
この記事で答える質問:国のマンション長寿命化モデル事業は、いくら・誰に・何に対して出るのか。そして今週、管理組合とオーナーは何をすればよいのか?
2026年9月15日 更新/執筆:株式会社明誠 代表取締役 本間幸紘(マンション大規模修繕・ロープアクセス工法 実務20年以上)
2026年9月14日、国土交通省が「マンションストック長寿命化等モデル事業」の令和8年度(第2回)採択プロジェクトを公表しました。11者11件の応募に対し、8者8件が採択されています(出典:国土交通省「マンションストック長寿命化等モデル事業」の令和8年度第2回採択プロジェクトを決定しました!、令和8年9月14日)。
そして同じ発表のなかに、見落とされがちな一行があります。
令和8年度の第3回の応募期間は、下記のとおりです。・第3回:令和8年9月14日(月)~令和8年9月18日(金)
募集期間は5日間です。この記事を朝にお読みの方にとっては、実質あと数日ということになります。
正直に申し上げます。今週から検討を始めて第3回に間に合う管理組合は、ほぼありません。それでもこの記事を書くのは、この制度の「採択された8件」を読むと、国がいまマンション再生の何にお金を出そうとしているのかが、驚くほどはっきり見えるからです。そしてそれは、第4回以降を狙う組合にも、モデル事業とは無縁の賃貸オーナーにも、そのまま使える情報です。
結論:3つだけ先に申し上げます
長い記事になるので、核心を先に置きます。
- この補助金は、管理組合が直接申請するものではありません。 補助事業者はコンサル・設計事務所・管理会社・施工業者です。つまりパートナー選びが申請の前提になります。ここを誤解している理事会が、私の経験上とても多いです。
- 採択8件のうち7件は1960〜70年代築、つまり築50年前後の物件でした。 一方で「まだ築30年」のマンションがこの制度を狙うのは現実的ではありません。狙うべき制度が別にあります(後述)。
- 第3回に間に合わなくても、今週やれることがあります。 計画支援の申請書に必ず求められる「これまでの取組経緯」は、一夜漬けで作れません。逆に言えば、今日から記録を残し始めた組合は、半年後に強くなります。
何が起きたのか|9月14日に「結果公表」と「次の募集開始」が同時に出た
まず事実関係を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公表日 | 令和8年9月14日(月) |
| 公表主体 | 国土交通省 住宅局 参事官(マンション・賃貸住宅担当)付 |
| 対象 | 令和8年度 第2回 マンションストック長寿命化等モデル事業 |
| 第2回の提案受付期間 | 令和8年6月22日~6月26日 |
| 応募 | 11者11件 |
| 採択 | 8者8件 |
| 第3回募集 | 令和8年9月14日(月)~9月18日(金) |
(出典:同報道発表資料)
内訳はこうなっています。
| タイプ/支援区分 | 提案数 | 採択数 |
|---|---|---|
| 先導的再生モデルタイプ・計画支援 | 8件 | 5件 |
| 先導的再生モデルタイプ・工事支援 | 3件 | 3件 |
| 管理適正化モデルタイプ・計画支援 | 0件 | 0件 |
| 管理適正化モデルタイプ・改修工事支援 | 0件 | 0件 |
ここで最初に目が留まるのは、管理適正化モデルタイプの応募がゼロだったという事実です。制度としては用意されているのに、使われていない。この意味は、記事の後半でもう一度取り上げます。
この事業は、いくら・誰に・何に出るのか
制度の骨格を、国土交通省の資料どおりに整理します(出典:国土交通省別添1:マンションストック長寿命化等モデル事業の概要(PDF))。
| 区分 | 補助事業者 | 補助率・上限 |
|---|---|---|
| 計画支援(事業前の立ち上げ準備段階) | マンション再生コンサル、設計事務所、管理会社 等 | 定額。原則上限500万円/年(最大3年)。評価委員会が必要と認める場合は1事業あたり1,500万円を上限として、500万円/年を超える補助も可 |
| 工事支援(長寿命化の改修工事等の実施段階) | 施工業者、買取再販業者 等 | 1/3 |
