大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

修繕積立金の不足で1億円超の借入も|2026年の回避策

修繕積立金の不足で1億円超の借入も|2026年の回避策

修繕積立金の不足はなぜ起きるのか|まず結論からお伝えします

Q. 修繕積立金が足りず、大規模修繕で1億円以上の借入をする管理組合が出ています。うちは大丈夫でしょうか?

A. 国の統計では、計画上の積立額に対して現在の積立額が不足しているマンションは36.6%、つまりおよそ3組合に1組合です(出典:国土交通省令和5年度マンション総合調査結果)。不足を放置したまま工事時期を迎えると、選択肢は「一時金」「借入」「工事の縮小・先送り」の3つに絞られます。ただし、その前に検討できる4つ目の選択肢があります。それが「工事の仕組みそのものを見直して、工事費の側を下げる」という発想です。

私は建設・改修の現場に20年近く身を置いてきました。理事長さまから「積立金が足りない」とご相談をいただくとき、最初にお聞きするのは残高ではなく、前回の見積書に「仮設工事」がいくら計上されていたかです。理由は本文でご説明しますが、ここが総工事費のおよそ2割を占めるからです。

この記事では、公的な一次情報だけを使って、次の5点を整理します。

  1. 修繕積立金の不足は今どのくらい深刻なのか(国交省の最新データ)
  2. なぜ足りなくなるのか(4つの構造的な理由)
  3. 大規模修繕の費用相場と、自分のマンションの積立金が適正かの判定方法
  4. 借入を検討する前に試せる、工事費そのものを下げる方法
  5. 値上げを総会で通すための、説明資料の組み立て方

最終更新:2026年9月5日


修繕積立金の不足の実態|国の統計が示す3つの数字

3組合に1組合が計画未達、うち3分の1は「20%超の不足」

国土交通省は5年に一度、マンション管理の実態調査を行っています。最新の令和5年度調査(2024年6月21日公表)の結果は次のとおりです。

項目 数値 前回調査比
計画に対して積立額が不足しているマンション 36.6% +1.8ポイント
そのうち、不足割合が20%を超えるマンション 11.7%
長期修繕計画(計画期間25年以上)に基づき積立額を設定している割合 59.8% +6.2ポイント
長期修繕計画を作成している管理組合 88.4% -2.5ポイント

(出典:国土交通省令和5年度マンション総合調査結果概要

注目していただきたいのは2行目です。不足しているマンションのうち、およそ3分の1が「20%超の不足」という水準にあります。仮に工事費が1億円の規模であれば、2,000万円以上の穴が空いている計算になります。冒頭で触れた「1億円超の借入」という事例は、決して特殊なケースではないということです。

積立金の平均は月13,054円。ただし「平均」では判断できない

同じ調査によると、駐車場使用料等からの充当額を除いた月/戸当たりの修繕積立金の平均額は13,054円でした(総額ベースでは13,378円)。参考までに、月/戸当たり管理費の平均は11,503円です。

ただ、私はこの「平均13,054円」という数字だけを見て安心も心配もしないでください、と申し上げています。マンションの修繕積立金の適正額は、戸数ではなく専有面積と建物規模で決まるからです。判定方法は後の見出しで具体的にご説明します。

管理組合の将来不安、3位が「修繕積立金の不足」

同調査では、管理組合運営における将来への不安として次の順位が出ています。

  • 1位:区分所有者の高齢化(57.6%)
  • 2位:居住者の高齢化(46.1%)
  • 3位:修繕積立金の不足(39.6%)

そして「管理に関して取り組むべき課題」の1位は「修繕積立金の積立金額の見直し」(36.2%)、2位が「長期修繕計画の作成又は見直し」(33.0%)でした。

つまり、多くの管理組合は問題をすでに認識しているのです。認識しているのに動けない。ここに、この問題の本質があります。


なぜ足りなくなるのか|4つの構造的な理由

理由1:新築時の設定が低い「段階増額積立方式」が47.1%

修繕積立金の積み立て方には、大きく2つの方式があります。

方式 内容 採用割合(令和5年度調査)
均等積立方式 計画期間中、同額を積み立て続ける 40.5%
段階増額積立方式 当初を低く抑え、段階的に値上げする 47.1%

