大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

改修工事の値段が変わる|大成建設「建築利益率17%」報道と「居ながら施工」を、オーナー・管理組合はどう読むか【2026年9月】

改修工事の値段が変わる|大成建設「建築利益率17%」報道と「居ながら施工」を、オーナー・管理組合はどう読むか【2026年9月】

この記事の結論|「改修は新築より安い仕事」という前提が崩れつつある

先に結論をお伝えします。

長いあいだ、改修工事は建設業界のなかで「新築の合間にやる仕事」「単価の安い仕事」という扱いを受けてきました。私が現場に入った20年前は、まさにそうでした。ところがいま、業界最大手がその改修を「新築より利益率が高い本命事業」として名指しし、専門部署を増員しているのです。

これが発注者にとって何を意味するか。私の見立ては次の3点です。

  1. 改修工事の品質と管理レベルは、全体として上がる(大手が本気で人を入れるため)
  2. 改修工事の見積り単価は、下がりにくくなる(値引き前提の受注が減るため)
  3. 「安く出せる会社」と「高いが安心な会社」の二極化が進み、その中間が消える

つまり、発注者側は「相見積もりを取れば自然に安くなる」という時代の終わりに備える必要があります。備え方は1つしかありません。工事の中身を分解して読める状態にしておくこと、そして足場を前提としない見積り軸をもう1本持っておくことです。

大規模修繕の総工事費のうち、仮設足場費はおおむね1〜2割を占めます。ここを固定費として受け入れるか、変動させられる余地があると考えるかで、見積書の土台そのものが変わります。ロープアクセス工法(産業用ロープを使って高所へ直接アプローチする無足場工法)の一般的な安全基準や適用事例は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで解説しています。

以下、順を追ってご説明します。


何が報じられたのか|大手ゼネコンが「脱・新築」に舵を切った

報じられている事実関係

まず、報道内容を整理します。私が断定できない部分は、そのまま「報じられています」と記します。

項目 報じられている内容
報道時期 2026年8月〜9月(日本経済新聞ほか)
企業 大成建設
内容 建築事業の採算向上の軸を、既存建物の改修・リニューアル工事に置く
数値目標 建築利益率15%を最速2年で、その後17%も視野(相川善郎社長の発言として)
体制 改修(リニューアル)専門部署の増員
理由 大型再開発より地味だが利益率が高く、建設市況に左右されにくい
特徴 改修の多くは建物を稼働させたまま進める「居ながら施工」を伴う

(出典:日本経済新聞「大成建設、コツコツ稼ぎ建築利益率17% 成長の柱は改修工事」ビジネスジャーナル

「地味な仕事」が、なぜ最大手の本命になったのか

ここが本題です。

新築の大型プロジェクトは、受注額こそ大きいものの、工期が長く、その間の資材価格と労務単価の変動をまるごと請負側が抱え込みます。着工から竣工まで3年かかる案件で、途中で鉄骨が2割上がったらどうなるか。差額は基本的に施工会社の利益から出ていきます。ここ数年、大手ゼネコンが軒並み建築部門で採算を落としてきた最大の理由がこれです。

一方、改修工事は工期が数か月から1年程度です。見積り時点の価格と、実際に材料を買う時点の価格の距離が近い。物価が動く局面では、これが決定的に効きます。報道でも「短い工期、物価高に耐性」という表現が使われています(出典:日本経済新聞)。

私はこの話を聞いたとき、少し複雑な気持ちになりました。私たちのような改修専業の会社が20年やってきたことを、いま最大手が「これは儲かる」と言い出したわけです。正直に申し上げます。競争は確実に厳しくなります。ただ同時に、改修という仕事が正当に評価される時代になったのだと、素直に受け止めてもいます。


なぜいま改修なのか|発注者側から見た3つの構造要因

ゼネコンの都合だけの話ではありません。発注する側の建物が、そういう時期に入っているのです。

要因1:築40年超のストックが今後20年で3倍以上になる

国土交通省の最新統計によれば、築40年以上の分譲マンションは2025年末時点で約158.8万戸。これが20年後には約503.6万戸、およそ3.2倍に増える見込みとされています(出典:国土交通省「築40年以上のマンションストック数の推移」)。