タイプは2つあります。
①先導的再生モデルタイプ
先導性の高い長寿命化等に向けた事業を実現するための調査・検討(計画支援)と、その改修等(工事支援)を支援します。
②管理適正化モデルタイプ
管理水準の低いマンションが地方公共団体と連携して管理適正化を図るための調査・検討(計画支援)と、大規模修繕工事等の修繕(工事支援)を支援します。
さらに募集枠が2つに分かれています。
- 優先募集枠(政策上重要なポイントの取組を高く評価)……自主建替えの検討/超高層マンションにおける給排水管設備改修や防災設備改修等の設備改修の検討/団地型マンションにおける敷地分割事業の検討/非現地建替えの検討 など
- 一般募集枠(独自性などの観点で総合的に優れた取組を評価)
評価のポイントとして国が挙げているのは、長寿命化改修では「構造躯体の長寿命化」「ライフライン(給排水、電気、ガス)の長寿命化」、建替えでは「制約が多いマンションにおける建替え」「複合用途マンションの建替え」などです。
ここが実務上の分かれ目:補助を受けるのは「事業者」
もう一度書きます。補助事業者は、管理組合ではありません。
計画支援ならマンション再生コンサル・設計事務所・管理会社、工事支援なら施工業者や買取再販業者が補助事業者になります。実際、第2回の採択8件の提案者は、株式会社日建設計、ミサワホーム株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、一般財団法人首都圏不燃建築公社、日鉄興和不動産株式会社、株式会社コスモスイニシア、住友不動産株式会社、阪急阪神不動産株式会社——すべて事業者です。
これは制度の欠陥ではなく、設計思想です。調査・検討にはプロの人件費がかかる。そこに定額補助を入れることで、管理組合が「検討するだけでお金がかかる」という最初の壁を越えられるようにしているわけです。
だからこそ、理事会がまずやるべきなのは申請書を探すことではなく、この制度を使った実績のあるパートナーを見つけることになります。
採択8件を読み解く|「通る提案」に共通する4つの条件
ここからが本題です。国土交通省が公表した採択プロジェクト一覧(出典:別添2:採択プロジェクト一覧(PDF))から、8件を一覧にします。
| No | マンション名 | 所在地 | 築年 | 規模 | 提案の核 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 多摩川住宅ト号棟 | 東京都 | 1971年 | 12棟326戸 | 自主建替えを前提に、建替え・保留地・敷地分割・既存住棟改修を組み合わせた再生検討 |
| 2 | かみさく住宅1号棟 | 神奈川県 | 1965年 | 24戸 | 建物・敷地の一括売却に向けた合意形成 |
| 3 | キャッスル共進 | 東京都 | 1971年 | 住宅156戸+店舗18区画 | 耐震・外皮性能向上、設備配管更新、バリアフリー化の一棟リノベーション検討 |
| 4 | 杉並コーポラス | 東京都 | 1971年 | 41戸 | 管理規約・長期修繕計画のない自主管理マンションの再生手法比較 |
| 5 | 亀戸2丁目団地 | 東京都 | 1969年 | 4棟620戸 | 高台避難デッキ整備を核とした浸水対応型まちづくりと団地再生 |
| 6 | 鷺沼コーナス | 神奈川県 | 1976年 | 20戸 | 保留床が少ない小規模マンションの建替え(工事支援) |
| 7 | 烏山北住宅 | 東京都 | 1965年 | 9棟300戸 | 一団地区域内の団地型マンション建替え(工事支援) |
| 8 | 阪急茨木駅前ソシオ | 大阪府 | 1969年 | 2棟205戸 | 駅前の用途複合マンション2棟の一体建替え(工事支援) |
この8件を並べて、私が読み取った共通点は4つです。
条件1:築50年前後。つまり「大規模修繕で延命する」段階を過ぎている
8件のうち7件が1965年〜1971年築です。最も新しい鷺沼コーナスでも1976年築。この制度は、次の大規模修繕をどうするかという段階のマンションを主な対象にしていません。 建替え・売却・一棟リノベーションといった「再生」の段階に入った物件が対象です。
