取手市の分譲マンションを見せていただくと、私はいつも同じことを感じます。「この街は、いい時期に、いい場所に、たくさんのマンションが建った。だからいま、まとまって修繕の山が来ている」と。
取手市は、JR常磐線と関東鉄道常総線が通り、上野・東京へ常磐線快速でおおむね45分という、昔から人気の高いベッドタウンです。高度成長期からバブル期にかけて、駅前や団地エリアに分譲マンションが一気に増えました。その建物が、いま築40年から50年にさしかかっています。2回目・3回目の大規模修繕を迎え、同時に修繕積立金の不足に頭を抱える管理組合が、本当に増えています。
私は塗装屋として二十年以上、マンションやビルの外壁と向き合ってきました。現場で一番悔しい思いをするのは、「使えるお金の制度があったのに、誰も知らないまま、言い値で工事を発注してしまっていた」というケースに出くわしたときです。取手市の理事長さんには、そういう思いをしてほしくない。だからこの記事を書きます。
この記事では、2026年(令和8年)7月時点で、取手市の分譲マンション管理組合が使える制度を、市役所の一次情報にあたって整理しました。先に、いちばん大事な結論から正直に申し上げます。取手市にも、「大規模修繕工事の費用そのものに現金を出してくれる市の補助金」は、残念ながら確認できませんでした。ここはごまかしません。
しかし、がっかりするのはまだ早いです。取手市には、管理組合が使える制度の「筋道」がちゃんと通っています。ひとつはマンション管理計画認定制度がすでに申請できる状態にあること。ふたつめは、マンション長寿命化促進税制で固定資産税が減額される道があり、しかも市のページが国の期限延長を正確に反映していて申告しやすいこと。この2つを軸に、認定から税制、融資、そして工法によるコスト削減まで、順番につないでいきましょう。
まず結論:取手市の管理組合が押さえるべき制度・早見表
理事会の配布資料にそのまま貼れるよう、先に一覧にします。詳しい中身は、このあと順番に解説していきます。
| # | 制度名 | 誰が出しているか | 管理組合にとっての意味 | 窓口 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 取手市マンション管理計画認定制度 | 取手市 | 管理レベルの公的なお墨付き。すべての入口 | 市 都市計画課 |
| 2 | マンション長寿命化促進税制(固定資産税3分の1減額) | 国/取手市 | 認定+大規模修繕で翌年度の固定資産税が3分の1減る | 市 課税課(資産税) |
| 3 | マンション共用部分リフォーム融資(すまい・る融資) | 住宅金融支援機構 | 認定等で金利引下げ。積立金不足の補完に | 住宅金融支援機構 |
| 4 | 住宅リノベーション補助金 | 取手市 | ※自己居住・専有部向け。共用部の大規模修繕は対象外 | 市 都市計画課 |
| 5 | 令和8年度木造住宅耐震改修費補助 | 取手市 | ※木造戸建向け。RC造マンション共用部は対象外 | 市 建築指導課 |
| 6 | 住宅用太陽光・自立分散型エネルギー補助 | 取手市 | ※基本は個人住宅向け。共用部利用は要確認 | 市 環境対策課 |
この表でいちばんお伝えしたいのは、「1番と2番はセットで効く」ということです。管理計画の認定を取り、その上できちんと大規模修繕をやると、翌年度の固定資産税が3分の1軽くなる。取手市は、この道がちゃんとつながっている街です。順番に見ていきます。
制度1:取手市マンション管理計画認定制度――すべての入口はここ
令和6年4月から、取手市で申請できるようになりました
まず大前提の話です。マンション管理計画認定制度とは、管理組合の運営や長期修繕計画などが国の基準を満たしていることを、市が公的に認定する仕組みです(マンションの管理の適正化の推進に関する法律の第3章に基づく制度です)。かみくだくと、「このマンションはちゃんと管理されています」という、行政のお墨付きだと考えてください。
この制度は、全国どこでも自動的に使えるわけではありません。各市区町村が「うちでも認定を始めます」と体制を整えて、はじめてその市のマンションが申請できるようになります。取手市は、この認定制度を令和6年4月1日から運用開始しています。つまり、取手市の分譲マンションは、いま申請しようと思えば申請できる状態にあります。「申請できる街」なのです。
対象は、市内にある既存の区分所有された分譲マンションです。申請できるのは、マンション管理組合の管理者等(理事長など)です。認定を受けると、市場価値の向上が期待できるほか、このあと説明する固定資産税の特例措置や、融資の金利引下げなどが利用できる、と市も明記しています。