時点 築40年以上のマンション戸数 2025年末比
2015年末(10年前) 約53.3万戸
2025年末(現在) 約158.8万戸
2035年末(10年後) 約313.1万戸 約2.0倍
2045年末(20年後) 約503.6万戸 約3.2倍

分譲マンションのストック総数は2025年末時点で約723.6万戸とされていますので、築40年超はすでにおよそ2割です(出典:国土交通省「分譲マンションストック数の推移」、割合は筆者算出)。

これは分譲マンションの数字ですが、賃貸マンション・オフィスビル・ホテルでも構図は同じです。新しく建てる建物より、直す建物のほうが圧倒的に多い。市場がそちらに寄るのは当然の帰結です。

要因2:リフォーム・リニューアル市場が数字として立ち上がった

国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査」は、建設業許可業者が受注した既存建築物の改修工事を四半期ごとに集計しています。2026年6月12日に公表された令和7年度計の数字が、この流れをはっきり示しています。

区分 令和7年度(2025年度)受注高 前年度比
合計 16兆4,104億円 18.7%増
住宅 4兆9,033億円 18.7%増
非住宅建築物 11兆5,071億円 18.6%増
うち共同住宅の共用部分 1兆1,507億円 19.7%増
うち発注者が管理組合 9,538億円 29.8%増

(出典:国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和7年度第4四半期受注分、令和7年度計)」

注目していただきたいのは最後の行です。管理組合が発注者となる工事が、1年で約3割伸びている。大規模修繕の発注が、統計に出るレベルで動いているということです。

改修はもはや「新築の余り仕事」ではなく、独立した巨大市場になりました。最大手が専門部署を増員する経営判断は、この数字の裏付けがあってのことだと私は見ています。

要因3:働き方改革で「工期の読みやすさ」が価値になった

2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が全面適用されました(出典:厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」)。

現場を回している人間として申し上げると、この規制の本当の影響は「残業が減る」ことではありません。遅れを人海戦術で取り戻せなくなったことです。以前なら「工期が押したら人を増やして土日で追い込む」で済んだものが、いまはできません。

すると何が起きるか。工期が読める仕事の価値が上がるのです。改修工事は既存図面と現況調査から工事範囲を絞り込めるため、新築より工程が読みやすい。ここも改修が選ばれる理由になっています。


「居ながら施工」とは何か|稼働させたまま直す技術と、その値段

今回の報道でいちばん注目してほしい言葉が、この「居ながら施工」です。

定義と、発注者にとっての意味

居ながら施工とは、建物を使い続けたまま行う改修工事のことを指します。オフィスビルならテナントに入居してもらったまま、マンションなら居住者が住んだまま、ホテルなら営業しながら直す。

なぜこれが高い技術と評価されるのか。理由は単純です。

制約 発注者にとっての価値
騒音・振動の制御が必要 クレーム・営業補償が発生しない
粉じん・臭気の管理が必要 入居者の健康・満足度が守られる
動線を分けて安全を確保 事故リスクを抑えられる
作業時間帯の制限 夜間・休日施工で日常が止まらない
部分ごとの工区分け 空室・休業を作らずに済む

発注者から見れば、「工事期間中の収入が止まらない」ということです。オフィスビルでテナントを一時退去させれば、賃料収入がその期間まるごと消えます。ホテルなら客室が売れません。この機会損失と比べれば、居ながら施工の割増分など安いものだ——という判断が働きます。

だからこそ、施工側にとっては価格決定力の源泉になるのです。報道でも、この技術的難易度の高さが発注者側の経済合理性と結びついたときに価格決定力に変わる、という趣旨で説明されています。