築30年前後で修繕積立金の不足に悩んでいる組合が、この制度を第一候補に置くのは無理があります。そういう組合には別の道があります(後述します)。
条件2:「これまでの取組経緯」が長い
ここが最も重要です。評価の観点として国が明記しているのは、まず「対象マンションの現状・これまでの取組経緯を踏まえ、提案事業が、対象マンションの再生において適切な検討であるか」です。
採択案件の記述を拾うと、こうなります。
- 多摩川住宅ト号棟:2015年の建替え推進決議以降、建替えを前提とした再生検討を進めている
- 亀戸2丁目団地:2015年より再生検討を行ってきた
- 烏山北住宅:1998年に建物委員会を発足、2005年から4者協議会を設立し、一団地認定の取扱い等について計260回の協議を実施
- 鷺沼コーナス:令和5年度第2回の計画支援に採択され、コーポラティブ方式による建替えを検討。その後、建築費高騰で方式を再検証
- 阪急茨木駅前ソシオ:令和6年度第1回の計画支援に採択され、行政協議を経て地区計画決定に至っている
10年、20年という単位の蓄積が評価されています。 そして工事支援で採択された3件のうち2件は、過去に計画支援で採択された案件の続きです。つまりこの制度は、計画支援→工事支援と2段階で伴走する設計になっている。一発勝負ではありません。
条件3:「実現可能性」を数字と仕組みで説明している
もう一つの評価観点は「工事の目的、予算、工期、技術的な課題などを総合的に判断し、工事の実現が見込めるか」です。
採択案件が具体的に何を書いているか。
- 多摩川住宅ト号棟:工事費高騰を受けて建替えの事業規模を縮小し、区分所有者の費用負担を軽減したスキームを構築
- 鷺沼コーナス:事業費が今後さらに上昇した場合には、追加負担額を専有面積に応じて按分する仕組みを用意。従前の専有面積の80%相当部分までは権利床単価を適用し、超える面積は保留床単価で取得できる仕組み
- 亀戸2丁目団地:「浸水対応型まちづくり」に即した高台防災への地域貢献により、日影規制・高さ制限の解除と指定容積率の割増(300%→325%)を伴う都市計画変更を行政と協議中
「頑張ります」ではなく、「工事費が上がったときにどう配分するか」まで書いてある。 ここが通る提案と通らない提案の差だと、私は読みました。
条件4:調査・診断の中身が具体的
計画支援で採択されたキャッスル共進の記述には、こうあります。「アスベスト調査、電気設備・給水管劣化診断、環境性能測定調査、水質検査・既存住宅状況調査等を行う」。
何を調べるかが具体的に書かれている提案が採択されています。 逆に言えば、「まず調査します」だけでは足りない。これは第4回以降を狙う組合にとって、かなり実務的なヒントです。
築25〜40年の「まだ建替えではない」マンションは、何を狙うべきか
ここまで読んで、「うちは築30年だから関係ないのか」と思われた方へ。関係ないわけではありません。狙う制度が違うだけです。
私が理事長さまにお伝えしている順番は、この3つです。
① マンション管理計画認定制度を取る
自治体がマンションの管理計画を認定する、マンション管理適正化法に基づく制度です(マンション管理適正化推進計画を作成した自治体に限ります)。認定を取ると、住宅金融支援機構の【フラット35】やマンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せといったメリットがあります(出典:国土交通省マンション長寿命化促進税制リーフレット(PDF)、発行2025年4月)。
認定基準の中身は、正直なところ「きちんとした管理組合なら満たしているはず」の項目が並びます。総会を年1回以上開いている、管理費と修繕積立金を区分経理している、長期修繕計画が7年以内に作成または見直しされている、計画期間が30年以上で大規模修繕が2回以上含まれている、など。
なお、この制度は2027年4月1日から対象が拡充されます。新築時の分譲事業者による認定申請の導入と、管理計画認定マンションの表示制度の創設が施行されます(出典:国土交通省マンション管理・再生の円滑化等のための改正法の一部の施行期日を定める政令等を閣議決定、令和8年5月15日)。
