大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

大規模修繕をすると固定資産税が下がる——「マンション長寿命化促進税制」で減税を取り逃す組合の“3つの落とし穴”。収益物件オーナーと管理組合が2027年3月の期限までに動く実務【2026年7月】

大規模修繕をすると固定資産税が下がる——「マンション長寿命化促進税制」で減税を取り逃す組合の“3つの落とし穴”。収益物件オーナーと管理組合が2027年3月の期限までに動く実務【2026年7月】

今朝、いつものようにニュースに目を通していると、神奈川県三浦市の地域メディアが「マンションの長寿命化に資する大規模修繕工事を行うと固定資産税が減額される制度」を取り上げている記事が目に留まりました(出典:湘南人「【三浦市】三浦市のマンション長寿命化大規模修繕工事で固定資産税が減額される制度とは?」)。

同じ日のニュースには、「修繕積立金が足りないマンションが急増し、大規模修繕を“借金”で乗り切るケースが増えている」という論考も流れてきました(出典:アゴラ「修繕積立金が足りないマンション急増:大規模修繕を『借金』で乗り切る危うさ」)。

この2本が同じ朝に並んでいたことに、私は正直、少し複雑な気持ちになりました。片方では「お金が足りないから工事ができない」と言われ、もう片方では「工事をすれば税金が安くなる制度がある」と言われている。それなのに、私が日々うかがう管理組合の理事会で、この減税制度の名前が最初から出てきたことは、体感でほとんどありません。

正直に申し上げます。この制度は、知らないまま工事を終えてしまうと、後から取り返しがつきません。申告期限があるからです。

今日は、この「マンション長寿命化促進税制」を、制度の説明ではなく現場の実務として整理します。何がいくら安くなるのか。どういう組合が使えて、どういう組合が取り逃すのか。そして収益物件をお持ちのオーナーさまが、まず何を確認すべきか。ここからが本題です。


まず結論:大規模修繕をした「翌年度の建物分の固定資産税」が減る

制度の正式名称は「マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」といいます。国土交通省が所管し、令和5年(2023年)4月からスタートしました(出典:国土交通省「マンション税制/マンション長寿命化促進税制(固定資産税の特例措置)」)。

ざっくり言えば、こうです。

一定の要件を満たすマンションが、長寿命化に資する大規模修繕工事を行うと、その翌年度分の「建物部分」の固定資産税が減額される。

ポイントを3つに絞ります。

項目 内容
減額の対象 各区分所有者に課される建物部分の固定資産税(土地は対象外)
減額の割合 1/6〜1/2の範囲内で市町村の条例が定める(国が示す参酌基準は1/3
減額の範囲・期間 1戸あたり床面積100㎡相当分まで/工事完了の翌年度分(1年分)

減額割合が「1/6〜1/2」と幅を持っているのは、これが市町村の条例で決まるからです。たとえば東京都(23区)は「2分の1」で運用されています(出典:東京都主税局「長寿命化に資する大規模修繕工事が行われたマンションに対する固定資産税の減額制度」)。横浜市、横須賀市、西宮市なども、それぞれ自治体のページで制度を案内しています(出典:横浜市横須賀市西宮市)。

つまり、同じ工事をしても、建物が建っている自治体によって減額幅が違う。ここが最初の実務ポイントです。「うちの市はいくらなのか」は、必ず所管の市区町村(資産税課・固定資産税課)に確認してください。ネット記事や一般論で判断しないでいただきたいのです。

三浦市のようなニュースが地域メディアに載る、というのは、裏を返せば「自治体側も、この制度がまだ十分に知られていないと分かっている」ということだと私は受け止めています。


「たかが1年分」と侮ってはいけない理由

ここで、こう思われた方も多いはずです。

「1年分だけ、しかも建物分だけ。大した額じゃないでしょう?」

たしかに、金額のインパクトだけを見れば、大規模修繕の工事費そのものに比べれば小さい。数万円から十数万円という水準になる住戸が多いでしょう(実際の税額は評価額・自治体・住戸面積で変わるため、ここでは断定しません)。

