
この記事で答える質問:神奈川県逗子市で賃貸マンション・賃貸ビルを持つオーナーが、2026年度(令和8年度)に実際に使える補助金はどれか? 結論から申し上げます。逗子市内の収益物件で「今すぐ動く価値がある」のは、神奈川県の住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金(第2期・9月7日受付開始、先着500件程度) と、逗子市既存住宅断熱改修等省エネ対策費補助金(高日射反射率塗装=遮熱塗装が対象製品として案内されている)、そして 国の賃貸集合給湯省エネ2026事業(1台あたり最大10万円) の3本です。一方で、県の既存住宅省エネ改修事業費補助金は「賃貸住宅は対象外」と公式Q&Aに明記されており、オーナーは使えません。
以下、逗子市・神奈川県・国の順に、対象・金額・期限・落とし穴を一次情報のリンク付きで整理します。あわせて、補助金を受け取ったあとの税務処理(雑収入計上/修繕費と資本的支出の分岐)と、逗子という土地の特性に合った工法選定まで踏み込みます。
2026年8月25日 更新
この記事のポイントまとめ
- 逗子市の収益物件で本命は「県の太陽光・蓄電池補助(賃貸共同住宅のオーナー申請可)」
- 県の第2期は令和8年9月7日8時30分開始・先着500件程度・9月30日締切という短期決戦
- 逗子市の断熱改修補助は高日射反射率塗装(遮熱塗装)が対象製品案内に含まれる
- 県の既存住宅省エネ改修補助は「賃貸住宅は対象外」と公式Q&Aに明記
- 補助金は受給時に雑収入(益金)計上。修繕費か資本的支出かで手残りが変わる
1. 結論:逗子市の収益物件オーナーが「今」動くべき制度は3つ
私は20年近く、東京・神奈川一円のマンションやビルの改修現場に立ってきました。オーナーさまとお話ししていて一番もったいないと感じるのが、「補助金があるのは知っていたが、締切を1週間過ぎていた」というケースです。制度そのものより、受付方式と締切日のほうが実務では効きます。
2026年8月25日時点で、逗子市内の賃貸マンション・賃貸ビルのオーナーが使える可能性のある制度を、優先度順に並べると次のようになります。
| 優先度 | 制度名 | 実施主体 | オーナー(賃貸)の対象可否 | 補助額の目安 | 直近の期限 |
|---|---|---|---|---|---|
| ★★★ | 令和8年度神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金 | 神奈川県 | 可(賃貸共同住宅を所有する個人・法人) | 太陽光7万円/kW+蓄電システム15万円/台 | 第2期 令和8年9月7日8:30受付開始/9月30日まで(先着500件程度) |
| ★★★ | 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 経済産業省・資源エネルギー庁 | 可(賃貸集合住宅のオーナー等) | 5〜7万円/台(排水工事等加算で最大8〜10万円/台) | 予算上限到達まで |
| ★★☆ | 令和8年度逗子市既存住宅断熱改修等省エネ対策費補助金 | 逗子市 | 要確認(「市内の住宅に省エネ改築工事を実施する方等」) | 令和7年度は材料費・労務費の1/3・上限20万円 | 予算上限到達まで(令和8年4月17日受付開始) |
| ★★☆ | 緊急輸送道路の沿道建築物耐震化補助 | 逗子市 | 可(所有者または管理者/市税滞納なし) | 診断費用または床面積×3,600円/㎡の低い額×2/3、1棟上限120万円 | 当該年度2月末までに診断完了・報告 |
| ★☆☆ | 令和8年度再エネ・省エネ・蓄エネ機器導入費補助金 | 逗子市 | 要確認(住宅要件) | 機器ごと | 予算上限到達まで |
| ー | 令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金 | 神奈川県 | 不可(賃貸住宅は対象外) | ー | ー |
この表の意味するところは単純です。逗子市単独の制度は「住宅」を軸にしており、賃貸という属性で読み替えが必要な一方、県の太陽光・蓄電池補助と国の給湯器補助は、賃貸オーナーを名指しで対象にしている。だから優先度が違う、ということです。
ここからが本題です。1本ずつ、実務で使える粒度まで分解していきます。
2. 【本命①】神奈川県の太陽光・蓄電池補助は「賃貸共同住宅のオーナー」が名指しで対象
2-1. 賃貸オーナーが申請できる、数少ない県制度