② マンション長寿命化促進税制を視野に入れる
管理計画認定マンションで、令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を認定基準まで引き上げ、長寿命化工事(外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事)を完了させると、工事完了翌年度の建物部分の固定資産税額が1/6〜1/2の範囲内で減額されます。減額割合は自治体の条例で決まります。
主な要件は、築20年以上、総戸数10戸以上、過去に長寿命化工事を1度以上実施していること、そして工事完了が令和5年4月1日〜令和9年3月31日の間であること(出典:国土交通省マンション長寿命化促進税制の要件(PDF))。
税制は毎年度見直されます。工事の着工時期を判断する前に、必ず国土交通省のマンション税制ページと、お住まいの市町村の窓口で最新の取扱いをご確認ください。
注意点を1つ。 この税制は「工事完了から3か月以内の申告」が要件です。工事が終わってから調べ始めると間に合わないことがあります。私は、工事の契約時点でこの話を理事会に出すようにしています。
③ 建築物の省エネ改修の支援制度を並行して調べる
国土交通省は「既存建築物省エネ化推進事業」の提案募集を令和8年6月19日に開始しています(出典:国土交通省「建築物の省エネ改修工事」の提案募集を開始します!)。外壁の断熱改修や窓の改修は、大規模修繕と工程を合わせられる場合があります。
ただし、前にも書いたとおり、補助金を前提に工事計画を組まないでください。 採択されなくても実行できる計画を作ったうえで、補助が取れたら積立金の温存に回す。この順番のほうが理事会の議論は安定します。
現場の視点|「調査費が高くて検討が止まる」をどう解くか
ここからは、20年近く現場をやってきた側の話をします。
計画支援であれ自主的な検討であれ、再生の議論は劣化診断から始まります。そして私が一番悔しい思いをするのは、「調査に足場を架けると数百万円かかる」と言われて、そこで検討が止まってしまう管理組合を見たときです。
外壁の打診調査、タイルの浮き確認、シーリングの劣化確認、写真記録——これらは建物全体に足場を架けなくても実施できる場合があります。ロープアクセス工法(無足場工法:屋上から産業用ロープで降下して施工・調査する方法)であれば、仮設費を抑えて外壁の状態を面で確認できます。
ロープアクセス工法の安全基準や適用範囲の一般的な解説は、姉妹サイトロープアクセスドットコムにまとめています。
工法の使い分けを整理しておきます。
| 工法 | 内容 | 向いている場面 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 通常足場工法 | 建物全周に枠組足場を架設 | 全面的な塗装・タイル改修、複雑形状、低中層 | 仮設費が大きい。駐輪場・通路の占用期間が長い |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 屋上から産業用ロープで降下して施工 | 高層、敷地に余裕がない、部分補修、調査・診断 | 施工数量が多い場合は工期の見極めが必要。有資格者の確保が前提 |
| ハイブリッド工法 | 部位ごとに足場とロープを使い分け | 大規模・複雑形状で総額最適化を図りたい場合 | 工程管理の設計が重要 |
誤解のないように書きますが、ロープアクセスは「安いから選ぶ」ものではありません。 足場を架けにくい形状である、住戸のバルコニーを長期間ふさぎたくない、駐車場を潰したくない——そうした条件のときに、選択肢として土俵に乗せる価値がある、という話です。工法ごとの適性はロープアクセス工法のご紹介でも整理しています。
そしてもう一点。採択されたキャッスル共進の提案に「アスベスト調査」が含まれていたことに、私は注目しました。1971年築の建物であれば当然の項目です。再生の検討に入る前に、アスベストの有無を把握しているかどうかで、後の予算の精度がまったく変わります。 これは補助の有無に関係なく、築年の古い建物では避けて通れない論点です。
賃貸マンション・ビルオーナーの方へ|この制度は分譲マンション向けです
