大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

修繕積立金が6年で67.2%上昇——新築の「設定額」が映す大規模修繕インフレ、収益物件オーナー・管理組合が今やるべき長期修繕計画の見直しと工法選択【2026年6月】

修繕積立金が6年で67.2%上昇——新築の「設定額」が映す大規模修繕インフレ、収益物件オーナー・管理組合が今やるべき長期修繕計画の見直しと工法選択【2026年6月】

理事会で「修繕積立金を上げたい」と切り出すと、たいてい空気が固まります。私も総会の場で、何度もその沈黙に立ち会ってきました。けれど、その値上げは管理会社の都合ではなく、もっと大きな「相場の地殻変動」から来ているとしたら——。

先日、ある調査会社が都心の新築マンションを独自集計したところ、修繕積立金の新築時設定額が6年で約67.2%も上がっていた、というニュースが出ました。今日はこの数字を入り口に、収益物件をお持ちのオーナーさまと、管理組合の理事長さま・修繕委員のみなさまが、今どこを点検すべきかを、現場の言葉で整理します。

正直に申し上げます。この話は「他人事」ではありません。新築の設定額が上がるということは、これから発注される大規模修繕の単価が、業界全体で上がっているということだからです。

ニュースの要点——新築の修繕積立金、6年で67.2%増

不動産コンサルティングのさくら事務所が2026年5月13日に公表した独自集計によると、都心9区(千代田・中央・港・渋谷・新宿・目黒・品川・世田谷・江東)でメジャーセブン(大手分譲7社)が2019〜2025年に分譲した新築マンションの「新築時設定額」は、次のように推移していました(出典:さくら事務所「管理費+修繕積立金、6年で+44%」2026年5月13日)。

項目 2025年の平均 70㎡換算(月額) 2019年比
管理費 519.3円/㎡ 約3万6千円 +35.9%
修繕積立金 221.5円/㎡ 約1万5千円 +67.2%
合計 740.8円/㎡ 約5万2千円 +43.9%

修繕積立金だけを見ると、2019年の132.5円/㎡から2025年の221.5円/㎡へ、約67.2%の上昇です。管理費(+35.9%)よりも、修繕積立金の伸びのほうがはるかに急なのがポイントです。管理費の最高値は千代田区の752円/㎡で、70㎡換算だと管理費だけで月5万円を超えます。

ここで一度、財布の感覚に直してみます。70㎡の住戸で「管理費+修繕積立金」が月5万2千円。年間で約62万円。これは住宅ローンの変動金利が0.25%上がったときの返済増を、大きく上回るペースだと調査は指摘しています。「もうひとつの住居費」が、静かに、しかし確実に重くなっているのです。

なぜ修繕積立金だけがこんなに上がるのか

修繕積立金は、将来の大規模修繕工事に備えて毎月積み立てるお金です(初めての方向けに補足すると、管理費が「日々の管理・清掃・点検」に使う運転資金なのに対し、修繕積立金は「12〜15年に一度の大工事」のための貯金です)。

その貯金の目標額が上がっているということは、見込まれる工事費そのものが上がっている、ということに他なりません。背景には主に3つの圧力があります。

第一に、建築工事費の高騰です。資材価格は、ナフサを起点とする塗料・防水材の値上がりが続き、ここ数年で何度も改定されてきました。私の現場でも、見積もり時点と着工時点で材料単価が変わってしまい、お客さまに頭を下げた経験が一度や二度ではありません。

第二に、労務費の上昇です。国土交通省が毎年改定する公共工事設計労務単価は、令和8年3月から適用される最新版で全国全職種の加重平均が日額25,834円となり、初めて2万5千円を超えました。これで14年連続の上昇で、2012年度の13,072円からほぼ倍増した計算です(出典:国土交通省 報道発表資料「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。職人の手間賃が明確に上がっているということです。建設業にも2024年4月から時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)が適用され、「人を増やさないと工期が回らない」状況が単価をさらに押し上げています。

大規模修繕は、新築の工事に比べて手作業の比率が高く、人件費の影響を受けやすい工事です。資材が上がり、人の手間賃も上がる。この二重の圧力が、積立金の目標額をじりじりと押し上げているわけです。

第三に、ガイドラインに沿った「適正化」です。後で詳しく触れますが、国土交通省が積立不足を防ぐために初期設定額の引き上げを促してきたことも、新築の設定額が上がった一因です。