認定基準は「国の基準そのまま」――取手市の上乗せはありません
取手市は、認定基準についてこう書いています。「国土交通省告示で定められた基準のとおりです。(市独自の基準はありません)」。
これは地味ですが、管理組合にとって大きな安心材料です。市が独自のハードルを追加していないので、全国共通の国の基準さえクリアすれば認定される。ほかの市の事例やマニュアルがそのまま参考にできる、ということです。取手市のホームページには、認定基準をまとめた「管理計画の認定基準(茨城県)」というPDFも用意されています。
国の認定基準を、理事長の目線でおおまかに噛みくだくと、次のような柱になります。
第一に、管理組合の運営。管理者等(理事長など)が定められ、監事も置かれ、集会(総会)が年1回以上ちゃんと開かれていること。第二に、管理規約。適切に定められ、緊急時の対応や、組合員名簿・修繕等の情報開示についても規定されていること。第三に、管理組合の経理。管理費と修繕積立金の会計が分かれ、区分経理されていること。第四に、いちばん実務的に大事な長期修繕計画。計画期間が30年以上あり、その中に大規模修繕工事が2回以上含まれ、かつ7年以内に見直されたものであること。そして、その計画に見合った修繕積立金が設定されていること。第五に、組合員名簿・居住者名簿を備え、1年に1回以上更新していること。
こうして並べると、これは「認定のための特別なハードル」というより、「そもそも健全な管理組合の姿」そのものです。認定を目指す過程で、管理が自然と整っていく。私はこれこそが認定制度の一番の価値だと考えています。
申請は「事前確認 → 市へ申請」の流れ。市の手数料は無料です
取手市が案内している認定手続きの流れは、次のとおりです。
まず、総会での合意が出発点です。認定申請を行うには、管理組合の総会で認定申請の承認を得る必要があります。ここは管理組合ならではのステップですので、総会のスケジュールから逆算して動きましょう。
次に、事前確認です。市に認定申請を行う前に、認定基準に適合しているかどうかの確認を、公益財団法人マンション管理センターに依頼します。基準を満たすと認められると、「管理計画認定手続支援サービス」という電子システムを通じて、マンション管理センターから「事前確認適合証」が発行されます。
最後に、市への認定申請です。都市計画課の窓口で申請します(先ほどの支援サービスを通じてオンラインで申請することも可能です)。審査が完了すると、市から管理計画認定通知が発行されます。
費用について、取手市は明快に書いています。「取手市への申請手数料は無料です」。ただし注意として、公益財団法人マンション管理センターが運用する支援サービスのシステム使用料と事前確認審査料が別途かかります。ここは「市に払うお金はゼロ、事前確認の実費だけがかかる」と整理して理解しておきましょう。認定の有効期限は、認定を受けた日から5年間です。
窓口は、取手市役所の都市計画課です。都市計画課は市役所の「分庁舎」内にあり、本庁舎とは場所が違いますのでご注意ください(住所は取手市西2-35-3、電話は0297-74-2141)。制度の入口として、まずここに一本電話を入れるところから始めるのが、いちばんの近道です。
なお取手市は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律にもとづく「茨城県マンション管理適正化推進計画」を、茨城県と共同で作成しています。取手市のマンション施策は、この県との共同の枠組みの上に成り立っている、という点も知っておくとよいでしょう。
制度2:マンション長寿命化促進税制――取手市は「3分の1減額」、しかも期限が正確
大規模修繕をやると、翌年度の固定資産税が3分の1減ります
ここが、取手市の管理組合にとって、いちばん現金メリットの見えやすい制度です。
マンション長寿命化促進税制とは、一定の要件を満たすマンションが、長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合に、工事完了の翌年度分の家屋にかかる固定資産税を減額する制度です。取手市の場合、減額の範囲は「翌年度分の固定資産税(家屋分)の3分の1」で、住宅1戸あたり100平方メートル相当分まで(共用部分も含みます)が対象です。