それでも私が「無視してはいけない」と申し上げるのは、この減税が、総会の空気を変えるからです。

大規模修繕の総会で、いちばん強い反対意見は何か。私の経験上、それは「工事の必要性がわからない」ではありません。「お金がない/これ以上負担したくない」です。修繕積立金の値上げ議案がセットになっていれば、なおさら空気は重くなります。

そこで、こう説明できたらどうでしょうか。

「今回の工事は、要件を満たせば来年度の建物分の固定資産税が減額される対象になり得ます。負担が増えるだけの話ではありません」

金額の大小ではなく、「この工事は、行政も後押ししている“正しい投資”である」という一言が、議案を通す力になる。私は理事長さまに、いつもそうお伝えしています。修繕積立金の値上げと減税をワンセットで説明できる組合は、合意形成が明らかに速いのです。

そして、この制度の設計思想そのものが、実はそこにあります。国交省は制度の目的を「必要な修繕積立金の確保や適切な長寿命化工事の実施に向けた管理組合の合意形成を後押しすること」と明記しています(出典:国土交通省 マンション税制)。減税は目的ではなく、合意形成のための道具として用意されている。この理解が、現場ではいちばん実用的です。


適用要件を、現場の言葉で分解する

制度のパンフレットは丁寧ですが、正直、理事会で回し読みするには少し硬い。私はいつも、要件を「建物の話/工事の話/管理の話」の3つに分けてご説明しています。

① 建物の要件——築20年以上・10戸以上

  • 新築された日から20年以上が経過していること
  • 総戸数10戸以上であること
  • 居住用の専有部分を有するマンション(区分所有建物)であること

築20年というのは、多くのマンションで「2回目の大規模修繕」が視野に入る時期です。つまりこの制度は、はじめから2回目以降の工事を想定して作られています。

② 工事の要件——「長寿命化工事」を過去に1回以上+今回

ここが技術的にいちばん大事なところです。制度が言う「長寿命化工事」とは、次の3つをすべて含む工事を指します。

  1. 外壁塗装等工事
  2. 床防水工事(開放廊下・バルコニー等)
  3. 屋根防水工事

この3点セットです。「外壁だけ塗り替えた」「屋上防水だけやった」という単発の工事は、ここで言う長寿命化工事にはあたりません。

そのうえで、

  • 過去に1回以上、この長寿命化工事を実施していること
  • 令和5年(2023年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までの間に、2回目以降の長寿命化工事を完了していること

が求められます(出典:国土交通省 マンション税制(告示・制度概要))。

適用期限は2027年3月31日。ここから逆算すると、大規模修繕は計画から着工まで1年〜1年半かかることが珍しくありません。「まだ先の話」ではないのです。

③ 管理の要件——「積立金を上げた」または「行政の助言・指導を受けた」

3つ目が、実はいちばん取り逃しの多いところです。次のどちらかに該当する必要があります。

A:管理計画認定マンションの場合
 → 令和3年(2021年)9月1日以降に、修繕積立金の額を管理計画の認定基準未満から認定基準以上に引き上げたこと

B:助言・指導を受けた管理組合の場合
 → 行政から助言または指導を受け、長期修繕計画の見直し等を行い、その長期修繕計画が一定の基準に適合することとなったこと

(出典:国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件(助言又は指導を受けた管理組合の管理者等に係るマンションの場合)」PDF

要するに、「工事をした」だけでは足りない。「管理を立て直した」ことがセットで求められるわけです。国が減税というインセンティブで動かしたいのは工事そのものではなく、修繕積立金と長期修繕計画の適正化だ、ということが要件からはっきり読み取れます。


落とし穴①:「過去に1回」を証明する書類が出てこない

ここからが、私が現場でいちばんヒヤリとしている話です。

要件②で「過去に1回以上、長寿命化工事を実施していること」とありました。この“過去の工事”は、証明書で示す必要があります。国交省は「過去工事証明書」の様式を用意しています(出典:国土交通省 マンション税制(証明書の様式等))。

