2026年8月26日 更新
この記事で答える質問:静岡県藤枝市の分譲マンションで大規模修繕をするとき、市・県・国のどの制度が使えて、どの制度は使えないのか?
先に結論からお伝えします。藤枝市には、マンションの外壁塗装や屋上防水といった大規模修繕工事の工事費そのものを直接補助する市の制度は、2026年8月26日時点でありません。藤枝市の公式サイトにも「現在お住まいの住宅の外壁塗装や屋根塗装の補助金はありません」と明記されています(出典:藤枝市「各種補助事業」)。
ただ、それで話が終わるわけではありません。藤枝市には「大規模修繕の前後を支える制度」が確実に存在します。私はこの記事で、その4つを整理し、そのうえで補助金が薄い地域だからこそ効く「もう一つの原資」の作り方までお話しします。
私は株式会社明誠の本間と申します。マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年近く手がけ、足場を組む工事と、ロープアクセス工法(産業用ロープで職人が壁面を降りながら施工する無足場工法)の両方を扱ってきました。補助金の相談は毎週のように受けますが、正直に申し上げます。補助金だけを追いかけて工事の中身が薄くなった管理組合を、私は何度も見てきました。この記事は、そうならないための整理です。
結論|藤枝市で使えるのは「工事費補助」ではなく、この4制度
まず全体像を1つの表にまとめます。藤枝市の分譲マンションの管理組合・区分所有者が、2026年度(令和8年度)に現実的に検討できるのは次の4つです。
| # | 制度名(正式名称) | 主体 | 対象になる場面 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| ① | マンション管理計画認定制度/藤枝市の認定申請費補助 | 藤枝市 | 管理体制と長期修繕計画を整えるとき | 藤枝市 |
| ② | 藤枝市既存建築物耐震性向上事業 | 藤枝市 | 旧耐震マンションの耐震診断をするとき | 藤枝市 |
| ③ | 藤枝市住宅省エネ改修推進事業 | 藤枝市 | 断熱・省エネ改修をするとき(主に住戸単位) | 藤枝市 |
| ④ | マンションストック長寿命化等モデル事業 | 国土交通省 | 先導性のある大規模改修・再生に挑むとき | 国土交通省 |
この表を見て、「どれも塗装や防水そのものには効かないじゃないか」と思われたはずです。そのとおりです。だからこそ、順番が大事になります。
押さえるべき順番は「①→②→③→④」
私が藤枝市の理事長さまにお会いしたら、この順番でお話しします。
- まず①で管理体制を整える。管理計画認定は、それ自体が補助金ではありませんが、後述する融資の条件を有利にし、資産価値の評価にも効きます。
- 旧耐震なら②を先に。耐震診断の結果が出ていないまま大規模修繕を発注すると、数年後に足場を組み直す羽目になります。
- ③は住戸単位の省エネ改修が中心。共用部の工事とセットで考えると、住民の合意形成の材料になります。
- ④は「挑戦枠」。応募のハードルは高いですが、令和8年度の第3回応募期間は2026年9月14日(月)から9月18日(金)と公表されています(出典:国土交通省)。この記事を読んでいる時点で、まだ間に合う可能性があります。
「補助金ゼロ」でも工事費は下げられる
ここが本題の入口です。工事費補助が薄い自治体では、補助金で取れなかった分を、工法の選択で取り返すという発想が要ります。マンションの大規模修繕では、総工事費の15〜25%程度を仮設足場が占めるのが一般的です。この部分に手を入れられるかどうかで、藤枝市の管理組合の負担は大きく変わります。ロープアクセス工法の技術的な背景は、姉妹サイトのロープアクセスドットコムで詳しく解説しています。
藤枝市のマンションは、いま静かに高経年化している
制度の話に入る前に、藤枝市という街の前提を共有させてください。数字を見ると、なぜ市が2023年(令和5年)にわざわざ計画を作ったのかが分かります。
人口約13.9万人、6.2万世帯の「静岡県中部の住宅都市」
