朝のニュースに、少し背筋の伸びる見出しがありました。「塗装・防水工事の倒産、2026年1〜5月で80件」。帝国データバンクの調査です。数字だけ見ると業界の内輪話のようですが、これは収益物件をお持ちのオーナーさま、そしてマンション管理組合の理事長さま・修繕委員のみなさまにこそ、関わりのある話です。
結論から申し上げます。いま起きているのは「工事を請け負う側」の体力低下です。そして大規模修繕は、その「請け負う側」に建物と数千万円規模の予算を、半年から一年近く預ける取引にほかなりません。預けた相手が工事の途中で力尽きてしまったら——前払いしたお金、約束された保証、組み上げた工程は、どうなるでしょうか。
今日は、報じられた事実を冷静に押さえたうえで、「価格の安さ」だけでは見えない施工会社のリスクをどう見極めるか、そして資材高・人手不足というこの逆風のなかで、足場費を抑えながら品質と完遂力を守る工法の選び方までを、現場の言葉で整理します。煽るためではありません。大切な資産を預ける相手を、納得して選んでいただくためです。
ニュースの要点——塗装・防水の倒産が「過去最多」に次ぐペースで進んでいる
まず、報じられている数字を正確に押さえます。
帝国データバンクの調査によると、2026年1〜5月に発生した「塗装工事」と「防水工事」の倒産は80件。内訳は塗装工事が56件、防水工事が24件です。これは、通年の件数が2000年以降で最多となった2025年(同じ5月までで87件)に次ぐペースで推移しています(出典:帝国データバンク「塗装・防水工事の倒産動向(2026年1-5月)」、帝国データバンク プレスリリース、Yahoo!ニュース(RSK山陽放送))。
注目すべきは、倒産の「規模」です。負債額別で見ると、1億円未満の倒産が69件と、全体の約86.3%を占めました。つまり、倒れているのは大手ではなく、地域で堅実に工事を担ってきた小規模事業者が中心だということです。
なぜ「過去最多」級の水準が続いているのか
帝国データバンクは、塗装・防水工事ではナフサ由来の溶剤が多く使われ、加えて養生シートや塗料の容器といった副資材もナフサを原料としているため、中東情勢によるナフサ不足の影響拡大が懸念される、と指摘しています。現場ではすでに、塗料や防水材の値上がり幅が読みにくく工事金額の見積もり提示が難しくなるケースや、資材調達の遅れによる工期遅延が発生しているといいます。
ここで、前日(6月21日)にお伝えしたニュースとつながります。政府は6月23日から、品薄が続く塗料用シンナーをメーカーから工務店などへ直接販売する仕組みを始めます。これは供給ひっ迫に対する初動の一手であり、流れが変わる入口です。けれども、供給が一夜で元に戻るわけではありません。供給対策が効いてくるまでの「端境期」に、資金体力の薄い事業者から先に力尽きていく——いまの倒産増は、その過渡期の痛みでもあるのです。
塗装・防水は「建設業全体の縮図」でもある
視野を少し広げると、塗装・防水だけの問題ではないことが見えてきます。建設業全体の倒産は、2025年度(2025年4月〜2026年3月)で2,041件にのぼり、前年比5.6%増で過去10年で最多となりました(出典:帝国データバンク「倒産集計 2025年度報」、帝国データバンク「建設業の倒産動向(2025年)」)。
要因別では、建設業の「物価高倒産」が247件で過去最多。資材費や燃料費の高騰を発注元へ価格転嫁できず、利益を削りながら受注を続けた末に行き詰まったケースが目立ちます。さらに「後継者難倒産」は123件で全業種中最多、人手不足を直接の引き金とする倒産も高水準でした(東京商工リサーチによれば、2025年度の人手不足倒産は全業種で442件と調査開始以降で最多。出典:日本経済新聞、東京商工リサーチ「塗装工事業の倒産が急増」)。
要するに、人件費の急騰・工期の延長・建材価格の上昇という重いコストアップに、請負単価の値上げが追いついていない。これが業界を貫く構造的な弱りです。塗装・防水の倒産増は、その縮図にすぎません。
補足——なぜ「ナフサ不足」が塗装・防水を直撃するのか
ここで一度、因果の連鎖を整理しておきます。なぜ中東情勢が、遠く離れた日本の外壁塗装の現場まで届くのか。この道筋を理解しておくと、「この逆風がいつまで続きそうか」を自分なりに見立てられるようになります。
