大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

静岡市のマンション補助金|大規模修繕2026年版

静岡市のマンション補助金|大規模修繕2026年版

静岡市の分譲マンションで大規模修繕を控えている管理組合が、2026年度に使える補助金・税制・融資はどれか。この記事は、その質問に静岡市の一次情報だけで答えるために書きました。

最初に、いちばん大事なことをお伝えします。静岡市には「共用部の外壁塗装や防水工事そのものに直接お金を出す補助金」は、私が2026年8月時点で公開情報を確認した限り、見当たりません。ここは正直に書きます。

ただし静岡市は、これまで私が記事にしてきた自治体と決定的に違う点を3つ持っています。分譲マンションが耐震補助の正面からの対象になっていること。補助金を工事会社が直接受け取れる代理受領制度があること。そして管理計画認定を市そのものが受け付けていること。この3つは、政令指定都市である静岡市だからこその制度です。

私は建設・改修の業界に20年以上おり、株式会社明誠の代表として、足場を架ける従来工法と、足場を架けないロープアクセス工法、その両方を組み合わせるハイブリッド工法の3つを扱っています。工事会社の立場で書いていますので、その分は差し引いて読んでいただいて構いません。それでも、制度の数字と現場の数字を並べて見せることには意味があると思っています。

最終更新:2026年8月20日


この記事の結論を先に3行で

静岡市の管理組合が2026年度に検討すべきものは、次の3本です。

順位 制度・仕組み 静岡市での位置づけ 金額の規模
1 建築物耐震補強事業(非木造共同住宅) 3階以上かつ延べ1,000㎡以上のマンションが明文で対象 限度額1,500万円
2 マンション管理計画認定制度 静岡市が自ら受け付ける(県ではなく市) 手数料3,800円〜/税制と融資に接続
3 マンション長寿命化促進税制 静岡市が減額割合3分の1を明記 家屋の固定資産税を1年度分軽減

そして、この3本を「バラバラの制度」ではなく「1本の工程」としてつなげられるかどうかが、静岡市の管理組合にとっての分かれ目になります。理由は本文で説明します。


静岡市の分譲マンションは何戸あるのか──市の一次情報で見る現状

制度の話に入る前に、静岡市がマンションをどう見ているかを数字で押さえておきます。出典は静岡市が策定した静岡市マンション管理適正化推進計画(PDF)です。

静岡市の住宅28万戸のうち、分譲マンションは1.8万戸

建て方 割合 備考
一戸建て 59.2% 静岡市は戸建て比率が高い
賃貸マンション 32.9% 収益不動産オーナーの世界
分譲マンション 6.6%(約1.8万戸) 本記事の主対象
長屋建て 1.4%

住宅・土地統計調査(2018年)による推計で、静岡市の居住世帯のある住宅は約28万戸。うち分譲マンションに住む世帯は約1.8万戸で、全体の約6.6%です。

数字だけ見ると少なく感じるかもしれません。ですが注目すべきは次の1行です。

築40年超のマンションが、20年後に3.1倍になる

静岡市の推計では、市内の築40年超のマンションは現在の約3,400戸から、20年後には約10,700戸になります。3.1倍です。

私が現場で見ている感覚とも一致します。1970年代後半から1980年代にかけて建てられたマンションが、いま一斉に「2回目・3回目の大規模修繕」の時期に入っています。1回目は外壁と防水だけで済んだものが、2回目からは給排水管、3回目からはサッシや玄関ドアまで話が及ぶ。金額の桁が変わっていきます。

静岡市の実態調査が示した8つの数字

静岡市は2021年度(令和3年度)に市内マンションの管理実態調査を実施しています。回答率は40.3%。その結果がこちらです。

調査項目 静岡市の結果
管理組合があると回答した割合 95.5%
管理規約を作成している割合(管理組合ありの場合) 100.0%
総会を年1回以上開催している割合 98.2%
修繕積立金を徴収している割合 92.7%
修繕積立金を3か月以上滞納している者がいない割合 79.3%
新耐震基準である割合 82.7%
実施した大規模修繕費用をすべて修繕積立金でまかなった割合 77.3%
長期修繕計画を作成している割合 81.0%

(出典:静岡市マンション管理適正化推進計画/令和3年度マンション管理実態調査)

静岡市自身が、この最後の数字にはっきり言及しています。長期修繕計画の作成率81.0%は、国土交通省の平成30年度マンション総合調査に基づく全国平均90.9%より「著しく低水準」である、と。市の公式文書に「著しく低水準」と書かれているのは、なかなか強い表現です。

そして静岡市は、この計画の成果指標として次の目標を掲げています。

成果指標 令和3年度(現状) 令和8年度末(目標)
管理組合があると回答した割合 95.5% 100%
修繕積立金を徴収している割合 92.7% 100%
長期修繕計画が策定されている割合 81.0% 91.0%
管理計画認定制度の認定件数 10棟

ここが重要です。この計画の計画期間は令和4年度から令和8年度までの5年間。令和8年度、つまり2026年度が最終年度にあたります。

市の担当課からすれば、いまは目標達成の最終年です。長期修繕計画の作成率を91.0%に持っていきたい、認定を10棟にしたい。そういうタイミングで管理組合から相談が入れば、対応が丁寧になるのは自然なことだと私は思います。制度を使うなら、動く年としては悪くありません。


【静岡市の最大の特徴】分譲マンションが耐震補助の正面からの対象になっている

ここからが本題です。静岡市の制度で、他の多くの自治体と決定的に違うのがこれです。

私はこれまで山梨県内の市を中心に自治体ごとの補助制度を調べてきましたが、多くの市では耐震補助の対象が「戸建ての木造住宅」に限定され、要綱に「長屋および共同住宅を除く」と明記されていました。RC造・SRC造の分譲マンション共用部は、正面から外れていたのです。

静岡市は違います。市のページに、こう書かれています。

昭和56年5月31日以前に建築されたもの又は同日において建築中であった特定建築物及び3階以上かつ延べ面積1,000平方メートル以上の非木造共同住宅(マンション)の、耐震補強工事を実施する所有者に対して補助金を交付する制度です。
(出典:静岡市 建築物耐震補強事業

「非木造共同住宅(マンション)」という言葉が、制度の対象として名指しで書かれています。しかも補助額の算定表には「非木造共同住宅」専用のものが別途用意されています。制度設計の段階でマンションが想定されている、ということです。

