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創業から6000棟超の施工実績

湖西市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

湖西市のマンション補助金|大規模修繕2026年度版

湖西市には、マンションが7棟しかありません

株式会社明誠の本間です。

この連載では、静岡県内の市や町を1つずつ取り上げて、分譲マンションの大規模修繕で使える補助金・税制を、市の一次情報だけを頼りに整理してきました。浜松市、磐田市、掛川市、袋井市と西へ東へ回ってきて、今回はいよいよ県の最西端、湖西市です。

湖西市の資料を開いて、私は少し手が止まりました。

湖西市が公表している「湖西市マンション管理適正化推進計画」には、こう書かれています。

本市には、令和6年度末時点で7棟のマンションがあり、そのうち、4棟が建築後20年を超えています。

(出典:湖西市マンション管理適正化推進計画

7棟。しかも、計画書には7棟すべての竣工年・階数・戸数を並べた一覧表と、位置図まで載っています。

浜松市や静岡市のように何百棟とある都市では、行政の資料は「棟数の推計」で終わります。湖西市は違う。市が、市内のマンションを1棟ずつ把握したうえで計画を立てている。これはつまり、この記事を読んでいるあなたの管理組合も、湖西市の計画のなかに名前入りで載っているということです。

その前提で、以下を読み進めてください。今回は一般論の割合を減らして、湖西市の資料に実際に書いてあることと、書いていないことの線引きに集中します。


湖西市のマンション7棟|築年数の分布から見えること

市の計画に載っている7棟を、名称を伏せて竣工年順に並べ直すと、こうなります。

竣工年 2026年時点の築年数 階数 戸数
1986年 築40年 5階 45戸
1991年 築35年 10階 39戸
1995年 築31年 5階 12戸
2003年 築23年 5階 38戸
2007年 築19年 10階 88戸
2009年 築17年 9階 35戸
2017年 築9年 7階 46戸

(出典:湖西市マンション管理適正化推進計画より作成)

合計303戸。1棟あたり平均43戸です。

この表から、私が実務者として読み取ることを3つ挙げます。

1つ目。戸数が小さい。 平均43戸、最小は12戸です。首都圏の感覚だと「小規模マンション」に分類されます。後で詳しく書きますが、戸数が小さいほど、1戸あたりの工事費負担は重くなります。同じ5,000万円の工事でも、150戸なら1戸33万円、40戸なら1戸125万円です。だからこそ、工法選定による削減が効いてくる。

2つ目。高層が混ざっている。 7棟中、9階建て以上が3棟あります。地方都市のマンション群としては珍しい構成です。仮設足場は高さが上がるほど1平方メートルあたりの単価も、架設・解体の日数も増えます。10階建ての建物にぐるりと足場を架けるのと、5階建てに架けるのとでは、費用の桁が違ってきます。

3つ目。1棟には「リゾート」の区分が付いている。 市の計画表には、リゾートマンションかどうかを示す欄があります。リゾートマンションの管理組合には固有の難しさがあります。区分所有者の多くが市外・県外に住んでいるため、総会の定足数を満たすのに時間がかかる。委任状・議決権行使書の回収に、通常のマンションの倍近い期間を見ておく必要があります。もしお心当たりがあるなら、大規模修繕の議案は、通常より半年ほど前倒しでスケジュールを組むことをお勧めします。

築20年を超えた4棟のうち、築31年と築35年、築40年の3棟は、すでに2回目・3回目の大規模修繕の周期に入っています。


湖西市のマンション管理計画認定制度|手数料は無料、独自基準もなし

まず、湖西市で最も条件が良い制度から紹介します。マンション管理計画認定制度です。

湖西市は、マンション管理適正化法の改正を受けて「湖西市マンション管理適正化推進計画」(計画期間:令和6年10月〜令和15年9月)を策定し、市として認定事務を行っています。計画目標は「市内全てのマンションの管理計画の認定」。7棟全部です。

湖西市の条件を、市のページから抜き出します。

項目 湖西市の内容
認定申請手数料 無料
市独自の上乗せ基準 設けていない(国の基準どおり)
必要書類 (公財)マンション管理センター発行の事前確認適合証
申請ルート マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービス経由
窓口 建築住宅課 建築住宅係 053-576-4549

(出典:湖西市マンション管理適正化推進計画の策定

この2つ、地味に見えて大きい話です。

「市に支払う手数料は無料」。 自治体によっては数千円から3万円弱の手数料を取ります。この連載で回った静岡県内の町のなかにも、28,100円という設定のところがありました。湖西市は0円です。

「湖西市独自の基準は設けていません」。 これは、国が示した認定基準(管理者の設置、集会の年1回以上の開催、管理規約の適切な作成、長期修繕計画の期間30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれること、修繕積立金の額が明確に定められていること、など)をそのまま満たせばよい、という意味です。市の独自要件を別途調べる手間がかかりません。国の様式のまま準備を進められます。

ただし、市に払う費用が0円であることと、認定にお金がかからないことは別です。(公財)マンション管理センターのシステム利用料と事前確認審査料は別途かかります。合計で2万円前後を見ておくと、理事会での説明がぶれません。

認定を取ると何が得られるか。市のページは4つ挙げています。区分所有者の管理意識が高く保たれること、市場で適正管理として評価されること、地域価値の維持向上、そして──

  • 住宅金融支援機構の【フラット35】およびマンション共用部分リフォーム融資の金利引き下げ
  • マンション長寿命化促進税制の適用(各区分所有者が翌年度支払う固定資産税が減額される)

税制については後述しますが、認定単体でもフラット35と共用部分リフォーム融資の金利優遇という実利がある点は、総会で説明するときに効きます。「税制に間に合わなかったら無駄になる」わけではない、ということです。

認定制度についての相談は、一般社団法人日本マンション管理士会連合会が相談ダイヤル(03-5801-0858、月〜土10時〜17時、祝日・年末年始を除く)を設けています。市の窓口に電話する前の予習として、こちらを使う手もあります。


湖西市の耐震補助は「木造住宅だけ」──では、マンションは?