国土交通省のマンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)は、「将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい方式といえます」と明記しています。段階増額積立方式は「増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例も生じている」と、リスクをはっきり指摘しているのです。

同ガイドラインは令和6年6月の改定で、段階増額積立方式を採る場合の目安も新たに示しました。

段階増額積立方式における月あたりの徴収金額は、均等積立方式とした場合の月あたりの金額を基準額とし、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内とする。

新築時の積立金が「均等にした場合の6割」を下回っている物件は、この目安から外れているということになります。ご自身のマンションの長期修繕計画をお持ちであれば、一度この0.6倍・1.1倍で検算してみてください。

理由2:工事費が上がり続けている

積立計画を作ったときの単価と、実際に発注する時点の単価が違う。これが2つ目の理由です。

国土交通省が公表した令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価は、全国全職種の加重平均で25,834円となり、初めて25,000円を超えました。14年連続の上昇で、全国全職種の単純平均では対前年度比+4.5%です(出典:国土交通省令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について)。

大規模修繕工事で中心になるのは、とび工(仮設工事)・防水工(防水・シーリング工事)・塗装工(塗装工事)の主要3工種です。修繕積立金ガイドラインも、労務費について「建設業の担い手不足や技能労働者の就労環境の変化等により変動する可能性がありますので、必要に応じて上昇分について考慮することも重要です」と述べています。

10年前に作った長期修繕計画の単価が、今そのまま通用するとは考えにくい。これは業界の実感でもあり、公的なデータが裏づけている事実でもあります。

理由3:長期修繕計画の見直しが追いついていない

修繕積立金ガイドラインは、5年程度ごとの長期修繕計画の見直しを求めています。令和5年度調査では「5年毎を目安に定期的に見直している」管理組合が63.2%まで増えました(前回56.3%)。改善はしていますが、裏返せば4割近くは5年ごとの定期見直しができていないということです。

なお同ガイドラインは、令和6年6月の改定で見直しの理由に「工事費の高騰等」を明示的に加えました。制度の側も、値上がりを前提に計画を組み直すべきだという姿勢を打ち出しています。

理由4:高齢化で、値上げの合意形成が難しくなる

令和5年度調査では、70歳以上の世帯主の割合が25.9%(前回22.2%)へ増加し、昭和59年(1984年)以前に完成したマンションでは55.9%、つまり過半数に達しています。年金生活に入られた方が多数を占める組合で「月々の積立金を1.5倍にします」と提案するのが、どれほど難しいことか。私は総会の場で何度も目にしてきました。

ここが重要な点です。高齢化が進んだマンションほど、値上げ幅を小さく抑える工夫が必要になる。そして値上げ幅を抑えるには、分母である工事費の側を下げるしかありません。


大規模修繕の費用相場|戸あたり・㎡あたりの目安

1回目の工事は戸あたり中央値110.2万円

国土交通省は令和3年度に、200社・818件の工事事例を集計したマンション大規模修繕工事に関する実態調査を公表しています。戸あたりの工事金額は次のとおりです。

工事回数 下位25%値 中央値 上位25%値
1回目(n=331) 90.9万円/戸 110.2万円/戸 134.0万円/戸
2回目(n=194) 87.8万円/戸 106.1万円/戸 129.8万円/戸
3回目以上(n=242) 76.8万円/戸 97.0万円/戸 125.7万円/戸

全体では「100〜125万円/戸」が27.0%と最も多く、次いで「75〜100万円/戸」が24.7%です。床面積あたりでは「1.0〜1.5万円/㎡」が33.4%で最多でした。

なお、この調査の工事金額には共通仮設費は含まれていませんし、消費税相当額も含みません。実際の総額はこれより上振れる点にご注意ください。「うちは相場より高いのでは」と感じたときは、まず見積書の条件がこの調査の定義と揃っているかを確認する必要があります。

修繕周期は12〜15年が約7割

同調査によると、平均修繕周期は「13年」が最も多く、全体の約7割が12〜15年周期での実施でした。工事回数別の平均は、1回目が15.6年、2回目が14.0年、3回目が12.9年で、回数を重ねるほど周期が短くなる傾向が見られます。