静岡市の耐震3事業を1枚の表にすると

事業 対象 補助率 基準額(単価) 限度額
特定建築物耐震診断事業 昭和56年5月31日以前の特定建築物 見積額と基準額の少ない額の3分の2 1,000㎡以下の部分2,100円/㎡
1,000超2,000㎡以下の部分1,570円/㎡
2,000㎡超の部分1,050円/㎡
記載なし
建築物補強計画策定事業 特定建築物および3階以上かつ延べ1,000㎡以上の非木造共同住宅 少ない額の3分の2 1,000㎡以下3,150円/㎡
1,000超2,000㎡以下2,100円/㎡
2,000㎡超1,050円/㎡
419万円
建築物耐震補強事業 特定建築物および3階以上かつ延べ1,000㎡以上の非木造共同住宅 経費と基準額の少ない額の23%の3分の2以内 マンション50,200円/㎡
(特定建築物51,200円/㎡、免震等の特殊工法83,800円/㎡)
1,500万円

(出典:静岡市特定建築物耐震診断事業建築物補強計画策定事業建築物耐震補強事業

1点だけ正直に補足します。耐震診断事業のページには「特定建築物」とだけ書かれており、非木造共同住宅の明記がありません。一方、補強計画と補強工事の2ページには非木造共同住宅が明記され、算定表も分かれています。診断の段階で共同住宅が使えるかどうかは、市のページの記載だけでは判断できませんでした。ここは断定を避けます。建築安全推進課(054-221-1124)に「うちのマンションは診断から補助対象になりますか」と1行で聞いてください。

延べ3,000㎡のマンションで試算するとこうなる

抽象的な率の話は理事会で伝わりません。数字を入れてみます。あくまで制度上の計算であり、実際の交付額は市の審査によります。

前提:延べ面積3,000㎡、5階建て、昭和55年建築の分譲マンション

補強計画策定の基準額
– 1,000㎡以下の部分:1,000㎡ × 3,150円 = 315万円
– 1,000超2,000㎡以下の部分:1,000㎡ × 2,100円 = 210万円
– 2,000㎡超の部分:1,000㎡ × 1,050円 = 105万円
– 合計 630万円 → その3分の2 = 420万円 → 限度額419万円

補強工事の基準額
– 3,000㎡ × 50,200円 = 1億5,060万円
– 仮に実際の補強工事費が1億円なら、少ない額は1億円
– 1億円 × 23% = 2,300万円 → その3分の2 = 1,533万円 → 限度額1,500万円

補強計画と補強工事を合わせて、制度上は最大で約1,919万円。1棟40戸なら1戸あたり約48万円に相当します。桁として、管理組合の総会で議論する価値のある金額です。

「前年度の8月までに相談」という、見落とされがちな締切

静岡市のページには、3事業すべてに同じ注意書きがあります。

補助制度をご利用される方は、(耐震診断/補強計画/補強工事)を実施する前年度の8月までに建築安全推進課にご相談ください。

これは実務上、非常に重い1行です。2027年度に補強工事をしたいなら、2026年8月までに相談していなければならない。つまりこの記事を読んでいる今月が、まさにその締切月にあたります。

さらに、申請には補強計画の第三者機関による評定書の写しが必要です。評定は時間がかかります。診断→補強計画→評定→工事、という順番を踏むと、実際には2年から3年がかりの話になります。「来年の大規模修繕に合わせて耐震も」という思いつきでは間に合いません。

そして「補助金の申請は事業を実施する前に。事業を行った後の申請は対象外」とも明記されています。契約してから気づいても遅い、ということです。


【他市にほとんどない】代理受領制度──管理組合の当初持ち出しを減らす仕組み

静岡市の制度でもう1つ、私が「これは効く」と思ったものがあります。補助金代理受領制度です。

制度の中身はシンプルです。

代理受領制度とは、補助金の請求と受領を耐震補強工事等業者へ委任することにより、補助金が市から耐震補強工事等業者に直接支払われる制度です。この制度を利用すると、申請者は耐震補強工事費等から補助金額を差し引いた金額を耐震補強工事等業者に支払えば良いため、当初の費用負担が軽減されます。
(出典:静岡市耐震対策事業に係る補助金代理受領制度

補助金は原則として「立て替え払い」です。管理組合が工事費の全額を先に払い、あとから市から入金される。ここで詰まる管理組合を、私は何度も見てきました。修繕積立金の残高が工事費に対して足りていて、なおかつ補助金が入るまでの数か月をキャッシュで持ちこたえられる、という条件は意外とハードルが高いのです。

代理受領を使えば、管理組合が用意するのは「工事費−補助金額」で済みます。総会に出す資金計画の見え方が変わります。「一時金は不要です」と言えるかどうかは、賛成票の集まり方を大きく左右します。

第4次静岡市耐震改修促進計画の施策一覧にも、「初期費用の負担を軽減するための代理受領制度の普及」がはっきり書かれています。市が普及させたい制度なので、相談しやすいはずです。

この制度は耐震補助だけでなく、後述するブロック塀等耐震化促進事業でも使えます。


静岡市は「管理計画認定」を市が自ら受け付けている

管理計画認定制度は、管理組合が作った管理計画を自治体の長に申請し、基準を満たせば認定を受けられる制度です。マンション管理適正化法の改正(2022年4月施行)で始まりました。

重要なのは、認定を受けるには、そのマンションがある自治体がマンション管理適正化推進計画を作っていることが必要という点です。計画を作っていない自治体では、そもそも申請ができません。

静岡市は2022年4月1日付で静岡市マンション管理適正化推進計画を策定済みで、申請先は静岡市長(窓口は都市局建築部住宅政策課住まい支援係/054-221-1590)です。県ではなく市に出す。政令指定都市ならではの体制です。

