大規模修繕はロープアクセスが提案可能な東京の明誠へ

創業から6000棟超の施工実績

遮熱塗料はマンション大規模修繕の“投資”になるか——2026年の酷暑局面で、屋上・屋根塗装が電気代と資産価値に効く理由と、ロープアクセス工法でコストを抑える実務【2026年7月】

遮熱塗料はマンション大規模修繕の“投資”になるか——2026年の酷暑局面で、屋上・屋根塗装が電気代と資産価値に効く理由と、ロープアクセス工法でコストを抑える実務【2026年7月】

理事長さまから先週いただいた質問が、そのまま今日のテーマです。「テレビで遮熱塗料というのをやっていた。うちの大規模修繕でも使えるのか。使うと得なのか」。

正直に申し上げます。この質問は、答え方をひとつ間違えると、管理組合の予算を10万円単位で無駄にも、逆に生かしもします。だからこそ、今日は数字と現場の実感の両方で、できるだけ誠実にお答えしたいと思います。

きっかけは、2026年7月に放送されたテレビ番組で、大手塗料メーカーの屋根用遮熱塗料が紹介されたことでした(出典:日本ペイントホールディングス ニュース)。一般の視聴者にまで「遮熱」という言葉が届いたのは、良いことだと思っています。ただ、テレビはメリットを短く伝えるのが仕事です。マンションの大規模修繕という、10年に一度・数千万円の意思決定に当てはめるには、もう少し補助線が要ります。

私はこれを、屋上防水と外壁塗装の計画と必ずワンセットで考えるようにしています。ここからが本題です。

1. なぜ今、遮熱塗料が話題になっているのか

背景には、単純ですが避けられない事実があります。夏が、年々暑くなっているということです。

気象各社の2026年夏の見通しでは、「ダブル高気圧」の影響で7月下旬から8月上旬が暑さのピークとなり、最高気温40℃以上の「酷暑日」が全国で延べ7〜14地点にのぼると予想されています(出典:ウェザーニュース 猛暑見解2026日本気象協会 tenki.jp 3か月予報)。気象庁の暖候期予報でも、全国的に平年より気温が高い見込みとされています(出典:気象庁 季節予報解説資料)。

この暑さが、マンションの最上階や、鉄骨造の商業ビル・ホテルの屋根に直撃します。屋上のコンクリートやスレート屋根は、真夏の日中に表面温度が60〜80℃まで上がることも珍しくありません。その熱が、じわじわと最上階の室内に伝わります。

私が現場で20年やってきて、夏場の最上階の理事さんから必ず聞くのが「エアコンが効かない」という声です。遮熱塗料は、この「屋根から入ってくる熱」を減らすための塗料です。番組をきっかけに問い合わせが増えているのは、暑さという体感が、そのまま関心につながっているからだと思います。

2. 遮熱塗料とは何か——「反射」で熱を防ぐ仕組み

まず言葉の整理からです。遮熱塗料(しゃねつとりょう)とは、太陽光、とくに熱を持つ近赤外線を通常の塗料より多く反射することで、塗った面の温度上昇を抑える塗料のことです。素人向けに言えば、「屋根に白っぽい鏡を薄く敷いて、太陽の熱を跳ね返す」イメージが近いです。

よく混同される「断熱塗料」とは別物です。断熱は熱を“伝えにくくする”、遮熱は熱を“反射して入れない”。仕組みが違います。この初出の区別を曖昧にしたまま契約すると、期待と結果がずれます。私は必ず、ここを最初にご説明します。

JIS K 5675という公的なものさし

遮熱塗料の性能には、公的な規格があります。屋根用については日本産業規格の「JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料」が定められており、平成23年(2011年)7月20日に公示されました(出典:日本建築仕上材工業会/建材試験センター 規格基準紹介日本塗料工業会 高日射反射率塗料)。

なぜ規格の話をするかというと、「遮熱」とうたっていても、日射反射率がどの水準にあるかは製品ごとに差があるからです。管理組合として発注するなら、カタログの雰囲気ではなく、JIS K 5675に適合しているか、日射反射率の数値はいくつかを、見積書と一緒に確認してください。私はこれを、施工会社の誠実さを測る最初のリトマス試験紙だと思っています。

表面温度と室内温度は、どのくらい下がるのか

効果の目安として、メーカーが公表している実験値を紹介します。大手メーカーの屋根用遮熱塗料では、屋根表面で約20℃、室内で約4℃の温度低下という実験結果が示されています(出典:日本ペイント サーモアイ シリーズ 製品ページ)。

