
2026年9月16日 更新
大崎、五反田、天王洲アイル、武蔵小山、戸越銀座——品川区でビルやマンションをお持ちの方から、毎年秋にいただくご相談はだいたい同じ形をしています。「12条点検の案内が届いたが、外壁の打診までやる必要があるのか」「前回の打診がいつだったか、資料が見当たらない」「うちの立地では足場が組めない」。
株式会社明誠の本間幸紘です。東京都東大和市を拠点に、マンション・ビル・ホテルの大規模修繕を20年近くやってきました。品川区は、大崎・五反田の再開発オフィス街と、天王洲・東品川の運河沿い高層棟と、武蔵小山・戸越・荏原の木造密集市街地が、ひとつの区の中に並んでいる珍しいエリアです。同じ「品川区の12条点検」でも、建物が建っている場所によって現実的な打診手段がまったく変わります。
この記事は、品川区の実情に即して、12条点検の対象・時期・費用の考え方を整理したものです。
結論:品川区で12条点検の対象になる建物と、全面打診が必要になるタイミング
先に結論からお伝えします。
Q. 品川区で特定建築物の定期報告(12条点検)の対象になるのはどんな建物?
A. 用途と規模で決まります。マンション(共同住宅・下宿・寄宿舎)なら5階以上かつ当該用途部分の床面積が1,000㎡超、事務所ビルなら5階以上で延べ面積2,000㎡超のうち3階以上の部分が1,000㎡超、といったラインが代表的です。正確な線引きは用途コードごとに異なるため、東京都都市整備局の「定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」で確認してください。品川区もこの東京都の基準に沿って運用しています。
Q. 外壁の全面打診はいつ必要になる?
A. 竣工・外壁改修・前回の全面打診等から10年を超えた建物が、その後の定期報告のタイミングで対象になります。日常的には手の届く範囲の打診等、加えておおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分について全面打診等を行うこととされています(平成20年国土交通省告示第282号)。
Q. 令和8年度に報告する建物が、いま真っ先に確認すべきことは?
A. 平成28年4月1日以降に打診等を実施しているかどうかです。公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターは、令和8年度に報告する方へ向けて「外壁全面打診等が必要な外装材がある建物の場合、平成28年4月1日以降に打診等を実施している必要があります。打診等の調査を行っていない場合、要是正となり、写真添付が必要となります」と明示しています(出典:公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター「特定建築物定期調査報告」)。ここが令和8年度の実務上いちばん大きな分岐点です。
Q. 報告の締切は?
A. 3年ごと報告の用途は、その報告年度の5月1日から10月31日までが報告期間です。この記事を公開した2026年9月16日時点で、令和8年度に該当する用途をお持ちなら締切まで残り45日。打診調査は現場の段取りに時間がかかるため、逆算して動きたい時期です。
Q. どこに出す?
A. 敷地内に延べ面積1万㎡を超える建築物がある場合は東京都知事、それ以外は品川区長が特定行政庁です。品川区では特定建築物・防火設備に関する窓口が建築課監察担当(電話 03-5742-6771)、建築設備・昇降機等に関する窓口が建築課審査担当(設備)(電話 03-5742-6774)となっています(出典:品川区「定期報告制度について」更新日:令和8年2月2日)。
ここからが本題です。順に噛み砕いていきます。
建築基準法第12条とは|「報告」と日常の点検は別物
12条点検という言葉はよく使われますが、条文としては大きく二つに分かれます。
第12条第1項が、特定建築物の所有者・管理者が一級建築士・二級建築士または特定建築物調査員に調査させ、その結果を特定行政庁に報告する義務です。これがいわゆる「定期報告」で、区が受け取り、内容を確認します。
第12条第2項が、国・都道府県・建築主事を置く市町村が所有・管理する建築物についての定期点検です。民間の建物には直接かかりません。
つまり、品川区の民間マンション・ビルのオーナーが向き合うのは第1項の定期報告です。ここを取り違えて「点検だけしておけばよい」と考えてしまうと、報告義務の履行漏れになります。
