RC造・SRC造の分譲マンションの共用部は対象外です。ここは正直にお伝えしておきます。申請は事業の実施前(契約前)に行う必要があり、窓口は開発指導課 建築指導係(電話048-930-7743)です。
一方で、耐震改修を行った住宅には固定資産税の減額という後押しがあります。三郷市の資産税課の案内によれば、昭和57年1月1日以前から建っている住宅について、令和13年3月31日までに一定の耐震改修(費用50万円超)を行い、現行の耐震基準に適合すると、工事完了の翌年度分の固定資産税が2分の1減額されます(1戸あたり120平方メートル相当分まで)。適用には、増改築等工事証明書や住宅耐震改修証明書などを添えて、完了後3か月以内に資産税課へ申告が必要です。
では旧耐震のマンションは打つ手がないのかというと、そうではありません。ここで頼りになるのが「法律の武器」です。耐震改修促進法25条の認定を受けると、耐震改修に関わる共用部分の変更決議が、通常の「区分所有者および議決権の各4分の3以上」から「各過半数」へと緩和されます。合意形成の高いハードルを、法律の力で下げられるのです。同法17条・22条とあわせ、旧耐震のマンションで耐震と大規模修繕を一体で進めたい組合さまは、ぜひ選択肢に入れてください。
6. 使いにくい・使えないものも、正直に
「補助金一覧」を眺めると期待が膨らみますが、管理組合の共用部の大規模修繕に直接は使いにくいものも多いのが実情です。誤解のないよう、正直にお伝えします。
三郷市家庭用ゼロカーボン促進補助金は、脱炭素社会の実現に向けて、市内の自ら居住する個人住宅に太陽光発電や蓄電池などの省エネ・創エネ設備を導入した場合などに補助する制度で、太陽光発電と蓄電池をあわせて設置すると最大15万円といった内容です。ただしこれは市内に自ら居住する個人の住宅が対象で、あくまで各戸の省エネ設備向けと考えるのが正確です。分譲マンションの共用部の大規模修繕そのものに使う制度ではありませんし、共用部・管理組合名義での適用可否は環境の担当課へご確認ください。
木造一戸建て住宅の耐震診断・耐震改修補助制度も、前述のとおり木造戸建て向けで、RC・SRCの分譲マンション共用部は対象外です。
そして、繰り返しになりますが、三郷市が分譲マンションの大規模修繕工事費に直接現金を出す制度は、現時点で確認できていません。だからこそ、現金補助の有無だけで一喜一憂せず、認定・税制・融資・工法という「実質的な負担軽減」の全体で考えることが、三郷市では特に大切になります。
制度を使う「順番」——8つのステップ
制度は、バラバラに使うより「順番」が大事です。私が理事会でご案内している流れをまとめます。
- 管理状態の自己点検:長期修繕計画・修繕積立金・管理規約が認定基準を満たしているか確認する。
- 修繕積立金の健康診断:将来の工事費に対して積立てが足りているかを試算する。
- 積立金引上げの決議(必要な場合):令和3年9月1日以降の引上げは長寿命化税制の要件にも効く。
- 管理計画認定の申請:事前確認適合証を取り、システム上で市へ申請する。
- 大規模修繕の設計:外壁塗装・床防水・屋根防水を含む「3点セット」を計画に織り込む。
- 補助・融資の事前確認と申請:耐震関係の補助や機構融資は、必ず契約・着工の前に確認する。
- 施工:工法を最適化してコストと工期を抑える。
- 税の申告:工事完了後3か月以内に、長寿命化税制の減額申告を行う。
この順番で進めると、「認定→積立金の適正化→計画修繕→税制と融資の優遇」が一本の道でつながります。
制度早見表(三郷市の管理組合さま向け)
| 制度・仕組み | 内容の要点 | 主な窓口 |
|---|---|---|
| マンション管理計画認定制度 | 令和6年4月開始。市への申請手数料無料(システム利用料等は別)。有効5年 | 都市デザイン課 住宅政策係 048-930-7833 |
| マンション長寿命化促進税制 | 翌年度の固定資産税を減額(100㎡まで)。〜令和9年3月完了分。割合は要確認 | 資産税課 家屋係 048-930-7709 |