ここで、正直にお伝えしておきたいことがあります。これはあくまでメーカーの実験条件下の数値であり、実際のマンションで同じ数字が出ると約束するものではありません。屋根の形状、色、断熱材の有無、方位、周辺の日当たりで結果は変わります。「必ず4℃下がります」と言い切る営業がいたら、その場では契約しないでください。私自身、現場では「条件が良ければ体感が変わる範囲」という言い方しかしません。

3. なぜ「大規模修繕のタイミング」が投資判断の分かれ目なのか

ここが、今日いちばんお伝えしたい実務です。

遮熱塗料を単体で塗るために足場を組むと、費用対効果はまず合いません。塗料そのものより、足場の設置・解体の費用のほうが大きくなりがちだからです。逆に言えば、どうせ塗装をやり直す大規模修繕のタイミングでなら、遮熱塗料の“上乗せコスト”は塗料のグレード差だけで済みます。ここに、投資判断の分かれ目があります。

塗装は12〜15年周期の「主役の工種」

マンションの大規模修繕は、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)で、修繕周期の目安が部材や仕様により異なるものの一般的に12〜15年程度と示されています(出典:国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン)。実態調査でも、平均的な修繕周期は13年前後が最多です。

この12〜15年ごとの工事で、外壁塗装・屋上防水・屋根塗装は必ず主役級の工種になります。つまり、どのマンションもいずれ「屋根や屋上をもう一度塗る」タイミングが来ます。そのときに、標準塗料にするか遮熱塗料にするか。この一択の差が、次の10年以上の夏の快適性と電気代を左右します。

上乗せ額は「塗料のグレード差」だけ

私が理事会でよくお見せするのは、単純な比較です。足場や下地補修、養生といった費用は、標準塗料でも遮熱塗料でも大きくは変わりません。差が出るのは塗料の材料費と、色数・工程の違いくらいです。

だからこそ、私は「遮熱にするかどうかは、大規模修繕の見積もりが固まる“前”に決めてください」とお伝えしています。工事が始まってから追加すると、足場の再設置が必要になり、割高になってしまうことがあるからです。タイミングを外さない。これが最大のコスト最適化です。大規模修繕の全体設計については、大規模修繕工事のご紹介もあわせてご覧ください。

4. メリットを“戸あたり”で体感する

理事会の説明では、総額よりも「1戸あたりいくら」で語るほうが、圧倒的に伝わります。読者の財布感覚に翻訳する、ということです。

遮熱塗料のメリットは、大きく三つです。

第一に、電気代です。省エネの一般的な目安として、資源エネルギー庁はエアコンの設定温度を1℃調整すると消費電力が約10%変わるとしています(出典:資源エネルギー庁 省エネポータルサイト)。遮熱で最上階の体感温度が下がれば、設定温度を無理なく上げられ、その分が電気代の節約につながります。メーカーの事例では電気使用量を大きく削減できたケースも紹介されていますが、これは条件の良い事例であり、全戸で同じ効果が出るとは限らない点は正直に申し添えます。

第二に、居住性です。とくに最上階と、屋根に接する住戸の夏の快適性が変わります。これは電気代のように数字にはしにくいのですが、居住者満足度、ひいては賃貸オーナーであれば入居率・空室期間に効いてきます。収益物件をお持ちのオーナーさまには、私はここを強調します。「夏に涼しい最上階」は、地味ですが確かな差別化です。

第三に、資産価値です。省エネ性能の高い建物は、これからの不動産評価で少しずつ有利になっていきます。屋根の遮熱化そのものが劇的に価格を押し上げるわけではありませんが、「暑さ対策まで手を入れている建物」という積み重ねが、長期の資産維持に効きます。オーナーの長期収益の視点で見れば、遮熱は“守り”の投資です。

“戸あたり”で考えるとどう見えるか(あくまで一例)

具体的な金額感を、あえて一例としてお示しします。ここから先の数字は建物によって大きく変わる試算であり、見積もりの約束ではないことを、先にお断りしておきます。

たとえば50戸のマンションで、屋根・屋上の塗装を標準塗料ではなく遮熱塗料に切り替える場合、上乗せになるのは主に塗料のグレード差です。仮にその差が総額で数十万円だったとすると、50戸で割れば1戸あたりは数千円から一万円程度、という水準に収まることも珍しくありません。しかもこれは、次の12〜15年を通じて効き続けるコストです。

私が理事会で必ずこの「戸あたり」に翻訳するのは、総額で聞くと身構えてしまう金額も、戸あたり・年あたりに直すと、判断のものさしがまるで変わるからです。逆に言えば、この翻訳をせずに総額だけで否決される遮熱の提案は、少なくないと感じています。もったいない話です。