品川区は定期報告制度のページで、この制度の趣旨を「建築物の使用が開始された後も、引き続き、適法な状態を確保し続けることが重要であるという考え方から、定期的な調査や報告を求めることとしています」と説明しています。建てたときに適法だったことと、いま適法であることは別という、きわめて当たり前の、しかし見落とされやすい前提です。
報告した内容は「公開」される
見落とされがちな論点をひとつ。定期報告の概要書は閲覧の対象になります。品川区では、特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等の定期調査/検査報告概要書を区役所 本庁舎6階 建築課で閲覧できます。閲覧時間は午前8時30分〜午後5時(正午〜午後1時を除く)、閲覧手数料は無料。ただしコピーや写真撮影はできず、来庁前に窓口への連絡が必要です。
つまり、報告書の「要是正」がどう書かれているかは、第三者が見に来られる情報です。賃貸ビルであればテナント、分譲マンションであれば購入検討者が、その気になれば確認できる。資産価値の観点から、ここは軽く見るべきではありません。
全面打診が必要になる4つのトリガー
外壁の全面打診等が必要になるのは、次のいずれかに当たるときです。
- 竣工から10年を超えた建物で、その後の定期報告の時期を迎えた
- 外壁の改修(タイル張替え・塗替え等)から10年を超えた
- 前回の全面打診等から10年を超えた
- 手の届く範囲の打診等や目視で異常が認められ、落下の危険が疑われる
1〜3は「10年」という時間の話ですが、4は時間と無関係に発生します。品川区の運河沿い・湾岸エリアは潮風と強風にさらされ、タイルの浮きが想定より早く進行するケースがあります。10年を待たずに異常が見つかることは珍しくありません。
打診の代わりに使える調査方法
告示上、全面打診等の「等」には赤外線装置による調査などが含まれます。ただし赤外線は天候・日射・壁面方位・外装材の種類によって精度が大きく変わり、判定できない範囲が残ることがあります。実務では赤外線で全体をスクリーニングし、疑わしい範囲を打診で確定するという組み合わせが現実的です。
なお、令和7年7月17日には国土交通省から「建築物の定期調査報告における落下防止措置付き外壁タイルの取扱いについて(技術的助言)」が通知されています。ピンネット工法など落下防止措置を施した外壁の扱いについて整理された内容で、過去に落下防止措置を行った建物をお持ちの方は、調査を依頼する建築士に必ず共有してください。
令和8年度の品川区で、実務が変わった点
年度が替わると変わるのは補助金だけではありません。定期報告の実務も、令和7年度から令和8年度にかけて複数の変更が入っています。
① 令和7年7月1日から新様式・スプリンクラーが調査項目に追加
令和7年7月1日から定期調査報告の様式が新しくなり、同日からスプリンクラー設備(令和6年国土交通省告示第284号第1第1号または第2号ニに該当するものが対象)が調査項目に追加されました。古い様式で作成すると受付で差し戻される可能性があります。
② 令和8年3月27日からインターネット受付が開始——ただし品川区宛は対象外
東京都防災・建築まちづくりセンターは、令和8年3月27日から特定建築物定期調査報告のインターネット受付を開始しました。ただし対象は東京都知事宛または多摩建築指導事務所長宛のみです。品川区長が特定行政庁となる建物(敷地内に延べ面積1万㎡超の建築物がない場合)は、このインターネット受付の対象外になります。
一方、品川区は独自に「昇降機等」の定期検査報告について電子受付を順次開始していると案内しています。特定建築物(外壁打診を含む本体の調査報告)と昇降機等で、電子化の進み方が違う——ここは品川区の実務として押さえておきたい点です。
③ 事務手数料が令和8年3月に改定
特定建築物定期調査報告に係る事務手数料は、令和8年3月2日付(同年3月24日に一部訂正)で改定が公表されています。前年度の見積書がそのまま通る前提で予算を組んでいると差が出ます。金額は改定内容が随時更新されるため、発注前に東京都防災・建築まちづくりセンターの公表資料で現行額をご確認ください。
④ 東京都建築安全条例の改正(令和7年4月1日施行)
東京都建築安全条例が改正され、令和7年4月1日から施行されています。定期報告の判定に直接影響する改正ではありませんが、是正工事の計画時に関係する場合があります。
令和8年度は共同住宅の報告年度か?