ここからが、この記事で一番慎重に書かなければならない部分です。

湖西市は令和8年4月に「湖西市耐震改修促進計画(第4期・令和8年度〜令和12年度)」を改訂しました。この計画の第2章に、市の補助制度の一覧表(表2-1「補助制度の概要(令和8年4月現在)」)があります。

そこに載っているのは、次の3つだけです。

事業 対象建築物 補助率(国・県・市)
木造住宅 耐震改修事業(補強計画一体型) 昭和56年5月以前・耐震評点1.0未満を1.0以上に 1/2・1/4・1/4
木造住宅 除却事業 昭和56年5月以前・耐震評点1.0未満 1/2・1/4・1/4
木造住宅 移転事業 同上・高齢者等世帯に限る

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月)

すべて「木造住宅」です。 鉄筋コンクリート造の分譲マンションを対象にした耐震診断補助は、この表に載っていません。

一方で、同じ計画の実績表(表1-3)には、こういう行があります。

事業名 H13〜R2 R3 R4 R5 R6 合計
既存建築物耐震診断事業(建築物の耐震診断) 10 0 0 0 0 10

「既存建築物耐震診断事業」──これは木造住宅ではなく、木造住宅以外の建築物の耐震診断に対する補助事業の名称です。掛川市や袋井市の計画には、この事業が補助率3分の2(国1/3+県1/6+市1/6)で現行制度として載っていました。

湖西市の計画では、実績表には出てくるのに、令和8年4月現在の補助制度一覧表には出てこない。 そして直近4年間(令和3〜6年度)の実績は0件です。

ここで私が言えるのは、ここまでです。

  • 「湖西市にはマンションの耐震診断補助がない」と断定はできません。表に載っていないだけで、要綱としては生きている可能性があります。
  • 「使える」と断定することもできません。市が公表している令和8年4月現在の支援策一覧に載っていない以上、それは推測になります。

推測で埋めるくらいなら、電話1本かけたほうが早い。 建築住宅課 建築住宅係(053-576-4549)に、次の3点をそのまま読み上げてください。

  1. 「湖西市耐震改修促進計画の実績表にある既存建築物耐震診断事業は、令和8年度も申請を受け付けていますか」
  2. 「対象に分譲マンション(鉄筋コンクリート造の共同住宅)は含まれますか。含まれる場合、補助率と限度額を教えてください」
  3. 「申請者は管理組合でよいですか。それとも区分所有者個人になりますか」

そして最後に、この一言を添えてください。

「工事はこれからです。まだ何も契約していません。」

耐震関係の補助は、着手前の申請が原則です。工事が始まってから電話をすると、その時点で対象外が確定します。「これからです」と伝えるだけで、窓口の答えが変わります。


令和8年度から「TOUKAI-0」は「TOUKAI-0+」に変わりました

もうひとつ、2026年度ならではの話をひとつ。

静岡県が平成13年度から続けてきた木造住宅の耐震化プロジェクト「TOUKAI-0(東海ゼロ)」は、令和7年度をもって終了しました。令和8年度からは、新たに「TOUKAI-0+(プラス)」総合支援事業として継続されています。

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月)

25年続いた県の看板事業が名前を変えた年です。窓口では制度の呼び名が切り替わった直後で、市のパンフレット類も更新の途中かもしれません。古い年度の資料をお持ちの管理組合は、条件が変わっていないか一度確認する価値があります。

なお、この「+(プラス)」が何を指すのかは、湖西市の計画に基本方針として書かれています。

「地震による住宅・建築物の倒壊から、一人でも多くの市民の命を守り、助かった命をつなぐ」

「命を守る」に「命をつなぐ」が足された、というのが今回の改訂の骨格です。地震後の避難生活の基本は在宅避難である。だから、倒壊しないだけでなく、住み慣れた自宅で生活を継続できる程度に被害を抑える耐震性能が要る──国が令和7年7月に公表した「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」を受けた考え方です。

これはマンションの大規模修繕の話にも、そのままつながります。地震後に住み続けられるかどうかを分けるのは、躯体の強さだけではありません。給排水管が生きているか、エレベーターが復旧できるか、外壁のタイルが落ちて出入口が塞がっていないか。そのほとんどが、共用部の維持管理の話です。


非木造住宅の耐震化率96.9%|湖西市には、まだ252戸残っている

湖西市の住宅の耐震化状況を、計画の表1-2から整理します。

区分 昭和56年以降 昭和56年以前 住宅数 耐震性のある住宅 耐震化率
木造 10,720戸 3,860戸 14,580戸 12,732戸 87.3%
非木造 7,506戸 874戸 8,380戸 8,128戸 96.9%
合計 18,226戸 4,734戸 22,960戸 20,860戸 90.9%

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月)、令和5年住宅・土地統計調査)

この連載で、私は掛川市(非木造99.1%)と袋井市(同99.1%)について、「その市では耐震訴求はもう刺さらない」と正直に書きました。

湖西市は少し違います。 96.9%。8,380戸のうち、耐震性が確認できていない住戸が252戸残っている計算になります。昭和56年5月以前に建てられた非木造住宅874戸のうち、耐震性があるとされたのは622戸。差の252戸が、まだ課題として残っている。

冒頭の7棟のうち、昭和56年5月以前に竣工したマンションはありません(最も古い1棟が1986年=昭和61年築です)。ですから、湖西市の分譲マンション7棟は、いずれも新耐震基準で建てられていると読むのが自然です。

ここは、はっきり書きます。新耐震基準のマンションについて、「耐震性が不安だから工事しましょう」という言い方を、私はしません。 それは不安を煽る話であって、事実ではありません。

では、湖西市の計画は、新耐震のマンションについて何と言っているか。ここが本題です。


市の計画が書いている「経年劣化による耐震性能の低下」=大規模修繕そのもの

湖西市耐震改修促進計画の第4章(4)に、こう書かれています。

新築時は耐震性能が確保されていても、その後の適切なメンテナンスが行われていない建築物は、時間の経過とともに、ひび割れや変形、老朽化などに見舞われ、経年劣化による耐震性能の低下が懸念される