ナフサとは、原油を精製してできる石油化学製品の基礎原料です。プラスチックや合成樹脂、塗料の溶剤など、私たちの身の回りの多くの製品の出発点になっています。塗装・防水工事で使うシンナーは、このナフサを原料とする溶剤の代表格です。さらに、塗料そのものに含まれる樹脂、現場を汚さないために張る養生シート、塗料を入れる容器——こうした副資材の多くもまた、もとをたどればナフサ由来です。
つまり、外壁塗装の現場は「ナフサでできた材料」に幾重にも支えられています。だからこそ、中東情勢を発端にナフサの供給が細ると、溶剤だけでなく、塗料・副資材まで含めて値段が上がり、入手も難しくなる。一つの原料の不足が、現場のあらゆる材料に波及するのです。これが、塗装・防水という分野が今回の供給ショックの影響を特に強く受けている理由です。
そして、この影響は「価格」と「納期」の二つの形で現場を締めつけます。価格が読めなければ、施工会社は見積もりを出しづらくなります。先に安く請けてしまえば、着工までに材料費が上がった分が丸ごと自社の損失になりかねません。納期が読めなければ、工程が組めず、職人の手配も宙に浮きます。資金力の薄い小規模事業者ほど、この「読めなさ」に耐えられず、受注を絞るか、無理を重ねて力尽きていく。倒産統計の数字の裏には、こうした現場の苦しさがあります。
なぜ、これがオーナーと管理組合の問題なのか
ここからが本題です。「業者が大変なのは分かったが、発注する側に何の関係があるのか」と思われるかもしれません。関係は、あります。しかも、見落とされがちな深い関係です。
大規模修繕は、契約から完工まで半年〜1年近くを要する長期の取引です。その間、発注者は施工会社に対して、足場の組み立てから塗装・防水・タイル補修・防水トップコートまで、段階的に工事を進めてもらいます。多くの契約では、着工金や中間金といった前払い的な支払いが発生します。つまり、工事が完了する前に、相応のお金が施工会社の手に渡っているのです。
工事中に施工会社が倒産すると、何が起きるか
もし工事の途中で施工会社が倒産したら、現実にはこうした困りごとが起こり得ます。
第一に、支払い済みの前払金が回収困難になるおそれがあります。倒産した会社の財産は債権者全体で分け合うことになり、発注者が払ったお金がそのまま戻ってくる保証はありません。
第二に、工事が止まり、足場が組まれたまま放置される事態が起こり得ます。足場やシートが架かったままの建物は、見た目の問題だけでなく、強風時の安全リスクや近隣トラブルの種にもなります。残りの工事を別の会社に引き継いでもらうにも、途中まで他社が施工した部分の責任範囲が曖昧になり、引き継ぎ手が見つかりにくくなります。
第三に、完成後の保証が宙に浮きます。塗装や防水には通常、施工会社による数年〜十数年の保証が付きます。けれども、その会社が存在しなくなれば、保証書は紙きれ同然です。雨漏りや塗膜の不具合が起きても、無償補修を求める相手がいません。
管理組合にとっては、これらはそのまま「区分所有者全体の損失」になります。修繕積立金という、住民が長い年月をかけて積み上げてきた大切な原資が、業者の倒産という外的要因で毀損しかねないのです。オーナーさまにとっては、賃貸経営のキャッシュフローと資産価値そのものへの直撃です。
「最安値」がいちばん危ういという逆説
ここで一つ、立ち止まって考えていただきたいことがあります。倒産が増えている局面では、極端に安い見積もりほど警戒が必要だということです。
資材も人件費も上がっているのに、相場から大きく外れた安値を提示できる会社には、理由があります。すでに利益が出ない水準まで受注を取りにいっている、あるいは資金繰りを回すために当座の受注を確保しなければならない——そうした台所事情が背景にあるかもしれません。価格転嫁が追いつかずに倒産が増えているという今の構造は、まさに「安く請けすぎた会社から倒れていく」ことを示しています。
もちろん、安いことが直ちに危険なわけではありません。けれども、「いちばん安いから」という理由だけで決めるのは、いまの時勢では特にリスクの高い選び方になっています。価格は判断材料の一つにすぎず、その会社が工事を最後までやり切れるかという視点を、同じ重さで持つ必要があります。
倒産リスクから資産を守る——施工会社を見極める5つの視点