5. ただし万能ではない——不向きなケースと注意点

ここは、あえてデメリットからお話しします。両方お伝えするのが、私の考える誠実さだからです。

まず、屋根に直射日光がほとんど当たらない建物、たとえば周囲を高い建物に囲まれて日陰になっている低層マンションでは、遮熱の効果は限定的です。反射する太陽光そのものが少ないからです。

次に、すでに屋上に十分な断熱材が入っている建物では、遮熱を足しても体感差が小さいことがあります。遮熱と断熱は役割が違うので、「うちはどちらが効くのか」を診断してから決めるべきです。

さらに、遮熱塗料は汚れが付くと反射率が落ちる性質があります。真っ白い服が汚れると熱を吸うのと同じ理屈です。定期的な点検と、必要に応じた洗浄をセットで考えないと、数年で効果が目減りします。「塗って終わり」ではない、ということです。

最後に、色の制約があります。反射率は明るい色ほど高くなる傾向があるため、濃い色を選ぶと遮熱効果は弱まります。デザイン上の希望と遮熱性能のバランスを、事前にすり合わせておく必要があります。

私はいつも理事長さまに、「遮熱は“効く建物”と“効きにくい建物”がある。だから、まず診断です」とお伝えしています。カタログの数字だけで全戸一律に決めない。これが失敗しないコツです。

6. 屋上・高所こそロープアクセス——足場をかけずに塗る選択肢

ここで、私たちの本業の話を少しだけさせてください。利益相反にならないよう、はっきり「自社の提案」として区切ってお話しします。

屋根や屋上の塗装で悩ましいのは、そこへ「どうやって人と道具を運ぶか」です。従来は建物全体に足場を組みますが、屋上・塔屋・高所の一部だけが対象なら、足場は大がかりで割高になりがちです。

そこで選択肢になるのが、ロープアクセス工法(無足場工法)です。産業用のロープで作業員が高所に直接アクセスし、足場を架けずに塗装や点検を行う工法です。素人向けに言えば、「命綱の技術を使って、足場なしで壁面・屋上まわりを施工する」方法です。足場費を抑えられ、工期も短く、居住者の生活への影響も小さく抑えられます。詳しくはロープアクセス工法のご紹介をご覧ください。

足場とロープの「いいとこ取り」=ハイブリッド工法

とはいえ、ロープアクセスが常に最適とは限りません。外壁の全面改修や、大量の資材を上げ下げする工事では、足場のほうが効率的です。

そこで私が必ずワンセットで提案するのが、ハイブリッド工法です。外壁の広い面は足場、屋上まわりや塔屋、狭い箇所はロープアクセス、というように部位ごとに使い分けて、総コストを最適化します。足場一辺倒でもロープ一辺倒でもなく、建物ごとに最適な組み合わせを設計できる会社は、日本でもまだ多くありません。遮熱塗料のように「屋根・屋上に効くもの」を、余計な足場費をかけずに施工できるかどうか。ここが、総額を大きく左右します。

工法ごとの向き・不向きを、ざっくり整理すると次のとおりです。

工法 向いている場面 費用感 居住者への影響
足場仮設 外壁全面の改修、大量の資材上下 足場設置・解体費が大きい 設置期間中は視界・防犯面で影響
ロープアクセス(無足場) 屋上まわり・高所の一部・点検 足場費を抑えられる 生活影響が小さく工期も短い
ハイブリッド 大規模で部位ごとに条件が異なる物件 部位ごとに最適化し総額を圧縮 必要な範囲だけ足場を使い影響を限定

遮熱塗料を「屋根・屋上」に効かせたいだけなら、建物全体に足場を組むのは過剰になりがちです。どの範囲に、どの工法でアクセスするか。ここを設計できるかどうかで、同じ塗料でも総額はまるで変わってきます。

7. 効果を最大化する“施工品質”の見極め方

同じ遮熱塗料を使っても、施工の質で結果はまったく変わります。ここは、材料の話以上に大切なところです。私が現場で20年見てきて、一番悔しい思いをするのは、良い塗料を使いながら施工が雑で、数年で効果が落ちてしまった建物に出会うときです。

下地処理で8割が決まる

屋上・屋根の塗装は、塗る前の下地処理で仕上がりの寿命がほぼ決まります。古い塗膜やチョーキング(塗装面が白い粉を吹く劣化現象)、コケ・汚れをきちんと除去し、下地を乾燥させてから塗る。この地味な工程を省くと、どんな高性能塗料でも密着せず、早期に剥がれます。見積書に「高圧洗浄」「ケレン(さび・旧塗膜の除去)」の工程と単価が明記されているかを、必ず確認してください。