私の本音|これは私たちが20年やってきたことです

ここからが本題です。

「居ながら施工」という言葉が新しく聞こえるかもしれませんが、ロープアクセス工法は、そもそも居ながら施工を前提に発達してきた工法です。

足場を組むということは、建物の外周をぐるりと囲い、シートで覆うということです。すると次のことが起きます。

  • 全住戸・全テナントの窓が数か月間ふさがれる
  • バルコニーが物置になり、洗濯物が干せない
  • 足場からの侵入を警戒して窓を開けられない
  • 店舗であれば看板が隠れ、来客が減る
  • ホテルであれば眺望が売れなくなり、客室単価を下げざるを得ない

私はこれを「工事の副作用」と呼んでいます。そして20年見てきて一番悔しいのは、この副作用が見積書のどこにも金額として書かれていないことです。

ロープアクセス工法では、作業する面だけにロープを下ろします。北面を直しているとき、南面の住戸は普段どおりです。建物全体を止めずに、面ごとに直していける。これが構造的に「居ながら」なのです。

もちろん万能ではありません。この点は後段の比較表で正直に書きます。ロープアクセス工法の安全基準・適用範囲についてはロープアクセスドットコムにまとめていますので、あわせてご覧ください。当社の施工体制はロープアクセス工法のご紹介でご案内しています。


発注者にとってのグッドニュースとバッドニュース

報道を読んで、私が発注者の立場に立って整理したものが以下です。

グッドニュース(3つ)

  1. 改修の施工品質と安全管理の水準が、業界全体で底上げされる
    大手が専門部署に人を張るということは、施工計画書・品質管理記録・安全書類のレベルが標準化されるということです。中小の改修会社もそこに合わせざるを得なくなります。

  2. 「元施工データ」の活用が進む
    新築時に自社が施工した建物であれば、図面・配筋・下地の情報が残っています。調査コストが下がり、想定外の追加工事が減ります。管理組合にとっては「開けてみたら想定外でした」という追加請求のリスクが減るということです。

  3. 改修が「キャリアになる」ため、人材が流入する
    これは長期的には最大のメリットです。改修に優秀な若手が来るようになります。

バッドニュース(3つ)

  1. 値引き前提の受注が減る
    「利益率17%を目指す」と公言する会社は、赤字受注をしません。相見積もりで叩けば下がる、という交渉が通りにくくなります。

  2. 小規模・低単価の案件が後回しになる可能性
    利益率を重視すれば、選別受注に向かいます。戸数の少ないマンション、延床の小さいビルは、大手から見て優先度が下がるおそれがあります。

  3. 「居ながら施工ができる」ことが割増の理由に使われる
    本来は工法選択の話であるものが、「特殊技術だから高い」という説明に変換されて見積書に乗ってくる場面が増えると私は予想しています。

3つ目が、この記事でいちばんお伝えしたいところです。居ながら施工は割増料金の理由ではなく、工法選択の結果です。ここを混同すると、発注者は説明のつかない金額を飲むことになります。


価格が上がる局面で、オーナーが持つべき「もう1本の見積り軸」

足場は「必要経費」ではなく「選択した費用」

大規模修繕の見積書を開くと、たいてい一番上に仮設工事があります。仮設足場・養生シート・仮設電気・仮設トイレ。総工事費のおおむね1〜2割です。

多くの管理組合・オーナーが、ここを動かせない前提として読んでしまいます。私が理事会に呼ばれてまずお伝えするのは、ここです。

「その足場は、工事の必要経費ではありません。その工法を選んだ結果として発生した費用です。」

言い方を変えます。足場は工事そのものではなく、工事をするための移動手段です。移動手段には選択肢があります。

高所へのアプローチ手段 概要
枠組足場・くさび式足場 建物外周に組み上げる。もっとも一般的
ゴンドラ(常設・仮設) 屋上から吊り下げる。高層に多い
高所作業車 低層・敷地に余裕がある場合
ロープアクセス工法 産業用ロープで直接アプローチ。無足場
ハイブリッド(併用) 部位ごとに足場とロープを使い分け