静岡市の認定基準を、理事会のチェックリストにする

静岡市の認定基準は5分野・全17項目です。表にして、そのまま理事会で丸をつけてみてください。

分野 基準
管理組合の運営 管理者等が定められている
監事が選任されている
集会が年1回以上開催されている
管理規約 管理規約が作成されている
災害等の緊急時・管理上必要なときの専有部の立ち入り、修繕等の履歴情報の管理等が規約に定められている
管理組合の財務・管理に関する情報の書面交付または電磁的方法による提供が規約に定められている
管理組合の経理 管理費と修繕積立金等が明確に区分経理されている
修繕積立金会計から他の会計への充当がされていない
直前事業年度末時点で、修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内
長期修繕計画・修繕積立金 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成されている
長期修繕計画の内容と修繕積立金額が集会で決議されている
長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われている
計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれる
将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していない
計画期間全体での修繕積立金の平均額が著しく低額でない
計画期間の最終年度に借入金の残高がない
その他 組合員名簿・居住者名簿を備え、年1回以上内容確認している
静岡市マンション管理適正化指針に照らして適切である

(出典:静岡市 マンション管理計画認定制度

太字にした4項目が、実務でよくひっかかる場所です。とくに「長期修繕計画の見直しが7年以内」は、静岡市の作成率81.0%という数字と重なります。計画そのものがない管理組合は、まずここから始めることになります。

手数料は3,800円か26,900円か──7倍の差がつく

静岡市の認定申請手数料は、事前確認適合証の有無で大きく変わります。

事前確認適合証 長期修繕計画の数 手数料
有り 1つ 3,800円
有り 2つ以上 3,800円+1,700円×(計画数−1)
無し 1つ 26,900円
無し 2つ以上 26,900円+15,500円×(計画数−1)

差は約7倍です。事前確認適合証とは、公益財団法人マンション管理センターが交付する、法第5条の4各号の基準に適合することを証する書面のこと。つまりマンション管理センターの「管理計画認定手続き支援サービス」を経由するのが、金額の面でも実務の面でも王道ということになります。

団地型で棟ごとに長期修繕計画が分かれている場合、計画の数だけ加算される点にも注意してください。計画が3つあれば、適合証なしだと26,900円+15,500円×2=57,900円です。

なお、静岡市は次の3ルートを併用可能としています。

  • マンション管理センターの管理計画認定手続き支援サービスのみ
  • 一般社団法人マンション管理業協会のマンション管理適正評価制度を併用
  • 一般社団法人日本マンション管理士会連合会のマンション管理適正化診断サービスを併用

静岡市は認定マンションを実名で公表している

静岡市のページには、認定を受けたマンションが実名と所在地つきで掲載されています。2026年8月時点で7件でした。

認定日 マンション名 所在地
2023年1月13日 プレミスト愛宕の杜 静岡市葵区長沼
2024年2月21日 プレミスト稲川 静岡市駿河区稲川
2024年3月7日 プレミスト東静岡 ステーションレジデンス 静岡市駿河区曲金
2024年4月5日 プレミスト泉町 静岡市駿河区泉町
2024年9月2日 ベル・フローラ興津 静岡市清水区興津本町
2025年3月24日 ウィスティリア馬場町 静岡市葵区馬場町
2025年4月28日 ウィスティリア登呂 静岡市駿河区登呂

(出典:静岡市マンション管理計画認定制度ページ/2025年10月21日更新時点)

目標は令和8年度末で10棟。あと3棟です。この「公表される」という点は、売却や賃貸の場面で効いてきます。買主や借主に対して、第三者が認定した管理水準を示せるからです。

認定は5年ごとの更新制で、認定期間中に管理計画を変更するときは変更認定申請が必要(有効期間は延長されません)。また認定期間中に市が報告徴収や改善命令等の監督を行う場合がある、とも明記されています。取って終わりの制度ではありません。


マンション長寿命化促進税制──静岡市は減額割合を「3分の1」と明記している

大規模修繕そのものに直接お金は出ませんが、やった後に税金が軽くなる制度があります。マンション長寿命化促進税制です。

静岡市はこの制度について、令和7年4月編集・発行の専用チラシ(大規模の修繕等が行われたマンションの固定資産税の減額措置/PDF)を出しています。ここに市としての取り扱いが明記されているのが大きい。

対象となる工事の3点セット

チラシによれば、「長寿命化工事」とは次のすべてが実施されていることを指します。

  1. マンションの外壁について行う修繕または模様替(外壁塗装等工事)
  2. 直接外気に開放されている廊下、バルコニー等の防水の措置を講ずるための修繕または模様替(床防水工事)
  3. 屋上部分、屋根、ひさし等の防水の措置を講ずるための修繕または模様替(屋根防水工事)

外壁・床防水・屋根防水の3点セットです。「外壁塗装だけ」「屋上防水だけ」では対象になりません。大規模修繕の仕様を決める段階で、この3つが仕様書に入っているかを確認してください。

対象マンションの3要件

要件 内容
築後20年以上が経過している、10戸以上のマンション(区分所有=分譲マンションのみ)
長寿命化工事を過去に1回以上適切に行っていること
長寿命化工事を実施するために必要な修繕積立金が確保されていること

③の「確保されている」は、次のいずれかに当てはまることを指します。

  • 管理計画認定マンションのうち、認定を受ける際に認定基準に適合させるため修繕積立金の額の引上げを行った場合
  • 静岡市からの助言・指導を受け、長寿命化工事が可能な水準まで長期修繕計画を適正に見直し、修繕積立金の積立てや額の引上げを行った場合

チラシには「助言・指導は、静岡市が実施するものであり、希望して受けることはできません」と明記されています。つまり、管理組合が自分の意思で選べるルートは、事実上「管理計画認定を取る」ほうだけということです。ここが、認定制度と税制がつながる部分です。

減額の内容と、静岡市ならではの申告先

項目 内容
対象工事の実施期間 2023年4月1日から2027年3月31日まで
減額対象面積 1戸当たり100㎡までの居住部分(共用部分も含む)
減額される割合 家屋の居住部分に係る固定資産税の3分の1(都市計画税は減額されません)
減額される期間 工事完了年度の翌年度分(1年度分のみ)
申告期限 工事完了の日から3か月以内

(工事完了日が1月2日から3月31日の場合は、翌々年度分の固定資産税が対象)

減額割合は本来、市町村の条例で定めるもの(参酌基準3分の1、範囲6分の1から2分の1)です。多くの自治体では条例を確認しないと分かりませんが、静岡市はチラシに「3分の1」と明記しています。ここは確認の手間が省けます。