正直にお伝えすると、この「3分の1」という割合は、国が示す標準的な水準です。日立市やひたちなか市のように「2分の1」まで踏み込んでいる市もあり、それらと比べると取手市は控えめです。ただ、それでも翌年度の固定資産税が3分の1減るのは、決して小さくありません。大規模修繕という大きな決断の背中を、確かに押してくれる制度です。
なお、都市計画税は減額の対象外です。また、耐震改修工事・バリアフリー改修工事・省エネ改修工事などの固定資産税減額とは、併せて適用することはできません。そして、過去にこの制度で減額を受けている場合、2回目の適用は受けられません。ここは「一世代に一度の切り札」だと考えておきましょう。
取手市の強み――市のページが「国の2年延長」を正しく反映しています
私がこの制度で取手市を評価しているのは、市のホームページが正確だという点です。
この長寿命化促進税制は、もともと令和5年度に始まった制度で、当初の対象期間は「令和5年4月1日から令和7年3月31日まで」でした。その後、国の税制改正で対象期間が2年延長され、いまは令和7年4月1日から令和9年3月31日までの工事が対象です。
ところが、この延長を市のページに反映しきれていない自治体が、実は少なくありません。古い期限のまま載っていて、「もう終わった制度だ」と誤解されてしまうのです。取手市のマンション長寿命化修繕に関する固定資産税減額のページは、更新日が2026年(令和8年)7月21日で、対象期間を「令和7年4月1日から令和9年3月31日まで」と正しく記載しています。制度が生きていることが、市の一次情報ではっきり確認できる。これは申告する管理組合にとって、大きな安心材料です。
要件は「3つの防水・塗装工事を一体で」――ここを外すと減額されません
減額を受けるための要件を、正確に押さえましょう。取手市のページには、次のように書かれています。
まず、大規模修繕工事の内容です。次の3つが、同一の工事請負契約の中で行われるなど、一体として扱われる工事である必要があります。
- マンションの外壁の修繕または模様替(外壁塗装等工事)
- 直接外気に開放されている廊下・バルコニーなどの防水措置のための修繕または模様替(床防水工事)
- 建物の屋上・屋根・ひさしなどの防水措置のための修繕または模様替(屋根防水工事)
ここが実務上いちばん大事なポイントです。「外壁だけ塗り替えました」「屋上防水だけやりました」では、この税制の対象になりません。外壁・床防水・屋根防水の3つを、ひとつの大規模修繕として一体で実施する必要があります。私が管理組合に「どうせやるなら、この3点をワンセットで計画に組み込みましょう」と必ずお伝えしているのは、まさにこの税制の要件に合わせるためです。
そのほかの要件は次のとおりです。築後20年以上が経過している、総戸数10戸以上のマンションであること。過去に大規模修繕工事を1回以上、適切に行っていること(複数回に分けて行った場合も対象になります)。そして、長寿命化に資する大規模修繕工事を適切に実施するために必要な修繕積立金が確保されていること。管理計画認定マンションの場合は、令和3年9月1日以降に、修繕積立金を認定基準未満から認定基準以上に引き上げていること、が積立金確保の要件になります(申告時に証明書が必要です)。
申告は、大規模修繕工事が完了してから3か月以内に、必要書類をそろえて市役所の課税課(資産税)へ提出します。工事が終わってから慌てないよう、着工前の段階で「この工事は税制の対象になるか」を、あらかじめ課税課(電話0297-74-2141)に確認しておくことを強くおすすめします。
制度3:住宅金融支援機構「マンションすまい・る融資」――積立金が足りないときの補完
大規模修繕を前にして、いちばん多いお悩みが「修繕積立金が足りない」というものです。そこで力になるのが、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資(マンションすまい・る融資)です。これは管理組合が申し込める、共用部分の工事のための公的な融資制度です。
2026年度の案内によると、この融資には、認定マンションにとって有利なポイントがいくつかあります。まず、管理計画認定を取得しているマンションが一定の工事を行う場合、返済期間を最長35年とすることができます。さらに、浸水対策工事や省エネルギー対策工事を実施する場合は、それぞれ0.2パーセントずつ金利を引き下げることができます。融資金利は、借入申込み時の金利が全期間固定で適用されます。
ここでも、制度1の「管理計画認定」が効いてくることに気づいていただけると思います。認定を取ると、税制だけでなく融資でも優遇される。認定は、取手市の管理組合にとって「いろいろな扉を開ける共通のカギ」なのです。