問題は、その「過去の工事」が10年前、15年前だということです。

  • 当時の施工会社がすでに廃業している
  • 工事書類が管理会社の交代時に散逸した
  • 竣工図書はあるが、外壁・床防水・屋根防水の3点すべてをやった証拠が残っていない
  • 「たしか屋上防水は次回に見送った」と、当時の理事の記憶だけが頼り

——こういうケースを、私は何度も見ています。

大規模修繕の見積もりや工法の相談で管理組合にうかがい、話の流れで「前回の工事の書類、残っていますか」とお尋ねすると、理事長さまが倉庫の段ボールをひっくり返すことになる。そして半分くらいの確率で、必要な部分が出てこないのです。

私が申し上げたいのは、書類の確認は“工事の相談”と同時にやるべきだということです。工事が終わってから探し始めると、間に合いません。理由は落とし穴③で説明します。

もしお手元の書類で判断がつかない場合は、施工会社に「当時の工事内容が長寿命化工事の3要件を満たしていたか」を確認できることがあります。私どももご相談を受けたときは、まずここから一緒に整理します(お問合せはこちら)。


落とし穴②:修繕積立金の「引上げのタイミング」が合っていない

要件③のAをもう一度読んでください。

令和3年9月1日以降に、修繕積立金の額を認定基準未満から認定基準以上に引き上げたこと

ここには、2つの罠があります。

罠1:引き上げたのが令和3年8月以前だと、この要件に乗らない
 「うちはとっくに積立金を上げているから大丈夫」——そう思っていたら、値上げの決議が令和3年(2021年)8月の総会だった。日付が1か月違うだけで、この要件から外れてしまう可能性がある。

罠2:もともと積立金が十分だった“優等生”組合が、逆に乗りにくい
 「認定基準未満から認定基準以上に引き上げた」という書き方なので、最初から基準を満たしていた組合は、この経路に乗せられないことがあります。この場合はB(助言・指導ルート)の検討になります。

制度の趣旨からすれば当然の設計ではあるのですが、現場感覚では「まじめにやってきた組合ほど、要件の当てはめに一手間かかる」ように見えることがある。だからこそ、自己判断せず、所管自治体のマンション管理担当課に早い段階で相談することを、私は強くおすすめしています。

なお、修繕積立金の水準そのものについては、国交省が「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を公表しています。理事会で議論する際の共通のものさしとして、こちらを一度は開いておくと話が早くなります。


落とし穴③:申告は「工事完了後3か月以内」——ここで一番多く取り逃す

そして、最大の落とし穴です。

この減税は、自動では適用されません。所有者(区分所有者)が、市区町村に申告する必要があります。

そして申告期限は、一般に「長寿命化工事が完了した日から3か月以内」とされています(各自治体の案内で確認できます/出典:横須賀市西宮市)。

大規模修繕の竣工直後というのは、現場も組合もいちばんバタバタしている時期です。検査、手直し、精算、竣工報告、総会報告——そのうえ理事の任期が切り替わることも多い。そこに「3か月以内に、証明書を揃えて、各区分所有者が申告する」という作業が乗ってきます。

正直に申し上げて、これは段取りを事前に組んでおかないと、まず流れます。

私はいつも、次の順番で準備することをお願いしています。

  1. 工事の相談段階で、過去工事の書類と積立金の引上げ時期を確認する
  2. 着工前に、所管自治体に「この工事で要件を満たすか」を照会しておく
  3. 工事中に、施工会社に「大規模の修繕等証明書」の発行段取りを確認する(発行には建築士等の証明が必要になります)
  4. 竣工と同時に、証明書一式を揃えて各区分所有者に配布し、申告してもらう

つまり、税制の話は工事が終わってからではなく、工事を発注する前に始める。これに尽きます。


収益物件オーナーが最初に確認すべき「一棟か、区分か」

ここまでは管理組合の話でした。ここからは、収益物件をお持ちのオーナーさま向けの話です。

まず、身も蓋もない確認から入ります。

この制度は、区分所有マンション(=管理組合があるマンション)を前提に設計されています。築20年以上・10戸以上・居住用専有部分を有する、といった要件も、管理計画認定制度や修繕積立金という管理組合の仕組みとひもづいています。