令和8年度神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金は、申請できる者を次のように定めています。
【戸建住宅】補助対象住宅を所有又は区分所有する個人
【共同住宅】県内の分譲共同住宅の管理組合、県内の賃貸共同住宅を所有する個人又は法人
(出典:神奈川県|令和8年度神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金)
戸建住宅は「賃貸住宅を除く」と明記されている一方、共同住宅については賃貸を所有する個人・法人が正面から対象です。区分所有ではなく一棟所有のオーナーが、自分の名前で申請できる。この点だけでも、逗子市内でアパート・マンションを一棟持っている方は検討の価値があります。
2-2. 補助額:出力と台数で機械的に決まる
| 設置機器 | 補助対象経費 | 補助額 |
|---|---|---|
| 太陽光発電設備 | 設備費・設置工事費 | 発電出力1kWあたり7万円 |
| 蓄電システム等 | 設備費・設置工事費 | 導入台数1台あたり15万円 |
(出典:同上。補助対象経費を上限とします)
発電出力は、太陽電池モジュールの公称最大出力の合計値と、パワーコンディショナーの定格出力合計値のいずれか低いほうで判定されます。ここを勘違いすると見込み額がずれるので、見積段階で施工会社に両方の数字を出させてください。
蓄電システムは「台数(パッケージ型番ごと)」で数えます。蓄電池ユニットの数ではない、と公式Q&Aで明示されています。10kWの太陽光と蓄電システム1台なら、70万円+15万円=85万円。一棟あたりの初期投資に対して、決して小さくない金額です。
2-3. 最大の論点は「先着500件・9月30日締切」という受付方式
第1期はすでに終了しています。第2期の条件は次のとおりです。
- 受付開始:令和8年9月7日(月)午前8時30分
- 申請期限:令和8年9月30日(水)
- 方法:電子申請システムのみ。郵送・持込は受け付けない
- 件数:先着順、受付可能件数500件程度
- 注意:電子申請上で「完了」になっていても、500件を超過してからの申請は不受理になる可能性がある
(出典:神奈川県|同上ページ 新着情報 令和8年8月18日)
この記事を公開している2026年8月25日から数えて、受付開始まで13日です。しかも先着順。第1期は令和8年5月11日の受付開始からわずか1〜2日で予算額に達する見込みとなり、5月12日で締め切られています。同じ速度で動くなら、第2期の500件も数日で埋まる可能性を前提に準備すべきでしょう。
2-4. 実務上の落とし穴を4つ
(1)交付決定前に着手したら1円も出ません
「着手」とは、太陽光発電を住宅屋根等に物理的に設置する工事を開始した時点を指します。契約日そのものは着手にあたらず、受付開始日より前の契約でも問題ありません。ただし審査に2〜3か月程度かかることがあり、県は「交付決定が間に合わない場合は、着手を後ろ倒しにしていただく必要があります」と明記しています。工程を先に組んでしまうと詰みます。
(2)代行申請ができません
「申請者ご本人による申請が必要です。施工事業者等による代行申請はできません」とされ、施工業者の法人アカウントで申し込むなど代行申請が疑われる申請は不受理となる可能性があります。オーナーご自身、または法人であれば法人として、電子申請システムを操作する必要があります。9月7日の朝8時30分に誰がパソコンの前にいるのか、いま決めておいてください。
(3)旧耐震の物件は耐震基準適合証明書が要ります
昭和56年6月1日より前に建築確認を得て着工した共同住宅の場合、現行の耐震基準に適合させる改修工事が施工されていることを証する書類の写しが必要です。構造計算書は不可。今年度中に耐震改修を実施する場合は実績報告時の提出でも可、とされています。築45年級の物件をお持ちの方は、ここが最大のボトルネックになります。
(4)事業完了は令和9年3月31日まで
設置工事の完了、代金の支払完了、住宅の引渡しのうち最も遅い日が事業完了日です。年度末までに支払いまで終える必要があります。クレジットカード決済の場合、引き落とし日が支払日として扱われる点も要注意です。
賃貸共同住宅を所有する法人の場合は、登記事項証明書(発行3か月以内、登記情報提供サービスのダウンロードは不可)と、役員等全員の氏名一覧表(県の指定様式)が追加で必要になります。書類集めに1〜2週間はみておいたほうが安全です。