融資には、公益財団法人マンション管理センターによる債務保証を利用でき、あわせて「マンションすまい・る債」で計画的に積立金を運用する仕組みもあります。「借りる」だけでなく「貯める」側も整えておくと、次の大規模修繕がぐっと楽になります。
正直に言います――「使えそうで使えない」制度も、ちゃんとお伝えします
ここからは、取手市のホームページで見かけるものの、分譲マンションの共用部大規模修繕には使いにくい・使えない制度を、正直に整理します。「あるはずだ」と探し回って時間を無駄にしないために、あえて書いておきます。
住宅リノベーション補助金――対象は自己居住・専有部です
取手市には「住宅リノベーション補助金」があります。工事費の10パーセント(上限30万円、加算を含めて最大55万円)が出る、なかなか手厚い制度です。マンションも居住用床面積40平方メートル以上なら対象に入っており、対象工事には屋根・外壁の塗り替えなども含まれます。
ここだけ見ると「共用部の大規模修繕にも使えるのでは」と期待してしまいますが、この補助金は、中古で購入した自宅を自分が住むために改修するかた向けの制度です。市街化区域内にあること、自己居住用であること、住宅の登記簿に所有者として登記されていること、などが要件になっています。つまり、管理組合が共用部全体を大規模修繕する場面ではなく、区分所有者の個人が、自分の部屋(専有部)を直す場面で使う補助金だと理解してください。制度の期限は令和10年3月31日までです。
区分所有者の中に「中古で買った部屋を、これからリフォームする」というかたがいれば、その個人にとっては使える可能性があります。管理組合として案内するなら、そういう位置づけです。
木造住宅耐震改修費補助――RC造・SRC造マンションは対象外です
取手市は「令和8年度木造住宅耐震改修費または耐震建替費の補助」を行っています。工事費の5分の4または115万円のいずれか少ない額という、かなり手厚い補助です(募集は先着1棟、申込期間は令和8年6月1日から8月31日まで)。
ただし、対象は昭和56年5月31日以前に建築された、地上2階以下の木造一戸建て住宅などに限られます。鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のマンション共用部は、この補助の対象外です。ここを勘違いして期待してしまう理事長さんが時々いらっしゃるので、はっきりお伝えしておきます。
とはいえ、旧耐震のマンションが打つ手がないわけではありません。耐震改修促進法という法律には、要耐震改修認定を受けたマンションについて、共用部分の耐震改修工事の決議要件を、通常の「各4分の3以上」から「各過半数」に緩和する仕組みがあります。旧耐震のマンションで耐震補強を進めたい場合、この決議緩和は大きな武器になります。まずは市の建築指導課(分庁舎2階、電話0297-74-2141)に相談してみてください。
太陽光・蓄電池などの省エネ補助――基本は個人住宅向けです
取手市の環境対策課は、住宅用太陽光発電システムの補助金や、蓄電池を含む自立・分散型エネルギー設備導入事業費補助金など、再生可能エネルギー関連の補助を用意しています(住宅用太陽光は、令和8年度分の受付が令和8年3月17日午前9時から始まる案内が出ています)。
これらは基本的に、住宅における温室効果ガス削減を目的とした個人住宅向けの制度です。分譲マンションの共用部での活用が可能かどうかは、募集要項や年度ごとの予算枠によって変わり、私の側で断定はできません。管理組合として共用部にこうした設備を検討する場合は、必ず事前に環境対策課(電話0297-74-2141)へ、管理組合名義での申請が可能かどうかを確認してください。年度ごとに予算枠に達し次第終了する制度が多いので、動くなら早めがよいです。
取手市のマンション事情――「まとまって修繕期が来ている」という現実
ここで、取手市という街の特徴を、修繕の観点から少し整理させてください。
取手市は、高度成長期からバブル期にかけて、常磐線沿線のベッドタウンとして大きく発展しました。駅前や団地エリアに、当時の「新しい住まい」として分譲マンションが数多く供給されました。その建物が、いま一斉に築40年から50年を迎えつつあります。
これが何を意味するか。建物の劣化の波が、街全体でほぼ同じ時期に来ているということです。外壁のタイルが浮いてくる(叩くと「ポンポン」と軽い音がします。これを「浮き」と呼び、放置すると剥落=落下の危険につながります)、屋上防水が寿命を迎える、鉄部の塗装が錆びてくる――こうした症状が、あちこちのマンションで同時に表面化しています。