「ダブル遮熱」で性能を引き出す

遮熱塗料は、上塗りだけでなく下塗りにも遮熱機能を持たせる「ダブル遮熱」の構成にすると、反射性能をより引き出せるとされています(出典:日本ペイント サーモアイ シリーズ)。とくに濃い色を選びたい場合、上塗りだけでは反射率が下がりやすいので、下塗りで遮熱を補う設計が効いてきます。「上塗りだけ遮熱」なのか「下塗りも遮熱」なのか。ここは見積書の仕様欄で確認できます。

膜厚(まくあつ)を守れているか

塗料は、規定の厚み(膜厚)で塗って初めてカタログどおりの性能が出ます。薄く塗り伸ばして材料をケチると、遮熱性能も耐久性も落ちます。私は必ず、使用量の記録(缶数の管理)と、必要なら膜厚計での確認をお願いするようにしています。真面目な会社ほど、この記録を嫌がりません。むしろ、記録を提示できることが施工品質の証明になります。

このあたりは専門的に聞こえるかもしれませんが、管理組合として「工程・使用量・記録が見積書と報告書に出てくるか」を見るだけで、施工の丁寧さは驚くほど判別できます。

8. 省エネ改修という文脈——これからの建物評価

遮熱塗料は、単体の“暑さ対策グッズ”ではなく、建物の省エネ改修という大きな流れの一部として捉えると、判断がぶれません。

屋根・屋上の高反射化は、都市の気温上昇を抑えるヒートアイランド対策としても位置づけられてきました。環境省もクールルーフ(高反射屋根)をヒートアイランド対策の手法のひとつとして紹介しています(出典:環境省 ヒートアイランド対策)。つまり遮熱は、個々の建物の快適性だけでなく、社会的にも意味のある改修だということです。

補助金・制度は「年度」と「自治体」で必ず変わる

ここで注意点をひとつ、はっきり申し上げます。省エネ改修に対する補助金や助成制度は、国・都道府県・区市町村ごとに、そして年度ごとに、内容も締切も大きく変わります。「去年あった制度が今年も同じ条件である」という前提で計画を立ててはいけません。予算枠に達した時点で締め切られる制度も多くあります。

だからこそ、遮熱を含む省エネ改修を検討するなら、大規模修繕の計画段階で、その時点の最新の一次情報(お住まいの自治体の公式サイトや国の事業ページ)を必ず確認してください。私たちも、ご相談の際にはその時点で使える制度を一緒に整理しますが、最終的な適用可否は必ず公的な一次情報でご確認いただくようお願いしています。

「守りの投資」としての位置づけ

省エネ性能の高い建物が、これからの不動産評価で少しずつ有利になっていく——この流れは、しばらく続くと私は見ています。遮熱塗料そのものが資産価値を跳ね上げるわけではありませんが、「暑さ対策まで手を入れている、管理の行き届いた建物」という積み重ねが、10年20年の長期では効いてきます。派手ではありませんが、これは私が現場で見てきた、嘘偽りのない実感です。

9. 屋上は「防水」と「遮熱」をセットで考える

ここは、私たちが防水工事も手がけているからこそ、強くお伝えしたい話です。

屋上の一番大切な役割は、言うまでもなく防水です。雨水を建物内部に入れない。その防水層(ウレタンやシート、アスファルトなどで作る雨をはじく層)の上に、仕上げのトップコートが乗っています。遮熱を考えるとき、この「防水層との関係」を切り離してはいけません。

なぜなら、防水層は紫外線と熱で少しずつ劣化するからです。真夏に表面温度が60〜80℃まで上がる屋上では、防水層も同じように高温にさらされ、ひび割れや膨れが進みます。ここで遮熱を効かせて表面温度を下げられれば、防水層への熱ストレスもやわらぎ、結果として防水の寿命を延ばせる可能性があります。つまり遮熱は、単なる省エネだけでなく、防水層を守るための“上着”にもなり得るということです。

私は屋上に上がると、必ず防水層の状態を先に確認します。膨れ、ひび、そしてドレン(排水口)の詰まり。ここが傷んでいる屋上に遮熱だけ塗っても、根本の雨漏りリスクは消えません。だからこそ、「次の防水改修はいつか」「そのトップコートに遮熱機能を持たせられないか」を、防水と遮熱をワンセットで検討していただきたいのです。防水の種類によって遮熱トップコートとの相性もあるため、ここは必ず専門家の診断を挟んでください。防水も含めた全体設計は大規模修繕工事のご紹介でも触れています。