3. 【本命②】国の賃貸集合給湯省エネ2026事業は「オーナー等」が補助対象者
給湯器は、入居者からのクレームが最も直接的に発生する設備です。冬場に1台壊れれば、その部屋の満足度は一気に落ちます。にもかかわらず、築20年を超えたアパートで給湯器がまとめて更新されている物件は、私の実感としてそう多くありません。
賃貸集合給湯省エネ2026事業(令和7年度補正予算「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」) は、既存賃貸集合住宅における賃貸オーナー等によるエコジョーズ等の取替を促進するための制度です。
- 補助対象者:賃貸集合住宅のオーナー等(給湯器の交換工事の発注者。リース利用を含む)
- 補助額の目安:エコジョーズ/エコフィールへの交換で、追い焚きなし5万円/台、追い焚きあり7万円/台。一定の排水工事を行う場合、最大8万円/台・10万円/台まで加算
- 申請主体:補助金の申請手続きと還元は「賃貸集合給湯省エネ事業者」が行う。オーナーが直接申請することはできない
(出典:資源エネルギー庁|賃貸集合給湯省エネ2026事業、賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト)
20戸の賃貸マンションで追い焚きありの給湯器を一斉更新すれば、7万円×20台=140万円。排水工事の加算が乗れば200万円に届く計算です。この規模になると、大規模修繕の資金計画そのものに影響します。
実務のポイントは「登録事業者経由でしか申請できない」ことです。付き合いのある管理会社や設備業者が事業者登録しているかどうかを、まず確認してください。登録していない場合、その業者に発注した時点で補助対象から外れます。
なお、住宅省エネ2026キャンペーンの全体像(先進的窓リノベ2026事業、みらいエコ住宅2026事業を含む)は国土交通省・経済産業省・環境省の合同ポータルで確認できます。補助対象製品の型番検索もこのサイトからたどれます。
4. 【逗子市】既存住宅断熱改修等省エネ対策費補助金:遮熱塗装が対象製品案内に入っている
4-1. 大規模修繕と直結する数少ない市の制度
令和8年度逗子市既存住宅断熱改修等省エネ対策費補助金は、令和8年4月17日から申請受付を開始しています。市は「予算上限に達しましたら申請期間終了前に受付を終了します」と明記しており、8月末時点の残枠は環境都市課への確認が必須です。
私がこの制度に注目する理由は、補助対象製品の案内に次の一文があるからです。
高日射反射率塗装
一般社団法人日本塗料検査協会ホームページ→認証業務→認証登録の一覧
※日射反射率が50%以上にあたるかは塗装業者等へ別途ご確認ください。
(出典:逗子市|令和8年度逗子市既存住宅断熱改修等省エネ対策費補助金)
高日射反射率塗装、いわゆる遮熱塗装です。これは窓リフォームの話ではなく、外壁・屋上の塗り替え、つまり大規模修繕の本丸に関わります。外壁塗装や屋上防水のタイミングで遮熱仕様を選べば、補助対象に乗る可能性がある。この論点を知らずに一般的な塗料で発注してしまうオーナーさまは、正直かなり多いです。
補助額は、令和7年度は材料費・労務費の3分の1(上限20万円)とされていました。令和8年度の金額は市が公開している申請の手引き(令和8年4月改定)で必ずご確認ください。金額そのものは大規模修繕の総額から見れば大きくありませんが、「遮熱仕様にすると補助が乗る」という事実が、仕様決定の判断材料になるという意味で価値があります。
4-2. 「市内の住宅」要件と賃貸物件の関係
この制度は「市内の住宅に省エネ改築工事を実施する方等」を対象としています。賃貸共同住宅がどこまで読み込めるかは、申請の手引きと交付要綱の定義次第です。着工前に、環境都市部環境都市課(電話:046-872-8123)へ物件の権利関係を伝えて確認してください。ここを曖昧にしたまま工事を始めると、後戻りができません。
また、逗子市ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス導入費補助金との重複受給はできない一方、国や県が実施する補助金との併用は可能と市が明記しています。県の太陽光・蓄電池補助と組み合わせる設計は、制度上は成立します。
5. 【逗子市】緊急輸送道路の沿道建築物耐震化補助:築古ビルオーナーの「診断費用」を圧縮する
築古の賃貸ビルをお持ちのオーナーさまに、必ずお伝えしている制度です。