そして、多くの管理組合が同じ悩みを抱えます。「2回目、3回目の大規模修繕が近いのに、修繕積立金が足りない」。当初の積立計画が甘かったマンションほど、この局面で苦しみます。私が取手市の管理組合に、「まず管理計画認定を取り、税制と融資という公的な仕組みをフルに使いましょう」と繰り返しお伝えしているのは、この街の建物事情を踏まえてのことです。
修繕積立金が足りないとき――理事会で検討したい4つの打ち手
「積立金が足りない」と分かったとき、選択肢は大きく4つあります。理事会で、この4つを机の上に並べて議論してみてください。
第一に、積立金の値上げです。いちばん王道ですが、住民合意のハードルは高い。ただし、先ほどの長寿命化促進税制の要件に「積立金を認定基準以上に引き上げていること」が入っていることを思い出してください。値上げは、税制メリットへの入場券でもあるのです。
第二に、一時金の徴収です。工事の直前に各戸から集める方法ですが、負担感が大きく、これも合意が難しい局面が多いです。
第三に、融資の活用です。先ほどのマンションすまい・る融資などを使い、工事を先に行って、返済を積立金で賄っていく方法です。「いま直さないと危険」という緊急性がある場合に有効です。
そして第四に、私がいちばん強調したいのが、工事費そのものを下げることです。積立金を増やす努力と同じくらい、「出ていくお金を減らす」努力が効きます。ここで効いてくるのが、次にお話しする工法の選択です。
工事費を下げる本命――足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法
大規模修繕の費用の中で、意外と大きな割合を占めるのが足場代です。建物の全面に足場を組むと、それだけで数百万円から、規模によっては一千万円を超えることもあります。しかも、足場を組んでいる間は日当たりや防犯の面で住民の生活にも影響が出ます。
私たち明誠は、この足場の問題に対して、3つの工法から建物にとってベストなものを選べる体制を持っています。
ひとつめが、通常の足場工法です。建物の全面に仮設足場を組む、いちばんオーソドックなやり方です。工事範囲が広く複雑な建物では、いまも足場が最適な場面は多くあります。
ふたつめが、ロープアクセス工法(無足場工法)です。屋上から専用のロープで作業員が降りながら、外壁の補修や塗装、防水を行う工法です。足場を組まないため、足場代を大きく削減でき、工期も短くできます。取手市に多い、部分的な補修や、限られた面の塗り替えでは、この工法が費用面で威力を発揮します。ロープアクセス工法の詳しい内容は、ロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。
みっつめが、ハイブリッド工法です。これは、足場が要る面には足場を組み、ロープアクセスで対応できる面はロープで行う、という「使い分け」です。建物全体を一律の工法で縛らず、部位ごとに最適解を選ぶことで、総額を抑えます。私は大規模で複雑な建物ほど、このハイブリッドを提案するようにしています。大規模修繕の総合的な進め方については、大規模修繕工事のご紹介もあわせてご覧ください。
「足場を組まないと工事はできない」と思い込んでいる管理組合は、まだまだ多いです。しかし、工法の選択肢を持っているだけで、同じ工事が数百万円単位で変わることがあります。これは、脅しでも売り込みでもなく、私が現場で二十年見てきた事実です。ピンポイントの補修で足りる場合の考え方は、ピンポイント補修という選択肢でも紹介しています。
モデルケースで考える――「戸あたり」で見ると分かりやすい
制度と工法の話を、数字で体感していただくために、取手市に多いタイプの建物を想定した、2つのモデルケースで考えてみます。あくまで一般的な想定に基づく試算で、実際の金額は建物の状態によって変わりますが、考え方の参考にしてください。
ケースA:取手駅周辺、築28年・11階建て・48戸・新耐震のマンション
外壁・床防水・屋根防水を一体で行う、標準的な2回目の大規模修繕を想定します。全面足場で見積もると総額はおよそ9,000万円。これをハイブリッド工法に切り替えて足場を必要な面に絞ると、総額はおよそ7,800万円まで下がる、という試算になります。差額はおよそ1,200万円。48戸で割ると、1戸あたりおよそ25万円の差です。さらに、この工事は3工事を一体で行っているので、管理計画認定と積立金の引き上げをそろえれば、長寿命化促進税制で翌年度の固定資産税が3分の1減額される対象になり得ます。