分譲マンションの理事会からいちばん多い質問がこれです。
東京都の資料では、3年ごとに報告が必要な共同住宅の報告年次の例として、令和6年度・令和9年度・令和12年度が示されています。この例に当たる建物であれば、令和8年度は報告年度ではなく、次は令和9年度(令和9年5月1日〜10月31日)ということになります。
ただし、ここには2つの注意点があります。
注意点1:用途コードによって報告年度は違う。同じ「マンション」でも、1階に店舗や診療所が入る複合用途であれば、その建物に適用される用途コードが変わり、報告年度も変わります。必ずご自身の建物の用途コードで一覧を確認してください。
注意点2:初回免除の期間に幅がある。新築・改築後は、検査済証の交付を受けた日の属する年度の翌年度以降の2回目の報告時期から報告が必要になります。たとえば令和5年度中に検査済証が交付された共同住宅なら、令和6年度の報告が免除され、令和9年度から報告が必要になります。令和6年度〜令和8年度に交付された建物なら令和12年度からです。検査済証の取得時期によって、最初の報告までの期間はかなり変わります。
そして、令和9年度が報告年度になる建物にとって、令和8年度の後半(いま)は準備の適期です。理由は単純で、令和9年度に報告する建物で全面打診等が必要な場合、打診等の実施実績が求められるからです。調査だけを単発で発注するより、大規模修繕の劣化診断と一体で組んだほうが、結果的に費用も日程も収まります。この点は後段で詳しく述べます。
建築設備・昇降機等は考え方が違う
建築設備および昇降機等の定期検査報告は、検査済証の交付を受けた日の翌日から起算して2年を経過する日までに初回の報告を提出する必要があります。特定建築物・防火設備の「初回免除」とは取扱いが異なるため、新築のビル・マンションをお持ちの方は混同しないようご注意ください。
実務コスト感|足場・ロープアクセス・ゴンドラをどう選ぶか
12条点検の全面打診で、オーナーにとって最大の費用要因は「外壁にどうやって人を寄せるか」です。打診そのものの人件費より、アクセス手段の仮設費が大きいことは珍しくありません。
3つの手段の比較
| 手段 | 向いている建物 | 主な制約 |
|---|---|---|
| 通常足場 | 中低層、敷地に余裕がある、同時に補修も行う | 仮設費が大きい/組立解体に日数/隣地・道路の占用が必要/防犯面の懸念 |
| ロープアクセス工法(無足場工法) | 高層、狭隘地、足場が組めない、調査のみを短期で終えたい | 屋上に支点が取れることが前提/一度に投入できる人数に上限 |
| ゴンドラ | 屋上に常設ゴンドラがある高層ビル | 常設がなければ設置費が高額/凹凸・セットバックのある面は届かない |
大切なのは、この3つを1棟の中で使い分けられるかです。品川区のように形状も立地もバラバラな建物が多い区では、「北面と東面は足場、道路に面した南面と西面はロープアクセス」といった組み合わせ(ハイブリッド工法)が、総額でいちばん安く収まることがよくあります。1つの工法しか持たない会社に相談すると、この選択肢が最初から議論に上がりません。
「調査だけ」なら足場を組む理由がほとんどない
打診調査だけを行うのであれば、足場を組む必然性はかなり低くなります。足場は「補修工事を行うための作業床」であって、「壁を叩くための手段」としては明らかに過剰だからです。調査の段階では無足場で行い、要是正箇所が確定してから補修の規模に応じて仮設計画を立てる——この順番のほうが、オーナーの持ち出しは小さくなります。
ロープアクセス工法が品川区の12条打診で選ばれる理由
品川区の地理特性に即して、無足場工法が効く場面を3つ挙げます。
1. 天王洲・東品川・八潮——運河沿いの高層棟で、足場が現実的でない
天王洲アイル周辺から東品川、八潮にかけての運河沿いエリアには、高層のオフィス・住宅棟が並びます。この規模の建物に調査目的で全面足場を架けるのは、費用面でも工期面でも合理的とは言えません。加えて運河沿いは風が強く、足場のメッシュシートが風を受けることによる荷重も無視できません。ロープアクセス工法なら、屋上に適切な支点を確保できれば、風の影響を受けにくい形で壁面にアクセスできます。
塩害環境ではタイルの浮きや鉄部の腐食が内陸より進行しやすいため、10年に一度の全面打診は「義務だから」以上の意味を持ちます。
2. 武蔵小山・戸越・荏原——密集市街地で、そもそも足場を組む空間がない
武蔵小山や戸越銀座、荏原周辺には、商店街と木造住宅が密に並ぶ市街地が広がります。ここに建つ中層のマンションやビルは、隣地との離隔がわずかしかなく、前面道路も狭い。足場を組むには隣地の承諾と道路使用許可が要り、承諾が取れずに計画が止まる例を私は何度も見てきました。