そして静岡市ならではの実務ポイントがこれです。

マンションの所在区 申告先 電話番号
葵区 固定資産税課(静岡庁舎新館2階) 054-221-1047(葵区資産分)
駿河区 固定資産税課(静岡庁舎新館2階) 054-221-1547(駿河区資産分)
清水区 清水市税事務所(清水庁舎2階) 054-354-2082

清水区のマンションは、市役所静岡庁舎ではなく清水市税事務所が窓口です。政令指定都市で3区に分かれている静岡市ならではの分岐で、ここを間違えると3か月の申告期限が削られます。

申告に必要な書類も押さえておきます。

区分 書類 発行機関
共通 大規模の修繕等が行われたマンション申告書 固定資産税課/清水市税事務所
共通 総戸数(10戸以上)が確認できる書類(設計図面等)
共通 大規模の修繕等証明書 建築士、住宅瑕疵担保責任保険法人
共通 過去工事証明書 建築士、マンション管理士
認定マンション 管理計画の認定通知書または変更認定通知書の写し 住宅政策課
認定マンション 修繕積立金引上証明書 建築士、マンション管理士
助言・指導を受けた場合 助言・指導内容実施等証明書 住宅政策課

「大規模の修繕等証明書」と「過去工事証明書」は建築士等が発行するものです。工事が終わってから慌てて頼むと、3か月の期限に間に合わないことがあります。設計事務所や施工会社との契約時点で「税制申告用の証明書発行まで含める」と決めておいてください。私は見積書の段階でこれを明記するようにしています。

なお、住宅耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修に伴う固定資産税の減額措置とは重複適用できません。耐震補強と大規模修繕を同じ年度にやる場合は、どちらの減額を取るか事前に税務担当へ相談してください。


ブロック塀等耐震化促進事業──「撤去」と「改善」で条件が違う

敷地の周りにブロック塀があるマンションは、この制度を確認する価値があります。静岡市は撤去と改善の2本立てです。

事業 対象となる道路 補助率 基準額 補助限度額
撤去事業 通学路や避難のための道路など、または避難地沿い 見積額と基準額の少ない額の3分の2 1mあたり2万円 10万円(※)
改善事業 緊急輸送路、幹線避難路、避難地沿い 見積額と基準額の少ない額の3分の2 1mあたり3万8,400円 25万円

※ 地域防災計画に定められた避難所の敷地、または避難地に沿って設置されたブロック塀等を撤去する場合は上限なし

(出典:静岡市 ブロック塀等耐震化促進事業

「上限なし」という1行を見逃さないでください

撤去事業の限度額は10万円と、正直あまり大きくありません。ただし注記に、避難所の敷地または避難地に沿っている場合は上限なしと書かれています。

静岡市内のマンションで、隣が小中学校や公園・広場という立地は珍しくありません。その塀が地域防災計画上の避難所敷地・避難地に面していれば、金額の桁が変わる可能性があります。「うちは10万円だから関係ない」と切り捨てる前に、建築安全推進課(054-221-1124)に敷地の前面道路と隣接地の区分を確認してください。市のページにも「補助対象となる道路の確認は、建築安全推進課までお問い合わせください」と書かれています。

一敷地内すべて撤去が原則、という条件

注意事項が4つあり、どれも実務に直結します。

  1. 申請は事業を実施する前(契約前)に。事業を行った後(契約後)の申請では補助金は出ません。
  2. 道路に面したブロック塀等で、道路面から80cm以上のものが対象です。
  3. 原則、基礎の上に積んでいるブロック等はすべて撤去が条件。ただし幅員4m未満の道路に面し道路後退が必要な敷地の場合、基礎等の撤去も条件となります。
  4. 原則、一敷地内にある道路沿いのブロック塀等はすべて撤去が条件です。

4番目が曲者です。「傷んでいるところだけ部分的に直す」という発想が通りません。敷地の道路沿いにある塀を、全部撤去する前提で見積りを取る必要があります。金額は大きくなりますが、補助の対象工事量も増えます。

そして1番目。大規模修繕の一式契約にブロック塀を紛れ込ませると、交付決定前に契約したことになって対象外になる恐れがあります。塀は別契約に切り出す。これは静岡市に限らず、私が全国の自治体制度を見てきて共通する段取りです。

申請受付期間は2026年4月6日から2027年1月31日まで(2027年2月末までに工事が完了するものに限る)。ここにも代理受領制度が使えます。


民間建築物吹付けアスベスト対策事業──調査は手厚く、除去は薄い

大規模修繕の足場を架けてから、あるいは天井を開けてから発覚するのがアスベストです。静岡市には対策事業があります。

事業 内容 補助額
アスベスト分析調査事業 壁・柱・天井等に吹付けられた建材のアスベスト含有の有無を分析調査する事業 当該事業に要する経費の額以内(上限25万円/建築物
アスベスト除却等事業 吹付けられたアスベストを除去し、封じ込め、または囲い込みをする事業 当該事業に要する経費の3分の1以内(上限60万円/敷地

(出典:静岡市民間建築物吹付けアスベスト対策事業/2026年4月8日更新。令和8年度の補助申請を受付中、予算に限りあり)

私が静岡市の管理組合に強く伝えたいのは、この2つの補助率の落差です。

調査は「経費の額以内」、つまり実質的に全額(上限25万円)が見込めます。ところが除去等は3分の1以内、上限60万円。除去工事は数百万円から1,000万円を超えることも珍しくありません。600万円の除去工事なら3分の1で200万円ですが、上限60万円で頭打ちです。

結論はこうなります。調査は積極的に補助を使う。除去費は自己負担前提で長期修繕計画に載せる。この2階建ての読み方を、資金計画の段階でしておいてください。

対象は平成7年度(1995年度)以前に施工された建築物が中心です。マンションでアスベスト含有吹付け材が見つかりやすいのは、次のような場所です。

  • 機械室・電気室の天井や壁
  • 屋内駐車場の天井
  • 階段室の裏側
  • エレベーター機械室
  • パイプスペース(PS)内部

分析調査は建築物石綿含有建材調査者による調査に基づいて実施する必要があります。窓口は建築安全推進課指導係(054-221-1267)。ここも「対策事業に着手する前に交付申請をし、交付決定の通知を受ける必要がある」と明記されています。

私からの実務提案は1つ。調査は補助率が高いので、設計に入る前に調査だけ先に走らせてください。設計が固まってから「実はアスベストがありました」となると、工程も金額も組み直しになります。