対象建築物(1・2の両方を満たすこと)
- 昭和56年5月31日以前に建築確認を得て着工した建築物で、逗子市地域防災計画において第一次緊急輸送道路と指定されている道路の沿道にあるもの
- 建築物の高さが、前面道路幅員に応じた基準の高さを超えるもの
補助対象者(1・2の両方を満たすこと)
- 補助対象建築物の所有者または管理者で、市税を滞納していない者(分譲型共同住宅の場合は市税納付要件はないが、管理組合の集会等において耐震診断の実施に関する決議が必要)
- 交付決定通知日以降、当該年度の2月末日までに耐震診断を終了し、完了実績報告書を提出できる者
補助額
耐震診断に要した費用、または床面積に3,600円/㎡を乗じた額のいずれか低い額の3分の2(千円未満切捨て)。ただし1棟当たりの補助金限度額120万円。
賃貸として一棟所有しているオーナーは「所有者」に該当しますから、市税の滞納がなければ申請の道はあります。ただしこの制度が補助するのは「耐震診断」であって、耐震改修工事そのものではありません。ここを取り違えると、期待値が大きくずれます。
それでも意味は小さくありません。旧耐震の賃貸ビルは、テナント誘致でも売却でも「Is値がわからない」ことが減点材料になります。診断結果は、出口局面で買主に提示できる客観的な資料です。1,000㎡のビルなら3,600円×1,000=360万円が算定基礎の上限、その3分の2で240万円、ただし上限120万円。診断費用の相当部分がカバーされる計算になります。
注意点として、事前に申請手続きが必要で、契約前に必ずまちづくり景観課(電話:046-872-8124)へ相談することが求められています。「先に業者と契約してしまった」が一番多い失敗パターンです。
6. 【重要】オーナーが「使えない」制度も先に知っておく
補助金の記事は「使える制度」ばかり並べがちですが、実務では使えない制度を早く諦めることのほうが、時間の節約になります。
6-1. 神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金 → 賃貸は対象外
県の公式Q&Aに、こう書かれています。
Q1.賃貸住宅の賃借人が改修する場合、補助対象となるか。
A1.賃貸住宅については、補助対象外です。
(出典:神奈川県|令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金)
さらに対象事業の要件として「申請者の方が常時居住し、所有または区分所有していること」と明記されています。オーナーが住んでいない収益物件は、この時点で外れます。補助対象経費の3分の1・上限15万円、9月7日8時30分から先着25件程度という枠ですが、賃貸経営では検討対象になりません。
ただし、オーナーご自身の自宅が逗子市内にあるなら、こちらは正面から使えます。事業用と個人用は分けて考えてください。
6-2. マンション管理計画認定制度 → 一棟所有オーナーには関係しない
逗子市は管理計画認定制度を運用しており、市独自の基準は設けていません。認定を受けたマンションは、住宅金融支援機構の融資制度(フラット35や共用部のリフォーム融資)の金利引き下げといったメリットを受けられます。
ただし申請できるのは管理組合の管理者等です。一棟をまるごと所有している賃貸オーナーには管理組合が存在しないため、この制度の対象外になります。逆に、分譲マンションの複数戸を投資目的で区分所有しているオーナーにとっては話が変わります。認定を取れば、その管理組合に属する住戸全体の売却時の評価に効いてくる可能性があるからです。理事会にどう働きかけるかは、区分所有オーナー固有の戦略になります。
なお逗子市は令和8年3月に逗子市マンション管理適正化推進計画を策定し、あわせて市税条例の一部改正についても市民説明会を実施しています。認定と税制の連動を市として設計している自治体である、という点は押さえておく価値があります。
6-3. 空き家流通促進補助モデル事業 → 令和8年6月30日で受付終了
逗子市の空き家流通促進補助モデル事業は令和8年6月30日までとされており、本記事公開時点では期間を過ぎています。空き家バンク登録物件の活用については、市民活動・起業の場合は上限30万円、その他の場合は費用の3分の2・最大20万円という枠組みが案内されていますが、個人の居住用住宅としての利用は対象外です。
(出典:逗子市|空き家流通促進補助モデル事業)