ロープアクセス工法は建物の上から下りてくる工法なので、地上の空間をほとんど使いません。商店街の営業を止めずに調査を進められるのは、この工法の構造上の利点です。
3. 大崎・五反田——稼働中のオフィスで、テナントへの影響を最小化する
大崎・五反田は再開発でオフィスが集積したエリアです。稼働中のオフィスビルで全面足場を架ければ、窓が塞がれて執務環境が悪化し、共用部に仮設が入り、テナントからの問い合わせが増えます。賃貸オーナーにとっては、工事費以上にテナント満足度の低下が痛い。
ロープアクセスによる調査は、1面あたりの作業日数が短く、窓を長期間塞ぎません。事前にテナントへ作業日と時間帯を通知しておけば、通常営業のまま調査を完了できます。
ロープアクセス工法の技術基準・安全管理・施工事例については、ロープアクセスドットコムで詳しくまとめています。工法そのものの考え方は明誠のロープアクセス工法のページもあわせてご覧ください。
12条点検を大規模修繕と一体化するメリット
ここが、オーナーにとって費用面でいちばん効く論点です。
打診調査と劣化診断は、やっていることがほぼ同じ
12条点検の全面打診等は「外壁を叩いて浮きを探す」作業です。大規模修繕の劣化診断も「外壁を叩いて浮きを探し、数量を拾う」作業です。同じ作業を2回発注している管理組合・オーナーが、驚くほど多い。
一体化すれば、アクセス手段(足場やロープ)の費用が1回で済み、調査員の動員も1回で済みます。さらに、法定報告に使える打診記録と、修繕工事の見積根拠になる数量調書が同時に手に入ります。
具体的な進め方としては、次の順序が現実的です。
- ロープアクセス(または赤外線+ロープアクセス)で外壁全面の打診を実施
- 打診結果を12条点検の定期調査報告書に反映して報告
- 同じ打診データから浮き・剥離の数量を拾い、修繕工事の概算を作成
- 数量が確定した段階で、足場/ロープアクセス/ハイブリッドの仮設計画を比較検討
- 長期修繕計画の更新にデータを反映
マンションの管理組合向けの進め方は分譲マンション管理組合のお客様へ、ビル・収益物件のオーナー向けはビル・施設オーナーのお客様へにまとめています。
品川区の無料支援を先に使う
品川区は、分譲マンションの管理組合向けに複数の無料支援を用意しています(出典:品川区「マンション支援」更新日:令和8年4月1日)。
- マンション建替・修繕相談:毎月第3火曜日 午後1時〜午後4時、1回80分程度、同一年度に3回まで。相談員は弁護士・一級建築士・マンション管理士。場所は品川区役所 本庁舎6階 住宅課内ほか。申込は1週間前まで
- 一級建築士派遣:1回2時間程度、1組合につき3回まで。申込は1週間前まで
- マンション管理相談:毎月第2・第4水曜日 午後1時〜午後4時、1回50分程度、同一年度に3回まで。相談員はマンション管理士
- マンション管理士派遣:1回2時間程度、1組合につき3回まで
- マンション建替え・改修アドバイザー制度利用助成:区内の分譲マンションを対象に、(公財)東京都防災・建築まちづくりセンターが実施するアドバイザー制度を利用した場合の派遣料を1回まで全額助成。予算に限りがあるため、希望する場合は事前に相談が必要
窓口は品川区 都市環境部 住宅課 住宅運営担当(電話 03-5742-6776)です。
一級建築士派遣は、12条点検の相談にそのまま使えます。「うちの建物は令和何年度が報告年度なのか」「前回の打診記録が見当たらないがどうすればよいか」といった論点を、無料で第三者の建築士に整理してもらえる。業者に見積を取る前にこれを使うと、話が早くなります。
品川区には「計画修繕調査費の助成」はない
正直にお伝えします。中央区や墨田区などが設けている分譲マンション計画修繕調査費助成(調査費の一部を区が補助する制度)に相当する制度は、品川区では確認できませんでした。品川区のマンション支援は、相談・派遣・アドバイザー派遣料助成という「専門家の知見を無料で使える」設計になっており、調査費そのものへの補助という形はとっていません。
したがって品川区の管理組合・オーナーは、調査費は自己負担を前提に、そのぶん一体発注で総額を下げるという戦略が現実的です。ここで工法の選択肢を3つ持っているかどうかが効いてきます。
なお、品川区の助成制度は年度ごとに見直されます。この記事の執筆時点で確認できなかっただけで、今後新設される可能性はあります。検討時には必ず住宅課へ直接ご確認ください。
管理計画認定制度との関係
品川区はマンション管理計画認定制度を令和5年4月1日から運用しています(出典:品川区「マンション管理計画認定制度」更新日:令和8年7月1日)。認定基準には「長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること」「計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること」などが含まれます。