藤枝市の人口は139,131人、世帯数は62,286世帯、1世帯あたり2.23人です(2025年6月末時点/出典:藤枝市「人口統計」)。1世帯2.23人という数字は、単身・二人世帯が主流になっていることを示します。分譲マンションでいえば、住民の高齢化と賃貸化が同時に進む局面です。
JR東海道本線の藤枝駅周辺には、駅徒歩圏の分譲マンションが一定量あります。静岡市・焼津市への通勤圏として、1980年代後半から2000年代にかけて供給された物件が中心です。つまり2026年時点で、築25年から築40年のゾーンに入っている建物が多いということになります。
藤枝市は令和5年3月に「マンション管理適正化推進計画」を策定済み
藤枝市は市のサイトでこう述べています。
藤枝市においては、今後、建築後相当の年数を経たマンションが、急激に増大していくものと見込まれており、これらに対して適切な修繕がなされないままに放置されると、老朽化したマンションは、区分所有者等自らの居住環境の低下のみならず、ひいては周辺の住環境や都市環境の低下など、深刻な問題を引き起こす可能性があります。
(出典:藤枝市「分譲マンションの管理について」)
行政がここまで踏み込んだ表現を使うのは、それだけ切迫しているからです。令和2年6月の「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」改正を受け、藤枝市は令和5年3月に「藤枝市マンション管理適正化推進計画」を策定しました。
私が藤枝市エリアの現場で感じること
私は静岡県内の物件も見てきました。首都圏の物件と比べたときの藤枝市エリアの特徴は、建物の傷み方が「潮風と紫外線」に寄っていることです。駿河湾から距離があるとはいえ、県中部の平野部は日射が強く、南面のバルコニー手すりや外壁の塗膜劣化が早い傾向があります。
一方で、東京23区のように高額な工事単価に慣れていない管理組合が多く、見積書を見た瞬間に理事会が凍りつく、という場面に何度も立ち会いました。修繕積立金の水準が首都圏より低めに設定されている物件も少なくありません。だからこそ、藤枝市では「補助金をどう取るか」より「工事費をどう設計するか」の比重が大きいと私は考えています。
【制度①】マンション管理計画認定制度と藤枝市の申請費補助
4制度のうち、私が藤枝市の管理組合に最初にお勧めするのがこれです。
制度の概要|「管理が良いマンション」を国の基準で証明する
マンション管理計画認定制度は、管理組合の管理計画が一定の基準を満たす場合に、地方公共団体(藤枝市)が認定する制度です。認定基準には次のような項目が含まれます(出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」)。
- 管理組合の運営:年1回以上の集会(総会)の開催
- 管理規約が作成されていること
- 管理費と修繕積立金が区分経理されていること
- 長期修繕計画の計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていること
- 修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
藤枝市は「認定申請書の作成に要する経費」を一部補助
ここが藤枝市固有のポイントです。藤枝市は、認定申請書の作成に要する経費について一部補助金を交付しています(出典:藤枝市「分譲マンションの管理について」)。
補助額・補助率・年度ごとの予算枠は、公表資料に金額の記載がないため、この記事では断定しません。実際に申請を検討される場合は、藤枝市 建築住宅課(電話:054-643-3481)へ直接ご確認ください。制度の運用は年度ごとに見直されるため、最新情報は市の公式ページでのご確認をお願いします。
認定を取ると、何が具体的に変わるのか
「認定を取っても補助金が増えるわけじゃないなら意味がないのでは」と聞かれることがあります。私の答えは3つです。
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 融資条件 | 住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資で、返済期間を1年以上35年以内まで延ばせる(出典:住宅金融支援機構) |