ケースB:市街地の築44年・5階建て・18戸・旧耐震のマンション
こちらは規模が小さく、限られた面の補修が中心になるケースです。全面足場では過剰になりがちなので、ロープアクセスを主体にした計画が有効です。旧耐震のため、耐震改修促進法の要耐震改修認定を取れば、共用部の耐震改修の決議要件が各過半数に緩和されます。積立金が薄い場合は、マンションすまい・る融資で工事を先行させ、返済を平準化していく――こうした組み合わせで、無理なく前に進められます。
数字を「戸あたり」に落とすと、住民説明会での納得感がまるで違います。私は理事長さんに、必ず「総額」と「戸あたり」の両方で資料を作りましょう、とお伝えしています。
制度を使う順番――逆算カレンダーで動きましょう
制度はたくさんありますが、使う順番を間違えると、せっかくのメリットを取り逃します。取手市の管理組合が動くなら、次の8ステップの順番がおすすめです。
第一に、建物診断を受け、いまの劣化状況と、必要な工事の全体像をつかむ。第二に、長期修繕計画を見直す(30年以上・大規模修繕2回以上・7年以内見直し、という認定基準に合わせる)。第三に、修繕積立金の水準を点検し、必要なら引き上げの検討を始める。第四に、マンション管理計画認定の事前確認を、マンション管理センターに依頼する。第五に、総会で認定申請と大規模修繕の方針を決議する。第六に、外壁・床防水・屋根防水を一体にした工事内容で、工法(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)を比較して発注する。第七に、必要に応じてマンションすまい・る融資を活用する。第八に、工事完了から3か月以内に、課税課へ長寿命化促進税制の申告を行う。
この順番の肝は、「認定と積立金の引き上げを、工事より前に段取りしておく」ことです。税制の申告は工事の後ですが、その資格づくりは工事の前から始まっています。総会は年に1回のことも多いので、逆算して1年から2年前には動き始めるのが現実的です。
住民合意を進める3つのコツ
制度と工法がそろっても、最後は住民の合意がなければ前に進みません。現場で見てきた、合意形成の3つのコツをお伝えします。
ひとつめは、「お金の話を、隠さず先に出す」こと。総額と戸あたり負担、そして使える制度(税制・融資)を、最初の説明会で正直に並べる。あとから小出しにすると、かえって不信感を招きます。
ふたつめは、「やらなかった場合のリスクを、具体的に見せる」こと。外壁タイルの浮きを放置すれば、剥落して通行人にケガをさせる恐れがあり、管理組合が責任を問われることもあります。「直すコスト」だけでなく「直さないリスク」を並べて示すと、判断が進みます。
みっつめは、「相談だけの段階から、専門家を入れる」こと。理事だけで抱え込まず、早い段階で診断や見積もりの妥当性を第三者にチェックしてもらう。これだけで、無駄な工事や過剰な金額を避けられることが多いです。
よくあるご質問(取手市のマンション管理組合向け)
Q. 取手市に、大規模修繕の工事費そのものへの補助金はありますか。
2026年7月時点で、市の一次情報を確認した限り、大規模修繕工事費に直接現金を出す市の補助金は確認できませんでした。代わりに、管理計画認定を土台とした固定資産税の減額(3分の1)や、機構融資の金利引下げが、実質的なメリットになります。
Q. 長寿命化促進税制は、いつまでの工事が対象ですか。
取手市のページ(更新日2026年7月21日)は、対象期間を令和7年4月1日から令和9年3月31日までと記載しています。国の2年延長が正しく反映されています。着工前に、最新の期限と要件を課税課(資産税)へご確認ください。
Q. 減額されるのは「3分の1」とのことですが、どのくらいの期間ですか。
減額されるのは、大規模修繕工事が完了した年の翌年度分の固定資産税(家屋分)で、1回限りです。住宅1戸あたり100平方メートル相当分まで(共用部分を含む)が対象です。都市計画税は対象外です。
Q. 外壁の塗り替えだけでも、税制の対象になりますか。
なりません。取手市の要件では、外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事の3つを、同一の工事請負契約の中で一体として行う必要があります。大規模修繕の計画段階から、この3点をワンセットで組み込んでおくことが大切です。
Q. 旧耐震のマンションですが、耐震の補助は使えますか。