見積書の土台がこのどれになっているかで、総額は大きく変わります。そして、施工会社が1つの手段しか持っていなければ、見積書は必然的にその手段を前提に作られます。これは不正でもなんでもなく、当たり前のことです。

だからこそ発注者側が、足場を前提にしない見積りをもう1本取っておくことに意味があります。

3工法の比較|正直に申し上げます

当社は足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つを提案できる会社です。だからこそ、営業的に不都合なことも書きます。

比較項目 通常足場工法 ロープアクセス工法 ハイブリッド工法
仮設費 高い(総工事費の1〜2割) 大幅に圧縮できる 中間
適する建物 中低層・複雑形状・全面打診が必要 高層・足場架設が困難・部分補修 大規模・複雑物件
工期 架設・解体で前後に日数が乗る 着手が早く撤収も早い 部位ごとに最適化
居住者・利用者への影響 大きい(全面シート養生) 小さい(作業面のみ) 部位により変動
一度に投入できる人員 多い 限られる 中間
大量の資材揚重 得意 苦手 部位により対応
防犯面 侵入経路になりうる 足場がないため懸念が小さい 部位により変動

ロープアクセス工法が常に安いわけではありません。

たとえば、外壁全面のタイル打診調査から張り替え、加えて防水も鉄部塗装も一気にやる——という工事量の多い案件では、足場を組んで大人数を同時投入したほうが、トータルで安く早く終わることがあります。私は実際にそう提案した現場が何度もあります。

逆に、次のようなケースではロープアクセスが効きます。

  • 部分的な漏水補修・タイル浮きの是正
  • 高層階のシーリング打ち替え
  • 敷地に余裕がなく、足場が組めない、または組むために近隣交渉が必要
  • 店舗・ホテルなど、営業を止められない建物
  • 台風・地震のあとの緊急点検

要は、建物ごとに答えが違うというだけの話です。それを判定するには、両方を持っている会社に見てもらうのが早い、と私は考えています。大規模修繕の全体設計については大規模修繕工事のご紹介でご説明しています。


現場の話|「足場代を値切る」交渉が、いちばん危ない

ひとつ、現場で見た話をします。

数年前、ある賃貸マンションのオーナーさまから相談を受けました。他社の見積書を持ってこられて、「足場代が高いので、ここを削って交渉しようと思う」とおっしゃる。金額は総額のおよそ15%でした。

私はその場でお止めしました。理由は2つです。

ひとつは、足場代を値切ると、削られるのは足場の安全性だからです。段数を減らす、手すりを省く、壁つなぎのピッチを広げる。どれも見積書の上では同じ「仮設足場一式」のままで、金額だけが下がります。落ちるのは職人です。

もうひとつは、そもそもその建物に足場が最適だったのかを、誰も検証していなかったからです。3階建て・総戸数12戸・敷地に余裕なし。工事内容は外壁の部分補修とシーリングの打ち替えが中心でした。私が現地を見て提案したのは、ロープアクセスと部分足場の併用案です。

結果として、仮設費は当初見積りの半分以下になりました。ただ、私が本当にお伝えしたいのは金額のことではありません。そのオーナーさまは「足場は必ず要るもの」だと思い込んでいたので、値切るという交渉しか思いつかなかった。選択肢を知らないことのコストが、値引き交渉の成果よりずっと大きかったのです。

これから発注単価が上がりにくくならない局面に入るのなら、この構図はもっと重くなります。値切るのではなく、土台から比べる。私はこれをワンセットで提案するようにしています。


見落とされがちな法定義務|建築基準法第12条の定期報告と「全面打診」

改修の話をするとき、私が必ず確認するのが建築基準法第12条の定期報告です。ここを知らないまま「うちはまだ修繕の時期じゃない」とおっしゃる方が、本当に多い。

制度の概要

一定規模以上の特定建築物は、所有者・管理者が定期に調査・検査を行い、特定行政庁へ報告する義務があります(出典:国土交通省「建築基準法に基づく定期報告制度について」)。