| 金利 | 一定の工事要件に合致した場合、それぞれ0.2%ずつ金利が引き下げられる仕組みがある(出典:住宅金融支援機構) |
| 資産価値 | 中古流通時に「管理が評価されるマンション」として説明材料になる |
積立金が不足している藤枝市の物件では、2番目の金利差が効きます。仮に借入5,000万円・返済期間20年で0.2%の差が付くと、総返済額は100万円単位で変わってきます。私はこれを、必ずワンセットで理事会にご説明するようにしています。
相談先|マンション管理計画認定制度相談ダイヤル
制度そのものの疑問には、(一社)日本マンション管理士会連合会が運営する相談ダイヤルがあります。
- 電話番号:03-5801-0858
- 受付時間:月曜〜金曜(祝日、年末年始を除く)午前10時〜午後5時
- (出典:藤枝市「分譲マンションの管理について」)
静岡県内であれば、静岡県マンション管理士会の無料相談会も選択肢になります。
【制度②】藤枝市既存建築物耐震性向上事業|旧耐震なら大規模修繕より先に
築40年前後の物件、つまり1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた「旧耐震」のマンションには、この制度が関わってきます。
耐震診断への補助がある
藤枝市は「藤枝市既存建築物耐震性向上事業」として、建築物の耐震診断をする費用の一部を補助しています(出典:藤枝市「建築物の耐震診断に対する補助」)。
重要な運用ルールが2つあります。
- 着手前(契約前)の申請が必要
- 同じ対象事業費について、他の補助金と重複して補助を受けることはできない
補助率と上限額は、市の交付要綱で建物用途・規模ごとに定められています。分譲マンション(非木造の共同住宅)に適用される具体的な数字は要綱の確認が要るため、この記事では金額を断定せず、建築住宅課(054-643-3481)への確認をお勧めします。
なぜ「大規模修繕より先に」なのか
これは制度の話ではなく、私の現場感覚の話です。
耐震診断の結果、耐震補強が必要だと判明した場合、補強工事は外壁面に大きく手を入れます。ブレース(斜め材)を入れる、外付けフレームを設置する、袖壁を増設する——いずれも外壁の仕上げをやり直す工事です。
ここで、先に大規模修繕で外壁塗装を終わらせていたらどうなるか。きれいに塗り直した壁を、数年後にまた壊すことになります。 私は静岡県ではありませんが、関東のある団地でこの順番を間違えた現場を見ました。塗装から3年後に耐震補強が決まり、足場を2回組むことになった。単純計算で、仮設費だけが二重に発生します。
正直に申し上げます。旧耐震のマンションで理事会が「まず外壁をきれいにしよう」と言い出したとき、私は工事を受注する立場でありながら「診断が先です」とお伝えしています。順番を間違えると、20年スパンで見たときに管理組合が損をするからです。
藤枝市は南海トラフ地震の想定区域
静岡県は南海トラフ巨大地震の想定区域であり、藤枝市も例外ではありません。静岡県は木造住宅の耐震化について「プロジェクトTOUKAI-0」を長年展開してきました。藤枝市の木造住宅向け制度では、1981年5月以前に建てられた木造住宅の耐震補強計画策定費と工事費を一体で補助する仕組みがあり、補助率100%・上限115万円という水準が案内されています(出典:藤枝市「木造住宅の耐震化の補助」)。
ただし、これは木造住宅向けです。分譲マンション(RC造・SRC造)は対象が異なります。 ここを混同した相談を、私は何度も受けました。ネット記事で「藤枝市は耐震補強に上限115万円」という数字だけを見て、マンションでも使えると思い込んでしまうケースです。制度は建物の構造で切り分けられています。
【制度③】藤枝市住宅省エネ改修推進事業|住戸単位が主戦場
3つ目は省エネです。ここは2026年度の目玉といえる制度ですが、マンション管理組合にとっては読み方に注意が要ります。
補助額の目安
藤枝市住宅省エネ改修推進事業では、補助上限額として次の水準が案内されています。
| 到達水準 | 補助上限額 |
|---|---|