私はこれを、現場で20年見てきた肌感覚として「大規模修繕インフレ」と呼んでいます。物価のインフレと同じで、いったん上がった工事単価は、簡単には下がりません。

「適正化」か「工事費転嫁」か——2つの顔を見分ける

調査を行ったさくら事務所の山本直彌社長は、この上昇について「初期設定額が上がったからといって安心はできない。長期修繕計画の個別検証が不可欠」とコメントしています。私もまったく同感です。

修繕積立金の上昇には、評価すべき「適正化」の側面と、警戒すべき「工事費転嫁」の側面が同居しています。

適正化の側面とは、これまで安すぎた初期設定額を、将来の大規模修繕に間に合うよう、現実的な水準に引き上げる動きです。これは健全です。むしろ「新築時の積立金が安いマンションほど、後で大幅値上げか一時金徴収に苦しむ」というのが、私が現場で何度も見てきた現実です。

一方の工事費転嫁の側面とは、建築費・人件費の高騰分を、工事の中身を精査しないまま、そのまま積立額に乗せているケースです。この場合、額面が上がっても「割高な工事を前提に積み立てているだけ」で、将来の積立不足リスクは何も解決していません。

つまり、積立金が上がったこと自体は良し悪しではなく、「その額の根拠となる長期修繕計画と工事仕様が妥当か」を一棟ごとに確かめないと判断できない、ということです。ここが今日いちばんお伝えしたい急所です。

新築の数字が、既存マンションに突きつけるもの

「これは新築の話でしょう。うちは築20年だから関係ない」——そう思われたかもしれません。ですが、私はむしろ既存マンションのオーナーさま・管理組合にこそ、この数字を見ていただきたいと考えています。

理由はシンプルです。新築の設定額が上がっているのは、これから発注される工事の単価が業界全体で上がっているからです。築20年のマンションが次に迎える2回目・3回目の大規模修繕は、まさにこの「上がった単価」で発注することになります。

ところが、多くの既存マンションの長期修繕計画は、数年前の——つまり今より安かった時代の——工事単価を前提に組まれたままです。計画上の積立額と、実際にかかる工事費との間に、静かに「ワニの口」が開いていきます。

国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、修繕積立金が「計画に対して不足している」マンションが36.6%にのぼり、現在の積立額は月・戸あたり平均13,054円でした(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」)。3棟に1棟が、すでに足りていないのです。そこへ工事単価の上昇が重なれば、不足はさらに広がります。

新築の67.2%増は、既存マンションにとって「次の見積もりは、あなたが思っているより高い」という予告だと、私は受け止めています。

そして、計画と実勢の差が開いたまま放置されると、行き着く先は2つしかありません。一つは、ある総会で突然「大幅値上げ」を提案すること。もう一つは、工事の直前に「一時金」として、一戸あたり数十万円をまとめて徴収することです。どちらも区分所有者の反発を招きやすく、合意形成に時間がかかります。私の経験上、合意が取れずに工事が1年、2年と先送りされる間に、劣化はさらに進み、工事費はさらに上がる——という悪循環が、いちばん怖いのです。早めに計画を点検しておくことが、結局は最も安く済む道だと、私はいつも理事長さまにお伝えしています。

国交省ガイドラインの目安と、令和6年改定の新ルール

判断の物差しとして、公的な目安を押さえておきましょう。国土交通省は「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」で、専有面積あたりの積立額の目安を示しています。たとえば建築延床面積が一定規模・20階未満のマンションで、月あたり概ね200円/㎡前後(建物条件で変動)が一つの参照値とされています(出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」令和6年6月改定)。

さくら事務所の集計で出た新築の221.5円/㎡という数字は、この目安の上限寄りに位置します。新築の設定額が、ガイドラインの目安をしっかり踏まえた水準まで上がってきた、と読むことができます。

そして2026年の今、もう一つ知っておくべきなのが、令和6年6月の改定で加わった「段階増額積立方式の適切な引上げの考え方」です(出典:国土交通省 報道発表資料(令和6年6月7日))。

段階増額積立方式とは、最初は安く、年数の経過とともに段階的に積立額を上げていく方式です。新築の販売時に「月々の負担が軽い」と見せやすいため、広く使われてきました。改定では、この方式について、計画初期の額を「均等積立方式とした場合の基準額の0.6倍以上」、最終額を「基準額の1.1倍以内」に収めることが望ましい、という具体的な目安が示されました。