そして、続けて熊本地震(震度7が2回発生し、1回目に耐えた建物が2回目で倒壊した例)、能登半島地震(群発地震でダメージが蓄積した可能性)に触れたうえで、現行耐震基準の建築物であっても、地震により被害を受けた建築物、経年劣化が進んだ建築物については注意喚起を行い、啓発に力を入れていく、と明記しています。

さらに、第4章(5)「屋内における安全性確保について」には、こうあります。

  • 特定天井の落下防止対策(定期報告制度で安全性の確保を指導)
  • 建築設備の安全対策エレベーターの支持部材の耐震化釣合いおもりの脱落対策、地震時の運行方法や閉じ込め時の対処方法の周知、所有者・管理者に対する定期検査に併せた改善の促進

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月)

読み替えます。

ひび割れ。外装材の劣化。エレベーターの支持部材。釣合いおもり。天井。

これは全部、マンションの共用部の話です。そして、大規模修繕工事とエレベーターの改修・定期検査で扱う対象そのものです。

つまり湖西市は、その計画のなかで「新耐震のマンションであっても、メンテナンスをしていない建物は耐震性能が落ちる」「設備の落下・脱落対策を進める」と明言している。ということは、管理組合が行う大規模修繕は、湖西市の防災施策の文脈にきちんと位置づけられる、ということです。

総会の議案書の書き出しに、そのまま使えます。文案を置いておきます。

【議案書 記載例】
本工事は、建物の美観を維持するためだけに行うものではありません。湖西市耐震改修促進計画(第4期・令和8年度〜令和12年度)は、新耐震基準で建てられた建築物であっても、適切なメンテナンスが行われない場合に「経年劣化による耐震性能の低下が懸念される」と明記しています。また同計画は、エレベーターの支持部材の耐震化や釣合いおもりの脱落対策を、建築設備の安全対策として掲げています。本工事はこれらに対応するものであり、本マンションの防災性能と資産価値を維持するために実施するものです。

「美観のため」と書かれた議案書と、上のように書かれた議案書とでは、総会での通り方が変わります。私が現場で何度も見てきたことです。


ブロック塀補助|湖西市は「フェンス」より「生け垣」を厚く支援している

湖西市のブロック塀補助は、この連載で見てきたどの自治体とも設計が違います。令和8年4月27日(月)から令和8年度分の受付が始まっています。

緊急輸送路沿道の場合

工事内容 補助率 上限額 基準額
ブロック塀等の撤去 3分の2 132,000円 13,000円/m
撤去+フェンス等を設置して改善 3分の1 80,000円 38,400円/m
撤去+生け垣・植え込みを設置して改善 3分の2 164,000円 38,400円/m

緊急輸送路沿道でない、その他沿道の場合

工事内容 補助率 上限額 基準額
ブロック塀等の撤去 2分の1 100,000円 13,000円/m

(出典:ブロック塀などの撤去・改善に対する補助金

気づかれたでしょうか。同じ「改善」でも、フェンスは3分の1・上限8万円、生け垣は3分の2・上限16万4千円。倍以上の差があります。

これは湖西市の政策的な意思表示です。緑化を進めたい、という自治体としての方針が補助率に表れている。他市では見なかった設計です。

管理組合の実務としては、こう考えます。

  • 敷地の外周にブロック塀があり、大規模修繕に合わせて手を入れる予定があるなら、「フェンスに建て替える」を既定路線にせず、生け垣・植え込みという選択肢を一度検討する価値がある
  • ただし生け垣には継続的な剪定費用が発生します。年2回の剪定を外注すれば、長期的にはフェンスより高くつく可能性もある。補助額の差(8万円 vs 16万4千円=差額8万4千円)と、10年20年の維持費を並べて比較してください。
  • 生け垣・植え込みで補助を受けるには市の整備基準があります(市が基準のPDFを公開しています)。植える樹種や高さの条件が定められているため、造園業者に基準を渡してから見積りを取ってください。

そして、撤去と改善の補助金は併用できます。撤去で最大132,000円、生け垣改善で最大164,000円、合わせて最大296,000円。ここは押さえておく価値があります。

補助対象経費は「実際の工事費(見積金額)」と「基準額×延長」を比較して少ない方です。延長別に試算しておきます(緊急輸送路沿道・撤去の場合、基準額13,000円/m)。

ブロック塀の延長 基準額×延長 3分の2の額 実際の補助額(上限132,000円)
10m 130,000円 約86,600円 約86,600円
15m 195,000円 130,000円 130,000円
20m 260,000円 約173,300円 132,000円(上限)
30m 390,000円 260,000円 132,000円(上限)

延長20mを超えると上限に張り付きます。 逆に言えば、15m前後までは延長に比例して補助が増える。まずはメジャーを持って敷地の外周を歩き、塀の延長を測ってください。15分で終わります。

なお、湖西市の実績を見ておくと、示唆的な数字が出てきます。

事業名 H13〜R2 R3 R4 R5 R6 合計
ブロック塀等撤去事業 225 11 12 9 5 262件
ブロック塀等撤去事業(緊急輸送路沿道 3 4 0 1 0 8件

補助率が高い緊急輸送路沿道のほうが、25年間で8件しか使われていません。「自分の敷地の前の道が緊急輸送路かどうか」を知らないまま、条件の悪いほうで申請している方がいる可能性があります。

湖西市は緊急輸送路図(PDF)を公開しています。まずこの地図でご自身の敷地の前面道路を確認してください。 判断がつかなければ建築住宅課の窓口で確認できます。補助額が最大で6万円以上変わります。

そして最も重要な注意書きを、市のページから引きます。

いずれの補助金申請も、撤去・改善をする前に、申請が必要となります。

大規模修繕の工事が始まってから「ついでにブロック塀も」とやってしまうと、その瞬間に補助が消えます。工程表にマイルストーンとして立ててください。


マンション長寿命化促進税制|湖西市の都市計画税は0.2%です

ここは、総会で数字を間違えると信用を失う論点なので、丁寧に書きます。

マンション長寿命化促進税制は、一定の要件を満たす大規模修繕工事を行ったマンションについて、各区分所有者が翌年度に支払う固定資産税を減額する制度です。国の制度で、地方税法にもとづきます。期限は令和9年3月31日までに工事完了。残り約19か月です。