| 省エネ基準 | 76.6万円/戸 |
| ZEH水準 | 102.5万円/戸 |
| ZEH水準+構造補強工事を行う場合 | 138.5万円/戸 |
補助額は「モデル工事費×23%の合計額」「実際の工事費×23%」「補助上限額」のうち、最も低い額とする計算方式が案内されています(出典:藤枝市「藤枝市住宅省エネ改修推進事業」)。
管理組合が誤解しやすいポイント
この制度は「住宅の省エネリフォーム」に対する補助です。窓の断熱改修、床・壁・天井の断熱、高効率設備の導入など、住戸内の工事が中心になります。
一方、マンションの大規模修繕で行う外壁塗装や屋上防水は、それ自体では省エネ改修に該当しません。外壁に外断熱を新設する、共用部の窓(アルミサッシ)を高断熱型に交換する、といった工事内容であれば検討の余地がありますが、共用部改修が対象になるかどうかは工事内容ごとに市の判断が分かれます。契約と工事着手の前に、建築住宅課へ確認してください。
藤枝市の補助制度は、いずれも契約および工事着手前の申請が原則です(出典:藤枝市「各種補助事業」)。見積を取って、施工会社を決めて、契約書に判を押してから「補助金は使えますか」と相談に来られる管理組合が、毎年一定数いらっしゃいます。その時点では、もう手遅れです。
私からの提案|共用部と専有部を同じ総会で扱う
現実的な使い方として、私は次のご提案をしています。
- 共用部の大規模修繕(外壁・防水・シーリング)は管理組合の工事として発注する
- 同時期に、希望する区分所有者が住戸の窓断熱改修を行い、この省エネ補助を各自で申請する
- 足場やロープアクセスの仮設が架かっているタイミングに合わせれば、サッシ交換の施工効率が上がる
管理組合の総会で「共用部の工事に合わせて、ご自宅の窓を替えたい方は補助金が使えます」と案内すると、住民の関心が一気に上がります。大規模修繕の合意形成は「自分ごと化」で決まる、というのが私の20年の実感です。
【制度④】国のマンションストック長寿命化等モデル事業|9月18日が次の締切
4つ目は国の制度です。ハードルは高いですが、金額の桁が違います。
令和8年度の応募スケジュール
国土交通省は令和2年度から「マンションストック長寿命化等モデル事業」を実施しています。令和8年度(2026年度)の第1回では、4者4件の応募に対し、評価委員会の評価を踏まえて1者1件が採択されました(出典:国土交通省「報道発表資料」)。
今後の応募期間は次のとおり公表されています。
| 回 | 応募期間 |
|---|---|
| 第2回 | 2026年6月22日(月)〜6月26日(金)※終了 |
| 第3回 | 2026年9月14日(月)〜9月18日(金) |
この記事の公開日は2026年8月26日です。第3回まで、あと3週間ほどあります。
どんなマンションが対象になるのか
この事業は「先導性のある取組」を支援するものです。単に古いから、積立金が足りないから、という理由では採択されません。長寿命化に資する改修の計画・工事、あるいは建替えなどで、他のマンションの参考になる先導性が評価されます。
倍率で見れば第1回は4件中1件の採択です。決して簡単ではありません。ただ、応募資料を作る過程そのものが、管理組合にとって「自分たちのマンションの弱点を棚卸しする作業」になります。私は、採択されなかった管理組合が、その資料をそのまま長期修繕計画の見直しに使った例を知っています。
問い合わせ先
- マンションストック長寿命化等モデル事業評価室事務局
- メール:info@mansion-hyouka.jp
- 電話:03-6801-5902(平日10〜16時、12〜13時を除く)
- (出典:国土交通省「報道発表資料」)
補助金が薄い藤枝市だからこそ効く「もう一つの原資」
ここからが本題です。ここまで読んで、こう感じた方が多いはずです。「結局、藤枝市では大規模修繕の工事費に直接効く補助金はない」と。
そのとおりです。だからこそ、私は工事費の構造そのものを見直すことをご提案しています。
総工事費の15〜25%を占める「仮設足場」
マンションの大規模修繕の見積書を開くと、最初の項目はたいてい「仮設工事」です。外部足場、養生シート、昇降設備、仮設電気。この仮設費が、総工事費の15〜25%程度を占めるのが一般的です。