長期空室が続いている物件を「賃貸」ではなく「地域活用」に振り替える選択肢を持っているオーナーは、次年度の枠を待つ価値があります。
7. 補助金は「もらって終わり」ではない:オーナーが必ず押さえる税務3点
ここは、私が工事会社の立場で踏み込みすぎない範囲で、しかし必ずお伝えしている論点です。最終判断は必ず顧問税理士にご確認ください。
7-1. 補助金は受給時に雑収入(益金)計上になる
不動産所得を計算するオーナーであれば総収入金額に、法人であれば益金に算入されます。100万円の補助金を受け取っても、税引後の手残りは100万円ではありません。キャッシュフロー計画を立てるときは、実効税率を引いた額で見ておくのが安全です。
「国庫補助金等で取得した固定資産の圧縮記帳」の適用余地がある場合もありますが、要件が細かく、対象となる補助金の種類も限られます。ここは税理士マターです。
7-2. 修繕費か資本的支出かで、初年度の損金が桁違いに変わる
国税庁のタックスアンサーNo.1379では、一つの修理・改良などの金額が資本的支出か修繕費か明らかでない場合、次のいずれかに当てはまれば修繕費として処理できるとされています。
- その金額が60万円未満のとき
- その資産の前年末の取得価額のおおむね10パーセント相当額以下であるとき
(出典:国税庁|No.1379 修繕費とならないものの判定、国税庁|所得税基本通達〔資本的支出と修繕費等〕)
大規模修繕の実務では、外壁の再塗装やシーリングの打ち替えといった原状回復・維持管理の性格が強い工事は修繕費、遮熱塗装への仕様グレードアップや太陽光発電設備の新設のように資産価値を高める・耐用年数を延ばす工事は資本的支出、という整理になるのが一般的です。
ここで効いてくるのが見積書の作り方です。一式計上の見積書を1枚出されると、税務上の区分ができません。私は、工事項目ごとに数量・単価・仕様を分解した内訳書を必ずお出しするようにしています。区分の余地を残すためです。
7-3. 減価償却と出口戦略はセットで考える
太陽光発電設備を資本的支出として計上すれば、法定耐用年数に応じて償却が進みます。売却時には簿価が下がっている分、譲渡益が出やすくなる。逆に、修繕費で落としきった工事は簿価に乗りません。
「今年の節税」と「5年後の売却」は、たいてい逆を向きます。保有期間をどう見ているかで、同じ工事でも最適解が変わる。ここを税理士と詰めずに工事仕様だけ先に決めてしまうと、あとで後悔することになります。
8. 逗子という土地で、賃貸物件の劣化がどう進むか
制度の話が続いたので、現場の話をします。
逗子市は相模湾に面し、逗子海岸から徒歩圏に賃貸物件が広がっています。海が近いということは、塩害の影響を受けやすいということです。私が現場で見てきた範囲で言えば、海岸から1km圏の物件は、内陸の同築年数の物件と比べて、金物類の腐食進行が明確に早い。手すり、避難ハッチ、外部階段の鉄骨、屋上の笠木を留めるビス。こういう「見積書の隅に載る細かい項目」が、海沿いでは主役になります。
さらに逗子は起伏が激しく、擁壁の上に建つ物件、斜面地に建つ物件が少なくありません。逗子市が擁壁の点検やがけ地近接等危険住宅移転事業補助を独立したページで案内していること自体が、この土地の特性を物語っています。
斜面地・狭小敷地の物件は、足場が組みにくい。ここが、逗子の大規模修繕コストを押し上げる最大の要因です。
8-1. 入居率1%の差が、年間いくらのキャッシュフロー差になるか
外壁の汚れ、鉄部の錆、共用廊下の劣化。これらは内見時の第一印象に直結します。賃料8万円・20戸の物件で入居率が95%から90%に落ちれば、年間で8万円×1戸×12か月=96万円の減収です。入居率5%は、ほぼ100万円。大規模修繕の見積書に並ぶ「たかが数十万円の項目」と、この数字を並べて考えると、判断が変わってくるはずです。
築年数なりの劣化は、賃料の下落圧力として静かに効いてきます。表面利回りが変わらないうちに手を打てるかどうかが、10年後のNOI(実質賃料収入)を分けます。
9. 逗子の物件に、足場は本当に必要か──工法選定でコストが動く
ここから先は、私ども株式会社明誠のサービスに関わる話です。利益相反を避けるため、見出しで明確に区切ります。
9-1. 足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3択
大規模修繕といえば、建物を仮設足場ですっぽり囲むのが常識でした。しかし足場費用は、工事総額の20〜25%を占めることが珍しくありません。しかも斜面地や隣地との離隔が取れない敷地では、足場を組むこと自体に無理がある。