区分 対象の例 調査・検査の周期
特定建築物 共同住宅・ホテル・事務所等で規模要件を満たすもの 1〜3年ごと(特定行政庁が指定)
建築設備 換気・排煙・非常用照明・給排水 6か月〜1年ごと
防火設備 防火扉・防火シャッター等 6か月〜1年ごと
昇降機 エレベーター・エスカレーター 6か月〜1年ごと

対象建築物の規模も周期も特定行政庁ごとに指定が異なりますので、詳細は所在地の自治体窓口でご確認ください。

「10年で全面打診」がコストを決めている

とくに外壁タイルについては、竣工または外壁改修から10年を超えた場合、次の定期報告までに落下のおそれのある部分について全面的な打診等の調査が必要とされています。これは2008年(平成20年)の告示改正で導入された、いわゆる「10年ルール」です。

ここが工事費に直結します。条文は「全面打診」であり、打診以外の方法も認められています。国土交通省は赤外線調査(無人航空機=ドローンによるものを含む)についてガイドラインを示しており、条件を満たせば打診に代えることができます(出典:国土交通省「定期報告制度における赤外線調査による外壁調査ガイドライン」)。

とはいえ、赤外線調査には気象条件・日射・壁面の向きなどの制約があり、打診による確認が併用される場面は少なくありません。外壁の全面に人が手を届かせる必要が生じたとき、その手段は足場・ゴンドラ・ロープアクセスのいずれかになります。

私がよく相談を受けるのは、次のパターンです。

  • 「打診調査のためだけに足場を組むのは高すぎる」
  • 「でも大規模修繕はまだ数年先の予定で、積立金が足りない」
  • 「先送りにしていたら、報告期限が来てしまった」

このとき、調査だけを先にロープアクセスで済ませ、その結果を見てから修繕範囲と時期を決めるという順序が取れます。調査で全面を触れば、どの面のどの高さに浮きが集中しているかがわかります。そのデータがあれば、次の大規模修繕の数量拾いの精度が上がり、「一式」で丸められる余地が減ります。

つまり、先に調査へ投資したほうが、本工事の見積りを読む力が上がるという話です。私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。


発注前チェックリスト|理事会・オーナー会議でそのまま使える10項目

改修市場が売り手優位に傾く局面で、発注者側が最低限おさえておきたい項目をまとめました。印刷して理事会にお持ちいただければと思います。

  1. 見積書は「工種ごとの単価×数量」まで分解されているか(「一式」が3項目以上ある見積書は要注意)
  2. 仮設費が総額の何%かを計算したか(1〜2割から大きく外れていれば理由を聞く)
  3. 足場を前提としない工法での見積りを1本取っているか
  4. 工事期間中の空室・休業・クレームによる機会損失を金額換算したか
  5. 設計コンサルタントと施工会社の資本・人的関係を書面で確認したか
  6. 数量拾いの根拠図面を受け取っているか(タイル面積・シーリング延長など)
  7. 追加工事が発生する条件と単価が、契約前に明記されているか
  8. 工事保険・第三者賠償の付保内容と限度額を確認したか
  9. 居ながら施工の場合、作業時間帯・騒音対策・動線計画が書面化されているか
  10. 長期修繕計画と今回の工事範囲が整合しているか(出典:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」

とくに1・2・3をセットで実行していただくと、見積書の読み方がまったく変わります。


賃貸オーナー・ホテル運営者の方へ|「止めない改修」は収益の話です

分譲マンションの管理組合と、収益不動産のオーナーさまとでは、判断の物差しが違います。

収益不動産の場合、工事期間中の判断はこう整理できます。

項目 足場工法の場合 無足場・部分施工の場合
工事期間中の募集 内見時の印象が落ちやすい 影響が限定的
既存入居者の不満 洗濯物・眺望・防犯で発生しやすい 作業面の住戸に限定
店舗テナントの看板 シートで隠れる期間が生じる 隠れない、または短期間
ホテルの客室単価 眺望・騒音で下げざるを得ない場合 面ごとの調整が可能
工事期間中の解約リスク 相対的に高い 相対的に低い