平たく言えば、「最初を安く見せすぎて、後で急に跳ね上げる計画はやめましょう」というルール化です。今ご自身のマンションが段階増額方式なら、将来の増額カーブがこの目安に収まっているか——ここは総会の前に必ず確認したいポイントです。

収益物件オーナーにとっての意味——利回りを蝕む「見えないコスト」

ここからは、収益物件をお持ちのオーナーさま向けの話です。

修繕積立金の上昇は、区分所有で投資用住戸をお持ちの方にとって、家賃には反映しづらい「純粋な手出しの増加」です。月1万5千円だった積立金が、修繕計画の見直しで月2万5千円になれば、年間で12万円の手出し増。表面利回りには見えない形で、実質利回りが削られていきます。

私がオーナーさまにいつもお伝えしているのは、「出口(売却)の前に、修繕積立金と長期修繕計画は必ず点検しましょう」ということです。買い手や仲介は、いまや積立金の不足や近く予定される大幅値上げを必ずチェックします。計画が穴だらけのまま売りに出すと、価格交渉で確実に足元を見られます。逆に、計画が整理され、直近の大規模修繕がコストを抑えて適切に行われている物件は、それ自体が強い売り材料になります。

複数戸・複数棟をお持ちの法人オーナーさまであれば、影響はさらに大きくなります。保有する全戸の積立金が一斉に上昇する局面では、「どの棟から、どの工法で、いつ直すか」というポートフォリオ単位の修繕戦略が、キャッシュフローを左右します。

もう少し具体的に、戸あたりの感覚で考えてみます。仮に20戸のマンションで、次回の大規模修繕に1億円かかるとすれば、単純割りで1戸あたり500万円です。その総額のうち足場が25%なら2,500万円が「直す中身」ではなく「作業のための仮設」に消えます。ここを工法の組み合わせで1割でも圧縮できれば、建物全体で数百万円、戸あたりにすれば十数万円の差になります。修繕積立金が月1万円上がると年12万円。つまり「工法を見直して工事費を抑える」ことは、「積立金を1年分まるごと節約する」のと同じくらいのインパクトを持つ場面がある、ということです。私が工法選択を“最初に”ご提案する理由は、ここにあります。

管理組合の理事長にとっての意味——総会で必ず聞かれること

6月は、多くのマンションで定期総会のシーズンです。そして総会で修繕積立金の値上げ議案を出すと、ほぼ必ず、次の質問が飛んできます。

「なぜ今、上げる必要があるのか」「上げないとどうなるのか」「工事費は本当に妥当なのか」——。

このとき、「世間が上がっているから」だけでは、区分所有者は納得しません。私が理事長さまにお勧めしているのは、3つの数字をセットで示すことです。第一に、自分のマンションの現在の積立額(円/㎡)と国交省ガイドラインの目安との差。第二に、長期修繕計画上の収支見通し(いつ不足に転じるか)。第三に、直近の工事費見積もりが、複数社の相見積もりで妥当性を確認されているか。

この3点が揃っていれば、値上げは「管理会社の言いなり」ではなく、「自分たちで根拠を確かめた決断」になります。総会の空気は、根拠の有無で驚くほど変わります。

私が現場で見てきた「積立不足」のリアル

少し、現場の話をさせてください。

私が一番悔しい思いをするのは、「お金が足りないから、本当はやるべき工事を削った」という相談を受けるときです。外壁の補修範囲を減らし、防水のグレードを落とし、足場の都合で点検しきれない面を「次回送り」にする。その場はしのげても、劣化は待ってくれません。次の修繕周期で、削った分の何倍もの費用がのしかかってきます。

ある築25年のマンションでは、積立金不足を理由に、外壁打診(壁を叩いて浮きを探す検査)を一部省いて工事を終えていました。数年後、省いた面のタイルが剥がれ落ち、結局もう一度足場を架けて補修することに。足場の架け払いだけで、数百万円が二度かかった計算です。あのとき、最初に全面を点検できていれば——と、今でも悔やまれます。

もう一つ、印象に残っている現場があります。高層部の一部にだけ気になる劣化があったマンションで、当初は「全面に足場を架けないと見られない」と言われ、見積もりが大きく膨らんでいました。私たちがロープアクセスで高層部だけ先行調査したところ、補修が必要なのは一部だけと分かり、全面足場を見送れたケースです。「全部を疑って全部を囲う」のと、「狙いを定めて確実に直す」のとでは、同じ建物でも費用がまったく変わります。