12条点検の打診データは、長期修繕計画を実態に合わせて見直すための一次資料になります。法定報告のために取ったデータが、そのまま認定申請の土台になるという関係です。
申請手数料は、オンラインによる申請は区の手数料が無料、紙ベースで品川区に直接申請する場合は基本手数料29,000円(長期修繕計画が複数ある場合は2つ目以降に加算手数料16,000円)となっています。ただしオンライン申請では、事前確認の依頼先で別途審査手数料・システム利用料がかかるため、依頼先への事前確認が必要です。認定期間は認定を受けた日から5年間で、有効期間内に更新しなければ失効します。
認定を取得すると、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資の金利引き下げ、マンションすまい・る債の利率上乗せ、区分所有者側ではフラット35維持保全型の金利引き下げ、長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合の固定資産税の減額といった優遇があります。
標準管理規約が令和7年10月に改正されている
もうひとつ、品川区が注意喚起している論点があります。国土交通省は令和7年のマンション関係法(区分所有法等)の改正を踏まえ、令和7年10月にマンション標準管理規約を改正しました。総会の開催手続きや決議要件といった管理組合の運営上重要な内容が含まれるため、各マンションの管理規約も見直しが必要になります。
大規模修繕の決議要件に関わる部分でもあるので、12条点検の結果を受けて工事を検討する管理組合は、規約の状態も並行して確認しておくと手戻りが減ります。
まとめ|品川区のオーナー・理事長が今週確認したい3点
長くなったので、実務の要点を3つに絞ります。
1. 前回の打診がいつだったかを、記録で確認する
令和8年度に報告する建物なら、平成28年4月1日以降に打診等を実施している必要があります。記録が見当たらない場合、報告書は「要是正」となり写真添付が必要になります。まず管理会社や過去の報告書控えを当たってください。
2. 自分の建物の報告年度を、用途コードで確定する
「マンションだから3年ごと」で止めず、複合用途かどうか、検査済証の交付年度はいつかまで確認します。判断がつかない場合は、①全体の階数・面積 ②各用途に供する面積 ③各階の用途 を整理したうえで、品川区 建築課監察担当(03-5742-6771)へ問い合わせるのが確実です。
3. 調査と修繕を分けて発注していないか、見直す
12条点検の打診と大規模修繕の劣化診断は作業がほぼ重なります。別々に発注していれば、アクセス費用を二重に払っている可能性があります。品川区の一級建築士派遣(無料・1組合3回まで)を使って、発注の枠組みそのものを点検してみてください。
足場が組めない立地でお困りでしたら、株式会社明誠へのお問い合わせからご相談ください。品川区の物件についても、通常足場・ロープアクセス・ハイブリッドの3案で概算を比較したうえでご提案します。
よくある質問(FAQ)
Q. 定期報告を出さないとどうなりますか。
A. 建築基準法第12条第1項に基づく報告は所有者・管理者の義務です。未報告のまま放置すれば是正指導の対象になりますし、外壁が落下して第三者に被害が出た場合、管理上の責任を問われる根拠にもなります。報告書の概要書は区役所で閲覧できるため、未報告・要是正の状態は第三者からも見える情報になります。
Q. 賃貸マンション(ワンオーナー)でも対象ですか。
A. 12条点検の定期報告は、所有形態ではなく用途と規模で決まります。ワンオーナーの賃貸マンションでも、規模要件に当たれば対象です。一方、品川区のマンション管理計画認定制度は分譲マンションが対象で、ワンオーナーの賃貸マンションは対象外です。制度によって対象が異なる点にご注意ください。
Q. 赤外線調査だけで済ませられますか。
A. 告示上の「全面打診等」に赤外線調査が含まれる場合はありますが、天候・日射条件・壁面方位・外装材の種類によって判定できない範囲が生じます。実務では、赤外線でスクリーニングし、疑わしい箇所を打診で確定する組み合わせをおすすめしています。調査を依頼する建築士と、どの範囲をどの手法で見るかを事前に詰めてください。
Q. ロープアクセスで本当に外壁全面を打診できますか。
A. 屋上に適切な支点が確保できれば、壁面を上から下へ帯状に区切って順に打診していく形で、全面をカバーできます。バルコニーの奥や大きなセットバックなど、ロープでは届きにくい部位はあるため、事前調査で部位ごとにアクセス手段を割り付けます。届かない部位だけ部分足場を併用するのがハイブリッド工法の考え方です。