築年数の中央値は、1回目が築15年、2回目が築28年、3回目以上が築40年です。「12年周期」という言葉が独り歩きしていますが、実態としては12〜15年の幅で、しかも後半になるほど間隔が詰まっていく。ここは長期修繕計画を作り直すときの現実的な前提になります。

3分でできる、積立金の適正額チェック

修繕積立金ガイドラインは、専有面積1㎡あたりの月額単価で目安を示しています(機械式駐車場分を除く。366事例を分析したもの)。

地上階数/建築延床面積 事例の3分の2が包含される幅 平均値
20階未満・5,000㎡未満 235〜430円/㎡・月 335円/㎡・月
20階未満・5,000〜10,000㎡未満 170〜320円/㎡・月 252円/㎡・月
20階未満・10,000〜20,000㎡未満 200〜330円/㎡・月 271円/㎡・月
20階未満・20,000㎡以上 190〜325円/㎡・月 255円/㎡・月
20階以上 240〜410円/㎡・月 338円/㎡・月

使い方は簡単です。長期修繕計画の「計画期間全体で集める修繕積立金の総額+計画期間当初の残高+専用使用料等からの繰入総額」を、総専有床面積と計画期間の月数で割る。その結果を上の表と見比べます。

たとえば専有70㎡・地上10階・延床7,000㎡のお住まいなら、目安の平均値は252円/㎡・月ですから、月額17,640円が一つの水準です。機械式駐車場がある場合は、機種ごとの1台あたり月額(2段昇降式なら6,450円/台・月など)×台数÷総専有床面積を加算します。

ただし、ガイドライン自身が「この幅に収まっていないからといって、その水準が直ちに不適切であると判断されることになるわけではありません」と断っています。建物の形状、立地、共用施設の内容で必要額は変わります。目安はあくまで会話の出発点として使ってください。


借入は悪ではない。ただし順番を間違えない

管理組合が使える公的融資という選択肢

独立行政法人住宅金融支援機構は、管理組合が申し込めるマンション共用部分リフォーム融資(マンションすまい・る融資)を扱っています。申込時の金利が全期間固定で適用される仕組みで、返済期間は原則として1年以上10年以内ですが、耐震改修・浸水対策・省エネルギー対策・給排水管取替・玄関またはサッシ取替・エレベーター取替または新設・アスベスト対策・機械式駐車場解体のいずれかを行う場合は20年以内まで延長できます。さらにそのうち耐震改修・浸水対策・省エネルギー対策のいずれかを行い、かつマンション管理計画認定を取得している場合は35年以内まで可能です。

ご利用には機構が承認した保証機関の保証等が必要で、2026年4月時点では(公財)マンション管理センター、(一財)住宅改良開発公社、(公社)全国市街地再開発協会の3機関が承認を受けています。金利は毎月見直されますので、検討時は必ず機構の最新の金利情報をご確認ください。

正直に申し上げます。借入そのものは悪いことではありません。劣化を放置して被害が拡大するほうが、結果として高くつくからです。雨水が躯体に回り、鉄筋が錆びて膨張し、コンクリートを押し割る。ここまで進むと補修範囲は一気に広がります。

借りる前に、必ず試していただきたい3つのこと

とはいえ、借入は将来の組合員に負担を先送りする行為でもあります。私は理事長さまに、借入額を決める前に次の3つを試していただくようお願いしています。

  1. 長期修繕計画を最新の単価で作り直す(10年前の単価のままなら、そもそも見積比較の土俵に乗っていません)
  2. 工事範囲を「必要」と「望ましい」に仕分ける(同時にやると効率が良い工事と、次回に回せる工事を分ける)
  3. 仮設計画から見直す(ここが本題です。次章でご説明します)