10戸〜30戸規模の中層マンションで総額3,000万円の工事なら、仮設だけで450万〜750万円。この金額は、藤枝市で使える制度①〜③をすべて足しても届かない水準です。
ロープアクセス工法という選択肢
ロープアクセス工法は、産業用ロープを使って職人が建物の屋上から降下しながら施工する無足場工法です。足場を組まないため、次のような違いが出ます。
| 項目 | 通常足場工法 | ロープアクセス工法 |
|---|---|---|
| 仮設費 | 総工事費の15〜25%程度 | 大幅に圧縮できる |
| 工期 | 足場架設・解体に各1〜2週間 | 架設・解体の工程が不要 |
| 居住者への影響 | 全戸のバルコニー・窓が長期間ふさがる | 施工中の面のみ一時的 |
| 防犯面 | 足場を伝った侵入リスクが指摘される | 足場がないため該当しない |
| 適する部位 | 全面的な改修、複雑形状 | 高層部、部分補修、点検 |
ロープアクセス工法の一般的な安全基準や技術的背景は、ロープアクセスドットコムにまとめています。
私が推すのは「ハイブリッド工法」
ただ、正直に申し上げます。すべての工事をロープアクセスに置き換えられるわけではありません。
大量の下地補修が必要な壁面、タイルの全面張り替え、バルコニー内部の防水——こうした部位は足場を組んだほうが確実で、結果的に安いこともあります。
そこで私が提案しているのが、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法です。
- 傷みが集中している北面・低層部:足場を架けて丁寧に補修
- 傷みが軽く手が届きにくい高層部・妻側:ロープアクセスで施工
- 屋上防水:足場不要のため単独工程で
こうすると、足場の架設面積が減り、仮設費が下がります。同時に、品質が必要な部位には足場を使うので工事の中身は落ちません。株式会社明誠は、通常足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3つを建物の特性に応じてご提案できる、日本でも数少ない会社です。詳しくは大規模修繕工事のご紹介とロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。
積立金不足には融資という手もある
もうひとつの原資が融資です。制度①で触れたとおり、住宅金融支援機構には管理組合が借主になる「マンション共用部分リフォーム融資」があります。また、積立金を計画的に積み増す「マンションすまい・る債」という仕組みもあります(出典:住宅金融支援機構)。
藤枝市の公式サイトも、これらへのリンクを掲載しています。市が民間の管理組合に向けて機構の融資を案内しているというのは、それだけ「積立金だけでは足りない管理組合が多い」という現実の裏返しだと私は受け止めています。
藤枝市のマンションで大規模修繕を進める12か月スケジュール
制度は「いつ動くか」で使えるかどうかが決まります。藤枝市の管理組合向けに、私が実際にご提案している12か月の流れを共有します。
第1〜3か月|現状把握
- 長期修繕計画の確認(計画期間が30年以上あるか、大規模修繕が2回以上含まれるか)
- 修繕積立金の残高と、今後10年の収支見込みを整理
- 旧耐震の場合、藤枝市既存建築物耐震性向上事業の相談(建築住宅課 054-643-3481)
- 建物の劣化状況の一次調査(外壁打診、屋上防水の目視、シーリングの状態)
第4〜6か月|制度の適用可否を確定させる
- マンション管理計画認定の要件を満たしているかチェック
- 満たしていない項目があれば、規約改正や長期修繕計画の見直しを理事会で議論
- 認定申請書の作成費補助について、藤枝市に予算枠と申請時期を確認
- 省エネ改修を含める場合、藤枝市住宅省エネ改修推進事業の対象工事を確認
第7〜9か月|工法の比較と見積取得
- 足場工法・ロープアクセス工法・ハイブリッド工法の3案で概算を取る
- 仮設費が総工事費に占める割合を、案ごとに比較する
- 居住者アンケート(工期中の生活影響への許容度を測る)