湖西市の税率を確認します。

税目 湖西市の税率
固定資産税 1.4%
都市計画税 0.2%

(出典:税額の計算|湖西市

都市計画税0.2%。 これは、この連載で初めて出てきた数字です。都市計画税の制限税率は0.3%で、袋井市は0.3%、掛川市はそもそも市街化区域が定められていないという特殊な形でした。湖西市は0.2%──制限税率より低く設定しているわけです。

なぜこれが総会で効くのか。長寿命化促進税制で減額されるのは固定資産税だけで、都市計画税は減額されません。つまり──

「税金が3分の1になります」と説明すると、不正確です。減額されるのは固定資産税(1.4%分)だけで、都市計画税(0.2%分)はそのまま残ります。

理事長が総会でこの説明を間違えると、あとで納税通知書を見た区分所有者から「話が違う」と言われます。私はこの手の行き違いを、他所の現場で何度も見てきました。最初から正確に説明したほうが、結果的に理事会が楽になります。

確かめ方は簡単です。毎年5月頃に届く納税通知書の1枚目に、固定資産税と都市計画税がそれぞれいくらか書かれています。湖西市は年税額を4期に分けて納付します。

もうひとつ、湖西市の資料の並びについて実務的なメモを。

湖西市の税務課のページには、マンション長寿命化促進税制の専用ページがありません。 家屋に関する減額制度として並んでいるのは次の3つです。

長寿命化促進税制は、税務課ではなく建築住宅課の「マンション管理適正化推進計画」のページに書かれています。磐田市・袋井市と同じ「住宅ページ型」の配置です。

「税のページにないから、湖西市では使えない」は誤りです。 探す場所が違うだけ。制度は地方税法にもとづく全国共通のものです。ただし申告先は税務課 資産税係(053-576-1217)になります。建築住宅課(053-576-4549)と税務課(053-576-1217)の2本立て、と覚えておいてください。

減額を受けるための大枠の要件(国の制度)は次のとおりです。管理組合として押さえるべきは3点セットが一体で必要だという点です。

  1. 管理計画の認定を受けていること(または市から助言・指導を受けて長期修繕計画を適切に見直したこと)
  2. 20年以上・総戸数10戸以上であること
  3. 過去に一定の長寿命化工事(外壁塗装等・床防水・屋根防水)を実施しており、今回の工事もそれに該当すること

減額の対象は1戸あたり床面積100平方メートルまでの部分、減額割合は6分の1〜2分の1の範囲で市町村の条例で定める割合(参酌基準は3分の1)、減額されるのは工事完了の翌年度分の1年間です。

そして期限。令和9年3月31日までに工事を完了していなければなりません。


固定資産税の3つの改修減額|管理組合は「周知役」に徹する

上の3つの減額制度(耐震・バリアフリー・省エネ)は、基本的に専有部分の改修が対象です。管理組合が共用部の工事で使うものではありません。

ただし、大規模修繕の説明会は、区分所有者が一堂に会する年に数少ない機会です。「共用部の話ではないが、皆さんの専有部で使える制度がある」と1ページ挟むだけで、理事会の信頼度が上がります。

説明会資料に入れる文案です。

【お知らせ】 湖西市には、住宅の耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修を行った場合に、翌年度の固定資産税が減額される制度があります。いずれも専有部分の改修が対象で、共用部の本工事とは別の制度です。適用の可否は個別の判断になりますので、湖西市税務課 資産税係(053-576-1217)へ直接お問い合わせください。

管理組合が税務判断をしてはいけません。 「あなたのお宅は対象です」と誰かが言った瞬間に、理事会が責任を負うことになります。周知役に徹してください。これは私が理事長さまに毎回お伝えしていることです。


家庭用脱炭素化補助は、共用部に使えるか

令和8年度の「湖西市家庭用脱炭素化促進設備等導入支援補助金」の内容を確認します。

対象機器 補助金額
家庭用蓄電池 10,000円/kWh・上限40,000円
太陽光発電システム 10,000円/kW・上限40,000円(蓄電池と同時申請なら15,000円/kW・上限60,000円)
V2H充放電設備 40,000円
電気自動車・PHV 50,000円
燃料電池自動車 150,000円
家庭用コージェネレーション(エネファーム) 60,000円

補助対象者は「市内に住民登録がある人」「市税の滞納がない人」「過去に同様の設備の補助金を受領していない人」。各補助金は年度に関係なく一世帯につき1回限り。受付は令和8年4月1日〜令和9年3月31日で、先着順です。

(出典:令和8年度湖西市家庭用脱炭素化促進設備等導入支援補助金

対象者が「市内に住民登録がある」で、単位が「一世帯につき」である以上、管理組合が共用部に蓄電池や太陽光を入れるための補助として使うことは、この要綱の書きぶりからは読み取れません。 専有部(各戸)向けの制度と理解するのが自然です。

したがって、共用部への蓄電池・太陽光の導入議案を、市の補助金ありきで組み立てないでください。 予算が付かない前提で採算を検討し、市の補助が出れば上振れ、という組み方が安全です。

なお、令和8年度の予算と執行状況が市のページに公開されています。

予算額 4,100,000円
交付決定額 1,090,000円
予算残額(令和8年7月31日現在) 3,010,000円

年度の3分の1が過ぎて、残額は約73%。先着順の制度としては、まだ十分に余裕があります。区分所有者の方に周知するなら、今が良いタイミングです。窓口は環境課 脱炭素推進係(053-576-4921、市役所1階)。電子申請にも対応しています。