この3つをやってから借入額を出すと、当初の想定から金額が変わることが少なくありません。


費用を下げる最大の急所は「仮設足場」|総工事費の22.3%

国の実態調査が示す、仮設工事の比率

ここからが本題です。先ほどの令和3年度実態調査は、総工事金額に対する内訳も集計しています。

区分 全体 1回目 2回目 3回目以上
建築系工事 59.0% 60.3% 63.6% 58.8%
仮設工事 22.3% 22.8% 19.4% 25.3%
諸経費① 9.3% 9.5% 9.4% 9.6%
設備系・外構・その他 9.4% 7.7% 7.6% 6.3%

(出典:国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査。四捨五入のため合計は100%になりません)

仮設工事が、総工事金額のおよそ2割を占めています。 しかも工事回数が増えるほど比率が上がり、3回目以上では25.3%に達します。

一方で、実際に建物を直している建築系工事の内訳を見ると、外壁塗装24.5%、床防水18.6%、屋根防水13.4%、外壁タイル12.9%、シーリング12.0%という配分です(全体)。

つまり管理組合は、「建物を直す費用」とほぼ別枠で、「職人を高所まで運ぶための費用」に総額の2割を払っていることになります。私が見積書で真っ先に仮設工事の欄を見るのは、このためです。

国も認めている「足場費が工事費を押し上げる」という構造

これは私が営業のために言っているのではありません。国土交通省の修繕積立金ガイドラインが、修繕工事費の変動要因として次のように明記しています。

建物が階段状になっているなど複雑な形状のマンションや超高層マンションでは、外壁等の修繕のために建物の周りに設置する仮設足場やゴンドラ等の設置費用が高くなるほか、施工期間が長引くなどして、修繕工事費が高くなる傾向があります。

同ガイドラインが地上20階以上の目安を別枠(平均338円/㎡・月)で示しているのも、「外壁等の修繕のための特殊な足場が必要となる」ことが理由として挙げられています。足場は、公的に認められたコスト要因なのです。

ロープアクセス工法(無足場工法)という選択肢

ロープアクセス工法とは、産業用のロープと下降器を用いて、職人が屋上から直接ロープで降下しながら外壁の補修・塗装・防水・タイル補修などを行う工法です。仮設足場を組まないため「無足場工法」とも呼ばれます。

管理組合・オーナーさまにとっての実務的な違いは、次の3点に集約されます。

  • 足場の架設・解体費と、その工期がまるごと不要になる部分がある
  • バルコニーや窓まわりが足場と養生シートで囲われないため、居住者の生活影響が小さい(洗濯物、採光、通風、そして防犯)
  • 必要な箇所にピンポイントで入れるため、部分補修や緊急対応に強い

とくに3つ目は、台風シーズンのこの時期に効いてきます。9月は台風被害の点検依頼が集中しますが、足場を組んでからでは初動が遅れます。ロープアクセスなら、点検と応急補修に短期間で入れる場面が多い。ロープアクセス工法の安全基準や技術的な解説は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムに詳しくまとめていますので、技術面を深く知りたい方はそちらもご覧ください。

弊社のロープアクセス施工の実務については、ロープアクセス工法のご紹介のページで施工の流れをご案内しています。


3工法の比較|足場・ロープアクセス・ハイブリッド

建物によって最適解は変わります

株式会社明誠が3つの工法を持っているのは、どれか1つが常に優れているわけではないからです。実際の比較は次のようになります。

比較項目 通常足場工法 ロープアクセス工法(無足場) ハイブリッド工法
仮設費用 大きい(総額の約2割が目安) 大幅に圧縮できる 部位ごとに最適化
工期 架設・解体の期間が加算される 短縮しやすい 中間
居住者への影響 囲い・シートで採光と通風に影響 小さい 部位により限定的
大面積の一斉施工 得意 部位により時間がかかる 得意
複雑形状・超高層 費用が膨らみやすい 強い 強い
適する場面 全面改修、低中層、複雑な同時作業 高層、足場架設が困難、部分補修、緊急対応 大規模・複雑物件の総合最適化

ロープアクセス工法が向かないケースもあります

両論併記でお伝えします。ロープアクセスは万能ではありません。

  • 屋上にアンカー(支点)を安全に確保できない建物では採用できません。事前の支点調査が前提になります。
  • 全面的なタイル張り替えなど、大面積で資材の搬入量が多い工事は、足場を組んだほうが総コストで有利になる場合があります。
  • バルコニー内部の作業が大半を占める場合も、足場の優位性が出ます。
  • 職人が同時に張り付ける人数に制約があるため、「とにかく早く一斉に終わらせたい」大規模物件では足場が勝つことがあります。