したがって、

  • 区分所有の1室〜数室を投資用に持っているオーナーさま
     → 管理組合が要件を満たせば、ご自身の住戸の建物分の固定資産税が減額対象になり得ます。ただし賃貸中の住戸の扱いを含め、個別の判断は所管自治体と税理士にご確認ください。

  • 賃貸マンションを一棟まるごと単独所有しているオーナーさま
     → 区分所有・管理組合という枠組みから外れるため、この制度の対象にならない可能性が高いと考えられます。適用可否は必ず所管自治体にご確認ください。

私は、この2つ目のパターンのオーナーさまにこそ、正面から申し上げたいことがあります。

減税が使えないなら、工事費そのものを下げるしかない。

そして、そこには制度に頼らずに動かせる、大きな余地があるのです。


減税額より、はるかに大きい「足場」という費目

大規模修繕の見積書を、私は年間に何十枚と見ます。そのなかで、多くの理事長さま・オーナーさまが見落としている費目があります。

仮設足場です。

私どもが日々見積書を拝見するなかでの実感値として、マンションの大規模修繕において、仮設足場(および仮設工事)は工事費全体の2割前後を占めることが少なくありません。建物の形状、階数、隣地との距離によって上下しますので、あくまで目安として受け取ってください(公的な統計値ではなく、当社の見積比較にもとづく体感値です)。

つまり、こういうことです。

減税で戻ってくるのが「建物分の固定資産税の1/3〜1/2を1年分」だとすれば、
足場を見直すことで動くのは「工事費そのものの数%〜十数%」。

桁が違うのです。

もちろん、減税は取れるなら取るべきです。両方やればいい。ですが、優先順位を間違えないでいただきたいというのが、20年近く現場に立ってきた私の本音です。


ロープアクセス・ハイブリッド工法という、第3の選択肢

ここで、私どもがご提案している工法の話を少しだけさせてください。押し売りをするつもりはありません。選択肢を知らないまま発注してしまうことが、いちばんもったいないと思っているからです。

大規模修繕の工法には、大きく3つあります。

工法 概要 向いている建物
通常足場工法 建物全体を仮設足場で覆う従来型 中低層、形状が複雑、全面的に躯体補修が必要な建物
ロープアクセス工法(無足場工法) 産業用ロープで作業員が壁面に直接アクセスして施工。足場を組まない 高層、足場の架設が難しい、居住・稼働を止めたくない建物
ハイブリッド工法 部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける 大規模・複雑で、総合的なコスト最適化が必要な建物

ロープアクセス工法の要点は、単に「安い」ことではありません。建物の使い方を止めないことです。

足場を組むと、外壁は約2〜4か月にわたってメッシュシートで覆われます。窓は開けにくくなり、日当たりは落ち、防犯上の不安も生まれます。分譲マンションなら住民の不満として現れますが、収益物件では、これが「空室が埋まらない」という形で現金に直撃します。

内見に来たお客さまが、足場とシートに覆われた建物を見上げて、そのまま帰ってしまう。私はこの場面を何度も見てきました。工事費を数十万円削るために、賃料収入を数十万円逃している——そういう構図が、実際に起きているのです。

一方で、私は「何でもロープアクセスにすべき」とは決して申し上げません。躯体の劣化が広範囲に及んでいる建物、タイルの浮きが大量にある建物では、足場を組んだほうが結果的に安く、確実です。建物を見ずに工法を決める会社は、信用しないでいただきたい。これは同業として、はっきり言います。

だからこそ、私どもは3つの工法をすべて自社の選択肢として持っています。詳しくはロープアクセス工法のご紹介大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。