湖西市の制度を「共用部の大規模修繕で使えるか」で仕分けた一覧

理事会の時間は限られています。「使えない制度を調べる時間」を節約するために、私のほうで仕分けておきます。

制度 共用部の大規模修繕で 窓口
マンション管理計画認定制度(手数料無料) ◎ 使える 建築住宅課 053-576-4549
マンション長寿命化促進税制(固定資産税減額) ◎ 使える(認定+工事要件) 建築住宅課/税務課 053-576-1217
ブロック塀等の撤去・改善補助(緊急輸送路沿道) ○ 使える可能性が高い 建築住宅課 053-576-4549
ブロック塀等の撤去補助(その他沿道) ○ 使える可能性が高い 建築住宅課 053-576-4549
既存建築物耐震診断事業(非木造) △ 要確認(令和8年度の一覧に記載なし) 建築住宅課 053-576-4549
木造住宅 耐震改修事業(TOUKAI-0+) × 木造住宅のみ 建築住宅課
木造住宅 除却・移転事業 × 木造住宅のみ 建築住宅課
耐震シェルター・防災ベッド整備補助 × 木造住宅の所有者・居住者 建築住宅課
家庭用脱炭素化促進設備等導入支援補助金 × 個人・一世帯単位 環境課 053-576-4921
住宅耐震改修に伴う固定資産税減額 × 専有部(周知はできる) 税務課 053-576-1217
住宅バリアフリー改修に伴う固定資産税減額 × 専有部(周知はできる) 税務課 053-576-1217
住宅省エネ改修に伴う固定資産税減額 × 専有部(周知はできる) 税務課 053-576-1217

◎2つ、○2つ、△1つ、×7つ。

正直に申し上げます。湖西市は、共用部の大規模修繕そのものに直接お金を出す補助金を持っていません。 それは掛川市も袋井市も同じでした。地方都市ではむしろこれが標準です。

だからこそ、確実に取れる◎2つ(認定制度と税制)を確実に取り、△の1つを電話で確かめ、×の7つには理事会の時間を1分も使わない。これが、限られた任期のなかで理事会ができる最も効率のいい動き方だと私は思っています。


南海トラフ巨大地震|湖西市の被害想定と、造成地について

湖西市の防災上の前提を、市の計画から引いておきます。想定は南海トラフ巨大地震のレベル2(震度6強〜7、マグニチュード9.0程度)、静岡県第4次地震被害想定にもとづくものです。

項目 湖西市の想定(最大ケース)
死者 約5,000人(うち建物倒壊による死者 約500人)
重傷者 約1,200人
建物棟数 24,570棟
全壊・焼失 約15,000棟(建物被害率 約57〜61%)
半壊 約7,000〜7,400棟

(出典:湖西市耐震改修促進計画(令和8年4月)、湖西市地域防災計画)

建物被害率が6割近い。これは津波被害を含む数字で、遠州灘と浜名湖に挟まれた湖西市の地理的条件を反映しています。死者約5,000人のうち、建物倒壊によるものが約500人──裏を返せば、約4,500人は津波等によるものという想定です。

この数字をどう扱うか。私は、大規模修繕の議案書に被害想定の数字を大きく載せることを勧めません。 恐怖で決議を通しても、後から不信感が残るだけです。

そのかわり、こう使ってください。「地震のとき、この建物で暮らし続けられるか」という観点で、修繕の優先順位を組み替える材料にする。屋上防水が切れていれば、地震で断水したときに雨水すら使えません。給排水管が更新されていなければ、躯体が無事でも在宅避難ができません。「命を守る」から「命をつなぐ」へ、という県と市の方針転換は、そのまま修繕の優先順位の話です。

もうひとつ、湖西市固有の安心材料も書いておきます。

湖西市は令和4年度に「大規模盛土造成地」の第二次スクリーニング計画(安全性把握調査の実施優先度評価)を作成しました。その結果は──

優先度評価の結果、早期に第二次スクリーニング(安全性把握調査)を実施すべき盛土は、ありませんでした

(出典:宅地耐震化推進事業|湖西市

袋井市では液状化と人工造成地の被害想定が明示されていましたが、湖西市では「早急に調査すべき盛土なし」と評価されています。これは、丘陵地に建つマンションの管理組合にとって、地盤について過度に心配しなくてよいという材料になります。ただし市は今後も経過観察を続けるとしています。擁壁がある敷地では、大規模修繕の劣化診断のときに擁壁のひび割れも一緒に見てもらってください。追加費用はほとんどかかりません。


仮設足場は工事費の15〜25%|最初に削れるのはここです

ここから先は、株式会社明誠のサービスの話を含みます。利益相反がありますので、先に明示しておきます。

大規模修繕工事の見積書を開くと、いちばん上のほうに「仮設工事一式」という行があります。金額は、工事費全体のおおむね15〜25%。私の経験上、ここが最も動く部分です。

工事費総額 仮設足場費の目安(15〜25%)
3,000万円 450万〜750万円
5,000万円 750万〜1,250万円
8,000万円 1,200万〜2,000万円

理事会でこんな場面を、私は何度も見てきました。植栽の剪定20万円については30分議論されるのに、750万円と書かれた「仮設工事一式」の1行は、そのまま可決される。

理事の皆さんが不真面目なのではありません。判断材料が渡されていないだけです。

見積書を受け取ったら、この1文を施工会社に伝えてください。

「仮設工事一式を、架面積の平米単価とリース期間に分解して出してください。」

これで、足場の総面積が何平方メートルで、1平方メートルあたりいくらで、何か月分のリース料が乗っているのかが見えます。ここが見えると、工期が1か月延びたときにいくら増えるのかも計算できるようになります。


湖西市のマンションに効く、ハイブリッド工法の3つの配分

大規模修繕の工法には、大きく3つあります。

  • 通常足場工法:外周に仮設足場を架ける従来型。低層や複雑形状の建物に向く。
  • ロープアクセス工法(無足場工法):産業用ロープで作業員が降下しながら施工する。足場費が不要で、工期が短く、居住者の生活への影響が小さい。
  • ハイブリッド工法:部位ごとに足場とロープアクセスを使い分ける。