私はこれを、あえてご提案の場で最初に申し上げるようにしています。無足場を売りにしている会社が「足場のほうがいい場面もあります」と言うのは奇妙に聞こえるかもしれません。ですが、向かない現場で無理に使えば品質にも工期にも跳ね返る。それは結局、管理組合の損になります。

現実解としてのハイブリッド工法

実務でいちばん多いのが、この組み合わせです。大面積の外壁や搬入量の多い部位は足場を架け、高層部・妻壁・入り組んだ部位・足場が組めない箇所はロープアクセスで対応する。足場の面積を必要最小限に絞ることで、仮設費と工期の両方を圧縮します。

私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。「足場かロープか」の二択ではなく、「この建物のこの面はどちらが合理的か」を面ごとに判定する。3つの工法を自社で持っていて初めてできる提案です。弊社の考え方は明誠の3工法と強み、大規模修繕全体の流れは大規模修繕工事のご紹介にまとめています。

なお弊社は、日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開しており、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門会社が加盟しています。専門職が直接施工に入る体制のため、中間工程を減らした価格でご提案できるのが、この体制の実務的なメリットです。


値上げを総会で通すための、説明資料の組み立て方

並べるべきは「3つの数字」

理事会の資料づくりでご相談を受けたとき、私がお願いしているのは、感情に訴える表現を減らし、次の3つの数字を並べることです。

  1. 現状値:うちの積立金は月◯◯円/㎡(ガイドライン計算式で算出)
  2. 基準値:国のガイドラインの目安は◯◯〜◯◯円/㎡(該当する規模区分の幅)
  3. 差額の意味:不足額◯◯万円は、戸あたり月◯◯円の値上げ、または◯年後の一時金◯◯万円に相当する

3番目が肝心です。組合員の方が判断できるのは「総額1億円」ではなく、「自分の財布から毎月いくら出るのか」です。総額を戸あたり月額に割り戻して初めて、議論が前に進みます。

私が理事長さまにお伝えしていること

現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、必要な工事が「合意が取れないから」という理由だけで2年、3年と先送りされ、その間に劣化が進んで結果的に高くついたケースを見るときです。

タイルの浮きは、放置すれば剥落のリスクになります。屋上防水の切れは、下階の漏水につながります。どちらも早く見つけて小さく直せば安く済むのに、大きくなってから直すと足場も工期も費用も膨らむ。

だからこそ、値上げの議論と工法の議論は同時に進めていただきたいのです。「積立金をいくら上げるか」だけを議論すると反対されます。「工事費をここまで下げられる見込みがあり、そのうえで不足分をこれだけ埋めたい」という順番なら、話が通りやすくなります。

管理組合さま向けの具体的なご支援内容は管理組合さま向けサービスにまとめています。診断だけ、セカンドオピニオンだけ、というご相談も承っています。


使える制度|マンション長寿命化促進税制

修繕積立金を一定以上に引き上げた管理計画認定マンションが、適用期間内に一定の大規模修繕工事を行った場合、その建物部分に係る翌年度分の固定資産税が、6分の1から2分の1以下の範囲内で市町村(特別区にあっては都)の条例で定める割合だけ減額される制度があります。参酌基準は3分の1、減額対象は1戸あたり100㎡相当分までです(出典:国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン 令和6年6月改定)。

適用要件の一つが、令和3年9月1日以降に、計画期間全体での修繕積立金の平均額を、目安表の「事例の3分の2が包含される幅」の下限値を下回る金額から上回る金額へ引き上げたことです。つまり、先ほどの表の下限値(20階未満・5,000〜10,000㎡なら170円/㎡・月)が判断ラインになります。

引き上げた旨については、マンション管理士または建築士(建築士事務所登録をしている事務所に属する建築士に限る)から修繕積立金引上証明書の発行を受ける必要があります。要件や手続は改正される可能性がありますので、検討時点で必ず国土交通省および所在する市区町村の最新情報をご確認ください。