| 埼玉県アドバイザー無料派遣 | 三郷市は対象市。令和8年度は県全体で13組合目安 | 埼玉県 住宅課 |
| 機構 共用部分リフォーム融資 | 認定で金利引下げ+すまい・る債利率上乗せ | 住宅金融支援機構 |
| 木造戸建て耐震補助 | 診断上限10万円・改修上限50万円。マンション共用部は対象外 | 開発指導課 建築指導係 048-930-7743 |
※金額・割合・期限は年度や予算により変わります。申請前に必ず各窓口でご確認ください。
モデルケースで考える(三郷市の2つの想定)
ケースA:三郷中央駅周辺 築28年・11階建て・48戸(新耐震)
つくばエクスプレス三郷中央駅にほど近い、築28年・48戸のマンションを想定します。2回目の大規模修繕で外壁・防水を一体で計画。管理計画認定を取得したうえで、外壁塗装・床防水・屋根防水の3点セットを実施すれば、翌年度の固定資産税が減額される長寿命化税制の対象になり得ます。工法は、全面足場ではなく足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法を採用。仮に全面足場で9,000万円だった工事が、条件次第で7,800万円程度(およそ13%減)まで圧縮できるケースもあります。浮いた原資を次期の積立てに回す、という発想です。
ケースB:市街地 築44年・5階建て・18戸(旧耐震)
もう一つは、築44年・18戸の旧耐震マンション。ここは耐震改修促進法25条の認定を活用し、共用部変更の決議を各過半数へと緩和して合意形成を進めます。足場架設が難しい立地であれば、ロープアクセス工法(無足場工法)を中心に据え、機構の共用部分リフォーム融資で資金を手当てする——という組み立てが現実的です。旧耐震だからと諦めず、法律と工法と融資を重ねれば、道は開けます。
修繕積立金が足りないとき——4つの打ち手
「積立金が足りない」というご相談には、私はいつも4つの打ち手をお伝えしています。第一に、工法の最適化でそもそもの工事費を下げること。第二に、工事範囲の優先順位づけで、いま必ずやるべき部位と先送りできる部位を仕分けること。第三に、機構融資の活用で不足分を有利な条件で借りること。第四に、段階的な積立金の引上げで将来に備えること。この4つを組み合わせれば、「一気に大増額」という総会で最も揉めがちな結論を避けやすくなります。
合意形成を進める3つのコツ
大規模修繕は、技術より合意形成でつまずくことがほとんどです。私が現場で効果を感じている3つのコツをご紹介します。ひとつ目は、総額でなく「1戸あたり月額」に換算して示すこと。数千万円という総額は身構えられますが、月額に直すと納得が得られやすくなります。ふたつ目は、反対意見を先に拾うこと。総会でぶつける前に、懸念のある方の声を個別に聞いておくと、当日の紛糾を防げます。みっつ目は、工法の選択肢を見せること。足場・ロープアクセス・ハイブリッドという選択肢と、それぞれの金額・工期・生活への影響を並べて示すと、住民の皆さまが「自分たちで選んだ」という納得感を持てます。
なぜ「いま」動くべきか
理由は2つあります。ひとつは、建物の劣化は待ってくれないこと。外壁のひび割れやタイルの浮きは、放置すれば剥落事故のリスクに直結し、対応が遅れるほど工事費もかさみます。もうひとつは、制度には期限と予算枠があること。長寿命化税制は令和9年3月末の完了分まで(延長の動きはありますが最新の運用は要確認)、埼玉県のアドバイザー派遣も予算に達すれば締め切られます。「いつかやる」ではなく、「この年度のうちに段取りを組む」。それが、結果として組合の負担を最も軽くします。
よくあるご質問(三郷市の管理組合さまから)
Q. 三郷市には、大規模修繕の工事費そのものに出る補助金はないのですか。
現時点で、三郷市が分譲マンションの大規模修繕工事費に直接現金を出す制度は確認できていません。ただし、管理計画認定を前提とした固定資産税の減額(長寿命化促進税制)や、機構融資の金利引下げなど、実質的な負担軽減につながる仕組みは用意されています。現金補助の有無だけで判断せず、税制と融資まで含めて全体で考えることをおすすめします。