では、発注する側はどう自衛すればよいのでしょうか。専門家でなくても確認できる、実務的な視点を5つにまとめます。
1. 経営の安定性を、遠慮せず確認する
施工会社の財務状況は、発注者が確認してよい正当な関心事です。建設業許可の有無と種類、許可の更新状況、可能であれば直近の業績の傾向。決算書の開示まで求めるのは難しくても、「何年この地域で営業しているか」「施工実績は継続的にあるか」「元請として完工した大規模修繕の事例はあるか」を質問するだけでも、得られる情報は多くあります。誠実な会社ほど、こうした問いに丁寧に答えます。
2. 見積もりの「透明性」を見る
危ない兆候は、しばしば見積書に表れます。一式表記ばかりで内訳が不透明、相場と比べて極端に安い、追加費用の条件があいまい——こうした見積もりは、後の追加請求や品質の手抜き、あるいは無理な受注の温床になりがちです。逆に、数量・単価・仕様が明確に分かれ、資材高騰リスクへの考え方まで説明してくれる見積もりは、それ自体が会社の健全さの表れです。
3. 前払いの比率と支払い条件を確認する
着工金や中間金の比率が相場に比べて高すぎないか、出来高(実際に進んだ工事量)に応じた支払い設計になっているかを確認します。工事の進捗と支払いが釣り合っていれば、万一の際の損失を小さく抑えられます。出来高払いを基本に据えることは、発注者にとって有効なリスク管理です。
4. 保証とアフターの「実体」を確かめる
保証書の有無だけでなく、その保証を裏づける体制があるかを見ます。保証年数の長さよりも、定期点検の仕組み、不具合時の連絡窓口、そして何より会社が存続している蓋然性が大切です。第三者機関による保証(住宅瑕疵担保責任保険のような仕組み)を併用できるかも、確認の価値があります。
5. 「組織」として施工できる体制かを見る
一人親方や少人数の会社が悪いという話ではありません。けれども、大規模修繕は塗装・防水・タイル・シーリング・電気・看板など、複数の専門工事が組み合わさる総合工事です。特定の職人一人の体調や資金繰りに全体が依存していると、その一点が崩れたときに工事全体が止まります。各工程を担う体制が組織として整っているか、協力会社のネットワークがあるかは、完遂力を測る重要な物差しです。
倒産リスクは、実は「修繕積立金リスク」でもある
マンション管理組合のみなさまには、もう一段踏み込んでお伝えしたいことがあります。施工会社の倒産リスクは、突き詰めれば修繕積立金の毀損リスクに直結する、という点です。
大規模修繕は、十数年に一度の大きな支出です。区分所有者が毎月コツコツと積み立ててきた修繕積立金を取り崩し、ときには借入も併用して、まとまった金額を一度に動かします。その大切な原資を預けた施工会社が工事の途中で倒産すれば、前払金の一部が回収できないだけでなく、別の会社に引き継ぐための追加費用、放置された足場の管理費用、当初の保証が失われたことによる将来の補修費用まで、想定外の負担が次々と積み重なります。
しかも厄介なのは、こうした損失が「総会で承認した予算」を超えて発生することです。理事会や修繕委員会は、区分所有者に対して説明責任を負っています。「いちばん安い会社を選んだら、途中で倒産して積立金を失った」という結末は、組合運営への信頼そのものを揺るがしかねません。だからこそ、業者選定は単なる価格比較ではなく、組合の資産を守るリスク管理として捉える必要があるのです。
近年は、長期修繕計画の見直しや修繕積立金の水準が社会的な関心を集めています。積立金が不足ぎみの組合ほど、目先の安さに引き寄せられやすい構造があります。けれども、倒産が増えるいまの局面では、その「安さ」が最も高くつく選択になりかねません。積立金を守るとは、一円でも安く発注することではなく、預けた一円が確実に工事として形になる相手を選ぶことだ——そう捉え直していただきたいと思います。
工法の選び方が、コストと完遂力を同時に左右する
業者選定と並んで、もう一つ発注者が握っているレバーがあります。工法の選択です。これは、資材高の時代に「適正価格を保ちながら品質を確保する」ための、見落とされがちな鍵になります。
足場費という「見えない大きなコスト」