ロープアクセス工法(産業用ロープで作業者が壁面に降下し、足場を組まずに施工する無足場工法)を使えば、足場を架けずに外壁の補修・塗装・シーリング打ち替え・タイル補修が可能です。ロープアクセス工法の一般的な安全基準や技術的な解説は、姉妹サイトロープアクセスドットコムに詳しくまとめています。
私が実務で最も多く提案しているのは、実はハイブリッド工法です。バルコニー側や作業量の多い面には足場を架け、道路に面した狭い面や斜面側にはロープアクセスを充てる。部位ごとに工法を使い分けることで、足場費と工期の両方を圧縮します。
| 工法 | 逗子の物件での適性 | オーナー視点のメリット |
|---|---|---|
| 通常足場工法 | 平坦地・離隔の取れる敷地 | 作業量が多い面での生産性が高い |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 斜面地・狭小敷地・高層 | 足場費削減、工期短縮、入居者の生活影響が小さい |
| ハイブリッド工法 | 複雑形状・部位ごとに条件が異なる物件 | 総額最適化。足場が必要な面だけに足場を架ける |
工法の詳細は大規模修繕工事のご紹介、無足場施工についてはロープアクセス工法のご紹介にまとめています。
9-2. オーナー物件でロープアクセスが効く、もう一つの理由
分譲マンションと賃貸マンションで決定的に違うのは、「工事中の空室リスク」を誰が負うかです。分譲では住民が我慢して住み続けますが、賃貸では「足場で窓が開けられない」「防犯が不安」という理由で、更新のタイミングに退去が発生します。
足場は、防犯上の不安材料でもあります。3か月間、建物全体をメッシュシートで覆えば、内見に来た人の印象も当然落ちる。ロープアクセスなら、施工中の面だけが一時的に作業対象になり、建物全体を覆う期間が発生しません。募集を止めずに工事を進められるという意味で、賃貸オーナーにとっての価値は分譲より大きい、というのが私の実感です。
私どもは、ロープアクセス工事として日本で初めてのフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟しています。専門工種を直接手配できる分、中間マージンを圧縮した価格でご提案できます。
10. 逗子市の収益物件オーナーが、9月末までにやるべきこと
期限から逆算した具体的な行動を並べます。
〜8月末:現況把握
- 物件の建築確認年月日を確認する(昭和56年6月1日の前後で、県の補助要件が変わります)
- 屋根形状・面積を確認し、太陽光の設置可否と概算出力を施工会社に出させる
- 給湯器の設置年・型式を全戸分リストアップする
9月1日〜6日:書類準備
- 登記事項証明書を取得する(発行から3か月以内。登記情報提供サービスのダウンロードは不可)
- 法人の場合、役員等全員の氏名一覧表を県の令和8年度指定様式で作成する
- 太陽光・蓄電システムの型番が明記された見積書を取得する(型番が読み取れない申請は不受理の可能性)
- 神奈川県電子申請システムのアカウントを作成し、申請フォームプレビューで入力項目を事前確認する
9月7日(月)8時30分:県の電子申請
- オーナーご本人、または法人担当者が電子申請システムから申請(代行不可)
9月中:並行して進める
- 逗子市環境都市課(046-872-8123)に、断熱改修等省エネ対策費補助金の残枠と賃貸物件の取扱いを確認
- 旧耐震・第一次緊急輸送道路沿道の物件は、まちづくり景観課(046-872-8124)に耐震診断補助を契約前に相談
- 給湯器更新は、賃貸集合給湯省エネ事業者に登録済みの業者かどうかを確認
補助金は制度ごとに窓口も締切もバラバラです。逆に言えば、締切さえ押さえておけば、あとは書類の問題に落とせます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 逗子市で賃貸マンションのオーナーが直接申請できる補助金はどれですか?
A. 令和8年度神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金です。共同住宅については「県内の賃貸共同住宅を所有する個人又は法人」が申請者として明記されています(出典:神奈川県)。第2期は令和8年9月7日8時30分から先着500件程度、9月30日締切です。
Q2. 神奈川県の既存住宅省エネ改修補助は賃貸物件でも使えますか?