だからこそ私は、「お金が足りないから工事を削る」のではなく、「同じ予算で、より広く・確実に直せる工法を選ぶ」ことを、必ず先に検討していただきたいのです。ここが、次の話につながります。

積立金の上昇圧力を下げる最大のレバーは「工事費」、その鍵は工法選択

修繕積立金は、突き詰めれば「将来の工事費の積立」です。ということは、工事費そのものを下げられれば、積立金の上昇圧力も和らぎます。家賃や金利と違って、ここはオーナー・管理組合の判断で動かせる数少ないレバーです。

そして、大規模修繕の工事費の中で、意外なほど大きな割合を占めるのが「足場(仮設)」の費用です。建物をぐるりと囲う足場の架設・解体・養生は、工事費全体の2〜3割に達することも珍しくありません。しかも足場は、それ自体は何も「直して」いません。職人が作業するための、いわば足場代です。

私は、ここに改善の余地が大きいと考えています。すべてを従来の足場で囲うのではなく、建物の形状や劣化箇所に応じて、足場を使わない「ロープアクセス工法」(産業用ロープで職人が降下しながら作業する無足場の工法)を組み合わせる。これだけで、足場費と工期を圧縮できる現場が、確かに存在します。

足場を二度組まない——ロープアクセスとハイブリッド工法の実務

ロープアクセス工法は、高層部や、足場を架けにくい狭い隣地境界、あるいは「部分的な補修・点検」に特に向いています。足場の架設・解体が不要なため、コストと工期を抑えられ、何より居住者・テナントの生活への影響(騒音・日照の遮り・防犯面の不安)を小さくできます。賃貸物件なら、これは退去抑制にも直結します。

一方で、外壁の全面打診や大面積の塗り替えなど、足場を架けたほうが確実・効率的な部位もあります。だからこそ私は、「ロープアクセスか、足場か」の二者択一ではなく、部位ごとに使い分ける「ハイブリッド工法」を、必ずワンセットでご提案するようにしています。

たとえば、低層部の大面積は足場で一気に、高層部や入り組んだ部分はロープアクセスで——という具合に、建物にとっての最適解を組み立てる。これができると、「足場を二度組まない」段取りが可能になり、削らずに、しかし安く直せる現場が増えます。

イメージしやすいよう、ごく単純化した内訳で考えてみます。仮に大規模修繕の総額のうち、足場(仮設)が全体の25%を占めるとします。建物の3割の面積をロープアクセスに置き換えられた場合、その部分の足場が不要になるだけで、足場費の一部が圧縮できます。これは工事の中身(補修・塗装・防水そのもの)を一切削らずに生まれる差です。もちろん建物形状や立地によって効果の大小はありますが、「直す中身は守りながら、足場という“作業のための費用”を見直す」という発想が、積立金の上昇局面ではとりわけ効いてきます。

明誠が3つの工法(通常足場・ロープアクセス・ハイブリッド)を自社で持っている理由は、まさにここにあります。工法の選択肢が1つしかなければ、その工法に合わせた見積もりしか出せません。足場専門の会社は足場前提の、ロープ専門の会社はロープ前提の提案になりがちです。3つを比較した上で「この建物にはこれが最適」と言える会社は、日本でもまだ多くありません。詳しくはロープアクセス工法のご紹介大規模修繕工事のご紹介もご覧ください。

フランチャイズで「高品質×低価格」を成立させる仕組み

「安い」と聞くと、品質を心配される方がいます。当然のご懸念です。

明誠は、ロープアクセス工事として日本で初めてのフランチャイズ展開を行っており、塗装・防水・タイル・電気・看板など、各分野の専門職が加盟しています。これは、価格を無理に叩いて品質を削るのではなく、各専門職が自分の得意分野を直接担うことで、中間マージンを圧縮しながら品質を保つ仕組みです。

大規模修繕では、元請けが各工種を下請けに流すたびに、マージンが積み重なります。私が現場で「もったいない」と感じてきたのは、このマージンの層が、必ずしも品質には反映されていないことでした。専門職が直接つながるネットワークなら、その分を価格に還元できます。修繕積立金の上昇に頭を悩ませている管理組合・オーナーにとって、これは現実的な選択肢になり得ます。