「減税の要件を満たす工事」と「工法の選択」は両立する

ここで、大事な整理をしておきます。

長寿命化工事の要件は「外壁塗装等工事・床防水工事・屋根防水工事のすべて」を含むこと、でした。ここに工法の指定はありません。

つまり、

ロープアクセス工法やハイブリッド工法で施工しても、工事の内容が要件を満たしていれば、減税の対象になり得る。

ということです(最終的な適用可否は、証明書の内容と所管自治体の判断になりますので、事前照会を必ず行ってください)。

これは、私が理事会でお話しすると、いちばん驚かれるポイントです。「無足場だと、ちゃんとした工事とみなされないのでは」と心配される方が本当に多い。そんなことはありません。求められているのは工事の内容と品質であって、足場を組んだかどうかではないのです。

私はこれを、必ずワンセットでご提案するようにしています。

  1. 工法で工事費を下げる(足場費・工期・空室リスクの圧縮)
  2. 要件を満たして減税を取る(建物分の固定資産税の減額)
  3. その分を修繕積立金に残す(次回の工事に備える)

3つ目がいちばん大事です。工事費を下げて浮いたお金を、そのまま積立金に残せた組合は、次の12年がまるで違います。


2027年3月31日から逆算する、現実的なスケジュール

適用期限は令和9年(2027年)3月31日までに完了した長寿命化工事です。今日は2026年7月14日。残りは約20か月です。

大規模修繕の標準的な流れから逆算すると、こうなります。

時期 やること
2026年7〜9月 過去工事の書類確認/積立金の引上げ時期の確認/自治体への事前照会
2026年9〜12月 建物調査・診断、工法の比較検討(足場/ロープアクセス/ハイブリッド)、見積取得
2027年1〜3月 総会決議、施工会社決定
2027年春〜 着工(※この時点では2027年3月末の期限に間に合いません)

——お気づきでしょうか。今から動いても、2027年3月31日の完了には間に合わない可能性が高いのです。

正直に申し上げます。すでに調査・診断が終わっていて、あとは総会決議と発注だけ、という段階の組合でなければ、期限内完了は現実的ではありません。

では、意味がないのか。そうではありません。

理由1:制度の延長・見直しが議論される可能性がある
 この特例措置は、これまでにも適用期限の延長が行われてきました。今後の税制改正で扱いがどうなるかは、現時点では確定していません。断定はできませんので、最新情報は必ず国土交通省と所管自治体でご確認ください。

理由2:要件の整備そのものが、組合にとって資産になる
 過去工事の書類を揃え、修繕積立金を適正水準に引き上げ、長期修繕計画を見直す——これは減税のためだけの作業ではありません。マンションの管理状況が「見える化」される時代に、そのまま資産価値の裏づけになります。管理計画認定を取っておくことの意味は、減税だけにとどまりません。

理由3:工法の比較検討は、いつやっても効く
 足場を見直してコストを下げるという打ち手は、税制の期限とは無関係です。

ですから、「間に合わないから何もしない」ではなく、「要件整備と工法比較は今から始めて、工事のタイミングは制度の動向を見て決める」——これが、私が今いちばん現実的だと考えている進め方です。


現場から:段ボール3箱の書類と、20万円

最後に、ひとつだけ現場の話をさせてください。

築28年、48戸の分譲マンション。2回目の大規模修繕の相談で、理事長さまからお電話をいただきました。積立金は決して潤沢ではなく、見積もりを取ったら想定より2割以上高かった、と。

私は建物を拝見して、外壁の劣化が全面的ではなく、足場が本当に必要なのは一部だと判断しました。ハイブリッド工法をご提案し、仮設費を圧縮する方向で計画を組み直しました。

そのうえで、私はこうお尋ねしました。

「前回の工事、外壁と床防水と屋上防水、全部やっていますか。書類は残っていますか」

理事長さまは、管理員室の倉庫から段ボールを3箱、引っ張り出してこられました。埃をかぶった竣工書類のなかから、前回(14年前)の工事の内訳書が出てきました。外壁塗装、開放廊下の床防水、屋上防水——3点、すべて入っていた。