Q. うちは新耐震のマンションですが、使える制度はありますか。
はい。木造向けの耐震補助は旧耐震の戸建てが対象ですが、管理計画認定、長寿命化促進税制、埼玉県の無料アドバイザー派遣、そして大規模修繕そのものの工法最適化は、新耐震のマンションでも十分に検討価値があります。
Q. 管理計画認定は難しそうです。何から始めればいいですか。
まずは長期修繕計画と修繕積立金、管理規約が認定基準を満たしているかの自己点検からです。ここで課題が見えたら、三郷市が対象市になっている埼玉県の無料アドバイザー派遣を活用して専門家に相談するのが近道です。総会の前段階の整理だけでも、私たちがお力になれることがあります。
Q. 相見積もりを取ったのに、金額がバラバラで比べられません。
原因の多くは、工事範囲・仕様・工法の前提がそろっていないことにあります。A社は全面足場、B社は一部ロープアクセス、C社は仕様グレードが違う——これでは金額だけを並べても意味がありません。相見積もりの前に「どの範囲を、どの工法の前提で、どの仕様でやるのか」という土俵をそろえておくことが大切です。
3つの工法から、建物にとってのベストを
最後に、私たちの仕事の話を少しだけ。私たちは、大規模修繕を通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法という3つの工法から、建物の形状・立地・ご予算に応じて最適なものをご提案できる、日本でも数少ない会社です。
三郷市のマンションのように、隣地との距離が近い、あるいは早く終わらせて住民の生活への影響を抑えたい、という現場では、足場を架けないロープアクセス工法が力を発揮します。足場の設置・解体の費用と期間を抑えられ、防犯面の不安も小さく、居住者の生活への影響を最小限にできるからです。一方で、全面的に足場が必要な工事もあります。だからこそ、部位ごとに使い分けるハイブリッド工法で、総合的なコストと工期のバランスを最適化する——ここに、3つの工法を持つ私たちの強みがあります。
なお、私たちは全国の建設業を支援する一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)の運営にも携わっており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職と連携しながら、高品質で無理のない大規模修繕をご提案しています。制度は年度で変わり、予算枠にも限りがあります。まずは理事会で1分だけでも、この話題を出してみてください。そして工事の契約前に、一度ご相談ください。総会にかける前の資料づくりの段階から、私たちがお手伝いできることは少なくありません。お問合せフォームから、お気軽にどうぞ。
大規模修繕の進め方や工法の違いについては、大規模修繕を安く抑える考え方、ロープアクセス工法について、私たちの3つの工法、管理組合さまへのサービスもあわせてご覧ください。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。
出典・参考資料
- 三郷市「マンション管理計画認定制度」
- 三郷市「三郷市マンション管理適正化推進計画」
- 三郷市 資産税課「よくある質問(住宅耐震改修等に伴う固定資産税の減額)」
- 三郷市「木造一戸建て住宅の耐震診断・耐震改修補助制度」
- 埼玉県「市部における埼玉県分譲マンションアドバイザーの無料派遣について」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資の融資金利について」
本記事は2026年7月時点で公開されている公的情報にもとづいて作成しています。補助率・上限額・期限・減額割合などは年度や予算の状況により変更される場合があります。申請前に必ず各窓口の最新情報をご確認ください。