大規模修繕の費用の内訳を見ると、多くの方が驚かれるのが仮設足場の比率です。建物の規模や形状にもよりますが、足場の架設・解体・賃料は、工事費全体のなかで決して小さくない割合を占めます。資材も人件費も上がっているいま、この足場費が総額を押し上げ、結果として「予算が足りない」「だから安い業者を選ばざるを得ない」という、先ほど述べたリスクの高い選択へと発注者を追い込んでしまうことがあります。
つまり、足場費を合理的に抑えられれば、浮いた分を品質や、体力のあるしっかりした施工会社の適正単価に回せる。工法の選択は、めぐりめぐって倒産リスクの回避にもつながるのです。
無足場(ロープアクセス)という選択肢
ここで、私たち明誠が得意とするロープアクセス工法(無足場工法)が選択肢に入ってきます。これは、産業用ロープを使って職人が外壁に直接アクセスし、足場を架けずに塗装・防水・補修などを行う工法です。建設現場で長く使われてきた確立された技術で、欧米のビルメンテナンスでは一般的な方法です。
ロープアクセスの利点は、主に三つあります。
第一に、足場を架けないことによるコスト圧縮です。足場の架設・解体・賃料が不要になるため、条件の合う建物では総額を抑えられます。先ほどの「浮いた分を品質に回す」が、現実に可能になります。
第二に、工期の短縮です。足場の組み立て・解体に要する日数が不要になるため、工事全体のスケジュールを短くできるケースがあります。工期が短いほど、住民や利用者への影響も、天候による遅延リスクも小さくなります。
第三に、居住者・利用者の生活影響の最小化です。建物全体を足場とシートで覆わないため、室内が暗くならず、開放感が保たれ、防犯面の不安も軽減されます。賃貸物件であれば、入居者の満足度や退去リスクにも関わる、見過ごせないメリットです。
もちろん、ロープアクセスが万能というわけではありません。建物の高さや形状、作業内容によっては足場が適している場面も当然あります。大切なのは、「足場ありき」でも「無足場ありき」でもなく、建物ごとに最適を選べることです。
足場とロープアクセスを使い分ける「ハイブリッド工法」
そこで現実的な解になるのが、ハイブリッド工法です。これは、建物の部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける考え方です。複雑な形状で足場が向く部分には足場を架け、足場の架設が難しい高所や狭小部、コストを抑えたい大面積の壁面にはロープアクセスを使う。こうして全体のコストと品質、工期のバランスを最適化します。
明誠が、通常の足場仮設工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つを建物特性に応じて提案できることには、こうした背景があります。1つや2つの工法しか持たない会社は、どうしても「自社が持つ工法に建物を当てはめる」提案になりがちです。3つの選択肢を持って初めて、「建物にとって本当に最適なのはどれか」を起点に考えられます。
倒産が増える時代だからこそ、「組織で施工できる体制」が効く
ここまでお読みいただいて、業者選定の視点と工法選択が、実は地続きであることがお分かりいただけたと思います。資材高で利益が削られ、価格転嫁が追いつかず、小規模事業者から倒産していく——この構造のなかで発注者を守るのは、「価格だけで選ばない目」と、「適正価格を成り立たせる工法」、そして「組織として工事を完遂できる施工体制」の三つです。
私たち明誠は、ロープアクセス工事として日本で初めてのフランチャイズ展開を行っています。塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟する仕組みをつくることで、一つの職種や一人の職人に全体が依存しない、組織としての施工体制を整えてきました。各工程の専門性が高まることは品質に直結し、無足場による足場費の圧縮と合わせて、高品質と適正価格の両立を可能にしています。
この体制は、発注者から見れば「窓口は一つ、けれど背後には各分野の専門職がそろっている」という安心につながります。塗装は塗装の、防水は防水の、タイルはタイルの専門職が責任を持って担う。一人の職人がすべてを兼ねるのではなく、工程ごとに最適な担い手が入ることで、品質のばらつきが抑えられます。そして、特定の一社や一人に全体が依存しないため、万一どこか一つの工程でつまずいても、工事全体が止まってしまうという最悪の事態を避けやすくなります。倒産が増える時代に発注者が最も恐れる「途中で工事が止まる」というリスクに対して、組織としての厚みが効いてくるのです。