木造住宅向けの制度(TOUKAI-0+)は共用部には使えません

検索すると「静岡市 耐震 補助金」で木造住宅向けの制度が上位に出てきます。管理組合の方が混乱しやすいので、整理しておきます。

静岡県と市町が推進する「プロジェクトTOUKAI-0」は、2026年度から新たな事業体系「TOUKAI-0+(プラス)」に切り替わりました。静岡市の木造住宅向け事業は次の3本です。

事業 内容
わが家の専門家診断事業 耐震診断補強相談士を派遣し、無料で簡易な耐震診断を実施
木造住宅耐震事業 木造住宅の補強計画(設計)費と耐震補強工事費に対する補助
耐震シェルター整備事業 耐震シェルター設置費用に対する補助

これらは木造住宅が対象です。RC造・SRC造の分譲マンションの共用部には使えません。マンション管理組合が見るべきは、前述した「特定建築物および非木造共同住宅」向けの3事業のほうです。

とはいえ、この情報を捨てる必要はありません。理事の方が市内に木造の実家を持っているケースは多い。掲示板に「市の木造住宅向け制度はこちら」と1枚貼るだけで、管理組合が住民のために動いている感じが出ます。私はこれを何度か提案して、実際に喜ばれました。

そしてもう1つ。静岡市は「市の職員をかたり耐震補強工事を勧誘する業者にご注意(PDF)」という注意喚起を出しています。補助制度が手厚い自治体では、それに便乗する営業も増えます。理事会に「市から言われて来ました」と名乗る業者が現れたら、まず市に確認してください。


住宅金融支援機構の2本立て──「一時金」を「月々の見直し」に変える

補助金では足りない部分を埋めるのが、住宅金融支援機構の制度です。静岡市も分譲マンションの管理のページから、機構の各制度に直接リンクを張っています。市が推奨している、と読んでいい形です。

制度 概要 管理組合にとっての意味
マンション共用部分リフォーム融資 管理組合名義で借りられる全期間固定金利の融資。マンション管理センターの債務保証を利用すれば理事長個人の連帯保証は不要 一時金徴収を回避できる。管理計画認定等を受けていると返済期間の延長や金利引下げの扱いがある(金利は毎月見直しのため最新は機構サイトで確認)
マンションすまい・る債 修繕積立金を積み立てながら運用する債券。年1回の募集で口数に上限があり実質先着順 2026年度から、管理適正評価制度・管理適正化診断サービスも利率上乗せの対象に拡充
マンションライフサイクルシミュレーション 機構が提供する試算ツール 総会資料に「30年後の積立金残高」を出せる

私が総会の現場で何度も見てきたのは、「1戸あたり50万円の一時金をお願いします」という議案が通らない一方で、「月々3,000円の積立金見直しをお願いします」という議案は通る、という光景です。金額の総額は同じでも、議案の性格が変わる。融資はそのための道具です。


第4次静岡市耐震改修促進計画が名指しした「マンションの合意形成」

2026年3月、静岡市は第4次静岡市耐震改修促進計画を策定しました。計画期間は2026年度から2030年度までの5年間です。ここに、管理組合が知っておくべき数字と1文があります。

静岡市の耐震化の現状(第4次計画・概要版より)

対象 対象数 耐震性を有するもの
住宅 約29万戸 約27万戸 93.0%(2023年)
特定建築物 2,996棟 2,880棟 96.1%(2024年度末)
要緊急安全確認大規模建築物 71棟 70棟 98.6%(2025年度末)
要安全確認計画記載建築物(沿道建築物) 35棟 15棟 42.9%(2025年度末)

沿道建築物の耐震性不足解消率が42.9%と突出して低い。耐震性が不足しているのが20棟残っています。市はこのうち「倒壊により道路を塞ぐ恐れがより高い建築物」5棟を、2030年度末までにおおむね解消する目標を掲げています。

想定される被害

静岡県第4次地震被害想定による南海トラフ巨大地震(マグニチュード9.0程度)では、静岡市の建物被害は全壊・焼失棟数 約93,000棟、人的被害は死者数 約15,300人(いずれも津波による被害を含む)と想定されています。

市が「課題」として書いた1文

第4次計画の「耐震化の課題(建築物における課題)」に、こう書かれています。

マンションやテナントビルにおいて、居住者・入居者の合意形成が難しい。

そして施策の欄には、こうあります。

分譲マンションなどの区分所有者の合意形成に係る支援(要安全確認計画記載建築物)

静岡市は、マンションの合意形成が難しいことを課題として認識し、支援を施策に書き込んでいます。ここに管理組合が使える突破口があると私は考えています。

市政出前講座を、理事会や総会に呼ぶという手

静岡市は「市政出前講座『わが家の耐震対策』」を実施しています。職員が耐震対策について情報提供や解説をしてくれる仕組みです。

管理組合の総会や理事会は、まさに「講座を呼べる場」です。工事会社である私が説明するより、市の職員が制度を説明したほうが、区分所有者の納得感は違います。「理事会が業者に押し切られた」ではなく「公的な情報を踏まえて自分たちで判断した」という形をつくることが、合意形成では決定的に効きます。

自社の受注という意味では、私にとっては遠回りな提案かもしれません。それでも、途中で揉めて工事が止まるほうがお互いに損だと思っています。

さらに、第4次計画には「専門技術者と協力した耐震合同説明会の開催や耐震相談窓口の設置」も施策として書かれています。個別に相談しにくければ、こうした場に理事2人で顔を出してみてください。


静岡市の立地が外壁に与える3つの負荷

制度の話が続いたので、建物そのものの話をします。静岡市は葵区・駿河区・清水区の3区からなり、北は南アルプス、南は駿河湾に面する、非常に幅の広い市域を持っています。同じ静岡市でも、建物にかかる負荷が場所によって違います。

要因 影響 修繕仕様への反映
駿河湾からの塩害(清水区・駿河区の海沿い、清水港周辺) 飛来塩分が金属部を腐食させ、塗膜の劣化を早める。鉄部(手すり・階段・避難ハッチ・設備架台)から傷む 鉄部はケレン(下地処理)の等級を上げ、防錆下塗りの仕様を海側で変える。海側と山側で仕様を分けるのが合理的
日照時間の長さと紫外線 南面・西面の塗膜とシーリングの劣化が早い。同じ建物でも方位で差が出る 塗料グレードを1段上げる判断が効きやすい。シーリングは打ち替え範囲を広く見る
台風の通り道 強風+横なぐりの雨。サッシまわり・笠木・パラペットからの雨水浸入。飛来物による外壁・防水層の損傷 台風後の点検を年間行事に。シーリングの打ち替えを先送りしない