- 見積は最低3社。ただし、金額だけでなく仮設計画の妥当性で比べる
第10〜12か月|合意形成と契約
- 理事会で工法・施工会社・資金計画の3点セットを固める
- 説明会を開催(藤枝市の制度で使えるもの・使えないものを正直に伝える)
- 総会で決議
- 補助金を使う工事は、契約前・着手前に申請
最後の1行が、いちばん見落とされます。藤枝市の補助制度は「契約及び工事着手前に申請が必要」と市が明記しています。契約書に判を押した瞬間に、その工事は補助の対象外になります。
藤枝市の管理組合で見てきた「よくある失敗」3つ
制度の話だけでは伝わらないので、現場で実際にあった話を3つお伝えします。物件が特定されないよう、細部は変えています。
失敗①|ネット記事の数字を信じて総会で説明してしまった
ある管理組合の理事長さまが、総会資料に「市の耐震補助で最大115万円が使えます」と書いてしまいました。前述のとおり、これは木造住宅向けの制度の数字です。RC造の分譲マンションには適用されません。
総会当日、区分所有者から指摘が入り、資料を作り直すことになりました。理事長さまは悪気なくネット記事を引用しただけです。ですが、制度は建物の構造・用途で切り分けられているという前提を知らないと、こういう事故が起きます。
私は理事長さまに、こうお伝えしています。「補助金の数字は、市の公式ページか、市の窓口で聞いた内容だけを資料に載せてください」と。
失敗②|足場を組んでから「思ったより傷んでいなかった」
これは私の側の反省でもあります。事前調査が甘いまま全面足場を組み、いざ壁面を近くで見たら補修箇所が想定の半分以下だった、という現場がありました。
足場は組んでしまえば費用は確定します。「思ったより傷んでいなかった」は、管理組合にとって喜ばしいことのはずなのに、支払う金額は減りません。
これを避けるには、足場を組む前に、ロープアクセスで詳細調査をするのが有効です。数十万円の調査費で、数百万円の仮設費の設計が変わります。私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。
失敗③|補助金の申請時期を逃して1年待った
省エネ改修の補助を使うつもりだった管理組合が、年度当初の予算枠を確認しないまま夏に相談に来られ、その年度分は既に受付を終えていた、というケースです。
自治体の補助制度は、予算枠に達した時点で受付を終了するものが少なくありません。藤枝市の場合も、令和8年度(2026年度)の交付申請について「受付開始日は未定、受付可能となり次第公表」という案内が出ていた制度がありました。
年度をまたぐと、工事全体が1年後ろにずれます。その1年で、雨漏りが進行することもあります。制度の受付時期を確認するのは、見積を取るより先です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 藤枝市に、マンションの外壁塗装や屋上防水そのものへの補助金はありますか?
A. 2026年8月26日時点で、藤枝市には外壁塗装・屋根塗装への補助金はありません。市の公式サイトにも明記されています(出典:藤枝市)。使えるのは、管理計画認定の申請費補助、耐震診断補助、省エネ改修補助、国のモデル事業の4つです。
Q2. 築25年の分譲マンションですが、管理計画認定は取れますか?
A. 築年数そのものは認定基準ではありません。長期修繕計画が30年以上の計画期間を持ち、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていること、修繕積立金が著しく低額でないこと、年1回以上の総会開催などが基準になります(出典:国土交通省)。詳しくは本文の「【制度①】」を参照してください。
Q3. 賃貸マンションのオーナーですが、藤枝市の制度は使えますか?
A. マンション管理計画認定制度は分譲マンションの管理組合が対象のため、賃貸物件では対象外です。耐震診断補助や省エネ改修補助は、建物用途と工事内容によって適用可否が変わります。建築住宅課(054-643-3481)にご確認ください。
Q4. 補助金の申請は、工事契約の後でも間に合いますか?