私は、その場でこう申し上げました。

「長寿命化促進税制、対象になる可能性があります。市役所に事前に照会しておきましょう。工事が終わってから探し始めていたら、3か月では間に合いませんでした」

減額される税額は、1戸あたり十数万円ではありません。数万円規模です。48戸でも、金額としては決して大きくない。

それでも、あの日の理事長さまの表情を、私は忘れません。「工事費が下がって、税金も下がる」——その2つが揃ったことで、総会の議案は、驚くほどすんなり通りました。

現場で20年やってきて、私が一番悔しい思いをするのは、「知っていれば取れたものを、知らずに取り逃した」場面に立ち会うときです。この記事が、その一つでも防げるなら、書いた甲斐があります。


よくあるご質問(FAQ)

Q1. 減額されるのは何年分ですか?
A. 長寿命化工事が完了した翌年度分の、建物部分の固定資産税です。継続的に毎年減額される制度ではありません。

Q2. 減額の割合は全国一律ですか?
A. いいえ。1/6〜1/2の範囲内で市町村の条例により定められます(国が示す参酌基準は1/3)。たとえば東京23区は1/2で運用されています。必ず所管自治体にご確認ください。

Q3. 賃貸に出している区分所有の住戸でも対象になりますか?
A. 制度は居住用の専有部分を対象としており、所有者が居住しているかどうかで一律に線を引く制度ではありません。ただし、個別の適用可否は所管自治体の判断となります。税務の個別判断は税理士および所管自治体にご確認ください。

Q4. 一棟まるごと所有している賃貸マンションは使えますか?
A. この制度は区分所有マンション(管理組合・管理計画認定制度)を前提とした設計になっているため、対象外となる可能性が高いと考えられます。必ず所管自治体にご確認ください。一棟オーナーさまは、工法選択による工事費の最適化のほうが効果が大きい場合があります。

Q5. ロープアクセス工法で施工しても、減税の要件を満たせますか?
A. 要件は工事の内容(外壁塗装等・床防水・屋根防水のすべてを含むこと)で定められており、工法の指定はありません。したがって内容が要件を満たしていれば対象になり得ます。ただし証明書の内容と自治体の判断によりますので、着工前の事前照会をおすすめします。

Q6. 申告を忘れてしまいました。あとから申告できますか?
A. 申告期限は一般に工事完了後3か月以内とされています。期限を過ぎた場合の取扱いは自治体により異なりますので、まずは所管自治体の資産税担当課にご相談ください。この「3か月」が、実務上いちばんの落とし穴です。


まとめ——制度は、動いた組合の側にしか味方しない

今日の要点を、もう一度だけ整理します。

  1. マンション長寿命化促進税制は、長寿命化に資する大規模修繕工事をしたマンションの、翌年度の建物分の固定資産税を1/6〜1/2(参酌1/3)減額する制度。
  2. 要件は「築20年以上・10戸以上」「外壁・床防水・屋根防水の3点セットを過去に1回以上+今回」「積立金の引上げ、または助言・指導を受けた計画見直し」。
  3. 落とし穴は3つ——①過去工事の証明書類、②積立金引上げのタイミング(令和3年9月1日以降)、③申告は工事完了後3か月以内
  4. 適用期限は2027年3月31日(今後の税制改正での扱いは確定していないため、最新情報は要確認)。
  5. 収益物件オーナーは、まず「区分所有か、一棟所有か」を確認する。一棟所有なら、減税より工法によるコスト最適化が本丸。
  6. ロープアクセス工法・ハイブリッド工法でも、工事内容が要件を満たせば減税の対象になり得る。

制度というのは、待っていても向こうからは来ません。申告しなければ減額されないし、書類がなければ証明できない。動いた組合の側にしか、味方をしてくれないのです。

私どもは、足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3工法から、その建物にとって本当に最適なものをご提案できる、日本でも数少ない会社です(私たちの考え方)。工事のご依頼をいただく前の、「そもそもうちは減税の対象になるのか」「工法で本当に安くなるのか」という段階のご相談だけでも、遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。

これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。


出典・参考資料

※本記事は制度の概要を一般的に解説したものであり、個別の税務判断を行うものではありません。適用可否・減額割合・申告手続きは、必ず所管の市区町村および税理士にご確認ください。