そしてもう一つ、収益物件のオーナーさまにお伝えしたいのが「工期」の価値です。足場を組む工事は、架設と解体だけで相応の日数がかかり、その間は外観も住み心地も損なわれます。賃貸であれば、入居者にとっての不快期間がそのまま退去リスクや募集の弱さにつながりかねません。ロープアクセスを組み合わせて工期を縮められれば、不快期間が短くなり、空室や家賃下落という「見えない損失」を抑えられます。工事費の節約だけでなく、収益への影響まで含めて工法を選ぶ——これが、長く持ち続けるオーナーさまにとっての賢い守り方だと、私は考えています。

相見積もりは「金額」ではなく「仕様」で比べる

工事費の妥当性を確かめる王道は、複数社からの相見積もり(あいみつ)です。ただ、ここで一つだけ注意があります。総額の安さだけで選ぶと、かえって損をすることがあります。

私が理事長さまにお伝えしているのは、「金額の前に、仕様をそろえて比べてください」ということです。A社は外壁補修を全面で、B社は一部だけで見積もっていれば、B社が安く見えるのは当たり前です。比べるべきは、同じ補修範囲・同じ材料グレード・同じ保証年数で、いくらになるか。この土俵をそろえないと、数字は比較になりません。

そのうえで、足場費がいくら計上されているか、その一部をロープアクセスに置き換える提案が含まれているかを見ると、各社の「工法の引き出しの多さ」が見えてきます。同じ建物でも、工法の選択肢を持つ会社は、選択肢の少ない会社より柔軟な価格を出せることが多いのです。相見積もりは、価格交渉の道具であると同時に、各社の実力を見抜く健康診断でもあります。

今やるべき——長期修繕計画 見直しチェックリスト

最後に、総会前・着工前に確認したい項目を、チェックリストにまとめます。理事会で1分、議題に出すだけでも価値があります。

  • 現在の修繕積立金(円/㎡・月)は、国交省ガイドラインの目安と比べてどの位置か
  • 段階増額方式の場合、将来の増額カーブは「初期0.6倍以上・最終1.1倍以内」の目安に収まっているか
  • 長期修繕計画は何年前に作られ、直近の工事単価で見直されているか(5年ごとの見直しが目安)
  • 次回大規模修繕の見積もりは、複数社の相見積もりで妥当性を確認したか
  • 見積もりに「足場費」がいくら含まれ、その一部をロープアクセスで圧縮できないか検討したか
  • 工事仕様は、削るのではなく「同じ予算で広く・確実に」の発想で組まれているか

このうち一つでも「確認していない」があれば、それが点検の出発点です。

よくある質問

Q. 修繕積立金が上がったのは、管理会社が儲けたいからでは?
必ずしもそうとは言えません。建築費・労務費の高騰と、国交省ガイドラインに沿った適正化が主因です。ただし「工事費の妥当性を精査せず転嫁しているだけ」のケースもあるため、額そのものより、根拠となる長期修繕計画と工事仕様の妥当性を確かめることが重要です。

Q. 築古で積立金が足りません。工事を諦めるしかない?
諦める前に、工法の見直しをご検討ください。足場費の圧縮や工種の最適化で、同じ予算でもカバーできる範囲が変わることがあります。「相談だけでも」という段階で構いません。

Q. ロープアクセスは安全なのですか?
産業用ロープによる無足場工法は、所定の資格・手順・複線(二重のロープ)による安全管理のもとで行います。建物の形状や部位によって向き不向きがあるため、足場と組み合わせるハイブリッドで最適化します。

まとめ——数字の裏側を読み、削らずに賢く直す

新築の修繕積立金が6年で67.2%上がったというニュースは、裏を返せば「大規模修繕の単価が、業界全体で上がり続けている」という事実の表れです。既存マンションのオーナーさま・管理組合にとって、次の見積もりは確実に重くなります。

だからこそ、やるべきことは「値上げに耐える」ことだけではありません。長期修繕計画を今の単価で見直し、工事費の最大の変動要素である工法を点検し、足場を二度組まない段取りで、削らずに賢く直す。この順番で考えれば、積立金の上昇圧力とも、もう少し落ち着いて向き合えるはずです。

修繕積立金の値上げや長期修繕計画の妥当性、工法の選択について、ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問合せフォームはこちら。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料