10. 現場で見た「入れて良かった」ケースと「悩ましかった」ケース

抽象論だけでは伝わりにくいので、物件が特定されない範囲で、私の経験を二つご紹介します。

入れて良かったのは、南向きで日当たりのよい、最上階が暑さに悩んでいた鉄骨系の建物でした。大規模修繕の屋根塗装のタイミングに合わせて遮熱を採用したところ、翌年の夏、最上階の理事さんから「去年より昼間が楽になった」という声をいただきました。数字で証明したわけではありませんが、体感が変わったという感想は、私にとって何よりの手応えでした。足場ではなく高所の一部をロープアクセスで施工したことで、余計な足場費もかけずに済みました。

一方で悩ましかったのは、周囲を高い建物に囲まれ、屋根に直射日光があまり当たらない立地の建物でした。カタログ上の効果は魅力的でしたが、そもそも反射する日射が少ないため、費用に見合う体感差が見込みにくい。私は正直に「この建物では、遮熱に予算を割くより、防水の質を上げるほうが効きます」とお伝えしました。契約は小さくなりましたが、無責任に勧めなかったことは、今でも間違っていなかったと思っています。

この二つのケースが示すのは、結局は同じ結論です。遮熱は建物ごとに効き方が違う。だから、カタログの数字ではなく、その建物を診てから決める。これは私が現場で20年見てきた、嘘偽りのない感想です。

11. 発注前に管理組合・オーナーが確認すべきチェックリスト

読み終えたあとに動けるよう、確認すべき点を整理します。

まず、次回の大規模修繕がいつかを長期修繕計画で確認してください。その塗装のタイミングに、遮熱の採否をぶつけるのが最も無駄がありません。

次に、見積書で「JIS K 5675適合か」「日射反射率の数値」「色による性能差」を必ず確認してください。ここを説明できる会社は信頼できます。

そして、屋根・屋上の日当たりと断熱の現状を診断してもらってください。効きにくい建物に高い塗料を塗るのは、投資ではなく浪費です。

最後に、屋上・高所の施工方法(足場かロープアクセスか、ハイブリッドか)で総額がどう変わるか、複数案で比較してください。塗料のグレードだけでなく、そこへどうアクセスするかで、総コストは大きく動きます。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 遮熱塗料は必ず電気代が下がりますか。
A. 下がる可能性はありますが、建物の条件によります。断言はできません。設定温度を上げやすくなることで結果的に節電につながる、という位置づけでお考えください。

Q. 大規模修繕とは別に、遮熱塗料だけ塗るのはどうですか。
A. 足場費が上乗せになるため、費用対効果は合いにくいです。次回の塗装工事のタイミングで採否を決めるのが実務的です。

Q. 遮熱塗料の効果はどのくらい持ちますか。
A. 塗料のグレードにもよりますが、汚れで反射率が落ちるため、定期的な点検・洗浄が前提になります。「塗って終わり」ではありません。

Q. 収益物件(賃貸マンション)でもメリットはありますか。
A. 最上階の夏の快適性が入居率・空室期間に効きます。守りの資産維持策として検討する価値はあります。

Q. 遮熱塗料と断熱塗料は、どちらを選べばよいですか。
A. 屋根から入る熱を反射で防ぎたいなら遮熱、室内外の熱の出入り全体を抑えたいなら断熱が向きます。多くのマンションの屋上・屋根では、まず遮熱が検討対象になりますが、既存の断熱状況によって最適解は変わります。ここも診断が前提です。

Q. 高層マンションでも屋上塗装のために足場は必要ですか。
A. 屋上まわりや高所の一部が対象なら、ロープアクセス工法で足場をかけずに施工できる場合があります。外壁全面の工事は足場、高所の一部はロープ、というハイブリッドで総額を抑える設計も可能です。まずは建物を見せていただくのが早道です。

私からのお願い

2026年の夏は、7月下旬から8月上旬が暑さのピークと予想されています。今夏の暑さを実際に体感してから、「次の大規模修繕では屋根の暑さ対策も考えたい」という声が必ず出てきます。そのとき慌てないために、いまのうちに長期修繕計画のどこで塗装のタイミングが来るかだけでも、理事会で1分、話題に出してみてください。動けるかどうかは、この夏の“気づき”を計画に落とし込めるかで決まります。

診断とご相談だけでも、遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。お問い合わせはこちらからどうぞ。次回も、現場で本当に使える話だけをお届けします。

出典・参考資料

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の製品・工法の効果や、補助制度の適用を保証するものではありません。実際のご判断は、建物ごとの診断と最新の一次情報にもとづいて行ってください。