A. 藤枝市は「各補助制度は契約及び工事着手前に申請が必要」と明記しています(出典:藤枝市)。契約後の申請は対象外になります。なるべく早い段階で市にご相談ください。
Q5. ロープアクセス工法にすると、工事の品質は落ちませんか?
A. 部位によります。高層部の外壁塗装、シーリング打ち替え、部分的な躯体補修、タイルの打診調査などはロープアクセスに適しています。一方、下地補修が広範囲に及ぶ壁面やバルコニー内部の工事は足場のほうが確実です。だから私は、足場とロープアクセスを部位ごとに使い分けるハイブリッド工法をご提案しています。
Q6. 国のマンションストック長寿命化等モデル事業は、いつまでに応募すればよいですか?
A. 令和8年度の第3回応募期間は2026年9月14日(月)〜9月18日(金)と公表されています(出典:国土交通省)。応募には計画資料の準備が要るため、検討される場合は早めに評価室事務局(03-6801-5902)へご相談ください。
この記事のポイントまとめ
- 藤枝市に外壁塗装・屋根塗装への直接補助はなく、市が公式に明記している
- 使えるのは管理計画認定の申請費補助・耐震診断補助・省エネ改修補助・国のモデル事業の4つ
- 藤枝市の補助制度はすべて契約前・工事着手前の申請が原則
- 管理計画認定は融資の返済期間35年・金利引下げにつながる実利がある
- 国のモデル事業 令和8年度第3回の応募期間は2026年9月14日〜18日
- 補助が薄い地域では、総工事費の15〜25%を占める仮設費の設計が最大の節約余地
- 旧耐震なら、大規模修繕より耐震診断を先に行うほうが20年スパンで得になる
おわりに
藤枝市は、マンションの工事費に直接効く補助金という点では、決して手厚い自治体ではありません。この記事で正直にそう書いたのは、期待させてから落とすほうが管理組合にとって残酷だからです。
ですが、藤枝市は令和5年3月にマンション管理適正化推進計画を策定し、管理計画認定の申請費補助という形で「管理を良くする努力」を支える姿勢を示しています。行政が支えているのは工事費ではなく、管理の質です。私はこの設計自体は、長い目で見て正しいと思っています。
そして、工事費の側は、私たち施工会社が工法の選択で下げられます。足場を全面に組むか、ロープアクセスで済ませるか、部位ごとに使い分けるか。この判断は、建物を実際に見なければできません。
ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームからお気軽にどうぞ。
出典・参考資料
- 藤枝市「各種補助事業」
- 藤枝市「分譲マンションの管理について(藤枝市マンション管理適正化推進計画)」
- 藤枝市「建築物の耐震診断に対する補助(藤枝市既存建築物耐震性向上事業)」
- 藤枝市「木造住宅の耐震化の補助」
- 藤枝市「藤枝市住宅省エネ改修推進事業」
- 藤枝市「人口統計(2025年6月末)」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 国土交通省「「マンションストック長寿命化等モデル事業」の採択プロジェクトを決定しました!」
- 住宅金融支援機構「マンションすまい・る融資(管理組合申込みの場合)」
- 住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資の融資金利について」
- 住宅金融支援機構「マンションすまい・る債」
- 静岡県「マンションの管理」
- 静岡県マンション管理士会「公式サイト」
※本記事の制度内容は2026年8月26日時点の公表情報に基づきます。補助制度は年度ごとに要件・予算枠が見直されます。申請前に藤枝市 建築住宅課(電話:054-643-3481)および各制度の公式ページで最新情報をご確認ください。
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開し、塗装・防水・タイル・電気・看板などの専門職が加盟しています。ロープアクセスの技術情報はロープアクセスドットコムにまとめています。
最終更新:2026年8月26日