A. 使えません。県の公式Q&Aで「賃貸住宅については、補助対象外です」と明記され、対象事業の要件も「申請者の方が常時居住し、所有または区分所有していること」とされています(出典:神奈川県)。オーナーご自身の自宅であれば対象になり得ます。
Q3. 外壁塗装で逗子市の補助金は使えますか?
A. 令和8年度逗子市既存住宅断熱改修等省エネ対策費補助金では、補助対象製品の案内に「高日射反射率塗装」(日射反射率50%以上、日本塗料検査協会の認証登録一覧で確認)が含まれています。遮熱仕様を選ぶことで対象に乗る可能性があります。賃貸物件の取扱いを含め、着工前に環境都市部環境都市課(046-872-8123)にご確認ください。
Q4. 補助金を受け取ったら、税金はどうなりますか?
A. 受給した補助金は雑収入(法人の場合は益金)として計上する必要があります。また、工事費が修繕費になるか資本的支出になるかで初年度の損金算入額が大きく変わります。国税庁のタックスアンサーNo.1379では、60万円未満または前年末取得価額のおおむね10%相当額以下であれば修繕費とすることができるとされています(出典:国税庁)。個別の判断は顧問税理士にご確認ください。
Q5. 逗子市の耐震化補助は、賃貸ビルでも対象になりますか?
A. 緊急輸送道路の沿道建築物耐震化補助は「補助対象建築物の所有者または管理者で市税を滞納していない者」を対象としており、賃貸として一棟所有しているオーナーも該当し得ます。ただし補助されるのは耐震診断費用であり、耐震改修工事そのものではありません。補助額は診断費用または床面積×3,600円/㎡の低い額の3分の2、1棟上限120万円です(出典:逗子市)。契約前にまちづくり景観課への相談が必要です。
Q6. 逗子の斜面地の物件でも大規模修繕はできますか?
A. できます。足場が組みにくい斜面地・狭小敷地こそ、ロープアクセス工法(無足場工法)が効く条件です。全面をロープアクセスにするのではなく、足場が架けられる面には足場を、難しい面にはロープアクセスを充てるハイブリッド工法で総額を最適化するのが実務的です。
制度は変わります。最新は必ず公式でご確認ください
本記事の内容は2026年8月25日時点で公開されている情報に基づいています。補助金制度は予算枠に達した時点で受付を終了することがあり、要件・金額・期限も年度途中で改定される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式ページと交付要綱・実施要領をご確認ください。
関連記事
同じシリーズで、他自治体のオーナー向け補助金も整理しています。自治体ごとに「賃貸が対象になるか」の線引きがまるで違うので、複数エリアに物件をお持ちの方は読み比べてみてください。
出典・参考資料
- 令和8年度神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金|神奈川県
- 令和8年度神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金|神奈川県
- 令和8年度逗子市既存住宅断熱改修等省エネ対策費補助金|逗子市
- 令和8年度再エネ・省エネ・蓄エネ機器導入費補助金|逗子市
- 緊急輸送道路の沿道建築物耐震化補助|逗子市
- マンションの管理計画認定制度について|逗子市
- 逗子市マンション管理適正化推進計画|逗子市
- 空き家流通促進補助モデル事業|逗子市
- 賃貸集合給湯省エネ2026事業|資源エネルギー庁
- 住宅省エネ2026キャンペーン【公式】
- No.1379 修繕費とならないものの判定|国税庁
- 所得税基本通達〔資本的支出と修繕費等〕|国税庁
- マンションストック長寿命化等モデル事業|国土交通省
補助金の締切は、待ってくれません。ただ、締切に追われて工法まで決め打ちしてしまうと、あとで「あの面は足場を組まなくてもよかった」という話になります。逗子で1棟お持ちのオーナーさまであれば、現地調査と、工法別の概算比較だけでも一度お出しします。補助金が使える部位と使えない部位を分けた見積書を見ていただければ、判断の材料は揃うはずです。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション・ビル大規模修繕/ロープアクセス工法(無足場工法)/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円でマンション・ビル・ホテルの大規模修繕工事を手がける改修会社。通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・両者を組み合わせたハイブリッド工法の3つから、建物特性に応じた最適な工法をご提案できます。ロープアクセス工事としては日本初となるフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板の各専門職が加盟しています。
最終更新:2026年8月25日