値上げは、組合員にとっては負担増です。ですが「値上げをすると固定資産税が下がる可能性がある」という材料は、総会での説明で確実に効きます。制度を知っているかどうかで、合意形成の難易度が変わります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 修繕積立金が不足しているマンションはどのくらいありますか?
A. 計画上の積立額に対して現在の積立額が不足しているマンションは36.6%です。そのうち不足割合が20%を超えるものが11.7%あります(出典:国土交通省 令和5年度マンション総合調査)。

Q2. 大規模修繕の費用は戸あたりいくらが目安ですか?
A. 1回目の工事で中央値110.2万円/戸、下位25%値90.9万円/戸、上位25%値134.0万円/戸です。2回目は中央値106.1万円/戸、3回目以上は97.0万円/戸となっています。ただし共通仮設費と消費税相当額は含まれていません(出典:国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査)。

Q3. 大規模修繕の周期は何年ごとですか?
A. 全体の約7割が12〜15年周期で、最も多いのは13年です。工事回数別の平均は1回目15.6年、2回目14.0年、3回目12.9年で、回数を重ねるほど周期が短くなる傾向があります。

Q4. 足場を組まない工法にすると、どのくらい費用が変わりますか?
A. 建物の形状・階数・工事範囲によって変わるため一律には申し上げられません。判断材料として、国の実態調査では仮設工事が総工事金額の22.3%(3回目以上は25.3%)を占めています。この部分をどこまで圧縮できるかが、現地調査での検討ポイントになります。

Q5. ロープアクセス工法が使えない建物はありますか?
A. 屋上に安全な支点(アンカー)を確保できない建物では採用できません。また大面積のタイル張り替えなど資材搬入量の多い工事は、足場のほうが総コストで有利になる場合があります。まずは支点調査を含む現地確認からご相談ください。

Q6. 積立金の値上げで固定資産税が下がることがあると聞きました。
A. マンション長寿命化促進税制のことです。管理計画認定を受け、修繕積立金を一定以上引き上げ、適用期間内に一定の大規模修繕工事を行った場合、翌年度分の固定資産税が6分の1〜2分の1以下の範囲内(参酌基準3分の1、1戸100㎡相当分まで)で減額されます。要件の詳細は国土交通省と市区町村の最新情報をご確認ください。


この記事のポイントまとめ

  • 計画に対して修繕積立金が不足しているマンションは36.6%、うち11.7%は20%超の不足
  • 積立金不足の背景は、段階増額積立方式(47.1%)・工事費高騰・計画見直しの遅れ・高齢化の4つ
  • 公共工事設計労務単価は令和8年3月適用分で25,834円、14年連続の上昇
  • 大規模修繕1回目の費用は戸あたり中央値110.2万円、周期は12〜15年が約7割
  • 仮設工事は総工事金額の22.3%。ここが費用圧縮の最大の急所
  • 借入の前に「計画の更新」「工事範囲の仕分け」「仮設計画の見直し」を試す

修繕積立金の不足は、放っておいて解決する問題ではありません。ただ、値上げか借入かの二択だと思い込む必要もありません。工事の仕組みを変えれば、必要な金額そのものが変わります。

9月は台風シーズンです。この時期に外壁や屋上に異変を見つけたら、それは点検のきっかけとして悪くないタイミングです。次の理事会で1分だけ、「うちの仮設費は総額の何割か」を議題に出してみてください。それだけで、来年の議論が変わります。

診断やセカンドオピニオンだけのご相談も遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。ご相談はお問合せフォームからお受けしています。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でマンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を手がける改修会社です。通常足場工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、両者を組み合わせたハイブリッド工法の3工法から、建物ごとに最適な工法をご提案しています。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。

最終更新:2026年9月5日

※本記事に記載した制度・数値は執筆時点の公表内容に基づくものです。制度は変更される可能性がありますので、最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は法的・税務的な助言を目的とするものではありません。


出典・参考資料

関連リソース:ロープアクセス工法の技術情報・安全基準はロープアクセスドットコムで解説しています。