弊社は、この3つすべてを自社で提案できる、日本でも数少ない会社です。詳しくはロープアクセス工法のご紹介大規模修繕工事のご紹介をご覧ください。ロープアクセス専門の情報はロープアクセスドットコムにまとめています。

湖西市のマンションに当てはめると、配分の考え方は3つに整理できます。

1つ目|駐車場を潰さない配分。 遠州地域は自動車保有率が高く、1世帯1台以上が前提です。全周に6か月足場を架けると、その間ずっと一部の駐車区画が使えません。近隣に代替駐車場を借りれば、それだけで数十万円から百万円単位の追加費用です。2面ずつ各1.5か月に分けるか、駐車場側だけロープアクセスにするか。この2択で、駐車区画の閉鎖期間はかなり短縮できます。

2つ目|低層は足場、高層はロープ。 湖西市の7棟のうち3棟が9階建て以上でした。高さが上がるほど足場の単価と架設日数は増えます。低層階のバルコニー廻りなど細かい作業が多い部分は足場、上層階の外壁面はロープアクセス、という分け方は、この階数構成に素直に効きます。

3つ目|前面道路が狭く4トン車が入らない立地。 これは営業トークではなく物流の話です。足場部材は4トン車で運びます。道路が狭くて入れなければ、小型車に積み替える手間賃が乗るか、そもそも部材が現場に届きません。足場を架けられない現場では、ロープアクセスは「安い選択肢」ではなく「唯一の選択肢」になります。

そのうえで、正直に申し上げます。

ロープアクセス工法は万能ではありません。 私が「今回は足場でいきましょう」とお伝えする現場は、普通にあります。足場が有利になるのは、次の4つの条件が重なるときです。

  1. 下地補修の数量が多いことが事前調査でわかっている(作業量が多いほど足場の効率が上がる)
  2. 建物の形状が複雑で、ロープの支点が確保しづらい
  3. 低層(3〜4階建て)で、足場の架設面積そのものが小さい
  4. サッシ交換や大がかりな設備更新を同時施工する

そして、これも正直に書きます。バルコニー内部の作業が必要な点は、工法にかかわらず同じです。 ロープアクセスにしても、居住者の立ち入りがゼロになるわけではありません。減るのは、外部足場が窓の前に架かっている期間です。防犯上の不安や、洗濯物を干せない期間が短くなる。ここが本当の価値です。


モデルケース|湖西市の規模感で試算すると

弊社が実際に扱った案件の傾向をもとにした試算です。個別の物件の見積りではありません。 建物の状態によって上下します。

ケースA|JR鷲津駅圏・築30年前後・5階建て・40戸

項目 通常足場工法 ハイブリッド工法
工事費 約6,000万円 約5,150万円
差額 ▲約850万円
1戸あたり 約150万円 約129万円(▲約21万円
工期 約5.5か月 約4か月

ケースB|新居・浜名湖岸方面・築20年前後・9階建て・60戸

項目 通常足場工法 ロープアクセス主体
工事費 約8,600万円 約7,150万円
差額 ▲約1,450万円
1戸あたり 約143万円 約119万円(▲約24万円
工期 約6.5か月 約4.5か月

注目していただきたいのは、1戸あたりの金額です。

40戸で6,000万円なら1戸150万円。同じ6,000万円でも150戸なら1戸40万円です。戸数が小さいマンションほど、1戸あたりの負担が重く、工法選定の効果が大きい。 湖西市の7棟は平均43戸、最小12戸でした。この連載で回ったどの市よりも、工法選定が効く規模です。

そしてもうひとつ、これは強調しておきます。

工法は、設計を発注する前でなければ、実質的に選べません。

設計事務所に「足場を架ける前提」で設計・積算を進めてもらったあとで「やっぱりロープで」と言っても、設計をやり直すことになります。工法の検討は、設計者を選ぶ段階と同時です。理事会のスケジュールでいうと、着工の15〜13か月前。


修繕積立金が足りないとき、打ち手は4つあります

私が最も多く相談を受けるのが、この話です。積立金が足りない。打ち手は4つしかありません。

1|工事範囲を絞る。 今回は屋上防水と外壁、次回にサッシ廻り、という分け方です。ただし注意点があります。段階施工にすると仮設費が回数分かかります。 足場を2回架ければ、足場代は2回分です。そして、長寿命化促進税制は「外壁塗装等・床防水・屋根防水」の3点セットが一体で必要なので、分けた瞬間に税制の要件を外します。

2|工法を変える。 上に書いたとおりです。設計発注前でなければ選べません。

3|一時金を徴収する。 1戸50万円といった形です。可決のハードルは高いですが、明快です。

4|借入れをする。 住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資があります。管理計画の認定を受けていれば金利の引き下げを受けられます。ここで、冒頭の認定制度が効いてきます。

議案書を作るときのコツを1つ。「一時金50万円」と「月々3,000円の値上げ」を、両方載せてください。 片方だけを出すと「高い」で終わりますが、両方並べると「どちらが自分にとって楽か」という議論に変わります。決議の通り方が変わります。


見積書で確認したい5点|1つ目が最重要です

1|下地補修の仮定数量を超えた分の単価を、契約前に契約書へ明記する。

これが最重要です。大規模修繕の見積書には、たいてい「下地補修 タイル張替え ○○枚(仮定)」という項目が入っています。実際の数量は足場を架けて調べないと分かりません。

問題は、超過分の単価が契約書に書かれていないケースです。

工事が始まり、足場が架かった状態で「タイルが想定より500枚多かったので追加費用が」と言われたとき、管理組合が対等に交渉することはできません。工事を止められないからです。

契約書に、この1行を入れてください。

「下地補修工事において仮定数量を超過した場合の追加単価は、○○円/枚(○○円/平方メートル)とし、契約時の単価を工期中に変更しない。」

これを嫌がる会社は、そこで分かります。

2|仮設工事一式を、架面積の平米単価とリース期間に分解してもらう。(前述)

3|高圧洗浄の排水計画を確認する。 湖西市は浜名湖と遠州灘に挟まれ、市内に水路が多い地域です。洗浄水と塗料カスの処理をどうするかは、環境の話であると同時に、近隣の住民合意の話でもあります。