私がオーナーさまに毎回お願いしているのは、次のことです。工事費の比較だけでなく、「工事期間中に失う家賃」を1度だけでいいので計算してください。

たとえば全20戸・平均賃料10万円のマンションで、工事を理由に3戸が解約し、次の入居まで2か月空いたとします。それだけで60万円です。原状回復と募集経費を足せば、さらに増えます。この金額は、工法選択で圧縮できる余地がある費用です。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会や事業計画の前段階で、工法の当たりをつけるだけでもお力になれることがあります。お問合せフォームからどうぞ。


よくある質問(FAQ)

Q1. 大成建設が改修に力を入れると、私たちの工事費は本当に上がるのですか?
A. 直ちに全案件が値上がりするわけではありません。ただし「赤字でも受注する」会社が減るため、極端な安値の見積りは出にくくなる方向に働くと考えられます。相見積もりで下げる交渉より、工法・数量から比較する方法に切り替えるのが現実的です。

Q2. 「居ながら施工」は必ず割高になりますか?
A. いいえ。居ながら施工は工法選択の結果であり、割増料金の名目ではありません。足場を組まずに面ごとに施工する方法であれば、仮設費が下がって総額が下がる場合もあります。「居ながらだから高い」という説明を受けたら、根拠となる数量と単価の内訳をご確認ください。

Q3. ロープアクセス工法にすれば必ず安くなりますか?
A. なりません。外壁全面の打診・張り替えなど工事量が多い案件では、足場を組んで大人数を同時に投入したほうが安く早く終わることがあります。当社は建物ごとに3工法から比較してご提案しています。詳細はロープアクセスドットコムもご参照ください。

Q4. 築40年を超えた建物は、そもそも直す価値がありますか?
A. 建物の構造・立地・収益性で判断が分かれます。国土交通省の統計では築40年超のマンションは2025年末で約158.8万戸、20年後には約503.6万戸まで増える見込みとされ、「直して使う」ことが社会全体の前提になりつつあります(出典:国土交通省「マンションに関する統計・データ等」)。まずは劣化診断で現況を数値化することをおすすめします。

Q5. 見積書のどこを見れば「妥当かどうか」がわかりますか?
A. 最初に見るべきは仮設費が総額の何%かです。おおむね1〜2割が目安で、そこから大きく外れる場合は理由を確認してください。次に「一式」表記の数を数えてください。工種ごとの単価と数量に分解されていない見積書は、比較のしようがありません。


この記事のポイントまとめ

  • 大手ゼネコンが改修を「利益率17%の本命事業」と位置づけ、体制を厚くしている
  • 改修は工期が短く物価変動に強いため、新築より採算が読みやすい
  • 築40年超のマンションは2025年末で約158.8万戸、20年後には約3.2倍の見込み
  • 管理組合が発注者となるリフォーム・リニューアル受注高は前年度比29.8%増
  • 「居ながら施工」は割増の理由ではなく、工法選択の結果である
  • 仮設足場費は総工事費のおおむね1〜2割。ここは動かせる余地がある
  • ロープアクセスが常に安いわけではなく、建物ごとに最適解が違う
  • 発注者側は「値切る」より「土台から比べる」に切り替える時期に来ている

出典・参考資料

※制度・統計は改定される場合があります。最新の内容は必ず各公式ページでご確認ください。


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最後に、ひとつだけ。

改修が儲かる仕事だと業界が気づいたことは、私は悪いことだと思っていません。長いあいだ、直す仕事は建てる仕事の下に置かれてきました。それが変わるのは、現場で腕を磨いてきた職人にとって良いことです。

ただし、その変化のコストを、何も知らされないまま発注者が負担するのは違います。だから私は、足場が要る建物には要ると言い、要らない建物には要らないと言い続けます。これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。

最終更新:2026年9月10日

ロープアクセス工法の技術情報は ロープアクセスドットコム に詳しくまとめています。