Q. インターネットで報告書を提出できますか。
A. 令和8年3月27日から特定建築物定期調査報告のインターネット受付が始まっていますが、対象は東京都知事宛または多摩建築指導事務所長宛のみです。品川区長が特定行政庁となる建物は対象外となります。なお品川区は「昇降機等」の定期検査報告について電子受付を順次開始していると案内しているため、設備側は今後の運用拡大に注意してください。
Q. 報告書の様式はどこで手に入りますか。
A. 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンターのサイトから、特定建築物定期調査報告書等のExcel版・PDF版と作成要領がダウンロードできます。令和7年7月1日から新様式に変わっているため、古い様式を使い回さないようご注意ください。
この記事のポイントまとめ
- 品川区で12条点検の対象になるかは用途と規模で決まる。判断は東京都都市整備局の一覧で確認する
- 令和8年度に報告する建物は、平成28年4月1日以降に打診等を実施している必要がある。未実施なら要是正・写真添付
- 3年ごと報告の共同住宅は、東京都資料の例では令和6・9・12年度が報告年次。令和9年度が次の建物は、いまが準備の適期
- 新築・改築後は初回免除があり、検査済証の交付年度により最初の報告時期が変わる
- 建築設備・昇降機等は検査済証交付日の翌日から2年以内に初回報告。特定建築物とは考え方が違う
- 提出先は、敷地内に1万㎡超の建築物がなければ品川区長。窓口は建築課監察担当(03-5742-6771)
- インターネット受付(令和8年3月27日開始)は都知事・多摩建築指導事務所長宛のみで、品川区長宛は対象外
- 報告概要書は品川区役所本庁舎6階 建築課で無料閲覧できる。第三者から見える情報である
- 令和7年7月1日から新様式・スプリンクラー設備が調査項目に追加。事務手数料は令和8年3月に改定
- 品川区には計画修繕調査費の助成は確認できない。代わりに一級建築士派遣・マンション管理士派遣・アドバイザー制度利用助成(派遣料1回全額)が無料で使える
- 管理計画認定はオンライン申請なら区の手数料が無料、紙申請は基本29,000円。認定期間は5年
- 打診調査と大規模修繕の劣化診断を一体化すれば、アクセス費用の二重払いを避けられる
- 天王洲・東品川の高層棟、武蔵小山・戸越の密集市街地、大崎・五反田の稼働中オフィス——いずれもロープアクセス工法が有効に働く条件がそろっている
出典・参考資料
- 品川区「定期報告制度について」(更新日:令和8年2月2日)
- 品川区「マンション支援」(更新日:令和8年4月1日)
- 品川区「マンション管理計画認定制度(令和5年4月1日開始)」(更新日:令和8年7月1日)
- 東京都都市整備局「3.定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」
- 公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター「特定建築物定期調査報告」(令和8年度に報告する方へ/インターネット受付 2026年3月27日開始/事務手数料改定 2026年3月2日・一部訂正3月24日)
- 国土交通省「建築物の定期調査報告における落下防止措置付き外壁タイルの取扱いについて(技術的助言)」(2025年7月17日通知)
- 国土交通省「マンション標準管理規約」(令和7年10月改正)
本記事の情報の鮮度について:本記事は2026年9月16日時点で公表されている品川区および国土交通省・東京都の公式情報をもとに執筆しています。制度は年度途中でも改正・予算終了があり得ます(品川区のマンション建替え・改修アドバイザー制度利用助成は予算に限りがあり、予算枠に達し次第受付終了となります)。実際に申請・報告される前に、必ず品川区および該当窓口へ最新の内容をご確認ください。
執筆者:本間 幸紘(株式会社明誠 代表取締役)
専門領域:マンション大規模修繕/ロープアクセス工法/建物長寿命化計画
実務経験:建設・改修業界 20年以上
所属:一般社団法人 全国建設業支援協会(JCSA)
株式会社明誠について:東京都東大和市を拠点に、東京・関東一円で通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3つから建物に最適な工法をご提案する改修会社です。日本初のロープアクセス工事フランチャイズを展開しています。会社の考え方はこちら。
関連リソース:ロープアクセス工法の技術情報・安全基準・施工事例はロープアクセスドットコム(https://rope-access-method.com/)で公開しています。
最終更新:2026年9月16日