ここまで分譲マンションの話をしてきました。収益不動産をお持ちのオーナーさまにとって、このモデル事業は直接の対象ではありません。 区分所有のマンションが前提の制度です。
では無関係かというと、そうではないと私は考えています。理由は2つあります。
第一に、この制度は「国が何にお金を出すか」の意思表示です。 構造躯体の長寿命化、ライフライン(給排水・電気・ガス)の長寿命化、超高層における給排水管設備改修や防災設備改修。国がいま先導的と呼んでいるのは、外装をきれいにすることではなく、建物を長く使うための中身の更新です。賃貸物件の修繕計画を組むときの優先順位づけに、そのまま応用できます。
第二に、周辺の分譲マンションが再生に動くと、エリアの相場が動きます。 亀戸2丁目団地の事例のように、容積率の割増を伴う都市計画変更まで踏み込む案件が出てくると、周辺の土地利用の前提が変わります。保有物件の近くでこの種のプロジェクトが動いていないかは、オーナーとして押さえておく価値があります。
賃貸物件で使える制度としては、省エネ改修関係の支援や、自治体独自の助成制度があります。年度ごとに内容が変わるため、この記事で数字を断定することは避けます。大規模修繕の進め方全体については大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。
応募ゼロだった「管理適正化モデルタイプ」が示すもの
最後に、第2回で応募がゼロだった管理適正化モデルタイプについて触れておきます。
このタイプは、管理水準の低いマンションが地方公共団体と連携して管理適正化を図るための支援です。計画支援も改修工事支援も、提案数0件・採択数0件でした。
理由を断定することはできません。ただ、構造的に難しい点は想像がつきます。管理水準が低いマンションは、そもそも管理組合が機能していないことが多い。自治体との連携を前提にした提案を組み立てる主体が、内部にいないのです。
第2回で採択された杉並コーポラスは、まさにこの層に近い物件でした。「管理組合、管理規約、長期修繕計画がなく、修繕積立金の定めがない」「借地権マンションであり、期限も迫っている」「容積率既存不適格状態」。それでも採択されたのは、一般財団法人首都圏不燃建築公社という外部の主体が提案者として入ったからです。
ここに、この制度を使ううえでの最大の教訓があると私は思います。動き出せない組合ほど、外部の伴走者が必要である。 そして伴走者を探すこと自体は、総会の決議を待たずに、理事会レベルで今日から始められます。
今週やること|第4回以降に向けたチェックリスト
第3回(9月18日締切)に間に合わない前提で、今日から着手できることを挙げます。
- 管理組合の検討経緯を年表にする。 いつ何を議論し、何を決め、何が決まらなかったか。採択案件が10年〜20年の経緯を書けているのは、記録があるからです。
- 直近の建築基準法第12条定期調査報告書を引っ張り出す。 要是正箇所がそのまま検討の出発点になります。すでに費用を払って取得している一次情報です。
- 長期修繕計画の作成・見直し時期を確認する。 管理計画認定の基準は「7年以内に作成又は見直し」です。ここが切れていると、認定も税制も届きません。
- 修繕積立金の月額㎡単価を計算する。 管理計画の認定基準では、20階未満・延床5,000㎡未満で235円/㎡・月以上などの目安が示されています(機械式駐車場分を除く)。
- アスベストの調査記録があるか確認する。 築年の古い建物では、これがないと予算の精度が出ません。
- 相談先を1社決める。 モデル事業の実績がある設計事務所・コンサル・管理会社・施工会社。「申請できるか」ではなく「うちの状況で何が現実的か」を聞く相談です。
このうち1〜5は、外部に費用を払わずに理事会でできます。6を急いで、1〜5を飛ばすと、話が噛み合いません。
よくある質問(FAQ)
Q1. マンションストック長寿命化等モデル事業の第3回募集は、いつまでですか?
A. 令和8年9月14日(月)から9月18日(金)までです(出典:国土交通省令和8年度第2回採択プロジェクト決定、令和8年9月14日公表)。
Q2. 補助金はいくら出ますか?