取手市の耐震改修費補助は木造戸建てが対象で、RC造・SRC造マンションの共用部は対象外です。ただし、耐震改修促進法の要耐震改修認定を取れば、共用部の耐震改修の決議要件が各過半数に緩和されます。まずは建築指導課へご相談ください。
Q. 管理組合の運営や、見積もりの妥当性を相談できる窓口はありますか。
マンション管理計画認定制度に関する相談は、一般社団法人マンション管理士会連合会の相談ダイヤル(03-5801-0858、平日10時から17時)が利用できます。公益財団法人マンション管理センターも、管理や共用部リフォーム融資の相談に対応しています。
私たち明誠について
私たち明誠は、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を専門とする建設会社です。通常の足場工法、ロープアクセス工法(無足場工法)、そして両者を組み合わせたハイブリッド工法という3つの工法から、建物にとってベストなものを提案できる、日本でも数少ない会社です。
また、ロープアクセス工事としては日本で初めてとなるフランチャイズ展開も行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板工事など各分野の専門職が加盟しています。専門職が直接施工することで、中間マージンを削り、高品質と低価格を両立しています。詳しくは加盟店ネットワークのご紹介をご覧ください。
あわせて、私どもはJCSA(一般社団法人 全国建設業支援協会)を運営しています。全国の建設業者に向けて、経営支援情報の発信、オンラインセミナー、リアル交流会、ビジネスマッチングを行っている団体です。茨城県内の同業の方で、大規模修繕の技術や経営に関心のある方は、こちらものぞいてみてください。
取手市のマンションについて、「うちはどの工法が合うのか」「この制度は使えるのか」といったご相談は、お問合せフォームからお気軽にどうぞ。見積もりの前段階、総会に出す資料の整理だけでも、お力になれることがあります。
最後に、もう一度だけ。取手市は、高度成長期にたくさんの良いマンションが建った街です。その建物が、いま一斉に修繕の時期を迎えています。管理計画の認定を取り、税制で少し取り戻し、融資で資金を平準化し、工法で無駄を削る。この流れを順につないでいけば、大切な資産を、無理なく、確実に次の世代へ渡していけます。その道筋づくりを、ぜひ私たちにお手伝いさせてください。
出典・参考(すべて2026年7月時点)
- 取手市「マンション管理計画認定制度(令和6年4月1日運用開始)」 https://www.city.toride.ibaraki.jp/toshikeikaku/kurashi/sumai/sumai/manshonkanrikeikakuninteiseido.html
- 取手市「マンション長寿命化修繕に対する固定資産税の減額」 https://www.city.toride.ibaraki.jp/kazei-shisan/kurashi/zekin/koteshisan/daikibosyuuzen.html
- 取手市「住宅リノベーション補助金」 https://www.city.toride.ibaraki.jp/toshikeikaku/kurashi/sumai/sumai/hojosedo/jutakurenovation.html
- 取手市「令和8年度木造住宅耐震改修費または耐震建替費の補助」 https://www.city.toride.ibaraki.jp/kenchiku/kurashi/sumai/sumai/hojosedo/taishinhojo.html
- 取手市「住まい・土地の補助制度」 https://www.city.toride.ibaraki.jp/kurashi/sumai/sumai/hojosedo/index.html
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000121.html
- 住宅金融支援機構「2026年度お申込分 マンションすまい・る融資(マンション共用部分リフォーム融資)のご案内」 https://www.jhf.go.jp/files/topics/7113_ext_99_1.pdf
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資等の融資金利」 https://www.jhf.go.jp/kinri/kyouyoureform.html
- 公益財団法人マンション管理センター https://www.mankan.or.jp/