この3つが同時にかかる立地は、実は全国的に見てもなかなか厳しい部類です。私が山梨県内の内陸の市について書いたときは「海から遠く塩害は軽微なので、そのぶんの予算を凍結融解対策に回しましょう」と書きました。静岡市は逆です。塩害対策を削ってはいけない立地です。

方位別・海側と山側で劣化評価を分ける

劣化診断の報告書が「外壁全体で劣化度B」といった一括の評価になっていたら、私は少し疑います。静岡市のマンションでは、海に面した側と内陸側、南面と北面で、劣化の進み方が明確に違うことが多い。方位ごと・面ごとに評価が分かれている報告書のほうが、実態に合っています。

そして、面ごとに劣化が違うということは、面ごとに工法を変える余地があるということでもあります。ここが次の話につながります。

私が忘れられない現場の話

海に近いあるマンションで、屋上防水に畳1枚ほどの膨れがありました。理事会では「来年の大規模修繕でまとめてやりましょう」となり、1年放置されました。

翌年、膨れは数倍に広がっていました。膨れの中に入り込んだ水が下地まで回り、最上階の住戸の天井にシミが出た。防水の部分補修で済んだはずのものが、下地補修を含む大掛かりな工事になり、費用は数倍。何より、住民の方との関係を修復するのに半年かかりました。

膨れは、中に水が入っているというサインです。年に1回、できれば台風シーズンが終わった秋に、屋上と外壁を見る習慣をつけてください。理事の任期が1年で入れ替わる管理組合ほど、この習慣が引き継がれずに消えていきます。


大規模修繕の費用構造──いちばん大きな費目は塗料ではありません

ここからは、補助金より桁の大きい話をします。

大規模修繕の見積書を開いたとき、多くの理事の方は「外壁塗装 ○○円」「屋上防水 ○○円」という工事費目に目が行きます。ですが、実際にいちばん削れる余地があるのは、その上にある「仮設工事」です。

仮設足場の費用は、大規模修繕の総工事費のおおむね15%から25%を占めます。

総工事費 仮設足場費の目安(15〜25%)
3,000万円 450万円〜750万円
5,000万円 750万円〜1,250万円
8,000万円 1,200万円〜2,000万円

ブロック塀の補助金が上限10万円(避難地沿いは上限なし)、改善で25万円。桁が2つ違います。

私が申し上げたいのは、補助金が無意味だということではありません。理事会が議論に費やす時間の配分を、金額の大きさに合わせてくださいということです。補助金の申請書類に3回の理事会を使うのなら、仮設工法の検討にも同じだけの時間を使う価値があります。

「敷地に余裕があるから足場」で止まっていませんか

静岡市は東京23区に比べて敷地に余裕のあるマンションが多い。だから足場を架けるのに支障がない。そこで思考が止まってしまうケースを、私は何度も見ています。

足場を架けられることと、足場を架けるべきことは、別の話です。理事会で次の3つを自問してみてください。

  1. 今回の工事は、全面改修が必要なのか、部分補修で足りるのか。タイルの浮きが全体の数%なら、全面に足場を架ける必然性は薄い。
  2. 居住者が2〜3か月バルコニーを塞がれる生活を受け入れられるか。洗濯物が干せない、窓が開けられない、防犯ネットで日中も薄暗い。この期間、必ず苦情が出ます。
  3. 「仮設工事」という費目の下に、何がいくら計上されているのか。足場材のリース料、架設・解体の手間、養生シート、飛散防止ネット、運搬費。内訳を出してもらってください。

3つの工法を比較する

株式会社明誠では、次の3つの工法から建物に合うものを提案しています。

工法 特徴 向いている建物 居住者への影響
通常足場工法 従来型の仮設足場。全面に安定した作業床を確保できる 中低層、形状が複雑、外壁全面の改修が必要な建物 大(2〜3か月バルコニーが塞がる、防犯面の不安)
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで作業員が下降しながら施工。足場を架けない 高層、敷地に余裕がなく足場が架けられない、部分補修主体、コストを最優先する建物 小(バルコニーが塞がらない、工期が短い)
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける 大規模・複雑な建物で、総合的なコスト最適化が必要なケース 中(足場を架ける面だけ影響が出る)

ロープアクセス工法の技術情報や安全基準については、姉妹サイトのロープアクセスドットコムにまとめています。工法そのものの理屈を知りたい方は、そちらもご覧ください。

日本の改修業界では、この3つを自社で提案できる会社はまだ多くありません。明誠は日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板といった各分野の専門職が加盟することで、品質と価格の両立を図っています。詳しくはロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。

静岡市のマンションで、ハイブリッドが効きやすい理由

前述したとおり、静岡市のマンションは海側と山側、南面と北面で劣化の進み方が違うことが多い。劣化の進んだ面だけ足場を架け、比較的健全な面はロープアクセスで対応する。これがハイブリッド工法の考え方です。

「全面に足場を架けて、全面を同じ仕様で塗る」という発想を一度外すと、見積りの構造が変わります。


モデルケース2本──静岡市の管理組合を想定した試算

以下は私が実際の案件をもとに構成した想定ケースです。建物の状態、劣化の程度、仕様によって金額は大きく変わります。あくまで考え方の例としてご覧ください。

ケース1:駿河区・築26年・8階建て44戸

項目 従来の全面足場 ハイブリッド工法
総工事費 7,200万円 6,200万円
差額 ▲1,000万円
1戸あたり 約164万円 約141万円(▲約23万円
工期 約4か月 約3か月(約1か月短縮

組み方:バルコニー側は足場を架け、妻面と屋上まわり、海側の鉄部集中箇所はロープアクセスで対応。バルコニー側に足場を架けるのは、手すり内側の塗装や物干し金物の交換など、作業量が多く手元作業が続く部分だからです。

ケース2:清水区・築42年・5階建て20戸

項目 従来の全面足場 ロープアクセス主体
総工事費 3,400万円 2,800万円
差額 ▲600万円
1戸あたり 約170万円 約140万円(▲約30万円
資金計画 一時金の検討が必要 機構融資と組み合わせて一時金ゼロ