A. 計画支援は定額で、原則上限500万円/年(最大3年)。評価委員会が必要と認める場合は1事業あたり1,500万円を上限として、500万円/年を超える補助も可能です。工事支援は補助率1/3です(出典:別添1(PDF))。
Q3. 管理組合が自分で申請できますか?
A. 補助事業者は、計画支援がマンション再生コンサル・設計事務所・管理会社等、工事支援が施工業者・買取再販業者等とされています。管理組合が単独で補助を受ける制度ではありません。
Q4. 築30年のマンションでも採択されますか?
A. 制度上の築年要件が公表されているわけではありませんが、令和8年度第2回の採択8件は7件が1965〜1971年築でした。築30年前後であれば、マンション管理計画認定制度とマンション長寿命化促進税制を先に検討されるほうが現実的だと考えます。
Q5. 賃貸マンションのオーナーでも使えますか?
A. このモデル事業は区分所有のマンション(分譲マンション)を前提とした制度です。賃貸物件については、省エネ改修関係の支援制度や自治体独自の助成制度をご確認ください。
Q6. 足場を架けずに劣化診断だけ先に行うことはできますか?
A. 部位と数量によっては可能です。ロープアクセス工法(無足場工法)は屋上から産業用ロープで降下する方法で、外壁の打診調査や写真記録などの調査・診断に適性があります。詳しくはロープアクセスドットコムをご参照ください。
この記事のポイントまとめ
- 国交省が2026年9月14日、長寿命化モデル事業の令和8年度第2回採択(11件中8件)を公表
- 同日に第3回募集が開始、締切は令和8年9月18日(金)
- 計画支援は定額・原則上限500万円/年(最大3年)、工事支援は補助率1/3
- 補助事業者はコンサル・設計事務所・管理会社・施工業者。管理組合の単独申請ではない
- 採択8件のうち7件が1965〜1971年築。再生段階の物件が主な対象
- 評価されたのは「10年単位の取組経緯」と「費用変動時の負担配分まで書いた実現可能性」
- 築25〜40年の組合は、管理計画認定と長寿命化促進税制を先に狙うほうが現実的
- 管理適正化モデルタイプは応募ゼロ。外部の伴走者がいるかどうかが分かれ目
出典・参考資料
- 国土交通省「「マンションストック長寿命化等モデル事業」の令和8年度第2回採択プロジェクトを決定しました!」(令和8年9月14日)
- 国土交通省「別添1:マンションストック長寿命化等モデル事業の概要(PDF)」
- 国土交通省「別添2:採択プロジェクト一覧(PDF)」
- 国土交通省「マンション税制(マンション長寿命化促進税制)」
- 国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件(PDF)」
- 国土交通省「マンション管理・再生の円滑化等のための改正法の一部の施行期日を定める政令等を閣議決定」(令和8年5月15日)
- 国土交通省「「建築物の省エネ改修工事」の提案募集を開始します!」(令和8年6月19日)
※補助制度・税制は年度ごとに見直されます。ご検討の際は、必ず当該年度の公式ページおよび自治体窓口で最新情報をご確認ください。
▼ロープアクセス工法・無足場工法の詳細解説はこちら
ロープアクセスドットコム|無足場工法専門メディア
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都小平市を拠点に、東京・関東一円でロープアクセス工法と従来足場工法の両方を提案できる改修会社。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。
最終更新:2026年9月15日
採択された8件の提案概要を読んでいて、私が一番長く目を止めたのは、烏山北住宅の「計260回の協議」という一行でした。
260回です。1998年に建物委員会が発足してから、28年。単純に割っても年に9回以上、関係者が顔を突き合わせてきた計算になります。補助金の話をするとき、私たちはつい金額と締切に目がいきます。けれど国が評価しているのは、金額ではなく、この260回のほうなのだと思います。
今週の締切には、ほとんどの組合が間に合いません。それでいいのです。261回目を始めることのほうが、はるかに重い。ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会前の論点整理だけでも、お力になれることがあります(お問合せフォーム)。
これは私が現場で20年以上見てきた、嘘偽りのない感想です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