4|予備日を超過した場合の足場リース延長費用は、誰の負担になるか。 雨天が続いて工期が延びたとき、リース延長費用を管理組合が負担するのか施工会社が負担するのか。契約前に確認してください。

5|工事監理者が施工会社と資本関係にないか。 設計・監理と施工が同じグループだと、チェック機能が働きません。


湖西市の工事適期と、方位別の劣化要因

湖西市の気候条件に合わせて、工事適期を整理します。

時期 適性 理由
3〜5月 気温・湿度が安定。ただし年度替わりで業者が混み合う
6〜7月 梅雨。予備日を7〜10日多めに
8〜9月 猛暑と台風期。作業員の熱中症対策が工程に影響
10〜11月 気温・湿度ともに塗装に最適。最有力
12〜2月 温暖で晴天率は高いが、遠州の空っ風で予備日3〜5日を追加

そして、湖西市固有の方位別の劣化要因です。同じ建物でも、面によって傷み方がまったく違います。

方位 湖西市での主な劣化要因 重点的に見る箇所
西〜北西面 遠州の空っ風による塗膜の摩耗、シーリングの早期硬化。メッシュシートの開放・復旧の人工が工程に乗る 塗膜の劣化、目地シーリング
南面(遠州灘側) 飛来塩分による鉄部の腐食 手すり、避難ハッチ、屋外階段、庇の鉄部
東面(浜名湖側) 朝日による温度変化でシーリングが伸縮疲労 開口部廻りの目地
北面 放射冷却による結露 → コケ・藻の発生 防藻・防カビ仕様の検討

湖西市は、西から遠州の空っ風、南から遠州灘の潮風、東から浜名湖の湿気を受ける、三方向から条件を突きつけられる立地です。「南面だけ鉄部の腐食が早い」「北面だけ緑色になっている」というのは、放置の結果ではなく、立地の必然です。

劣化診断を依頼するときは、方位別に報告書を分けてもらってください。 「外壁全体で○○%劣化」という報告書は、補修数量の根拠になりません。


国のモデル事業と、静岡県の支援メニュー

国のマンション長寿命化・再生モデル事業は、令和8年度の第3回募集が9月14日(月)〜18日(金)の予定です。事務局は03-6801-5902。

正直に書きます。この記事の公開から2週間で応募書類を揃えるのは、現実的ではありません。 管理組合の意思決定は総会を経ますから、2週間では動けない。

そのかわり、必要書類の一覧だけ印刷しておいてください。15分で終わります。 次回募集のときに、どの資料に何か月かかるのかが分かっているだけで、動きがまるで変わります。

静岡県の支援については、湖西市の計画にこう書かれています。

静岡県及び市町で構成する「静岡県マンション管理適正化推進協議会」において、マンション管理セミナーの開催やマンション管理士の派遣等を実施します。

(出典:湖西市マンション管理適正化推進計画

マンション管理士の派遣制度は、専門家に無料または低額で相談できる仕組みです。申込期限や派遣期限は年度ごとに設定されますので、最新の日程は静岡県の担当課、または湖西市建築住宅課(053-576-4549)で確認してください。 湖西市の場合、県西部のセミナー会場は浜松になることが多く、JR東海道本線で30分程度です。

このとき、私からのお願いを1つ。理事長ひとりで行かないでください。 次期理事候補と2人で行ってください。理事は1年で交代します。ひとりで聞いた話は、その人の任期とともに消えます。


逆算カレンダーと、今週できること5つ

長寿命化促進税制の期限(令和9年3月31日 工事完了)から逆算すると、こうなります。

時期 やること
19〜16か月前 管理計画認定の準備開始・劣化診断の発注
15〜13か月前 工法をここまでに決める(設計発注と同時)
12か月前 定時総会で工事実施を決議
6か月前 施工会社の選定・契約
着工直前 改修前の写真撮影(高圧洗浄後は二度と撮れません)
着工〜完了 工事
完了後3か月以内 税の申告(税務課 053-576-1217)

律速になるのは工事ではありません。総会です。 総会は年1回。ここを外すと1年ずれます。

証明書まわりの落とし穴を3つ、書いておきます。

  1. 建築士との契約書に「大規模の修繕等証明書の発行」を明記する。 あとから頼むと追加費用になります。
  2. 着工前の写真は、高圧洗浄後には二度と撮れません。 理事会の議事録に「着工前写真の撮影担当者」を書いてください。3行で済みます。
  3. 前回工事の施工会社が廃業していることがあります。 前回の工事記録を先に探してください。

そして、今週できることを5つ。

  1. 建築住宅課(053-576-4549)に電話。 既存建築物耐震診断事業がマンションに使えるか、管理計画認定の受付状況を聞く。──今日中に
  2. 税務課 資産税係(053-576-1217)に電話。 長寿命化促進税制の申告手続きの確認。──今日中に
  3. 緊急輸送路図で、敷地の前面道路を確認。 ──5分
  4. 敷地外周のブロック塀の延長をメジャーで測る。 ──15分
  5. 前回の大規模修繕の書類一式を探す。 ──15分

合わせて1時間かかりません。電話2本が、この記事の結論です。


よくある質問

Q1|湖西市に、大規模修繕そのものへの補助金はありますか。
共用部の大規模修繕工事費に直接出る補助金は、令和8年9月時点で市のサイトから確認できません。使えるのは、管理計画認定制度(手数料無料)、マンション長寿命化促進税制(固定資産税の減額)、ブロック塀の撤去・改善補助です。

Q2|築40年ですが、耐震診断の補助は使えますか。
湖西市耐震改修促進計画の令和8年4月現在の補助制度一覧には、木造住宅向けの制度しか記載されていません。非木造向けの「既存建築物耐震診断事業」は実績表には登場しますが、現行の一覧には出てきません。建築住宅課(053-576-4549)へ直接ご確認ください。