ここで直視していただきたいのは、20戸で3,400万円という数字です。1戸あたり170万円。戸数の少ないマンションは、1戸が背負う金額が重くなります。同じ工事内容でも、100戸のマンションなら1戸34万円で済む計算です。

戸数の少ない管理組合ほど、工法の見直しによる削減額が1戸あたりに与えるインパクトが大きい。ここを理事会で共有してください。


修繕積立金が足りないとき、打ち手は4つ

診断の結果、想定より工事費が膨らむ。積立金が足りない。この場面で管理組合が取れる選択肢は4つです。

打ち手 内容 難易度 副作用
① 一時金の徴収 区分所有者から不足分を一括徴収 総会で紛糾しやすい。滞納リスク
② 融資を受ける 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資など 利息負担。ただし月々の負担に均せる
③ 段階施工 工事を2回3回に分ける 仮設費が回数分かかり、総額はむしろ増える
④ 工法を見直す 足場前提の仕様をロープアクセス/ハイブリッドで再検討 低〜中 工法に精通した会社を探す必要がある

私が繰り返しお伝えしているのは、④を最初に検討してくださいということです。

理由は順番にあります。設計に入る前なら、①から④まで4つの選択肢があります。ところが設計事務所と仕様を固め、足場前提の数量が出て、業者を選定した後になると、④はもう選べません。選択肢が消える前に検討する。それだけの話です。

③の段階施工は、一見合理的に見えて総額が増えることが多い。仮設足場は架設と解体で費用が発生します。2回に分ければ2回分かかる。ここは理事会でよく誤解される点です。

料金の考え方については適正価格へのこだわりにまとめています。


工事の適期と、18か月逆算スケジュール

静岡市で外装工事に適した時期

時期 適性 理由
3月下旬〜6月上旬 気温・湿度が安定。塗料の乾燥条件が良い
6月中旬〜7月上旬 梅雨。降雨で工程が延びやすい
7月中旬〜8月 乾燥は早いが猛暑。作業員の熱中症対策が必須
9月〜10月中旬 台風シーズン。足場の倒壊リスクと養生の手間
10月下旬〜11月 気温・湿度とも安定。最も条件が良い時期の1つ
12月〜2月 温暖な静岡市では作業可能日が多い。ただし朝晩の低温で施工条件を下回る日がある

静岡市は温暖なので、内陸の寒冷地に比べれば冬でも工事できる日が多い。一方で台風シーズンの扱いが重いのが特徴です。足場を架けたまま台風を迎えると、養生シートをたたむ・広げるの手間が発生し、最悪の場合は倒壊リスクがあります。

年間で条件の良い窓は、春(3月下旬〜6月上旬)と晩秋(10月下旬〜11月)の2つ。この窓を押さえるには、前年の秋までに業者選定を終えている必要があります。優良な施工会社ほど、良い時期の枠は早く埋まります。

18か月逆算カレンダー

静岡市の制度を織り込んだスケジュールです。理事会の引き継ぎ資料にそのまま使えるよう、月単位で書きます。

時期 やること 窓口・相手
18か月前 劣化診断を実施。長期修繕計画の見直しが7年以内かを確認 診断会社/管理会社
17か月前 過去の大規模修繕の記録を集める(税制の「過去工事証明書」に必要) 管理組合の書類棚
16か月前 耐震補助を使うなら、実施前年度の8月までに相談(この締切は動かせません) 建築安全推進課 054-221-1124
15か月前 認定基準17項目を自己点検。規約改正が必要かを判定 理事会
14か月前 アスベスト分析調査の交付申請(補助率が高いので先に走らせる) 建築安全推進課指導係 054-221-1267
12か月前 工法の選定(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)。長寿命化促進税制の要件を税務担当に確認 施工会社/固定資産税課または清水市税事務所
10か月前 マンション管理センターへ事前確認を依頼し、適合証を取得(手数料が7分の1になります) マンション管理センター
9か月前 資金計画を固める。機構融資の事前相談 住宅金融支援機構
8か月前 静岡市へ管理計画認定を申請 住宅政策課 054-221-1590
6か月前 ブロック塀の交付申請(塀は必ず別契約に) 建築安全推進課
4か月前 交付決定を受けてから契約。代理受領を使うなら業者と委任の合意 施工会社
着工 工事開始
竣工後3か月以内 長寿命化促進税制の申告(葵区・駿河区=固定資産税課/清水区=清水市税事務所) 各窓口
引き継ぎ時 次期理事会へ書面で申し送り 理事会

18か月と聞くと長く感じるかもしれません。ですが、耐震補助の「前年度8月まで」という締切と、評定書が必要という条件を考えると、耐震まで含めるなら24か月から36か月を見ておくのが現実的です。

理事の任期が1年である問題

多くの管理組合で、理事の任期は1年です。18か月の工程は、必ず理事会をまたぎます。

私が見てきた失敗のほとんどは、技術的な失敗ではなく引き継ぎの失敗です。前期の理事会が市に電話して聞いた内容が、口頭で終わっていて次期に伝わらない。もう一度ゼロから電話することになる。

電話した日付、担当課、聞いたこと、答えの3点セットを、A4で1枚にまとめて残してください。それだけで、次の理事会の仕事は半分になります。


相見積りで見るべき3つのポイント

同じ建物の見積りが、会社によって数千万円違うことがあります。理由の多くは、次の3つのどこかにあります。

① 数量の根拠

「外壁塗装 3,200㎡」という数字が、図面から拾ったものなのか、現地で実測したものなのか。図面拾いだけだと、バルコニー内部や庇の裏、設備架台のまわりが抜けることがあります。「この数量はどうやって出しましたか」と1問聞いてください。答え方で、その会社が現場を見ているかどうかが分かります。

② 仕様の粒度

「シリコン系塗料」ではなく、メーカー名・製品名・グレードまで書かせてください。同じ「シリコン」でも、耐用年数が7年のものと13年のものがあります。仕様が曖昧な見積りは、安く見えて当然です。

③ 「別途」の中身

見積書の「別途」「本体工事に含まず」という行が何を指しているか。とくに下地補修は要注意です。タイルの浮きやひび割れの数量は、足場を架けて打診してみないと確定しません。多くの見積りは「想定数量」で組まれています。