加えて私たちは、一般社団法人全国建設業支援協会(JCSA)を運営し、全国の建設業に向けた経営支援、オンラインセミナー、交流会、ビジネスマッチングにも取り組んでいます。倒産が過去最多級に増えるいまの局面で、業界全体の経営基盤を底上げしようという取り組みは、めぐりめぐって「最後までやり切れる施工会社」を増やすことにつながると考えています。発注者にとっての安心は、健全な業界の上にしか成り立たないからです。
よくあるご質問
最後に、オーナーさまや理事のみなさまから実際に寄せられることの多い疑問に、簡潔にお答えします。
Q. いま見積もりを取っている最中ですが、いったん止めたほうがよいですか。
止める必要はありません。むしろ、いまは見極めの好機です。複数社から相見積もりを取り、価格だけでなく、内訳の明確さ、支払い条件、保証体制、施工実績を並べて比較してください。極端に安い一社があれば、その理由を率直に質問する。誠実な会社ほど、資材高のいま価格をどう考えているかを丁寧に説明してくれます。比較の過程そのものが、リスクの高い相手を見抜くフィルターになります。
Q. 資材が値上がりしているなら、工事は先送りしたほうが得ではありませんか。
一概には言えません。先送りには「劣化が進む」というコストが伴います。外壁のひび割れや防水層の劣化を放置すれば、雨水が躯体に入り込み、本来は表面の補修で済んだものが、躯体補修を要する大工事に発展しかねません。供給と価格の見通しを見ながら、劣化の進行と天秤にかける。そのうえで、足場費を抑えられる工法で総額を適正化すれば、「待つリスク」と「動くコスト」の両方を小さくできます。判断には、建物の現状診断が欠かせません。
Q. ロープアクセスは足場より危なくないのですか。
適切な資格と装備、二重の安全確保を前提に運用される確立された工法です。建設業や高所作業の分野で長く使われてきました。重要なのは、施工する会社がきちんとした安全管理と訓練の体制を持っているかどうかです。工法そのものの優劣ではなく、それを扱う組織の力量を確認してください。
Q. うちの建物はロープアクセスに向いていますか。
建物の高さ、形状、外壁の状態、作業内容によって変わります。だからこそ、足場・無足場・ハイブリッドの3つを比較して提案できる相手に、実際に建物を見てもらうことが大切です。「向き・不向き」は、机上ではなく現場で決まります。
いま、オーナー・管理組合が取るべき三つの行動
最後に、今日のニュースを「自分の建物の判断」に落とし込むために、実務的な行動を三つ提案します。
一つ目は、手元の見積もりを「価格」だけでなく「完遂力」の目で見直すことです。相見積もりのなかに極端な安値があれば、その理由を確認してください。安さの裏に資金繰りの無理が隠れていないか。出来高払いの設計になっているか。保証を裏づける体制があるか。価格表の数字の向こう側にある、会社の体力を見てください。
二つ目は、着工のタイミングと工法を一緒に考えることです。資材の供給は、政府の対策で改善に向かう入口に差しかかっています。慌てて最安値で発注するより、供給と価格の見通しが少し落ち着く局面を見据えつつ、足場費を抑えられる工法で総額を適正化する。この二つを組み合わせることで、「待つことのリスク」と「動くことのコスト」を両方とも小さくできます。
三つ目は、複数の工法を比較できる相手に相談することです。足場一択、無足場一択ではなく、建物ごとに3つの工法から最適を示してくれる相手であれば、コスト・工期・住民影響・完遂力のすべてを天秤にかけた、納得感のある判断ができます。
大規模修繕は、建物の資産価値を守り、入居者の暮らしを支える、長期の投資です。その投資を託す相手が、工事を最後までやり切れるか——倒産が過去最多級に増えるいまだからこそ、この一点を、価格と同じ重さで見ていただきたいと思います。
ご自身の物件で「この見積もりは適正か」「うちの建物ならどの工法が向くか」と迷われたときは、どうぞお気軽にご相談ください。建物を実際に拝見したうえで、3つの工法それぞれの概算と、メリット・デメリットを正直にお伝えします(お問い合わせ、ロープアクセス工法について)。判断の土台をそろえるお手伝いを、現場の目線でいたします。