Q3|「税金が3分の1減る」と説明していいですか。
不正確になります。減額されるのは固定資産税(税率1.4%)のみで、都市計画税(湖西市は0.2%)は減額されません。この点は分けて説明してください。

Q4|管理計画の認定に、市の手数料はいくらかかりますか。
市に支払う認定申請手数料は無料です。ただし(公財)マンション管理センターのシステム利用料と事前確認審査料が別途かかります。

Q5|ブロック塀は、フェンスにするのと生け垣にするのと、どちらが得ですか。
補助額は生け垣のほうが有利です(3分の2・上限164,000円 対 3分の1・上限80,000円)。ただし生け垣には剪定費用が継続的にかかります。10年20年の維持費を含めて比較してください。

Q6|リゾートマンションで、総会の定足数が集まりません。
区分所有者が市外・県外に多い場合、委任状・議決権行使書の回収に通常の倍の期間を見てください。大規模修繕の議案は、半年ほど前倒しでスケジュールを組むことをお勧めします。

Q7|湖西市は遠いので、施工会社が限られませんか。
湖西市はJR東海道本線と国道1号(潮見バイパス)が通り、名古屋圏・浜松市街ともに日帰り圏です。「遠方だから割高」という前提は、湖西市にはあまり当てはまりません。相見積りは3社以上を推奨します。

Q8|工事の見積りを取るのは、いつがいいですか。
劣化診断の結果が出てからです。診断なしの見積りは、下地補修の数量が仮定だらけになり、比較の意味を持ちません。


まとめ

湖西市の分譲マンション管理組合が、2026年度に押さえるべき点をまとめます。

  • 湖西市内のマンションは7棟・303戸。市が1棟ずつ把握し、全棟の管理計画認定を目標に掲げている
  • 管理計画認定制度の市手数料は無料市独自の上乗せ基準もなし。国の様式のまま準備できる
  • 認定はフラット35と共用部分リフォーム融資の金利引き下げにもつながる。税制と切り離しても価値がある
  • マンション長寿命化促進税制の期限は令和9年3月31日(工事完了ベース)。残り約19か月
  • 減額されるのは固定資産税1.4%分のみ都市計画税0.2%は減額されない
  • 長寿命化促進税制の情報は税務課ではなく建築住宅課のページにある。窓口は建築住宅課と税務課の2本立て
  • 非木造の耐震診断補助は令和8年度の一覧に記載がない。断定せず、053-576-4549へ確認
  • 湖西市の非木造耐震化率は96.9%。まだ252戸が課題として残っている
  • 市の計画は「経年劣化による耐震性能の低下」エレベーター支持部材・釣合いおもりの対策を明記。大規模修繕は防災施策として議案書に書ける
  • ブロック塀は生け垣2/3・上限164,000円 対 フェンス1/3・上限80,000円。撤去との併用可。着手前申請が原則
  • 令和8年度から静岡県の耐震事業はTOUKAI-0+に切り替わった。古い資料は要確認
  • 大規模盛土造成地は「早期に調査すべき盛土なし」と評価済み
  • 仮設足場費は工事費の15〜25%架面積の平米単価とリース期間に分解させる
  • 戸数が小さいほど1戸あたりの負担は重い。湖西市の平均43戸は、工法選定が最も効く規模
  • 工法は設計発注前でなければ選べない。着工の15〜13か月前が判断期限
  • 見積書の最重要チェックは下地補修の超過単価を契約書に明記すること

最後に。

湖西市は、浜名湖の西岸にあり、東は湖、南は遠州灘、西は愛知県境という土地です。県庁所在地からも浜松市街からも離れていて、行政の情報が大きく取り上げられることは多くありません。

けれど、私は今回、湖西市の資料を読んで感心しました。市内にマンションが7棟しかないのに、市はその7棟の竣工年と階数と戸数を1棟ずつ把握し、位置図まで添えて計画を公表している。認定の手数料を0円にして、独自基準も設けていない。「数が少ないから後回し」にしていないのです。

7棟の管理組合の皆さんは、そのことをもう少し知っていていいと思います。窓口に電話をかければ、担当の方は7棟のうちのどれかを頭に思い浮かべながら答えてくれるはずです。人口何十万人の都市では、そうはいきません。

制度がないのではなく、知られていないだけのものが、まだ残っています。

今日の結論は、電話2本です。建築住宅課(053-576-4549)と、税務課 資産税係(053-576-1217)。それだけで、来年の総会に出せる材料が1つ増えます。

ご相談だけでも遠慮なくお声がけください。総会の前段階の整理だけでも、お力になれることがあります。工法の話をする前に、まず建物を見せていただくところからです。


主なお問い合わせ先(湖西市)

用件 窓口 電話番号
管理計画認定制度・耐震・ブロック塀 湖西市 建築住宅課 建築住宅係 053-576-4549(FAX 053-576-1897)
固定資産税・長寿命化促進税制の申告 湖西市 税務課 資産税係 053-576-1217(FAX 053-576-1896)
家庭用脱炭素化補助 湖西市 環境課 脱炭素推進係 053-576-4921
市代表 湖西市役所(〒431-0492 湖西市吉美3268番地) 053-576-1111
管理計画認定制度の相談 (一社)日本マンション管理士会連合会 相談ダイヤル 03-5801-0858(月〜土10〜17時)
国のモデル事業 モデル事業事務局 03-6801-5902

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出典・参考資料

湖西市

関係団体


執筆者|本間 幸紘(ほんま ゆきひろ)
株式会社明誠 代表取締役。大規模修繕の現場に20年近く携わり、通常足場工法・ロープアクセス工法(無足場工法)・ハイブリッド工法の3工法から建物に最適な方法を提案。日本初となるロープアクセス工事のフランチャイズ展開を行い、塗装・防水・タイル・電気・看板工事などの専門職が加盟することで、高品質と低価格を両立させています。

免責事項
本記事は2026年9月2日時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。補助制度の内容・予算・受付期間は変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の担当窓口で最新の要綱をご確認ください。税務上の取り扱いについては、湖西市税務課または税理士にご相談ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の判断を保証するものではありません。