ここで必ずやっていただきたいこと。想定数量を超えた場合の追加単価を、契約前に見積書へ明記させてください。「1㎡あたり○○円」と書かせておけば、工事中の追加請求が青天井になりません。これをやっていない管理組合が、追加費用でもめる。私が見てきた紛争のかなりの割合が、ここです。

明誠の施工品質に対する考え方は確かな施工にまとめています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 静岡市に、マンションの大規模修繕そのものに使える補助金はありますか。
A. 共用部の外壁塗装や防水工事そのものへの直接補助は、2026年8月時点の公開情報では見当たりませんでした。使えるのは、耐震補強(限度額1,500万円)、ブロック塀等(撤去上限10万円/改善上限25万円)、アスベスト(調査上限25万円/除去等上限60万円)といった「特定の工事」に対する補助と、工事後の固定資産税の減額措置です。

Q2. 築30年・4階建て・延べ1,800㎡のマンションですが、耐震補助の対象になりますか。
A. 静岡市の建築物耐震補強事業は「昭和56年5月31日以前に建築されたもの又は同日において建築中であった特定建築物及び3階以上かつ延べ面積1,000平方メートル以上の非木造共同住宅」が対象です。築30年(1996年前後の建築)だと、旧耐震の要件を満たしません。旧耐震かどうかは建築確認の日付で判断されます。確認済証を探してください。

Q3. 補助金は管理組合の名義で申請できますか。
A. 静岡市の耐震3事業は「所有者に対して補助金を交付する」と書かれており、管理組合名義での申請可否について明記がありませんでした。実務上は建築安全推進課(054-221-1124)に事前相談してください。区分所有建物では管理者(理事長)が申請するのが一般的です。

Q4. 管理計画認定を取るのに、いくらかかりますか。
A. 静岡市の申請手数料は、事前確認適合証があれば長期修繕計画1つで3,800円、なければ26,900円です。加えてマンション管理センターの事前確認サービスの費用がかかります。認定を取ると、マンション長寿命化促進税制(固定資産税3分の1減額)とフラット35の金利引下げ等につながります。(出典:静岡市 マンション管理計画認定制度

Q5. 長寿命化促進税制の申告先は、どこですか。
A. マンションが葵区・駿河区にある場合は固定資産税課(葵区資産分054-221-1047/駿河区資産分054-221-1547)、清水区にある場合は清水市税事務所(054-354-2082)です。工事完了の日から3か月以内に申告してください。(出典:静岡市「大規模の修繕等が行われたマンションの固定資産税の減額措置」令和7年4月発行)

Q6. ブロック塀の補助は、大規模修繕の見積りに一緒に入れてもいいですか。
A. おすすめしません。交付決定前に契約すると補助対象外になります。大規模修繕の一式契約に含めると、契約日が交付決定より前になるおそれがあります。塀は別契約に切り出してください。また「一敷地内にある道路沿いのブロック塀等はすべて撤去」が原則条件です。

Q7. ロープアクセス工法だと、品質は落ちませんか。
A. 工法と品質は別の話です。ロープアクセスは高所作業の手段であり、下地処理や塗装の仕様は足場工法と同じ基準で行います。むしろ作業員が壁面に近い距離で作業するため、目視での劣化発見に強い面があります。技術情報はロープアクセスドットコムをご覧ください。

Q8. 理事会で工法の話を出したいのですが、何から始めればいいですか。
A. 劣化診断の報告書を、方位別・面別に分けて出してもらうところからです。全面が一律に傷んでいるのか、特定の面だけなのかが分かると、「全面足場が必要か」という議論の土台ができます。診断と施工を同じ会社に任せると判断が偏りやすいので、そこは分けることをおすすめします。ご相談はお問合せフォームから承ります。


この記事のポイントまとめ

  • 静岡市に共用部の大規模修繕そのものへの直接補助は見当たらない
  • ただし3階以上・延べ1,000㎡以上の非木造共同住宅は耐震補助の正面対象(限度額1,500万円)
  • 耐震補助は「実施する前年度の8月まで」に建築安全推進課へ相談が必要
  • 代理受領制度で、管理組合の当初持ち出しを補助金の分だけ減らせる
  • 管理計画認定は静岡市長が受け付ける。手数料は適合証ありで3,800円
  • 長寿命化促進税制は減額割合3分の1。清水区は申告先が清水市税事務所
  • 静岡市の長期修繕計画作成率は81.0%で全国平均を大きく下回る
  • 2026年度は静岡市マンション管理適正化推進計画の最終年度にあたる
  • 駿河湾の塩害・強い紫外線・台風の3つが静岡市の外壁を傷める
  • 仮設足場は総工事費の15〜25%。補助金より桁の大きい削減余地がある

出典・参考資料

静岡市(lg.jp)

国・その他

主な問い合わせ先

用件 電話番号
管理計画認定・マンション管理全般 都市局建築部住宅政策課 住まい支援係 054-221-1590
耐震診断・補強計画・補強工事・ブロック塀 都市局建築部建築安全推進課 安全推進係 054-221-1124
アスベスト対策事業 都市局建築部建築安全推進課 指導係 054-221-1267
固定資産税の減額(葵区・駿河区) 財政局固定資産税課 054-221-1047/054-221-1547
固定資産税の減額(清水区) 清水市税事務所 054-354-2082
市の総合案内 静岡市コールセンター 054-200-4894

執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)

株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社です。日本で初めてロープアクセス工事のフランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板など各分野の専門職が加盟しています。建物の状態に応じて、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から最適なものをご提案します。

最終更新:2026年8月20日

免責事項:本記事は2026年8月20日時点で公開されている情報をもとに作成しています。補助制度の内容・金額・受付期間は変更されることがあり、予算の範囲内で先着順となる制度もあります。申請の可否や具体的な金額については、必ず各担当課の窓口でご確認ください。本記事の情報を用いて生じた損害について、当社は責任を負いかねます。

最後に1つだけ。この記事の内容は、電話2本と20分で確認できます。建築安全推進課(054-221-1124)に「うちのマンションは耐震補助の対象になりますか」と1問。住宅政策課(054-221-1590)に「管理計画認定の手続きを教えてください」と1問。それだけで、次の理事会の議題が1つ決まります。